[[×]] この話は&color(red){流血};や&color(red){過激な暴力シーン};が含まれたりするので苦手な方は[[こちら>トップページ]]から避難して下さい。 ---- 静寂に包まれた夜の町、だがそんな町の静けさの中に低い唸り声のような音が何かの砕ける音と共に響きわたる。【Lucky★star!!】と白で側面に殴り書きされた黒い装甲車が立ち並ぶ家々によって狭く曲がりくねった道をカーブにぶつかりながら進んでいる。相当な速度でぶつかっている様でぶつかられた壁には大きな亀裂が走っている。 突如、先ほどから爆走していた鋼鉄の化け物が叫び声を上げ停止した。 ドアを開け、中から出てきたのは……アブソル……? ~~数時間前~~ 僕は今、とても後悔している。何故かって?無論ナイトメアをあの動く箱((Lucky★star、つまり装甲車のこと))の中に置いてきた事だ。彼ならちゃんと会話が出来るだろうから。 はっきり言って僕は説明や初対面の人との会話が苦手な方だ。そのため大体はナイトメアに体を貸して対処させてきたのだが、今はそれが出来ない。まぁ、今のところ先程お世話になった二人が僕の目の前に居るゾロアーク……ディーゼルさんに状況を説明してくれている。 「ん、大体の経緯は分かった、つまりあんた達が町でこの子を拾った……と」 「マ、ザックリト言エバソウダナ」 「まあ私的には一人や二人メンバーに増えても気にしないけど……」 じっと僕の方を見てくる。多分僕に何か訪ねようとしているらしい。何か喋ろうと思い話そうとするが結局何も話すことが出来ず黙り込んだままになってしまう。気が付けば地面を引っかいていた。初対面の人しかいないときに良くやってしまう。 駄目な癖だな、と心の中で呟く、何も話せず重い空気がその場に漂う。 『相変わらず情けないな』 不意に後ろから声がする。振り返ってみるとそこにはどうやらやっと正気に戻ったらしいナイトメアがいた。先程まで人のことを言えないほど情けない姿を晒していた癖に、良く言えたものだ。 ーー君の方こそさっきは酷かった……よね?ーー 笑いながら僕がそういうと苦笑いで返してきた。 「あら、久しぶりじゃないナイトメア」 『嗚呼、久しぶりだなディーゼル』 気が付けばディーゼルさんがすぐ後ろまで来ていた。そしてナイトメアに対して&ruby(////){久しぶり};と言っていた。久しぶりと言うことは二人は前にもあったことがあるのだろうか? ーーねぇナイトメ……ーー そう言いかけたが突然の爆音にかき消されてしまった。思わず瞑っていた目を開くとそこにはまるでドリルの様に躯を回転させている鉄蛇……ハガネールがいた。だが様子がおかしい、ただ唸るだけで言語を発していない。ふと、ある一点を目にして背筋が凍った。 ……眉間に大きな風穴が空いていたのだ、さらに眼を凝らすとその辺りに黒い汚れが付着している。これらが意味することはただ一つ、相手はすでに死んでいる者だ。 相手が回転を止める。すると躯にある二対の突起の片方が根本の方から折れた、いや腐り落ちたの方が正しいのかもしれない。現に回転を止めた躯はあちこちが錆び付いており、何時崩れてもおかしくはなかった。 「ゲェ、巻イタト思ッタラマダツイテ来テヤガッタノカ!」 「その様ね お二人さん、説明は後でする 今はあれを動けなくするのを手伝って、シュークルは車をお願い!!」 「リョーカイ」 頭の中が整理できない。死体が動いているだけでも驚きなのにそれを止める?何をして良いのかが分からない。意味が分からない。あれの仕組みが分かれば何をするのかが分かるかもしれないがほぼ情報が無い状態、ただただ呆然と立ち尽くしていると強烈な痛みが身体のあちこちに走った。この感覚は前にも、というよりほぼ毎日、体験している。痛む身体を無視して左に移動した。 その時に硬い物が僕の身体を掠る。相手のアイアンテールだ。そのままの速度で地面に当たり、腐っていた尾が砕けた。 あのままその場から動いてなければ先程身体を襲った痛みよりももっと強烈な痛みがくるか、それか死んでいた。掠った箇所から血がでている様だ。白い毛に血の赤が目立っている。だが、掠ったお陰で相手の躯が動いている理由が何となく分かった。そして僕は自分の中の予想を確信に変えるために無茶なことをしようと思う。 「ナイトメア、今からあれに突っ込むから援護お願い」 『は!?な、待てヴォルフ!!』 ナイトメアが何か言ったが気にせず相手へ突っ走る。何か言ってはいたがナイトメアはちゃんとシャドーボールで援護してくれてる。後は…… 「オラァァァ!!」 渾身のアイアンテールを相手に当てるとその際自分の身体に一瞬だが確かに鋭い痛みが駆け巡った。 間違いない、そう確信した。 「ナイトメア、あいつは電気で動いてる」 『なに?電気?』 「そう、電気で 前に教えてくれたよね?大体の生き物は脳からの電気信号で筋肉を動かして生きているって」 『……なるほど、そういうことか』 「お見事、正解だよお二人さん」 ディーゼルさんが楽しそうな笑みを浮かべながらそういった。正解だと。 多分相手は脊髄や関節付近の筋肉に電気を流すための装置が埋め込まれているのだろう。それで脳の代わりに電気を筋肉に流し動かしていた。 タネさえ分かれば簡単だ。動けなくするには…… 「ソレヨリモ モット強力ナ電気ヲ流セバイイ、伏セロ!!」 アンペア……さんが僕の思考を読んでいたかのように言葉を繋げる。そして伏せろと言われたのでちゃんと伏せた。 するとぎりぎりの所を青白い光が通る。多分チャージビームであろうそれはまるで生き物のようにハガネールに襲いかかった。錆び付いた&ruby(からだ){巨躯};が軌しみ、悲鳴を上げている様な音が響きわたる。 しばらくの間、相手は硬直していた。その後、ゆっくりと音を立てて倒れ、その勢いで土埃が舞う。点々と真っ黒に焦げている箇所があるのはそこに何らかの装置があった為だろう。甲殻が砕け散った尾が激しく焼け爛れ、酷い異臭を辺りにまき散らしていた。 不意に後ろからポンッ、と叩かれる。振り向くと手招きをしているディーゼルさんとその後ろで道を塞ぐように留まっている黒い箱があった。やはり黒い箱には【Lucky★star!!】と書かれている。 乗り込もうとした際にまた、体中に痛みが走った。今度は先程とは違い、激しい頭痛がついてきた。そして、映像のようなものが頭の中で再生されていく。 町のような場所で大規模な火災が起きている様だ。その中に先程のハガネールが少なくとも10体はいる。泣き叫ぶ子供だろうか、その子供が叩き潰され鮮血が飛び散ったところで映像がストップする。 毎度のことだが、やはりこれには慣れることが出来ない。災いの感知能力、僕はそれが強すぎてこのような途切れ途切れではあるが鮮明な映像となって頭の中に伝わってくる。苦痛と共に惨劇の様子を見せられる為、僕は何度か頭にある鎌状の角をへし折ろうとした。だがすべて失敗した。 堅い岩にぶつけても鎌の方が勝ってしまうからだ。まぁ、もうこれに関しては諦めてもいる。さっさと箱の中に入ってしまおう。 『またあれか?』 「うん……また、何処かで町が消えるみたい 救えもしないのに毎日毎日同じ様な惨劇を見せられる、 結局救えないことは分かってるんだ!!なのに見せられる、救えないと分かってるから辛いんだ」 ナイトメアに尋ねられ、思わず弱音を吐いてしまった。つい大声で言ってしまいディーゼルさん達にも聞かれてしまった。我ながら情けないな…… 深呼吸をして自分を落ち着かせる。だが、先程の映像がまだ頭から離れない。まだ、間に合うのでは?もしかしたら近いのでは?そんな考えが頭の中に浮かぶ。 だめだ、こんなこと考えちゃ。たとえ間に合ったとしても誰も信じてなんかはくれない、今までもそうだったじゃないか、何とかそう自分に言い聞かせる。それに間に合わなかったことの方が多い、急いで向かったがついた頃には瓦礫の山だったり死体だらけで生存者がいても罵声を浴びせられるだけ、やるだけ無駄と分かっていても希に救えるときがある。だから止めるに止められない。 『そういえばディーゼル、今何処に向かってるんだ?』 「ん~?よく考えないで運転してるから何処に着くかは分からない」 ナイトメアとディーゼルさんの会話をボーっと聞いていたのだが、どういう事? ドコニツクカワカラナイ……? 『は!?』 「だって特に向かう場所もないし、それにここ何処だか分からないし」 『お前、……、まぁ、一つだけ言わせろ』 「なに?」 『もっと道を考えて走れ!アホかお前は!!』 「なによ!じゃあ貴方は道が分かるの!?」 『分かるとは言ってないだろ』 「じゃあ口出さないでよ、奇跡が起きて町に出られるかもしれないじゃない」 『奇跡に頼らないと出られないのか!!』 「うるさいわね、黙ってなさいよ!」 暫く呆然としていたが突然始まった二人の喧嘩で今度は端の方でおさまるのを待つ。 まるで夫婦喧嘩みたいだな、今あの二人に何を言っても無駄だろう。 喧嘩がおさまるのを待っている間にあのハガネールについて、現時点で分かっていることを纏めよう。 まずあのハガネールは一体だけではない、次にあれは何らかの装置で動いている、そして最後に憶測だがあれを操っている国があるはず、あれほどの量を武装勢力((いわゆるテロ組織))が用意できるとは到底思えない。どこかの国が所有していると考えるのが妥当だろう。 「イップントゴジュウヨンビョウ」 「はい?」 「アノバカドモニツタエテヤレ、アトイップントゴジュウヨンビョウデガケカラオチルゾト」 「ッ!!ディーゼルさんッ!前!」 突然、本物の人形のように黙って座っていたシュークル・・・さんがケタケタと笑いながら全く笑えないことを言ったので焦って前で喧嘩をしているディーゼルさんに伝える、一体どういう神経してるんだろ。あの状況で笑っていられるなんて。何とかディーゼルさんの操作が間にあって事なきを得たがまた喧嘩が始まりしかたなく僕がナイトメアを黙らせて二人の喧嘩を強制終了させた。 すっかり空は暗くなり三日月が銀色に輝いている。いつもであればもう焚き火で暖をとりながら適当に拾ってきた木の実を食べている頃だ。 あの後、奇跡的に町に着き、今は広場にあの箱……Lucky★starを留めて昼間のハガネールについて説明をして貰うところだ。 「さて、どこから話そうかしら」 「えりあ-13辺リカラ説明シテヤッタラドウダ?」 「そうね、じゃあ二人ともエリア-13って場所を知ってる?」 『名前だけなら』 「何処のことかさっぱり」 「まぁ、その程度なのは大体予想していたわ。エリア-13、正式名称はアパラスト軍立兵器実験施設エリア-13、余りにも過激な実験を行っていた為今は閉鎖した事にされている兵器開発工場よ」 『閉鎖した事にされている……?』 「そう、流石にやりすぎだっていろんな所から批判が絶えなかったから閉鎖したことにしてひっそりと運営していたの、強化骨格とかタイプ操作、そしてあのハガネールを動かしていた装置、&ruby(えいとうへい){永闘兵};システムを完成させた。それを装備したら最後、肉片になるまで戦い続ける事になる文字どおりの品。まだ鋼タイプにしか使用できないらしいけどほかのタイプでも実験を試みてるらしい」 「何でそんなに詳しいんですか?」 「……あそこの職員だったからよ」 知らない単語がいっぱい出てきたが、要はあのハガネールはどっかの軍の実験施設が制作した装置の被害者だったらしい。ディーゼルさんはとても詳しく教えてくれたが、なぜそこまで詳しいのか聞いてみたら少し俯き気味に答えてくれた。どうやらそこの職員だったらしい。納得は出来る、出来るがどうも気になる。なんだかまだ何か隠していそうで…… もっと追求しようかなと考えていると突然大きな揺れが起こった。 急いで外を見ると遠くの方に火柱が立っていた。まさか……頭の中で再度あの映像が再生される。間違いない、ここだ。ここがあの大火災の起こる町だ。 やはり自分は災いから逃れることは出来ないらしい。それは一種の呪いのように、それは永遠に付き纏う影のように、それは強固な鎖でつながってるかのように、僕の前に現れる。決して僕を逃がさないように、宿命という名の鎖で雁字搦めに縛り付けられている。もし、その鎖を切り裂けたとしても、また新たな鎖が僕を捕まえ、逃がさぬよう絡み付く。 気が付けば、火災が起きている方向に走り出していた。生き物の焼ける臭いが次第に強くなってくる。走っていると前方に泣き叫んでいるイーブイが見えてくる。 なにが起きるか大体予想は出来ている。思わず目をそらすと柔らかい物が潰れるような軽い音が聞こえてきた。再び視線を前に移すとそこには肉片や脳髄で汚れたボスゴドラが立っていた。足元には腸等の臓物がグチャグチャに潰れて散乱していた。相手はこちらが視界に入ってるにも関わらず別の方向へと歩きだす。相手はまるで操り人形のようだ。自分で考えて行動をしない&ruby(マリオネット){操り人形};、&ruby(いと){電気};を断ってしまえば活動できなくなる存在。 もう、なにをやっても今更手遅れなのは分かっていた。だが僕は無意識のうちにこちらに背を向けているボスゴドラに鎌鼬を放っていた。やっても意味はない、ただ自分の体力が奪われるだけだ。だが、僕が、いや、&ruby(////////){この身体が放った};鎌鼬は相手の関節に命中し四肢を切り裂いた。 まるで&ruby(ちしぶき){血飛沫};のように青い液体が飛び散る。まぁ、彼らにとってはそれが血液、なのだろう。また、走っていた。今度は自分の意志で走っている。何をするでもなくただ、走っている。 ふと、足を止める。目の前に突然紫の物体が現れたからだ。徐々にそれの形が変わっていく。先程現れた紫の物体はムウマージのようだ。 そのムウマージは何をするでもなくただ僕を眺めていた。 「御主、この町の住人か?」 「違うけど……?」 突然、目の前にいるムウマージが喋った。とりあえず質問には答えておく。一応警戒をしておこうか。 「そう、か……この町の者ならばこの者達が何処から現れたか分かるやも知れぬと話しかけたが違ったか、呼び止めてすまなかったな」 「い、いえ」 何だか話づらい人だ。元々会話が下手クソなのにこんな話し方の人と会話する羽目になるとは面倒だ。 「後は聞かぬ事にするかのでは、すまなかったな、お嬢さん」 そういうとムウマージは消えてしまった。去り際にお嬢さん、と言われた。もうお嬢さんなんて言われる歳じゃ……けふん。それより、不思議な人だったな。 #hr 町で拾ったアブソルが走って行ってからすぐ、永闘兵システムを搭載した電気人形共がちらほらと現れだした。 恐怖や痛みを知らない奴等とLucky★starは相性が最悪だ。一応武装を施してはいるが蟻のようにわらわら湧いてこられたら何時かは弾が切れちまう。 「オイでぃーぜる!! チャントミチアケロ!! シガイデミチフサイデンゾ!」 「うるさいわね!分かってるわよ!!」 「分カッテンナラ努力シロヨ」 馬鹿共が猿みたいにギャーギャー喚いてやがる。Lucky★starに装備してあるレールガンで蟻共の胴体をブチ抜いて進行方向に飛ばしているアホギツネに一応努力しろと言っておいたがどーせ耳に届いてない。 俺もレールガンを操り1機ずつぶっ飛ばしていく。 アイツ何時になったらロック画面の見方を覚えるんだ? わざわざ初心者用の簡単モードで表示してやってるのにレールガンの角度や発射する弾の設定が滅茶苦茶だ。 整備の腕は確かだが搭載している装備や運転はど素人より酷い。 「アンペア、悪い知らせと悪い知らせと悪い知らせがあるんだけどどれから聞きたい?」 「悪イ知ラセ」 「まず、弾が切れた 次に損傷度がレッドゾーンに達した、後……」 珍しく深刻そうな顔をして悪い知らせを俺に伝えてくる。最後の知らせだけをなかなか言い出さない。 シビレを切らした俺はカメラに切り替え辺りを見渡した。ふと、緑の紐が空に浮かんでいるのがレンズに映った。 「マサカトハ思ウガ奴カ?」 「残念ながら」 「オイオイ、ジョウダンダロ……」 レンズに映った物、それは紛れもなくレックウザだ。アパラスト軍大型飛行部隊長、レヴィアタン中将。主に要塞落としなどにしか参加しないような堅物が何故此処にいるんだ? #hr 置いて行かれたLucky★star組ピンチ 続かせます [[第惨話>災いを伝える者第惨話 死と幸福は紙一重?]]に続く。 前回の更新でリンク張るの忘れてた。 #pcomment(災いを伝える者コメログ,4,パラメーター);