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真実への葛藤 の変更点


真実への葛藤(かっとう)

作者:旋風(つむじかぜ)
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…………ル…よ…わ………の……お……を………つら…ぬ……け……。

どん………が……あっ………………ソ…を……ま…り……け…。

この言葉が…いつも頭に響く。

まるで死ぬ間際の老ポケモンのような声だ。

でも……いまボクは……

……死にたいんだ……。

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…目が覚めた。

いつもの薄暗い部屋だ。
この部屋唯一の扉は鍵がいつもかけてあり、部屋の中には何もない。

しかし、何かあったとしても、ボクには手が届かない。

ボクは、もう随分染みがついて汚れた服を身にまとい、二足で立ってバンザイをするような格好で壁に手錠と足輪で貼り付けられていた。

どうしてこうなったかは覚えていない。

ただ、記憶を探ると、最初の記憶が同じようにここでこうして貼り付けられていた記憶が蘇ってくる。

そして、いつものブーツの足音がした。
ボクは力なく首を上げ、鉄の扉の窓(鉄の柵だが)から外を見た。

……見知らぬ格好をしたポケモンが見えた。

おかしい。いつもボク達を働かさせるポケモンは緑の軍服を着ていたはず。
しかし、外に見えたポケモンは間違いなく青い服を着ていた。

「…ねぇ、キミは……何…してるの…?」

もう随分かすれた声をそのポケモンにかける。
すると、その青い服のポケモンがこちらを向いた。

鉄の柵の窓から中を…もといボクを見て、こう言った。

「おまえ、オレが…見えるのかよ。」
「なに…言ってるの…?見えるよ…。」

相手は扉をすり抜けて(!?)ボクの目の前に来た。

「本当に…見えるのか…?」

ボクはもう話すのがつらくなって、扉をすりぬけて来たことに驚きながらも、コクリと頷いた。

「おまえ、名前は?」
「…ロッソ……ロッソ・ヘルディオ……。」

ボクは首が痛くなってきたので首をうなだれる。
ボクの名前を聞いた青い服を着たポケモンは「やっと……やっとみつけたっ!」とか言っている。

ボクは、わけがわからず、そのポケモンをじっと見つめていた。
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「あ、待ってろ。今外すから。」

そうして、急に深呼吸したかと思うと、手錠と足輪のロックを何か細い棒であっさりと外し、ボクを地面に横たえた。

その時、扉が勢いよく開いた。

「…お前は誰だ……なに!?青い服だと!?なぜローランツの奴が……」

ボクは、そのポケモンの言葉をそこまでしか聞けなかった。
青い服のポケモンがあっさり見張りのポケモンを倒してのけたのだ。
その右手には光る棒のようなものが握られていた。

「それは…なに?」
「これか?これは剣型の"デイル"だ。持つ奴によって形が変わる。」

ボクは「けん?」と聞いた。
彼は「後で説明する」と言ってボクを立たせて手を引っ張っていった。

「そういえば、キミは…?」
「オレか?オレはスフェール。スフェール・ローレンツ。」

スフェールは廊下の突き当たりに向かって…

「ぶ、ぶつかるっ!?」
「だいじょうぶだって、オレを信じろ。」

スフェールは壁に突撃した…はずなのに、壁には穴が開くどころか、ボクにも壁にぶつかった感触が無かった。

「す、すりぬけたの!?」
「そうさ。それが早いからね。」

スフェールは適当にあの建物から離れたところの草むらに座り込んだ。

「ここまでくればもう大丈夫だろ。」
「…スフェール、キミは何でボクを連れてきたの?助けてくれたのは感謝してる。でも、ボクはキミを知らない。キミもボクを知らないはずだし、しかも…」

しかし、その言葉は途中で遮られた。

「知ってるんだよ。ヘルディオ家のお嬢さん。」

正直に、ただ正直に驚いた。
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「でも、ボクにはなにもない!お金も!帰るところも!家族も!記憶も!何一つないんだよ!…………もう命も………ボクには必要ないんだっ!ボクは…もう一人で死にたいんだ!…もう…ほっといてよぉ!」

そこまで言い切った時、スフェールに頬を平手でたたかれた。……痛かった。

「お前は何を言っているんだ!この世に…必要のない命なんてない。」
「じゃあ、ボクはどうすればいいの!?………ねえ…どう…すれば……いい…ってのさ……。」

急に目頭が熱くなり、自分が泣いているんだ、とわかった。

「オレと来い。生きる意味を意地でも教えてやる。そして二度と、死にたい、なんてバカな事は言わせないようにしてやるよ。」

迷った。迷いに迷った末に。

「…やってみなよ。」
「来るんだな。よろしくな、ロッソ。」

手を出してきた。今気づいたけど、スフェールって…ピカチュウだったんだ。
ボクはスフェールの手をイーブイの茶色の手で払いのけた。

「…まだ信用したわけじゃないよ。」
「…あらら~。」

ボクは「期待はしてるけど」と心の中でつぶやいて、スフェールのあとに付いていった。
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はじめまして、旋風(つむじかぜ)です。
ここの小説を読んでいて、やっと書く決心が付いたので、書かせていただきました。
…まだちょっと伸びただけですが(笑)

なにかありましたらこちらへ。
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