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次元を超えた出会い Plorogue の変更点


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この物語はここから始まります。
完結までは長い道のりになるかと思いますが気長にお付き合いくださいませ。

作者[[ラプチュウ]]より
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 どこまでも続く大きな森……その森の中を、一人のトレーナーとおぼしき人間が進んでいく。一歩一歩進むたびに、地面に散らばった小枝や落ち葉が軽快に音を鳴らす。身につけている赤いジャケットが、緑の森の中ではよく映えていた。不意に茂みが物音を立てて揺れたかと思うと、茂みから一匹のポケモンが飛び出してくる。茶色い体を持ったそのポケモンはハムスターのような外見で、鮮やかな赤い目と先が筆のように裂けた尾を持つ見張りポケモン、ミネズミだ。

「ミネズミか……」

 そうつぶやいたトレーナーが、ベルトに取りつけたモンスターボールを手に取る。ボールのスイッチを押して、通常サイズに戻すと空へ向かって放り投げた。

「いくぞ! フィリア!」

 ニックネームを呼びながら投げ上げたボールが二つに割れ、中から飛び出してきたのは猫のような体つきで、葉を思わせるような切れ込みや葉脈を持つ耳と尾をもち、足と胸からも小さなはっぱが生えているクリーム色の体を持った深緑ポケモン、リーフィアだ。フィリアと名付けられたそのリーフィアは、軽く体を震わせると鋭い目つきでミネズミを見据える。ミネズミの方も、フィリアをにらみつけるように身構えていた。

「フィリア! [でんこうせっか]だ!」

 トレーナーの指示を受け、フィリアが強く地面を蹴る。次の瞬間には、もうミネズミの目の前まで迫っていた。驚いたミネズミは回避行動を取ろうと体を動かし始めるが間に合わず、フィリアの全体重を乗せた体当たりをまともに受けてしまう。そのまま後方へと数メートル飛ばされたミネズミは、目を回してその場に倒れ込んだ。

「よぅし、よくやったぞフィリア。おいで」

 トレーナーに呼ばれてフィリアが駆け寄ってくる。片膝をついたトレーナーに頭をなでられると、フィリアは嬉しそうに尻尾を振った。

「お前もずいぶん強くなったなぁ。この森に出てくるポケモン相手ならもう敵なしだもんなぁ」

 トレーナーがフィリアに話しかけていると、突然突風が森の中を吹き抜ける。木々がざわめく中、ふと森の奥から不思議な光が見えている事に気がついた。その光はしずかに揺れながら、トレーナーを招いているようにも見える。

「なんだ……あれ……? フィリア、いってみようか」

 フィリアが短く鳴いて返事を返す。トレーナーは光めがけて森の奥へと進み始めた。フィリアもその後ろをついていく。本来の道を外れ、草をかき分けながら奥へ奥へと進んでいき、トレーナーとフィリアはほどなくして光の元へとたどり着いた。その場所は中央に一本の樹が立っている広場のような場所で、どうやら光はその中央に立つ樹から発せられている。トレーナーがその光景に見とれる中、フィリアはその樹のそばに駆け寄って根元から見上げた。すこしして、トレーナーの方を振り返ってこっちに来て、と目で訴える。

「フィリア、なにかあるのか?」

 フィリアに促されるようにトレーナーも樹のそばへと歩み寄る。光をより強く感じつつ、樹の幹へと手を触れてみた。手のひらから温かくも冷たくもない、不思議な感覚が伝わってくる。次の瞬間、光が一気に強くなった。

「なっ……」

 白い光が、声をかき消すようにトレーナーとフィリアを包み込んだ。その後、光が消えるとその場所にいたトレーナーとフィリアの姿はどこにも見当たらない。樹も光を発する事をやめて静かに沈黙し、広場は静寂の空間へと変わっていた。

 ……。

 …………。

 ………………。

――――――――――
 森の中を走る一本道に枝葉の間から朝日が差し込む中を、一匹のツタージャが走っていた。斜めがけの青いショルダーバッグを抱え、首に巻いたピンク色のスカーフを揺らしながら一本道を走っていくと、ちょうど森の出口に一匹のポケモンが立っているのが見える。茶褐色の体の後ろに揺れる、オレンジ色の六本の尻尾は先がくるんと丸まっており、ダークブラウンの瞳に丸みを帯びた三角の耳の間には尻尾と同じように先が丸まった毛が三本生えている狐ポケモン、ロコンだ。胴体にピンク色のバッグを二本のバンドで取りつけ、左耳あたりに黄色いリボンを結んだロコンのそばでツタージャが立ち止まると、森の出口に立つ樹の幹に手をついて息を整える。

「はぁ……はぁ……ご、ごめんクレア……待った?」
「もぅ……日の出ぐらいに集まろうって言い出したのはリーセルでしょ? 言い出しっぺの本人が遅れてどうするのよ」

 クレアと呼ばれたロコンが、リーセルと呼んだツタージャに文句を言う。「ごもっともです」とリーセルは平謝りしていた。

「もういいや、早くギルドに行きましょう。ギルドの親方様を待たせちゃまずいからね」
「うん……そうだね」

 リーセルとクレアは二匹並んで森を出る。少し道なりに進んで小さな丘を越えると、二匹の抜けてきた森とは別の森が見下ろせる位置に出た。その森の中央には森をくりぬいて造ったと思われる町が見える。

「あれがフォレストタウンかぁ……。これから僕達、あの町のギルドに弟子入りするんだね」
「うん、そうね。……でもリーセルから突然『一緒に探検隊やろうよっ』なんて言われた時はびっくりしちゃった」

 少し含み笑いを浮かべながら、クレアがリーセルに探検隊に誘われた時の事を話す。

「あの時、思い切ってクレア誘ってよかったよ。今日、こうやってギルドに弟子入りしに行けるんだから。……さ、早くギルドに行こっ」
「……そういえば探検隊の名前はもう決めたの?」

 フォレストタウンに向けて歩き始めたリーセルの背後から、クレアが質問を投げかける。その質問を聞いたリーセルがぴたりと足を止め、クレアの方に振りかえった。

「……決めてない」
「やっぱりね」

 あきれたようにため息をつくクレアに、リーセルがしょんぼりした表情を見せてうつむく。

「どうせリーセルの事だから忘れてくるだろうと思ってアタシが考えてきたわよ」
「え、ほんと? さっすがクレアっ! ……で、なんて名前?」

 クレアの言葉に、リーセルが顔を上げる。目を輝かせながら自分を見つめるリーセルを見ながら、クレアは右前足を口にあてて軽く咳払いする。

「オホン、では発表します。アタシ達の探検隊の名前は……クレセルズでぇす!」
「クレセルズ……うん、いい名前だね!」
「でしょ? アタシとリーセルの探検隊だから、お互いの名前からふた文字ずつ取ってクレセルズにしたのよ」
「へぇ……」

 リーセルにほめられて、クレアが上機嫌になる。自慢げにどうやって名付けたのかをクレアが説明すると、リーセルは感心したように声を漏らした。

「さっ、探検隊の名前も決まったことだし……早くギルドにいかなくっちゃ。しっかりしてよリーセル、あなたがこの探検隊のリーダーになるんだから。」
「う、うん……って僕がリーダー!? ちょ、クレアがリーダーするんじゃないの!?」

 クレアの言葉に一度うなずいたリーセルだったが、すぐにいわれた言葉の意味にびっくりして慌てだす。

「な~に? リーセルがアタシを誘ってきたんだから、リーセルがリーダーでしょ?」
「え、えっと……そうなんだ……ぼ、僕がリーダー……」
「ほらっ、行くわよリーセル! ギルドの前まで競争! よーいドン!」
「あ、ち、ちょっとまってよクレア! ずるいよいきなり!」

 自分がリーダーになる事に戸惑うリーセルを余所に、クレアが突然走り出す。リーセルも慌てて、前を走るクレアを追いかけるように走り出した。
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