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番外編(聖夜) 街明かりの照らすクリスマス の変更点


writer is [[双牙連刃]]

 クリスマス、その楽しみ方は人それぞれ。そして、ポケモン達もまた、各々に楽しめるもの……。

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「ねぇライト、聖夜ってクリスマスイブの夜なの? それとも、クリスマスの夜?」

 ソウとリーフ、装飾組がリビングにクリスマスの飾り付けをしてるのを眺めていたら、隣で見ていたリィが問い掛けてきた疑問だ。うーん、それって結構意見が分かれるところなんだよなぁ。

「基本的にクリスマスは神の子って奴が生まれた日、25日って事になってる。けど実は、24と25の間の0時前後に生まれたって言われてるから、正式な聖夜は24の夜から25の明け方までって事になってるみてぇだな」
「あら、そうなの? てっきり私は25日に生まれたからそれを祝う夜って事で25日だと思ってたわ」
「そういう考え方もあるな。まぁ、ようは祝う側の捉え方次第だからして、宗教的に厳密にしなきゃならないって訳じゃないなら、そんなに気にしなくてもいいかもだな」
「なるほど……という事は、サンタさんがクリスマスにプレゼントを配るって言うのは、その神の子が生まれたのを祝って配られるって事なんだね」
「それも実はちょっとばかし違うんだよなぁ。まぁ、ややこしくなるから詳細は割愛すっけど、サンタクロースの元になった人の事を称えてプレゼントの習わしってのは出来たんだが、それをする日ってのは実は12月の6日だったりするんだわ」

 俺が聞かせたリィも勝手に聞いてたフロストもそうなの!? って驚いてる。まぁ、俺もそうなんだって知識を引っ張り出して話してるだけだから、詳しい訳じゃねぇけどな。

「そんで、12月6日だの25日だのって色々情報が入ってきて、何時の間にか混ざったのが今のクリスマスになったんじゃねぇかな。また聞きした話が混同するってなよくある話だし」
「な、なんかその辺からは適当なのね」
「俺だって詳しくは知らん。けど、地方によっちゃプレゼントの習慣が6日と25日にあったりもするから、どっちも事実なのは確かだな」
「へぇー、クリスマスって結構ややこしい話なんだね?」
「詳しく調べようとしたら、な。ま、深く考えずに楽しむくらいでいても問題無いし、あまり考え過ぎない方がいいぞ?」
「なるほど、分かった」

 ん、とりあえずリィは納得してくれたっぽいな。さて、なんでリィがこんな質問をしてきたかと言えば……何の事は無く、今日がクリスマスだって訳だ。昨日は阿呆ことハヤトが学校の補習で帰りが遅くなるのが確定してて、せめて今日の夜は何かイベントっぽい事がしたいと泣きついて来たから、こうして家のポケモンがパーティの準備をしてる。因みに今日の奴の手持ちはプラスだけである。
 理由は簡単、クリスマスの料理の準備をレンだけで全て賄うのはきついって事で、レオが台所組に参加する為だ。奴が泣きついて来た事だからな、そう渋る事も無くプラスだけ連れて出掛けていったよ。プラスはパーティ楽しみにしてるーって言って出掛けていった。まぁ、手持ちでついて行けば手伝い免除だからな、そっちの方が楽だって判断したんだろう。
 現在の時刻は13時20分弱、この分なら奴とプラスが帰ってくる頃には用意は終わるだろう。……皆が用意に精を出してるのに俺は何をしてるんだって? 見損なわないでくれよ? 俺とフロストは既にミッションを終えてるからこうして寛いでいるのだ。
 そのミッションとは、ずばりプレゼント係。ま、奴が泣きついてパーティしたいなんて言い出す前から、クリスマスにはお祝いついでに日頃の労いって事でこの家の若めのメンバーであるソウやリーフ、それからプラスとリィには何かプレゼントをやろうって計画してたんだ。
 リィには読みたがっていた小説、プラスにはやりたがっていたゲームソフト。ソウには新しい筋トレ道具にリーフには新しいハーブ栽培セットと、俺の知識から纏めた有用なハーブや木の実なんかの効果組み合わせレシピを添えてって感じだな。予算はレンが家計簿と睨めっこしながら捻出してくれた。大分悩んでたみたいだけどな。
 当然プレゼントを用意しているのはリィ達に悟られてはいない。その為の俺とフロストが用意係って選出だからな。まぁ、買い集めて家に帰ってくるのがなかなかに困難だったりはしたが、多分喜んでくれるだろうって事で、ちょいと頑張らせてもらったよ。
 っと、そんな回想に耽ってたら、キッチンの方からレオとレンが顔を出した。どうやら料理の仕込みは終わったかな?

「よぉ、お疲れさん。仕込みは上々か?」
「うん。後は揚げたり焼いたりだから、ご主人が帰ってくる頃に仕上げるだけだよ」
「下拵えはリィも手伝ってくれたしな。助かった」
「僕だけ何もしないって訳にはいかないしね。部屋の飾り付けを手伝っても良かったんだけど……」

 二匹で楽しそうにあれこれやってるのを見てたら、間にゃあ入れんわな。そんな様子を皆で微笑ましく見守りつつ、時間をテレビでも見て潰すとするかね。

「ところでレオ兄ぃ、ピザって出来そうなの?」
「生地へのソースと具材乗せは終わっている。ライト、焼く時には手を貸せよ」
「ま、マジであの方法で焼くのか……正直俺も上手くいくとは断言出来ねぇぞ?」
「ピザ窯の原理を解いてみせたのはお前だろう。それを再現してみせようじゃないか」

 マジかー……そりゃまぁドーム状にした窯の中に熱対流を起こして高温にする事でピザを焼くってのはレオがピザはどうやって作るんだって時に説明はしたけどよ、それを俺のマルチプルボルトとレオの噴火で再現出来ないかって聞かれた時は流石に唸ったぞ。ま、まぁ、やってみるってんなら手伝いはすっけどさ。噴火を使う以上、リーフにも庭の手入れ的に詫びとかないとならんかね? シールドボルトの応用でピザをドーム状に囲う電撃壁を生み出して、それにレオの噴火で熱対流を発生させる。原理的にゃあやってやれなくも無さそうだが、出来っかなぁ? ま、まぁ、レオがやってみたいって事だし、なるたけ成功するように何とかしてみっかね?

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「たっだいまー!」

 ご、午後5時13分……奴の帰って来た声が聞こえて来た。現在俺は慣れない電流操作の所為で疲労困憊です。ま、まさか熱対流を良い塩梅で生み出す形状を整えるのがあんなに大変だったとは……頭から煙出るかと思ったぞ……。

「よっしゃーパーティだー! って、おぉぉ!? 思った以上のハイクオリティ!?」
「お帰りご主人。折角だからね、皆で頑張ったよー」
「スゲー……唐揚げにポテトにグラタン、うぉぉ! ピザまである! しかもデリピザじゃない!?」
「初めて作ったので少々武骨かもしれませんが、味は保証出来ると思います」
「レオが作ってくれたのか! って言うか本格的って言うか、レンジで作った感じじゃないよなこれ? どうやって作ったんだ?」
「俺の頑張りの結晶だコノヤロー……味わって食わないと呪ってやるからな……」

 まぁ、窯なんかの原理は俺が知恵熱出るかと思う程頑張ったが、焼き加減についてはレオの天性の感覚とでも言えばいいのか、ガチ職人かって言うのが出来たからな。もうマジレオの料理への才能溢れ過ぎだろと思ったわ。

「なんて言うか、凄かったよね。ライト、お疲れ様」
「石のブロック積んで鉄板引いただけでこんなの作れるんスから、レオの兄貴も師匠も凄いッス!」

 そう、物理的に用意したのはそれだけなのだ。後の要素を全て知識と能力だけで賄った俺の努力を誰かもっと褒めて。超褒めて。今後、レオの無茶振りを実行するかどうかはしっかり吟味しよう……。
 さて、気を取り直して……ハヤトの奴がボールからプラスを出して、これで全員揃ったな。プラスも感嘆の声を漏らす辺り、雰囲気作りと料理の数々は満足して貰えそうだな。

「そんじゃ皆揃ったところで……行くぞ! メリィィィ、クリスマァァァス!」

 メリークリスマス、つー事でパーティ開始だ。うんうん、どの料理も美味い。レンとレオの腕なら不味い物作れって方が難題だわな。
 俺とレオの合作ピザも、奴が手を伸ばして食い始めた。チーズの伸び具合、良し。生地の焼き加減も問題無し。不味いって言ったら脳天直撃トールハンマーの刑に処してやる。

「うぉっ、これ美味い! デリピザより遥かに美味い!」
「じゃなかったら作るだけ損だろうが」
「はい、ライトもどうなのか食べたいでしょ? 試作したのはライトがぐったりしてる間に皆で食べちゃったし」

 そう、このパーティの場に並ばなかったピザ達は当然あったのだ。初めて作って一発で完璧なピザを焼けって言うのはどんだけレオに才能あっても無理だった訳よ。つまり俺はその試作の分だけ緻密な電流操作を求められたって訳だ……あぁ、苦労の甲斐あった分だけ、出来は上々だなぁ……。

「ら、ライトさん大丈夫ですか? ピザ食べながら燃え尽きそうですけど」
「うん……大丈夫大丈夫……皆、美味しく食えよ……」
「いやー美味いなー。レオがこれ作れるんならまたちょくちょく作って……」
「止めて差し上げろ! 主に俺の為に!」
「後焼く為に噴火を使われる庭の為にです!」

 いやうん、ピザ焼きの後の庭が綺麗なのは、庭の手入れをしてくれるリーフ様々だな。有難い事だ。
 さて、時間も経って飯も大体済んだ所で、日頃の感謝なんかも込めたプレゼントの時間に入るとするか。
 俺が動こうとしたのにレオも気付いたのか、用意の為に立ち上がった。こういう時は俺達の出番、てな。

「んぉ? ライトもレオも立ち上がってどうしたん?」
「ちょいとお楽しみの用意をしてくる」
「あぁ。皆はそのまま少し寛いでいてくれ」

 伝えて目指すは俺とレンの部屋だ。と思ったら先にレオは自分の部屋へ行ったぞ? どうしたんだ?
 少しだけ待ってると、部屋からレオがある物を持って戻ってきた。ははぁん、そういう事か。

「折角だ、雰囲気は大事だろ?」
「気が利くこって。じゃ、被って持って行くとするかいね」

 ま、クリスマスにプレゼントを運ぶ係ってんならサンタ帽くらい被っても良いやな。そんなら部屋の入り口辺りに用意しておいたプレゼント入りの袋も背中に乗せて、行くとすっか。

「よぉ、バクフーンサンタとサンダースサンタのプレゼント配りのお時間だぜっと」
「俺やフロスト、ライトとレンで考えた物にはなるが用意させてもらった。受け取ってくれ」
「マジッスか!」
「これは、私も気付かなかったサプライズです!」
「おー」
「これがプレゼント……貰うの初めてだけど、なんだろう。普通に物を貰うより嬉しい気がする」

 うんうん、皆それぞれに喜んでくれて何よりだ。レンやフロストに視線を送ると、フロストは当然って感じだけどレンは喜ぶ四匹を見て嬉しそうだな。

「やだ……うちのポケモン大人組、出来る大人過ぎ……!」
「というかこういうサプライズを仕掛けるの、本来お前だからな?」
「ぐはぁ!? ごふ……そ、その通り……」
「まぁ、そんなご主人にも、私達からプレゼント用意したよ」
「え、マジで!?」

 リィ達に渡す分とは別に用意していたプレゼント……のように見せかけた例のブツをレンが取り出して、奴に渡した。あ、これの存在はリーフは知ってる。制作を手伝ってもらったからな。

「おぉ!? 何これ、本!?」
「ふっふっふー、それはですね?」
「クリスマスイブに座学で補習を受けなくちゃならなくなったご主人の為の……」
「ライト監修兼編集の……」
「学力向上、大ボリューム問題集だ」
「……へ?」
「全く、クリスマスイブにまで補習なんて受ける事になったんだから、反省して勉強しなさいな」
「そ、そげなー!?」

 大体このプレゼント配りだってパーティだって、泣きつかれなくても本来は俺達でクリスマスイブにやるかって企画してたんだ。それをこいつの補習の所為で一日伸ばしたんだからな、反省して勉強しやがれっての。
 ……まぁ、俺達だってクリスマスにそこまで鬼になるつもりは無いから、問題集の合間に奴が欲しがってた漫画と、これまたゲームソフトも挟んでるけどな。明日の朝辺り、多少は感謝してくるんでねぇの? 本当、予算捻出を頑張ったレンに感謝しろよー?
 ま、これでプレゼント配りも無事終了。料理も大体無くなってるし、そろそろお開きといきますか。プレゼント貰った組はそれを持って部屋に戻って良し、片付けはこっちに任せるようにって伝えて、後片付けを始めるとするかね。

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 片付けも終わって、時間は夜の9時か。まぁ、結構楽しんだしこんなもんだろ。

「ふぅ、片付けも終わって、ご苦労様ってところかしら」
「うむ。皆喜んでくれたようだし、概ね成功だな」
「ご主人がクリスマスイブに居残り補習喰らったー! なんて言った時はどうしようかと思ったよねぇ」
「そのまま今日も補習かと思ったら、それは気合いで回避したなんつーんだから、最初からそうしろよとは思ったけどな」

 違いないって四匹で笑い合って、リビングで一休みだな。……まぁ、俺としちゃあもう一個クリスマスのイベントを予定してはいるんだが。

「けど、企画側だったから仕方ないけど、こっち四匹には何も無しになっちゃったわね」
「ごめんね、私がもうちょっと予算なんとか出来れば良かったんだけど……」
「レンは頑張ってたって。ありがとう、お疲れさん」
「え、えへへ……ありがと、ライト」

 っと、危ない危ない。レオやフロストが居る前で二匹の世界をまーた展開するところだった。

「なんだ、キスでもするかと思ったのに」
「いきなりんな事しねーっての! それに、そういう事すんのはそっちだろうが!」
「んな!? い、いきなり何を言いだすライト!?」
「別にとっくにそういう仲なんだし、これからはフリータイムなんだから好きにすりゃーいーんじゃねーのー?」
「そ、それはそっちもでしょ!」
「え、えぇ?! それはその、あぅぅ……」

 ……よ、よし、爆撃の応酬は止めておこう。お互いにあまり良くないからな、うん。まぁ、レオとフロストの間には頬を赤く染めてラブな気配を感じるから、クリスマスプレゼントはお互いですになりそうだがな。明日の朝、リーフが血涙を流さない事を祈っておいてやろう。

「じ、じゃあその……そ、そろそろ休むか」
「おぅ。……程々にしとけよぉ?」
「だ、だだだだから! そういうのは無いったら! お休み!」

 全く、分かり易くギクシャクしながら二匹して階段上ってくなんて、こういうのは分かり易いよなぁあいつ等。

「あはは……本当、仲良しだねぇレオ君とフロストちゃん」
「あぁ、全くな」

 さて、これで俺とレンも二匹っきりだぞっと。あいつ等とはいえ、こんな事に誘うのを見られるのはこっぱずかしいからな。ちょいとけし掛けて先に部屋に戻ってもらったって訳だ。

「じゃあライト、私達も休もっか」
「……あ、あのさ、レン。休む前になんだが……少し、夜景でも見に行かないか?」

 無論戸締りはしていくからセキュリティ面に抜かりは作らない。というか、こんな状況になるまでその、あれだ、所謂その……デートって奴に誘えないとは、俺も情けないよなぁ。

「え? 夜景って……え、あ、え!?」
「だ、ダメか?」
「だ、ダメじゃないよ!? ち、ちょっと、鍵とかだけ持つ用意だけしちゃうね!」

 そう慌てたように言いながら、レンは出掛け用のウエストポーチなんかを用意してる。俺の反応的にも、どういう事かは分かって貰えたっぽいかな。
 そう時間は掛からずレンの用意も出来て、二匹でそっと家を出た。鍵の掛け忘れも無いよう確認して……よし、大丈夫だな。

「それで、何処行くの? ライト」
「そう遠くは無いんだが、ちょっと歩いて行くのは大変でな。乗ってくれるか?」

 分かったって言って、レンは俺の背に腰掛けるように乗ってくれた。しっかり掴まってるように言って、軽く地面を蹴って走り出す。いきなり家の屋根に飛び乗るのは、下手したら皆を起こしたり驚かせちまう可能性も無くは無いからしない。まぁ、半分以上はこの夜のデートに気付かれないように、なんだが。
 暫く町の中を走って……見えた、目的のビルだ。

「ここって、確か使われてないビルだよね?」
「あぁ。行きたいのはこのビルの屋上なんだが……跳ばないといけないんだ。レン、俺に掴まってくれるか?」

 俺がそう問い掛けると、返事の代わりにするりとレンの腕が俺の首に巻かれて、レンは俺に抱き着くような姿勢になってくれた。……添い寝の時とは違うレンとの密着状態に高鳴るのは分かるが、落ち着け俺の心臓よ。

「う、うん、いいよ、ライト」
「お、おぅ。そんじゃ、なるべく揺らさないようにするが、離さないでくれよ?」

 こくりとレンが頷いたのを感じて、腕に込められた力が増したのを確認して、俺は地面を蹴った。ビルの壁面に沿うようにして、勢いが弱まってきたら窓の縁を蹴り押して勢いを付ける。それを繰り返して……よし、屋上到着だ。

「よっと、到着っと」
「ふわぁ……こんな事も出来ちゃうなんて、ライトってやっぱり凄いねぇ」
「お褒めに預かりまして。っと、見せたかった夜景はここさ」

 ビルの屋上の一面に立った俺達の眼前には、クリスマスの装飾で煌めく街並みが広がった。散歩ついでに探しておいた季節限定の絶景スポットって奴だな。

「うわぁ! 綺麗……!」
「へへっ、喜んでくれたようで何よりだ」

 危ないから気を付けるように促しつつ、ビルの淵に腰掛けたレンの横に座った。演出って訳じゃないが……折角なら雰囲気も景色も良い所で渡したかったしな。

「……ありがとうライト。とっても素敵なプレゼントだよ」
「どういたしまして。って言うのは、実はちょっと早いんだけどな」
「え? それってどういう……」

 リィやフロストなんかのコネでドレディアのマールと知り合ってたのもあり、依頼してレンへのプレゼントを用意したんだ。金属製にしてもらって正解だったな、お陰で静電気で体に張り付けるようにして毛の中に隠せてた。無論プレゼントの代金は自分で稼いだぞ? と言っても、漢方薬の材料とか探しまくって漢方薬屋に買い取ってもらっただけなんだけどな。これにも買い取りの際にマールの助けを借りたから、今度何か礼をしてやらんとな。

「よ、っと。そんなに高価なもんって訳でもないが……メリークリスマス、レン」
「これ……ペンダント!?」

 静電気でくっ付くって事は素材は鉄なんだろうが、メッキしてるから銀色にはなってるペンダント。ペンダントトップには彗星の欠片があしらわれてるから、なかなか悪くないもんだぞ。因みに欠片自体は俺が漢方素材探してる間に偶然見つけたもんだから加工代金以外は無料だ。

「凄い……綺麗……」
「喜んでもらえたんなら、用意した甲斐もあったってもんさな」

 まさか涙ぐむ程喜んで貰えるとは思わなんだ。っと、気が付けば俺はレンの腕の中に納まってた。体勢的に危ないんだが……拒めない温かさだよなぁ、これは。

「ライト……こっち、向いて?」
「ん? どうし……んっ……」

 抱き締める形から少し体が離れたと思ったら、俺とレンの口が触れ合ってた。急にされると驚くついでに心拍数が急上昇するんだが……こんな夜だ。こういう事があったって、罰は当たってくれんだろうさ。

「ん……これ位じゃ釣り合わないかもしれないけど、私が出来る、精一杯のお礼」
「……俺にとっちゃ、ちと刺激が強いお返しだねぇ」

 そう言って笑い合って、今度はお互いの鼻先を触れ合わせた。口同士のキスはちょっとし難いが、こっちなら……もうちょっと気楽にしてられるかな。
 折角だからペンダントを付けたいって言うレンの首元にペンダントを巻いて、留め具を捻るようにして留める。レンが自力で付けれないと意味が無いから捻るだけで留まる留め具にしたが、俺自身だと磁力操作でクリッとやれば留められるんだな、これが。

「うん、似合ってる」
「えへへ、ありがとう」

 そう言って俺にもたれ掛かるようにしたレンに寄り添うようにして、もう少しだけこの夜景を楽しむとしよう。今日の思い出を忘れないように。そして……来年もまた、二匹で一緒に見れるよう祈りを込めて……。

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~後書き~
 ホワイトクリスマスも良いけど、イルミネーションクリスマスもいいじゃない? というか最後のシーンを書きたいが為の新光クリスマス番外編、如何でしたでしょうか? この二匹はもうしばらくこんな感じで付き合いますが……見守って頂ければ幸いにございます。
 ここまでお読み下さり誠にありがとうございました。次回作でお会いしましょう!
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