''注意事項''
-''♂×♂''の露骨な官能表現、及び&color(black,black){''雄妊娠、雄産卵表現''};(←ここ重要)があります
-色違いバシャーモは鳥類と同様の総排泄孔です
&size(30){''&ruby(もりゆい){&color(#009900){森};&color(#ff00ed){結};};''};
&size(20){~&color(orange){鶏姦};と呼ぶにはあまりに美しいお話~};
俺はバシャーモのさつま。ホウエン地方某所の静かで山がちな森の奥で、鍛錬に汗を流しつつ悠々自適に暮らしている。成体になって故郷を出てから、程なくして見つけた開けている場所だが、来る者は少なく、木々や草、岩壁の苔の緑は美しく、小川も流れていて、我ながら良物件だ。
木々の葉が最も青々と茂る&color(#0099aa){夏};のある日。今日も木の実を抱えて、ここから少し奥の森の中に鎮座する、小さな祠へと足を運んだ。この辺の守り神らしく、今日も住まわせてもらっていることを感謝して、木の実をお供えして手を合わせる。この祠も偶然発見したものだが、俺には導かれたようにしか思えず、それ以来毎日のお参りのみならず時折手入れをして、この美しい場所を壊さないよう努めてきた。
祠から戻って来た俺の元に、一匹のバシャーモが現れた。あまり訪れない来客、そしてバシャーモってだけでも珍しいのに、なんとそいつは見たことのない毛色をしている。いわゆる色違いってやつだ。
「何の用だ?」
「強いバシャーモがいると聞いて、ちょっくら勝負したくなってな」
そいつは意気揚々と答える。
「勝負か、面白い」
このところバトルする機会もなかったため、退屈しのぎには丁度いい。
「で、名前はなんていう?客として来たなら名乗るのが礼儀だろ」
「おっと失礼。おれはくろがしわ。くろとでも呼んでくれ」
「くろ、か。俺はさつま。いざ尋常に勝負!」
周りを荒らすリスクの少ない広い場所へと移って戦闘の構えを取ると、くろもそれに応じる。互いを捉える目が細くなり、初めの一発を繰り出す。どちらも足技だった。鍛えられた長い脚が交差してぶつかり合い、攻撃は相殺された。ならばと今度は拳を突き出す。くろも応戦して拳で迎え撃ち、火の粉が舞う。
「噂通り骨のあるやつだな!」
「これは面白くなってきやがったぜ」
俺たちは次々と技を出し合い、汗を散らして炎揺らめく文字通り熱いバトルを楽しむ。次の一手を読み合う緊張感も、バトルの醍醐味の一つだ。読みが上手くいけば気持ちいいし、外れたら痛い目を見る。
「やるなさつま!」
「俺はそう簡単に倒せないぜ!」
一筋縄ではいかないくろとの戦いに、俺はさらに高揚して手首から炎を轟々と噴き出す。彼もそれに応えるように炎を出した。くろが繰り出すブレイズキックを、交差させた腕で受け止め、振り払ってからのスカイアッパー。だがそれは寸でのところでかわされ、隙を突いたマッハパンチが命中する。それに耐えつつブレイズキックをくろに当てた。一進一退の攻防が、盛夏の自然豊かな森の奥で派手に繰り広げられた。
「うがあっ!!!」
「ぐほっ!!!」
長く続いたバトルも、お互い満身創痍の体に手痛い一撃を食らい、ほぼ同時に短い草の生えた地面に倒れ込む。立ち上がる力すら残っていない。それはどうやらくろも一緒のようだった。
「相打ち、か……」
「畜生……勝ちたかった……」
勝ち切れなかった悔しさはあれど、全力を出し切った爽快感も同時にこの身に感じていた。
「ちょっと待ってくれよ」
くろに声を掛け、うつ伏せになって住処にしている岩壁の洞穴へと這って行く。体を動かす度に走る激痛に顔を歪ませつつ、ようやく辿り着いた。木の枝で編んだ籠に入れてあったオレンの実に手を伸ばして貪る。少し時間を置くと、立ち上がれる程度に体力が戻ってきた。貯蔵庫に入って木の実を籠一杯に入れ、それを外で倒れたままのくろへと持って行った。
「待たせたな。せっかくここまで来てくれたんだ。お礼をさせてくれ」
くろにオボンの実を手渡した。彼は最初目を大きく開いていたが、お礼を言いつつそれを食べた。しばらくすると、彼も立ち上がれるくらいには回復する。薬草で傷の手当てをしてから、籠の中の木の実に手を伸ばして食べる俺たち。
「噂通りの強さだったな、さつま」
「お前もかなり手強かったぞ」
そして互いの手を握り合った。
「是非また手合わせしてくれ」
「おう」
そうこうするうち、ヤミカラスの声が聞こえ始める。空は徐々に赤く、暗くなり始めていた。木の実を食べたとはいえ、体力は完全には回復せず、次第に眠気に襲われる。
「なぁくろ、今日はここに泊まっていけよ」
「へ、いいのか?」
耳を疑ったようで、くろはポカンとしている。俺は笑顔を見せて首を縦に振った。
「その体でこの広い森を抜けるのは無謀だ。ここなら静かだしゆっくり休めるぜ」
「悪いな。じゃあおまえの厚意に甘えさせてもらうとするか。ありがとう」
「じゃあ早速寝床を用意するから、ちょっと待ってな」
再び洞穴へ入り、空いた場所に藁を敷き詰めた。そしてくろを招き入れる。想像よりも広かったようで、中に入るなり驚いていた。用意した寝床で横になる俺たち。
「こんなところに棲んでるなんて羨ましいな」
「だろ? こんな穴場滅多にないからな」
「居心地よすぎてすぐ眠くなって……」
くろの言葉が途切れる。何だと思って目をやると、彼は寝息を立てていた。仕方あるまい、俺と派手にやり合ったんだから。そんな俺も強烈な眠気に苛まれ、横になるなりすぐ意識が飛んでしまった。
目を覚ますと、洞穴の外から弱いながら朝の光が差し込む。結構な時間眠っていたようだ。その反動で強烈に催し、洞穴を出て外にある便所で用を足す。小さな川が天然の水洗便所となり、衛生面もバッチリだ。すっきりした俺は早速、日課の筋トレを始める。全身のストレッチで体を解してから、腕立て伏せ。まずは両手で行い、次は片手で交互に。決めた回数をこなしたら、今度は木の枝に膝裏を引っ掛けて逆さまにぶら下がり、後頭部に両手を組んで上半身を持ち上げ、腹筋を鍛える。それ以外にも木や岩などを駆使して様々な部位の筋肉に負荷を掛けていく。そうしていくうちに、火照った体から汗が噴き出して蒸発し、体臭が強くなる。これこそ体を鍛えていると実感できる瞬間だ。朝のメニューを終え、本来ならば技の練習をしたいところだったが、体を洗わないまま眠ってしまったせいで強烈に臭いから川で水浴びをする。
山からの冷たい水を全身に浴びて、汚れを落とすと同時に熱を持った筋肉をクールダウンする。水分を含んで寝た羽毛によって、日々鍛えている筋肉の盛り上がりが顕著に現れる。これぞ達成感を覚える瞬間であり、自分に酔いしれられるひとときでもある。見下ろすと、凹凸の際立つ両腕に、大きく盛り上がった胸筋。そのさらに下には割れた腹筋による六つの山並みが連なって、やがてⅤゾーンに収束する。無論両足も太く張りのある太腿に丸く隆起したふくらはぎと、我ながら見所たっぷり。でも俺としてはただ鍛えただけでは魅力を出し切れないと考えている。この体を活かせるのは戦いの場、つまりバトルの腕前が伴ってこそ、最大限に魅力を引き出せる。だからこそ俺は、技や体術の鍛錬も怠らない。落ち着いたら再開しようと思った瞬間、寒気が走る。水分の蒸発でさすがに冷えすぎたようだ。川から上がり、全身から炎を発して羽毛を一瞬のうちに乾かした。
「起きてたか、おはよう」
視線を感じて振り向いた先には、目を覚ましたくろが佇んでいた。
「おはよう、いい体してるな」
「へへ、ありがとな」
多少はにかみがちに笑う俺。
「お前も水浴びしたらどうだ? 昨日そのまま寝て汚れたままだろ?」
「じゃあ遠慮なくそうさせてもらうよ」
くろが川へと歩いていく。足先を水に浸してその冷たさに逆立つ彼の羽毛を見て笑う俺。ゆっくりと体を濡らし、そして頭から水を浴びた。先程の俺と同様、濡れた羽毛によって初めて際立つ彼の体格。彼もまた全身を鍛えているとわかる程の筋骨隆々ぶりだ。少し黒味の深い体の羽毛に対して真っ白な頭の羽の絶妙なコントラストが、俺には持ち合わせない色気を醸し出している。俺はすっかり目を奪われ、生唾を呑んでいた。そんなこともいざ知らず、くろは炎を発して羽毛を乾かし、ふさふさな姿に戻った。
「水めっちゃ冷たいけどすっきりした」
「よし、そしたら朝飯だな」
洞穴に戻り、木の実を用意してふたりで食べる。初めは黙々と食べていたが、ふと気になることが思い浮かび、くろに聞いてみる。
「お前、どこに棲んでるんだ?」
食べる手が止まるくろ。口の中にある物を飲み込んでから答える。
「いや、特に決まった場所に棲んでるわけじゃない」
どういうことだろうと詳しく聞いてみると、彼は故郷のある別の地方からホウエン地方に入り、それ以来ずっと住処を見つけられず放浪してきたと話していた。その故郷も、羽毛の色が違うせいで、成体になった日に半ば追放同然に去ったそうだ。住処を見つけるに当たっても、ネックになったのはやはり色の違いだという。確かに俺も色違いは不吉の象徴と吹聴していた者を数多く見てきたが、その煽りで彼が肩身の狭い思いをしていることを知ると、いたたまれない気持ちになった。
「ま、別に住処がなくたってどうにかなるけどな」
と笑いながら話すくろ。俺は思わず、両手で彼の肩を掴んでいた。
「なぁくろ、お前ここで暮らせよ」
「えっ!?」
思わず彼の口から大きな声が飛び出した。それはあたかも豆鉄砲を食ったポッポの如く。
「いや、嬉しいけどおまえに迷惑かけるんじゃ……おれ大食いだし……」
「だったら心配するなよ」
俺はくろを外へ案内する。指差したのは住処の敷地内にある何本もの木。ここでの生活における食糧はこの木の実で賄っている。
「木の下見てみな」
くろが目を凝らすと、木の真下の地面に多くの木の実が転がっている。それはどれも熟し過ぎて腐っていた。
「木を増やしすぎてさすがの大食らいの俺でもひとりじゃ食べ切れなくてよ。乾燥させて冬の保存食にするにも量が多すぎるし。それに……」
俺はこの住処全体をぐるりと見回した。
「ここ広くて俺だけじゃ持て余すし、来る奴も少ないんだ。だからむしろお前がここに棲んでくれたほうが丁度いいってわけよ」
「いいのか? 本当に……」
くろは少し困惑しているようにも見えた。確かに疑われてもおかしくない程虫のよすぎる話だろう。
「俺がいいって言ってんだから遠慮すんなよ」
笑顔でこいつの肩を叩く。
「じゃあ……遠慮なくここに住まわせてもらうよ」
彼はやっと、首を縦に振ってくれた。俺は喜びの余り、何度も彼の肩を叩いた。
「やったぜ! くろ、これからもよろしくな!」
「ああ、よろしく、さつま!」
ぎゅっと手を握り合い、明るい笑顔が零れた。
「なら早速、案内したい場所があるんだ」
俺はくろを森のさらに奥へと案内した。やって来たのは、あの小さな祠。そして彼に、この祠について説明した。そして挨拶がてら木の実を供えてふたり手を合わせる。この祠が守る森を壊すことのないようくろに念を押すと、彼は真剣な表情で大きく頷いた。そして祠に向かって、深々と一礼する。こうして、俺たちの新たな生活が幕を開けた。
俺はまず、くろについて色々と情報を得た。まず年齢は俺とそう変わらない青年で、若さを堪能する盛りだった。次に高さだが、一緒に並ぶと俺より少し低い。とはいっても俺自身が標準的なバシャーモより一回り大きいので、彼も無論大柄なほうである。そして重さも鍛えた筋肉で重くなっている俺より少し軽いが、筋肉量は俺とそこまで変わらないようだ。つまりくろのほうが少し小柄だが、体格はかなり似ている。
筋トレのやり方も俺と大きく異なる部分があるが、それについて口出しはしない。寧ろ今までの放浪生活でよくこの体格を維持できたなと感心しきりだった。普段の振る舞いも俺は割と堂々としているのに対して、彼は色違いという好奇の目を向けられてきたが故か、周りを気にしながらやることが多いように感じた。
そして何より最も気になっていたのは、股間の構造の違いだった。初めは気付かなかったが、どうやら彼は股間に何も付いてないようだ。俺の股間には、暑いときにはもさもさの羽毛からはみ出すくらいの大きさを誇るチンポと金玉がぶら下がっているが、くろにはそれと思しき存在が見当たらない。濡れているとなおわかりやすく、またおしっこをするときも俺は立ったままチンポを握る一方、くろはしゃがんでいる。これがとても気になって仕方ないが、俺はそれを聞き出せずにいた。何故か? 理由は簡単。俺はくろに一目惚れしてしまったからだ。
そもそも一緒に暮らすことを提案したのも、水浴びをする彼に心奪われてしまったのが動機の一つ。マッチョで雄々しくて強いくろが、ゲイである俺の好みにドンピシャであるが故に、せっかく近くに置いとけたのにそんなことを聞いて嫌われるのが怖かった。だから俺はその件について悶々としつつ、日々を過ごしたのだった。
一緒に暮らし始めて一週間後、俺たちは筋トレを終えて一緒に水浴びをする。無論俺は内心ドキドキしていた。体が濡れて筋肉の形が浮き立つ。俺の仕上がりがいいのはもちろんだが、くろの仕上がりぶりも俺と一緒に並んで見劣りしない程だ。
「さつまの体やっぱかっこいいな!」
笑顔のくろに突然筋肉を触られて少しびっくりする。仕返しとばかりに俺も彼の筋肉に触れる。
「くろもいい感じにキレてるぜ」
そしていつの間にかベタベタに体を褒め合っていた。そんな中でもつい股間を見比べてしまう。やっぱりこいつ、すっきりしている。
「……なぁくろ」
「なんだ?」
俺はこの流れの勢いで思い切って聞いてみた。
「前から気になってたけど、お前もしかしてチンポ……」
「ないぞ」
「は!?」
思いの外あっさりと答えられて肩透かしを食らった気分になる。そんな俺を見て笑い出すくろ。
「ずっと気になって見てたのに、なんで聞いてこないんだろうなって思ってたんだぞこっちは」
「それは……」
つい口籠って目をそらす。彼はその理由を話してくれた。
「たぶん生息地の違いだな。おれが生まれ育った土地のバシャーモのオスは、ほとんどおれみたいにチンコがなくて、尿道と肛門が分かれてないんだ」
「肛門もないのか!?」
さらりと明かされた新情報に開いた口が塞がらない。くろはお尻を向けて見せてくれたが、確かにあるべき場所に穴がなかった。
「初めて見たぜお前みたいなバシャーモ……」
「おそらく本来の鳥に近い遺伝子なんだろうな。だから外に出ると驚かれるし、メスと間違われたり奇形を疑われたりすることも多くて、なかなか周りと馴染めなかった」
「そうか……」
聞くと、ちゃんと性別を調べてもらってオスであることは間違いないという。俺の想像に及ばないところでの苦労を思い知った。
「でもその鍛えてきた筋肉が、お前の価値を存分に上げてると、俺は思うぜ」
「ありがとう。そう言ってくれたのはさつまが初めてだ」
彼の見せた満面の笑みに、俺の胸は強く高鳴った。そしてこのとき、俺は覚悟を決めた。
日が暮れて夕飯を食べ終え、少し落ち着いた頃合いに、俺はくろの隣に座る。こちらを見る彼。ごくりと唾を飲む。
「くろ、聞いてくれ」
「なんだ?」
首を傾げている。俺の心臓がバクバク鳴っている。こうなったらあとは勢いだ!
「俺は……お前に惚れた!」
突然の告白に、目をぱちくりさせる彼。少し黙った後に、くろが口を開く。
「おれなんかで……いいのか?」
その言葉が意味するところを、俺はわかりかねた。するとくろは、思わぬことを口走る。
「これまで様々なオスに抱かれてきた、こんな汚らわしいおれでも……」
あまりに衝撃的な告白の後、彼は俯いた。そして俺はやっと理解した。彼がその日暮らしでもどうにかなったのは、ゲイやバイのオスに春を売る代わりに、その一晩だけ安心して休める保証を手に入れていたからだと。そう思うと、俺はなおのこと、ある思いを強くした。
「そんなこと、俺は気にしない。話を聞いて、今心に決めた。俺の元で、幸せになろうぜ」
「さつま……!」
くろの目が涙で滲む。俺はたまらず嘴を重ねた。舌を絡ませながら、ごわっとした硬い羽毛とその下の盛り上がった筋肉をお互い触り合う。息遣いと絡まる舌の厚さ、唾液の味が強く印象に残る。舌が離れると、粘度の高い唾液が透明な糸を引いた。そして俺は立ち上がる。
「俺がお前の体を『上書き』すれば、汚くないよな?」
手で剛毛を掻き分け、露になるチンポ。力なく垂れ下がり、鈴口周辺を除いて皮を被っている。伸び切った玉袋は大きくずっしり重い二個の睾丸の形をはっきり浮き立たせて、僅かな動きでもぶらぶら揺れる。それを目の当たりにしたくろは、目を見開いてごくりと唾を飲んだ。ムクムクと成長を始め、皮が剥けながら持ち上がり、伸びた袋も収縮していく。より太く長く硬くなり、亀頭が完全に露出して角度を付けた上反りのチンポが心臓の鼓動に合わせて脈動していた。
「かわいがっていいぜ」
物欲しそうにしているくろに、後押しの言葉を掛けた。彼の手指にそっと握られる、臍越えの自慢の柱。同じ種族なのに熱く感じる、と彼は呟いた。それをゆっくり上下に扱き、空いた手で優しく揉まれる黒ずんだ金玉。もたらされる刺激に呼吸が乱れ、筋肉質な体がピクッと動く。さすがに春を売ってきたからか、その手つきは慣れたもので、カリの部分や亀頭など、気持ちいいポイントを絶妙な力加減で刺激する。
「んん、ぉ……!」
我ながら色気を含んだ雄の喘ぎが口から飛び出し、くろの手中にあるチンポが一瞬快感を伴って膨らむ。弄ばれるうちに何度かその瞬間が訪れ、チンポの中で生じるじめっとした感触が強まると、先端から透明なものが搾られるように出てくる。それを塗りたくりながら刺激し続け、段々ぐちゅぐちゅと濡れた音が目立ってきた。気が付くと満遍なく粘液に濡れ、丸く締まった金玉すら塗りたくられていた。
「ううっ!」
俺は気持ちよさに呻き、身震いして脈打つチンポからドロッと先走る。それを扱いていた手指に絡め、くろの股間へと伸ばす。金玉を弄んでいた手がチンポを刺激しながら、彼の頭がずいっと俺の股間に近づき、舌を伸ばしてチンポを舐める。
「あっ、は、ぁ……!」
濡れた分厚い肉の刺激は、異なる質の心地よさをもたらす。俺を鳴かせながら自らの引っ込んだ急所を弄ぶ彼。次第にそこが濡れてねっとり糸を引くのを見て、思わず情欲を刺激されて過剰にチンポが反応する。
「いいぞ、今の脈動……」
俺の粘りと唾液で汚れたくろの顔がにやける。そして秘所から抜かれた指は、大量の粘りを纏って灯りに艶めいていた。
「ヤるかぁ……」
彼は頷き、一緒に立ち上がる。寝床に移動する間も秘所を弄った手で扱き続け、彼の体液で汚れたチンポが雄々しい快楽の瞬間を見せて我慢の証を搾り出される。そして寝床に着くなり、くろは仰向けに寝転がって股を開いた。雄の魅力溢れるマッチョな体つきには一見不釣り合いな、まるで雌のような穴。いつでもどうぞと言わんばかりに、くろは目を細める。過去に他のオスと関係を持って子作りと相違ないような中出しを遂げたことのある俺でも、一瞬戸惑う彼の鳥マンコ。実際の雌のは見たことがないが、おそらくこんな感じなんだろう。紅色の肉壁が覗くその部分に顔を近づける。独特の臭いが鼻をくすぐり、潤す粘液は零れて会陰に流れ出す。思い切って舌を伸ばしてその穴に挿れる。
「ひあっ!」
くろが初めて艶めかしい声を漏らした。穴の中は温かくぬるぬるして、塩気に混じった独特の言葉にし難い味を舌の表面で感じ取る。中で動かしてみると包み込む肉の柔らかさが伝わり、彼の身震いで強まる中の締まりも感じ取れた。舌を抜き、膝立ちのままくろの腰を掴んで持ち上げる。先の舌攻めに触発されて臨戦態勢の雄柱を彼に見せ付ける。それはくっきりエラが張り、太い血管や裏筋が浮き立ち、包皮の余裕すらほとんどない程に大きく膨れ上がっていた。俺は即座に挿れず、太筋の隆起を鳥マンコの凹みに噛み合わせるように押し付ける。入口の感触がチンポに伝わり、期待を込めて軽く脈動して粘りを漏らす。
「いくからな、くろ……!」
「ああ、きてくれ、さつま……!」
片手で腰を持ち上げ、空いた手はチンポに添えてぷりっとした亀頭を秘穴に押し付ける。腰を押し付けると、淫肉を押しのけてくろの内部に侵入する。柔らかく、温かく包み込む刺激がとても心地よく、初めての感触だった。徐々に奥へと進み、拡張の刺激が集中する亀頭からチンポを通って全身へ快感の波が伝わる。壁のうねりで変化する摩擦が予測不能な刺激をもたらし、挿入中なのに一度脈動して雄の色香を含む声を零す。ある程度挿れて両手で彼の腰を捕らえ、根元まで埋めた。密着した結合部は、色の異なるごわっとした羽毛が重なり合っている。まぐわう相手は雄のはずなのに、一見すると雌と致している錯覚は、とても新鮮な体験だ。ふと彼と目が合う。突いてくれと訴えるが如き眼差し。俺が事を遂げないと彼の&ruby(はら){胎};は「上書き」できない。それまでは過去に汚された膣に弄ばれ、やがて搾られる運命にある、交尾に臨んだ雄のみが味わえる極上の快楽を味わい尽くそう。
俺はゆっくりチンポを抜く。挿入前に目視できた程の襞のうねりが張り出したエラに引っ掛かって性感の波を発生させる。再び奥へ押し込むと突き進む摩擦が俺の息を乱す。この動きを繰り返していく。
「あぁ、ぁ……!」
くろが喘ぎ始める。そのいやらしくも雄を感じさせる喘ぎは、事に及ぶ俺を耳を通じて虐げ、湧き上がる愛おしさを助長させる。
「ぐうっ……!」
嘴を噛み締め、中でじわりと搾られる脈動に身を震わす。熱が溜まったマッチョな肉体から滲み出す汗は筋トレ中のそれより遥かに臭く、俺の雄々しさを引き立ててくれる。しばらくこの体位を楽しんでから、チンポを穴から抜く。分泌液と搾られた俺の我慢汁の混合した粘り気が、亀頭に掻き出されて抜いた瞬間藁にドロッと滴る。
「バックでヤるぜ。四つん這いになれよ」
ぬるぬるのチンポを脈打たせながら彼に命令すると、素直に四つん這いになってくれた。再び腰を捕らえ、チンポを宛がう。
「そこ、違う……!」
くろに指摘され、つい癖で肛門のあるはずの場所に押し付けていることに気付いた。思わぬ赤っ恥で顔から火が出そうになった。少し下からの挿入ということで、手で押さえながら潤った膣口に挿し込んだ。先程とは異なる締まり具合。何度か抽送してその摩擦を楽しみ、そしてくろの背中に覆い被さる。俺とは異なる雄臭さが鼻腔を支配する。愛おしい彼の臭いで気分が上がり、雄の営みを再開すると同時に彼の胸筋や腹筋を手で嗜む。
「あぁっ! やっ、やめ……んぁ!」
俺の下から激しい喘ぎが発せられ、呼吸の乱れが背中越しに俺の胸に伝わってきた。効果は抜群なようで、膣内は時折強く圧迫してくる。
「うおおっ!」
彼の不意打ちにチンポが力強く喜び、その刺激に身を震わす。口から零れた涎がくろの背中の羽毛に染み込んでいく。
「おっ、おれがっ、上に……!」
しばらくバックで気持ちよくなっていると、彼が喘ぎながらわがままを言う。
「お前が上か……! 面白そうだな……!」
内外で束縛していた彼を解放して、今度は俺が仰向けになる。背中に感じる冷たい感触に、これまでの営みによる卑猥な俺たちの汚れを実感する。刺激され続けて一層立派になった俺のチンポを握って驚きつつも、俺に跨ってこじ開けられた鳥マンコにソレを埋め込んでいく。少し前屈みになり、俺の盛り上がった筋肉に手を伸ばして体重を乗せた状態で、くろは上下に腰を動かす。
「うおぉ! おぉっ……!」
俺の意思を介さない抽送がチンポに襲い掛かり、雄臭く筋骨隆々な身をくねらせて悶える。上で動く彼も、蕩けた表情で小刻みに喘ぐ。彼のマンコに弄ばれつつ結合部から見え隠れするぬめった卑猥な柱は、交尾開始より明らかに太くなり、確実にそのときが迫っていることを実感する。そしてこの体位で彼の奥まで押し付けられ、先端が何かに当たるような感じがしてくる。
「あっ、あっ、あっ! あっ!」
くろも喘ぎを激しくしている。奥に当たる部分がそうせしめているのかと、気持ちいい中でふと思った。
「くろォ! 次は、駅弁、だぁ!」
俺を搾りにかかっていた彼が動きを止め、チンポを抜くとマンコから粘液が幾筋も滴る。立ち上がってくろに近寄ると、彼の雄臭に混じって俺の臭いが立ち込めている。そして汗や粘液で羽毛がへたって筋肉の形がはっきり目に取れる。まぐわう俺たちの卑猥な姿に、さらなる劣情をそそられる。くろが俺の首の後ろに手を回し、俺は彼の引き締まった雄らしい尻を両手で持ち上げる。照準を合わせると、俺の腰に回されたくろの足で距離を縮めて再び一つになる。雄々しく力のある俺だからこそ見栄えのする体位で、彼を支える腕は負荷によって筋肉を大きく盛り上げている。自ずと向かい合い、目が合うと胸が高鳴って、大した摩擦と圧迫の刺激がなくとも、確実に俺たちの交尾は佳境に近づいていくことが実感される。
「あっ……!」
力強く膨らむチンポの刺激で表情を歪める。くろもそれに釣られて反応する。
「さつまが……中で動いた……!」
「人間の赤ちゃんかよ……」
彼は腕を曲げ、俺に頬擦りした。
「おれが雌なら……子供ができるのに……」
「バカ言え……! お前が雄だろうが俺の子産んでもらうぜ……!」
「さつま……!」
俺は激しく喘ぐ中で、彼に笑顔を見せた。
「最後は立ったままヤろうな……!」
くろも頷き、駅弁を解いて向かい合う。性的刺激を受け続けて皮が張る程に膨れ上がった、肉体に負けず劣らず隆々としたチンポと、深く皺を刻んて硬さを得て中身を体内に押し上げる金玉、過去を上書きすべく快感を糧に立派に変貌する侵入者にこじ開けられ、自分と異なる体液で現に上書きされかけているマンコ、それぞれを持つ屈強な二匹のバシャーモが、いよいよそのときを迎えようとする。
「限界が近くて……子作りしちまいそうだ……!」
見せ付けたチンポが心地よく膨らみ、鈴口から濃くて粘りの強い透明な体液が溢れる。
「おまえのチンコ見てると……胎ン中がジンジン疼くんだ……!」
さらに距離を縮める。俺は膝を曲げて少し足を開き、楽な角度を作る。そして危険な雰囲気を放つぬめった凸と凹が、再び噛み合う。その気持ちよさに、声を上げて悶える。根元まで押し込めると、先端が硬い何かに当たる。俺もくろも、それを知覚していた。俺たちはぎゅっと抱き合い、雄臭い筋肉を密着させて抽送を再開する。
「うおぉっ!」
「あぁっ!」
抜き差し一回だけでもチンポとマンコの擦れる快感が強く、思わず身震いする。命をつなごうと脈打って濃厚な我慢汁を体内に搾り出されながら、奥への当たりを強くしていく俺のチンポは、確実に膨張し続けている。そしてまた抜き差し。くろのマンコが気持ちよすぎて、この中で子作りすることを強く望む。そしてまた抜き差し。
「うああっ!」
「んあぁっ!」
言葉を超越して、俺たちは強烈な快楽の中で互いを求め続ける。感情の昂りによって手首から炎が噴き出す。粘ついた俺たちの交尾の証が、意思を持った亀頭に掻き出されて結合部から溢れ、チンポの根元から硬い金玉や内腿を流れ下っていく。先端がくろの奥により強く当たったかと思いきや、押し破るような感じに変化する。
「あっ! やっ! そこぉ!!」
くろが泣き叫ぶ。相当気持ちいいらしい。俺も我慢が利かず、金玉の辺りから命の流れを感じ始める。
「うっ! ぐおぉっ!!」
抽送を重ね、チンポはどんどん膨らんで張り詰め、亀頭が硬いところを徐々にこじ開けては彼を激しく鳴かせる。自分で惚れ惚れする程変貌した雄の象徴の根元に、急激に集まるものを覚える。もう限界だ。俺は足を震わせながら途中までチンポを抜く。丸太のような太さの表面に、太い血管が丸くくっきり飛び出しながら大量の粘液を纏う。そしてそれを根元まで突き入れた。彼の最も奥で、これまで最前線で活躍した亀頭がその障壁を雁首まで突き抜ける。
「さつ、まあぁぁぁぁぁぁ!!!」
その衝撃でくろが絶頂を迎える。
「ぐうぅぅぅっ!!」
俺も背中を丸めて突き破った快感と抗えない流れに身を震わす。くろの鳥膣は反射的に強く締め付け、鳥ポケモン独特の濃厚で粘つく子種が結合部に溢れ出すのを感じた。無論締め付けに耐えられるわけがなく、限界を超えた前立腺が決壊を起こして濃厚な怒涛が尿道を駆け上がる。そして俺のチンポは締め付けをもろともせず、流れが突き抜ける瞬間目掛けて痛い程に張り詰め、くろの&ruby(なか){胎内};を最も広くこじ開ける。
「くろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
力を込めて抱擁する愛しい彼の名を叫び、その最も奥で思いを乗せた俺の遺伝子を力強く噴射する。その瞬間、俺の視界は眩く煌めいたように感じられた。動きを止めた俺たちの体に、速い脈拍と溜まった熱が伝わり合い、過剰に水分を含んだ羽毛の擦れ合いがよりはっきり感じ取れる。湿気を含んで混ざり合う体臭が、一つの存在になっている事実を際立たせた。
くろに包み込まれたチンポから搾り出される、濃厚で粘りの強い雄のエキスは、これまでに一度の射精で出した量をはるかに凌駕する大量ぶりで、規則的な躍動の度にたっぷり噴射していると強く実感できたのも、自慰含めてこれまでにない初めての経験だった。根元まで挿し込んだ継ぎ目に触れても、露出した俺たちの性器を汚すのは、そのほとんどが絶頂前に漏らした粘りとくろが果てた証の白濁で、大量に出される俺の精は、突き破った穴に蓋をする雁首の段差によって、胎の中から逆流していないことを示している。指に触れた根元の裏筋はまだ脈動を続けていて、種付けがまだ終わっていない。そのすぐ下の玉袋は少し柔らかくなってきたようだ。くろの腹部はさっきより少し膨らんでいる。快楽に逆上せて息を切らす彼の顔を見て、これでようやく汚い過去を俺が上書きできたことを確信する。
「どうだ、俺のチンポはよぉ……?」
「今まで味わったチンコなんか……屁じゃないくらいよかった……! こんなヤバいの、初めて……。中がすごいことに……」
絶頂の余韻なのか、呆然としているくろ。たまらなくなって、俺は腰をさらに強く押し付けた。
「嬉しいこと言ってくれるぜ。俺も雄鶏のマンコは初めてだったけどな、ケツなんかより断然よかった……癖になっちまう……」
「よかった……おれたち体の相性抜群なんだな……!」
「違いない」
治まる命の激動を覚えつつ、抱き合いながら口付けした。性別が一緒なのに、その体は過不足なく噛み合う。くろがここへやって来たのは、運命的なものなのではと強く心に抱いた。
発砲し続けていた雄の砲身が力を失い、萎んでいく。これまで押し付けていた腰をようやく引いて、俺たちの強固で狂おしい程気持ちいい結合がようやく解けた。白い糸を垂らしてぶら下がるチンポと広がったまま白が零れるマンコ。それを覆う汚れた羽毛の中に混ざる、お互いの色。やり切っちゃった。致した後に訪れる無駄な冷静さの中で覚える、一線を越えた事実。俺たちは並んで仰向けに寝転がる。二つに分けられていた寝床も、どうやら一つで済みそうだ。
「これでもう、『&ruby(けが){汚};れた』体じゃなくなったな、くろ」
「今はめっちゃ『&ruby(よご){汚};れてる』けどな」
「へへ、上手いこと言う」
たまたま触れた手を、ぎゅっと握り合う。空いた手を自らの穴に挿し込み、白く汚れた指を見せ付ける。俺も雄の突出に纏う汚れを指に絡めて応えた。そして大量のザーメンがいまだ留まる、黒ずんだ腹をそっと撫で回す彼。
「さつまに世話になってばかりだったけど、おかげでこんな経験できて、めっちゃ幸せだ。ありがとう……」
「とんでもない。俺たちの暮らしはまだまだ始まったばかりだからな。これからもっと、もっっと幸せになろうな!」
「ああ。おまえとなら絶対そうなれるさ」
見つめ合い、ニコッと笑う。握られた手に、一層力が籠った。
それから俺たちは本格的にふたりでこの場所で暮らし、周りに棲む、理解ある者たちにもくろを紹介した。彼らに優しく受け入れられ、ひと目も憚らず彼は涙を流した。俺とくろの暮らしは盤石なものとなったのだ。
そうなったのも束の間、くろが寝込んでしまう。寝込むという割には元気なのだが、昨日突然猛烈に吐いてしまい、それから一旦は治まったものの、不規則に強い吐き気に見舞われるようになってしまったので、あまり寝床から移動できない状態。森の医者に診てもらっても、原因はわからない。ただ、どうやら俺の体臭が吐き気のトリガーの一つになっているようだった。
「どうだ調子は?」
「『今は』まだ大丈夫」
「そうか。早くよくなればいいけどな」
少しくろに近づくと、彼の顔色が変わった。そして突然寝床に置かれた木桶に吐瀉物をぶちまける。背中を摩ると少し楽そうにした。
「駄目か。いつもより入念に洗ったつもりだったんだけど」
「おまえの臭いは強いからな。おれが言えたクチじゃないけど」
「……嫌か? 俺の臭い」
その言葉に、ゆっくり振り向く彼。汚れた嘴と、物悲しい眼。
「嫌どころかむしろ大好きなはずなのに……体が拒否するんだ。こんなもどかしいことはないよ」
「俺もだ……。抱きたいのに抱けない。でもお前から離れるなんてできない」
手で顔を覆い、大息をつく。いつまでこんな日が続くのか、不安でならなかった。
日が経つにつれ、幸いにも次第にくろの症状は治まり、快復に向かいつつあった。まともに食べられるようにもなり、まだ筋トレはできずとも少しずつ普段の生活に戻りつつあった。それでもくろは、時折浮かない表情を見せていた。何があったか聞いてみても、大丈夫と返したりはぐらかしたりするばかり。そういった仲になって日が浅いから、打ち明けられないようなことがあっても仕方ないとは思っていたが、俺も心の中でどこかモヤモヤを抱えていた。
そしてある日、俺はくろの体の変化に初めて気付いたのだ。
「お前……その腹どうしたんだ?」
くろはぎょっとして羽毛を逆立てる。思わず手で隠した部分は、先の療養で控えめになった腹筋の盛り上がりを残しつつも、本来の体の輪郭に対して丸く飛び出していた。口をつぐんだままの彼。何かの病気かと聞くと首を横に振る。じゃあなんだと案じていると、彼はか細い声で呟いた。
「まさかとは……思うけど……卵、できたかもしれない……」
「えぇっ!?」
想像だにしない告白を受け、言葉を失う。頭の整理が付かない。
「故郷を出る前に身籠っていたおれの幼馴染と、症状が似てるんだ……! おれはオスだからそんなわけないって言い聞かせてたけど……腹が膨らんできたらそう思うしかないだろ……?」
声は震え、目が潤んでいる。このところ彼が浮かない表情をしていたのは、こういうことだったのか。医者も彼がオスだったから、診断できなかったとなれば合点がいく。俺も突然告げられた現実を受け入れられる状態ではなかったが、震えるくろを抱き締める。その瞬間、ふと初めての交尾で種付けしたあのときが頭に思い浮かんだ。快楽が頂点に達して、急に視界が眩しくなった。よくよく思い返すと、その光はくろの体内から発せられていたのではないかと。そしてはたと確信する。
「やったな、くろ!」
明るい口調で、彼の背中を叩いた。彼は目を丸くしている。俺は満面の笑みを浮かべた。
「森の神様が、俺たちに幸せを授けてくれたんだ、そうに違いない!」
「神様が……?」
「ああ。もしかすると、俺があの祠と森を大事にしてきたお礼に、お前と出会って、愛の証まで授けてくれたのかもしれない。そうだ、絶対そうだ! なんかめっちゃ嬉しくなってきた!」
「さつま……!」
くろの目から大粒の涙が流れ落ちる。
「悲しむことなんかないんだ。全力で喜ぼうぜ! 俺たちの愛が本物だって、神様がお墨付きをくれたんだからな!」
「ありがとう……なんか、胸が、あったかい……!」
くろは俺に身を任せ、涙を流した。その姿がとても美しく、愛おしさがひとしおだった。
そして、祠へと足を運ぶ。たくさんの木の実を供えて、愛の証をくろの体に宿してくれたことに精一杯の感謝を込めて手を合わせた。瞑っていた目を開けると、祠がほんのり光っているように見えた。そしてその帰り道、手を合わせている途中で胎の中がじんわり温かくなったとくろが言う。その言葉をもって、これが神様からの贈り物であることが揺るぎないものとなった。何としても幸せにならないとな、そう声をかけると、くろは笑顔で頷いた。
さらに日が経ち、くろの腹部はその大きさを増していた。脂肪によるそれとは異なる張りのある膨らみに、宿している命の、小さくも力強い何かを感じずにいられない。手を触れると、心地よい温かさが伝わった。
「いつ産まれるかわからないんだ。無理するなよ」
「わかってる。けどやっぱ筋トレしたいなー」
つわりを起こして以来ご無沙汰な筋トレを渇望しているくろ。無論そんなことをしたら母体に負担がかかってしまう。オスに母体と呼ぶのもどうかと思うが、それはまた別の話。
「体が元に戻るまでの辛抱だな」
「ちぇー」
「その代わり俺が、新しく増える家族のためにもっと強くなってやるからよ」
と彼に笑顔で力こぶを見せた。
「おまえに追いつくのは大変そうだ」
「俺が子育てしてる間に存分にやればいいさ」
「そうしてくれると助かる」
穏やかな笑みを見せながら腰に腕を回し合い、並んでゆっくり洞穴へ入っていく。地べたに座るのもつらいだろうと、木と蔓で作った椅子にくろを座らせる。この間まで引き締まって腹筋が盛り上がっていた腹部がこうも丸くなっては、色々と支障が出るのも当然だ。至らぬ部分もあるが、可能な限り気を配るように努めた。
黒ずんだ羽毛から覗く彼の臍はぷっくり膨らんでかわいらしい。こうして身重のくろを眺めていると、父親になる喜びと不安が入り混じる。オス同士では味わい得ないと思っていたこの気持ちを味わえていることに、改めて森の神様に対して強い感謝の念を抱いていた。
そして使わなくなったもう一つの寝床。いつ使ってもいいように定期的に新しい藁に取り替えている。おそらく彼は腹を痛めて新たな命を産み落とすことになる。その際に安心して臨めるように。俺ができるささやかな気遣いの一つだ。
外を見ると橙色の光が差し込み、夕暮れ時を告げる。夕飯の準備をして、並んで食べる間に外は暗くなる。満腹になって一緒に空を見上げると、満月が顔を出していた。今夜は仄かに明るくなりそうだ。寝床を整え、ふたり並んで仰向けに寝転がる。そして触れたくろの腹は、あっと息を飲む程の大きな膨らみを手指に伝えた。
「近そうだな」
「ああ」
「不安か?」
「当たり前だろ」
くろが顔を横に向けて俺をじっと見つめる。
「さつま、もし産まれそうになったら、ずっとそばについててくれよ」
「おう。そうじゃなくてもずっとついてるぜ」
「ありがとう……」
俺の手を握る両手は、その力を強くした。少し震えているようにも感じる。空いた手を、その上にそっと乗せた。そのままゆっくり、俺たちは夢の中へと入っていった。
それは真夜中のこと。隣から聞こえる呻き声で目が覚めた。はっとして目をやると、眉間に皺を寄せて腹を押さえるくろ。
「おい、大丈夫か!?」
「今急に腹が痛く……っく……!」
外は満月で青白い。この感じだと、産気付いたに違いない。今日みたいな満月の日に産まれた話もたくさん聞いてきたから、この子もおそらくそうだろう。火を小さく噴いて灯りを点し、ゆっくり彼を起こして体を支えながら産卵用の寝床へ連れていく。痛みを発している最も大きくなった彼の腹部を、優しく撫で回す。替えたばかりの藁の上に、くろを仰向けに寝かせた。不安で心拍が速くなるのを感じながら、彼の手をぎゅっと強く握る。
「さつま……!」
汗を滲ませ、浅い呼吸の彼が、俺を見つめる。
「くろ。俺は、俺はただお前を見守ることしかできない……苦しさを分け合いたいけど、それすらも……」
「いいんだ、さつま……」
痛くて苦しいはずなのに、くろは笑った。
「こうしておまえがそばにいるから、どんなにきつくたって、おれたちの子を産んでみせる」
握る手は不意に力を込める。くろは表情を歪めていきみ、産卵に臨む。絞り出される彼の声が耳に入る度、俺の心はきゅっと締め付けられる。
「ぐう、ううぅぅっ!」
くろの握力が強くなる。そして閉じられた嘴に力が入っているのが見ててもわかる。彼の股間が忽ち濡れて、ねっとりした体液が広がり出す。そろそろ胎内から、卵が動き出すだろう。俺はしきりに励ましの声をかけつつ、くろと呼吸を合わせた。
「おりて、いくぅ……! ううぅっ!」
くろが苦痛の中、汗だくの体で感じている生命の誕生への道筋。俺はただ、それを見守るだけ。父親になろうとするオスのなんと無力たるや。それでも必死に、彼に寄り添い続ける。無力なりに、愛しい彼と産まれようとする命に対して、精一杯できることをやりたいから。
「あぐっ! ふーっ! ふーっ!」
卵は彼の中をスムーズに移動しているわけではなさそうだ。俺は立ち上がり、くろを跨いで両手を伸ばし、彼の両手を強く握る。これで幾分力も入れやすいだろう。
「力いっぱい踏ん張れよ!」
「ああ……これなら力が入る……ふぐおぉぉぉっ!」
彼のいきみに一層力が籠る。釣られて俺も体に力を籠める。籠めるあまり失禁してしまったが、そんなことに意識を回している状況ではない。そしてとうとうびしょ濡れの赤黒い陰毛を掻き分けて、橙色の殻が鳥穴から顔を覗かせる。
「出てきたぜ……卵……!」
くろは頷き、いきみ続ける。徐々にその姿を現していくにつれ、彼の顔に苦痛の色がはっきり出てくる。それもそのはず、今見えている部分でも、俺が彼の胎内で種付け寸前に最大まで膨らんだチンポよりも断然大きな直径を誇っている。
「ぐああっ! 裂けるッ!!」
叫びながら力を込めた瞬間、鳥穴は卵の大きさに負けて裂け目ができ、粘りのある体液を赤く染め始める。そして裂け目を少し拡げて卵は最も太い部分を空気に晒す。
「もう一息だぜくろっ!!」
大きな声で彼を励まし、そして彼は渾身の力を汗だくの身に籠めた。
「ふぐおああぁぁぁぁぁっ!!!」
卵が徐々に動き出し、そしてとうとう陰部から解放されて藁に着く。残っていた粘液が血を混ぜ込んで、開いた鳥穴からドロッと流れ出した。それを目の当たりにした瞬間、心の奥底から経験したことのない程の大きな喜びが湧き上がる。
「やったなくろぉぉぉぉぉ!!!」
嬉し涙を抑え切れず、産卵を乗り越えた最愛の存在を優しく抱き締めた。
「あー苦しかった……てかそれより……お湯とか準備したのか?」
「へ……あっ!」
抱かれた彼は思いの外冷静だった。お湯の準備を完全に失念していて、父親になって早々ヘマをやらかしてしまった。慌てて水を汲み、俺の炎で適温のお湯にする。ついでに薬草も摘んできた。
藁にお湯を少し含ませ、産んだばかりの卵に付着した汚れを拭き取る。初めて持った卵は、ずっしりと生命の重みを両手に感じ取れた。そして傷付いた彼の股間をお湯できれいにしてから、裂けた部分に揉み込んだ薬草を貼り付けていく。強烈に沁みるのか、くろの体が大きく跳ねて呻きが漏れた。生臭く汚れた一部の藁を新しいものに替えて、ひとまず状況は落ち着いた。
「改めて、よくがんばったな」
「ああ。おまえがいなきゃどうなってたことか。ずっとそばで支えてくれてありがとう、さつま」
「とんでもない……」
声が震えてしまう。そしてくろにも、産み落としたばかりの愛の結晶を、そっと手渡す。その大きさと重さに目を丸くするも、すぐに慈愛に満ちた表情に変わった。
「やっと出会えた。おれたちの子供……」
堪えられずに俺の目から涙が溢れる。卵を抱く彼に抱擁して、歓喜の声を張り上げて泣いた。くろが俺の体をさらに寄せ、初めての親子のひとときを過ごした。煌々と青白い&color(#00aabb){満月};の昇る、夜も深い頃合いだった。
卵が産まれれば、孵化するまで温めなければならない。その役割は自ずと産褥中のくろが担う形となる。その彼も産卵による陰部の裂傷に伴う感染症のリスクが付き纏うため、気が気でなかったが、彼は思う存分筋トレしろよと後押ししてくれた。代わりに卵は彼に委ねる他、傷口を洗って薬草を貼り替える作業は進んで俺が行った。こうして一日一日が過ぎていく。心配していたくろの体調だが、発熱や諸々の異状は見られず、そして傷も次第に癒えていく。五日程経つ頃には、くろも少しずつ体を動かせる状態になっていた。
「そろそろ俺にも温めさせてくれよな」
と彼にお願いする。すると快く俺に卵を預けてくれた。
「まだ病み上がりみたいなものだからな。無茶すんなよ」
「わかってるって」
くろは意気揚々と準備運動を行うが、痛そうな声が飛び出す。やはりブランクの影響は小さくはなさそうだ。
「こりゃ筋トレ以前の問題だ」
「ま、その辺でも歩いて気晴らしすれば? ずっと中に籠ってばっかだったろ?」
「そうするかな」
一通り準備運動やストレッチを終えるや、くろは外へ歩き出した。俺は愛の巣でそっと包み込むように卵を温め続ける。この中からどんな子が生まれてくるのか、想像する度に心が躍る。しばらくして、くろが外から戻ってきた。
「体力めっちゃ落ちてる……」
肩を落として溜息をつき、俺の隣に座る。
「そりゃそうだ、あんな長い期間箱入り同然だったもんな。時間があれば俺が温めるから、その間に少しずつ取り戻せばいい」
「ありがとな、すごく助かる。この子と一緒に駆け回って、自慢できる体を作らなきゃな」
「頼もしい&ruby(、、){ママ};になれよ」
「おいおい、あくまでおれは&ruby(、、){パパ};だぞ失礼な!」
むすっと臍を曲げるくろを見て笑う。
「ま、&ruby(、、、、){パパ同士};がんばろうぜ」
俺が拳を出すと、彼も拳を出してコツンと触れた。
それから日時が過ぎていき、交代で卵を温め続けるが、新月を過ぎても卵はいまだに静かなままで、さすがの俺たちも微かな不安が頭をよぎるようになる。一方でくろは体の調子が戻ってきて一部の筋トレを再開するまでになっていた。
温め始めて三週は過ぎた上弦の頃合い、俺は木の実を抱えて、森の奥の祠に足を運んでいた。木の実を供え、普段と同様目を瞑って手を合わせる。だがこの日は、森での暮らしに感謝するだけでなく、抱えている不安をも吐き出した。
「神様……そろそろ卵が孵る頃なのに、その気配がないんです。孵ると信じて温め続けてますが、もしかして無精卵だったり、成長が止まってたりしてるんじゃないかと、心のどこかで思ってしまう自分がいるんです……」
俺の口から、細く長い溜息が漏れた。
「神様……俺たちはこのまま卵を温め続けて大丈夫ですか?」
すると俺の額に触れるものを感じる。途端に頭の中で何かが映し出される。そこには俺たちの住処で、笑顔で駆け回る俺とくろ、そしてもう一匹の小さな存在――
はっと我に返る。見回すと、普段と何も変わらない祠とその周辺。再び目を瞑り、頭の中で再生された映像を思い返すうちに、目が潤んでくる。かっと開眼して、大きく頷いた。
洞穴に戻り、目に映るくろは不安を滲ませながら卵を抱いていた。俺は背中から、彼を抱き締めた。
「大丈夫、ちゃんと孵るぜ」
「なんでそう言い切れるんだ?」
振り向く彼の頬に、軽く口付けする。
「教えてくれたんだ、神様がな」
「神様が?」
「ああ。俺に見せてくれたぜ、俺とお前と、俺たちの子供がすぐそこを駆け回ってるところをな」
微笑みながら、くろが抱えている卵をそっと撫でた。
「神様が見せてくれたんだ、信じて温め続けよう」
「うん……」
彼とバトンタッチして、俺が卵を温める。くろはそのまま外へ出る。彼もおそらく祠へ行くのだろう。今はとにかく、神様を信じるしかない。俺たちの間に卵を授けてくれた神様なのだから。動く気配のない卵を、愛情を込めて再び優しく撫でた。
さらに日が経ち、そろそろ月が満ちる。森の木々にうっすら&color(#a79600){秋};の色合いが差し始めて、実りの時期に差し掛かろうとしていた。この日はあいにくの雨。こういう日はできる筋トレも限られる上に、用がないときは大抵暇を持て余す。朝飯を食べ、洞穴の掃除も済ませたので、雨の中ちゃっちゃと木の実を採ってしまおうと籠を手にしたときだった。
「さつま!」
突如くろが大声を上げる。見ると、彼の表情が明るい。もしやと駆け付ける。
「見ろよ、卵が動いた!」
目を凝らして観察すると、彼の手の中にある卵が、微かに動いている。間違いない、神様が教えてくれた通り、この卵は生きている! 俺はほっと胸を撫で下ろした。
「このまま気を抜かずに温め続ければ大丈夫そうだな」
「ああ。でもここまで長かった……」
長らく抱えていた不安が解決したときの脱力感は相当なものだった。けど殻を破って出てくるまではまだわからない。引き続きくろに卵を任せ、雨の中急いで木の実を採りに行った。
急いでいるとはいえ、収穫に適したものを採っているうちに体は雨に濡れ、羽毛の下の筋肉がくっきり浮き立つ。手を止めて凝視する自分の体。やはり子供ができる前よりも屈強ぶりを増している。守りたい者が増えたことによる筋トレの意識の変化の大きさに、我ながら驚くばかりだった。だからこそ、無事に孵って欲しい。今はただそれだけだ。手を止めて祈るうちに徐々に冷え始める体。このままでは風邪を引く。急いで洞穴に戻り、炎で水気を飛ばす。
「殻にひびが入ってる!」
突然のくろの叫びに思わずビクッとする。見てみると、殻の一部がひび割れ、それは徐々に広がってきていた。
「なんだこいつ、動き始めた途端にペース上げてきたな」
思わず顔がほころぶ。ひびが段々広がり、そしてとうとう殻の一部が割れて短い嘴が飛び出す。その先端付近には、殻を割るために備わった、&ruby(らんし){卵歯};と呼ばれる白く硬い部分がはっきり見て取れる。
「がんばれ、がんばれ!」
生まれ出ようとする命にエールを送る俺たち。殻に開けられた穴は次第に大きく広がり、とうとうその瞬間が訪れる!
&color(#ff9c00){''ピイピイピイ!''};
卵が孵って、アチャモが生まれた! 親になった俺たちの喜びはひとしおで、表情も眩しい。そして瞑られていた我が子の目が、ゆっくり開く。この子の初めての視界に映り込んだであろう俺とくろ。しばらく目をぱちくりさせた後、すり寄って来た。生まれたばかりの体から発する、俺たちよりも強いぬくもりが肌に伝わる。その姿がぼやけ、目から大粒の雫が零れ落ちた。森の神様がもたらした奇跡によって授かった一つの命。大事に、そして立派に育て上げようと、泣きじゃくりながら誓い合った。
その日の夜、降り続いた雨が嘘のように晴れ渡り、&color(#aaaa00){名月};と謳われる、昇り始めた大きな満月が空を照らし出す。その下で、俺たちはこの子に「あまくさ」と名を付けた。生まれた時点で体の大きな彼は、将来俺たちよりも大きく強く育つと確信した。
後日、周りに棲む者たちに新たな家族を紹介した。言うべきか迷ったが、正直にこの子を授かるまでの一部始終を話すと、言わないなんて水臭いとお叱りを受けた。そして森の神様に愛された俺たちを大いに祝福した。子育て経験世代も多く、わからなければ力になると、心強い言葉もたくさんもらった。なんて幸せ者なんだ。これもひとえに、この森と小さな祠を大事にしてきた報いなのだろう。そしてこれからもこの地を愛し、感謝を忘れずに新たな家族と暮らしていこうと、強く心に決めたのだった。
あまくさは俺たちの愛情を受け、秋の森に抱かれてすくすくと育っていく。時折子育てに頭を抱えることもあったが、周りの支えもあって一つずつ乗り越え、家族の絆を深めていった。くろもかつての屈強ぶりを取り戻し、俺と張り合えるようになった。技をぶつけて火の粉を散らす様を目にしたあまくさは、将来俺たちのように強くなりたいと目を輝かせた。
本格的な実りの時期が過ぎて冬も目前に迫る、ある晴れた日。あまくさを森の仲間たちに預け、ふたりで祠の掃除や手入れをしていた。くろにとっては初めての祠の手入れのため、彼に教えようと思ったが、どうやらやったことがあるような感じだった。落ち葉を払い、周囲を覆う枯れ草を取り除き、着々と手入れを進めていると、くろの手が止まった。気になって声をかけてみると、彼は祠の背にある謎の模様を指差した。
「この模様……おれがきれいにした祠と同じだ……!」
「えっ!?」
思わず耳を疑った。彼は祠について話し始めた。
「おれが生まれ育った森におれだけの秘密の遊び場があって、ある日、草木に埋もれた祠を見つけてきれいにしたんだ……」
その祠にも、これと同じ模様が確かにあったと、くろは振り返る。
「遊ぶ度にお参りして、それは森を出る直前まで続けてたんだ。そのおかげなのか、荒れていた森が少しずつ豊かになったように感じてたんだけど……」
彼の指が模様に触れた瞬間、動きが止まる。
「くろ? 大丈夫か!?」
手が彼の体に触れると、忽ち腕を伝って何かが頭の中に流れ込む。そして脳内にある光景が映し出された。
――森の中? ここじゃないどこかの森、おそらく夏と思われる青々とした草木、そしてそこに棲むポケモンたち。とても豊かな様子が見て取れる。木々を掻き分けて奥へ入り、辿り着いたのは少し開けた場所。そこには手入れの行き届いた小さな祠が鎮座され、ポケモンたちが木の実を供え、何かを祈っているようだ。その中にはアチャモやワカシャモの姿も見受けられる。もしやと思い、祠に目をやると、その側面にあの模様が……!
晩秋の冷たい風が吹き抜け、はっと正気に戻る。視界は元に戻り、手入れ中の祠が映る。そして目に映ったくろ。瞑られた彼の目から流れ落ちる一筋の涙。
「そうか……あの森はこんなに立派になったのか……!」
そう呟く声は、震えていた。目をゆっくり開き、吸い込まれそうな程深く青々とした瞳が俺に向けられる。
「さつま……。あの祠……おれがいなくなっても大切にされてた……」
「ああ。俺も見えたぜ、お前の故郷の豊かな森を……そして、きれいな祠とそれを守るみんなを……!」
「うれしい……すごくうれしい……!」
涙ながらに、俺に抱き着く。目頭を熱くしながら、愛おしい彼の頭から背中にかけて、優しく撫でる。
「くろ、森の神様はお前を見捨ててなかった。お前にもちゃんとご褒美をあげていたんだな……」
「ああ。故郷を追い出されて、つらい放浪の中でおまえの噂を聞いたのも……この場所に足を運んで、おまえと一戦交えて、一緒に暮らして、体の相性も最高で、ましてや子供までできたのも……単なる偶然じゃなかったって、わかったよ……!」
「くろ……!」
「さつま……!」
静かに熱い抱擁を交わした。遠く離れた二つの祠に導かれ、こうしてこの地で出会えたことに、言葉では足りない程の感謝と喜びを、熱く胸に抱いていた。
祠の手入れを終え、俺たちはあまくさを連れて再び祠を訪れた。初めて見るそれにつぶらな目を輝かせて興味津々。俺は愛し子を抱き上げ、祠に目をやる。
「あまくさ。これは『ほこら』って言って、神様が住むところなんだ」
「ほこら?」
「うん」
あまくさは祠に瞳を凝らしつつ目をぱちくり。
「……かみさまは、こんなせまいところにすんでるの? ぼくはやだなあ」
「おいおい……」
思わず苦笑いを浮かべる俺。その横でくろが腹を抱えて笑っている。何がおかしいのと言わんばかりに首を傾げるあまくさ。
「神様はずっとそこにいるわけじゃないぞ。この広い森のどこかで、のんびりしてるはずさ。おれたちの目には見えないけど」
くろがそう付け加えるも、幼い子供にはまだまだ難しすぎるようだ。
「神様っていうのは、この祠の辺りに棲んでいるポケモン、時には人間たちが神様を信じて、そして一日一日を無事に暮らせてありがとう、と思う気持ちがご飯になるんだ。そして俺たちで、家を掃除するようにこの祠をきれいにして、神様が気持ちよく住めるようにする。神様が元気だと、森も元気になるんだよ」
「へーえ。かみさまも、ぼくたちとおなじなんだね!」
「そうだな」
あまくさのニコニコ笑顔に釣られ、俺たちの表情も柔らかくなる。彼をくろに預け、籠に入れた木の実を祠にお供えする。
「見てな。こうやって採れた木の実を神様にお供えするんだ。そして、ありがとう、とこの祠に言うんだよ」
するとあまくさはくろの腕を飛び出して着地し、祠の目の前へと歩く。
「ありがとう!」
祠に向けて元気よく声を上げた。その様子を見て俺たちの表情は緩みっぱなしだ。するとあまくさが振り向いて急かした。
「ほら! パパたちもありがとうってかみさまにいわなきゃ!」
「おっと、そうだな」
俺たちも手を合わせて、ありがとう、と声に出す。あまくさも手を合わせようとするが、アチャモに合わせる程の手がないのはご愛嬌。そしてそのまま目を瞑り、これまでのことに対する様々な思いを込めて、手を合わせ続ける。目をゆっくり開けると、祠の前に小さく仄かに光る何かの姿を捉える。はっとして見開くが、既にその姿はなかった。
「かみさまにつたわったかなあ? ぼくたちの『ありがとう』」
お参りを終えた帰り道、そう俺たちに聞いてきた。大きく頷いて答える。
「うん、ちゃんと伝わってる」
「よかったー!」
ピョンピョン飛びながらはしゃぐあまくさ。気をつけろよ、と幼くして健脚の片鱗を見せている彼に注意するくろ。前へ前へと跳んでいき、くるりと振り向いた。
「ぼくもあしたから、さつまパパとくろパパといっしょに、かみさまにありがとうをいいにいくよ!」
「そうかそうか!」
「おまえも一緒だと、神様もすっごく喜ぶぞー!」
「やったあ!」
迫り来る冬の寒さを吹き飛ばす笑顔で、横に並んで家路についた。
訪れた長く厳しい&color(#aaaaaa){冬};の間も、俺たちは三匹揃って祠にお参りを続けた。一見すると生の息吹を感じられない光景の中、時に雪を被って祠はそこに鎮座し続けていた。お参り以外は用事のない限り、洞穴の中でじっと寒さをやり過ごす日々が続いた。あまくさにとっては初めての冬。凍えて病気にならないよう、俺とくろで温かく包み込んだ。
そして日差しが柔らかくなり、花の季節が訪れる。待ってましたとばかりに外へ飛び出す俺たち。その足は真っ先に祠へと向かっていた。途中に咲く初めて見る花の数々に、あまくさは――時にはくろも――興味津々。花の名前を教えたりしながら、俺も&color(#ff00dc){春};を存分に謳歌していた。
祠に到着するなり、保存食である乾燥させた木の実をお供えして手を合わせる。彩り鮮やかな花々と新芽の若草色に囲まれた祠は、巡って来た春を喜んでいるように見えた。
お参りを終えるなり、三匹で洞穴の外の開けたところを笑いながら駆け回る。のびのびとした親子の時間だが、ある光景を目にしてはっと立ち止まる。卵だったあまくさが孵る気配がなく、祠の前で不安を吐露したあの瞬間、頭の中に映った光景そのものだったのだ。あれが俺たちの未来だったと気付いた瞬間、目頭が熱くなった。
「おーいどうしたさつま!?」
「おいてっちゃうよー!」
くろとあまくさの声で我に返り、目を濡らすものを拭った。
「ごめんな! 今行く!」
慌ててその背中を追いかけ、走り出した。
昼を過ぎてもあまくさは元気に駆け回る。ふたり並んで座り、それを見守る。
「すくすく元気に育ってるな」
「ああ。本当によかった」
地面に着いた俺たちの手が、重なる。
「森の神様がおれたちを引き合わさなかったら、今頃こうしてあの子を見ることもなかったもんな」
「もうこればっかりは毎日感謝してても足りない。体の動く限りは毎日祠にお参りして、神様の住むこの森とともに生きようぜ」
くろは大きく頷いた。しばらくあまくさを眺めていると、くろが俺に身を寄せてきた。
「……なあ。今夜、あまくさを寝かし付けたら……」
頬を染めてはにかむ姿に、不意に高鳴る胸。
「なんだお前、ウズいてんのかよ。そうだな、あれだけ駆け回れば今晩ぐっすりだろうし……久しぶりに楽しむか、&ruby(、、、、、、){俺たちの時間};」
ニヤッと笑みを浮かべた。そう、今は「そういう」季節。俺たちとて例外ではない。見つめ合うと、胸の中で熱い炎が燃え上がる。あまくさに気付かれないよう、俺たちはそっと&ruby(くちづ){嘴付};けした。
――花と新緑の香りを含んだ風が吹き抜ける。&color(#009900){''森''};に導かれて豊かな自然の中で&color(#ff00ed){結い&ruby(やわ){和};され};、やがて強い&color(#ff0000){''絆''};となった三匹を、そっと優しく見守る者がいた。
[[おや?>https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15215894#9]]
#hr
【原稿用紙(20×20行)】73.6(枚)
【総文字数】 24426(字)
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【漢字:かな:カナ:他】35:59:2:1(%)|8790:14655:555:426(字)
*あとがき [#A2GiFHj]
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。人ちんバシャーモ×総排泄孔バシャーモはいつか書きたかったネタだったので、出力できてスッキリしました。本来は鶏について調べているときに「''鶏姦''」という言葉を知って、それをテーマに書いていたのですが、それ自体にネガティブな意味合いがあることと、話の雰囲気にそぐわなくなってきた点から、副題に使用するに留めることとなりました。
前回の仮面小説に引き続き産卵描写を書くことになったので、違った視点やシチュエーションで書けて、楽しかったです。いざ投稿するとなるとドキドキものですが。ちなみにこの後投稿予定の作品も産卵場面があります。まさかの産卵三部作。
さて、お気付きの方もいらっしゃったかもしれませんが、さつまを始めとした主人公家族の名前は、国産鶏の品種名から名付けています。
さつま:薩摩鶏(さつまどり:鹿児島県)
くろがしわ(くろ):黒柏(くろ「か」しわ:山口県)
あまくさ:天草大王(あまくさだいおう:熊本県)
実は&ruby(つがい){番};で薩長同盟結んでたんですねえ⚣
原産地を見ても、くろが九州モデルのホウエン地方外の出身であることと辻褄が合うようにのーみそコネコネしました。
ちなみに鶏の卵は温め続けて三週間程度で孵化します。あまくさの孵化がどれだけ遅かったか、これでよくわかるかと思います。
そして最後の最後に出てきた「結い和す(結ひ和す)」という古語は、古事記、日本書紀よりも古い「ホツマツタヱ」に出てくる言葉で、「結び合わせる」という意味を持つそうです。
とあるブログ情報ではありますが、「和す」自体に「人同士のみならず、自然のあらゆるものとお互い尊重し合って穏やかに共生する」という意味を持つらしいので、森の豊かな自然の中で生きる彼らにぴったりな言葉だと思いました。
この辺の情報を踏まえた上で再度お読みいただければ、一層楽しめるかと思います。
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