by[[ROOM]] ‐‐‐警告 この小説には官能表現が含まれます。苦手な方は「戻る」してください。‐‐‐ 鬱蒼とした森の中。一匹のポケモンが倒れていた。黒い翼、鋭い目をもったそのポケモンの種族は……ヤミカラス。もうすでに生きる気力を失った目にうつるのは憎しみか。死への恐れか。本人もわからないだろう。そしてゆっくりとその目を閉じ、闇夜に身をゆだねる。 俺はどうなっている?ここはどこだ?確かポケモンに襲われて…あっ! ヤミカラスは飛び起きようとする。だが、 「動かないで!」 「ぎゃああ」 自分に不利なタイプである電気タイプの技“電磁波”をうけそのまま再びあっち側向かう。 「うぅ…」 「あっ気がついた?」 体中が痛いヤミカラスには目を開けるのも大儀だ。それでも何とか目を開けると、目の前には自分の身体の色とは反対の色、白い姿をしたポケモンがいた。短い手に小さい翼、長い首を持つそのポケモンの種族は……トゲチック。そのトゲチックが言う。 「昨日の夜に散歩してたら黒くて柔らかくて得体の知れないものに躓いてビックリ!それがあなただったんだけどね。」 俺はその辺の石ころと同類か?夜中に、しかも飛行タイプが、散歩なんかするか普通。 つっこみをヤミカラスは入れたくなるが、そこはこらえて言う。 「ところでお礼を言いたいんだけど、その前に頼みがあるんだ。」 どうぞどうぞという意味だろう。トゲチックはにっこり笑う。 「……顔が近い。」 ヤミカラスのくちばし数センチというところにトゲチックの鼻があった。 「わぁごめーん。私目が悪くてね。顔がよく見えなくてうっかりー。」 トゲチックは今そのことに気付いたように叫ぶと顔をくちばしから遠ざけた。 …うそだな。絶対わざとだ。ヤミカラスは思う。がくちにはせず代わりに言う。 「じゃあ改めまして。助けてくれて本当にありがとう」 トゲチックは「エヘヘ」と笑う。その愛くるしい笑顔を自分のためにしてくれるというなら、どんな男も一発で射抜けるだろう。このヤミカラスは例外らしいが。いや例外中のさらに例外かもしれない。ヤミカラスは訝しそうな顔をしている。 「でも何で一度起きたときに何でまた攻撃した?それも何で“電磁波”なんだ?」 「あれは反射運動よ。自分の意志とは関係ないわ。それに技にこだわるんなら電磁波じゃなくて“電撃波”はもつかえるわよ、私。あなたに使っても効果はうすそうだけど。だって最初から黒いでしょ?」 ヤミカラスの毛が一瞬にして逆立ったのは話の内容のせいばかりではない。その内容に釣り合わない、トゲチックの笑顔が恐ろしかった。 ヤミカラスは言葉に詰まり、トゲチックも笑顔のまま黙っている。だがついにトゲチックが沈黙を破った。 「そういえば、あなた名前なんて言うの?」 そうだな。まだお互い名前も知らなかったな…… 「俺はイビルだ。」 「私はグッド。よろしくね。」 「グッドはいえに帰んなくていいのか?」 イビルが思ったことを唐突に言う。イビルの看病をずっとグッドがしていたとしたら、グッドは森で一夜を明かしたということになる。 「んー。私は帰るところなんかないからねぇ。……旅してるんだよ今。」 「へー。何でまた?」 ヤミカラスはいつも群れで行動する。一匹一匹の弱さを数で克服するポケモンは山ほどいる。だが、トゲチックはそんなポケモンたちの世界では珍しく、一匹で世界中を旅する。心の優しいものを探して。 そのことをグッドはイビルに伝える。イビルは信じられないという顔をした。 「それに…」 そこまで言ってグッドは一息つく。 「探しているポケモンがいるんだよ。」 グッドの笑顔が初めてゆがむ。目には明らかな殺気が宿っている。だがそれは一瞬。イビルもその表情には気づかなかった。 「いろんなポケモンから話を聞いて、この辺にいるって聞いたんだけどね。そんなことよりイビルはいいの?」 「ああ。ずっと考えてたけど、群れももうどっかに行っただろう。」 “遅れをとるポケモンは群れに必要ない。よって去らねばならない。”イビルがいた群れのドンカラスの言葉であり、むれに二つしかない掟の一つだ。ちなみにもう一つの掟は“二つ以上掟を破ったものは群れのドンカラスの手によって消える。” 「ふうん。じゃあ一緒に旅していられるね。」 「ああそうだな。」 あれ?今グッドなんて言った?それに俺も。そんなことを考えるイビルを尻目にグッドは言う。 「よかった-。旅の道連れがずっとほしかったのよ。これで安心ね。」 「待ってくれ!なんかノリで言っただけであって…」 「ええい男に二言はない!看病してやったんだから言うこと聞けい!」 グッドが冗談っぽく(しかしすごみをきかせ)言った。もはやイビルには反論する権利すらなかった。はぁとため息をついたイビル。 「わかった。おまえとともに行こう。でも…」 びっくりしたけど他に行くとこもないしちょうど良かったのかもしれないな……。イビルは考える。だが問題が2つあった。 「…でも傷が治るまで、後丸一日待ってくれ。」 「傷?傷って何?」 どういうことか。イビルの傷はいつの間にかすっかり治っていた。 「“ねがいごと。”かなり集中して使ったから今になってやっと効果がでたのね。その分威力があってよかったわ。」 もしかしたらあの電磁波でもう一回気絶させたのはイビルが起きていると集中できないと判断したからなのかもしれない。さて、あっけなく解決した一つ目の問題はおいといて、二つ目。 「俺はヤミカラスだぜ?トゲチックとは正反対に不幸を呼び寄せるとされているポケモンだ。俺なんかと一緒にいると“心の優しいもの”なんてみつかんないぜ。」 グッドはしばらく(届かない)手であごを押さえ(るような仕草をし)て考える。やがて言う。 「メインは“心の優しいもの”じゃないから。迷信なんて信じないし。」 それにイビルが不幸を呼ぶなら、あいつに会いやすくなるよ。小声で付け足したその部分はもちろんイビルには聞こえない。イビルは疲れたような顔をしている。 「断る理由がない、か。わかった。ついてくよ。」 「よろしくね。イビル。」 二人は握手の代わりに頭を下げる。相変わらず笑うグッドにつられ、イビルの顔にも微笑が浮かぶ。それはイビルが無意識にしていた警戒が解けた瞬間でもあった。 「ところでこれから森を抜けて山脈地帯に行こうと思うんだけど、大丈夫?」 山脈地帯といえば多くの岩タイプのポケモンが好んで生活している場所だ。変な輩に絡まれるとしたら相手は弱点の岩タイプ。それを克服できるのかという意味だとイビルはわかった。 「ああ。俺は“鋼の翼”が使える。」 「そう?よかったー。これで安心ね。」 こうしてイビルとグッドの旅が始まった。 トゲピーやその進化形が幸福を招くのは統計上明らからしい。一方、ヤミカラスが不幸を呼び寄せるというのは漠然としている。どちらも迷信には変わらないのだが、あながち単なる迷信ではないのかもしれないとグッドは思い始めた。 「ひゃ!また?」 森を歩き始めて数時間、さっきから何度もグッドはキャタピーの巣にかかっている。 「すみませーん。もっと高いとこに巣作っておけば良かったんだけど。」 巣の持ち主であるキャタピーが謝りに来る。このくだりももう見飽きていた。イビルの方は対称的に巣にかかったりしてないし、すんでの所で穴のように窪んだ場所を回避したりしている。グッドが先に進んでいるのも影響しているといえる。 「なんかその……悪いな。」 イビルは謝る。 「別にイビルが悪いわけじゃないでしょ?」 あくまでグッドは笑顔で言う。常に前向きなのはトゲチックの特徴だ。 「でもいい加減あの巣は勘弁してほしいな…。」 その願いは叶った。一応。 「うわ。またかかったー!」 「ああごめんごめん。高いとこまで上って巣作るの面倒だったんだ。」 謝りに来たのはケムッソだった。後ろではクックックッと笑いをこらえているイビルがいる。グッドは振り返り、珍しくムッとした顔になるが、再び笑顔になって。 「やっと笑ったね。いっつも仏教面だから私には幸福にさせる力がないのかなっって思ってたよ。」 グッドはずっとそのことを気にしていた。イビルはへっと笑う。「俺は笑うのがあんまり好きじゃないんだよ。」と言った。その理由をグッドはイビルに問う。 「笑いってのは隙なんだよ。相手を信用しない限りは絶対にしちゃいけないんだ。」 ふーん。そう。ということはつまり…。 「私のこと信じてくれてるの?」 「さあ、先に進もう皆の衆。日が暮れてしまうぞ。」 もう!なんかいい雰囲気に運べそうだったのに。 「まってよう。わたしが先に進むんだから。」 二人は仲良さそうに並んで進み始めた。 危ない危ない。イビルはホッとため息をつく。赤面した顔は自らの黒い毛によってうまい具合に隠れた。ヤミカラスに生まれたことを天に感謝する数少ない瞬間だった。 並んで歩いても相変わらずグッドは巣にかかっている。キャタピー5割、ケムッソ4割、そして1割のビードル。歩く順番は関係ないらしい。 「なんだあれ?」 イビルは前方に建つ巨大な建物……洋館……をさして言う。 「さあ?でもあんなのわざわざ作って住むようなのはインテリ気取りのエスパータイプでしょう。無視無視。スルーしよ。」 イビルは気になり、何度も遠ざかる洋館を振り返った。もしあのとき、グッドが洋館を無視しなければ彼らの人生は大きく変わっていた。あの洋館の中には二人のポケモンがおり、その内一人はグッドの追っている、そしてイビルを襲撃した“あいつ”だったのだ。 森はだんだんただの木々になり、地面の石の面積の割合が大きくなってきた。ゴツゴツした岩肌の上を歩くのは鍛えられた足腰を持つ陸上で生活するポケモンでなければ難しい。彼らはどうしているだろう? 「イビルはいいじゃん。羽が大きいから飛びやすくて。長い間飛んでても平気でしょ。」 「だからって。うぅ、重い。」 イビルの足をグッドがつかみ低空飛行を維持して進んでいる。グッドも多少は羽を動かしているし、まだ登りに入ってないでけましである。だが先ほどとは運勢が逆転している。 「さ。がんばって。ファイトー…」 おー。イビルの声には張りがない。 「やり直ぉし!ファイト」 「うおーー!」 きゃははと笑うグッドはのんきなものだ。イビルは気をまぎわらすため話をする。 「何のみ食ったらこんなに重くなるんだ?」 ポケモンたちは皆きのみを主食としている。つまり他のポケモンを襲って食べるということはない。この質問は言い換えると「“何”食ったらこんなに重くなるんだ?」となる。もちろん毎日ともに食事をしているイビルはこの質問の答えを知っている。“オボンのみ”だ。栄養価が高く味に偏りもないため定評がある。反面カロリーが高く“オボンをくうものは(体格が)オボンとなる”ということわざがあるくらいだ。グッドは見た目はふとっていないが。 グッドは限界だった。こんなことを言われて起こらない女性はいない。 「イビル」 イビルをじっと見るグッドの目とイビルの目が合う。 ああやっぱりかわいいな。初めてあった時は意識してなかったけど。イビルはこれから起こることなど知らずに考える。グッドは笑っている。その笑みにイビルは見覚えがあった。あれはあの時、俺が“電磁波”についてつっこんだとき……。 「休憩しよ!」 「ぐおおぉ!」 イビルは“電撃波”をうけ岩と挨拶する。こんにちわ、やっと会えましたね。いやいや会いたかった。 どちらかといえば休憩できることの安堵の方がイビルには重要らしい。そのままあっち側へ行く。 日は昇りきり、やがて高度を下げ始めた。イビルは気絶してから2時間くらいして、ようやく目覚める。 「あのーそのー…ごめん!」 まずグッドから話しかける。イビルは最初状況がつかめなかったが、すぐに思い出す。 「いや、それは…俺もごめん!」 二人とも似たような謝罪をする。気まずい雰囲気になりそうになるが。 ぐぅー イビルのおなかのおかげでそうはならなかった。イビルもグッドも笑っている。 「とりあえずきのみ探すか?」 山脈地帯近くで石が地面の割合の多くをとっているとはいえ、土はあるし、きのみもあるだろう。「そうね。貯蓄したきのみは残しておきたいし」とグッドは言いう。二人は先に進む。 ……かなりの道を移動したはず(さすがにイビルもグッドも飛んでいない)だが、きのみにはありつけていない。進み続けているといつの間にか上り‐‐山脈地帯へ入っていた。山脈地帯にもつちはあった。きのみがないのだ。誰も植えたりしてないところから察するにこの辺にはポケモンは生息してないのかもしれない。日も愛想を尽かせて夕日にみるみる変わっていく。そこでついに…。 「あ。見ーっけ。」 グッドがきのみを見つけたようだ。だがイビルには見えない。 「あそこあそこ。」 なるほど確かに100メートルくらい先にきのみがある。しかもあれは… 「オボンだな。」 イビルはその場にグッドにとどまるよう言う。表向きの理由はもうおそいから野宿の準備をさせること。本当の理由はグッドにオボンをわたさないようにするため。グッドの手に渡ると全部とられかねないからな、と心の中でイビルは苦笑した。グッドは了解した。 きのみの近くに来たときイビルは違和感を2つほど感じた。1つは岩が少し浮いているように見えること。もう一つは……。 突然きのみの周りの岩がイビルに襲いかかる。“ステルスロック”に気づくのが遅すぎた。 異変をすぐに察したグッドは近くの岩陰に身を隠す。すぐにでも出てイビルを助けたかったが、自分の力は自分がよく知っている。攻撃技は“電撃波”のみだ。今出ては足を引っ張るだけ。 ならばとグッドは自分にできることを探したが、一つしか思い浮かばなかった。 グッドは両手を合わせ、イビルの無事を天に祈った。 イビルはのほうは… 「久しぶりの獲物だぜ!さあ兄ちゃん、悪いことは言わない。あるもの全部おいてきな。」 柄の悪そうなゴローンが一人イビルの前に立っている。イビルは怪我を負っていたが、たいして深いわけではない。 「はっ。誰がお前みたいな石頭……いや石体にやるもんがあるかってんだ。」 気の短そうなゴローンを怒らせるには十分だった。 「貴様ー!死ね!」 ゴローンは“地震”を繰り出す。飛行タイプに地面技は言うまでもなく無効果である。イビルは飛行タイプ独特の地面技へのカンで宙に浮いて交わす。 「あほかよ。」 イビルはセリフを吐き捨て“鋼の翼”で攻撃する。 「ひいいいい。」 ……って一発かよ。 ゴローンが気を失っている。そのすきにオボンを取ってとんずらしよう。イビルはオボンを取りに行った。 「へっへー。雑魚のお掃除どうも」 「ゴローンなめてもらちゃ困るんだよね。」 油断した。さっきの“地震”は攻撃じゃなくて仲間に知らせるためのものだったのか。 周りには少なくても十人はゴローンがいる。これを一人で相手しなくちゃいけないのか…グッドは隠れてるからおそはれる心配はない。それだけがイビルの支えだった。 ゴローンのリーダー格と思はれる一人の掛け声を放つ。 「さっさと食料なり何なり出せばよかったんだよ。いくぜー野郎ども!」 オォー、と一斉にイビルに襲いかかる。 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ どれくらいたっただろうか?グッドは緊張に耐え切れずいつの間にか眠ってしまっていた。 そうだ、イビル。イビルは? 岩陰から出てきてあたりを見回す。すると、やけに岩(すぐにはそれがゴローンだということに気付かなかった)が山になったところに影とは違う黒い物体が…。 「イビル!」 傷だらけで倒れているイビルにグッドが駆け寄る。 「グッド、なんとか、倒した、ぜ?」 一言一言を力をふり絞るようにいうイビルの姿が痛々しい。グッドは励ましのつもりなのか、あくまで微笑を浮かべている。いつもと違うのは、涙を流して目が腫れていることの一点のみ。 「やめて。わたしはもう、だれも、誰も失いたくない。イビルがいなくなっちゃったら私…」 「もう?」 イビルは消えそうな声で言う。 「私には家族がいないのよ……殺された。私は殺した奴を追って旅に出たの。」 「……復讐、か?」 「違う!ただ、なんで父さんと母さんが殺されたのか、理由が知りたいだけ。復讐なんてどうでもいいの。もう、亡くなったものは帰ってこないから。代わりなんてどこにもないから…!」 「そうか、よかった。わかっているようだな。グッド…」 イビルはグッドをむきなおす。またグッドもそれにこたえ、イビルの目を見る。 「俺も、いないんだ、家族が。母様は俺が生まれたときからいなかった。父様も、いなくなった、突然。」 初めて聞くイビルの過去にグッドは目を見開いて聞いている。イビルは続ける。命の火が弱まっていく。 「俺たちは、似てたんだな。だから惹かれあった。グッド。最期だから、いえる。俺はお前が好きだ。いや、もう「だった」なのかな……」 グッドはその笑みをより華々しく飾り。 「私も好きよ、イビルが。はじめて見たときから。あの時気晴らしに散歩して、イビルにあったのは運命だったと思うの。だから、だから。……あぁうまくまとめられない!死なないで!お願い!」 「まとめらない?フン。最期まで、お前は、お前だな。会えてよかった。グッド……」 それを最後に黒い物体に力が抜ける。 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ……くはははは。あっははははは。 笑い声が聞こえる。俺を馬鹿にしてるみたいな笑い方だ。この声は天使か?いや、悪魔かな?そうじゃないなら鬼。だって天使はこんな風に笑うことはないだろうし。 イビルは目をあけ、笑っている奴を見る。 へえ。悪魔って白いんだ。俺みたいに黒いとばっかり思ってたぜ。へえ、そうなんだ。でも羽根が付いてるってのは予想通りだったぜ。なんか俺が好きだったポケモンに似てるな。 「イビル、こんばんわ。クックック…」 その声を聞いてようやく天使がグッドだとイビルは気づいた。 「グッドまさかおれの後を追って……?」 「くっはははは!まさかそんなことするわけないじゃん!」 「じゃあどうして俺は生きてる?あれだけ傷おってて生きられるわけが…」 「傷?傷って何?」 どこかできいたことのある言葉。イビルはどこで聞いたか思い出そうと頭をフル回転させる。 あれはたしか俺が襲われて、傷だらけで動けなかったとき。 はっとイビルは顔をあげる。思い出したようだ。 「“ねがいごと”?俺が“ステルスロック”にかかったときか。」 グッドはこくりと頷く。笑いは収まったようだ。 「“俺はお前が好きだ”?“会えてよかった”?」 せっかく収まった笑いが復活する。イビルは本気で怒っている。 「じゃああの時笑ってたのは俺を励まそうとしたんじゃなくて?」 「本気で笑ってたのよ。面白いって意味で。最後は我慢が限界で耐えるのが大変だったけど。」 イビルのなかの“華々しく飾った笑顔”は“華々しく”が“いやらしく”に変わった。 「じゃあ泣いてたのは?」 「笑いなきよ当然。そこまでは我慢できなかったー。悔しいわ。」 「じゃあさっきの言葉は?両親が殺されたっていうのとか、俺が……好きだってのは?」 グッドは黙り込む。しかしそのままでいるわけにもいかない。 「それは本当よ。両親は殺された。そして、私はイビルが好き、本当に。」 今度はイビルが黙り込む。それからグッドはイビルに目をあはせ、イビルもそれに応え、お互いに見つめあう形となる。 「グッド…」 「イビル…」 まだ早い夜の月はやさしく二人を照らしていた。 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 今二人はゴローンの山から離れ、寄り添って座っている。 「グッド、こういうの初めてなんだろ。いいのか?初めてが……おれなんかで。」 「私は……イビルがいいの……」 グッドは顔を赤くしている。 「イビルこそいいの?ほかに好きな人とかいたんじゃない?」 イビルは顔をあげすこし考えるようにしていたが。 「いいんだ。確かにいることはいた、幼馴染で。だが…もういいんだ。長いこともう話もしてなかったしな。あっと、そういえば思い出した。」 イビルは唐突に“ステルスロック”にかかった時に感じた違和感を思い出した。 「グッドは……眼はいいよな?」 イビルがわからなかったきのみをグッドは見ることができた。 「あのとき。俺が倒れてから目覚ました時。何であんな顔近づけてたんだ?」 「い、いい、いや別にイビルが寝てるすきにちょっといたずらしてやろうとかキスしようとか考えてたわけじゃ」 「そういうことか」 すぐにグッドは過ちに気付いた。うつむいたグッド(これ以上ないほど赤面している)を見てイビルは声をあげて笑った。久しぶりの、そして2回目のグッドに向けた笑顔だった。グッドは笑顔だがため息をつく。 「もういいでしょ?からかうのはやめてよ。それに、イビルは準備万端みたいだし。」 いつの間にかイビルのモノは大きくなっていた。イビル自身自覚していなかった。 「……わかったよ。じゃあ俺からやらせてもらおうかな。」 そういうとイビルはグッドを押し倒す。グッドはなされるままに倒れる。 「もうこんなに濡れて…。準備万端なのはお互い様だったみたいだな。」 「やめてよ。恥ずかしい。」 イビルは何もいわず、羽をグッドの秘所にあててくすぐるように動かす。 「はうぅぅ……なんか、すごい……。」 グッドは初めて味わう形容しようのない快感に溺れる。イビルはだんだん動作を早め、とどめと言わんばかりに羽の先をすこし突っ込む。 「っはぁぁあああ!」 グッドが絶頂を迎える。その噴き出した量にイビルは驚く。 「すごいな。こんなに出るもんなのか」 「……イビルが、上手だから」 イビルは初めてだったが実際結構うまかった。 「じゃ今度は私が」 グッドはさっきとは逆にイビルを押し倒し、イビルはなされるがままに倒れた。 「こうすると男の子って気持ちイイんだよね?」 「いいひぎゃ」 イビルのモノをグッドは口にいれ上下に動かす。イビルはすぐに出しそうになるが、意地で耐えている。だがグッドのほうは出そうと必死に動かしている。優勢なのはグッドにきまっている。 イビルも限界が来た。 「くはっぁぁぁ!」 イビルのをグッドは飲み込もうとしたが、ほとんどは外に出してしまった。 「うう、濃い。自慰とかしてなかったの?」 「……グッドがいるからできなかったんだろ。」 ああそっかーとグッドは笑う。そして何かを求めるような顔をする。 「ねえ。お願い。」 「……わかった。」 グッドはあおむけになり、イビルはその上に体重をかけないように乗る。やがて自分のモノをグッドの秘所にあてがい、少しづつ中に入れていく。意外とすんなり入っていったが、途中何かに当たる。 「おいほんとにいいの…」 「いいの!もう何も言わないで。」 イビルはうなずく。深呼吸を一回して、腰に力を入れる。そのまま突き破る。 グッドは声には出さないようにしたが、顔はゆがんでしまった。イビルが心配そうな顔を向けるが、大丈夫と言った。 「じゃあ動くぞ。」 イビルが上下運動を始める。二人の間には共通の快感が生まれていた。二人とも初めて味わった。 今回もイビルは耐えていたが、欲求には逆らえない。 「う、あああああ!」 「ああ!」 同時に頂点にたっし、イビルの欲求がグッドの中に放たれる。イビルはモノを抜いた。 「これで、よかったんだな?」 「もちろんよ、イビル」 微笑を浮かべて両者ともに眠りについた。 「おはようございます!」 イビルはグッドにたたき起こされた。イビルは疲れが残っていた。 「近くに都合よく川があったから体洗ってこようよ。」 「そんなこと言ったて。まだ疲れが……」 「じゃ、これあげる。」 グッドが差し出したものに、イビルは目を疑った。 「これは…オボンじゃねえか。いっつも独り占めする…」 イビルは差し出されたオボンを口に入れる前にグッドに無理やり入れられた。静かにしてろっていう意味かとイビルは思った。ともあれ効き目は即効性。イビルは元気を取り戻した。歩きながらグッドはこれからについて話をした。 「たしかこの山を抜けると村があるって話だからそこまでいこうよ」 イビルは予定があるわけでもないので、わかったとだけ言っておいた。 川に着くとお互いの体を洗いあった。相手を想って。 白は黒のために。黒は白のために。これはこれから続くであろう旅の助け合いの最初の1回目なのかもしれない。 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 誤字脱字の指摘があったので、修正しました。もうないと思うのですが、見つけたら教えていただけるとありがたいです。 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ コメント・アドバイス等頂けると嬉しいです #pcomment