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特別番外編 ・ 上州夜之事情 の変更点


作[[呂蒙]] 


<注意>
 この作品には18禁表現がある読み手を選ぶ作品となっています。人によっては気分を害される恐れがありますので、それでも良いという方だけお読みください。
 万が一、注意を無視された場合、気分を害されても、作者は責任を負いかねます。



 




 気温がぐっと下がり、山から吹き付けてくる乾いた季節風が一段と厳しく感じられる。上州地区はこの冬の季節、晴天が続く代わりに、ほぼ連日北西の季節風に見舞われるのである。山岳地帯に行けば雪が降るが、平地で雪が降ることは珍しかった。その理由はこの地区の背後にそびえる高い山脈にあった。季節風の影響で雪雲が北西方向から流れてくるのだが、この山脈で遮られてしまい、平地までは流れてこないのである。夏とは逆に空気はカラカラに乾く。衛生的な問題から解放される代わりに、別の問題も起きてくる。
「痛っ」
 青年は顔をしかめる。空気が乾燥しているため、静電気がしょっちゅう発生する。ここのところ、連日乾燥注意報が出ている。
 この家に住んでいる阿南(あなみ)直樹青年。苗字の読みが難しいため「アナン」とか「みなみ」と友達からは呼ばれている。この青年、上州地区特有の大きな家に住んでいる。一階には家族の集う部屋と応接室、二階には、十分な広さの個室がある。この辺りはかつては養蚕業で栄えた場所である。この青年の家もかつては養蚕で財を成した家であった。時は流れ、養蚕業は廃れてしまったが、代わりに豊富な温泉資源を活用した観光業に力を入れている。都心からそれなりに近いこともあって、毎年多くの客が訪れている。
 この家には青年の家族と、2匹のポケモンが住んでいる。サザンドラのサザンと、リーフィアのミナである。
 この季節、青年の部屋に三者がいると、決まって起こることがあった。それは炬燵の争奪戦であった。この時期、下半身をじんわりと温めてくれる炬燵はありがたい存在である。
「おい、サザン。邪魔」
「ん~? お前らが出ればいいだろ」
 炬燵布団の中に首を3つとも突っ込んでいるサザンが言うと
「何言ってんのよ、図体のデカイあんたが出るべきでしょ~?」
 こんなやり取りがほぼ毎日行われる。
 そんな寒い冬のある日のこと、阿南青年の友人がポケモンを連れて家にやってくることになった。どうやら、この家の近くの温泉を訪れるついでに寄るらしい。

 

 ここは、都心に近いアパートの一室。ここに住む青年は1泊分の着替えを鞄に入れると、時刻表のページをめくり、鉄道の時間を調べていた。やがて、乗る列車の時間や所要時間をメモすると、ぱたんと時刻表を閉じた。
 青年は、この部屋で一緒に暮らしているフライゴンを連れて部屋を出た。
「ナイル、駅まで鞄を持っててくれ」
「はいはい」
 青年の一人暮らしで、しかもポケモンを持っているため、周りからはかなりの金持ちなように思われているが、彼の両親は公務員であり、そこまで裕福なわけではない。しかし、質素な暮らし向きがポケモンを持つことを可能にしていた。彼の実家にはまだ何匹かポケモンがいる。ただ、上京する際に一人ではつまらないので、フライゴンのナイルだけを連れてきたというわけである。
 青年に悩みなどなさそうだったが、一つだけ悩みがあった。苗字をいつも名前だと思われてしまうことだった。苗字が結城(ゆうき)なため、聞いただけでは名前のようにも聞こえるから、無理はないのだが、いつも名前だと思われるので、青年は内心うんざりしていた。
 私鉄に乗り、大きなターミナル駅に着く。ここで、JRに乗り換える。この大きなターミナル駅から、在来線で約2時間の旅である。
「ナイル、特別車の切符を買っておいたから。5号車の乗車位置のところに行くぞ」
「ねえ、ところで、いつまで鞄持っていればいいわけ?」
「ああ、悪い悪い。じゃあ、代わりにさっき買った昼飯を持っててくれ」
 青年は鞄を受け取ると、代わりにおにぎりや温かいお茶の入った袋をナイルに渡した。
 アナウンスがあり、列車がホームに入ってきた。青年が買った切符は特別車のもので、車体には特別車であることを示す緑色のマークが入っていた。この車両に乗るには追加料金が必要だったが、その分椅子はリクライニングで、柔らかいし、客の出入りも少ないためゆっくりできる。2時間の道のりであったし、昼飯をゆっくり食べたいということもあって、わざわざ追加の料金を出したのである。
 列車が動きだし、検札も済んだため、青年とナイルは昼食をとり始めた。
「ねぇー、ご主人。何で今日出かけるのさ。もうちょっと暖かくなってからでいいじゃん」
「『みなみ』のやつの顔を見ておきたかったからだよ。いろいろ頼りはあったけど、長いこと会っていないし、あの辺は温泉で有名だから、一風呂浴びるのも悪くないだろ?」
「そういえば、進化したとか、メールが来たよね、ちょっと前に」
「ああ、そうそう。何てったっけな? えーと……」
「『さ』何とかだよ。5文字」
「ああ『ササニシキ』」
「へぇ~『ササニシキ』? それは随分とおいしそうだね」
 結城はいつもこんな調子である。学校の成績は決して悪くなく、教養もあるのだが、恐ろしいほどポケモンに関する知識がない。ふざけているというのもあるにはあるが、本当に知らない場合も結構多い。覚えていた方がいいのは分かっているのだが、どうしても、積極的に覚えようという気にならないのである。
 在来線は1つ1つ丁寧に駅に停まり、客を乗せ、降ろしていく。そのため、特急や新幹線に比べればかなり時間がかかるのだが、別に急ぐ旅でもなかったので、その点は問題なかった。
 都心特有のビル群が姿を消し、県境の川を越える。
「隣の県に入ったね」
「そうだな、だが、もう1回県境を越えるからな」
 平野を北上すること1時間。この国有数の大河を越え、2度目の県境を越える。それから、30分ほどたって、ようやく目的地についた。幸い、駅から阿南の家までは「そんなに遠くない」と聞かされていたし、場所も知っていた。道に迷うことなく、家につくには着いたのだが、家に着くなり
「『そんなに遠くない』って嘘言うなよ。15分も歩いたぞ」
 と、阿南に文句を言った。
「間違ってないだろ」
「『そんなに遠くない』ってのは歩いて7、8分のことだろ?」
「お前、随分と、都会の生活に馴染んだな……」
 阿南は呆れたように言った。家に上げてもらい、応接室に入った。応接室ではストーブが焚かれ、外の寒さがウソのようだった。その部屋では、件のサザンドラが暖をとっていた。
「おい、サザン。結城が来たぞ。挨拶」
「あ、こんにちは」
 阿南が言うには、新聞の勧誘は訳の分からない宗教の勧誘などがやってくると、サザンに対応してもらうことにしているという。首が3つに「凶悪そのもの」といった外見で、これまで、全ての勧誘する輩の肝を潰してきたという。結果、一も二もなく撃退できるため、家族は大変喜んでいるという。
 結城やナイルにとっても、見た目が怖くないかと言えば、嘘にならないでもないが、よく見ると、手のような役割を果たす2つの首は可愛い気もする。
「しかし、みなみも大変だろ、サザンのこと」
「まあ、進化してからより一層食べるようにはなったな」
「けどまぁ、羨ましい気もするな。この2つの首って何かと使えそうじゃん」
「……例えば?」
「一人いじりとかに」
「お前なぁ……。どうしてすぐそういう方向に」
「やっぱ、夜な夜な抜きつ抜かれつ? あんまり、禁欲的な生活させてると、可哀想だから、たまには発散させてやらないと」
「ま、まあ、間違ってはいないけどなァ、しかし……」
「別に恥ずかしくないだろ。オレだって、こないだ、ナイルのヨーグルトドリンクを口に流し込まれたから」
「あ、あれは、やりすぎたよぅ、謝ってるじゃん……」
 このエロトークをサザンはどういう気持ちで聞いていたのであろうか。


 
 その夜、結城は、近所の温泉施設で湯を堪能した後、夕飯を阿南宅でごちそうになった。
「すいませんねぇ、ごちそうまでしてもらって」
「よく言うよ、最初から泊めてもらう気だったくせに」
「ん? ナイル、何か言ったか?」
「別にー」
 鍋をつつき、日本酒を飲んで、体を温める。寒いときは体の中から温めてくれる料理に限る。酔いが回った結城は、寝部屋に案内されるとほどなく眠り込んでしまった。
 ポケモンたちは一つの部屋で眠ることになった。阿南が、ストーブにタイマーを設定する。消し忘れがないようにするためだ。阿南が部屋を出ていくと、ポケモンたちだけが部屋に残された。ミナはお腹いっぱいになって眠くなったとかで、早々に眠ってしまった。
「あ、あのさぁ、ナイル」
「どうしたの、サザン?」
 サザンはナイルの方がタイプも同じなうえ、同じ雄だから相談しやすいと思ったのだろう。相談の内容をまとめると、最近ご無沙汰であるとのことだった。
「その2本の首で、何とかすればいいじゃん」
「そ、その……。『一人いじり』はしているんだけど、どうも他のやつに抜いてもらわないと、物足りないというか、何というか……」
 サザンは顔を赤らめ、もじもじしながらも、自分の悩みを打ち明けた。そこには、圧倒的な戦闘能力を誇るといわれているサザンドラの威厳というものはまるでなかった。
「うーん……。まずは、実際にサザンのモノつまりチ○ポを見ないといけないなぁ」
「な、何で、そんなことをする必要があるんだよ!」
「だってさ、モノがとんでもなく巨大で、人間はおろかポケモンでも手の施しようがないとわかったら、それこそお手上げだけど、そうでなかったら、何とかできるかもしれないじゃん?」
「うう、わかったよ……」
 見知らぬポケモンではないとはいえ、他者の前で一人いじりをするのは恥ずかしいことであった。が、ナイルが言うにはそれをしないと、次の手が打てないという。やむなく、サザンは手の役割を果たす2つの頭を使って、一人いじりをし、準備を整えた。
「ほ、ほら……。こ、これで、いいだろ?」
 ドラゴン系ポケモンに多くみられる柔らかいお腹。そして、そこにあるスリットから、出現したモノ。
(長さはご主人の二の腕くらいかな。でも、ちょっと太いな……。あと、これは、何? トゲ?)
 サザンのモノには、無数の微細な突起があった。ナイルはそういえば、ポケモンによっては、相手の中で出しやすくするために、モノがこのような形状になっているがいると、本で読んだことがあった。
 さて、これからどうしてやろうか。このままサザンを放っておくのはかわいそうだったが、自分が掘られるのはさすがに勘弁してほしかった。ナイルは考えた。どうにかしてやらなければならないと思う一方で、同じドラゴンタイプでありながら、自分よりも圧倒的に強力な戦闘能力を持っている種族が自分に助けを求め、少なくとも今は自分の意のままになっているということに、優越感を覚えていた。そのことが、自然と顔に出てしまう。
「おい、何ニヤニヤしてるんだよ」
「え? あっ、いや、別に?」
「さては、変なことを考えていたな?」
 当たっていたが、ここでそのことを悟られてはならない。
「う~ん、やっぱ打つ手はないなぁ。ぼくの力じゃどうにもならないよ。お休み」
 と、わざと突き放すように言った。
「ま、待ってくれよ。じゃあ、この大きくなったモノはどうするんだよ」
「自分で抜いてよ、と言いたいところだけど、ぼくが言い出したんだから、それじゃ、あまりにもひどいよね。だから、それを貸して」
「それ?」
「左右についてるでしょ、2つの頭。その内、片方を貸してよ」
「いいけど、どうすんだよ、そんなの」
「んふふっ、ぼくのここも弄ってもらうんだよ。ほら、ぺろぺろしてよ」
 サザンの手の役割を果たす頭が、ナイルのお腹をさすり、スリットから、モノを引っ張りだす。「手」と言っても、それは見た目は頭であり、その機能も備わっている。つまり、口があり、口を開ければ、中には舌がある。ナイルが求めていることをするのはそう難しいことではなかった。
「んっ、ふふっ、交換条件だからね、ぼくを満足させることができたら、ぼくが責任を持って抜いてあげるからね。ほら、咥えてよ、お口で奉仕してほしいな?」
 ナイルは、自分のモノに奉仕をしている頭をしばらくは眺めていたが、やがて、絶頂が近いことを感じると、頭を掴んで、腰を振り、モノで口の中をかき回した。その度にモノの裏側が舌にこすれる。
「あはっ、あははははっ、きっ、気持ちいいっ、ドラゴンに抜いてもらうのがこんなにいいなんてっ!」
 ナイルは口の中に、白濁を放ち、しばらくは、出している時の快感に浸っていた。が、ナイルはこんなことを言い出した。
「あ、なんか、もう1発出そう」
「はぁ!?」
 ナイルは、両手で自分のモノを咥えている頭をおさえると、腰を振った。既に1発出していたが、モノは再び臨戦態勢となる。本能と性欲のままに腰を振るナイル。やがて、自分のモノを根元まで咥えさせると、両手でがっちりと頭をおさえ、小刻みに、速く腰を振った。そして、絶頂に再び達したナイルは、2発目を口の中に流し込む。
「くうっ、あっ、はあぁっ、あははっ、気持ちよすぎて、死ぬかと思った……。こうやって、奉仕してもらえると思うと、サザンのご主人が羨ましいな」
「……抜いてやったんだから、早くしてくれよ」
「どう、今の気持ちは?」
「何でもいいから、早く」
「はいはいっと」
 ナイルは自分の爪で、サザンのモノの裏筋をちょいちょいと弄る。
「うっ、くうぅ……」
「ふふっ、感じるでしょ? ここは急所だからね、でも、どうせだったらどばっと出しちゃった方がいいでしょ?」
「へっ?」
 ナイルはサザンの後ろの回り込むとサザンの尻尾を持ちあげた。
「あー、ここか。後ろの穴って」
「お、おい、何する気だよ!?」
「こんな状況じゃ、特性もヘチマもあったもんじゃないよねぇ?」
 ナイルはサザンの後ろの穴に爪を押し込む。
「はっ、はうう、何すんだよ!」
「あ~、やっぱり、後ろでも感じるんだ? それに、これなら、ぼくのつま先も入るかもね……?」
 ナイルは、サザンの後ろの穴につま先を近づけ、穴に刺激を加えた。
「じゃあ、思いっきり出させてあげるからね」
 ナイルがそう言うと、サザンの全身に振動と快感が合わさった波が走った。今までに経験したことのない快感が体の力を奪い、抵抗する術を封じていく。立っているのがやっとだった。
「すごいでしょ? ぼくの『P波』こうなると、特性って関係ないんだね」
「そ、そんなっ、みゃあっ、くあっ、ああっ、出るっ、もうダメぇ!!」
 サザンは日頃、溜まりに溜まっていた精を勢いよく放った。畳が白く染まっていく。出している時の快感が体全体を支配し、この後掃除をどうしようといったまともな思考はできなくなっていた。
 サザンは力が抜けて、畳の上に座りこみ、できた白濁の湖を眺めて、余程溜まっていたんだと、今更ながらに思っていた。ナイルは疲れたから寝るといって、眠ってしまった。
「……ちょっと」
「は?」
 代わりに起きてきたのが、ミナだった。
「うるさいから、目が覚めちゃった」
「見てた?」
「見てた。見た目と違って、すぐに絶頂を迎えちゃうのね」
「しょうがないだろ……。……そういう経験が少ないんだから」
 サザンは横になり、顔を赤らめながらそう答えた。
「あと……。なんかサイズを取り戻してるけど、あれだけ出して足りなかったの?」
「ん? って、ええ??」
 ミナの言う通り、サザンのモノは、大きさと硬さを取り戻しつつあった。
「話には聞いていたけど、ドラゴンは確実に子孫を残すために、2発くらい出さないと収まらないって、聞いたことがあるけど、本当だったのね」
「子孫……かぁ、どうせだったら中に出そうか?」
「……まあ、いいわ。今夜は特別」
「どうせ、ちょうど発情期だから、何とかしたいだけだろ?」
「お黙り。あんたみたいに、経験が少ない方がおかしいのよ。それと、抵抗されないようにするから」
「ん? げっ、草結び使ったな! また技かよ!」
 見ると、サザンの足や翼は草で固定されてしまっていた。もっとも、首は拘束されていなかったので、全く抵抗ができないわけでもなかった。
 ミナは、サザンのお腹に上ると、モノに自分の腰を沈める。モノとミナの「入口」が接触する。
「はあっ……ああ……」
「ま~だ、入れてないって、出そうになったら、言ってよ?」
 しばらく、入口は巨大な異物の侵入を拒んでいたが、やがて、ずぶりとモノの先端が、ミナの入口に入った。
「はうう、うああっ、締め付けが強すぎるっ、で、出そう!」
「え? も、もう?」
 サザンは、あっけなく絶頂に達した。夜の行事の経験が少ないサザンにとっては、これでも刺激が強すぎたのである。ミナはとっさに腰を上げた。その直後に精が放たれる。体に精をぶっかけられたが、中に出されるのは避けられた。しかし……。
「うっ、ちょっと、いくらなんでも早過ぎ」
 と、ミナはかかってしまった精をぬぐいながら、サザンに不満をぶつけた。
「そ、そんなこと言ったって……」
 サザンは白濁を出しながら、答えた。自分より圧倒的に小さいポケモンに説教され、惨めだったが、こればっかりはどうしようもなかった。少なくとも、正直な方が、全く感じないよりははるかにいいではないか。
「しょうがないわね……。じゃあ、両脇の頭で奉仕してよ、それで許してあげる」
「はい……」
 草結びによる拘束は解かれていたが、サザンは従った。ミナは根に持つタイプなので、拒否すると、後々厄介なのである。おまけに口喧嘩になると、理がサザンの方にあったとしても、ミナの方が有利になってしまう。外見でサザンがミナを恫喝しているように見えるからだ。結局、サザンが怒られてしまう。が、外見が怖いといっても、これもサザンにはどうすることもできない問題であった。
 脇の頭で、ミナの割れ目をぺろぺろと舐める。結局、両脇の頭は、弄るため、奉仕するための道具になってしまっている。
「あはっ、あんたって、こういうことには最高に便利な体してるわよねぇ……。頭もあったかいし」
(弄るための道具じゃないし……)
「あっ、で、出そうっ、あっ、ああああっ」
 絶頂に達したようで、割れ目がから潮が噴き出し、体力を使い果たしたミナは体を横たえた。



 こうして、夜は更けていった。そして翌日。阿南が部屋にポケモンたちを起こしにきた。
「おい、起きろ。朝飯だ」
「……ああ、今行く……」
「なんか、床に白いもんがいっぱい落ちてるな……」
「ああ、それはヨーグルトドリンク」
「……あとで掃除しとけよ」
 阿南はサザンたちを残して、ダイニングの方へ歩いていった。結城は今日の昼前には帰るという。差し迫った用事があるわけではないが、食材の買い出しや掃除などやっておきたいことがあるのだという。時間を短縮するため、結城は帰り道は新幹線を使うといい、切符もあらかじめ買っておいた。
 朝食を終え、身支度を済ませると、結城はナイルを連れて帰っていった。



 最寄駅から在来線に乗り、その後新幹線に乗り換える。冷たい北西の季節風が吹き付け、寒さが身に応える。
「『たにがわ』号に乗るからな、あと12、3分で来るぞ」
「あ、うん。でさ、ご主人。終着駅についたら、起こしてもらえる?」
「ナイル、眠れなかったのか?」
「いや、眠れたには眠れたけど、疲れが取れなかったから」
「……ふーん、まあ、分かった」
 新幹線に乗ると、ナイルは欠伸をしたかと思うと、間もなく眠ってしまった。結城はよく眠れたが、ナイルの寝顔を見ていたら、自分まで眠くなってきた。さらによくきいた暖房が追い討ちをかける。いつの間にか結城も眠ってしまっていた。2人が寝ている間、新幹線は広い平野を南下し、国境の河を越えていた。
「あ、しまった。寝ちまったわ」
 結城が目を覚ますと、終着駅の一つ手前の駅に間もなく到着するというアナウンスがあった。外にはマンションやビルが立ち並んでいる。メトロポリスのよくある風景。結城は何だか、急に現実に引き戻されたような気がした。


  おわり



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