ポケモン小説wiki
春と災い の変更点


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 僕はアブソル

 みんなからは災いを呼ぶとか言われてるけど
 本当は災いを感知するだけなんだ

 それをみんなに伝えたいだけなんだ

 でも分ってもらえない

 災いを呼ぶようなやつに近寄るやつなんていない

 だから僕はいつもひとりだ

 父さんも母さんもどこかにいっちゃった

 すごく遠いところにいっちゃったんだって
他のアブソルから聞いた


 父さんも母さんもひどいよ

 僕をおいて遠くにいくなんて

 僕もいきたい

 でもどこなのか分らない


 僕の目から水があふれる

 これでもう何度目なんだろう


 でもじっとはしていられない

 アブソルはぜったいに災いにひきよせられるんだって
昔父さんがいってた

 この角がじんと熱くなって

 頭にまで伝わってくるんだ


 どうせ聞いてもらえないのに
どうして伝えなきゃいけないんだろう

 いじめられるかもしれないのに
どうしていかなきゃいけないんだろう

 どんなに考えても、そのときの僕には分らないことだった









 そこには沢山の木があった

 木にはピンクの蕾がそこらじゅうについている

 でも、花が咲く前に災いでみんなダメになちゃうかもしれない

 そう思うとすごく悲しい気持ちになった

 どっちにしても僕はこんなところで暮すことはできない

 嫌われもののアブソルは山奥でしか暮しちゃいけないって
昔母さんがいってた

 僕がすむ山には花なんて咲いていない

 僕はきれいな花を見ることもできない


 また僕の目から水があふれてきた

 見えていた土と石がぐにゃぐにゃになる


──ねぇ君、どうしたの?


 そんな僕の耳に、聞いたことのない声が聞こえてきた

 顔を上げてみてもぐにゃぐにゃしたものが見えるだけ


 僕は水を足で拭いた

 そこにいたのは六本の尻尾のあるきつねだった


 僕はすぐにはなれようとした

 災いを呼ぶと思われてる僕に普通に
話しかけてくるなんておかしい

 きっと僕を仲間のところに連れていって
みんなでいじめるつもりなんだ

 そんなのぜったい嫌だ


──待ってよ。何がそんなに悲しいの?


 きつねは僕の前に走ってきた

 その目は僕を気の毒そうに見ていた


──君なんかには分らないよ


 僕は思わず大声を出していた

 きつねの目を見ていたら
なんでかくるしくてイライラした


 きつねは何もいってこない

 下を向いたまま黙っている

 やっぱり僕を騙すつもりだったんだ

 僕はそのままきつねの横を歩いていこうとする


──そうだよ

──私には分らない

──でも、誰かが悲しんでいるのを見ているだけなんて嫌なの

──私にだって君になにかできることがあると思うの


 信用できない

 僕をだますつもりなんだ

 災いを呼ぶやっかいものに
こんなに優しくしてくれるはずないんだ


──じゃあ、僕と友達になれるの?

──ずっと一緒にいてくれるの?

──僕はひとりで寂しいんだ

──君が友達になってよ


 僕はイライラしたままきつねにそういった

 だまそうとしてるなら
そんなことできるはずないから

 これできつねだって僕をだますのを
あきらめるはずだ

 僕はそう思っていた


 でもきつねは
僕をみて笑ったんだ


──いいよ

──それが私が君にできることなら

──私は君の友達になるよ








 その日きつねは本当に僕のそばにずっといてくれた

 僕がこたえないのもかまわないで
ずっと僕に話しかけていた


──どうして僕のそばにいるんだ

って聞くと

──友達なんだからそばにいたいと思うのはあたりまえだよ

っていって笑った


 どうしてこの子は僕から逃げないんだろう

 どうしてこの子は僕をいじめようとしないんだろう

 僕には分らなかった

 でもまだ信用はできなかった

 だから僕はこう言ってやったんだ


──僕は災いを感知するんだよ

──僕のそばにいたら君はひどい目にあうかもしれないんだ


 それでも
その子は


──そんなのかんけいないよ

──君が一緒にいてほしいっていったんだから

──そばにいることが私のできることなんだから

──私は君の友達だよ



 きづいたら
 また僕の目から水があふれていた

 今日は本当にたくさん水があふれてくる

 でも

 そのときの僕の水は
とってもあったかく感じた









 僕はその子とたくさん遊んだ

 今まで怖くていけなかったところにも
友達と一緒なら怖くなかった

 毎日毎日いっぱい遊んで
またたくさんの木の下にもどってくる

 小さかった蕾は少しずつ大きくなって
もうあと何日かしたら咲きそうだった


──花が咲いたら一緒に見ようね


 その子は木をみあげてそう僕に笑って見せた


──うん、約束だよ


 僕も笑って言葉をかえした


 そのときは本当に楽しかった

 いままでのことがウソなんじゃないかと思うくらい
楽しかった

 これからもずっとこんな日が続いてほしい

 僕はそう思っていた








 あるときから
その子はくしゃみやせきをたくさんするようになった

 くしゃみが多くなるのにあわせるみたいに
風はどんどんあったかくなっていった

 せきがひどくなるのにあわせるみたいに
1日の時間がのびていった

 あったかくなると植物は花粉をとばして
くしゃみやせきがでるようになる

 昔母さんにそう教えてもらった


 でも
 僕はアブソル

 その子のことが心配で心配でしかたなかった

 花粉でくしゃみやせきがでているわけじゃないのかもしれない

 はじめての友達が傷付くところなんてみたくない


──やっぱりここをはなれたほうがいいよ


 僕と一緒にいて友達が傷付くなら
はなれていてほしい

 そうしたら僕はまたひとりになるけれど
友達が傷付くくらいならひとりになったほうがよかった

 でもその子はいつものように笑っていったんだ


──花粉の災いなんて春になったらいつでもあるよ

──それに

──まだ花を一緒に見ていないじゃない

──約束、まもるよ


 そのときのその子の笑顔は本当に
明るくて元気で

 僕も今度はきっと何もおきないだろうと
考えなおした


 でも

 そのせいで僕はすぐ後悔することになるだなんて
 そのときは思っても見なかった






 それから数日たったある日

 僕はその子のところに走っていた


 朝あの木のところにいってみたら
花が咲いていたからだ

 全部ではなかったけど
僕はうれしくてうれしくて

 その子のところにいったんだ


 でも


 そのときにはもう


 その子は冷たくなっていた









 ……あれからもう何年経っただろうか。
 今でもここには、綺麗な花を咲かせる木が残っている。
 でも、彼女はもうここにはいないのだ。
 ここだけじゃない、この世界のどこを探しても見つかりはしないのだ。

 当時の俺の記憶はその先からだいぶ曖昧になっている。
 だが、冷たくなった彼女をずっと責めていたのだろう。


──どうして

──約束したのに

──ずっとそばにいてくれるっていったのに

──友達だっていったのに


 そんなところだろうか。

 けど、彼女はなにも悪くなんてない。
 悪いのはみんな、俺なのだ。

 当時の俺は幼いながら、普通に花粉ごときで災いを感知するはずなんてないと無意識に分かっていた。それを俺がもっと気をつけて彼女を安全な場所へ逃がしていれば、彼女は死ぬことなんてなかったのだ。

 彼女は喘息持ちだった。
 花粉症で体に負担がかかって、容体が悪化してしまったのだと思う。今までは乗りきっていたとしても、今回はこうなると俺は予感していたのだ。

 しかし、今更そんなことが分かっても彼女はもう帰ってはこない。



 俺がアブソルとしての役目を……災いをちゃんと伝えなかったからだ。
 そうなると分かっていたはずなのに。

 だから彼女は死んだ。

 俺は友達ができたことにうかれて、油断して。自分の役目を放棄してしまった。




 俺はその経験から、はっきりと分かったことがあった。



 俺には友達を作ることなんて許されていないのだと。

 彼女のような友達を作ればそれだけ一緒にいたい気持ちが高まってしまう。
 そうして役目を放棄すれば傷つくのはその友達であり、俺自身も大きな悲しみを感じることになる。
 俺の話を聞かないでひどい目にあったやつはいたんだろうが、彼女が現れる前はもう自業自得だと割り切ってそこまでの悲しみはなかった。

 つまりは、そういうことだ。

 情なんてものは必要ない。いや、そんなものを使ってはいけない。

 俺達アブソルはただその役目として
 災いを伝えればそれでいい。

 そうすれば助かる者は助かる。信じない者はその酬いをうけるだけなのだ。そんな自業自得のやつらにまで付き合ってやる義理なんて、何処にもない。


 俺は誓った。


 もう二度と、彼女のような者を出さないようにすると。


 苦しみも悲しみも押し殺し、どんな目にあっても災いから守ってみせると。

 それが、アブソルとして生まれた俺に授けられた使命なのだ。

 俺というアブソルに定められた運命なのだ。


 辛くないと言えば嘘になる。運命を恨んだことも数え切れないほどある。

 しかし俺は、俺に初めて生きる喜びをもたらしてくれた彼女への少しでも恩返しになればと思っている。
 つぐないなどにはならない。恩返しにだって本当はなっていないかもしれない。


 ──それでも。

 俺は俺に授けられた使命をまっとうすると決めたから。

 彼女ともう一度約束したことだから。


 俺のことを知ってもらわなくたっていい。何も知らなくていいんだ。

 彼女のようにならないでくれれば。

 それが、俺の幸せなのだ。



 だから、今日も俺は駆ける。

 災いを、伝えるために……。







 咲きほこるピンクの花々は、春の訪れを感じさせた。






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wikiの何処かに投稿していた作品、一応修正して正式に上げることにしました。作者は[[私>トランス]]でした。
私は花粉症が酷くてですね……。そこで何となく、それっぽい作品を書きたいと思い立ったのです。春ということで、アブソルを中心に“出逢い”と“別れ”、そして“心機一転”を意識して表現してみたのですが、如何だったでしょうか。何だか、ハッピーなのかバッドなのか微妙な締めになってしまったのですががが……(苦笑)少しでも響いてくれば幸いです。
相方をロコンにしたのは何となくですね。好きなポケモンでもあり、子供らしい純粋さを出したいということでキュウコンではなくロコンを選んだのだと思います。本当はもう少しロコン要素を表現すべきだったのですけどね……(汗)作風的に独自の表現を入れるのは向かない形になってしまったので……。
兎にも角にも、ここまで読んで下さって有り難う御座いました。今後も鈍足ですが頑張っていきます!

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苦情や質問、誤字脱字の報告、コメントなど何かありましたら此方にお願いしま す。本当に描写下手なのでアドバイスをして下さると助かります。どうか宜しく お願いします。

#pcomment(コメント/春と災い,3,above);

IP:122.133.232.247 TIME:"2014-01-03 (金) 04:01:41" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E6%98%A5%E3%81%A8%E7%81%BD%E3%81%84" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0)"

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