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獣の島2 の変更点


&color(red){流血表現を含みます!苦手な方はご注意を!};おkな方はGO!

**獣の島2 [#fc4b6afc]

そこには生い茂る樹木の間にひっそりと大小さまざまな大きさの茂る木をそのまま家に加工したような不思議な家がいくつも建っていた。
茂った木々の枝の間から漏れる木漏れ日が家々の青々とした葉の屋根や若草の並ぶ地面に落ち、小さな日溜りをあちらこちらにつくっていた。
多種多様なポケモン達が互いに談笑したり子供達が楽しく遊びまわっている極平凡な光景。
そのままアカラは若干の戸惑いを顔に浮かべた彼の手を引き、中央の広場までまっすぐ歩いていった。
「ちょっとここで待っててね。今から僕が君のことを知ってそうな人たちを集めてくるから。」
とだけ言い残し、広場から人混みの出来ている辺りへとまっすぐ歩いていき、人混みの中に消えていった。
有無も言わさず勝手に一人で次々と行動するアカラに呆気にとられ、結局何もすることができないため彼は渋々、広場の隅にあった倒木でできたベンチに腰を下ろして待つことにした。
少し状況が変わったため、もう一度ゆっくりと自分の記憶を手繰り寄せようとするが…
『まずは…俺の名前……だめか…俺があそこに居た理由…分かる訳もないか…』
そんな自問自答を繰り返し、答えが出ない度に深いため息をついていた。
半ば思い出せない自分自身を諦め、周囲の賑わいに耳を傾けていた時、カラーンカラーンとけたたましい鐘の音が鳴り響き、
「竜だー!!『竜の翼』が攻めてきたぞー!!」
そんな声が広場に、賑わいを見せていた街角に、アカラの消えた人混みに飛び込み、賑わいの声は瞬時に不安や恐怖のざわめきに変わっていった。
広場にいた子供達や談笑していた女性達は姿を消し、逆に怒りに血走ったとも、虎視眈々と獲物を見据えている獣ともとれるような目をしたポケモン達が次々と現れた。
「来やがれ…!今日こそ目にもの見せてくれる!!」
そんな声が集まったポケモン達から漏れ出し、広場の空気は一瞬にして張り詰めたものになっていた。
その時、そのポケモン達の向く顔の方向から怒号にも似た雄叫びが聞こえ、
身構える彼らのど真ん中に槍が突き刺さるかの如く一匹のポケモンが飛び込んでいった。
それを口火に広場に集まったポケモン達、そしてその先陣を切った槍の後を追うように飛び込んできたポケモン達によって美しい広場は一瞬にして合戦場のど真ん中へとなり果てた。
『なんだ…?何が起こっているんだ?』
そんな凄惨ともいえる光景の中、彼は眉一つ動かさずその乱戦を眺めていた。
「次だ!次次ー!!俺が一番殺すぜー!!」
そう言いながら乱戦の中から一人のポケモンが彼に向かってまっすぐに走っていった。
ズンズンと距離を詰めるそのポケモンに対しても彼は意にも介さず、ただベンチに座っていた。
「ひゃっはー!もう一匹俺が仕留めたぜ!!」
そう言いながら鋭い爪を彼に対して振り下ろしたその次の瞬間、
ズンッ!と鈍い音と共に鋭い爪が左胸を突き刺していた。
「ガッ…!!な…何故…俺が……こんなところで…」
そう言いながら倒れたのはその襲いかかったポケモン。
倒れる拍子にそのポケモンの胸から彼の鮮血に染まった、鈍い輝きを放つ彼の爪がすり抜けた。
足元で瀕死になっているそのポケモンを見た後、自分の爪を見て、
『俺は一体…何をしたんだ…?何故体が勝手に動いた…?』
そう、口には出さず、心の中で自問自答した。
「てめぇぇぇ!!ガルの仇ぃぃ!!」
そう言いながらさらに一人、乱戦の中からまっすぐに彼に突き進んでいった。
その鋭利な爪が彼に届く範囲に入った時勝利の確信にも似た表情をし、腕を振り抜いた。
が、それはただ虚空を引き裂き、彼の勝利の確信に満ちた表情も一瞬で砕いた。
「ど、何処に…!」
そのポケモンが消えた彼を探そうと周囲を見渡そうとした瞬間、彼の頭になにかしろの圧力がかかったのも確認する間もなく、彼の視線は明後日の方を向かされていた。
首を捻りながらそのままそのポケモンから飛び降り、再度彼は自分のした事を確認していた。
「な…なんだあいつ!」
「い…一瞬にしてガルとウェリドを殺りやがった!」
しかし、今度は彼に自分のした事を確認させる時間を与えてくれはしなかった。
戦場は一瞬にして敵、味方共に凍りついていた。
そこから湧き上がる響めきは、まさに彼に向けて突きつけられていた。
「クソッ!奴は手練だ!遠距離から一斉に攻撃しろ!」
その凍りついた戦場から我を取り戻した一人のポケモンがすぐさま周りのポケモン達に指示を出し、距離を開けて五人一斉にかえんほうしゃやれいとうビームを繰り出した。
その一発一発がほぼ同時に彼に命中し、彼の居た一帯は凄まじい爆音と共に土煙に包まれた。
「やったか!?」
五人の内の一人がそう言いながら土煙を見ていると。
晴れた土煙の中からは無傷の彼と彼に当たる寸前で止められた各々の攻撃だった。
「な!?全て受け止めただと!!」
彼はそれらの攻撃をまるで埃でも叩くかのように撫で、すべての攻撃をそのまま弾き返した。
「ぐあぁぁ!!」
そんな悲鳴が聞こえる中、彼はただそこに立ち尽くしていただけだった。
周囲を見てほくそ笑む訳でもなく、自身の力を見せつけ相手を恐怖の虜にするわけでもなく、ただ立っていた。
「お、おい…誰かあいつ知ってるか?」
「あんな強い奴、いままでいなかったぞ…?」
と次第に味方からもざわめきが生まれ始めた。
当たり前、といえば当たり前の光景。文字通り戦場を一瞬にして凍てつかせたのだから味方といえど、それはまさに恐怖の対象だった。
「ど、どうする…」
「勝てるわけねぇ…」
恐怖はすぐに伝染し、戦場を一色に塗りつぶした。
「久しいな…シルバ…」
そんな中からその一声と共に一人のポケモンが彼の前に立ちはだかった。
「ドラゴ隊長!」
そのドラゴと呼ばれたポケモンはリザードン。
燃える火のような朱の色の体、深緑の翼、尾の先に灯った揺らめく炎、そして左目には縦に大きな傷が入っていた。
「死んだと聞いていたが…こちらにしては好都合だ…あの時の因縁、忘れもせん!貴様に付けられた傷が疼くわ!」
まっすぐに彼を見据え、低く、地鳴るような声でそう言った。
「シルバ…?」
「もしかして…!彼があのシルバ…!?」
広場に集まったポケモン達はその名を聞き、驚愕していた。
「ド、ドラゴ隊長…!まさか奴が!」
「シルバ…『狂神シルバ』なのか!!」
驚愕、そしてその驚愕はそのままどよめきとして広場にいるポケモン全てに伝わった。
「今すぐにでも決着をつけたいところだが…今は分が悪い…撤退だ!&ruby(ヘッド){本部};に伝えるぞ!」
そう言い、すぐにドラゴを含む攻め込んできていたポケモン達が全て退いていった。
そうなればその広場に集まったポケモン達の視線は去りゆく敵ではなく、全てシルバと呼ばれた彼自身に向けられることになった。
僅かに聞こえるざわめき、そして自分に付いていた通名、様々な情報から彼は自分が何者であるのかようやく理解した。
『そうか…俺は……』
「よかった!君がシルバだったんだね!!」
敵が去り、幾分か静かになった広場にアカラの声が響いた。
一目散にシルバの元に駆け寄り、シルバの手を取って喜んでいた。
だが…そんな嬉しそうなアカラとは打って変わってシルバは静かに周囲を眺めていた。
そして…
「悪かったな…アカラ…わざわざ俺のために世話焼いてくれて…じゃあな…」
そう言い、まっすぐにその広場を後にしようとした。
が、
「え!ちょっと待ってよ!どこに行くの!」
アカラが戸惑いながらシルバにそう問いかけた。
「ここではない何処かだ…短い間だったが世話になった。」
必死にその場を去ろうとするシルバをアカラは
「なんで…!せっかく名前が分かったのに…!記憶を取り戻すチャンスなのに!」
必死の思いでシルバを引き止めようとしていた。
その表情は曇り一つ無い本気の思いだった。
「悪いが俺が狂神(どんな存在)か分かった時点で俺はここに居ていい存在ではないことぐらいは理解できる。むしろ俺の記憶が無かった方が幸いだったほどだ。」
その言葉には自分自身が狂神と呼ばれるほどの強さを持っており、そして《狂神》と呼ばれる片鱗をたった今、自分自身で味わったという強い思いも込められていた。
「違うよ!あの通名は敵に付けられたものだから!僕達には関係無いよ!」
アカラはそれでも必死にシルバを止めようとしていた。
「悪いが俺も馬鹿じゃない。周りの状況を見れば俺が本当はどんな奴なのかぐらい…」
そこまで言いかけたシルバの言葉をかき消すほどの歓声が一気に湧き上がった。
先ほどまでの張り詰めた空気は何処にもなく、シルバが現れたことを祝福する、凱旋する騎士達に送られるような心からの賛辞にも似た明るい雰囲気に変わっていた。
一斉にポケモン達がシルバを囲み、期待と希望の眼差しで彼を見ながら質問攻めにしていた。
そんな展開になると予想していなかったシルバは戸惑い、何をしていいのか分からず、ただその取り囲むポケモン達の気迫に押されるだけとなっていた。
「なんだ?やけに騒々しいな。」
広場の状況が理解できず、まさにたった今帰ってきたことがわかる三人のポケモンがそんな言葉を漏らしながらその輪に近づいてきた。
それに気付いた広場のポケモンのうちの一人が
「あ!ジオ様、ラキオ様、バルト様!お戻りになられていたんですね!」
その広場に戻ってきたポケモン達はビリジオンのジオを中心に、左にテラキオンのラキオ、右側にコバルオンのバルトだった。
「一体どうしたというのだ。何故皆ここに集まっている?」
ジオがその話しかけてきたポケモンに事情を訪ねた。
「見てくださいよ!シルバが帰ってきたんです!」
そう、嬉々としてジオに報告し、人の波を分け入り輪の中心にいたシルバを引っ張り出してきた。
その引っ張り出されたシルバを見て、驚きを隠せなかったのか驚嘆の声を漏らし、
「シルバ殿か!久方ぶりだな!姿を消して幾日も経っていたため諦めていたが…やはりシルバ殿にもしもはないということか!」
ジオはそう言いながらシルバをまっすぐ見据え、彼であることを確認するように頭の頂辺から足の先まで舐めるような目で確認していた。
「当たり前だろうジオ。彼ほどの者にもしもなどあるはずがないのだ。」
驚きを隠せないでいるジオを諭すようにラキオが話に割行った。
「しかし…シルバ殿。今しがたまで何をなされていたのだ?」
続くようにバルトがシルバに質問を投げかけた。
「すまないが、今の俺には記憶が無い。それに俺がその『シルバ』という確信もない。あまり期待しないほうがいい。」
シルバと信じてやまない皆に自分の今の状況を遠まわしに伝え、尚且つ自身の情報を聞き出そうとシルバはあえてそう返した。
が、返答を聞くよりも先に
「ジオ!ラキオ!バルト!貴様ら今の今まで一体何処に行ってきたのだ!!」
そんな怒号が彼らに向かっててんで来た。
「なんだフレア。悪いが今は貴様の小言を聞く暇はない。」
ジオはその怒号の主であるフレアというポケモンに対して、呆れたように返答していた。
まっすぐにジオの元へ歩み寄り、聞く耳を持たない彼に対しさらに苛立ちも含まれた怒りを言葉にしてぶつけていた。
「フレア様!アクア様!エレキ様!見てください!シルバさんが…」
そう三人に、輪のポケモンの内の一人が喋りかけようとしたが、怒りの矛先は完全にジオ達に向いておりその声は耳に届いてはいなかった。
「分かっているのか?貴様らの軽率な行動が原因でまた貴様の村には易易と敵の侵入を許したのだぞ!」
三人に怒鳴っているフレアというポケモンはエンテイ、そして彼のすぐ横に並ぶように左側にアクアと呼ばれるスイクン、右側にエレキと呼ばれるライコウが立っていた。
「それでも貴様らは敵を討ち滅ぼすことを選ぶか!!守ることを放棄してまででも!!」
そのまま続けてフレアは彼らに怒りの言葉を投げつけた。
「何を言い出すのかと思えば…貴様らのような《逃げ回ることしか出来ない》者に我々のような身を挺して戦う者の思いなど到底分からんだろうな。」
その言葉を聞き、流石に聞き流すことができなかったのか、ジオが嘲笑しながらフレアに対し言い返した。
勿論、そんな事を言えば誰が見ても分かるほどの犬猿の仲の六人はそのまま睨み合ったまま口喧嘩を始めてしまった。
ようやく自分に関する情報を獲れそうだったが、それも叶わないことが雰囲気から薄々分かり、シルバは目を閉じて小さく諦め混じりのため息をついた。
そんな彼を後ろからチョンチョンとつつく人がいることに気付き、振り返るとそこにいたのはアカラ。
「ちょっと着いて来てくれる?もしかするとシルバの過去を詳しく知ってるかもしれない人が見つかったんだ。」
そう言い、人混みの中から彼をこっそりと連れ出した。

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