writter is [[双牙連刃]] 麗らかな春に舞い降りる……降り注ぐ? 恐怖! が、状態異常無効な奴にはあまり関係無かった模様です。 ---- 春の温かい日差しが差し込むリビング、そこに現在この世の終わりが来たような顔をしているポケモン+αが居る。んまぁこの麗らかな時期にこんな顔をする奴の理由は大体分かる。今テレビに流れてる天気予報でも言ってるしな。 『本日は花粉の飛散も多く、花粉症の方は外出の際は……』 「はぁー、来ちゃったか……今年もとうとう来ちゃったかぁ……」 「こればっかりはねぇ……」 「目に見えない上に無数、どうやっても完全に防ぐ事は叶いませんしね……」 まぁ、ようは花粉症の連中にはきつい時期が来たってだけなんだけどな。俺? 状態異常耐性EXよ? そんなもんに縁がある訳無いっしょ。 「毎年ご主人もレオの兄貴もフロストの姉貴も目と鼻グジュグジュッスもんねー」 「あんたはいいわよねーソウ。特性の免疫が働いてるのか平気そうだし」 「本来ならいの一番にやられてそうだけどな、花粉症のメカニズムを考慮すりゃ」 何故皆でどういう事? みたいな顔をするのか。え、これ花粉症のメカニズムから説明する奴か? めんどくせぇなぁ……。いやまぁ、暇だしいっか。 「そもそも花粉症ってな病気っつーよりアレルギー疾患、ようはアレルギーの一種だ。アレルギーについては知ってるよな?」 「……あんまり!」 「確か体に入った異物への免疫の過剰反応、だったかしら?」 「フロスト正解。阿呆はもうちっと情報番組でも見やがれ」 はい、ハヤトの阿呆を凹ましたところで次の説明に行こう。ようは花粉症ってな一般的に言う風邪みたいな病原になる細菌やウィルスなんかが原因の病気じゃない。もし花粉が病原だったとしたら、今頃世界中パンデミックで大変な事になってるしな。 「うぇー……けどさけどさ、鼻水は出るわ涙は出るわ咳は出るわだしょ? ぶっちゃけ風邪に近いもんなんじゃないの?」 「あぁ、そいつを症状って言っちまえばな。実はこれ、病気がさせる反応じゃなくて体が病原を追い出そうとする生体防御反応ってんだわ。鼻水は鼻に入った病原をそれ以上入らなくしつつ排出、咳は喉にくっ付いた病原を息なんかと一緒に出しちまうっつー効果があるんよ」 「ふむ……ん? と言う事は?」 「レオは分かったか? そう、花粉症で起こってるそれぞれの症状も正にそれってこった。ただし、普通の病原じゃなく、本来は大して害の無い各種花粉にそれらが反応しちまって起きてるんだがな」 よしよし、話を聞いてる全員がなるほどって顔してるな。で、ソウの顔を見ると。そう、ソウの特性の免疫が一番反応しそうなもんだよな。けどソウは平気だ。それは何故か? 「ようは、ソウの体は花粉を毒、ないし病原とは認識してない正常な免疫機能を保持してるってこったな。さっき言った通り花粉症は免疫の過剰反応、反応しないのが普通だからな?」 「な、なるほど……しかしそうなると、どうすれば治療出来るんだ?」 残念ながら根本的な治療法ってな確立されてねぇんだよなぁ。体を守ってくれてる機能が暴走しちまって起きてるから、それを取っ払うなんてこたぁ出来ねぇ。仮にそれで花粉症が治っても他の病原にやられるからな。だからこそ現在は抗ヒスタミン剤やステロイドなんかを使って暴走する免疫系を抑制するのが治療っつー事になってるな。 「免疫を抑制って……大丈夫なのそれ?」 「無論良くない。抗ヒスタミン剤はまだヒスタミン、それこそ鼻水や涙を起こす原因を抑制するだけなんだが、こいつは同時に目覚めなんかを良くする効果を持っててな。当然それを抑制すりゃどうなるか」 「ハイッス! 眠くなるって事ッスね!」 「その通り。それだけじゃなく、眠いとは感じてなくてもなんとなく集中出来なくなったり判断が鈍ったりってのがあるな」 「ん? あーそれか! 昨日それ飲んでるって奴が花粉症の時期は勝率下がるって言ってた原因!」 だろうな。トレーナーにとっちゃ集中力も判断力も最重要って言ってもいい力だ。それが阻害されりゃバトルの勝率も下がるだろうよ。よし、教えてやろうとか言ってるが、いいんじゃないか? 知らないで悩んでるなら可哀そうだしな。 「抗ヒスタミン剤だけでそれなのか……ならばステロイドはどうなんだ?」 「もっとヤバい。免疫機能自体を抑制しちまうステロイドは確かに強力に花粉症の症状を抑える。が、同時にそれは体を防衛する機能を阻害するって事に直結するからな。無論ステロイドが働いてる間は他の病気への抵抗力も減ってるんだ。下手すりゃ花粉症より重篤な病気にやられる可能性もある」 アレルギー治療ってのは、現在じゃそんだけリスキーってこった。青ざめてる二匹と一人にゃ悪いがな。 「ま、一番良いのは花粉をなるべく体に入れないようにする事さな。マスクやゴーグルなんかがこの時期飛ぶように売れるってな、皆気張ってそれらで自己防衛してるってこったな」 「はぁ、なるほど……ポケモンの私達はまだハヤトのボールの中なら花粉も防げるからいいけど、トレーナーはどうしてもって事ね」 「うぇー、結局俺はズビズビに耐えなきゃならないって事ねー」 「むぅ……情けないが、主殿が我慢するなら俺もバトルの際は我慢するしかないか」 ……そもそも炎タイプで体内が高温になって花粉が燃え尽きそうなレオが花粉症なのが俺は不思議なんだがな。あれか? そこまで体の深部に入り込む前に悪さするって事なんかね? さて、花粉症の講義はこんなもんかね。野郎もそろそろ学校に行く時間だし、促してやるとするか。 「ま、花粉症とその治療関係の話はこんなとこかね。暇潰しに付き合ってやったが、おめぇの遅刻の世話まではしてやらんからな?」 「ん? わぉこんな時間! 行かねば! 行くぞソウ、レオ、フロスト!」 「了解ッス!」 「承知しました」 「はいはい。出来ればあまりボールから出さないでよ」 フロスト、それは無茶があるんでねぇのか……? とは思ったがうんまぁ……頑張れ。 さて、騒がしいのが行った、と思ったら庭に行ってたリーフやプラス、それにリィとレンが入ってきたな。まぁ、洗濯物干してただけなんだが。 「ふぅ! お洗濯終わりっと。あ、ご主人と皆は行ったんだ」 「おう。全く、暇潰しに付き合わされて面倒したぜ」 「暇潰し? ライト何したの?」 「ん? まぁちょいと今流行りのもんの話をな」 なんて言うと、知識欲の強いリィは気になりますよねそうですよね。分かってますよ、花粉症講座第二幕の開始ですよっとね。 ま、とりあえずハヤトなんかに話したのと同じ辺りまでは話したな。とは言え、俺の知る花粉症への知識なんてこの辺で撃ち止めだがな。 「花粉症か……外に居たけど、僕はなんともないかな」 「僕もそんな風になった事無いー」 「私もですね。そもそも私は草タイプですし、花粉症にやられる草タイプってなんかなーって感じですよね」 「ははっ、言えてるかもな」 で、だ……気付いてはいたんだが、凄くレンの表情が沈んでるんだが? どったの? 「あのー、レン? どうかしたか?」 「う、うん……ちょっと……この近くにあるスギとか……」 「スギとか? あ、花粉症の元になり易い木だっけ」 「代表的な方だな。そのスギがどうしたんだ?」 「……伐採したいな、って……」 ……え、何? こわっ!? ガチトーンだったぞ今の!? まさかレン、あれなのか!? 「あー……ライトさんやリィちゃんは知らないでしょうけど、この家で一番ヘビーな花粉症患者って」 「レン姉ちゃん凄いよねー。目は真っ赤になるし鼻水止まらなくなるから箱ティッシュずっと持ってるしー」 「んな!? いやだって、今外に居たろ? 平気そう……うん?」 「あれ、そう言えばレン姉ぇ、なんか頭……うっすら光ってない?」 「……うん、ずっと薄い波導流して花粉防いでるから、ね……」 わーぉマジかよ……聞いたところ、今朝花粉が飛ぶってのをテレビで見た時に、俺が常に薄い電気を体に纏ってるのを思い出してなんとか自分にも代用出来ないかと頑張ってみたら出来たそうだ……花粉への対抗心ってスゲー……。 「でもこれ……すっごく……疲れる……」 「うぉぉ、だ、大丈夫か?」 「ちょっと、泣きそう……」 いやそりゃあな……電気だろうと波導だろうと、薄くだろうと常時放出してれば疲れるし、俺みたいに垂れ流しな奴は平気だが普段そういうのが無いレンなら緻密なコントロールが必要になるだろうしなぁ。それをこれだけの間我慢し続けたんだからレンはめっちゃ頑張ってたよ、うん。あぁ、思い出すまでは花粉症にやられない幸福感が上回ってたから負担を感じてなかったらしい……。 「も、もう家の中に居るんだから解除してもい……」 「ダメ! まだ皆外から入ってきたばかりだから体に花粉付いてる筈だもん! しっかりブラッシングしたり花粉除去スプレーした後にお掃除するまでは、が、頑張る!」 こりゃ本当に少量でアウトみたいだな……ま、そういう事なら俺も手を貸すのは吝かじゃあない。というか、ブラシやスプレーを持って三匹に迫るレンの顔がヤバいから早急に手を打とうそうしよう。 世の中にはプラズマクラスター内蔵空気洗浄機なんてもんがあるが……俺も流石にイオンとかそのレベルで電気や電磁波を操るのは無理だが、空気中に散ってる花粉を焼き払うくらいの事は出来るだろ。えっと、極薄で俺の守りの雷を部屋の中に拡散させるイメージで行けるか。毒霧や各種異常を起こす粉塵なんかも防げるんだ、多分花粉も何とかなるだろ。 「ふぅぅぅ……拡がれ」 「ちょ、レンさん怖い怖い! ……ん?」 「あれ、今なんか……」 「んー? ライト、なんかしてる?」 「ふ、ふふふ……って、へ? ライト?」 違和感を感じるような電圧にしてるつもりは無いが、同じ電気タイプであるプラスはなんとなに何か感じたかね? 「なんか……空気が、変わった?」 「なんでしょう、爽やかになったと言うかなんと言うか?」 「……上手くいったかね? レン、ちょっとその薄い波導解いてみてくれ」 「え、で、でも……」 「騙されたと思って、な?」 「う、うぅー……うん」 毎年どんだけか知らないが苦しめられてるもんがうようよしてるかもしれんところでそれからの防御を解けって言われりゃそりゃ渋々にもなるわな。って、解いた途端にそんなに目をギュッと瞑らんでも……あ、ちょっと可愛いかもしれない。 「うぅぅー……あれ? ムズムズしない」 「おっ、成功かね? 初めてやったが、ピュリファイと方向性を変えただけだから何とかなったかね」 「何したのさライトー」 「いやなに、俺の守りの雷は眠り粉なんかの微細なもんも焼き払ったりして防げるからよ、花粉も似たようなもんだから限定空間なら除去出来るだろと思って薄めてこの部屋の中に拡散してみたって訳よ。俺式空気洗浄、ってなところかね」 プラスとリィはイマイチまだよく分かってないようだが、リーフはなるほどって感じだな。草タイプだから空気の変化にも敏感なのかね? で、レンはキョロキョロしたりうろうろしてみてるが、今のところ花粉症の諸症状は出てないみたいだな。我ながらやるもんだろ。 おぉ、レンの目が輝いてる。と思ったら俺の方を向いて……!? 「うわぁー! ライトありがとー!」 「うぉぉ!?」 「空気洗浄機とかも試してみたんだけどずっとダメだったの! ずっと動かしててやっとゆっくり治まるくらいしか効かなくって電気代も掛かるからってなるべく使わないようにしてたんだ! その心配が無くなるよー!」 「わ、分かった分かった。からその、だ、抱き着くのは勘弁してくれ」 び、ビックリしたー……リィとプラスはキョトンとしてるし、リーフはキョトンとした後ニヨニヨし始めるしよぉ……ま、まぁ、嬉しくない訳じゃないが、な。 とりあえず実験の第一段階としては成功と思っていいだろう。となれば、第二段階、実証をしてみたくもなる訳だ。ま、レンにはちょっと酷かもしれんが、本当に効果が出てるのか、症状を抑えれるのかを試してみんと本当に効果があるかのデータが取れんからな。 再度レンに説明して、承諾を得る。いやまぁ全力で喜ばせた後にちょっと窓開けてみて、本当に花粉を除去出来てるか調べさせてくれ、つまり一度花粉症の状態になってくれって言うのは正直心苦しいんだがな。 またうぅーモードになっちまったが、また渋々って感じで承諾してくれた。いや、ギャップを楽しんでる訳じゃないのだよレン? って言うか変な事を言うなリーフよ。 「まぁライトさんの性癖は置いといて」 「だからちゃうっつの!」 「性癖?」 「り、リィ? それは疑問に思わんくていいからな?」 「よーし、窓開けちゃうよー」 「うぅぅー……ライト、大丈夫だよね? 本当の本当に大丈夫だよね?」 「お、おぅ、心配するなって。……多分」 そこまで念押しされると失敗したらどうしようか心配になるよ俺だって……なんて思ってる事は無視されてプラスの手によって窓は開け放たれた。 結果……秒でした。秒でレンの免疫機能は花粉に反応して諸症状が発生。マジかよすげぇな。 「くしゅっ、くしゅん! ふぁ、くちん!」 「あ、毎年のレンさんですね」 「こりゃひでぇな……」 「うわ、花粉症ってこんなにくしゃみ止まらなくなるんだ。あわわ、涙も」 「ひぅっ、も、ぅ! くしゅん! ライト、くちん! 早、く!」 んー、アレルギーがどうしてなるかは原因がよく分からんからなぁ。レンのは相当酷いが、治してやりたくても治してやれんのが少々もどかしい。なんて言ってないで空気洗浄しますかね。 さっき通り電気を部屋に拡散させる。……流石に吸い込んだのまで速攻ストップとはいかんわな。あくまで空気中の花粉を取り除くだけだし。 「ひぇっ、えくちゅ! は、は……あ?」 「ど、どうだ?」 「ふぐっ、ちょっと、楽になってきた、かも」 「おぉ! もう喋れるように! 効果覿面ですね!」 「え、マジで?」 「マジです。いつもはもうあの手この手で花粉対策して飛ばなくなった頃にようやく治まり始めるくらいですから」 「う、うーん……花粉症って大変なんだね」 「くすん、そうだよリィちゃん……大変なの、とっても大変なの……」 なんて涙を拭きながらだがしっかり喋れるまで回復した……お、俺スゲー……。 その後花粉の供給が断たれたのも助けて、レンの症状はそう長く続かずに治まった。こりゃ、なるべくレンが花粉を吸わなくていいように時々空気洗浄してやった方が良さそうだな。 が、レンの尊い献身のお陰で俺の空気洗浄は効果有りだって分かった。ま、辛そうだし少しでも楽にしてやれるなら良かった良かった。んだが……。 「あ、あのーレン? レンさん? 何も俺を捕獲して常に傍に置かんでもいいのだよ?」 「ヤダ! 時期が過ぎるまでもうライトの傍、離れないもん!」 「や、ヤダってね、だから少なくとも俺が居る部屋は何処に居ても大丈夫……」 「それでもライトの近くの方が安心出来るもん!」 「おーぅ、近年稀に見るレンさんの駄々っ子モードですね」 「な、何それ? レン姉ぇが駄々っ子って、ちょっとイメージが……」 「レン姉ちゃん、本当に嫌な事とかあるとたまにこうなるんだよねー。この時期だけ」 ど、どうやら過去にもあまりにも花粉症が酷過ぎて部屋から出て来なくなったり家から一歩も出る事が無くなった事があるそうな……そういやブラシ持った時に片鱗あったね……。 で、さっきの実験で花粉症の辛さを思い出して、それからの解放感を味わったから今はこうなったと。リーフ曰く、こうなったレンは梃子でも意見を変えないし、一週間はこのままだそうな……。待って? それ最悪俺ずっとレンに抱っこされた状態になんの? 「あ、あのーそこのお三方、助けてくれたりは……」 「いやー、その状態のレンさんを止めるのは無理かと……」 「え、ヤダー」 「えっと……ライト、頑張って!」 「うぅぅー、ライトは私の傍に居るの嫌なの?」 ポケ生、時には諦める事も肝心てか? は、ははは……はぁ……。 「……が、頑張って!」 「うんリィ、頑張るよ俺……」 ……その後時間が経ちハヤトや学校に行った連中がぐったりとした俺と頑なに俺を抱っこした状態を止めようとしないレンを発見し、俺の空気清浄に感謝しつつ、レンの駄々っ子モードに頭を抱えたのは言うまでもないだろう。……せめて、寝る時は抱き枕状態じゃないといいなー。はっはっは……はぁ……。 ---- 後書き はい、花粉の飛散状況の予報なんかを見てて突発的に思いついたお話、如何だったでしょうか? 多分ライトは花粉症患者にとっては一家に一匹なポケモン。 季節柄、花粉症だけでなく普通の風邪にも掛かり易い時期ですので、お読みに 春は季節柄、花粉症だけでなく普通の風邪にも掛かり易い時期ですので、お読みになった皆様もどうかお気を付けて! #pcomment