Writer[[Nike]] *甘く輝く月 第七夜 [#vd9e82d7] 「さぁ!フィナーレだ!」 一瞬視界が桜色に染まった気がした。何より死ぬのが怖くて全てを見たくなくて目を閉じた。 今まで一度も感じたことのない無への恐怖。存在を否定される事への悲しみ。 レアを助けることが出来なかった悔しさ。そして消えていく自分への苦しさ。 そんな不の感情が自身を支配し闇の中に潜んでいた‘彼’が目覚め微笑んだ。 そして爆発の衝撃が体に響く。痛みはない。目を開けると自分の周りを土煙が避けていた。 そして目の前に兄貴がいた。兄貴が守るを使って俺を助けてくれたらしい。 突然力が抜けた。 それと同時に自然に涙が流れた。 本当は夢かと思った。しかし心は真実を受け止めていた。 兄貴は傷ついた俺の頬にそっと触れると小さな頃よく泣いていた俺に いつも見せてくれた優しい微笑を見せた後、ルカリオを睨み付けた。 「僕の時を止めさせはしない。そう誓ったんだ。いくら仲間でも手加減はしないよ…?」 違った。 いつもの明るい兄貴とは似ても似つかない声だった。 ルカリオはその殺気に後退りする。 「…君が相手か…。君とは一度手合わせしたいと思っていたんだ!!」 ルカリオはそう叫び兄貴に飛び掛った。いくら相性のいい兄貴でもこいつに勝てるという保証はない。 激しい戦いが繰り広げられると思った。 しかし決着は一瞬でついた。飛び掛ってきたルカリオはサイコキネシスによって空中に浮いたかと 思うと立て続けに破壊光線を打ち込む。まさに一瞬の出来事だった。 破壊光線に直撃したルカリオは地面に倒れこみ荒い呼吸をする。 「よーし、これからが本番。弟の分までたぁ~っぷりお仕置きしてあげるからねぇ?」 兄貴は倒れこんでいるルカリオにゆっくりと近づき見下すと表情が怒りから黒く怪しい笑みに変わる。 その顔を見上げたルカリオの顔からみるみる血の気が引いていく…。 直後、ルカリオの断末魔が森中に響き渡った。 ---- 「いやあああっ!!!!」 私は大声を上げ跳ね起きる。 心臓が高鳴り額には汗がにじむ。恐ろしい悪夢を… ………あれ………? ど、どんな夢だったかな?全然思い出せない…。 「お目覚めですか?」 「わああぁっ!?」 突然横から話しかけられ再び大きく飛び上がる。 振り向くとそこには一匹のムウマージがいた。 「よく眠っておられましたよ?悪夢に魘されながら…」 「………」 この人はいったい何なのだろう?それに魘されていたのならよく眠っていたとは言えないような気がするが…。 そういえば私は何をしていたんだっけ…?今日の出来事が思い出せない。まるで記憶を抜き取られたような不思議な感覚になんだか目眩がする。 まぁ、思い出せないのならそれはそれでいいのかもしれない。取り敢えず状況を飲み込もうと辺りを見回す。 足元には意図的に作られた葉っぱのベッド。これは多分そこのムウマージが作ってくれたに違いない。摘み取られたばかりの葉が独特の香りを漂わせている。 周りを360度見回すと元気に育った木がたくさん生えていることが伺える。 しかし闇夜であるために遠くまで見通すことが出来ない。それどころか頭上に葉が生い茂っているため5m先もはっきり見えない。いくら視力がよくても夜目が利かないのが種族的な小さな悩みである。 鋭い眼の特性を持った、ピジョットの気持ちが今日に限ってよく分かる気がする。 結局、自分では状況が理解できなかったため少し躊躇いながらもムウマージに質問する。 「あの…ここは何処ですか?」 「ここはトバリの森ですわ。わたくしが運んできましたの」 運んできた…。じゃあ私はいったい今まで何をしていたんだろう…? 「あっ!あの、ラックさ…オスのブラッキー見ませんでしたか!?」 そうだ、少し混乱していて気付かなかったけれどラックさんが見当たらない。 何かを知りたかったらとにかく訊け。と誰かが言っていた気がするようなしないような…。 「存じ上げません。ですがそのお方はもうそろそろ私たちと出会うべき運命にあると思われますわ」 「どういう、意味ですか?」 聞き返した直後遠くから微かに誰かの声がした。 「おーい、レアちゃ~ん」 「静かにしろよ。みんな寝てるんだぞ?…」 「レ~アちゃ~ん?」 「……………」 声が少しづつこちらに近づいてくる。私の名前を呼ばれているのは間違いないだろう。 なんとなくそんな感じがする。 そのまま待っていると音はだんだんとこちらに近づいてきて声の主が茂みを掻き分け顔を出した。 「みぃつけた♪ここにいたんだね。ほらほら早く来なよアルテミス」 茂みから顔だけ出したアポロンさんはどうやら後ろに向かって手招きしている。 そしてそのアポロンさんの隣から出てきたのは…傷だらけのラックさんだった。 体中に傷がついていて左の後ろ足を少し引きずっている。 「レア…。…ぅ…く…」 彼は私の顔を見ると複雑な表情をして名前を呼び突然泣き始めた。 涙を流しながら小さな嗚咽を漏らす。 「一人にして…ぐすっ、ごめん…!」 そう言いながら泣き続ける彼を私は優しくなで続けた。 何か言葉をかけるわけではなくしっかりと彼を抱きしめた。 そんな私たちに気を利かせてくれたのかアポロンさんとムウマージはいなくなっていた。 ---- 「こんな所で奇遇だね。メイアルがレガントとパーティを組んでいるなんてね」 「そういう貴方はお一人ではありませんか。まだ異性と二人で並んで歩くことがままならないのですか?」 実はこうやってメイアルと会って話をするのは初めてだ。 話していると僕の中を覗かれて掻き回されている気分になる。昔からそうだった。 はっきり言って少し気分が悪い。 昔、読心術で彼女の中を覗こうとしてみた。しかし見えたのは真っ暗な闇だけだった。 サーナイトならもう少し感情を読み取れたかもしれないが僕にそれ以上は無理だった。 ホントは読心術は苦手だしあんまり使いたくない。これは昔から変わっていない僕の特徴。 けど、ちょっとだけミラクルアイが使えるフーディン達が羨ましかったりもする。 「いや、もう大丈夫。最近は少しづつだけど僕も変わってるんだ。気付いてるでしょ?」 「そうですわね。表情にすこし覚悟が出てきましたわね」 とか言いながら目を瞑っている。言ってることとやってることが全く噛み合っていない。 確実に僕の中を観ている。というよりは覗いている。やっぱり気持ち悪い。 「そうだ、レアちゃんのことなんだけ―――」 ガサガサッ! 「僕を置いていくなんてなかなか非道な事をしてくれるね…」 ふと、喋ろうとした瞬間に茂みが揺れ何かが顔を出す。 そこには今にも倒れそうでふらふらしているルカリオ。なんだ、レガントか…。タイミング悪いなぁ。 確かぼこぼこにした後、木にしっかりと縛ってきたはずなんだけどな…。 見た目によらずなかなか馬鹿力みたいだ。おっとそんな事はどうでもいいや。 レガントを無視して続ける。 「レアちゃんってね、まだ、き―――」 「僕を無視するなぁぁぁ!!!」 必死だねー。じっとりした目つきでレガントを見つめると気分を害されたような表情で近づいてくる。 「彼女の記憶が戻っていないのは、多分過去に受けた精神面での傷が大きいみたいだね。 傷のおかげで記憶は曖昧になりそれを無理矢理繋げているような状況だよ。 このままだと彼女は過去の扉を間違った方法で開いてしまうに違いない。 一刻も早く森へ連れて行かなければいけないみたいだよ」 「ええ、私もそのように判断して所々ですが邪魔になりそうな記憶は消去さして頂きましたわ。 と言っても私は記憶の神ではありませんので古い記憶は少ししか消せませんが 悪夢と夢喰いで昨日の記憶は大方消去させていただきました」 メイアル、やっぱり頭が冴えてるね!記憶を消すなんてなかなかやれることじゃない。 催眠術で…ん?昨日? 「もしかして日付変わってるの?」 「ええ、今現在は深夜の1時57分ですわ」 その言葉をきいた途端に急激に眠くなって来たよ…。 ああ、僕の目に映る世界が歪んで…捻じれて…暗くなって… 「あの子を早く森へ連れて行くにはあのガキが邪魔だと思って…」 「貴方は本当にお粗末な頭をお持ちですのね。主たちになんと言われたか覚えていないのですか? 『彼女の近くにいた者は傷つけずに必ず連れてくるように』と言われましたでしょう? そんなお粗末な脳みそはいっそお豆腐と交換したらどうですの?」 「お豆腐って…。大体僕の存在に敬意を払うべきだよ。僕自体が美の象徴な――」 「お黙りなさい。その言葉は幾度となく聞きましたわ。その割には美に近づくどころか どんどんどんどんどんどんどんどん遠のいてはいませんこと?」 「僕はそんなに信用がないのかい?」 「森に生えている鮮やかな色をした大きなきのこの方が信用できます」 「それって毒キノコなんじゃ…」 あっははー☆なんだか難しい話をしているねぇ。僕は…もぅ、だめ… アポロンは目の前が真っ暗になった。 ---- 一人称が被り始めた…orz ---- **コメント欄 [#d7bda189] コメントをよろしくお願いします - テステステスト~♪ ――[[Nike]] &new{2010-02-01 (月) 00:17:01}; - 秋だね~ ――[[はらいち]] &new{2010-10-24 (日) 21:48:06}; - 誰が喋っているのか分からない ――[[タコ]] &new{2012-01-07 (土) 22:57:06}; #comment IP:133.242.146.153 TIME:"2013-01-30 (水) 13:49:29" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%94%98%E3%81%8F%E8%BC%9D%E3%81%8F%E6%9C%88%E3%80%80%E7%AC%AC%E4%B8%83%E5%A4%9C" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0; YTB730)"