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盲目の鎮魂歌 の変更点


Un autore:[[konro]]
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※注意※
この作品には&color(red,red){食事中などに見ると慈悲の無い、例えば死・血などの};表現があります。
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**盲目の&ruby(レクイエム){鎮魂歌};  [#w7ed39b2]

	
 天使があなたを楽園へと導きますように。
    
 楽園についたあなたを、天使たちが出迎え、
    
 聖なる地へと導きますように。
   
 天使たちの合唱があなたを出迎え、
   
 かつての友とともに、
    
 永遠の安息を得られますように。 

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 1. ―楽園へ―
 
 ジョウト地方、シロガネ山脈付近の過疎地にある、とある僕達ポケモンが密かに暮らす一つの集落に。
 ニンゲンとの接触・会話は愚か“悪に染まった者”の存在は認められない。殺生はいかなる場合でも捕食の為だけにしか許されない。正当防衛は慈悲深くこれに当てはまらない。 
 そんな掟が、存在した。
 その掟を破ったものは、せめてもの救いとして&ruby(レクイエム){鎮魂歌};と共に集落の者達からの投石で、三日を掛けてなぶり殺される。
 三日で死ななかった場合、その魂を褒め讃え、四日目を“涙の日”と称し、罰――いや、救いから逃れられる事ができる。
 唯一にして最恐の断固たる揺るぎの無い掟。僕は子どもながらにそう思い続け、そしてその思いは今も変わる事は無い。
 過去にこの掟のせいで、両親をも僕はとうに失っている。自分の視力さえも。
 当時幼かった事もあり、視力に関しては慣れる時間が多く与えられた為、今は余り困る時はそうそう無い。
 一人で遠出が楽にできなくなったのは痛いけど。この集落から抜け出す事が出来ない意味でも――。
 
 父と母は僕が五歳の時に亡くなった。
 僕も本当は両親と共に神に召される筈だった。
 だったら何故、神は両親を救わなかったのか。全く悪では無い筈の、母まで逝かなければならなかったのか。父も僕が思うに、悪なんかじゃ無かった筈だ。
 閉ざされた集落の、行き詰まった掟。
 しかしそれに従うか、しがみつくしか無い無能な住民。
 呆れる。
 当時は正直に僕は恐ろしかった。何せ目だけでなく、命さえも訳も分からず失うところだったのだから。
 すぐに投石で目を失ったのは、今では幸いしたとさえ思えるようにもなった。
 誰が僕に石を投げていたか、どんな表情で投げていたのか。そこに友は居たのか?
 ――考えたくも無い。
 
 発端は家族で登山をしている時に出会った、瀕死の人間の介抱だった。
 その少年の名は、ロッソと言っていた。
「救いは善に当らないのか? 私たちに救いは無いのか? これが掟なら、こんな集落は腐っていやがる!」
 父はそう叫びながら、虚しくも家族で一番酷い姿で先に召されていったのを未だ覚えている。
 忘れる訳も無い。
 唯一助かるとすれば、それは母だった筈だった。
 母の種族はイーブイ種の中でも進化系のエーフィだった。
 エーフィはこの集落では陽をかつて司った神の化身として扱われていて、身分に関係無くその効果は絶大だった。
 彼女は両目を失った僕を庇った事で、召された。
 エーフィが大衆によって召される事は異例のケースだったと、後でその場に居合わせた、僕の幼馴染のリュフレから聞いた。
 父と違って、その美しい姿を留めるに当たった姿で召されたのがせめてもの救いだったのだろうか。
 今でも、分からない。
 夫や子の僕がいながら、集落を仕切る族長の寵愛まで当時受けていた母は、亡くなるべきで無かったのかもしれない。
 母ならあるいは、表向き族長に取り入り、この集落を何とか――。
 いや、もしもやなら、は考えるだけ時間の無駄だ。父も母はともかく、族長に対しての憎しみは酷かった。良い方法とは言えないだろう。 
 しかし現に僕は母と、族長の娘に当たるリュフレと、もう一人の集落の外から来た旅の者に、命を救われている。 

 今は、この&ruby(いのち){生命};を何に使うか。考えないようにすればする程、僕の心は&ruby(すさむ){荒む};ばかりだった。
 それを言葉通り生命だけでも無く、見ず知らずの身寄りを失った僕を引きとってまで育ててくれた人。
 同じ悪タイプの忌み嫌われる存在同士なのに、それを知ってか知らずかその人は僕を引き取った。
 単に子どもが好きだったとか、そういうものでも無く。
 未だに理由は教えてはくれない。――額の鎌が、お前を引き取れと告げたんだ。
 その人は、良くそう僕に言い聞かせていた。

 
 亡くした両目と、最近になってよく自分でも分からない部分が、無性に疼く。

   ◆

「ラザロ? あぁまた考え事をしていたのか。 辛気臭い顔してどうした、ん? 今朝食べた物に毒キノコでも混じってたか、はは」
 この地方に聳え立つ雪山に積もる雪の様に白い体毛に、額に死神を錯覚させるような象徴的な鎌の様な物体を携えた、一人のポケモンが僕にそう尋ねる。
「あぁ。でも聞かなくても分かるじゃない、リオーズなら」
「まぁな」
 昨日は悪人と称された者が“召された日”の三日目。つまり公には死んでも言えない言葉で述べるとすると、処刑日の最期の日、となる。
“召された日”
 この言葉に、僕は幼かった頃から畏怖と矛盾を感じずにはいられなかった。それは先に述べただろうか……今でもそれは揺ぎ無い思いだった。
 無論、僕も“召される人”に石を投げつけた事はある。そうしなければならなかった、と言った方が正しいか。何事も大衆の意志には逆らえないというか族長の存在の大きさのせいなのか。
 あるいは当時なら“分からなかった”とも言い訳は成り立つが。
 ただ石を投げつける事自体を拒否する事は勿論許される。条件はあるが。
 投げつけない事が許されない種族というのも存在する。
 ――俗に世間で言う“差別”と言うところか。全くもってふざけてやがる、と吐き捨てたい思いはいつになったら消えるんだろうか。リオーズは、どう思っているのだろう。
「私たちにはなんで悪の血が流れているのでしょう? おぉ、神よ! ――なんてな」
 突然。少しの嘲りと多くの苛立が篭った意味深な声が、隣のリオーズから聴こえる。
「ラザロ。運命的にあの時お前に出会ってなければ、私はとっくにこの地なんて去っていたよ。死を覚悟した者の目。今でも忘れない――幼い子が、いや歳を関係無くしても中々あんな目はできない。私が見たときはその見開いた赤い目は、使い物にならなくなってしまっていたのが惜しかったけどな」 
「リオーズは悪くないさ。僕に力が無かっただけだよ、後運もね。リオーズだってその容姿と他方から学んできた知識で、族長にでも取りいってれば、あるいは、さ」
 ――そう。僕らは悪タイプ。それも混血じゃない、純血の悪タイプ。
 混血とは悪に何か他のタイプが混じっているポケモンをこの集落では指している。逆に、純血は悪タイプのみのポケモンを指す。
 よって違いはよく分からない中でも、歴史はこの両者に歴然と濃度の違うレッテルを貼り付け、より純血が差別されている実情が未だ何百年も前からこの集落では実在している。
 そう。
 僕のこの視界も、丁度『召された日』によって奪われた。大きな代償と三日間を耐えぬいた神の加護を尊重して、僕は救われ……いや、ただ死なずに済んで今ここにこうしてリオーズと共に居られる。
 その時住民達が歌っていた鎮魂歌を、僕は未だ忘れる事は無く夜な夜な悪夢に唸される日々が続いていた。
 歌は、その時からトラウマとなった筈だった。
 そこに、ふらりとどこからか、&ruby(じんりん){人倫};の伝道師のように。この人が僕の前に現れた。
 種族を&ruby(またいで){跨いで};死に&ruby(まつわる){纏わる};歌に、下手なニンゲンやここのお偉い方等よりも異様な程に博識な知識を持った、今もって不思議な人。
 それが、リオーズ。
「取り入るなんて馬鹿馬鹿しい。そんな柄じゃないこと、ラザロなら分かって言ってるんだろ? それに本来鎮魂歌ってのはさ、死者の魂を鎮める為に歌うんだよ。死に逝く前の人の前で偽善的に歌っても、そりゃ特に意味は無い。……今時こんなことしてるのは、遠い遠い一部のニンゲン達だけか、ここぐらいなモンだよ。ポケモンが支配する土地じゃ、私が見てきた限りまずあり得ないね」
 そうだ。
 神の加護も何も、根本から履き違えているのは確かだし、大体この掟は神そのものを実は冒涜していて――
「そうだよ。僕は悪になんかやっぱり染まっていない――父譲りのこの漆黒の体も、この血に流れる悪の血も。それ自体に意味は無いじゃないか! 僕の家族をこんなくだらないニンゲンの真似事や古いしきたりで、実際は妄想を混在してまで罪の無い人達を迫害している現実。――そう、そうだったよ。ここの住民たちに、いつか、いつか僕は!!」
 リオーズの前足で僕は口をそっと紡がれる。優しくも、しっかりと。
「少し声が大きいよ、ラザロ。こんな時こそ私の無意味じゃない鎮魂歌まがいの自作のお歌を聞いた方がいい。……ふふ、悪くはないだろ?」
 そう言うとリオーズは歌いだす。その言霊の一つ一つが慈悲深くも、何故か心地よく感じるこの調べ。そう、これが僕の気持ちをいつも落ち着かせる。
「相変わらず上手いね、歌」
 煽てているわけでも無く、自然にそういった感想が僕の口から漏れる。
「……惚れるなよ?」
「ま、まさか」
「あからさまな否定も堪えるな。ふふ」
 歌は、続く。
 この人なりの鎮魂歌の解釈と表現方法は僕は嫌いでは無い。いや、純粋に僕はこれを好きだと思う。長年連れ添って来た人なのでどうも主観的にしか判断ができないんだけど。
 絶対に、悪くは無い。
 現に僕の気持ちは、彼女の歌だけで無く――
「あー! こんなところにいたんだ、ラザロとリオーズ!」
 短調の調べに長調の調べが突然舞い込んできたような、と例えるのもどうか。
 リュフレの声はリオーズに負けず劣らず、高く良い声をしていると思う。そしてリュフレは何と言っても明るい。
「あーリュフレ、三日ぶりだね。召される日の間は接触を避けた方がいいって言った自分に、ちょっと後悔かな。君はいつ見ても可愛いし」
「はいはい。そんなこと言ってると、その内本当にそっち系((同姓愛者))だと思われちゃうよ?」
「別にいいけどね、リュフレお嬢様なら。そうそう、景色のいい所に三人で行こうかと丁度ラザロと悩んでたとこだったんだけど……肝心のラザロがねぇ。テンションガタ落ちだったから」
「! なっ」
 突然のリオーズの嘘。や、完全に嘘って訳でも無かったけども、その性分に慣れているとは言え僕は少々戸惑った。
「ラザロは考えすぎる癖があるからねー。けど、また歌ってたでしょリオーズ? ここ、集落のはじっこだけどさ、一応ここも村の中だし……」
「言いたいことは分かるよリュフレ。“ここじゃ歌うと不味い”だろ? ふふ、ラザロに似てきたんじゃないか? いや、君のお父さんにかも」
「……パパと私を一緒にしないで。大体、私はラザロとリオーズのためを思って」
「大丈夫だよ。今は私の鎌は穏やかだし。&ruby(おそれる){畏れる};ことは何も無い。そう、今は――」
 今は――
 その後に続く言葉があっただろう少々の間に、リオーズは笑いながら、今度は別の明るい歌を歌い始めた。ルンパッパ達が得意とするルンバだった。
 踊りが無いと少々浮く歌だけど、この人のアレンジは歌だけでもそれを至高の物に即興で仕上げるから、そのセンスは飛び抜けていると思わざるをやはり得ない。
 こんな閉鎖的な村から、僕がある程度大きくなったらリオーズはさっさと飛び出すものだと、僕は物心付いた時からずっと思っていた。
 何がリオーズをここに留まらせているのかは、今の僕には分からない。 
 神聖な土地だから? いや、場所には拘らない人だった。
 良い景色なんて他にいくらでも探せばあるだろうし、リオーズは既にそのいくつかをとうに知っていただろうし。
 じゃあ、何なのだろうか。
「シロガネから一歩。いやここは奥地だから、そうだな。二歩ぐらい外界に出れば、私以上に質の良い歌なんていくらでも聞けるんだけどな」
「そうできたとしても、私は嫌。歌なんて聞かないよっ」
 歌が止まったと思っていたら、少々険悪空気がいつの間にか、リオーズとリュフレの間を支配していた。
 訳も無いかもしれない。
 昨日は、悪人と称された人の“召された日”だったのだから。
 リュフレの父はここの族長を務めている。だから、リュフレは僕や特にリオーズから見ればまだまだ幼いけど、リュフレの場合幼い頃から“処刑時”は嫌と言う程目の当たりにして来た。けど彼女は石を投げない否定権と、投げないという揺るがない意志を、幼少期から一歩も族長達の前でも揺るがさず、今日まで貫いてきた堅い意志、強い心を持っていた。
 族長達はそれに大変手を焼いていたようだったが。
 僕と僕の母とよく仲良くしていたのも、内心では快く思っていなかったのだろう。
 そこにリオーズが風の如く現れて、僕とリュフレを虜にしたとなれば、尚の事。
 リオーズ自身はリュフレの事を、族長との関係を含めても大変評価し気に入っていて、歳の差や立場の違いからすれ違いは仕方無くも起こるけど、基本的にとても仲良くお互いやっているし、リオーズに限ってはリュフレを親友とまで言っている。リュフレも対して、一番集落で尊敬できる人と良く僕に話す。
 微笑ましい事だと思う。僕もそういう光景や想いを感じるのは好きだ。
 僕は掟の件で、両親と両目の視界を同時に亡くしてから、対人恐怖に似た症状を患い、現状友と今呼べるのは、この二人だけだった。
 いがみ合いや対立は、集落の裏側や知らない所だけで良かった。

   ◆

「? どうしたの、ラザロ?」
「放っておきなよ。また何か考えごとでもしてるんじゃないか? 一つ屋根を共にしてから、やましい事をするでもなく、全く困ったもんだよ」
「よ、余計なお世話だよ!」
 多少の“やましい事”((牡の性による、牡の性の為の、ナニカ))ぐらい……こんな二人に毎日の様に囲まれてれば、そりゃ僕だって――。
「知ったようにさぁ。リオーズより私の方が三年分くらいラザロとの付き合いは長いんだからね!」
「たった三年かー、ふふ。はいはいお嬢様、すみませんでした」
「もう、バカにして!」
「リオーズの悪い癖だから放っておくといいよ、リュフレ。今に始まったことじゃないんだから」
「ほー。若者同士の結束、いや堅い絆……これをテーマに今度歌ってみようかな。明日のおかず決定だな!」
『おかずって言うな!!』
 僕とリュフレがリオーズに同時に突っ込みを入れた後、そこには笑いの声が広がった。
 でも、何故だろう。
 明るく振舞っている様で、何か今日のリュフレはぎこちない気がした。それはリオーズにも当てはまる。
 詳しくは聞いてなかったが、なんでも召された人達の中に、リュフレの友達が居ただとか何とか。
 一家皆裁きを受けたと聞いてるから、やはり恐ろしく無慈悲な掟だと改めて思う。
 族長は他人の家族の他に、目を向けるべきところがあるだろうに。例えば、ここにこうして笑っている娘のリュフレに対して、とか。
 盲目的な感情は、自身よりも他人の身を滅ぼす。
 族長には早くそれに気づいて欲しいけど、もはや手遅れなのかも。それは純潔の悪タイプで唯一と言ってもいい、リオーズも言うんだからそうなのだろう。
 切なくも嘆かわしい事だな。
 ニンゲンと触れ合う事や、悪の血が流れている事の何が罪なのか――。結局は殺生を行っているこの掟は、矛盾に思う者は少なからず住民の中にも確実に少数でも居る筈なのに。
 多くに巻かれろ、ってことわざがある。きっとそれもあるんだろう。
 嫌な所だ、本当に。
 この二人が居なければ、それに目を冒されていなければ、とうに出ていた筈だっただろう、こんな集落。
 でもこの二人が居てこその過ぎゆく日常を何とか楽しく送れるのも確かで。
 投石だけは避けられない掟だし、一番の悩みの種だけれども。
 否定権を持っていない僕は、最近は仮病を使って投石の場から逃れていた。昨日も例に漏れずそうであった。
 ただ昨日、正確には今日召されるだろう家族は、ヨーギラスの家族だった筈だから――この場合だと“水責め”に代わるのか。……さぞ酷かっただろうに。
「気になるよ、やっぱり」
 思わず口に出してしまった言葉。誰に放った訳でも無い空気中にぽんと放たれたこの言葉は、確実にリオーズとリュフレには伝わってしまった大きさだっただろう。
 僕は目は見えなくとも気配や音でそれぐらいは察知できる。二人の会話も急に途切れたし。
「駄目だったよ」
 そのリュフレの一言で僕は理解した。リオーズは無言だったからおそらく知っていた、ってところだろう。
 二人とも水臭いというか、いらぬ気配りをまた。
「そっか。またこうやって罪の無い人が消されて逝くのか。馬鹿馬鹿しい。大体それに――」
 文字通り吐き捨てる様に僕はその台詞を途中まで述べた。
「ラザロ。その続きはここで発しないに越した事は無いよ。私はともかくね。誰がどこから覗いているか分かったもんじゃないだろ、この集落は」
 さっきまで歌ってた人が何を――。と思ったのも束の間。リオーズの気配が異様な程殺気立っている事に僕は気付く。
 リュフレはきょとんとした表情で、きっと顔を傾けたりしているんだろう。
「リオーズ? 急に……どうしたの?」
 リュフレは恐る恐るリオーズに尋ねている。
 けれど、リオーズはリュフレにも僕にも一向に反応しない。何かを探っている様に僕は感じた。
「鎌の様子がおかしい。……例の丘の上で、三人で昼寝しながら駄弁るのは、また今度にしようか」
 リオーズの特性の鎌の能力が、何かを感じ取る事にはもう見慣れ――感じ慣れている。
 僕も目を失ってからは気配の類に関しては敏感になったクチだ。けれど僕は今、特に何も感じてはいない。
 だからリオーズ一人が何を感じ取っているのかが、気になる。
「……そうだね。今日は辞めといた方がいいかも。私、帰るね」 
 リュフレの様子も微妙におかしい。
 特性の影響だろうか。リオーズの隣に居るだろうから、シンクロ((一部のポケモンが持つ特性の一つ。ゲーム内の能力とは少々異なる特徴をこの作品では持っている))して――いや、それもどうやら意味が無さそうだ。何かを知っていて、リオーズの反応を見てそれでその恐れが確信したかの様な。
 こういう時、目が見えないのが辛い。
「ラザロ、今日は家で静かに過ごそう。何、三人で駄弁るのはいつでもできるさ。……何だその顔は? こんな辛気臭いとこで話てるよりはいいだろ。お嬢様も帰るようだしね」
「何かあった、リオーズ? リュフレだって、さっきから何か変だよ?」
 リオーズからは読み取れないと察した僕は、家路につこうと先を歩いていたリュフレの隣に、僕はすかさず歩み寄った。
 特性のシンクロで、心を読み取るとまではいかないけれど、気持ちの波を感受するぐらいならできる為、それを歩きながらも行った。
「…………リュフレ?」
 読み取るまでも無い。体が、震えている。
 何かが絶対的におかしいのは間違い無かった。
 でも、何が――。
「――――頃合い、なのかな。ラザロ、私さ」
 リオーズが何か呟いたのを、僕は聞き逃さなかったが。それは途中でぷつりと途切れた。
「リオーズ? ――!!」
 視界は元々。
 聴覚と感覚が、両者一瞬にて遮断される。
 そして直後、超音波に似た不快感が鼓膜を襲い、そして暫くした後。
「! ラザロ、リオーズ! 逃げてぇ!!」
 今までに聞いた事の無かっただろうリュフレの異様な叫びが聞こえた後、禍々しい轟音が辺りに轟いた。その刹那。
 僕の側に居ただろうリュフレと、近くに居たはずのリオーズまでもが一瞬で消えた。気配すらも残さず、本当に一瞬にして。
「!」
 僕は思わず大きな跳躍を無反応で後方に取っていた。が、すぐにその行動を後悔した。
 僕は前方に飛び込むべきだったのだ。
「リュフレ……リオーズ? どこ、どこに行ったの! 何が起きたんだ!?」
 轟音も、不快な音も既に消えていた。まるであたかも存在しなかったかの様に。
 それ程今、辺りは静かで何の気配も感じられなかった。
 体に滲み出てくる冷や汗。徐々に脳内が自身に危険信号を送り始め、感覚が研ぎ澄まされると共に、焦りが生じる。
「何が、何が一体――」
 間髪入れず、次に大地震と思わせる巨大な揺れが辺り一面に起こった。轟音、大地震、砂煙。
 一人だったらすぐにこの場を離れただろう。雪崩の心配もある。
 轟音の正体は大量の土砂と落石の音だった。そして二人の気配が無い、とすれば。
 離れる訳にはいかなかった。
「リオーズ、リュフレ! 今助けるから!」
 恐れは不思議と無かった。
 ただ考える暇が一瞬でもあったなら、即行動に移すべきと、とにかくその四肢で土砂や落石を排除する事に無我夢中になった。
「っ!!」
 掻き出す為に前足に全身全霊の力を込める。
 頼りの自身の爪が、一枚二枚と徐々に剥けた。痛みは感じ無かった。それ程に僕は必死だった。
 僕自身はまだ余裕があり、ただそれよりも、早く二人の安否を確かめなければならなかった。
「お願い……返事を、気配を僕に感じさせて……」
 大きな声を出すべきなのに、何故か僕は声を殺しながら二人を呟くように呼んでいた。
 見えないその目で大粒の涙を零しながら、がむしゃらに辺りを掘り、その度に嗚咽が止まらなかった。
 とにかく、二人を失う事は許されなかった。
 それは、僕が僕であるのを失う事を意味していた。

 日が丁度雲に隠れて、辺りが薄暗くなった。
 雨はまだ、振らないで欲しかった。
 
 どうしてこんな事になってしまったんだろう――
 あぁ、神様。

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 怒りの日、その日は
 
 預言者達の預言のとおり
 
 世界が灰燼に帰す日です。
 
 審判者があらわれて
 
 すべてが厳しく裁かれるとき
   
 その恐ろしさはどれほどでしょうか。 

 2. ―怒りの日―
 
 偶然だったのか意図的だったのか。過ぎる余分な思いを掃き捨てながら、僕は足掻いていた。
「…………ズ」
 ?
 声が聞こえた気がした。もう僕の足先や尻尾は、屑の様になっていて、疲労と張り詰めていた精神からか限界が近かった。
 でも、幻聴なんかじゃ無いと信じて、僕はその声に望みを託した。
 足が使えないなら口があるじゃないか。短絡的な思考しかその時できなかった僕は、口から黒く濁ったエネルギー体を凝縮させた波導砲――いわゆるシャドーボールと呼ばれる大技を、地に放った。
「……」
 地表に放たれた後、響いた爆音後。声と思しき音は一切聞こえなくなった。
 しかし代わりに、近くの&ruby(あしもと){足下};に熱を帯びた生命体が触れるのを感じた。
 ポケモン!
 だとしたら――
「リオーズ! リュフレ!!」
 返事は無かった。土砂の厚さや自分の残った体力を一応考慮して放ったつもりだった。
 まさか、直撃したのか。いや、そんなはずは無い。
「生きてたら返事をして! お願い、だから……」
 足下に触れているだろうその熱は、まだ冷えてはいない。むしろ僕に触れてから温まっていく様にさえ感じた。
 見えない目で僕は最大限に自身の感覚を研ぎ澄ましながら、死んだ爪とボロ雑巾の様になった脚を使って、そこに存在する邪魔な障害物を取り除く事に今まで以上に必死になった。
 召される日を経験し掛けた時以来だったのかもしれない。ふと、僕の脳裏にそんな思いが交錯した。
 段々と地表に現れて来ただろう、そのポケモンの脚に僕は確実に触れていた事を確信した。
 体毛の感触、伝わってくる脈動と、そして匂い。
 それに長年共にしたから掴める勘。
 色は見えずとも、この脚の感覚からして――!
「リュフレ……リュフレなのか?! リュフレお願いだ! 生きていたら返事をして、頼むよ!!」
 興奮して、アドレナリンが支配するその疲れきった体が、瞬間嘘の様に軽くなり、そこに出ていた脚を慎重にかつ大胆に引っ張り上げる。
 小密度に口元で圧縮させたシャドーボールで、辺りの土砂と岩を吹き飛ばして、引き上げ易くしようと僕は咄嗟に行動を起こす。
 ある程度の手応えを、掴む。
 そして、意を決して。千切れんばかりに僕は勢い良くその脚を引っ張り上げた。
「リュフレ! あぁ……リュフレ……」
 土砂の匂いが邪魔をしながらも、抱きながら感じるリュフレから発せられているだろう匂い。
 それに重さや、言い表す事の出来ない確かな感覚。リュフレ意外に考えられない人がここに居た。――生きて。
 零れ落ちる涙を止める必要は無かった。
 多分、僕自身が記憶している範囲でここまで泣いたのは、視力を失う前に目の前で家族が村人達になぶり殺しにされた時以来かもしれなかった。
 今は何も僕は考えたく無かった。涙だけがそれを物語っていた。
 目の前で大切な人が死ぬのは、何であろうともう御免だった。
「…………オーズ。――が、と」
「無理にしゃべるな。あぁ、良かった……」
 ひとまず安心する。しかし、すぐそれが“ひとまず”と言う事に気付いた。
 忘れていた訳では無かった。余りにリュフレの無事が嬉しかったからだった。
 決して忘れた筈も無い。僕の命の恩人でもあり、何よりこの世界で今、僕のの一番掛けがえの無いだろう――
「リオーズ、は……」
 傷こそ浅かった。が、
 ――無理にしゃべならいで。 と僕が言い掛けたところで、僕はリュフレからの強烈な意志を感じ取った。
 何かを必死で伝えようとしてる意志。僕ととリュフレだからこそ通じる合う、僕達だけの特別なシンクロの類いの兆候。
「リオーズ、が、とっさに庇った、から。リオーズが、だから、リオーズは、もう――」
 そこで、リュフレの意識は途絶えた。念の為に心臓のある位置、彼女の胸元にラザロは耳をかざした。鼓動は正常と思われた。傷も再度確認したが、応急処置を施せば何とかなるレベルと思われた。
 思えばリュフレを救い上げた時、かすれた意識と声で呼んでいたのは、僕の名で無く何故か“リオーズ”だった。
「庇ったから? だからって、諦められる訳がないだろ!」
 残りの体力を全部使い果たしてでも。と改めて意気込んで、土砂から少し離れた茂みにリュフレを置いて、リオーズの救出を試みようとした。
 しかし現実は、無情に僕に慈悲の無い物を与えた。
 その作業を行ってから、わずか数十秒後の事だった。
「……鎌?」
 鎌だけが、鎌だけが僕の足下に転げ落ちた。
 それは何を意味するのか。鎌はリオーズの体の一部に等しい。ただ災いを感知するだけの道具じゃ無い。立派な体の組織の一部だ。
 アンサーを弾き出そうと、頭の中がフル回転している中で、一つの答えが脳裏に浮かび上がるのを僕は必死に抑えた。
「僕だって両目を失ってるじゃないか……でも今はこうして生きている。そうだ、まだ諦めたら駄目だ。リュフレは無事に助かったじゃないか。天がリオーズだけをこんな所で見放す訳がない……そうだろ? そうでもなきゃ、僕は――」
 首を真横に三度往復させた。
 少し目が回り、そこを両前足で顔を叩き払って、気を確かに持とうとした。心が折れない為にも。
「ん?」
 雨が振ってきそうな天気なのはさっきから感じていた。リオーズが助かって無い今、雨が振られると救出が困難になる。
 だが、懸念している余裕があるなら闇雲にでも掘り進めるべきだとラザロは思い行動に即写した。
 すぐに何か足に液体の様な物が確かに付くのを感じ取ったラザロは、電光石火の如くその正体を鼻で確かめてみた。
 それは。
 ただの水などでは、無かった。
「……血」
 はじめは少量だった。
 次第に鎌を引き摺り出したであろう箇所から、どんどん溢れ出てくる、その色は赤いであろう液体。
 それは止まる事なく、僕の両足を瞬く間に染め上げた。
 異常な程、リオーズの身の危険を感じた。
「リオーズ、ねぇリオーズ! 聞こえたら返事をしてよ、ねぇリオーズ!!」
 その怒声にも似た叫びは、虚しく空に響くだけだった。
 声で目を覚ましてしまったのだろうか、近くの草叢から見知った牝のイーブイが、僕に向かってヨロヨロと近づいて来るのが気配で分かった。
 ――駄目だこっちへ来たら。と声にはできなかった。
 赤で浸っていく両足からの生々しい臭いが、思考を段々と麻痺させて行き、もはや言葉を出すのも億劫だった。
「ラザ、ロ……その先は、もう、見ない方が――」
 牝のイーブイが何か語り掛けてくるのを、僕は他人事の様に感じていた。何も考えたく無かった。語り掛けるんじゃ、無い――。
 このイーブイ、土砂とイーブイ自身の匂いの他に、リオーズの匂いとその血の臭いも漂わせてる事に。今更ながら、僕は気付いた。
「そんなバカな! そんなこと――っ」
 でくの棒と化しつつあった脚全体を使って、付着する液体を省みず、付近を掘り進めると。ドロッとした感触と共に、今までに無い程の強烈な血の臭いが、一気にそこから湧き出した。
「――! ぅ、え……」
 そこに胃液を戻すのを必死になって抑えた。目が見えていたら確実に戻していたかもしれない。
 僕が振り返ると、いつの間にか側まで寄って来ていたリュフレが、近くの茂みで“戻している”のが分かった。
 それが分かる事が何を意味するか。
 僕にとって考えるまでも無いことだったし、考えたくも無かっただろう。
 濃い血の臭いに酔ってしまったのだろうか。いや、まさか。気分は余り悪いという訳でも無かったらしい。
 ――よく、わからない。
「ラザ、ロ……もう、もうリオーズは。ぅ、ぐっ」
 悲しいのか、込み上げてくるモノを抑えながら僕にそう必死になって伝えたのか。
 赤で染まっているだろう土砂の部分に、僕はリュフレの忠告を無視してそこに片足を突っ込んでみた。
 感触が余り無く、とにかくドロっとしていた。多分、この場で食事を取れと今誰かにあり得ないが状況だが、言われたとしたら。三日は何も口にできないと思う。
 そんな事をふと取り止めも無く考えてしまった。
 意味の無い事だった。
「……これは、脚……」
 何故こんなにも冷静に対応できるのだろうか。こういった性癖がある訳も無い。馬鹿馬鹿しい。
 力を抑えて両足で引っ張ったつもりが、どうやら彼女の脚の“どれかだけ”を引っ張り出してしまったらしい。この時点で僕は遂に軽く戻した。
 意味を考えず、取りあえず臭いを嗅いでみた。
 確かなリオーズの匂いと、生々しい血の臭いだけがした――。
「ぅ、え」
 リュフレの様に茂みで……なんて余裕も気力ももう僕には残っていなかった。それにもうそんな事はどうでも良かった。何かが、確実に終いえただろう事は感じ取れた。
 吐いた。ただただ吐いた。酸の味と血の臭いが、余計気分を悪くさせた。
 ただただ悪循環だった。
「ぅ、ぁあ」
 その場で胃液を戻しながら、嗚咽も同時に掃き出していた。
 力なく崩れた僕の体に、色々な物が付着し、そして彼女の半分はもうこの世界には無かった事を改めて知った。
 ――落ち着け。体の半分が無くったって! この人が死ぬわけが無い、この人が死ぬわけが無い、この人が、この人が、この人――が
 胃も脳内も涙腺も感覚も、総動員で暴走していた。
 リュフレが今どこに居るのか、それすらも知覚から失った。

&size(20){''『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!』''};
 
 ――。
 怒声を超越した、それはもう轟音に近い雄叫びだった。
 悲しみか怒りすらも知覚出来ない程、僕は混乱していた。
 ふと振り返ると、リュフレは視線をややリオーズで“あっただろう”人影から外し、その場に泣き崩れていた。
 僕ははその黒い体躯を、リオーズであっただろう者の臓物などで赤黒く染めながら、しかし我関せず天に向かって咆哮していた。
 
 止められる筈も無い。形すらも定かで無い長年連れ添った母代わりだった人。
 神はやっぱり居ないのか、天を仰ぎながら思った。
 
 次第にどこからともなく、僕の声に導かれたか死の臭いに気付いたか。
 亡骸を弄ぼうと狙っている集落の者では無い野生の鳥ポケモンがどこからともなく空を覆い尽くし、それからそう時間も経たずに、住民達が何事かとぞろぞろと集まって来たのは、シロガネ山に陽が落ちようとしていた刻だった。
 
 怒りと嘆きと悲しみだけが支配する、異様な光景だった。
 と、後に住民の一人から聞かされた。彼女を亡くした今、それはどうでもいい事だったが。
 
 
 神は存在するのかしないのか。それは召された者にしか分からない。
 救いは、無いんですか――。

----
 呪われた者たちが退けられ、
 
 激しい炎に飲みこまれる時、
 
 祝福された者たちとともに私をお呼びください。
 
 私は灰のように何処にも属さないその心で、
 
 ひざまずき、ひれ伏して懇願します。
 
 終末の時を、おはからいください。 

 3. ―呪われた者―

 あの後僕は、鬼の如く怒りに嘆き狂った赤い眼差しで、周囲の者を誰かれ構わず威嚇し、全てを微動だにさせない眼力を暫く放った後、見えない目でもその足取りは迷いを一切見せず、慰霊所((礼
拝堂も兼ねた、ここでは死者を埋葬し纏わる場所))と俗に呼ばれる場所へ彼女の小さくなった亡骸を連れて行き、事切れた様に深い眠りにその場で落ちたと、後にリュフレから聞かされた。
 住民から、視覚も資格も無い僕に、こぞって鎮魂歌を歌う事を懇願して来た事はあえてリュフレは僕に言わないでおいたらしいが、後にこれもすぐに僕の耳に入った。

「! リオーズ!」
 目が覚めた時の僕の開口一番は、リオーズだった。
「起きたの!? ラザロ! 私が分かる? 私が、」
 リュフレが心配そうに僕に連れ添う。丸一日近く目を覚まさなかっただとか。
「ぅ……! リオーズ!」
 僕が目覚めた時、リュフレの問い掛けと静止を振り払って、咄嗟に彼女の住処があっただろう場所の近くに単身足を踏み入れた、が。
 そこには何匹かのポケモンが黙々と復旧作業を行っているだけで、彼女の亡骸が今もある訳では無く、ただ彼女が眠りに付いただろうその場所で、僕は涙を流す訳でも無く、ただその場に呆然と立ちずさんでいた。
「……おぉラザロか。あの姉ちゃんなら慰霊所だろ? まだここに何か用か。何もありゃしないと思うぜ。あるとしたら、肉片の欠片だとかそんなもんだろ、どうせ。余りの酷さにゲロった奴もいたらしいが、全くここの治安部隊も、名ばかりの腰抜けだらけで笑わせてくれるよな」
 顔見知りの混血系悪タイプの年配の顔見知りが僕に、気を遣って語りかけてくれたのだろう。居た者が全員悪タイプだけなのに疑問を感じたが、すぐに僕はその意味を悟った。
「顔色が悪いな。こんな少数でこんな荒れちまった土地をまた直せなんて……族長もボケてるんだか元からキてるんだか、正気の沙汰じゃないのは確かだな。おまけに面子は全員悪タイプときた。……これが飲まずに行える仕事かってんだ。なぁラザロぉ」
 道理で酒臭いと思ったら酔っていたのか。でも今はそれよりも、まだこの場所で感傷に浸っていたい。この人は悪い人じゃない無いのは分かるけど。
 亡くなったのが実感として湧いてこないのが不思議だった。
「そうだ。これが土砂の中に落ちてたんだよラザロぉ。お前の慕ってた姉ちゃんの角じゃねぇのか? ……まったく惜しい人を亡くしたもんだぜ。あの姉ちゃんぐらしか直々にここの長老に面と向かって意見できるやつは近年いなかっただろうによぉ。どうしてこんなことになったんだかな。お前もつくづく運がないなぁ、えぇ? ラザロよぉ――」
 詳しく話を聞き続けると。皆、当時事故だと言っていたらしい。この人は違ったらしいが、遂に鎌が災を呼んだと言う者もいた。そしてその災が自分自身だけに降り注いで助かったとさえ言う者まで居る始末だった。
 同族でなければ、この地に彼女が眠った痕跡が無ければ、僕はきっと暴走したかもしれなかった。
 住民がその場に駆け付けてきた時も、遺体には誰も近付く様子は無く、皆呪いを恐れていた。
 だからこうして悪タイプのゴロツキばかりが作業をさせられている。日当((一日換算の給料))も対して出ずにも関わらず。
「運じゃ、ない。なんなんだこれは……腐ってやがる」
 亡骸が見えなかった事は、僕には幸いしたのかもしれなかった。
 あの後駆けつけてきだだろう村の住民たちの中には、その果てた亡骸に一撃を食らわす者まで居たと言う。
 彼女は何も悪い事はしていない。なのに、死んでからも仕打ちを受けるのは酷い。
 それが、この村の悪に対する盲目的な仕打ちや誤解。
 見えていたら、知覚が麻痺していなければ――僕はあの場で殺意に似た感情の暴走を止める事ができなかったのかもしれない。
 僕はリオーズの角――鎌の一部であっただろう物を受け取り、作業の邪魔にもなるということで、その足で今度は安置所へと向かった。
 何がきっかであれ、この部落では慰霊所へと遺体は収容される。運んだのが自分というのも今ではおぼろげな記憶となっていた。
 それ程にまで、当時のラザロの精神は限界を迎えていたという事でもあったのだが。
 
   ◆

 慰霊所へと僕が足を踏み入れてみると、そこには待ち構えたようにリュフレがいて、僕に体当たりを食らわして来た。
「勝手に飛び出して、このバカ! 心配するじゃない!」
「リュフレ、先に来ていたの――!」
 祈っていたのだろうか。その花束を投げ捨て、そして僕に抱きつくリュフレ。
 周りにリオーズを影で慕っていたのだろう何人かのポケモンがいたみたいだが、気不味くなったのだろう。空気を読んですごすごと皆その場を立ち去っていったのが分かった。
「リュ、リュフレ? 人がいたってのに急にどうしたの。しかもこんな所で……らしくないんじゃな――っ!」
 柔らかい物が、口を塞いだ。
 ただ、その感触は一瞬で終わり、後はラザロの胸元で一匹のイーブイが泣きじゃくっているだけだった。
「……とにかく、一旦外に出よう」
「ゴメンね、ゴメンね……私のせいで、私を庇ったからリオーズは!」
 リュフレの言わんとしていた事は、僕には大体分かっていたつもりだった。
 罪悪感に打ちひしがれるのも仕方無い。ただ、僕はリュフレを責めるつもりなど毛頭無かった。
 ――あれは事故だったんだから。そう、仕方のないことだったんだ。
「なんて、割り切れればいいのか? ちくしょう!! 何が神様だ! 何が掟だバカヤロウ!!」
 昨日あれ程泣いた記憶が蘇る。住民に恐怖心すら植え付けた。
 リオーズが居ない今、もう亡骸にも触れられない今。僕は自分には何も残っていないとさえ考えていた。
 目の前の無垢な牝のイーブイは、今の僕には見えていなかった。
「どうしてこうなった、どうして僕を残して死んだりした! 神は居るんじゃ無かったのか? なぁ、なぁ答えてくれよリオーズ! リオーズ!!」
 慰霊所に反響する僕の声が、虚しく響く。
 リュフレがそれに感応して、更に泣きじゃくる。僕はリュフレの手前、何とか流れ落ちそうになっていた涙を寸での所でせき止めていた。

 ――もう僕はこの土地には居られない。リュフレの事は気にかかるけど、でももう駄目だ。何もかも終わってしまった。リオーズに僕の想いを伝える事すらできなかった。ましてや命を救われた恩を返す事さえ。
明け方にでも、皆に黙って一人集落から離れよう。形見は手にしたんだ。今はもう、何も考えたくない。

 慰霊所に無造作に置かれていた、紐の様な何かを、その両足と口で器用に長さを整え、そして鎌の欠片をそこに結え、首に掛けた。
 その鎌は、一日たった今もくすむ気配を見せず、まるでリオーズと同じ体温を感じさせるかの様にほのかな熱を帯びていた。
「これでいい。今の僕にはこれだけあれば、それで、」
「私は嫌! それに私を一人にしないで! ラザロが、ラザロのことが、私はずっと前から――」
「……リュフレ?」
 リオーズの亡骸の前でもあったし、僕は正直困惑した。
 気持ちは素直に嬉しかった。受け止めてもいいとさえ思った。しかし、それではリオーズに顔向けができないのと、まだリオーズの死を受け止め切れて無いのに、時期尚早だと思ったからだった。
 昔から魅力的な子ではあった。リオーズと比較しても見劣りしない仔なのは確かだ。年齢も近いし、リュフレの方が僕にお似合いなんだと、よくリオーズに影でけしかけられていたっけ。
 思い出すと泣きそうになる。
 僕は本当は貴女のことが――。いや、やめよう。
 本当に不幸なのはこの仔かもしれないんだから。僕達に関わっていなければ、この仔はきっと別の幸せな人生が送れただろうし、リオーズが召された今、若い彼女はまだ別の道を歩む事は可能だった。
 それなのに、愛は人を盲目にさせるが故か運命だったのか。
 誰も居ない慰霊所で、リュフレは再度抵抗する僕の口元に、その柔らかい感触の魅力を植え付けた。
「……リュフレ」
 僕は困惑しながらも、次第にリュフレの想いにシンクロしていき、迷いながらもその口の中に、恐る恐るも滑らかな物をそこに滑りこませた。
 やけだったのかもしれない。
 こうすれば、一時的にもリオーズを忘れることができるから――
 互いに興奮する筈の行為だった。僕は残された理性とリオーズの記憶の面影を辿り、必死に反応しようとする部分を抑えた。
 なのに両者とも、涙を零しながら暫く絡み合って、その場を離れようとはしなかった。
 記憶しておきたいのに、忘れたい。
 僕達の根本の意図は違えど、その似通った想いはシンクロと口同士を通して、嫌応なく互いの身に流れ込んで来たのかもしれない。
 
 別の意味で繋がるには、流石にまだ僕達は拙かったし、それこそ時期尚早だと思い留まったが。

 ――。
「リオーズしか見ていないラザロなんて、私は嫌だよ……」
「リュフレ……」

 
 リオーズが召され、三日が経つのはあっと言う間だった。審判に掛けられた訳でも無いのに、鎮魂歌は三日誰かが歌わなければならない。
 それを任され、自らも快く引き受けたのが僕だった。
 
 僕は何を想って、そして何の為に歌を歌い続けるのか。
 三日目が終わり、明け方を迎える頃。僕とリュフレの四日目が始まり、そして“涙の日”が幕を開ける事となる。

 そんな予感が、したんだ――。

----
 思い出してください、
  
 あなたの来臨は私たちのためであるということを
    
 その日に私を滅ぼさないでください。
 
  
 私を探してあなたは疲れ、腰をおろされた
  
 十字架を堪え忍び、救いをもたらされた
  
 これほどの苦しみが無駄になりませんように。
 
  
 裁きをもたらす正しき審判者
  
 裁きの日の前に
   
 ゆるしの恩寵をお与えください。
 
 
 私は罪人のように嘆き
  
 ただ罪を恥じず、己の進むべき道を進むであろう
  
 神よ、許しを請う者に慈悲をお与えください。
  
  
 私にも希望を。
 
  
 私の祈りは価値のないものですが、
  
 優しく寛大にしてください。
  
 私が永遠の炎に焼かれないように。
 
  
 私に羊の群れの中に席を与えるのは拒みます。
  
 代わりに 牡山羊から遠ざけ
  
 あなたの右側においてください

----
 涙の日、その日は
  
 罪ある者が裁きを受けるために
  
 灰の中からよみがえる日です。
 
 
 神よ、この者をお許しください。
 
 慈悲深き主よ
 
 彼らに安息をお与えください。 

 4. ―涙の日―

 歌に溺れている時だけは、無心になれたのかもしれない。
 神はもはや信じていないのにも関わらず、鎮魂歌を歌う僕の存在定義って、一体なんなのだろうか。
 それでも無に帰したリオーズの魂がここに静まらんことを願って。
 
 僕は、歌い続ける――。

 声が、聴こえた気がした。  
「水、持ってきたからそれぐらいはちゃんと飲んでね。夜中まで身が持たないよ?」
 リュフレ、だった。身も心も削れて、飢えた体が一瞬水よりも彼女を欲しようとしたのを、慌てて僕は押し殺す。
「あ、あぁ。ありがとうリュフレ。でも君がこんなところへやって来てていいのか? 君のお父さんは快く思わないだろうし、それに僕はどうせもう明日でお払い箱に――」
「そんなこと考えなくていいよ。リオーズのために祈ってあげるのは悪じゃないんだから。ラザロの世話も好きでやってるんだし」
 リュフレはこれ以上巻き込みたく無かった。おそらく僕の哀しみだけで無く、リオーズに対する秘めた想いだったり、今日が終わったら何を成そうとしているのかも予測済みなのかもしれない。
 そんな表情が、浮かんでいる。だからこの三日間リオーズの事や僕への感情を除いても、余計に気に掛けているのかもしれない。
 考えすぎでは無いと思う。
 僕よりも一回り程小さな体で、よくやってくれる。昔から今日まで。
 リオーズと涙の日が、過去に僕に与えられていなければ、僕は自然とこの子を好きになっていただろう。それだけの魅力を充分に秘めている仔だった。
 それは、認める。
 それ故にもう巻き込めないのもまた確かで。
「嬉しいけど……巻き込みたくないな、正直。取り返しの付かない事になる前に、やっぱり君はもうこれを機に僕から離れた方が……」
 まだ僕は本当の悪じゃ無い。僕自身はそれを信じて疑わない。ただこの哀しい三日が過ぎ、そして明くる日の四日目には――。
 僕は本当の“悪”になろうとしているのだから。
 リュフレには命を一度救われている。土砂から救った事もあったがあれはリオーズが庇ってこそ、だ。僕の成果でも何でも無い。
 それだけで充分だった。君には未来がある。僕には過去しか無い。
 その違いは儚くも大きいのが事実であって現実だ。
「まだそんな事言ってるんだね。水臭いよ、ラザロ。私じゃ物足りない? とにかくラザロは寝ないで三日間歌ってたんだから、ちょっとぐらい私にも手伝わせて。……少し休んでなよ」
 リュフレのソプラノが、慰霊所に響き渡る。その声は美しくも儚い。哀しみを物語、死者の安楽を約束する調べ。
 つられて僕も少し口ずさもうとしたが、リュフレに言われた通り少し体を休める事にしようと思った。
 三日も飲まず食わずで更に一睡もしてないとなると、さすがに身に応える。初日は僕が目覚めるのが遅かったのもあって、実質丸二日間が、歌っていた期間だったが。
 それにしても三日前の様に、リュフレに強引さは無かった。でも、何故かそれが口惜しかった気がしたのは何故だろう。
 それこそ考えても仕方の無い事かもしれない。……少し英気を養う必要が僕にはある。
「……日が完全に暮れたら、また僕を起こして。必ずだよ? 食べ物は流石にここでは取る気がしないから、水だけありがたく貰っておくよ……それじゃ、頼むね」

 リュフレから受け取った飲み物を飲んだ後、僕の意識は疲労からか――。一瞬にして、落ちた。

   ◆

 私はラザロの元に駆け寄り、その状態を静かに慎重に確認をする。
「良かった。ちゃんと眠ってる……」
 こうでもしないと、ラザロはちゃんと寝てくれないと思ったし、ラザロの考えてる事は何となく予想が付いたから仕方無くこうした。
 彼を眠らせたのには三つわけがある。
 一つは純粋に彼の手伝いをしたかったから。そのやり方は少々荒かったのかもしれないけど。歌を歌うことは私にもできるし、それを理由にここに何度も足を運ぶ事が実際できた。
 パパは表向き理解してくれてたようだったけど、私にはそれが偽善に見えて仕方が無かった。父は、そういう人だ。
 母はどっちつかずな人だけど、ママの助言が無ければここにラザロと二人っきりで祈る事は、最終的には絶対許されなかったと思ってる。
 二つ目は、ラザロの身の確保。
 私は昨晩、パパ達が計画している“審判”((この集落では処刑を意味する))の過程を全部聞いてしまった。
 パパ直々に動くらしいけど、掟を集落の中で、しかも神聖な慰霊所で破るとは絶対に思えない。ボロは絶対に出さない、娘だから分かる、悲しいけどそんな人だから――。
 掟には正当防衛は含まれていないと記されてる。そこにパパは必ず漬け込んでくるはずだと思った。いや、絶対にそうに違いない。だってこの耳で確かに聞いたんだから。
 信じたくは無かったけど――。でもこれが確かならリオーズの突然の死や、ラザロの復讐心を利用して、集落に邪魔な者を短期間で一気に足も付かずに殺す事ができるのには納得がいくし、全てが繋がる。
 全ては仕組まれていたことだった――。
 感覚が遮断されたのはあの時良く分からなかったけど、あれは念((エスパーまたはPSI系統の技の総称))の類。次に確かなのは、あの聞き覚えのある超音波。あれはパパの側近の人が使うそれに良く似ていた。
 審判時に、余りに対象の罪人((悪と称され、大衆から投石を受ける身の者))が騒がしい時に黙らせる一つの手段。私はそれを間近で良く見てきたから、間違い無い。
 土砂、落石、砂塵、大地震。
 確かな証拠は確かに無い。でも、羅列すると順番がおかしい事に気付く。
 だって普通は地震が起きてから、続けて災害が起こるもの。なのに、なんで要の地震が最後にきたのか。
 ここからは私自身の憶測も入るだろうけど、土砂はきっとパパの念によるもの。落石は岩ポケモンの岩雪崩。じゃなかったらああも狙って、三人が一気に巻き込まれるはずもないし、大体決定的におかしい事がある。
 それは地震。あれだけの揺れを感じながら、その被害はリオーズの家の周りに留まるばかりだった。これが、何を意味するのか? そんなの私にだって分かる。
 これは天災でも神の裁きでも無い、パパを中心に仕組まれた孔明の罠だった。
 あの時、リオーズが何かを感じ取っていたのに、嫌に不安を感じたけど、その感覚は間違っていなかった。ラザロは気づかなかったけど、いつも接してるから分かるだろう、匂い。
 そう、あの事件の直前、風上から極薄い匂いだったけど、確かにパパの匂いがした。ラザロは私のパパとほとんど会ったことが無いから気付かなかったんだろうけど――
 リオーズは特性でも勘でも匂いでも、絶対に私のパパの気配には気付いていたはず。
 だからって、それなのに私を庇って死んじゃうなんて。
 ……。
 でも、今度は私がラザロを庇う番。ここでラザロが寝ていれば、すぐにはパパ達も手は出せないはず。
 ラザロを襲ってくるのは間違い無い。影から襲い、そこにラザロが応戦したところで、簡単に死者を出す。手始めはこう。
 騒ぎをわざと大きくして、ラザロの集落から逃れられない様にした後、正当防衛と名付けてラザロを大衆の前で公然と処刑する。
 もちろん大衆の前には、パパは姿を見せない。死体は当然、不要の純潔の悪タイプの犠牲者だろう人。
 家族を人質に取っただとか。――完全に、もう親とは思えない。
 リオーズの時だって、私が居るのが分かってて、巻き込まれる恐れがあるのを充分理解した上で躊躇なく決行した。
 私も、なんだかんだ言って捨駒に過ぎなかったのかな。親子の縁って、こんなにまで実際は脆いものなのかな。
「ぅ……」
 大声で泣きたいけど、今はラザロをそっと寝かせといてあげたいし、騒ぎになったら事だし。
 慰霊所は閉ざされた空間だけど、もうそろそろ付かず離れずの距離を保って、ラザロの動向を見張っている人達は居るはず。
「泣くのは我慢しなきゃ……でも」
 
 三つ目。
 それは、日付が変わるまでの残り数時間。
 この閉ざされた二人だけの空間で、リオーズには申し訳ないけど、でも。
 
 私は、ラザロと――――

 ――。

 ――。

 ――。

 ――。

 ――。

 ――。

   ◆

「ん……今、何時リュフレ? ――!」
 僕が目覚めた時、リュフレは僕の右隣で、寝息を立てて横たわっていた。
 時計に目をやると、時間は23時30分を過ぎた辺りだった。
「ちょ、リュフレ……。何やってんだよ、疲れて寝ちゃったのか? もう少しで日付が変わるとこだったし、それに僕だって熟睡したつもりは無かったんだけど……よっぽど疲れてたんだろうか。何にしても危なかったんだからね」
 日付を過ぎたら元も子も無い。やっぱり僕が責任を持って一人で歌うべきだったか?
 でも限界が来たからここまで爆睡してしまったんだろうし、リュフレをこれは責めたいところだろうけど、リュフレも寝てしまってるって事は、よっぽど根詰めてたって事の証なんだろう。
 危なかったけど。
 ――危ない、と言えば。
 さっきから無性に体の一部がムズムズする。スリット((主なポケモンの、性器を収納する場所))からだらしなく、空気の読めない愚息が少々湿って垂れ下がっているし。
 何で、湿っているんだろうか。まさかお漏らしなんてする年齢じゃないだろうし、ご無沙汰してたとは言え、理性はちゃんと残っているし。
 それにどんな状況下でも、コントロールできなくなる程飢えても無い。また発情期で盛り狂った愚者でも無い。
 場所が大体場所だろうに。リオーズの亡骸の前で、とにかく歌を止めて寝転がって醜態を晒してしまった事は申し訳ないと思う。
 しかし寝てる間に何かあったんだろうか? やけに目覚めが良いのと、後腰から下にかけた部分の寝る前には無かった筈の疲労が気に掛かるけど。
 まぁ考えても仕方が無いんだろうか。全体的に疲れは不思議な程見違える様に取れてはいるし、これなら夜明けを迎える前に充分体を駆使する事は――。

 残り三十分足らずとは言え、文字通り最後になるであろう鎮魂歌。貴女の為に、身を尽くして歌わなければ。

「むにゅ……ふぁ、うーん。! って、今何時ぃ!?」
 気を取り直して歌を歌い掛けた所で、場違いなすっとんきょうな声が、慰霊所に響き渡る。
 リュフレが、ご起床のようだった。
「全く……。しばらくしたら起こしてって言っといたよね? 怒るつもりは無いけど、流石に僕でもこれは呆れる、よ――」
 何故か気まずそうな気配をリュフレは漂わせて、僕の方を向こうとしない素振りをしている様に感じた。
 反省しているからか、いや何か違う。
 何かをこう――恥ずかしがっている様な?
 何を、今更。
「リュフレ! 人が亡くなったんだぞ? 真面目にやってくれよ! 全く」
「ん、いや、うん。ゴメンなさい……」
 何か隠している。でも、もういい。
 日付が変わってからの、自分の計画に狂いが無ければそれで。
「……歌うから。リュフレはそろそろ家に帰った方がいいんじゃない? …………また明日会おう」
「嫌。逝かせないから。今度は私が庇う番だよ、ラザロ」
 リュフレが僕にはっきりとした口調で答える。
「私が盾になるから、一緒に逃げよう。ね?」
 僕の考えをシンクロで? いや、そんな馬鹿な。リュフレはそこまで勘の良い仔じゃないと思っていたけど、でも。
 バレてるのは事実。それに盾にすると言っても、もはやこれは僕のエゴだし、それに。
「気持ちは嬉しいけど、僕は君を守り抜ける自信も無いし、君は仮にも族長の娘であって……ここで縁を切った方が」
「抱きしめて、もっと強く……」
 僕はリオーズの亡骸の前で不謹慎だと思いながらも、どうしてもリオーズとは違った魅力を放つこの仔を無視する事は不可能だなと本能で思いながら、寄せられた顔を軽く舐めまわしてそして強く前足でその体を打き寄せた。
「……痛くない?」
「うん。ごめん、ね」
 リオーズと二人屋根の下で過ごした時も、こんな事は今まで一度も無かった。そうだ。リオーズの亡骸の前だっていうのに、なんだってこんな。
 でも、黒くて短毛な僕にとって彼女のもふもふした長毛は、心地よく温かい物であった事は確かだった。
 それにさっき起きてからというもの、この仔が今まで以上に愛くるしく感じて仕方が無いのも事実。何故だかは分からないけど。
 思えばリオーズに対する想いは憧れだったのかもしれない。それは広い外界への憧れにも等しい様な感覚。
 僕はこのシロガネしか知らない。それはリュフレもそうだし、それに族長を始めここの住民の多くがそうだと思う。
 でも多少なりとも、もっと長い時を一緒に過ごせたなら、その想いは、きっと膨らんでそして――。
「好きだったのかも、僕は彼女を」
 僕は惑わされつつある心の中に秘めた本音の一欠片を、思い切ってリュフレにぶつけてみた。
「……リオーズを? 違うよ」
 リュフレは驚く事も無く、そう「当たり前だよ」と言わんばかりに答える。
「「好きになってた」んだよ。もちろん向こうも。リオーズが前に私に話したもん。ラザロのこと好きなこととか。ふふ、なんでだろうね……私、リオーズの事嫌いじゃないのに、心のどこかでは「リオーズが居なければ、ラザロが」って心のどこかでいつも思ってたのに――ぅぅ」
 咳を切ったように泣きじゃくり始めるリュフレに対するこの気持ちは同情なんだろうか。
 僕は鈍かったのかもしれない、それでもリオーズからの想いぐらいは薄々気付いていた。でも、でも僕は純潔の悪児としてのレッテルから始まり、この村では確実に忌み嫌われている側の存在だ。
 リオーズと比較するとまだ色々な意味でマシだったのかもしれない。当の死者を前にしておきながら言い方が悪いかもしれないけど、でもあの時偶然の様に一見起こった事件で僕が死ななかったのは、単に偶然じゃ無く、僕は生かされたんだと思ってる。
 神じゃ無い。そんなものは存在しない。別の何かの正義では無い、分からない“何か”に。とにかく今は僕は生かされている。
 こうしてリュフレと居られるのもその賜物だと考えると、余計に何だか悲しくなってくると共に、予想の付く裏の大きな存在に、僕の闇に染まった赤い眼が、鈍い光を纏った様に感じた。殺意の色。赤。
 でも、リオーズはそんな事を望んで居ないんじゃないだろうか。神は信じていなくとも、天国は僕は信じる。
 だからリオーズが天国まで逝った今、そこで彼女を苦しめたくは無い思いがあった。
「じゃあ、僕はどうすればいい……」
 復讐も逃げる事も、数十分後からは保証が持てない。
 怒りや哀しみが、徐々に焦りに変わる。
 まだ歌っていなければ本来ならない鎮魂歌にも支障がこのままだと出るし、何より、もし誰かに仕草を下手に悟られたりでもしたら――。
「逃げよう、ラザロ」
「!」
 リュフレの唐突な一言。
 突拍子も無い意見だと思った。誰かの入れ知恵じゃ、とまで一瞬思った。シンクロにしてもでき過ぎているとさえ思った。
 だけど、もうそれしか道は無いのかもしれない。争いは無駄な血も流れ、ここの秩序が悪い方向に代わりでもしたら、僕はあの世で彼女に顔向けができない。
「でもリュフレ。君のお父さんはここの――」
「私もここの掟にはウンザリだし、それにあの土砂崩れ……私は人為的だと思ってる。それにこれから――」
 リュフレは僕が思っていたよりも冴えていた、と言うより詳しく話から真相を聞いていくと、全てがこれで繋がった気がした――。
 同時に計り知れない、族長とそれに関係したポケモンへ対する殺意が目覚めたが。リュフレの手前何とかそれを押し殺して詳しく話を聴き続けた。
 地震に関しては僕もずっと引っ掛かっていたいた事だった。
 後は勘で、人為的な線もここに篭ってから拭いきれないでいたが、いやまさか本当にそうだとは。
 今目の前に族長が現れたら、僕はリュフレを前にして居たとしても、血の争いを望んだかもしれない。
 でも、よくよく考えるとそれは犬死にで、こうまでして語ったり、充分理解しながら既に自らも危険を冒しているリュフレに申し訳が立たないと思い、それは留めた。
 正直、辛いのが本音だが。
「……分かった。よく、分かった。でも逃げるにしても、僕は君を置いて行きたい。僕から遠ざかるのはまだ遅くは無いと思う。僕は元々日付を過ぎたらひっそりとこの集落を抜け出すつもりだった。深夜の警備は薄いからね。族長を殺す事も考えたけど、その話を聞いて犬死にするだろう事は分かったし、それに仮にも君の親だ。多分、僕は差し迫っても結局何もできないと思う……」
 
 ――。

 沈黙が、慰霊所を支配する。
 
 ふと時計に目をやると、僕達に残された時間は後僅かだった。

「私は私の意志で行動する。ラザロが何を言ってももう決心した。もし、もし仮に私が足手まといになるようなら、その時は……」
「……その時、は?」
「殺して」

 
 慰霊所の時計の針が、午前零時を丁度差した時だった――。

----
 天使があなたを楽園へと導きますように。
    
 楽園についたあなたを、天使たちが出迎え、
    
 聖なる地へと導きますように。
   
 天使たちの合唱があなたを出迎え、
   
 かつての友とともに、
    
 永遠の安息を得られますように。 

 5. ―楽園へ―

 迷いを断ち切る、慰霊所だけに鳴り響く午前零時を差す鐘の音。
 もう僕達に残された安楽の時は終わりを告げた。
 哀しくも辛くとも、ここから僕達の僕達による僕達だけの為の逃避行が始まる――。
「歌は終わったかーラザロ。一度顔を見せなさい」
 慰霊所を司るポケモンらしき人からの突然の声に、僕とリュフレは揃って体をビクつかせる。
「……思ったより早いね」
「偶然かもしれない。ただ罠だとしたら、外に出た瞬間に僕はアウトだ。ここは様子を見て」
 震え掛ける前足を、一歩一歩踏み出し、慰霊所の扉鍵は敢えて開けずに、扉越しに司祭者に返事を送る。
「すみません……体力が限界で……。明朝必ず顔を出しますので、少しここで寝かせて貰えませんか?」
「しかしそれならば、自分の家で寝ればいいのでは?」
「例の事件は知っていますよね? ……僕には今家が無いのです。なにとぞ、この惨めな僕に哀れみと少しばかりのご慈悲を……」
「……むぅ。仕方無い。ただし、明朝また顔を出すから、それまでには英気を養っておけ。食料はここに置いていくぞ」
 司祭者がその場を離れる気配を感じ取ってから、僕は緊張の余り初めて人前で腰を抜かした。
「だ、大丈夫ラザロ?」
「あぁ、賭けだったよ。族長の息が掛かってたら無理にでもここをこじ開けて入ってきただろうし、それに食料まで用意してくれた。これは機会に恵まれてる。早速外の――」
「待って!」
 鍵を開けて外に出ようとした僕を、リュフレの鋭い声で静止を図られる。
「慎重に越したことは無いと思うよ、ラザロ。外に出たら、いきなり誰かに襲われるかもしれないし、食べ物だって欲しいけど、下手に手を付けない方が」
 一理あると思った。四日目になった今、計画はもはや実行に移されていても大げさじゃ無い。
 食料は手元に無いけど、リオーズの供え物から日持ちの良さそうな物を拝借してもバチは当らないだろう。その数はとても少ない物だったが。
 リオーズなら、許してくれる筈。その代わり他のポケモンの供え物には一切手を出さない。
「そうだ。リオーズもこれを……」
 僕は首にぶら下げていた、リオーズの形見の代わりにしていた鎌の欠片を、更に半分に牙で砕き、その残った半分をまた紐で結わえ直して、今度はリュフレの首に掛けてやった。
「お揃いのお守りだ。これでリオーズが僕らを守ってくれるよ、きっとね」
「うん!」

 時間は一応稼いだとはいえ、それが確実な保証は無い。
 明け方まで待つつもりだったけど、深夜に司祭が来ることなんて珍しい事だし偶然と思えるべき事は、教訓から今後怪しむべきだ。
 
 抜け出すなら、今しか無い――!

「リュフレ。ここって裏口とかあったっけ?」
「うん、確か祭壇の奥に小さな抜け道があったはず。そこから出た方がいいよ、きっと」

 リュフレが先陣を切って駆け抜ける。僕はその後を追いながら、一度リオーズの亡骸が葬られてる場所の前で止まり、一瞬祈りを改めて捧げた。
『僕らを、楽園へ』
 裏口の出口付近でリュフレに追いついた僕は、いつもより人の気配が多い夜道を、裏通りを選んで進み、集落にいくつかある出入口の一番警備が薄いだろう所に辿り着いた。
 道中勘や気配、匂いだけでは心許ないので、リュフレの目も最大限に駆使して慎重にかつ大胆に歩を進めてきたつもりだった。
 そしてそれは決して間違いでは無かったし、謝りも無かった思う。
 いつもどの出入口にも最低警備が二人以上はいるのだが、この出入口はシロガネ山の山頂を最短で目指すのに一番短い距離で行けるルートでもある代わりに、その道は大変険しく、ましてや夜中に登

る無謀な者は居ないと踏んでか、一人居る警備も居眠りを通り越して、完全にいびきをかきながら眠りこけているらしく、意外にも脱出は思いの外、一番要の部分で手間どらずに済んだ。
「警備が無能……あながち間違ってもないかもな。こんな時だからこそありがたく思えるんだろうけどさ」
「この時間に山頂に登る人なんて居ないだろうしね。いくら夜行性の人でも。これならふもとを迂回するルートで脱出を試みても良かったかもね」
「リュフレが慎重に、って言って置いて今更それはないでしょ。リスクは低いに越したことは無いし、族長の計画のほとんどは盗み聞きできたんでしょ? だったらここから行くのがベスト、いや運命なんだよ」
 長々と話していたらまた何が突然起こるか分からない。僕はリュフレも連れている今、誘拐罪で捕らえられてもおかしく無い状況にある。
 リュフレはそれを望んだからといって、族長を始め、皆が聞き入れるはずも無く、僕は審判にかけられるだろう。
 無駄話はこれまでだ。リュフレの亡骸にはもう二度と会えないだろうけど、今は僕らにはお揃いの形見がある。
 これを一生肌身離さず持って、僕は彼女を永遠に忘れる事なく、このリュフレと共に生きる決心はできている。
 後は。
 進むだけだ――

   ◆

 山頂までの険しい道のり。話には聞いていたがこれ程までとは思わなかった。甘く見ていた。
 今頃、ふもとの集落では騒ぎになっているかもしれない。まだ日の出には時間があるが。
 しかし、ふもとと違ってシロガネ山脈の深夜の寒さがここまでとは思わなかった。
 春先で、少しはマシだと思っていたのは完全に誤算だったらしい。
 歩を進めて、意識をしっかり保とうと神経を張り詰めさせていないと、一気に眠気が襲ってきてそのまま亡き人になり兼ねない程の過酷さだった。
 降りしきる雪は、まるで吹雪の有様で。
 こんなんで体力が持つのだろうか――。心無しか、リュフレの口数が急激に減ったように思える。
「リュフレ、大丈夫か? 寒かったら、もっと近くに寄りなよ。少しはマシになるだろうからさ」
「うん……ありがと……」
 発せられる声に力が余り感じられない様に思えた。
 いくら最短ルートとは言っても、シロガネの山を越えるには一筋なわじゃ行かない。
 フラッシュが使えれば洞窟からのルートに変更もできるが、生憎僕達はそんな技を持ち合わせてはいないし、洞窟内のどの集落にも属さない真性の野生ポケモンは、ジョウト地方でも際立って凶暴だと聞く。
 いつも迂回ルートで、平穏な所にしかリオーズと三人で登ったことしか無かった僕らには、余計な戦闘は体力の温存の為にも極力省きたかった。
 相手の強さが未知数なのも、不安要素の一つだ。
 それにリュフレを戦力として数えていいものかどうか……せいぜいイーブイの技で期待できるのは手助けによる援護ぐらいか?
 追っ手が万が一来た時の対処も考えてないと――。
「ラザロ……眠い、よ」
「駄目だ! こんなところで寝たら死んじゃうぞ! 元も子も無くすだろそんなんじゃ! リオーズの意志はどうなる? 僕達の未来は? 生き抜かなきゃいけないんだろ? 山頂まで一気に行こう」
 とは行ったものの、足下は深く雪が積もっていて走る事もままならないし、寒さに慣れているとはいってもこの環境を気合だけで乗り切るには少々無理があるのは一目瞭然だった。
「……少し休もうか?」
「平気……頑張るから、私」
 比較的安全そうな洞窟を選んで、奥までは入らずに、取り敢えず吹雪を凌ぐ事を先決に、少々歩を休めてしばしの休息を取る事にした。

「大丈夫か……リュフレ。君だけ下山する分には、まだ間に合うかもしれな――」
「や、だよそんなの……私は決意したんだから。例え途中で倒れる事になっても、それは運命だって割りきってみせるから……」
「死んだら終わりなんじゃないのかな。僕は君まで失う事になったら、それこそ逃げている意味も生きる意味も、」
 リュフレが、僕に擦り寄りながらこう甘く囁く。
「だったら私を、温めてよラザロ……」
 発情期の牝の様に迫ってくるリュフレを、押し倒してもここなら誰もいないし――。
 ってそういう問題じゃ無い。今はまだ早いし、体力は蓄えておかないと。
「温めるだけだよ、続きは生きて下山できたらね」
「ん……」
 僕は舌を使って、凍えている彼女の体を舐めまわした。それぐらいで温かくなるならもうけ物だが、何もしないよりはマシだと思った。
 時々くすぐったそうに、身をよじらせるリュフレが、愛しかった。
「ダメだって、そこは……もぅ」
「温めて、って言ったのは自分なんだから、全く……」
 ここにリオーズがいればどんなに心強かった事か。
 リュフレには悪いけど、その似た体毛の感触が僕の思考を少しだけ狂わせる。
「ぁ……そこはダメだって、ラザロっ」
「大げさだよ。あんまり大きな声も出さないっ。遊びじゃないんだからな」
 あらかた舐め終えると、僕は壁にもたれ掛かって今後の行動を綿密に練ろうとした。
 リュフレは少し元気が戻った様だった。
「ラザロ」
「ん? どうしたの」
「……ちょっと、外の様子、見てきていい?」
「一人で行くの?! 危ないよ、なんなら僕も付いて行くから!」
「え、いや。一人で大丈夫だから……」
「どうしたんだよ、急に」
「三分で戻ってくる!ん、ちょ……ちょっとだけ待っててお願い!」
 何か切迫した様子だったけど、何かを感じとったのだろうか?
 表情が見えないと、こういう時分かりづらいから困る。
 追うべきか、ここで待っているべきか――。
 ……。
 追うべき、だろう。何か一人で役に立とうと空回りしてるのかもしれないし。何より、何かあったら事だ。

 外に出てみると、吹雪はさっきよりもだいぶおさまっていて、辺りは白銀の静寂なる世界――。という感じを受けた。
 白銀かどうかは実際に目で見ないと分からないものだし、今は深夜だから真っ暗なんだろうけど。雪はこの目で幼い時に見た記憶があるから。
 辺りが雪しかない為、匂いが辿りやすいのと吹雪が無いと静かな分、追うのは容易だった。
 そう遠くへは行ってない。
「リュフレ、何してるんだよ」
 少し大きな声で呼び掛けて見た。
 気配は確かにするのだけれど、反応が無い。
「お、おい! リュフレ、まさか――」
 寒さと疲れで倒れているのかと思った。実際彼女はうずくまっている体勢をとっていたみたいで、すぐに動こうとはしなかったから。
「え、ラザロ?! ちょ、だ、ダメ! 今来たらダメぇぇ!!」
 耳をつんざく様な大きな声。
 理由は鼻を効かしたら、すぐにわかったけども――


 ――――しゃ~


 それしてもこの緊張感の無さには呆れるというか、まぁ自然の摂理だし、牝の仔だからしょうが無いとは言っても。
 ふぅ、何と言っていいものやら。
 気が抜ける。
「よ、用が無いならもうちょっと離れたとこにいてよ! もぅ。覗き魔!」
「な、心配して追ってきたんだろ。それに僕は覗くことはできないっての。大体逃避行の最中だってのに……もう少し緊張感というか、それにさっきみたいなああいった大声は、もし誰かに気付かれたら――っ!」
 何か今、気配がしたような……。
「ふぅー。……も、もう。全部出し切れなかったじゃないバカ! ――? なんで急に黙ってるの?」
 気のせいだったんだろうか?
 追っ手ならすぐ襲ってくるだろうし、それにリュフレは気付いていない。
 それに追っ手にしたって、僕らに追いつくにはいささか早すぎる。僕達の逃げ足は今の所完璧な筈だ。
 この、ちょっと間の抜けるアクシデントを除けば。
「ラザロ、どうしたのよ。あ、もしかしてラザロももよおしちゃったとか?」
「馬鹿! そんな事言ってると先行くよ」
「待ってて。って言ったのに、追ってくるからじゃないー」

 僕は少し不安な面持ちになりながらも、迷いを消す為にその歩みの速度を早める事にした。
「ちょ、早いよラザロー!」

   ◆

 頂上まで後少しというところまで来た。急いだかいが合ってか、日の出には間に合いそうだった。
 間に合ったところでご褒美も何もないが、登頂まで登れば、そこからの道のりは長いとはいえ、険しさはだいぶ軽減する。
 昔、リオーズが読んでくれたニンゲンの本で、逃避行をした二人のポケモンが登頂をしたらお花畑が見える――などといった妄想の類の描写があったが、あんなのは現実には無い。
 山脈を下っていて、ふもとにあるだろうポケモンセンターに駆け込めば僕らの勝ちだ。ニンゲンにはいくらなんだって一介の部落の族長だけでは敵う筈も無い。
 僕らは保護され、その後どうなるか分からないし別々に生きる事になるかもしれないけど、生き続ける事には必ず意味があると今は信じている。
 生きていれば、いつかまたリュフレにも、もしかしたら集落に立ち寄る機会もできるかもしれない。できるなら今の族長が変わってから寄りたい所だけど。
 山頂についただけど、こうも気持ちが昂ぶるのは、絵本じゃないけど何かやはりこの山には司る得体のしれない何かがあるのか、それともポケモンセンターをお花畑に見立てているのか。
 取り敢えず僕の疲れは、何だかふっと楽になった気がした。
 リュフレは息が荒く、だいぶ参っているようだったが。このまま一気に行ってしまった方がいい。
 日が上りきれば、温度も上がってくるだろうし。
「リュフレ、下山には何日かは掛かるだろうけど、登りより全然楽だから。後でゆっくり休も――――」
 地面に押しつぶされる勢いで苦しんでいるリュフレがそこにいた。だけど、僕には何とも無い。
 ……。
 エスパータイプ――!
「ラザロ……苦しいよぉ……っ」
「リュフレ?! 誰だ、何処に居る!! リュフレじゃなくて僕に手を出せ! 影から不意打ちなんて卑怯じゃ無い…………かっ」
 胸元が涼しい。ぽっかりと穴が開いた気がした。正確に言うと気がしたのでは無く、氷タイプの攻撃で僕の胸に現実穴が開いたのだが。
 その場に崩れ落ちる僕。血の臭い。視界が、段々と霞む。
「ラザロ?! 嫌、ラザロぉぉぉぉ!!」
 顔を上げると目の前には、エーフィの牡と思わしき人とグレイシアの牝と思わしき人が並んで僕を見下ろしていた。
「パ、パパ……それにママまで……。や、やめて。私帰るから。良い子になるから。だから殺さないで。ラザロを殺さないでぇ!!」
 リュフレの両親、なのか。
 でもこれじゃあもう手も足も。不意打ちが無かったとしても地力が違いすぎるし、それにリュフレにまで手を出すような親子ならもうこっちに勝機は1%も――
 無い。
「終点が山頂とは上出来じゃないか、リュフレ。おまけにラザロ君も。さすが私の血を引いてるだけの事はある。が、現実にハッピーエンドが早々無いと言うのも二人には味合わせてあげないと思ってね。ここまでの旅、辛くとも楽しかっただろう、中々。あの時始末できなかった悪の子は、この神聖なるシロガネの終点で終幕を迎えるのだ! どうだ、素敵なショーだと思わないか? ラザロ君」
 
 蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。蹴。
 
 何度味わったのだろうか。体が麻痺した様に、痛みすらもう感じ無い。絶望的過ぎて、恐怖を通り過ぎて、早く殺してくれと懇願しようかとも思った。
 リオーズ。僕はもう助からない。僕は楽園に辿りつけ無かったよ。なんで僕はこんなに無力なんだろう。ねぇ、リオーズ。せめてリュフレだけでも救われるといいね。僕はもう――。
「ん、くたばったか? 私は殺しに直接手を下さない誇り高き陽の戦士だからな。グレース、止めはお前に任せたぞ。情けはいらん。好きなところを串刺しにしてやれ」
「止めてよ!! パパなんて死ね! ママの裏切り者!!」
 リュフレがサイコキネシスから自力でか、何故か開放され、僕に手を下す寸前だったグレイシアに向かって体当たりを食らわす。
「私は一人になるくらいだったら、ここでラザロと死んだ方がマシ。パパもママも家族なんかじゃない! ただの人殺しだ!!」
 リュフレの叫びが山頂に響き渡ると共に、日の光が神々しくリュフレの体を染め上げ、そして暫くした後リュフレはその姿をイーブイからエーフィへと変えた。
 族長はそれすらも計画通りと言わんばかりに含み笑いが止まらなかった様だが、すぐにその顔が歪む事となった。
 爆発的な念動力の開放で、グレイシアを紙屑の様に吹き飛ばし、族長をさえ、辺りの岩壁に打ち付ける程の凄まじさだった。
 グレイシアは岸下に落下したのか、その姿を再度表す事は無かった――。
「お前は再教育してやるつもりだった。つい先刻まではなぁ! 実の母親を殺すとは、言語道断! 地獄へ私自らが葬り去ってやろうか!! 親に楯突いた事を、地獄で後悔しなさい」
 やはり自力が違う。グレイシアは僕を襲おうとしていたのと油断、そして運もあってか退けられたが、族長はやはり甘く無い。陽の戦士などと自分で語り腐っているだけのことはあった。
 リオーズが生きていても、太刀打ちできたかどうか……。
「くっ、この悪魔!」
「もうパパとも呼べなくなったか! お前はこの醜い黒い子に絶対悪の気をとうに移されてしまっていたようだな! そこまでは計算外だったよ。ふむ、もしかしてもう交わっていたのか? ん? だったら尚の事、葬り去ってやらなくちゃな! 死になさい、リュフレ!!」
「う、うるさい! この人殺し!!」
 口調からややリュフレは怖気付いてる様にも感じた。ただならぬオーラが族長の周りを包み、リュフレも近づけない様子だった。
 やがて族長からその圧縮されたエネルギー体が放出された後、リュフレがその場に崩れる様にして倒れる音がした。そこからはリュフレの勇ましい声は全く聞こえなくなってしまった。
「グレースを殺るとは、とんだ娘だ。しかし牝などいくらでもこの世にいる。また美人のイーブイ種をはべらかせ、今度は息子を孕ませればいいだけの事だ。ふふ……ふふ、ははははは!! シロガネは、シロガネの神は我に有るのだ!!」
 ――リュフレ、生きていたら返事をして。正義は勝つと思っていたけど、そう甘く無かったね。こんな人に神の加護が付いていたらと思うと虫酸が走るよ。君のお母さんには天罰が下ったようだけど、この人には、もう。
「…………諦めない、まだ、私は諦めたくないよラザロ……。貴方の様にブラッキーになりたかった。ブラッキーとして、もっとラザロや同じ悪タイプのリオーズともっとたくさんの事を共有したかった……このままお互い死んだら私は天国で神を殺すからね。だから、諦めない。こんな奴に負けたくない」
 気持ちは充分に伝わった。だけど、これが現実なんだ。
 生きるのは悪じゃないとしても、結局は盲目的な絶対権力を持った奴がこの世で得をしたりのさばったりするんだ。
 あぁ、もう意識がもたない。最後にもっと話したかったな、リオーズじゃなくって、君と……リュフレ、と。


 歌が、聴こえる…………。


「ん? 誰だお前は? ニンゲンがこんなところに何の用だ! しかもピカチュウとセットでとは笑わせる。ここは神聖な土地、シロガネの山頂だぞ?! そして今、身内の裁きの最中だ。薄汚い無関係なニンゲンが、足を踏み入れるんじゃない! お前も死にたいのか、悪――――あ、う、あ、ああああああああああああ!!」
「……。無関係と決めつけるな。ご苦労、ピカチュウ」

 神はいた。陽の差す雲の切れ間から、突如現れた雷の如く、このニンゲンは現れ。
 この醜い悪の化身を、パートナーだろうか? ピカチュウであろうポケモンが、一撃で裁きの雷鎚を放ち、これを焼き殺した。
 肉が焦げた臭いが辺りに立ち込める。同時に、本当の悪が潰えた実感が、血反吐と混ざって込みあげた。

「ピカチュウは、エーフィの方を診ろ。俺はブラッキーの方を診る」
 視界も無く意識もおぼろげだったので、この二人が何をしているのかはっきりと掴むのに、だいぶ苦労がいった。
「……。まさに瀕死だな。まず助からないなお前は」
 それはそうだろう。心臓は幸いにも避けただろうが、胸にぽっかり穴が開いていて、すぐにポケモンセンターに運べる状況でも難しいところだろう。大体出血が酷いし、今まだ意識があるのが自分でもそれだけで奇跡だと思える。
 本当の奇跡はここに存在して僕を介抱しようとまでしているけど。

 でももう、手遅れ――。せめて、リュフレだけでも。
「……。エーフィの方も厳しいか。残念だな、せっかく運命的にもあの時の恩を返せたと思ったのにな」
 あの時の恩? それって、一体――。
「貴方は……誰……?」

 そのニンゲンの男性は、僕の耳元で、小声であるフレーズを口ずさんだ。

 ――。
 因果律、運命、神、偶然、神秘、
 奇跡、か。

 こんなこともあるんだろうか。
 生きることは悪じゃないってこと、証明できただろうか。
 でも、僕はもうダメみたいだ。こっちの世界の楽園を、リュフレと共に歩めたら良かったのに。
「今更……い、今更命が惜しい、な、ん、て……ぅ、ぅ、」
「……。何か俺にできることはまだないか。できる限りのことはする」

 ――僕を、僕をリュフレの隣、に。
 それだけで、いい。
 リュフレは、もう何も、しゃべらなかったけど、それでもいい。
 
 もう、もういいんだ。じゅうぶん、だよ



 天使があなたを楽園へと導きますように。
    
 楽園についたあなたを、王が出迎え、
    
 聖なる地へと導きますように。
   
 天使たちの合唱があなたを出迎え、
   
 かつての友とともに、
    
 永遠の安息を得られますように。 

 

 あと、さい、ご、に。

 あなた、の、なまえ、を、おし、え、て





「…………。俺の名は、パラディーゾ。ロッソ=パラディーゾ」
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【FIN】
----
【作品名】	盲目の鎮魂歌
【原稿用紙(20×20行)】	115.8(枚)
【総文字数】	33513(字)
【行数】	1101(行)
【台詞:地の文】	24:75(%)|8044:25469(字)
【漢字:かな:カナ:他】	34:55:5:4(%)|11521:18475:1945:1572(字)


ちなみに。
作者は無神論者です、あしからず。
では――
----
***後書きとぼやき、そして返信。 [#u9345634]

……。
……。
締めがだらしないね!
いくら小説は締めよりも出だしが肝心とは言っても、官能部門より明らかに力と僅かな時間を積み上げられたとは言っても、だらしないしorz
官能部門が控えていて焦っていたとはいえ、蹴りの連発やら完全に後付けのロッソさん(ピカチュウセットMも)投稿間際にお出しになるなんて。
矛盾が発生して物語がぶち壊れなくて良かったです。
官能より断然細かい所に比較すれば気配りしていたので。やっぱり見直しって大事なんですね。
大事の際の間際には見直しと時間のゆとりを心掛けたいと思います。ました。

危うく規約に反してキャンセルボタン→修正ボタン押し→修正掛かった際には。
途方に暮れてたのが今は懐かしいです。
開催から何だかんだで一ヶ月近くになるんですよね。早いものです。
そして安堵の日々。
そして虚脱感。
本当にだらしないですねしかし。

テーマが重いのは兎も角、とにかく深すぎてそしてエロスは封印されている状況。
この状況下でよく三万字も書ききったものだと眺めていて思います。
終盤以降本当に苦労しました、この作品は……
(逆に官能の方は出だしに苦労して、書き進めたら一日一万五千字以上書けた時もあったぐらいなんですが、手負いの追い込まれた鼠は猫を噛むみたいな感じ、なんでしょうかどうなんでしょうか)
終盤までは一定のペースで書けていたんです。これは携帯が約にたちました。
空いた時間にせっせっせと打ち込んで、後でくっつけて練って矛盾の無い文章にして。
でも逃避行まで来て、問題が発生して。
ラストをどうするか皆目検討がつかなくなってしまって、焦ってしまって。
バトルは入れたくなかったんです。何故かは分かりませんが。
暗く重いまま話を元に書き上げたかったので、バトルを入れるとどうしてもバランスが。
雪崩が起きたりして離れ離れになって、けどやっとのこと登頂して目の前には文字通り楽園がとも考えました。しかし現実はそんなに甘くないですし……ん?
これなんて嵐の夜に?((狼と羊の相反するアッー的な友情と言う名の、恋愛物語で一世を風靡したケモナー御用達の絵本&映画))
orz
雪崩却下。戦闘どうしよ。大体生き別れとかそうそう起きないしお花畑な楽園とか完全にそれ変なエンディング。
だけどだけど、この流れでハッピーエンドもどうかと。いやあり得ない。
でもどうやって……
書きながら途方に一時暮れていました。
そこで、一旦ボツったけどゴミ箱入りしてない、本来大会用では無かったメモを拝借。
それは某赤い人が主人公の、シロガネ山で何故エーフィが命金・魂銀でラストで現れなかったかを自分なりに解釈して作りあげようとした物でした。
「……。使えなくもない」
時間もありませんし、もはや楽しむ余裕は終盤ほとんどありませんでしたが、賭けに出ました。
頂上ではやむなく戦闘をさせる。しかし登場人物の戦闘力や疲労の蓄積(と作者の疲労とモチベーション)現実の厳しさを考慮して簡素なバトルに。
ラザロ君、余りにも呆気ない上に胸に穴あいてあそこまで語れるのは自分としては首をかしげながらも、特攻しました。進むしかない。
そして楽園ってどこにあるんですか、何なんですか?
厨二るよりマシとはいえ、ラザロ君ゴメンなさい。今だから謝れました。
そして厨二るのを避けたかったとは言え、リュフレの進化と言う名の覚醒(笑)
ママ、ラザロより惨め。喋らせる気は元々無かったと言っても、酷い扱いですね。しかし裏切りママには謝らないよ!
パパ。
ゴメンなさい、これは読者さんの方に謝りたいです。完全にムスカです、本当にありがとうございました。
だれたりハイテンションになるとネタを入れたくなる癖が今大会で良く分かりました。
本当に為になった大会だと思います。
(因みに官能部門での作品は、結構ネタだらけです。見つけたらえrや淫獣母さんやロアだけでなく、そこにも目を凝らしてみてください。楽し――くだらない発見がいっぱい待っているかと!(殴
流れに沿ってたとはいえ、何というネタを……
後書きによって見方が変わらない事を切に祈ります。
それよりパパムスカ乙。本当もう終盤は根こそぎ書き直したい!
順位? それより大切な物をパパムスカは奪っていきましt

……。
矛盾が唯一あるとすれば、気付いた方もいるかもしれませんがシンクロの定義。
というより、何故イーブイのリュフレが駆使できるのか。
コレ、実は書き上げてから気付い(ry
完全にエーフィの感覚で書き進めていった罰がくだったのかと。裁き乙ですよorz
特性も遺伝したというご都合設定で脳内解釈して頂ければ幸いです。
続きに繋がりますしね、あるとすれば。
続きの存在も、締まりを緩めた所業なのかもしれません。今考えると。
「後々回収できるし、繋げればいいかー」
そこまでgdgdしては無かったですけど、疲労がピークに差し掛かった辺りで脳裏にそんな事が浮かんだのは微かに記憶にあるようなないような。
作者に鎮魂歌が必要ですねどうみても。
静まってください。救いはまだあると思います。

↓&color(red,red){核心部分・続編にまで絡むネタバレが出てくるかもしれません};注意を。
一番悩んだのは急造したロッソと楽園のくだり。
楽園は二人の死で、と思っていましたがこれだと自分がアンサーを出したかった悪の定義が。簡単に言うとバットEDは嫌でした。
いくら全体的に重い作品とはいえ、報われなさすぎる……
かわいそう。
一人称ってハマリ込みすぎると危ないですね。本当に。
ロッソはクラウディでも良かったんですが、見直してより後にも先にも意味が通るパラディーゾに。
パラディーゾを和訳すると何か見えてくるかもしれません。
ラストで天使を王にすり替えておいたのは、あれはワザとです。
一応頭使ってます。完全に未だ納得してはいないんですけどね、実は。
楽園はあれで終わりなら大方の予想通り天国です。友は言わずもがなの鎌亡き姉様。
王はロッソにも当て嵌めてるし、神話のゼウス((雷を司る天空神。オリュンポス12神をはじめとする、神々の王))にちなんで、ピカチュウにも当て嵌まる様にしました。
文字通り絶対悪に対する慈悲の無い最終審判。裁きの雷鎚(いかずち)です。
ネタ織りまぜながらも、深過ぎる所でちゃんと繋がるように足りない頭絞って構成してました。
唯、表現力や文章力、わかりやすさや細かさにもっと気を配ったり向上の余地があると、改めて思いました。はい…。

作法所では中々にご法度だと思われる会話文での締めは、あれは賭けと言うより挑戦でした。
大体下手にあの後続けても……とは当時思ってたんですが、やっぱり締めは納得行かないですねくどいですけども。

続いた場合。
……。
これは二人は生きている事になるんですよね。現実的な意味で。
(金銀・赤緑のゲームの世界とシンクロせざるを得なくなってしまうので、今大会では回避しましたが)
天国が楽園。それも確かにいいのかもしれない。けど、それは本当にリオーズが望んだ結末なのか?
彼女はこれすらも予知できていたのではないか(鎌厨二乙ですけど、ここまで行くと)。
細かく述べられていないですし、ちょっとズルいイメージがあったかもしれないリュフレですが。
リオーズはラザロを想いながらもリュフレに託すつもりでいました。
でなければリュフレを庇う訳がない。女性の嫉妬は恐ろしいものですので、時に特に。
リュフレは幼い故にまだ嫉妬心がどこかであったようですし、吐露している場面も作ってあります。
大人は余りしゃべらないものです実際(人にも状況にもよりますけど)。
リオーズは召される間際にラザロに想いを伝えようとしましたが、間に合わなかったんですよね。
それもまた現実的で。
死は平等といいますか、何と言いますか。
理不尽な死ではあったと思いますが、受け入れて自ら恋敵を庇い召されに逝ったリオーズは、この作中では私的に一番好きなキャラでした。
官能部門ではキャラ特化だったとすれば、こちらはストーリ重視だったように思えます。
でも自分の力量では神+死を題材にしたテーマはとてもじゃないですけど、扱いきれませんでした。
前回非官能大会での優勝作品の凄さが改めて分かりました本当に本当に。
精進したいです。非官能は、奥が深い――

rossoを和訳すると、続きに関しては何かが見えてくるかもしれません。
まあシロガネと新金銀とピカチュウセットという時点で(ry
安直では無いですけどね、妄想内では。ふぅ
すぐには提供出来ないですし、できるか確実ではないのですけど。
後は、r18部分ですよね。
これは白字にでもしてキャッキャウフフさせるかなにかしますなつもりです。
プラグインをもっと把握できてれば、別リンクでって手が一番いいのかもしれませんけど――要検討ですね。

何だか官能部門の方より熱く語ってしまいましたw
非官能の方が比較して今回燃えていたので。仕方ないね。
ふむふむむ。

----
では、そろそろ返信の方を――

>重い中にも、重いだけじゃない・・・
何かを感じました!

深みに惹かれてくださったんでしょうか。ありがたいことです(*´ω`*)
>最後はラザロとリュフレで天国の『楽園へ』という意味なんでしょうか?ここがすごく気になります。
ロッソが冒頭にちらっと出てきた少年と気づいたのは、三回目に読んだ時だったのは秘密です。
とにかく深かったです。三回以上もう読んだと思いますが、そのたびに味が違うというか、スルメというか。
でもこの作品、ただ重いだけじゃなくて恋愛感情の混じったストーリー自体もとても楽めた作品だったので、迷いながらも一票入れてました。
また読んでみたいと思います。 

スルメとはまたw
この長文を短期間で三回も読んで下さった事に感謝と脱帽です。
楽園へ、って色々取れますよね。後書きにも書きましたけど、やっぱり天国を連想しますよね真っ先に。間違ってないです。
シロガネ山頂もある意味、楽園には含まれているんですけどね。そこは深すぎますし、おいおいという形で。
恋愛はいいですよねー。後々別に何か色々書くとしても、多分恋愛物しか書かないんじゃないかという(ry
この度はありがとうございました。
>ガチで泣いた 
泣けましたかー。締りが悪くて申し訳なかったですが、そう言ってもらえると嬉しいですつД`)
正直泣きを狙ってたので(w
泣きだけなら兎も角、死は難しかったです。
ありがとうございました。
>これが一番よかった。それだけ。
一番とはまたw 結果三番でしたけど十分過ぎるほどでしたし、それだけで一票くださるその気前の良さに感謝と祝福を。 
>神と宗教という凄く重い題材をベースに、よくブイズを主にしたポケモン達を浮かせることなく絡めたなと感心しました。
ストーリーとキャラクター性もツボで、かなり迷った挙句ですが選ばせて頂きます。

重いし深いし…全くキャパ超えましたよ、えぇ。
そう言えばブイズ多かったですねw って元はエーフィからの発展でしたねw
浮いてなくって良かったです。
迷った挙句に選んで頂いて光栄の極みです。
>全俺が泣いた。 
泣けましたかー。締りが悪くて(ry
続けてこうコメントがあると実感できますね。嬉しい限りです。
>つい時間を忘れて読みいってしまった・・・涙腺崩壊しながら。 
時間を忘れちゃうのは某場面のリュフレだけで(ry
きっと“お疲れ”だったんでしょうね。
……。
涙腺崩壊コンボには流石にネタ絡めるのはあれですので自重しますが、やっぱり嬉しい限りです。
参加した甲斐がありました。勉強にもなりましたし。
ありがとうございました。
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多くのコメントありがとうございました。
――では

IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 14:21:28" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%9B%B2%E7%9B%AE%E3%81%AE%E9%8E%AE%E9%AD%82%E6%AD%8C" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"

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