&ref(107769.jpg); [[九十九]]様からいただいた表紙絵です。 [[×]] #hr 「二度とこの村に近づくな忌々しい悪魔め!」 ……流石に聞き飽きたな……この言葉、まぁ、アブソルに生まれた僕の運命なのだろう。 アブソルという種は災いを感知する能力がある為その災いが起きるであろう場所に行き、そのことをそこに住む者に伝える。だが、次第に『アブソルが現れた地には災いが起きる』等と言われだしアブソルは災いを報せる者ではなく、災いの象徴となっていた。 そして、今いる村……もう遠いけど、そこで災いが起きると伝えに来たのだが門前払いされた。 ……まぁ、この対応には慣れたけど、去り際に『後で困るのはそっちですからね』と言ってやった。まぁ、聞いて無いだろうけど。彼方さんは僕を追い返すのに必死になっていたし…… 『なぁ、どんな災いが起きるか見ていかないか?』 突然、僕の胸元から声がした。声の主は古ぼけたペンダントに付いた黒い石、の中に今は居る……できれば黙っていて欲しかったな。 「ナイトメア……村とかが近い時は喋らないでって言ったよね?」 『十分遠いと思うが?』 そういって勝手に黒い石から出てきたミカルゲがナイトメア、普通のミカルゲは要石という物に封印されているため、石から離れられないが、こいつは普通に離脱できる。 何故ならこいつの封印はとうの昔に解けているからだ。そのため住処にしているのが要石ではなく、僕のペンダントの黒い石なのだ。 更に、簡単に他の物にとり憑き自由に動かすことができ、結構役に立ってはいるが、災い等を見るのが大好きな為、度々見ていこうと提案してくる。本当勘弁して欲しい…… 『じゃ、俺は彼処の村がどうなるか見てくるから』 「は?!ちょっと、待て!」 僕の制止も虚しくナイトメアはどこかに行ってしまった……。 #hr さて、五月蠅いのも振り切ったし、何かにとり憑いてここに訪れる『災い』を見ていくか。 あいつは災いが起きることを伝えるかしたら、さっさとその場から立ち去りたがる。だからちゃんと見れたことが無かったけどあいつさえ振り切ればゆっくり眺められる。 俺はゴーストタイプだしヴォルフに本気でこられたら流石に怪我をせずに勝つ自信がない。 あいつの鎌鼬コンボには勝ったことすら無い。俺をとり憑いた物から引きずり出す為に鎌鼬を放った後、すぐにシャドーボールの雨を放ってくる。 とり憑いた物から出た後すぐは動けないため全く避けれず全て当たるため大体あの石に戻るしか避ける方法は無い。 唯一あいつに勝てたのは格闘タイプの体を乗っ取って戦った時のみ、それでもかなりボロボロになった。 あいつの戦闘スキルは尋常じゃない、この前は一匹で格闘タイプ二匹を相手に圧勝しやがった。相手が手抜きしていたのもあるがそれでも普通の悪タイプなら勝てない。俺が選んだパートナーであるあいつだからこそ勝てたのだ。……まぁ、あいつが異様に強いのは俺が原因なんだけどな…… まぁ、とりあえず何かにとり憑いて身を隠さないとマズイ、こうしている間にもアイツはドンドン近づいて来てる…… 「なにブツブツ言ってるのかなぁ、ナイトメア?」 あ、アイツの声が聞こえたけどきっと幻聴だ、あいつがこんなに速い訳無い……はず。 「現実は認めたく無くとも受け入れないといけないよ?」 『分かってる……こうなってる理由もさっき思い出した……』 さて、読者の皆様に俺の性質で少し厄介な部分を説明しよう。実を言うと俺はあいつの持っている石から完全に独立している訳ではない、そのためあれから約200m離れると自動的に石の近くに俺自体が移動するありがた迷惑な性質がある。はぐれた時などは使えるがこういう場面ではただ迷惑なだけ。つまり、あいつから逃げることは不可能なのだ。……今更思い出しても無駄だけど…… 「落胆中のナイトメアに嬉しいお知らせがあるよ」 『なんだ?珍しい木の実を見つけたとかだったら怒るぞ』 「そんなことで喜ぶ様な歳じゃないよ、もっといい知らせさ」 『……期待して良いのか?』 「勿論!」 ……やけに自信があるな、まぁ少しばかり期待しておくか。 『で?その嬉しい知らせとやらはなんだ?』 「なんと、泊まれる宿が見つかりましたぁ!」 この言葉に思わず目が点になった。 『……マジか?』 「逆に聞くけどこんな事で嘘つく必要ある?」 『……無い』 俺達が、宿が見つかった程度でこんなにはしゃげるのにはコイツの種族が関係している。 もう、気づいた勘の良い奴もいるだろうが説明しよう。アイツはアブソルという理由から大体の村や町に入れない、そのため野宿が殆どだった、だから宿に泊まれるという事実だけでこんなにはしゃげられるという訳だ。 『ん?でも、どうやって町に入った?大体が門前払いだろ』「それは、近くにいた人が交渉してくれた」 『そうか……』 ……何か引っかかるな、その交渉をした奴といい交渉が成立した事といい、何かがおかしい、そんなに上手く事が進む訳がない。罠か……?いや、考えすぎか…… 『まぁいい、とりあえず町に入るか』 ……やはり周りからの視線が痛い、これはさっさと宿に入らないとヤバそうだな。 『ヴォルフ、ちょっと急いだ方がよさそうだ、さっさと宿に入るぞ』 「うん……」 ……ん?前方に何やら古びたデカイ建物が見えてきたが、まさか…… 『おい、ヴォルフ』 「ん?何?」 『お前が言ってた宿ってあれか?』 「んー?」 俺が聞いた瞬間ヴォルフは顔を上げ建物を確認する。 「あー……うん、あれだ……多分」 『オイオイ、曖昧じゃないか』 「しかたないじゃん案内ちょー適当だったんだから」 『どんな感じだったんだ?』 「真っ直ぐ進めばあると思うって言われた」 『……案内と言うのか?それ……』 「まぁ、気にせず宿に入ろー♪」 『やれやれ……』 まあこの後無事部屋に入れたわけだが…… この宿の一番端の方の部屋に泊まることになったのは言うまでもないだろう。 『さて、退屈しのぎに不老不死の体の短所について話してやろう』 「まぁ、暇だし聞いてあげる」 『じゃあ話すとするか』 『不老不死になる事で生じるメリットは年を取らず永遠に生きられるという物だ、だがそれがデメリットにもなる、なぜだと思う?』 「どんなに辛くても死ねないから?」 『それもある、が他にもある』 「他って?」 『自分が愛した存在が自分より先に消えていく、とか』 「あ……」 『自分は永遠に死ねないが相手の方は寿命がある、そうなったら当然相手の方が先に死ぬ、だが、自分は何時まで経っても死が訪れない、そんな状況を何回も経験する』 『そうなると次第に自分の死を求め、他の存在を愛する事を恐れるようになる』 『そうして段々とそいつの中で何かが歪み、崩れ始める』 『その結果、なにもしなくなりただ、" 息をする人形 "になる訳だ』 #hr ……寝る前に嫌な話聞いちゃった、ナイトメアはこういう怖いことをさらっと言うような奴なのに何で話聞いちゃったんだろ。 変に怖くなって寝られなくなっちゃった、そしてあんな話をした張本人は部屋にあった置物の中で就寝中 今すぐに叩き起こしたいけど石の中に居るわけではないからそんなことは出来ない訳で……嗚呼、朝に殺ればいいのか……イヤ、文句を言うで止めておこう。&ruby(あれ){彼};をボコるのはまた今度にしよう。でないと何されるか分からないし。また面倒なことになる……。 ……ん……ふぁ……どうやら一応寝れたみたいだ。ふと時計に目が行く、大体11時位か…………………って! 「もう11時ぃ!?ナイトメア!早く起きて!出発するよ!」 『んぅ……?くぁ……朝か』 うぅぅぅ……暢気に欠伸しやがって、このアホ忘れてやがるな。 「ここは昼には南門が閉まっちゃうの!そして僕らが通るのはその南門なの!言ってる意味わかる?」 『…………あ!』 やっと思い出したか、焦った様子で何やら慌ただしく動き回っている。何か探してるのかな? 「何やってんの?」 『いや、鍵何処やったかな、と……』 「…………は?」 僕はこの言葉の意味が一瞬分からなかったが、すぐに鍵を紛失した、ということに気づき、ミカルゲだった物を時々踏みながらこの部屋の鍵を捜索した、鍵は意外にもベッドの左隣に落ちていて見つけるのに15分も要してしまった(本当は五分で見つけたけどナイトメアをシメるのに思わず10分も使ってしまった)。 ……マジでヤバい、残り時間はあと17分、そして南門までは大体30キロあるわけで、頑張っても20分は掛かる。もう半ば諦めかけてる。 「……ん?」 何か……唸るような低い大きな音と微かだが鉄が軌むような高い音の混ざった何とも言えない音が段々大きくなって聞こえてくる……音の主が近付いてきてるみたいだ。 「おわぁ!!」 長方形の箱の底に車輪を付けたような物体が荒々しくドリフトを決め、僕(とナイトメア)の前で停止し、真っ黒のボディーの側面に【Lucky★star!!】と白で書かれたその物体のドアらしき部分が開く。 「ケケケ、イソイデルミテェダナ、ノッテケヤ、ケケ」 これの操縦席と思しき場所に座ったジュペッタに話しかけれた。 「オイオイ、勝手ニ決メンナヨしゅーくる、アチラサンニモ選択肢ヨウイシテヤレヨ」 その言葉に反応するかのようにどこかから声がする。 「ウルセエナあんぺあ、ベツニノッテルヤツ、フヤシテモイイジャネェカ」 あまりにも唐突な出来事で硬直するしかなく、ただ目の前で行われているやり取りをぼーと眺めるしか出来なかった。 「ナァしゅーくる、俺等ハ後15分位デ南門を通過シネェト怪力狐二殺サレルンダゼ 俺ハマダ死ニタクネェゾ」 『お前達も南門に向かってるのか?』 僕が聞こうとしたらナイトメアが石から出てきて先ほどのジュペッタに聞く。 「アア、ソウダゼ ダカラノッテクカッテキイタンダヨ」 「乗ルノカ乗ラナイノカ早ク決メテクレ」 『乗る、で良いよな?ヴォルフ』 ナイトメアの問いに対して軽く縦に首を振った、その後シュークルと呼ばれていたジュペッタに案内されこの巨大な箱の中に入っていった。中は見た目通り広く横になっても十分余裕があったけど怪しげな液体((液体火薬))の入った瓶や危険とかかれた白い粘土((C-4プラスチック爆弾))が詰まった段ボールなど危なそうな物が大量にあった。 「ケケケ、オクノホウデボッコニシガミツイテナ」 「車内ヲ転ゲ回リテェンナラ別ダガナ」 『先ほどから気になっていたんだが、この機械的な声は何なんだ?』 ナイトメアの問に答えるように【モーター制御区域】とかかれた箇所が突然、青白い閃光を放った。一瞬、漏電かと思ったけどその後見えたオレンジの物体で全て分かった。 「ジャ、トバスゼ」 「ごふッ!」 アンペアと呼ばれていたのはロトム、確かにロトムなら機械みたいな声になるし、納得がいく。 「オイあんぺあ、テメェガもーたーセイギョシテナイトジカンニマニアワナクナルゾ? オレハベツニドーデモイイガ」 「……モウ着イテルダロ、頭大丈夫カ?しゅーくる」 「……マァ、マニアッタ、ナ シカシアイカワラズハエェナコイツ」 ……頭がぐわんぐわんする……結局、後ろの方の棒にしがみつく暇も無く''これ''は急発進して見事に僕は車内を転がり回った。途中例の段ボールに激突したけど特になにも起きなかった。 『……大丈夫か?ヴォルフ』 あう、と力の無い返事をナイトメアに返しておく、潤んだ瞳での上目遣いも忘れずに、かなり危険なポーズでたまに使う奥の手を繰り出したけどナイトメアはやっぱり見慣れてるからか大丈夫そうだな、の一言だけだった。 「9分早い、あんた達にしてはまあまあね」 「マアナ、ソレヨリでぃーぜる、先二行ッタリシテ何カアッタノカ?」 ふと外から声が聞こえてきた。と言うよりディーゼルって名前を聞いたことがある気がする。 ドアとは反対側の方でナイトメアの小さな悲鳴がしたのでドアの方に向いていた視線をナイトメアに向ける、すると蚊の鳴くような声で殺されると呟きながら完璧に凍り付いたナイトメアがそこにいた。 そのまま放っておくのは可愛そうだから話しかけてみることにした。 「ナイトメア、だい……」 じょうぶ?と続けたかったのだが何故かこちらをおびえた目で見つめてきたのでうまく言葉に出来なかった。あんな目で見られたのは久しぶりだなぁ、前に襲ってきた中途半端なチンピラを&ruby(//){軽く};潰した時にも同じ目で見られたし……。 ナイトメアはもう何をやっても駄目そうなので放っておき、さっさと外に出ることにした。 だが、この時はまだとんでもない事に巻き込まれるなんて思いもしなかった。 ---- ちょこっと更新、[[第弐話>災いを伝える者第弐話 地を駆ける黒い塊!!]]に続かせる。 #pcomment(災いを伝える者コメログ,5,パラメーター); IP:126.131.104.176 TIME:"2015-04-07 (火) 23:15:24" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%81%BD%E3%81%84%E3%82%92%E4%BC%9D%E3%81%88%E3%82%8B%E8%80%85" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; Trident/7.0; MANM; rv:11.0) like Gecko"