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永遠の棺 ―死してなお、永遠に― の変更点


*&color(#e06bad){永遠の棺}; ―死してなお、永遠に― [#b17edbcf]

☆この作品は[[永遠の棺 ―死の闇の末に―]]の続篇です。此方を読まないと本当に意味が解らないので、興味を抱いて下さった方はまず此方からお読み頂きたいです。

&color(red){カオスな表現が多々存在する};ので、苦手な方は此方からお帰り下さいorz

[[この世>トップページ]]

作者:[[トランス]]

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湿っぽく、暖かい感触を頬に感じて、目を覚ます。
目を開くと、ふかふかとした橙の毛皮に黒い模様の入った足が見えた。

「おはよう、テップ。」

その橙の毛皮を持った仔犬の様なポケモン、ガーディのテップは、私の声に反応して、嬉しそうに吠えた。

あの人が亡くなってから3年の年月が経った。私はあれから、一度も夫に会いに行っていない。いや、行ったとしても夫はきっと其処には居ないでしょう。
だって、人は死んだら、空の上へ翔んで逝ってしまうんですもの。あの人はもう…この世界には、いらっしゃらないんですもの。
渇れた筈の涙がまた溢れてくる。側で見ていたテップが心配しているのか、身を起こし座っている私の膝の上へと乗ってきて、頬を伝う雫を舐め取ってくれた。私はテップの舐めている方とは逆の目から溢れる涙をを手で拭い、有り難う、と声を掛けながら、テップの頭を撫でる。
気持ち良さそうにして尻尾を振っているテップを見ながら、私は昔の事を思い出していた。

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テップは寒い冬に夫が拾ってきたポケモンだった。その日は大雪で、窓を閉めていても肌寒いぐらいだったかしら。そんな時、夫はこの子を拾ってきたの。その時のテップはびしょ濡れで、後ろ足に怪我をしていたわ。痩せ細っていたし、ぶるぶる震えて凍えていた。

当時の私は、ポケモンが嫌いだった。あの鋭い牙や爪を見ると、怖くて堪らなかった。
まだ幼少だった頃は、私もポケモンが大好きだった。野良ポケモンや散歩をしているポケモンと触れ合うのが日課だった。でも、ある時隣の家のヘルガーが赤ちゃんを産んだと聞かされて、気になった私は隣の家の庭に勝手に入ってしまった。当然、産まれたばかりの赤ちゃんを抱える親ヘルガーは、私に唸り声を上げていたわ。今なら威嚇していたって、当然の事のように判るけれど、幼い私には判る筈もなかった。だから、ヘルガーの方へ近寄ってしまったの…
ヘルガーはもう結構な歳だったから、幸い噛み傷は深くなくてすぐに治ったのだけれど、火傷は治ってもずっと痛んでいた。医者からヘルガーの炎には毒素も混じっているから、この痛みは一生取れないと言われたわ。
その時襲われた恐怖と、今も痛み続けるこの火傷痕に、私はすっかりポケモンを嫌いになってしまったの。だから、いくら弱ったポケモンでも、私はその子を家に入れる事を反対したわ。

でも──あの人は私を昔の様に戻してくれたの。

夫は突然、自分がポケモンと関わるようになった理由を話始めた。突然何かと思ったけれど、真剣な夫の表情に、私は話を聞く事にしたの。
夫は私と正反対で、元々はポケモンが嫌いだった。夫の同年の人達は皆ポケモンと仲良くしていて、夫は何時も1人だったそうなの。苛められたりもしたらしいわ。けれどその当時は、何で周りがポケモンと仲良くしているのか判らなかったらしいわ。
そうして過ごしていたある時、夏休みの宿題の自由研究の内容がポケモンについてだったから、仕方無く図書館でポケモンの図鑑を借りて、ポケモンを調べた。そうしたら…
そこまで話したあの人は、テップを撫でながらにっこりと笑ったっけ。

そうしてページを捲っていたら、ギラティナ、というポケモンのページで手が止まったらしいわ。ギラティナというポケモンは昔暴れ者だったという理由で、人間にこの世の裏側に封じ込められた、少し風変わりなポケモンなんだと、夫は教えてくれた。けれど、夫にはギラティナがどうしても悪いポケモンには見えなかったそうなの。そうしている内に、仲間外れにされて1人になっている自分と、ギラティナの姿を重ねる様になって、“きっとギラティナもこんなに寂しい思いをしているだろう”と考え始めるようになったの。
それから夫は、こんな悲しい思いを他のポケモンにはしてほしく無くて、捨てられたポケモンや、傷付いたポケモン達を助けるようになった。そうしている内に、ポケモンが大好きになったらしいわ。だから、もう二度と悲しむポケモンが出ないように、『ポケモンと人間が、互いに信じ合える』方法を見付ける為に、自分は科学者になったんだ、と言ったの。

それを聞いたら、忘れていたポケモンを愛する気持ちを、また思いだしたの。

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だから私は、この子を受け入れて、助けてあげたのね。私は忘れかけていたテップとの、あの人との大切な思い出を思い返して、また泣き出しそうになってしまった。テップは私の顔を心配そうに見上げていた。
その時、縁側の方から何かが落ちる様な音が聴こえて、私はふと顔を上げた。縁側の方の様子は此処からはよく見えないから、見に行こうとテップを降ろして立ち上がった。すると、テップが縁側の方へ駆けていって、落ちた物らしい、何かをくわえて持って来てくれた。私はテップからそれを受け取ると、目の前に持ってきて、まじまじと見詰めた。

…一瞬、思考が停止した。

それは、黄土色の煤けたお面の様なものだった。けれど、驚いたのはその事ではなかった。

──お面の顔が、どう見ても夫にしか見えなかった。

偶々似たとは思えない程の繊細な造りに、私は戸惑っていた。一体何故、誰がこんな物を?

突然視界の隅に映った黒い影。我に返った私は、その影に視線を向けた。それは、薄く、靄の様に見えるけれど、腕や頭に似た造りをした見た事の無い生き物だった。赤々とした瞳は、じっと此方を見ていた。
反射的に、私は夫の部屋に駆け込んでいた。そして、残っていた古ぼけたポケモンの図鑑を捲っていく。古い書物の独特な匂いが部屋に拡がっていく中で、私はどんどんページを捲っていった。

──やがて、私の指はあるポケモンのページで止まった。そして、そのポケモンの説明文を読んだ時、私はまたぼろぼろと涙を流してしまった。

そのポケモンは、黒い頭に腕と尻尾が生えた様な身体に、紅い瞳を持っている。一番の特徴は、必ず違ったマスクを持ち運んでいるという事。何故違うのか。それは──



















自らが人間だった時の顔と同じだから──


私は、嬉しいのか悲しいのか解らなくなっていた。ただただ、その場で泣く事を止めることが出来なくて。
嗚咽を漏らしながら、顔をぐしゃぐしゃにして泣き続けていた。
私のすぐ側でテップが黒いポケモン──デスマスになった夫に抱き着いていた。


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「ほら、早く早く!」
「はぁはぁ、待ってよぉ〜!」

ある人間の街の、小さな公園へと繋がる道を、二匹の幼いポケモン達が、必死で駆けていた。

「もう、早くしないとテップ叔父さんのお話始まっちゃうでしょー!?」
「わ、判ってるよー!!」

そんな言葉を交わしながら。
そうして、漸く公園へ辿り着いた二匹は、沢山のポケモン達の集りの中へと入っていった。
沢山のポケモン達は、ある一匹のポケモンを取り囲んで、ざわざわと騒いでいた。そのポケモンは、橙色の身体に無数の黒い縞模様があり、ふさふさとして暖かそうな体毛を身に纏っている、伝説ポケモン、ウインディだった。
ウインディは二匹が現れたのを目にすると、集まっているポケモン達に声を掛けた。

「皆揃ったみたいだね。毎回態々聴きに来てくれて有り難う。本当に皆には感謝しているよ。」

ウインディの言葉で、騒いでいたポケモン達は水を打った様に静かになり、子供達はその穢れを知らぬ純粋な瞳でウインディを見詰めた。

「テップ叔父さんのお話はみぃんな面白いんだもん!お父さんもお母さんも知らないお話を一杯知ってるから、凄く楽しみなんだよ!」

何処からか、幼い正直な意見が公園に響き、黙っていた子供達もそうだそうだとまた騒ぎだした。それを聞いて、ウインディは嬉しそうに笑った。

「有り難う。じゃあ今日は“永遠の棺”っていうお話をしてあげよう。」
「えいえんのひちゅぎ?」

幼い子供には難しい言葉の組み合わせに、また何処からか疑問を含んだ声が上がった。ウインディは幼い子供の間違いに小さく笑みを漏らし、話を続けた。

「棺っていうのは、人が死んだ時にその脱け殻の身体を入れて燃やす箱の事だよ。生き物は皆、神様からこの身体を借りて生きているんだ。だから、死んじゃって、もう使わなくなった身体を煙にして神様に返しているんだよ。また生まれ変わる時に、神様からまた身体を貸して貰える様に。」

ウインディはなるべく子供達にも伝わる様に言うと、大きく深呼吸をした。

「じゃあ、お話を始めるよ。永遠の棺のお話。」

そう言い放つと、ウインディとなったテップは、胸の内で呟いていた。

──お爺ちゃん、お婆ちゃん、元気にしていますか?せめて子供達に少しでも人間を認めて貰えるように、僕は2人から教わった事を沢山教えています。こんな恩返ししか出来ないけれど、2人の存在を証明したいから…これからも頑張るよ。
だから2人とも、永遠に幸せにね…


──その時は既に、傾きかけた太陽が公園をオレンジ色に照らし始めていた…

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むかしむかし あるところに とても なかのいい にんげんの ふうふが いました

にんげんは おたがいに あいしあい しあわせに くらして いました
ところが あるひ そのふうふの おっとが とつぜん しんでしまいました

おっとを あいしていた つまは ひどく かなしみました

そして しんでしまい たましいになった おっとも おなじように かなしみました

しかし おっとは まだ つまと わかれたくないと ひっしで つまに よびかけつづけました

そのとき そらから おおきな ギラティナさまが あらわれて いいました

「おまえは あのにんげんが たいせつなのか 」

おっとは うなずきました

「あのにんげんと ずっと いっしょに いたいのか 」

おっとは いいました

「いっしょに いられなくてもいい でも あえなく なるのなら おたがい わらって わかれたい 」

それを きいた ギラティナさまは わらいました

「おまえは あの にんげんと ともに あるべきだ 」

すると おっとの すがたが かわり まっくろい ちいさな ポケモンに なりました

ギラティナさまは いいました

「これから さき どうするのかは おまえの じゆうだ 」

そうして ギラティナさまは きえてしまいました

ポケモンに なった おっとは つまの ところへ むかいました

つまは とつぜん ポケモンが あらわれたので おどろきました

おっとは もっていた おめんを つまに わたしました

おめんは にんげんだった おっとの かおで できていました

つまは そのポケモンが おっとだと りかいしました

ふたりは さいかいを ないて よろこびました

そして おっとは つまに いいました

「きみが たましいに なっても わたしが きみの ひつぎに なる
だから これからは ずっと ずっと いっしょ だよ 」

それから いくねんの としつきが たちました

ある にんげんが そらを とんでいる ひつぎを みつけました

その ひつぎは いきている ようでした

でも ひつぎの なかには だれかが ねむっている ようでした

それは まるで ひつぎと にんげんが えいえんの あいを わかちあって いるかの ようでした

それから その ひつぎを みたものは だれも いませんでした



〜fin〜













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・あとがき

すみませんm(__)m途中から大分可笑しくなってしまった…

ラストは妻とその愛犬のテップのターン+αだったのですが、うーん…このメインの夫婦は、まぁ高齢の域に入り始めたぐらい年齢に設定しているのですが…歳をとった女って、表現が難しいですね(汗)
テップ?そりゃ決まってるじゃない、解説キャr(蹴 
そして、カオスすぎますね、ラスト。結局どうなったのか解らなくなってしまったorz
理解出来なかった方は御手数ですが↓にお願い致します…
ラストの絵はスルーの方向で…(汗)
ここまで付き合って下さった皆様、誠に有り難う御座いました。今後とも、宜しくお願い致します!!

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苦情や質問は此方にお願い致します。アドバイスも大歓迎で御座います。

#pcomment(コメント/永遠の棺 弐,,above);

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