*この話はポケモンが人間並みの生活をしている話です。 #hr 青い空・・・雲が流れていく。 「腹減ったなぁ・・・」 一羽のヒヨドリが部屋の窓を眺めながらそうつぶやいた。 「ホーちゃん、ご飯いこっか?」 そう話しかけたのは白い体に青のアクセントが入ったモンスター、そうルギアだ。 「るさいっ、ホーちゃん言うな。」 そしてそのヒヨドリはオレンジの体に七色の羽をもつモンスター、そうホウオウである。 「いいじゃん、幼馴染なんだしさ。」 そしてホウオウとルギアは食堂に歩き出した。 ここはポケモンの集う学校である。 俺はルギア。ホーちゃん、いやホウオウとはずっと小さいときからの友達で、仲は・・・いい。すごく。 階段を降りて目的の大きな建物が目に入る。食堂だ。 「ホーちゃん、何食べんの?」 「ん~、今日はカレー。」 「おっ、俺も同じ・・・ってか昨日も食べたじゃん。」 「よく憶えてるね・・・ホント。じゃあ肉うどんにしよう。」 ホーちゃんはそう言って食券を食堂のおばちゃん・・・いやガルーラさんに差し出した。 ガルーラさんは事務的にほいほいと丼に麺を盛り、ホーちゃんに「おまち!」と言って差し出した。 ホーちゃんはよっぽど腹が減っていたのか、満面の笑みで受け取った。 「ぼやっとしてないで次!次!」 ガルーラさんの声が食堂に響き渡った。 俺の番だった。あわててカレーの食券を出すとガルーラさんは素早くカレーの盛り付けをしている。 カレーができると同時にガルーラさんは笑顔で「ごめんね。」と言ってカレーの盛ってあるお皿を差し出した。 「ホーちゃん、ホーちゃん。」 「あ、ルギア・・・」 俺はホーちゃんを捜して、席に着いた。 ふいに違う席に目をやるとそこにはクラスで話題の美人、ミロカロスがいた。 ミロカロスは気が強く、クラスでも人気があるし、俺も少し気になっている。 「ルギア、何ニタニタしてんの?」 ホーちゃんの鋭い指摘。俺はあわてて視線を戻す。なんでもないです、と言わんばかりに急いでカレーを食べる。 ゴホゴホッ・・・案の定むせた。ホーちゃんはこうなるのはわかってましたよ、と言わんばかりに水を差しだして、俺は飲んだ。 こうなりゃお返しだ、と俺は話題を振ることにした。 「ホーちゃんはミロカロスのことどう思ってる?」 突然話を振られてホーちゃんはきょとん、とした表情で俺を見た。 「え??ああ、どうだろね・・・僕は・・・興味ないけど。」 予期した通りの答えだったけど俺はちょっとがっかりした。 昔からホーちゃんはすごい照れ屋で照れるとすぐに興味ない、と言ってしまう。 この一言でいつも煙に巻かれてしまう。この場合の興味ないっていうのは、興味があるのか、ないのか・・・ 考えているうちにもホーちゃんは器用にうどんをすすりあげていく。 いつも思うんだけど手の?翼の?構造どうなってんだろ、左で箸持ってるし。前聞いたときは電磁力とか言ってたけど・・・ 「ルギアも早く食べなよ。」 いつの間にかホーちゃんはうどんをすっかり食べてしまっていた。俺は急いでカレーを平らげる。 そして一緒に食器の返却に行き、教室に帰ることにした。 階段を上がっていくと俺たちの教室の階に大きな声が響き渡っていた。 「お前が悪いんだろうが!」 「俺は悪くねえよ!」 何事かと思ったおれは、物陰からのぞき見ると、ファイヤーとサンダーが喧嘩をしていた。 取っ組み合いのようにも思えるけど所詮は鳥、脚で蹴りあっている。 「おいこら何やってんだ!」 どなり声とともに風を切るようなスピードで4本足のモンスターがファイヤーとサンダーに近づいてくると、 すぐさまそいつはファイヤーをけっ飛ばし、サンダーを足で押さえつけた。 「あ・・・先生・・・」 そのモンスターは俺たちのクラスのアルセウス先生で、サンダーを押さえつける足には力が入ったままだ。 ファイヤーは目を白黒させ、何が起きたか理解できてないみたいで飛ばされたまま壁に張り付いている。 「お前ら、こっち来い!」 ファイヤーとサンダーはアルセウス先生に引きずられてこの階から消えていった。 「ホーちゃん、先生は相変わらず怖いな。」 ふいに俺はぼそっとつぶやいた。ホーちゃんはそんな俺にかまわず教室に入って行く。 「待って。」 俺はホーちゃんを追いかけた。ホーちゃんはすでに席についていて、今にも寝そうな感じだ。 「ルギア~今日遊びに行かない?」 俺に声を掛けてきたのはフリーザーだ。フリーザーはメスだけどよく俺に遊びに行かないか、と声をかけてくる。 好きでもないしだいたい無視してるけど。 「残念でした。行きません。」 「えーっ、つまんないの・・・」 俺はホーちゃんのほうを見た。グラードンとなにやら楽しげに話している。 よく話してるけど、同じ系統のポケモンだから仲がいいのかはわからないけど。 俺は席について次の授業の準備を始めた。 「ルギア~、宿題やってきた?」 またフリーザーだ。俺はややむっとした。 「やってないわけないじゃん。お前じゃあるまいし。」 宿題見せて、と言わんばかりの状況だが俺は断る。何しろもう授業は始まってるし。 「今日は30ページからな。」 アルセウス先生の低い声が教室内に響く。退屈だ。いや、言い方を変えよう。暇だ。暇なのだ。 あてられるわけでもなく、寝ていたいが、寝てたら何されるかわからない。それがアルセウス先生だ。 ちらっとホーちゃんのほうを見た。 「くぅくぅ・・・」 寝てるし。 マイペースなのはわかってるけど、この授業で寝るか? その時、アルセウス先生がホーちゃんに気付いたのか徐々に距離を縮めていく。 「あ・・・」 先生はホーちゃんの真後ろに立ち前足で首元を揺さぶった。 ホーちゃんはとくにびっくりした様子もなく顔をあげた。 「おはよう、ホウオウ。」 「あ、おはようございます。」 ホーちゃんは悪気もなさそうに言ってのけた。なんともない会話なのに教室は笑いに包まれた。 「寝るのは何とも思わないけど、堂々と寝るなよな。」 先生はそう突っ込むとホーちゃんの頭を前の片足で軽く小突いた。 ホーちゃんの言葉に俺はちょっとびっくりした。でも、素の反応だったんだと思う。 先生がホーちゃんのもとから去ると、ホーちゃんはちょっと恥ずかしそうに窓のほうを見ていた。 「じゃあ今日はここまで。この記憶をなくした少年がどうなるかはまた来週。さようなら。」 先生が教室から出て行った。そうだった。明日は休日なんだ。遊びたいけど、みんな予定ありそうだよなあ。 「ホーちゃん、明日予定ある?」 「ない。どこかに行きたいけどなあ。」 ホーちゃんは上の空といった感じでまだ窓の外を見てる。もう帰る時間なのに。 フリーザーがゆっくりと俺のほうに近づいてきた。 「お二人さん、暇なんだったら私のフィールドワークについてきてくれない?っていってもすぐそこだけど。」 フリーザーは古代史が好きでよく洞窟や史跡を調べてるらしい。俺はしばらく考えて受け入れることにした。 「いいよ。行ってあげても。ホーちゃんは?」 「だからホーちゃんって言うなって。僕も行ってもいいよ。」 フリーザーは嬉しそうにはしゃぎだした。 俺たちは寮住まいで、俺はホーちゃんと2匹で一つの部屋を使っている。 カバンを下げた俺たちは自分の部屋の電気をつけた。 部屋の汚さがよくわかる。汚いな~と思っても散らかしてるのは俺だ。部屋の半分はきれいに片付いている。 ホーちゃんは別にきれい好きじゃないけど、ノートと教科書と服くらいしか荷物が無い。 俺は雑誌やら何やらで結構な量の荷物がある。 ホーちゃんはおもむろにカバンを投げ出して、布団に丸まった。寝る気だ。 そうはさせるか、と思って俺はホーちゃんの布団に体当たりをした。 わあっという声とともに崩れる丸まった布団。ホーちゃんは崩れた布団から抜け出て眠そうな目でこっちを見る。 「寝させてよ。」 「ご飯は?風呂は?課題は?」 矢継ぎ早に俺は質問した。ホーちゃんはたじろぐこともなくご飯の用意をし始めた。 この寮はただ寝させてくれるだけ。体調が悪い時以外はご飯もお風呂も自分で準備をしないといけない。 料理が俺より上手なホーちゃんは朝夕とご飯を作ってくれる。ホーちゃんが寝ちゃうと俺のご飯がない。そんな危機感があった。 俺はその間に課題を片付ける。珍しくホーちゃんは課題をちゃっかりと学校でやっていた。 「できたよ、風呂もご飯も。」 待ってました、とばかりに俺はご飯にがっつく。 俺ががつがつ食べてると、ホーちゃんもあわててご飯を食べる。なぜならご飯を食べた後に戦いがあるからだ。風呂の順番という 名の戦いが。 俺ががつがつ食べてると、ホーちゃんもあわててご飯を食べる。なぜならご飯を食べた後に戦いがあるからだ。風呂の順番という名の戦いが。 ホーちゃんは俺の入浴時間が長いのが気に入らないのか知らないけど俺より先に入ろうとする。 そんなことを繰り返してるうちにふろの時間がどんどん早くなって今では夕食後すぐになってしまった。 「ご飯終わったから先に風呂入るね。」 「あ、待てっ!」 あわただしくホーちゃんが言ってすぐに俺も食べ終わり急ぐホーちゃんを無理やり捕まえる。 「やめてって!」 「ごめんね、この世は力があるものが勝つからな~。」 心にもそんなことを思ってない俺は嫌がるホーちゃんを押さえつけて俺は風呂に急いで入る。 風呂に入りながら俺はホーちゃんのことを考えていた。 ホーちゃんは本気の力で俺に向かってくることがない。知り合ってからずっとだ。 知り合ってから俺とホーちゃんは困ってはお互い助け合って、時に俺はホーちゃんに説教されて・・・ じゃれあうことはあってもつかみ合いのけんかはしたことないし・・・ そんなことを考えているうちに結構時間が経ってしまっていた。 俺は風呂から出るとホーちゃんに風呂に入れよと言おうとしたが、いない。 どこに行ったのやら、布団かな? 俺の読み通りに俺は寝室に入ると丸まった布団を見つけた。よく見ると微妙にホーちゃんの体の形の凹凸が付いている。 ゆさゆさと俺はホーちゃんを布団ごと揺さぶるとホーちゃんは珍しくすぐ起きた。 「もう風呂入ったの?早いね。」 「もうってもう1時間もたってるけど。」 俺の言葉を受けてホーちゃんはぼけーっとした顔のまま風呂場に向かった。 ホーちゃんって、付き合いが長いせいかほとんど俺の読み通りに動くな・・・押しに弱いのかな・・・ ホーちゃんって、付き合いが長いせいかほとんど俺の読み通りに動くな・・・押しに弱いのな・・・ なんか、守らないとダメなような気が・・・ 「あ~、いいお湯だった。」 ホーちゃんは身体を乾かしながら、そそくさと何かしていた。 「何してんの?」 「えーと・・・明日どこいくか分かんないから、その準備。」 俺は忘れていた。明日フリーザーとホーちゃんとでフィールドワークに出かけるということを。 そしてどこに行くかもいつどこに集合かも聞いていなかった。 まあいいや、明日になりゃなんかわかるか。 「寝る!」 そう宣言して俺は寝ることにした。でもなかなか寝付けない。 「ホーちゃん。」 ぴくっとして、ホーちゃんは俺のほうに向いた。 「なに?」 「ホーちゃんってなんで外でホーちゃんって言われるの嫌なの?」 俺は疑問をストレートにぶつけた。 「うーん。でも、ルギアも~~ちゃんって外で言われるのはいやでしょ?」 もっともだった。たしかにそれ以外に答えは見つからないな・・・ 事実俺には2匹だけのときにホーちゃんって言って嫌な顔された記憶はないな。 それ以来会話は途切れた。ってか俺が寝た。 つづく [[青浪]]