ポケモン小説wiki
氷の恩返し の変更点


by[[瀞竜]]
氷の恩返し

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家のドアを開けて中に入る。
「ただいま~…」
やる気のない声で家に上がると、リビングから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「お帰りなさい、コウタ」
「ああ…」
「ご飯まだできそうにないから、先宿題でもやっちゃえば?」
「ああ、そうさしてもらうよ」
高校にもなって、まだ自分の息子のことが心配なのか?まぁ、俺も適当に返事を返すだけだ。階段を上がり、自分の部屋に入ると明かりをつけた。写しだされたのは殺風景部屋だ。見慣れた部屋の中に、水色の物体が1つ…。
「すー、すー」
気持ちよさそうに寝息を立てている。俺はその物体を摘み上げるようにして持ち上げる。
「ふみゃあ!?」
「どけ!たくっどこから入ったんだ?」
そういって床に物体を落とす。すると物体は怒り出した。
「ちょっと!人が気持ちよく寝てたのになんなのよ!?」
「それはこっちの台詞だ!第一、どうやって家に忍び込んだんだ、この野良猫が…」
「私は野良猫じゃない!!」
また違うところで怒られた。しかし外見から見ると少し大きな猫じゃ…。いや、問題点はそこじゃない。
「お前は何故ここにいる?そして何をしにきた?」
「それは…えっ~と…」
どうやら当初の目的を忘れてしまったらしい。しかし唸りはじめてしばらくすると、顔を上げて、近づいてきた。
「思い出した!」
「なんだ?」
「私に恩返しをさせなさい!」

…あぁ、また面倒なことが。

&size(40){氷の恩返し};

夕食終了後、俺は部屋の鍵を閉めて先ほどの水色の物体と一対一で話すことにした。
「よし、まず1つずつ整理していこう」
俺は胡坐を掻いて座り、腕を組む。
「まず、お前は…」
「私はちゃんとした、グレイシアって名前があるんですけど?」
生意気な…
「…グレイシアは俺に恩を返しにきたと?」
「そうよ!感謝なさい!」
そう言って堂々と胸を張る。正直ありがた迷惑だ。
「しかしな…俺にはポケモンに恩を返されるようなことをした覚えがないんだが?」
そうつぶやくと、グレイシアは鋭い目つきになって俺に迫ってきた。
「信じられない!?自分が助けたポケモンぐらい覚えてないの!?」
「いや、だから…」
「3年前よ!3・年・前!!」
一言一言句切るように問い詰めてくる。俺には覚えがないが、とりあえず脳内で3年前にタイムスリップする。俺が…中3の頃…。
「あ…」
1つだけ、思い当たることがある。

中3のときの話だ。俺の親戚はキッサキシティに住んでいるから遊びに行くことが何度かあった。しかし俺の目的は親戚ではなかった。この近くにある、湖を見ることだ。確かそのときも、強いポケモンを借り、ゴールドスプレーを使って湖を目指していた。そうすればそれより低いポケモンは出てこないからな。湖に向かい始めて、5分ぐらいしただろうか…不意に草むらが揺れたのを感じてとっさに身構えた。しかし、出てきたポケモンは小さな茶色いポケモン。その姿を見ると胸をなでおろした。
「何だ…?」
見るからに痩せこけていて、立つことも難しい感じだった。俺は小さな声で呼ぶ。
「おい…」
その声に反応するかのように、こちらを向く。そして体を震わせた。逃げようとする素振りもない。きっと逃げても無駄だと感じているのだろう。
「…はぁ」
あんな小さなポケモンでも、1匹のポケモンか…。俺はゆっくりとポケモンに近づく。そしてそのポケモンを見下ろした。
「『……』」
お互いに動かない。ポケモンは体を振るわせ続けていた。俺が手を上げると、目をつぶる。黙って自分の身に着けているマフラーを取ると、ポケモンにかけてやる。
「…?」
「ほら、そのほうがあったかいだろ?」
しゃがみながら、マフラーを整えてやる。そして頭を軽くなでる。
「俺、食べ物は持ってないからさ…。それで我慢してくれな」
そう言うと、俺は立ち上がりまた湖を目指して歩いた。

それが、一番最近のポケモンとのエピソードだが…。
「もしかして、あの時の茶色のポケモンか?」
「茶色って…あの時にもちゃんとしたイーブイって名前があったんですけど?」
「ああ、そうかよ…で、どうなんだ?」
「そうに決まってるでしょ」
グレイシアは顔を横に向けて、鼻を鳴らした。まぁ、こいつが何者なのか、そして何がしたいのかわかった。
「悪いが、恩は返さなくていい」
「何でよ!私は…」
「俺は、ポケモンに興味がないんだ!」
「…え?」
そう、俺はポケモンに興味がない。この世界では、ポケモンを持っていて当たり前のはずだが、俺はそんなものに興味はない。
「まぁ、そう言う訳だ。おとなしく…」
「いやよ!!恩を返すまで帰らないから!!」
そう言って、グレイシアはその場に座り込んだ。俺も負けじと反論する。
「だからっ、いいって…」
怒鳴ろうとした瞬間、さらにでかい声がドアの外から聞こえてきた。
「コウタ!!夜遅いんだから大声出さないの!近所迷惑でしょ!!」
ちっ…。母親か、タイミングの悪い。
「わかったよ!」
ドアを開けて返事を返す。
「それとお風呂どうするの!?」
「いい!今日は寝る!!」
「そう、じゃ、お休み」
そう言うと、声は聞こえなくなった。ため息を漏らしながらドアを閉めた。そして目線をグレイシアに戻す。そこでもう一度ため息。
「…わかった」
「え?」
選択の余地はなかった。
「…家に居てもいい」
「本当!?」
「ああ」
こんな遅くに追い出すのも、気が引ける。
「それと、俺は明日から連休だからその間に恩でも何でも返してくれ・・・」
特に予定もないし、やることもない。こいつに付き合ってやるか…。
「お安い御用よ!」
そういってまた、堂々と胸を張る。
「さぁ、今日は寝るぞ…ふぁ…」
怒鳴りすぎて一気に眠気がきた。俺はタンスから寝巻きを取り出すと、すぐさま着替える。そしてベットに入ろうとしたが…。
「すー…すー…」
ベットはすでにグレイシアが、占領していた。
「だから…どけって!!」
そしてまたも摘み上げる。
「ふみぁぁ!!」
驚いている様子のグレイシア。それだけならまだよかったのだが…。
「ちょっと!放しなさいよ!!」
暴れだした。俺は被害を受けないように、グレイシアを床に落とす。
「お前は床で寝てろ」
そう言って俺はベットにもぐる。
「ひどい!女の子を床で寝かせる気!?」
とりあえず、罵声が聞こえるがここは狸ね入りを決めこむ。
「ちょっと!?何とか言いなさいよ、この最低男!!」
コレじゃ、まるで恩を仇で返しているようなもんだな…。しかし、その罵声も数分すると聞こえなくなった。俺も、深い眠りに付いた。

翌日、朝日と日ごろの習慣のためか目が覚める。
「……」
時刻は、7時半。親はすでに仕事に向かっているだろう。変わりに居るのは、迷惑なグレイシアだけだ。
「すー…すー…」
…意外に、寝顔が可愛いな。おっと、何を考えているんだ、俺…。
「おい…」
「ん~…」
寝ぼけてやがる…。
「おい!」
「んっ…」
寝返りを打つと、寝言を呟く。
「…あと、5分だけぇ~」
「ふざけるな!!」
ベットから飛び起きると、グレイシアを摘み上げる。…意外と重いな。
「うみぁぁ!!」
甲高い声に、俺も驚く。すぐさまグレイシアを床に落とす。
「何すんのよ!?」
「うるせぇ!起きない奴が悪い!」
…ったく。何で朝からこんなに騒がなきゃいけないんだ…。とりあえず、適当に朝食取ると、部屋に戻って、本題に入る。
「さて、グレイシアはココに恩返しに来たんだから、何を頼んでもいいんだよな?」
「もちろんよ」
「よし、それじゃ…」
ポケモンだし、簡単なことしか頼めないな…。
「よし、まずは部屋の掃除をしてくれ」
「嫌よ、手が汚れるじゃない」
…何?
「それじゃ、風呂掃除は…」
「濡れるじゃない!嫌よ」
…何だと?
「…洗濯」
「何それ?知らない!」
…こいつは恩返しに来たんじゃないのか?呆れ返った様子でグレイシアを見る。
「ねぇ、それよりさ…」
さらには…
「どっか遊びにいこ!」
この一言で、俺の中で何かが切れた。乱暴にグレイシアを摘み上げる。
「ちょっと!痛いじゃない!?」
「黙れ!!」
きつい口調で、グレイシアを黙らせる。当然、黙り込んでしまう。俺は乱暴に部屋のドアを開けると、階段を駆け下りる。そして向かった先は…玄関。
「でてけぇ!!」
ドアを勢いよくあけると、空中にグレイシアを投げた。
「ちょ…わぁ!!」
グレイシアは宙で体制を取って、着地を決めたいたが俺はそんなシーン最後まで見ないで、玄関のドアを閉めてしまった。
「開けないさっ!!中に入れなさいよ!!」
「何が恩返しだ!!何もしないなら来るんじゃねぇ!!」
そう言って、リビングへ歩き出す。
「わかったわ!!そうさせてもらうわ!!」
グレイシアも、どこかに言ってしまうようだ。
「『勝手にしろ!!』」
心の中でそう叫ぶと損振りかえって、ソファーに座り、テレビをつけた。画面にワイドショーの司会者が映し出される。
「…今日の特集は、可愛いポケモンSP!各地方のカワイイ、ポケモンちゃん達を紹介します」
「ちっ…」
舌打ちをすると、リモコンを操作してチャンネルを変える。…何であんなポケモンを家に入れたんだろ?きっと、恩返しのことも嘘に決まってる。そこらの野良が入ってきただけだ…。
「……はぁ」
しかし、どこか引っかかるところもある。恩返しのことではなく…グレイシアのことで。怒ったり、笑ったり、いろんな顔を見せてくれるグレイシア。
「…くそっ!」
テレビを消し、ソファーに横になる。そして天井を見上げると、またも浮かんでくるのはグレイシア…。俺は頭を振り、目を瞑った。


俺は一体…どうしたんだ?
何で、嫌いのはずのポケモンを…。
嫌いのはずの…グレイシアを…。


ふと、目が覚めると時刻は昼を過ぎた午後の3時を示していた。
「ん…やべぇ」
どうやら寝過ごしたことに気づくと同時に母親との約束、買出しを頼まれていたことも思い出す。
「よいしょ…」
重たい体を起こし、リビングを出る。そして母親の部屋から財布を拝借すると、玄関に向かった。
「そういえば…」
グレイシアのことをすっかり忘れていた。まぁ、あれだけ酷く言ったのだからもう居るはずもない。俺は安心感と…かすかな期待を胸に、玄関のドアを開けた。
「『あ…』」
声が重なる。そこには出て行ってしまったグレイシアが居た。
「何だ、まだ居たのか」
「やっと、家に入れる気になった?」
反省の色なし。俺はドアを閉めて鍵をかけると、鼻を鳴らしながらグレイシアの横を過ぎる。
「…待って!」
すると、後ろから呼び止める声。俺は振り返らずに立ち止まった。
「ごめ…ん…なさ…い」
最初は聞こえたが、最後のほうは声が聞こえなかった。
「……はぁ」
ため息を漏らすと、俺はゆっくり振り返る。そして右手の人差し指を曲げ伸ばしする。
「…え?」
「買い物、付き合ってくれ。一人じゃ荷物持ちきれないからな…」
しぶしぶグレイシアを呼ぶ。するとグレイシアはあわてた口調で、
「しょ、しょうがないわね…本当なら、家に入りたいけど、あんたがどうしてもって言うなら…」
「ああ、どうしてもだ」
「う…わかったわよ」
小走りで俺の足元に近づく。そして二人並んで買い物に出かける。
「…追い出して、悪かったな」
「…うん」

2時間後、家に戻ってきた。買出し以外にも、自分の金でいろいろと店を回っていて遅くなってしまった。まぁ、グレイシアと仲直りもできたし、よかったが…。
「ただいま…と」
「お帰りなさい」
家に入ると母親が出迎えてくれた。
「買ってきたものは?」
「はい。後、財布も」
買って来た品と同時に財布も渡す。母親はそれを受け取る。
「ありがとね…あら?そのポケモンは?」
「ああ、こいつはさっき道端で見つけてさ…えさやったら懐いちゃって」
「あらそう…可愛いわね」
「そうか?」
がりっ…
「いたっ!?」
引っ掻かれた…。
「ポケモンちゃん、怒ってるわよ?」
「そのようだな…」
俺は、靴を脱いで家に上がる。そして母親の横を過ぎる。グレイシアも母親の顔を確認しながら横を過ぎた。そして俺の後に続き、階段を上がった。部屋に入るなり口を開く。
「あれが、あんたの母親なの?」
「ああ、そうだよ」
「なんだか…優しそうな人ね」
「?…そうか?」
まぁ、価値観は人それぞれだからなんとも言えないが…。俺はベットに横になり、漫画を開く。グレイシアは部屋をうろうろしている。そして俺の目の前に座る。
「…ねぇ」
「…何だ?」
「恩返し…」
「何がしたいんだ?」
「何でも…」
「って言って、否定したのはどこのポケモン?」
「う…」
グレイシアは黙り込んでしまう。すると部屋の外から声が聞こえた。
「コウター!ご飯よー!」
母の声が部屋に響く。俺はベットから腰を上げ、部屋のドアを開けた。
「はいよー!」
「ポケモンちゃんも降りてらっしゃい」
グレイシアも、招かれる。
「ほら、行くぞ」
「…いいの?」
「うちの母親がいいって言ってるんだ…ほら」
「うん…」
2人そろって、リビングへ向かう。出迎えたのは、腹を満たしてくれる料理だった。それを2人で平らげると、俺は風呂へ行きグレイシアは俺の部屋に向かった。
「ふぅ、さっぱりした」
呟きながら部屋に入ると、ベットにはグレイシアが丸くなっていた。
「お帰り…」
「どけ…」
「いやよ、ここが気持ちいいの」
「はぁ…」
俺はベットに近づくと、グレイシアを抱きかかえる。
「ちょっと!また落とす気…」
言い終わる前に、俺はベットに入り邪魔にならないところにグレイシアを落とす。
「俺が寝る場所意外ならベットにいてもいいぞ」
「えっ…あ、うん…」
そう言って俺はベットにうつ伏せになる。
「疲れたな…あっ!」
「何?どうしたの?」
「いいこと思いついた」
「何?」
「グレイシア…俺の背中に乗ってマッサージしてくれよ」
「えっ…う、わかったわよ…しょうがないわね…」
渋々といった感じで、俺の背中に乗ってくる。重みとともに、柔らかい肉球の感じが伝わる。
「おっ…結構気持ちいい…」
「そう?」
4つの重みが背中のいたるところを踏んでいく。
「あぁ…気持ちいい…」
目を瞑りながら、呟く。
「そう言ってもらえると…嬉しいわ」
今はなんだかやけに素直だな…。
「そういえば、お前、トレーナーとかいないのか?」
「いたわよ…。捨てられたの…。」
「えっ?」
「私、物事を素直にいえなくて…いつも本当のことをいえないで、口答えしちゃって…」
「そうなのか…」
なんだか、空気が重くなってしまった…。しばらく、グレイシアのマッサージに身を任せる。
「そろそろ、いい?」
「ああ、ありがとうな」
背中から、重みが消える。そして、床を見るとグレイシアの姿。
「寝る邪魔になるといけないから…」
「あ、そう…」
ベットから起き上がり、電気を消すと再びベットに戻り、そして眠りについていった…。

「…きて」
まだ眠い頭に何かが響く。
「ねぇ…きて…ば」
その音は少しすづ大きくなってくる
「ねぇ!起きなさいよ!!」
「おわぁ!?」
ベットの上で跳ね起きる。辺りを見回すと、いつもの部屋とグレイシア…。
「やっと起きたわね…」
あきれ果てた口調でグレイシアが呟く。
「…お前が起こしてくれたのか?」
「そうよっ!それ以外何かあるの?」
「…いや」
とりあえず昨日と同様に、朝食を取る。そして部屋に戻る。
「…さて」
ベットに腰掛て、グレイシアの恩返しを考える。
「なににしたものやら…」
「ねぇ…」
「あん?」
考えてる最中、グレイシアが話しかけてきた。
「…あんたの母親って、今日帰ってくるの?」
「…いや、確か慰安旅行だとか…言ってたな」
確か1泊2日で行ってくると言っていたな…。
「そう…」
「…グレイシア、俺からも1つ聞いていいか?」
「どうぞ」
「…お前は、何がしたい?」
「は?」
拍子抜けの声が部屋に響く。
「いや、だからな。お前はどんな恩返しがしたいか、聞いてるんだ」
「あっ…ああ!そういうことね…」
何か違うほうを想像していたのか?ともかくこっちが提案して駄目なら、グレイシアがさせたいことをすればいい。我ながらいい案だとは思うが…。
「ん~…あんたを、忌めることかしら?」
「…へ?」
にっこりと笑うグレイシア。今の言葉を、どうとっていいやら…。間違えたら、アブナイことになりかねない…。
結局、グレイシアのしたい恩返しがわからなかった。いつまでも考え込んでると、折角の休日がなくなってしまうので自分の時間を満喫することにした。
「…何もやってないな」
テレビのリモコンを操り、チャンネルを回す。しかし、今の時間帯じゃ面白そうな番組はやっていない。
「これでいいか…」
1つの番組にあわせる。ポケモンコロシアムの中継だ。
「……」
ポケモンのことに知識はないが、バトルはかっこいいと思う。用意した、ポテトチップスを口に放り込む。塩の風味が口に広がる。そしてジュースを手に取ったときだ。
「…ねぇ、ちょっといい?」
「んんっ?」
後ろから、声が聞こえた。家にいるのはグレイシアぐらいだから、ジュースを飲みながら、話を聞いた。
「あんたってさ…」
「んっ…」
「…彼女、いる?」
「ぐふっ!?…がっ…ゲホッ…ゲホッ!!」
ジュースが…気管に…
「何も噴かなくてもいいじゃない…」
「うるせぇ!」
ティッシュを手に取ると、飛び散ったジュースを拭く。
「いきなり、何聞いてんだ!?」
「いいでしょ、別に…で、どうなのよ?」
「いねぇよ!!」
「そう…」
振り向くとそこには、グレイシアの姿はなかった。今の質問に意味はあったのか?
「くそっ…」
飛び散ったジュースの後始末を済ませると、部屋に戻る。
「あっ来た…」
ドアを開けると同時に、声が聞こえる。グレイシアが寄ってくる。
「ねぇ…」
「なんだ?また質問か?」
「いいえ…少し頼みごとがあって」
「…なんだよ?」
「あの中…使わせて」
前足で示す先には、クローゼットがある…。
「…何する気だ?」
「何でもいいでしょ?」
まぁ、中は汚くないし使っても問題はないが…。
「…どうぞ、ご自由に」
「ありがと」
クローゼットを開けてやると、とことこと中に入ってしまう。
「…それと」
「まだ何か?」
「私がいいって言うまで、あけないでね」
「はぁ?」
「いいから!わかった!?」
「うっ…ああ…」
気迫負けした…。俺はゆっくりとクローゼットの扉を閉めた。まぁ、俺には関係のないことだ…。1人で何かしたいときもあるのだろう。
「さて、俺は宿題でもするか…」
確か、休み明けに提出だったからな…。早めに終わらせるか…。机に向かいかばんから、ペンとプリントを取り出すと宿題をやり始めた。

数分後、俺は1つの違和感に気づく。
「…ん?」
部屋中が、甘酸っぱい匂いで満たされていた。しかも、何だか嗅いでいるだけで、鼓動が早くなる…。耳を済ませると、何処からか水がはねるような音がする。
「何だ…?」
机から立ち、部屋の鍵を閉める。そしてあたりを確認するが何もない。
「…まさか」
俺はクローゼットの前で膝をつく、そしてドアに耳を当てる。
「『ふぁ…あぁ…やぁ!』」
中から聞こえるのは、甘ったるい喘ぎ声。俺は、ドアを勢いよく開ける。勢いつきすぎて、ドアが端にあたり大きな音が立つ。
「お前…」
「はぁ…んぁ…まだっ…いいって…言って…あぁ!!」
文句を言いながら、自らのワレメに置いた前足の動きは止めない。床は愛液の水溜りができている。
「もうっ…駄目ぇ…ふむぅ…」
「んんっ!?」
突然、体を起こしキスをしてきた。呆気ないファーストキスが終わり、次に待っていたのは口内を舐めまわす感覚。それが舌だと言うことに気づくのに時間はかからなかった。
「んっ…クチュ…ペロッ…」
「ふぅん…グレイ…シア…」
凄い勢いで、口内を暴れまわる。そして、少しずつ俺の理性を崩していく。
「『んっ…ぷはぁ!』」
お互いに口を離す。少しの間の出来事なのに、何分も過ぎてしまった感覚がする。口元には互いの唾液で出来た銀色の橋が架かっている。しかし脆くもすぐに崩れ、グレイシアの口元に落ちた。
「…グレイシア」
「コウタ…」
初めて…彼女が俺の名前を呼んだ。そして自ら、ワレメを前足で広げると潤んだ瞳で見つめてきた。
「お願い…して」
…一瞬にして、俺の理性が消えた。彼女をクローゼットから抱き寄せると、ベットの上に乗せる。そして覆いかぶさるようにグレイシアを見つめる。
「グレイシア…体、綺麗だね」
「なっ!?…馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!!」
おやおや…こんなときでも素直になれなのか…。
「もう少し素直になったらどうだ?」
「ふんっ!」
顔を真っ赤にしながら横を向く。…可愛い。可愛いゆえに…悪戯したくなる。
「ねぇ、自分の恥ずかしいとこ、広げてみてよ」
「ばっ…何言ってんの!?」
「そうしないと…やってあげないよ?」
「うぅ…」
目を泳がせて、もじもじと体をくねらせる。すると前足をワレメにあてがうと、自ら広げた。
「これでいいっ!?」
目を瞑って、怒鳴り声をあげる。
「…自分でしてみて」
「はぁ!?コウタ、自分が言ってること…」
「いいのかな~?」
腕を組み、彼女に”こちらからは動かない”と言うことを示す。彼女は睨みながら、渋々といった感じでワレメに置いてある、前足を動かし始めた。
「あっ・・・ああっ・・・やぁ!!」
「ふ~ん…そうやってやるんだ…」
まじまじと彼女が善がる姿を見ていると、いきなり彼女が起き出し、俺を突き飛ばした。
「うわぁ!?」
仰向けに倒れこむ。体の上には、彼女が乗っている。
「私だけ見せるのは不公平でしょ?」
そう言って体を回転させる。俺の目の前に彼女のワレメが現れる。
「コウタのも見せなさい」
器用にズボンとトランクスをずらすと、そこには苦しそうに動く肉棒が現れる。
「苦しそうね…」
「うるせぇ…」
小さく呟くと、あの柔らかい肉球で触ってきた。
「くっ…!」
「何…?感じてんの?」
振り向きながら俺の顔を見てくる。俺はさっき彼女がやっていたように顔を赤くして、横を向いた。
「あんたも、私の触りなさいよ…」
そういって、自らのワレメを顔に押し当ててくる。
「んっ…んんっ…!」
ワレメに舌を這わせると、彼女のごもった声が聞こえる。しかも肉棒を加えたままだからその振動が、快感につながる。
「うぅん…ほぉら、どうしたのよ?」
強気の口調で俺のほうを向く。
「男だったら、イかせるぐらいのことして見なさいよ…」
そう言うと、また肉棒に奉仕を始める。
「…いいんだな?」
「…ん?」
彼女に聞こえるかわからないほど小さな声で呟く。ワレメに付いている小さな豆を口に含む。
「んっ…」
そして不適に笑みを浮かべてから、その豆を一気に吸い上げた。しかも強く。
「ジュル…ジュル!!」
「…!!んんんん…ぅ…」
体を震わせて、愛液を撒き散らし体の上で動かなくなった。
「んぅ…んぅ…」
肉棒を咥えたまま、彼女は息を整えている。俺は彼女を持ち上げ抱き寄せた…その拍子に彼女の口から肉棒が離れる。
「何だ?…もうバテたか?」
耳にささやくように呟く。彼女は目を瞑り、耐えて聞いている感じだ。
「……て」
「え?」
何か彼女が呟いた。聞き取れなかった…。
「いれ…て」
「うっ…」
今度はしっかりと聞こえた。何をしてほしいか…。
「…いいのか?」
無言で彼女はうなずく。彼女をベットに寝かせてワレメに指を入れて確認をした。指はワレメにすんなりと入っていく。指を抜くと、今度は肉棒をあてがう。
「行くぞ…」
ゆっくりと、ワレメに肉棒を沈めていく。
「くっ…」
彼女はその様子をずっと見ているだけ。その間にも、肉棒はゆっくりと進みそして、初めての証…処女幕に到達する。
「いいか?」
またも彼女は頷くだけ。それを確認すると、俺は肉棒をさらに奥へと沈める。
「…!!うぅ…!」
「くっ…入った…」
ついに、肉棒は完全にワレメに消えた。彼女と1つになったのだ。
「すげぇ…暖かい…」
彼女の&ruby(なか){膣内};が肉棒を離さないばかりに絡み付いてくる。
「グレイシアの&ruby(なか){膣内};…話そうとしないよ…淫乱な体してんだな…」
「グレイシアの&ruby(なか){膣内};…離そうとしないよ…淫乱な体してんだな…」
少し挑発も兼ねて、言ってみた。彼女は多分怒ってくるだろう、予想して。
「……」
しかし、彼女から出た言葉は意外なものだった。
「…あんたのせいよ」
「…え?」
「こんな体になったのはあんたのせいなのよ!」
「こんな体になったのはコウタのせいなのよ!」
「どういうことだよ…」
彼女は、目に涙をためながら話した。
「私っ…本当は1人になりたくなくて…捨てられてからも、誰かのポケモンになりたくて…」
「……」
「そんな時ね…あんたが目の前に現れて…でも、言葉が出なくて…そしたら、あんたがマフラーくれて…」
あのときの話だ…。
「その時から…私決めてたの…この人のポケモンになろうって…心から思ったの…」
突然の告白。それは俺でも予想がつかなかった。
「でも、あのときの私にはね…あそこを抜けるほど強くなくて…でも、あなたに会いたかったから…この姿になって…それで…だからっ…!!」
もう、これ以上聞けなかった。とても聞けなかった…。だから、俺は彼女を…グレイシアを放さないばかりに、抱きしめた。
「…寂しかったのか?」
「うん」
「辛かったな…」
「うん…」
彼女を開放する。涙は収まったようだ。
「お願い…私を、あなたのポケモンにして…」
「わかった…わかったよ…」
今だったら言える。昔の俺なら、”ポケモンなんて…”と馬鹿にしていた…だけど今は違う。
「大好きだ…グレイシア」
今は、ポケモンが大好きだ。

「動くぞ?」
「うん…」
ゆっくり、肉棒を引き抜く。結合部を見ると少し血が混ざっている。
「ねぇ…もっと早く…」
「あ…あぁ」
正直、我慢の限界だった。集中していないと、すぐにでもイってしまいそうだ。
「一気に…行くぞ!」
スローペースから、一気に腰を振って彼女の膣を刺激する。
「あっ…あっ…激し…やぁ!!」
「はっ…はっ…」
互いに腰を振る。感じ方も違って俺の射精感も高まる。
「グレイシア…もうっ!!」
「私も…一緒にっ…!!」
「ああっ…」
口付けをしながら、突くスピードをさらに上げる。そして、ついにその瞬間が来た。
「あっ…あああぁぁ!!」
「ぐっ…!!ああっ…!!」
お互いに体を震わせて、俺は&ruby(なか){膣内};に射精する。瞬く間に精は&ruby(なか){膣内};を満たし、収まりきらない精があふれ出してくる。
「はぁ…はぁ…」
俺は肩で息をしながら、整えていた。
「グレイシア…」
ゆっくり肉棒を抜くと、彼女の頭をなでてやる。するといきなり、彼女は起きだして俺を突き飛ばした。
「うわぁ!!?」
痛みに目を開けると、体の上にまたもや彼女が乗っている。
「おい…」
「今度は、私が上ね」
口調も元に戻り、いつもの彼女がそこにいた。
「まっ…休ま…」
「駄目、行くわよ?」
俺のことはお構いなしで、上で結合を完了させ、腰を振っていた。
「今日は…寝かさない…から…あん」
そして、俺の寝不足も確定していた。

「…本当に行くのか?」
「ええ、あんたも、この方がいいでしょ?」
翌日、一日中グレイシアと行為をして、眠い中…俺はグレイシアの見送りをしていた。
「まぁ、いろいろあったけど楽しかったわよ」
「そうか…」
会話が続かない。沈黙の中、グレイシアが背を向けて歩き出す。
「じゃあね」
「ああ…」
グレイシアが行ってしまう…。やっとポケモンを好きになれたのに…。いや、ポケモンを好きになったんじゃない…グレイシアを好きになった。
「……」
頭を掻きながら、俺は一か八か賭けに出る。
「なぁ、グレイシア!!」
動きを止める。そして振り返るグレイシア。
「…何?」
「俺、まだ恩返し受けてない」
「はぁ!?あんた何言ってんの!?しっかり…」
「あれはお前が始めたことだろ?」
「う…」
顔を赤くしながら、俯くグレイシア。
「わかったわ…何がしてほしいの?」
恩返しは決めている…グレイシアが来たことで、俺はポケモンの大切さがわかった…。願いは1つ。
「グレイシア、俺のポケモンになってくれ!」
しっかりとグレイシアに聞けるように言った。
「それと、恋人にも…な?」
付け足して、1言。グレイシアは俯いたままだ。
「……とう」
「何だ?」
「う…バカぁ!!」
叫びながら、俺はグレイシアをしっかりと抱きしめる。
「いっぱい…いっぱい、迷惑かけてやるんだから…」
「…ああ」
…氷からの恩返しか…大変な恩返し、もらっちまったな…

―END―

----
あとがき

「鶴の恩返し」
日本的代表の作品(?)
その響きがよくて、タイトルを決めたときにストーリーが頭に浮かんだのがこの作品です。
なんかツンデレに近いキャラクターになってしまったが…いいかなと思います。
更新速度が非常に遅いので、長い期間かかってしまったのが残念です。
もっと更新が出来るようにするので、これからも応援宜しくお願いします。

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