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獣の島5 の変更点


**獣の島5 [#q6b62d5c]

「ねえ…シルバ…本当にあんな答えでよかったの?」
アカラは不安そうにシルバにそう訪ねた。
「聞くまでもないさ。答えを言い、それを実現して来いと言われたならするまでだ。」
シルバ達は既に御神木の洞を出ており、今は村に戻っている途中だった。
アイルはシルバの答えに対し、それを成し遂げるように言った。
「それが私から与える試練、『真の護る心』だ。今お前が言った事、嘘偽りなく成し遂げてみせよ。その時に記憶の欠片を手に入れるに相応しい存在だと認めよう。」
それがアイルの試練だった。
「もうすぐ村に着くけど…僕は嫌だな。そんなこと…」
見覚えのある場所まで戻ってきた時にアカラがそう漏らした。
「大丈夫だ。何も問題ない。」
そう言いながら、耳の垂れたアカラの頭を撫でてやった。
茂る樹木の並木を曲がり、村の入口まで戻ってきた。
流石に口論を続けていた彼ら六人も何時間も顔を合わせていれば言い合うこともなくなったようで、静かにシルバの帰りを待っていた。
が、相いれることもなく互いに顔を合わせずにそっぽをむいていた。
入口に立っていた門番のポケモンがシルバの帰りに気付き、急いでジオ達に知らせに行った。
「ジオ様!ラキオ様!バルト様!それとフレア様!アクア様!エレキ様!シルバさんが帰ってきました!」
その知らせを聞き、皆欲しいおもちゃを我さきにと取りに行く子供のように押し合いへし合いしながらシルバの元に駆け寄ってきた。
「シルバ殿!よくご無事で戻られた!」
「五月蝿い!黙っていろフレア!さあ今こそ我らと共に…」
「貴様こそ黙らんかジオ!攻めてこぬ敵を追いかけるなど無意味だ、我らと共に…」
シルバの前に揃えば必ずと言っていいほど口論を始める六人に呆れながらも、シルバは大きな声で
「悪いが俺に提案がある。いや、むしろ決定事項というべきか…」
そう言い、六人の動きを止めた。
「して、その提案とは?」
ジオが代表するように聞くと
「まず、二つある村を一つにまとめさせてもらう。」
嫌そうな顔をしたものの、シルバの提案のため小さく頷きながら次の言葉を期待しながら待っていた。
「そしてその村を……俺がまとめる。」
一瞬、シルバが何を言ったのか理解できず、六人はきょとんとしていた。
「ハハハ…何を言い出すのかと思えば、確かにシルバ殿は強い。」
ジオがそう言い、続けるようにフレアが
「だが、村をまとめるのは強さだけでは務まらん。民の望みを叶えられる力が…」
「悪いが、今のあんた達より俺の方が村人の気持ちは分かれるつもりだ。」
シルバは聞き終わる前に言葉を遮り、自身の意見を挟んできた。
「少なくとも、互いに罵り合うことしかできないあんたらよりも今、皆が望んでいることぐらいは俺には分かる。俺が長を務める。」
そこまで言い切ったシルバに対し、
「シルバ殿…少しばかり戦が出来る程度でのぼせてはおらんかな?」
「そなたの言い草、我々では務まらぬと言っているようにしか聞こえんのだが?」
口々にそういう二人に対し、
「そういったつもりだが?それがどうかしたか?」
挑発にも取れる返答をさらりと返した。
「自惚れるな!たかだか狂神と呼ばれた程度で&ruby(まつりごと){政};((政治のこと))が務まるとでも思っているのか!!」
「一人で村をまとめるだと?貴様も我らの力を舐めすぎだ!」
例えそれはその六人でなかったとしても逆鱗に触れるであろう返答だった。
彼らの怒りは当然で、怒る彼らを見ても目の色一つ変えずに、
「たかだか三人ずつでしか戦えんあんたらより俺が弱いと思うか?力を舐めてると思うのなら…」
そこまで言い体制を低く構え、応戦体勢を取ってから
「試してみるか?」
そう言い、爪をチョイチョイと動かし、六人を挑発した。
完全に怒った六人は三、三に素早く別れ、
「その自惚れ、後悔することだ!我ら三闘神を甘く見るな!」
「貴様一人に我ら三帝を相手にまともに戦えると思うなよ?」
そう叫び、一気に飛びかかった。
双方の攻撃がシルバめがけ繰り出されるが、何事もないかのように風に吹かれる柳のように攻撃の隙間を掻い潜っていた。
そのまま流れるようにジオ達の方に一気に駆け寄り、とめどない連撃を繰り出した。
「ガッ…!くっくそ…!私がこの程度でやられる…など…」
動きが鈍ったのを確認するとそのまま素早く標的をラキオ、バルトに変え、次々に薙ぎ倒していった。
「あ…あっという間に…しかし!我々とて三帝!易易とはいかぬ!!」
結果はほぼ同じ、フレアを瞬く間に突っ伏させ、アクア、エレキも倒してしまった。
「所詮、あんたらの力なんてこんなものだ…」
地面に伏せた六人の真ん中で立ち尽くし、そう六人に向かって吐き捨てた。
「分かった…認めよう貴様の強さ…好きにするがいい…」
実力の差を嫌と言うほど思い知らされ、既に立ち上がる気力すらも彼らは失っていた。
「そうか…ならば村人は全て最前線で戦う兵士にする。戦えぬ者は俺が自らの手で皆殺しにする。それがたった今、俺が長になったことで決めたルールだ。」
その言葉はあまりにも唐突で、非道極まりない言葉だった。
「なんだと!!」
「そんなことは許さぬぞ!村を守るのが長の勤め!にもかかわらず、戦えぬ者も戦の駒にするなど我らが許さん!」
戦う気力を失っていた彼らも息を吹き返し、もう一度立ち上がった。
「だがどうするつもりだ?三人ずつかかってきたところで結果は見えているぞ?三人ずつでならな。」
立ち上がった彼らをシルバは挑発し、身構えた。
「今の我々では勝ち目はない…どうすれば…!」
必死に勝ちの道筋を模索するジオ、そんな彼に
「ジオよ!今は我々がくだらない意地を張っている場合ではない!力を貸してはくれないか!」
フレアが先にそう訴えた。
フレアのその必死の訴えを聞き、ジオは小さく笑った。
「忘れていた…我々の強さ…それは我々六人が力を合わせた時に真の力を見せるのだったな…」
そうジオはつぶやき、フレアをまっすぐに視界に捉え、静かに小さく頷いた。
しかし、その目は既にいがみ合う者の目ではなく、共に戦う者の強い目になっていた。
散開し、シルバを取り囲むように距離を置き、一斉に技を繰り出した。
しかし、シルバもそれを再度紙一重で躱していた。
そのまま攻撃に移ろうとするシルバにジオが急接近しインファイトを繰り出した。
その猛攻をシルバは全て受け止めそのまま反撃しようとしたところにフレアのかえんほうしゃが遮った。
攻撃を避けるため後ろに跳んだシルバをラキオがそのままとっしんで追撃。
流石のシルバも空中では急な方向転換はできず、まともにそのとっしんを喰らう羽目になった。
再度宙を舞うシルバは、空中で体制を立て直し着地した。
「流石にきついな…だがまだまだだ。」
そう言い、技を出し切ったラキオに殴りかかった。
はずだったのだが、足に痛みを感じ、シルバは自らの足元を見ると左足が辺り一面の氷と共に標柱に囲まれていた。
「バルト!エレキ!いまだ!」
不意を突き、れいとうビームを繰り出していたアクアが二人にそう呼びかけた。
「止めだ!せいなるつるぎ!」
バルトが角にエネルギーを集中させ、光り輝く角でシルバに連撃を浴びせ、さらに宙に浮かせると、エレキがそのままシルバめがけてかみなりを落とした。
雷は見事シルバを貫き、シルバと共に地面に降り注いだ。
「終わりだ。我らの本当の力その身でしかと味わえ。」
焼け焦げた地面に大の字で横たわる焼け焦げたシルバに対しそう言い放った。
するとシルバは薄く笑い、
「フフッ…そうだ…あんた達の本当の強さは六人で戦うことにある。」
そう言いながらシルバは飛び起きた。
未だ余裕の見えるシルバに対し、再度身構える六人。
「いや、もう大丈夫だ。俺に戦う気はない。それよりもあんたらも目が覚めたか?」
シルバにそう言われ、はっと六人は気が付いた。
今の今までいがみ合っていた六人はそこに肩を並べ、共にシルバと戦っていた。
「まさか…シルバ殿、これを気付かせるためだけに…」
シルバは再度薄く笑みを浮かべ、
「そうだ。あなた達の本当の実力は六人が揃った時にある。そうアカラが教えてくれた。」
「アカラが?あの子が…」
戦うシルバ達から距離を置いた場所で、静かに戦いを見守っていたアカラに六人はようやく気が付いた。

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「よかろう、答えを…」
アイルのその問に対してシルバが出した答え…それは
「俺の答えは簡単なことだ。今現在、仲違いしているジオ達三闘神とフレア達三帝を仲直りさせるだけだ。」
そう、アイルに対し堂々と答えた。
答えを聞き、険しい表情を見せるアイル。
「確かにそれならば村を守りつつ、お前は旅を続けることができる。だが、話し合いで解決するほどの問題でもないぞ?」
長い間、いがみ合う六人を鶴の一声でどうにかできるものではないのはシルバも分かっており、
「そこでだ、俺が悪者になってあいつらをまとめさせる。」
そう、シルバは提案してきた。
「悪者?どういうことだ?」
いまいち要領がつかめないアイルはシルバに説明を求めた。
「まず、村に戻り、俺が長になると切り出す。そうすればあいつらも矛先が俺に向く。そこでまずあいつらは三人ずつで攻撃を仕掛けるだろう。」
そこまで言った時に
「待て、もしや六人と戦うつもりか?」
アイルは念のためにシルバに確認した。
「ああ、所謂ショック療法だ。三人ずつで戦いを挑む六人を適当にあしらって、その後、なにかしろの方法であいつらの闘争心を奮い立たせる。」
「シルバよ、確かにお前は強いが六人もの伝説級のポケモンを相手にするのは厳しいと私は思うぞ。」
シルバの淡々とした喋りに対し、そう割って入った。
「大丈夫だ、俺はあいつらよりも強い。」
そう言い切ったシルバを見て、アイルはまた笑い出してしまった。
「一体何処からそんな確信が沸くのかは知らんが…いいだろう。そこまで言い切るということはそれなりの自信があるということだ。」
その言葉を聞き、シルバはそのまま話を続けた。
「そして今度は六人全員で、同時に戦ってもらう。そして俺がわざとそこで負ければ問題は解決だ。」
そこまで言い終えたシルバに対し、
「よかろう。それがお前の答えなら今すぐ実行してもらう。それが私から与える試練、『真の護る心』だ。今お前が言った事、嘘偽りなく成し遂げてみせよ。その時に記憶の欠片を手に入れるに相応しい存在だと認めよう。」
その言葉を聞き、シルバ達は神の依代を後にした…

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「ジオさんもフレアさんも…もうお互いにけなし合ったり、いがみ合ったりするのはやめてもらえませんか?」
アカラは必死に心の奥から出る声をそのまま口から言い放った。
「分かった。我々も馬鹿だった。互いに負担を減らすためにと思って行なったことが裏目に出るとはな…これからは皆で全ての民を守ろう。」
ジオが代表し、アカラにそう優しく言ってあげた。
「シルバ殿、度重なる無礼ここでしかと謝罪しよう。」
「いや、俺もあんたらには酷いことをしたからな。これでおあいこだ。」
謝ろうとした六人にそう言い、しっかりと互いに許しあった。
「シルバ殿、我々と共にこの村を…いやこの島を守ってはもらえぬか?」
フレアがシルバに対しそう切り出してきた。
「悪いが、俺には今から…」
「シルバには今から世界を救うための旅に出てもらう。そのためにお前達六人をまとめたのだ。」
そこまで言いかけた時に横からその言葉をアイルが付けてしてきた。
「ア、アルセウス様!!」
「アイル…」
アイルの登場にその場にいたポケモン達は驚きで身動きできずにあった。
「シルバは今、世界の命運を懸けた存在だ。そのためにここで長々と足を止められるわけにはいかぬ。」
アイルのその言葉に対し、
「かしこまりました。我ら六人でこの地を守り通してみせます。」
かしこまり、深く頭を下げながらジオ達はそう言った。
「うむ、しかしそこまでかしこまる必要はないぞ?私はただシルバに記憶の欠片を届けに来ただけの身だ。」
そう言い、シルバの方に向き直し、
「シルバよ、そなたの守る心しかと見届けた。受け取るがいい…これがお前の『記憶の欠片』だ。」
そう言うと、アイルとシルバの間にまばゆい光が現れ、次第にそれは欠けた石版のような形へと形成されていった。
仄薄く紫に輝くその石版をシルバは受け取った。
その途端、頭の奥、とても深いところから何かが浮かび上がってきたような気がした…
「シルバよ……の……定……めるか…?」
途切れ途切れに聞こえる誰かの声…そして
「お安い御用です。クロム様、その頼み引き受けます。」
聞き覚えのあるような、ないような誰かの声…
そこまででその映像は途切れた。
「今のは…?」
「その石版に宿りしお前の記憶の欠片だ。全ての記憶を取り戻した時、それが旅の終わりだ。」
石版に触れ、記憶を僅かに取り戻したシルバにアイルはそう告げた。
「この世界の全ての島にその記憶の欠片を持った者がいる。全ての石版を集め、私の待つ場所、神の社まで来るのだ。その時を待っている。」
そういうが早いか否か、つい先ほどまでそこにあったアイルの姿は既に何処にもなく、まるで幻だったかのように消えてしまった。
「ア、アルセウス様は!?」
突然煙のように消えてしまったアイルに六人は驚いていた。
「分かった。それが俺の旅だというのなら、近いうちにたどり着いてみせる。待っていろ、アイル。」
そう、消えたアイルのいた場所にシルバはつぶやいた。
しばらく時間が経ち、ようやく村は落ち着きを取り戻した。
ジオ達は近いうちに村人を全てそちらに移すと言い、村じゅうを駆け回っていた。
フレア達も迎える準備をするために一度村に帰っていった。
「それじゃアカラ、世話になったな。またいつかここに戻ってくる。その時にまた会おう。」
そう言い、シルバは村人の好意で貰った小さなリュックを片手に村を後にしようとしていた。
「シルバ!リュックを僕に渡して!」
そう言いながら、シルバのリュックをヒョイと取り、アカラがそれを背負った。
「こら!アカラ!シルバさんに迷惑かけちゃ駄目だろ!」
一緒に見送りに来ていたラッタがアカラを怒っていた。
「いいの!だって僕もシルバと一緒に旅に行くからね!」
そう言いながらシルバの方を見ていた。
「好きにすればいいさ。」
フッと小さく笑い、シルバはそう言った。
その言葉を聞き、アカラは嬉しそうにしていた。
「ということなんで!僕も行ってきまーす!」
そう言い、見送りに来ていたポケモン達を唖然とさせていた。
ポカンとしているポケモン達の中の先ほどのラッタが、
「なあアカラ。お前まだ自分のこと僕って呼んでるのかよ。」
そうアカラに対して言ってきた。
「なぁに?僕が僕のことを僕って呼んじゃいけないの?」
その表情にはなんの曇りもなく、当たり前のようにアカラはそう返していた。
「だってお前、女の子だろ?なのに僕っておかしいだろ。」
そう嬉しそうに言う、アカラにラッタはそう言った。
「お前女の子だったのか?えらく元気がいいから男の子かと思ってた。」
驚きにも似た表情でシルバはそう言った。
「えへへ~よく言われる。」
アカラは照れくさそうにそう言いながら、シルバの前を歩き出した。
「別にいいでしょ?僕は僕なんだもん!それじゃ!行ってきま~す!」
そう言い、シルバの手を引き駆け足で村を出て行った。
色々ありすぎて結局見送りに来たポケモン達はただただポカンとその様子を眺めるだけになっていた。
その賑わいよりもさらに後ろの方でその様子を眺めるポケモンが一人いた。
「シルバの登場と『記憶の欠片』…そして世界の安定に関わっている…これは&ruby(ヘッド){『頭』};に報告しないといけないわね…」
そう、呟いたそのポケモンは家々の影に消えていった。
シルバの旅は元気な女の子、アカラによって始まり、引っ張られるように次の旅へと歩を進め始めた。

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IP:125.13.182.97 TIME:"2012-04-15 (日) 18:22:19" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%8D%A3%E3%81%AE%E5%B3%B6%EF%BC%95" USER_AGENT:"Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/4.0; BTRS122063; GTB7.3; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; MALN; CIBA; .NET4.0C)"

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