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獣の島3 の変更点


**獣の島3 [#sa2bd897]

ここでは既に定番の光景のようで、戦うために集まったポケモン達もいつの間にか散っていた。
広場はいがみ合う彼らを除けば先ほどとなんら変わりない平和な光景に戻っていった。
「アカラ、君がここに来る前に言っていた戦っている相手というのはあの三人組なのか?」
そんな賑わい始めた広場から少し離れたところで、シルバは数ある質問からひとまず一番気になったことをアカラに聞いてみた。
「ううん。えっと…あの人達がさっき言ってたこの村とは別の村の長だよ。」
「そうなのか?なら戦っている敵というのは?」
シルバの顔には見事に『?』を浮かべた顔が刻み込まれ、一人迷走しそうになっていた。
「えーっと…とりあえず最初から説明するよ?まず…」
アカラは腕を組み、小首を傾げるシルバのために最初から詳しく説明し直すことにした。
まずこの世界は八つの島々からなる世界であること。
そしてそれぞれの島には獣、鳥、魚、虫、竜、大地、還らず、幻と簡単な島に住む主なポケモンによって名前がつけられている。
そのうちの獣の島が現在シルバ達がいる島であると教えてくれた。
続いてこの世界の状況。
現在、この世界は竜の島に住むポケモン達の中の、『龍の軍』というポケモン達の侵攻によって戦争状態にあるということ。
『竜の軍』には竜の体の部位にもじった、頭、腕、脚、翼と呼ばれる部隊が存在すること。
そして、先程攻め込んできたポケモン達が『龍の軍』の中の侵攻部隊、『竜の翼』であると教えてくれた。
最後に、この島に関する詳細な事情を教えてくれた。
元々この島にあった村は一つで六人で治めていたということ。
そして、多くなり出したポケモン達を効率良く守るために村を二つにし、互いが互いの村を守ることにした。
その際、三帝は守ることを、三闘は攻めることを主とし村を治め出した。
そして戦争が激化しだしてからは互いの情報交換ができず、次第に志のズレからいがみ合うようになったこと…
「ひとまず、僕が教えられることはこれくらいかな?何か思い出せそう?」
一通り話し終わり、話した内容でシルバに記憶が戻っていることに期待しているのかそんな希望も含んだような質問をしてきた。
話してもらった情報を整理し、今一度空白となった頭の中から思い出せることがないか探ることにした。
当たり前だがその程度で記憶が舞い戻ってくれば記憶喪失に悩まされなくて済むだろう。
諦めて返事をしようとしたその時、
「ようやく目覚めたか…シルバよ…」
そんな声が何処からともなく聞こえた。
「誰だ…?何処にいる…」
声の主を探し周囲を見回すが何処にも見当たらなかった。
「今私はお前の心に直接語りかけている。姿を探してもそこにはない。」
俄かには信じ難かったが事実、その姿はどこにもなかった。
「どうしたの?シルバさん。」
急に周囲を眺め出したシルバが気になり、アカラはそう訪ねてみたが彼の耳には届いていなかった。
「私の元へ来い…シルバ…お前の記憶はこの世界に関わる重要な記憶だ…」
「どういう了見だ?俺の記憶と、俺がお前の所に行かなければいけないことになんの関わりがある。」
頭の中に響く声に対しシルバも心の中でそう唱え、質問を返した。
「お前の記憶は思い出せない訳ではない…『記憶の欠片』となりこの世界に散らばったのだ…」
それはあまりにも核心を突き、突拍子もない話だった。
「つまり…要するに俺の『記憶の欠片』をお前が持っているということか?」
だが、それでも今のシルバにとっては信じうるに値する情報だった。
「その通りだ…この世界を救いたいのであれば、お前は『記憶の欠片』を集めるために世界を旅せねばならん。」
「なぜだ?世界に恐ろしい異変でも起きているのか?」
その声が綴ることは全て断定的な、むしろ予言と呼んだほうがいいような言い回ししかしなかったので、あえてそう聞き直した。
「私が語れることはここまでだ…あとは己で思い出すがよい…『神の社』で待っているぞ…」
そうとだけ言い残すと、頭に響き続けていたその声は聞こえず、こちらの呼びかけにも答えなくなっていた。
「…シルバさん!どうしたんですか?シルバさん!!」
そこでふと我に返り、必死に自分の名前を呼び続けるアカラにようやく気がついた。
「あぁ、すまない。必死に思い出してただけだ。」
そう言うとアカラはホッと胸を撫でおろすような安堵の表情を見せた。
「本当にびっくりしましたよ。急に上の空になって全く僕の声が聞こえてなかったんですからね。」
心底心配してくれているアカラのことは嬉しかったが、
「なあアカラ。敬語を使うのはやめてもらえないか?」
そこまで自分を思ってくれているアカラだからこそ、そんなよそよそしい喋り方をして欲しくなかった。
「はーい!実は僕もあんまり慣れてなかったんだよね。」
さっきとはうって変わり明るい返事をしてくれた。
「それで、何か思い出せたの?」
とアカラは先ほどの質問の続きをした。
実際のところは思い出していたわけではなく、自分の心に直接語りかけていた謎の声の主と喋っていたわけなので何も思い出してなどいない。
しかし、その時その声が言っていたことを思い出した。
「なあアカラ、『神の社』という場所を知らないか?」
「『神の社』?う~ん……聞いたことないなぁ…」
首を捻り、眉間に皺を寄せ必死に思い出そうとしてくれた。
少し黙り込んだ後、何かをひらめいたように顔を上げ、
「神の社って場所じゃないけど、この島の奥にある樹が『神の依代』って呼ばれてるよ。」
「神の依代…駄目でもともとだ、アカラそこまでの道案内頼めるか?」
似た名前であったためなにかしろの関連性があるとシルバは思い、早速そこに向かうことにした。
「え?今すぐ?せめてシルバの記憶を知ってそうな人に…」
「悪いな、俺の記憶はどうやらそう言った枝葉じゃ戻らないらしい。」
シルバがそう言うと、アカラは少し残念そうな顔をして耳を垂らした。
「大丈夫だ。今から行くところに俺の記憶が戻る手掛かりがあるんだ。」
そう優しく話しかけながら頭を撫でてあげた。
「さあ、行こう。ここでじっとしてても始まらない。」
そう言うとアカラは少し元気を取り戻し、コクンと頷いて村の出口の方へと歩き始めた。
「お!おぉ!シルバ殿ではないか!戻られていたか!」
街を出ようと歩いていた二人の元に、そう言いながらフレア達が歩み寄ってきた。
「シルバ殿がいれば安泰だ。我々と共に民を守ってはくれぬか?」
「狂神と恐れられるほどの力量、それは敵を討ち滅ぼすことのためだけにあるものではないはずだ。」
「我ら三帝と共に龍の軍と戦おうではないか。」
そう、彼らは口々に言った。
「なんだ?貴様ら臆病者がまだ何かこの村に用があるのか?」
シルバに話しかける三帝達を見て不愉快に思ったのか、話に割り入るようにジオが三帝達をそう罵った。
「悪いがシルバ殿は我々と共に龍の軍を全て討ち滅ぼすのだ。お前らのような臆病者と一緒にするな。」
「残念だが臆病者を守るための剣はない。村に戻って我ら四人が戦う姿を眺めていればいい。」
続けるようにラキオ、バルトがそう罵った。
勿論そんな犬猿の仲の者同士が集まればまたいざこざが起きるわけで、シルバをそっちのけで口論を始めてしまった。
「悪いが、今の俺にそんな暇はない。先に終わらせなければならないことがある。」
口論に夢中で周りが見えなくなっていた六人をシルバがその一言で止めた。
「シルバ殿。その終わらせなければならないこととは?」
そう聞いてきたフレアに対し、
「神の社という場所に行かなきゃならない。アンタらは知ってるか?」
その問いかけに対し皆、首をかしげるか横に振るだけだった。
「まあいい、俺はそこに用事がある。それが終わるまでは悪いがどちらにも加勢できない。」
シルバがそう言うと我先にと
「ならば早くその神のなんとかという場所に&ruby(おもむ){赴};くべきだ。」
「そして一刻でも早く我らと敵を…」
「まだ言うか!シルバ殿は戦う為にある訳ではない!」
言うが早いかすぐに口論に発展する彼らを見ているといい加減見飽きるものがあるほどだ。
深くため息をつき、顔を上げて
「悪いが今からでさせてもらう。後はアンタらで勝手にしてろ。」
そう吐き捨てうるさい彼らから離れるように村を出た。
「昔は…もっと仲が良かったのにな…」
そのまま歩きながらアカラがぼそっと呟いた。
「そうなのか?俺にはどうしてもそうは見えんが。」
今の彼らしか知らないため、到底予想ができなかったが、
「僕がもっとちっちゃかった頃なんだけどね。みんなで仲良く話したりとかしてるのをうっすら覚えてるんだ。」
納得したような、してないようなそんな顔でシルバは最後に彼らを振り返り、未だに飽きずに口論を続ける六人を流し見、村を後にした。

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