ポケモン小説wiki
特別 の変更点


     作・[[スープ]]



別に、悪い事もしてないけど今自分は追われていて、逃げている。
ところで。あなたは逃げるのが速い方だろうか?
もし速いのならば是非とも走逃げるコツを教えてほしい。
もう戦うのは面倒になったので。


「イテッ…」
さっき襲われた時のか…。いつの間にか身体中傷だらけだなぁ。
孤独には慣れたけど、さすがに痛みには慣れないや。
「安全に寝られるところはないものかなぁ」
深いため息が白く、消える。とっても寒ィ。
いったい、どこに行けば安全なのだろうか。迷って迷って辿り着いた先でも襲われる。
流石に飛びながら寝るというのも無理だし、海に突っ込むなんて馬鹿な事はしない。

今頃言うけど、オレには家がない。生まれた時からない。
両親はオレをかばって死んだし妹もどこかで生きているが顔も覚えていない。無論友達なんていない。
という事で一人ぼっちなオレ。別に悲しいとは思わないけど、たまに自分がこの世で一番不幸なんではないかと思う。毎日追われ、毎日襲われ、毎日寝れないんだからなぁ。ここまで不幸なのはあんまりいないと思う。

こんなこと考えている時も時は進むので。気付けば追手が来ている。
「いたぞ!バンノウだ!」
逃げる逃げる。
逃げながら言っておくが、オレの名前はリューン。決して「バンノウ」なんて名前じゃない。
なんで「バンノウ」と呼ばれるかというと、万能だから。うん、そのまま。
そりゃぁ、珍しいでしょうね。どんな技でも扱えるフライゴンだってさ。そりゃ捕まえたいだろうなぁ。きっとお金にもなるし。でもさすがにお金には化けたくないので逃げます。
しかしこっちはすでにバテバテ。体力には自信あるけど、寝不足で傷だらけだもの。
うーむ。やはり少しだけ戦うか。少しだけね。

スピードを緩めて振り向き、戦闘態勢になったら。
「ひっさつ、ネコにこばーん…」
よしにげる。さすがにこんなちっぽけなお金にゃ目もくれないか。

高速移動だ、テレポートだで逃げまくる。たまーにトリックルームも使って遊ぶ。
む、何か町があるなぁ。ちょっと寄り道していこう。食べ物食べ物。

あ、そうそう。世の中には、Bダッシュとかいう便利な機能があるらしい。残念ながら、オレの身体にはついてないが。


最近。捕まってもいいと思うようになってきた。というかむしろ、捕まった方が楽なのかと。
負け試合に傷だらけになって頑張ったって意味ないし。それにもう面倒くさくなってきた。この町を出たらぐっすり寝ようと思う。たぶん目を覚ましたら檻の中。縛り付けられているだろうね。
ああそうだ。そうなったらお金も要らないね。有り金全部使っちゃおう。久しぶりに美味しいものでも食べられるかなぁ。
んー、出来たらかいふくのくすりとかも買いたいけど、どうせまたオレの顔でも張っていて、警戒してるんだろうな。いっそのこと盗みに入ろうと思ったけど、そしたら警察も動くだろうに。やってらんないなー。
やっぱ最後は美味しいもの食べて、お腹一杯になって、ぐっすり寝る方が…。

あれ…なんか、眠くなってきちゃった。
でもまだお腹いっぱいじゃないんだよね。美味しいもの食べてないんだよね。
でも…もういいや。オヤスミ…。

・・・
・・




ところで。あなたは、無くなった命はどこに行くと思う。
オレはね、とっても綺麗なとこに連れて行ってくれると思うんだ。そう、雲の上さ。でも、悪い奴は地獄って言う所に落とされるんだよ。永遠に重労働で、針の山とか登るのさ。
でも、違った。
今、オレは空の上にいない。
今、オレには針の山が見えない。
みんな、メモの用意だ。
命は、枯れると家に行くのさ。誰のかもわからない木で囲まれた家にね…。

うーん。何でオレは家にいるんだ?ちなみにぐっすり寝たような。頭スッキリ。
周りには、温かいランプ、というのかな。よく分からないけど小さくとも明るい光を放っている。ぼやっとした優しい光。
床は木のフローリングだな。別に最近の床暖房というのじゃなくて、純粋に木。これも何か温かいものを感じる。目で感じる暖かさ、という感じ。
あとは家具とか本棚とか置いてあって、殺風景じゃないけど必要な物しかない。引っ越しは簡単そうだな。ずっと家に居なかった自分が、言えるのもじゃないけどね。
というのはどうでもいいの。とにかく今は、何故ここにいるかが知りたいの。

「おはよう。あ、こんばんは、か」
「おぉ!?」
いつの間にか開いた左側のドア。そこから顔を出したポケモンは…ア、アルセウス!?
うん、嘘。冗談。アルセウス何て見た事もない。
顔をのぞかせたのはキノガッサでした。
「別に、キミの敵じゃないよ。だから構えなくていいって。こっちも怖いし…」
「あ、済みません」
うーん。コミュニケーションだったか、全く分からない。人とあまりかかわらなかったからなぁ。
ただ、敵じゃない。それだけでとっても嬉しいな。オレは、自分は有名人だから敵しかいない、と思ってたから。まだオレの事を知らない人もいたんだな。情報網が狭いか、この町がそれほど大きくないかだな。ん?そういえば、オレはここに来る時空を飛んでいたからこの町の全体を見てるはずなんだけどなぁ…大きさはどれくらいだったっけ。
「よかったよ、目、覚ましてくれて。君を見つけてからもう二日たつからね」
「ああ、そっか雪が降っててあまり視界が広くなかったから…って二日!?二日も?済みません、そんなに置いていただいて」
何言ってんだ自分。
「んー…よく分からないけど、キミ面白いねぇ」
「あ、どうも」
なんか色々ヤバい。メッチャ緊張してる自分がいて。
どうしよう。どうしよう。
「うん、感謝してくれるのは後でいいけど、お腹空いてない?ボクはお腹すいちゃってね。これから外に買い物行こうと思うんだ。なんか欲しい物あったら、買ってくるよ」
なんと…これはオレの第一印象が左右される運命の質問だね。ここは相手に出来るだけ迷惑をかけないように…。
「えと、大丈夫です!」
「うん分かった。じゃぁ、適当に買ってくるよ」
果たしてこの答えは合っていたのだろうか。
もしかしたら、正直に言った方が良かったのかもしれない。
しかしオレはこの答えを出してしまったんだ。もう後戻りはできない。
みたいなかっこいい言葉を言いたかっただけ。たぶん何て答えたってこの優しいキノガッサはオレの分も買ってきてくれるだろう。正直この問いなんてどうでもよかったんだろうな。

そんなこんなで、現在地点はキノガッサの家。そう言えば名前を聞かなければ。そのななしさんは今頃八百屋のおじさんと話してるんじゃないかな。たぶんオレの話題は触れないだろう。優しいから。
そう言えば。何でキノガッサは優しいと断言できるのか、の話だけど。
名前も知らない、傷だらけの奴を家に連れて行ったのもそうだけど。やっぱり一番は、傷をなぞった時かな。その時気付いたのさ。こいつ、優しいなぁって。
世界にはこんなやさしい奴もいるのさ。ごく一部、極めて一部分だけどね。
もう少し眠ろうかな。


「ねぇ、フライゴンさん。名前はなんていうの?」
「うん、オレの事はフライゴンでいいですよ」
「ね~…こっちが困ってるの、教えてよ」
「んじゃぁ、クランでいいよ」
と、オレはそこにあった手紙のあて先を答える。
「え?なんでボクの名前知ってるの?」
「ああ、これ、君の名前ですか。ほら、そこの手紙」
「あ、ほんとだ」
買い物から帰ってからずっとこれ。どうしてもオレの名前が聞きたいらしい。別に教えてあげてもいいんだけどさ。一応のために。
「あ、そうそう、きのみ食べる?」
「うーむ…迷惑でなければ」
「うん、じゃぁ名前教えてね?」
もういいや。

「へーぇ。じゃぁリューは旅人なのか」
「『リュー』じゃないです。『リューン』です」
「でさぁリュー、いつ頃ー出発なのかな?」
「迷惑ならば今にでも」
「え?いや、ぜーんぜん迷惑じゃないよ~?ただ、さ」
「…」
クランにも色々深い事があるらしかった。
そう言えば一人暮らし。オレより全然若いのに。きっと、思うに両親は死んでいる。さっきの手紙のあて名と、タンスの上の写真から分かる。それに、たぶん寂しいんだろうなぁ。大きな本棚二つがいっぱいだし、ラジオには音楽がずっとかかっててテレビもずっとついてる。

「別にクランさんが迷惑でなかったら、いつまでも」
「え…」
頬を赤くしたクラン。
正直に可愛いね。でもいまのは冗談。いずれこの家からも出なければならないときが来る。その時は無言で出ていくよ。相手が可哀想とかいう人いるだろうけど、そうは思わない。別れを告げてずるずる引きずってだらだら別れる事とどっちが嫌かと言ったらオレは迷わない。

「じゃあさ、じゃあさ、ずっとここにいてよ!別に好きとか言うんじゃなくて、話し相手になってよ!」
笑顔だね。愛想笑いも辛いほど笑顔だね。
そんな明るい笑顔見てるとさ、はぁ、好きになっちゃうじゃん。
たぶん相手はオレの事を恋愛対象としては見てない。友達って奴か。面倒くさい仲だよ。

という事で暫くはここで暮らすことになった自分。








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IP:125.13.222.135 TIME:"2012-07-19 (木) 17:15:42" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%89%B9%E5%88%A5" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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