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**獣の島4 [#i295ecb5]
鬱蒼とした木々の間をこの村に来た時のように二人で色々話しながら歩いていた。
まず、彼ら六人の過去について教えてもらおうとしたが、アカラ自身もまだとても幼く&ruby(おぼろげ){朧気};にしか覚えていないと言った。
次に今向かっている神の依代について話しだした。
「アカラ、その神の依代というのはどんな場所なんだ?」
「えっとね…場所っていうよりもこの島の真ん中にある御神木の別名なんだ。」
聞けば聞くほど自分の目指している場所が分からなくなっていくような気がしたが、それでもシルバは
「御神木?いいのか?そんなところに俺が勝手に入っても…」
御神木などという島に祀られているものに自分がズケズケと入っていいか気になり念のためにそう聞き直した。
「よく分かんないけど、大丈夫なんじゃない?その御神木の洞に集まってお祭りをしたりとかもするし。」
「よく分からないって…まあいいか。」
予想以上に適当な返答にびっくりしたが、祭りをする場所なら恐らく入っても大丈夫だろう。
「しかし…木の洞に集まれるということは相当でかい木なのか?」
そう聞くとアカラは頷き、
「村の人達がみんな集まれる広さだったよ。最近は戦いが原因で集まってないけど…」
そう言うとまた寂しそうな顔をし、耳も力なく垂れ下がった。
「大丈夫だ。よくは分からないが俺が記憶を取り戻すことは世界の平和に関わってるそうだ。」
アカラの頭を撫でながら慰めるように優しく喋りかけた。
「関わってるそうだ…って、誰から聞いたの?」
自分のことではないかのようにしゃべるシルバを不思議に思ったのかアカラは覗き込むように見ながら聞いてきた。
「誰と聞かれると俺も分からん、けど知っているような知らないような…まあ、そいつが俺の心に直接話しかけてきたわけさ。」
そんなことを言えば尚更分り難くなるのも当たり前で、アカラは頭の上に沢山の?を浮かべてそうな表情をしていた。
「えーっと…?つまりその人がシルバを助けてくれてるの?」
「助ける……恐らくな。そいつが神の社に来いと言った張本人だからな。」
そんな話をしながら歩き続け、森の奥深くまで分け入り、ついに神の依代までたどり着いた。
ほぼ島の中心、村の周りに生えていた樹木とは比べ物にならないほどの荘厳な樹が一本、まっすぐに天を衝くように生えていた。
「これが御神木だよ。」
それは樹と呼ぶにはあまりにも大きすぎて、一目見た時にそれが樹であると理解することができなかった。
幹は幹と呼べる太さではなく、そこにポッカリと空いた穴は洞窟と見まごうほどの深さと広さになっており、それが樹であることを忘れさせるほどだった。
神の依代…その名が相応しいほどに悠久の時を生きた樹であり、既に人が踏み込めぬ領域となっているような気がした。
「アカラ、本当にここに入ってもいいのか?」
「いいもなにも、もしかするとここにシルバの記憶があるかもしれないんでしょ?迷ってる暇なんてないよ。」
その荘厳な光景を目の前にして気が引けるシルバと、特に気にしていないアカラの姿が深い森の深緑の中に映えていた。
しかし、樹の洞の奥へ進むにつれて二人の姿は森の中へと消え入るように馴染んでいった。
洞に降りていくに連れてその深さが尋常ではないことを思い知らされた。
外から見ていた時はよく見えなかった奥の方は、ただ暗がりになっているわけではなく、さらに奥へ奥へと続いていた。
進む程に辺りが暗くなり、次第に足場も悪くなっていった。
一寸先は闇、そんな言葉が生易しく聞こえるほどの暗闇の中、互いの声を頼りに下へ下へと降りていった。
ほとんど何も見えなくなってきたその時、ホゥと美しくも幻想的な明かりが急に現れた。
「明かり?なぜこんなところに。」
「ヒカリダケっていうきのこなんだって。なんでも暗闇ではランプの代わりになるし、美味しいらしいよ。」
アカラは既にこの光景に慣れているようで、その光を見て驚くシルバに説明していた。
降りるに連れて光の量が増え始め、ついには外にいた頃となんら変わりないほどの明るさになっていた。
「すごいな…たかがきのこでここまで明るくなるものなのか…」
「このきのこがあるおかげで僕達はここでお祭りが開けたんだよ?」
たかがという言動は流石に気になったようで、アカラがそう訂正してきた。
「いや、素直に感心してるだけだ。こんなにも小さな光が寄り集まって外の明かりに負けないほどに照らしていると思うとな…」
その後も2,3会話をしていたが、ついに
「着いたよ。ここから先には僕達でも入ってない空間があるんだ。」
樹の洞の最深部、以前は祭りが行われていたことがわかる痕跡のある部分の少し離れた壁に、そこから先には進めないように鎖が蜘蛛の巣のように貼られていた。
「いかにも、という場所だな。ここまで来て帰るわけにもいかんな。」
錆び付いた鎖に手をかけ、シルバはそれを一気に引き剥がした。
剥がれる鎖がジャラジャラと金属同士がぶつかる音を立てながら崩れていった。
「入ろう。心の準備はいいか?アカラ。」
「もちろん!」
シルバの問いに元気なひとつ返事で返した二人はそのままさらに奥、その樹の洞の最深部へと進んでいった。
その道幅はポケモン一匹が通るのがやっとの狭さ、シルバにはいささか狭いようだった。
ある程度進むと道が開け、小さな小部屋のような空間に出てきた。
「ここで間違いなさそうだな。」
シルバがそう呟いた時、
「ようやく来たか…待ちわびたぞシルバ…」
そんな声が、自分の心に直接語りかけていた声が今度はその空間の何処からか響いてきた。
「お前の記憶を廻る旅、それは恐らく困難な旅になろう…しかし、その果てにこそ心の平和を得るための鍵がある。」
闇の中からスゥ…と現れたそのポケモンの姿はアルセウス。
「ア、アルセウス様!?僕初めて見た!」
アルセウスの登場に驚くアカラ、しかし今度は対照的にシルバの方は一切同じていなかった。
「我が名はアイル、シルバよ、お前の旅の途中私の名を口にせねばならぬことが多々あろう。そのためにも決して忘れぬことだ。」
アイルはシルバに向かってまっすぐにその言葉を告げた。
「分かった、アイル。それと…」
そのまま話だそうとしたシルバを遮るようにアカラが
「ダ、ダメだよ!シルバ!アルセウス様にそんな口聞いちゃ!」
とても慌てるアカラを見て不思議そうに思うものの、
「ハハハハハ…よい…シルバには我々と同等に話せるだけの事をしてもらっている。」
アイルは笑いながらその光景を見ていた。
その言葉を聞き、アカラは何度もシルバをまじまじとみつめていた。
「そ、そんなにすごい存在だったんだ…シルバって…」
しかし、当の本人も不思議そうな顔をしていた。
「アイル、さっきの続きだが、もしあんたが持ってるなら俺の『記憶の欠片』を返して欲しい。」
そのままシルバは話を続けた。
「よかろう。だがシルバ、お前には記憶の欠片を手に取るに相応しいか試さなければならない。」
アイルのその言葉を聞き、体勢を低く構え直したシルバを見て、
「フフフ…シルバよ、何も力を試すことだけが試練ではない。」
そう、続けて話した。
「そうなのか?ならその試練ってのを教えてくれ。」
何も知らないのか、シルバはそうアイルに聞き直した。
「んむ?もしやシルバ、お前は私の事についてどれほど知っている?」
何かを疑問に思ったのか、アイルはシルバにそう聞いた。
「えっと…今の話からするとあんたは偉い人なのかな?ってことぐらいだ。」
その言葉を聞き、アイルは大きな声で笑い出してしまった。
「フフ…アハハハハハ!いや、まさかそんな記憶まで持っていないとは、あいつもわざわざ面倒を増やしてくれる…」
そんなアイルを見て、ただ不思議そうに見つめる二人。
ただ一人納得しながら、ただただ笑っていた。
「シルバよ、お前が今から集めなければならない記憶は世界に関わる重大な記憶だ。故に私もお前の記憶の一部しか持ち合わせていない。」
「というと?」
要領を得ない言葉にそのまま疑問を投げ返したシルバ。
「もし今私が、私の持っている記憶の欠片をお前に返したとしても何も始まらないだろう。」
その言葉を聞き、驚きながら
「どういうことなんだ?」
シルバはそう言った。
「今のお前には生きるため、世界を巡るため、そして我々の試練に望むだけの記憶も持っていないのだ。」
その言葉を聞き、落胆しそうな表情を見せるシルバ。しかし、アイルはそのまま続けて、
「その程度の記憶なら私が今すぐ思い出させてやろう。そうしなければ何も始まらんからな。」
そう言い、シルバの方に歩み寄ってきた。
アイルが目を閉じ、しばらくすると薄い紫色の光がシルバを包み込んだ。
そのまましばらくし、光が消えると
「では、今度こそ試練を始める。準備はいいか?シルバよ。」
そう聞き直した。
「聞くまでもない。」
強気なシルバのセリフを聞き、少し含み笑いをしながら試練の内容を話し始めた。
「シルバよ。お前はここに来るまでの間に、世界で起きている事の一部を見てきたはずだ。」
その言葉に対し、シルバは無言で頷いた。
「逃げ惑う人々、流れる血、怒りと憎しみ、そして恨みと悲しみが連鎖して世界はまさに崩壊せんと歩みを変えている。
そしてその中、敵に勇猛果敢に立ち向かう三人の戦士と、民を守るため我が身を呈し守る三人の戦士の姿があったはずだ。」
それを聞き、アカラが
「それってもしかして…ジオさん達のこと?」
そう聞き直した。
しかし、その問いには答えず、
「シルバよ、貴様に問う。これらの者達を貴様は救うことが出来るか?攻める者、守る者。双方どちらともだ。」
そう、シルバに対して突きつけた。
「幾らかの時間を与えよう。考えるのだ、全てを救い、尚且つお前自身も旅を続ける方法を…」
アイルは続けてそう言い、シルバに考える時間を与えたが、
「簡単だ、答えなら既に出ている。」
考える間もなく、すぐにシルバはそう答えた。
そんなシルバをいささか厳しい目で見つめ、
「ならば答えを聞こう、貴様が前線に立ち、すべての敵を退ける等という腑抜けた答えでないことを期待しているぞ?」
あらかじめ釘を刺して、そう聞いた。
「そんなことよりもっと簡単な方法だ。」
そこまで言われても動じないシルバを見て感心したのか、アイルは
「よかろう、答えを…」
そう聞いた。
「俺の答えは……」
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