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次元を超えた出会い episode.4 の変更点


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まだまだ序章?(

作者[[ラプチュウ]]より

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 森の中に立ち上った土煙から一匹のポケモンが飛び出してくる。ピンク色の体に頭と首のまわりに白い綿毛を持ち、頭にある三角すいの形をした角のような器官と先に水色の球のような器官がついた尻尾には黒とピンクのしま模様が入っているわたげポケモンのモココだ。そのモココを追いかけるように、細身で引きしまった犬にも見える黒い体に先が鋭くとがって丸みを帯びた二本の角、骨を思わせるような器官を首にひとつと背中に三つ、すべての足首についた白い輪のような器官、胸にはドクロのようにも見える器官がついているダークポケモンのヘルガーが三匹、土煙から飛び出してくる。

「はぁ……はぁ……」
「まちやがれぇ!!」

 モココは両手でしっかりとかごを抱え、必死に逃げている。対するヘルガー達は時折、不気味な笑みを口元に浮かべながらモココを追いかけていた。

「そろそろ仕留めるか?」
「よし、お前は向こうからまわり込め。お前はあっちからだ」
「よしきた!」

 中央のヘルガーが指示を出すと、両脇にいたヘルガーが散開する。後ろを気にしながら走るモココの目の前に、ほどなくして二匹のヘルガーが立ちふさがった。

「きゃっ!」

 その姿に気が付いたモココが慌てて立ち止まる。そして、すぐ後ろから追いかけて来ていたヘルガーも加わり完全に囲まれてしまった。

「な、なんでこんなことするの!?」
「『なんで?』 ……暇だったから」
「俺らにとっちゃこれは遊びなんだよ。で、お前は俺らの前にあらわれた。そんだけの話だ」
「運が悪かったとあきらめるんだな、俺達のおもちゃに選ばれた事をな」

 モココの言葉にヘルガー達が答えていく。モココは体を震わせながらも両手でしっかりとかごを抱きかかえた。

「ところでよぉ……そのかご、ずいぶん大事そうに抱えてるけど何が入ってるのかなぁ?」
「こ、これは……」

 舌なめずりをしながら話すヘルガーの言葉に、モココはおびえながらもしっかりとかごを抱えて離そうとしない。

「おい、痛い目に会いたくなかったらそのかごを渡しな。そうすりゃ見逃してやる」
「だ、ダメなの……これは、私のじゃ……」

 震える声で話すモココの足元に、ヘルガーの一匹が黒い影のかたまりを投げつける技、[シャドーボール]を撃ち込む。技自体はモココには当たらなかったが、その攻撃にモココは驚いてその場にしゃがみこんだ。

「つべこべ言ってないでさっさと渡せばいいんだよ! それとも強引に奪ってやろうかぁ?」

 おびえてその場にうずくまるモココに、ヘルガーが言葉をぶつけた直後だった。すぐそばの茂みから二つの影が飛び出してくる。

「なんだぁ?」

 ヘルガー達がその方向に視線を送る。そこにいたのは爆発音と土煙を見てかけつけたサイクロンとフィリアだった。

「ご主人様、あれ!」
「あのポケモンは……」

 フィリアがヘルガー達を見て身構える横で、サイクロンはジャケットのポケットからポケモン図鑑を取り出すとヘルガー達に向ける。

『ヘルガー、ダークポケモン。口から吐き出す炎には、毒素が混ざっていて突き刺すような匂いがする。この炎で火傷するといつまでたっても傷口がうずいてしまう』

 画面にヘルガーの映像が映ると、ポケモン図鑑からヘルガーについての説明文が流れる。

「おい! 取り込み中だ、関係ない奴はすっこんでろ!」
「そうもいかない! 一匹に対して卑怯じゃないか!」

 ヘルガーの言葉に、サイクロンは一歩も引かずににらみつける。

「うるせぇ! 邪魔するんだったらお前から片づけてやる!」

 そう言うと、ヘルガーの一匹が口元に炎を貯めて吐きだす技、[かえんほうしゃ]をサイクロン目がけて放つ。

「フィリア! [まもる]だ!」

 サイクロンの指示でフィリアは[かえんほうしゃ]の前に飛び出すと、自身の体を光の膜でおおって[かえんほうしゃ]を受け止める。わずかに押し戻されるが、光の膜で[かえんほうしゃ]はさえぎられて不発に終わった。

「てめぇっ!」
「フィリア、続けて[マジカルリーフ]!」
「えぇーい!!」

 フィリアが次に繰り出したのは大量のはっぱが相手めがけて飛んでいく必中の技、[マジカルリーフ]だ。しかし、それは別のヘルガーの繰り出した[かえんほうしゃ]で撃ち落とされる。

「そんなもん効くかよぉ!」
「タイプ相性は不利……だったら!」
 
 サイクロンは、腰のベルトからボールをひとつ手にとって空へと投げ上げた。

「頼むぞ! ライラ!」

 ボールが割れて中からポケモンが姿をあらわす。首長竜のような水色の体にはところどころに青い斑点が見え、顔の上には小さな角と耳のように見える渦巻き状の器官、背中には複数の突起がついた甲羅を背負っている乗り物ポケモンのラプラスだ。

「な、なんだ! どっから出てきやがった!」

 突然現れたラプラス――ライラにヘルガー達が動揺する。

「ライラ! [ハイドロポンプ]!」

 サイクロンの指示を聞いたライラが、水をものすごい勢いで発射する技、[ハイドロポンプ]を繰り出す。突然出現したライラに戸惑っていたヘルガーはよけきれずに、まともに[ハイドロポンプ]を受けてそのまま後方に数メートル飛ばされて木の幹に体を叩きつけられるとその場で目を回して崩れ落ちた。

「う、うわぁ!!」
「て、テメェ! 俺達に逆らった事、絶対に後悔させてやるからな!! 覚えてろ!!」

 その様子を見ていた他のヘルガーは、倒れた仲間のヘルガーを抱えるとその場から一目散に逃げ出した。

「あっ! ちょっと、その子に謝るぐらい……!」
「よせフィリア、言って素直に聞く連中じゃないさ」

 逃げるヘルガーを追いかけようとしたフィリアをサイクロンが制止する。そのあとで、すぐそばにいるライラがサイクロンに声をかけた。

「あ、あのぉ……マスター?」
「ん? ……ライラ、どうかしたか?」
「さっきフィリアの言葉が分かってるような止め方でしたけど……もしかしてマスター、私達の言葉……理解できてます?」

 困惑した表情を浮かべてライラがサイクロンに聞く。

「あ、あぁ……どうもそうらしい」
「い、一体どうなって……」
「説明は後にしようか、ちょっと待っててくれ」

 信じられない様子のライラに声をかけたサイクロンは、そのままうずくまって動かないままのモココにそっと歩み寄る。モココはまだ少しおびえた様子でじっとサイクロンの方を見ていた。

「大丈夫かい?」
「う、うん……あの、ありがとう。助けてくれて」

 そう言ってモココは立ちあがろうとしたが、すぐに顔を歪めてまたうずくまる。

「いった……」
「怪我、してるのか? ……見せてみろ」

 サイクロンが視線をモココの足に向けると、左足が赤くはれていた。

「うわ、ひどいな……」
「さ、さっき逃げてるときにひねっちゃったみたい……我慢して逃げてたんだけど……」
「そうか……とりあえず手当てしなきゃな……」

 サイクロンがモココと会話を交わしていると、近づいてきたフィリアがサイクロンの背中を前足でつつく。

「ご、ご主人様?」
「なんだ、フィリア?」
「あ、あの……とっさに体が動いちゃったのは分かるんですけど……今、私達この世界にいるポケモン達に関わるのはまずかったんじゃ……」
「いまさらじゃないか? それ……」
「え? フィリア、それどういう事? ……それに『この世界』って?」

 おずおずと言うフィリアに、サイクロンは苦笑しながら答える。その横で、ライラが首をかしげていた。

「とにかく詳しい説明は後にしよう。今はこの子の手当てをしなきゃ……君、名前は?」
「え、えっと……リュナよ」

 サイクロンが背中のリュックをおろしながらモココに名前を聞く。名前を聞かれたモココは、リュナという自分の名前をサイクロンに伝えた。

――――――――――

「これでよし、と」

 リュナの手当てを終えたサイクロンは、リュックを背負うとリュナを抱えあげる。

「きゃっ!」
「そのかご、ずっと抱えてるけど……大事なものなのか?」

 抱えあげられて小さく悲鳴を上げたリュナに、サイクロンがたずねた。

「う、うん……依頼でとってきてほしいって言われた道具なの」
「依頼で? ……ってことは君は……」
「ご主人様! 誰かきます!」

 サイクロンが言いかけた言葉をさえぎるように、フィリアが声を上げる。その声に、サイクロンはリュナを抱えたまま慌てて近くの茂みに隠れた。

「あの、マスター? 何やってるんですか?」
「シッ!」

 ライラの疑問に、サイクロンは口の前に指を立てて茂みに身を隠す。ほどなくして、フィリアとライラが残るその場所に姿をあらわしたのは、クラウス達だった。

「あれ、フィリア? なんでこんなところにいるの?」
「え? ……な、なんだ……リーセルとクレアか」
「ちょっと! まさかサイクロンもすぐそばにいるんじゃないでしょうね!」

 リーセルとクレアの姿を見つけてほっとしているフィリアに、クレアが詰め寄る。

「いや、その……」
「言ったよね? パニックになるから隠れててって!」
「ち、ちょっとクレア……フィリア困ってるから……」

 困った表情を見せるフィリアに、クレアがさらに詰め寄る。そんな様子を見かねたリーセルが間に割って入った。

「リーセル、例の人間と一緒にいたリーフィアというのはこの子のことか?」
「あ、はい。そうです」

 クラウスの質問に、リーセルがクレアを抑えながら答える。一方で、フィリアはライラに詰め寄られていた。

「ちょっと、どういう事なのか説明してよ! マスターは私達の言葉が分かるようになってるし、あのポケモン達はあなたの事知ってるみたいだし……」
「え、えっと……その……ご主人様ぁ……」

 クレアの後に続いてライラに詰め寄られて、フィリアは困り果てた様子でサイクロンに助けを求める。その様子を見ていたサイクロンは、小さくため息を吐くと茂みから出てきた。

「あっ! サイクロン、なんで隠れてなかったのよ!」
「……すまん」
「クレア、だから落ちついてってばぁ」

 サイクロンの姿を見て詰め寄ろうとするクレアを、リーセルが必死になって抑える。その後ろでバウムが驚いたように声を上げた。

「あっ、リュナじゃないか! お前依頼でダンジョンに行ってたはずだろ? 何やってんだ人間なんかと一緒に!」
「えっ、えっ? 何、人間?」

 サイクロンに抱かれたままで、リュナはバウムの言葉に動揺を隠せない。場の混乱した空気の中で、クラウスは大きく咳払いした。

「ゴホンッ……とりあえず皆落ちついてくれないか?」

 クラウスの言葉に、その場にいた全員が一瞬固まった。
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