ポケモン小説wiki
新説ポケモン不思議のダンジョン 小さな勇者の小さな冒険 序 の変更点


 &size(25){序章};  
[[まとめページ>新説ポケダンまとめページ]]   作者:[[カナヘビ]]
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 じりじりと照り付ける太陽が上がっている。耳に届く潮騒の響きもなんの気休めにもならないくらい暑い気温だ。横になってなんかいたら当然背中も熱いに決まっていて、砂浜に吸収された熱が僕の背中にまともに当たっていた。
 気が付けばここにいた。そうとしか表現できない。こんなシチュエーション聞いたことがあるけど、生憎僕はヒトだったわけじゃない。だけど、今はこうやって何をするでもなく砂浜で横になっている。
 ここはどこなんだろう?分かるのは海ってことだけ。海ならどこにだってある。起き上がろうとは思わない。いや、なぜか起き上がれない。体に力が入らない。まるで神経回路が根こそぎ無くなったみたいだ。
「おやあ?こんなところで何してるんだい?」のんびりとした声が聞こえた。
 顔すら動かなっかったけど、当事者から視界に入ってきてくれた。のほほんとした表情をしたドンメルだった。なんか少し角張ってる気がする。
「お前こそ何してるんだよ、こんな海で」僕は聞き返した。
「おら?潮の香を嗅ぎに来たんだ。ドンメルなのに海が好きなの?ってよく言われるけどね。君は?」ドンメルが僕に回す。
「…」
 僕は答えられない。何をしているったって、そもそもなんでこんな場所にいるのかすら分からない。
「あれれ?」ドンメルが僕に近づいてきた。あらゆる方向から僕の体を見回している。「ひょっとして君、動けない?」
「…!なんで分かった?」これには驚かざるを得ない。
「だってさ、体がぴくりとも動いてないんだもん。きっとネジがきれちゃったんだね」ドンメルが言った。
「ネジ?」明らかに場違いな単語に思わず僕は聞き返した。
「とぼけなくてもいいさ。外に出る前に充分ネジを巻いてなかったんでしょ?おらの家で回してあげるよ」
 ドンメルは言うと、小さい僕の体の下に頭を潜り込ませて持ち上げた。
「これからどこに行くんだ?」歩き出したドンメルに僕は聞いた。
「サウスタウンだよ。もしかして遠くから来たのかい?」と、ドンメル。
「分からない」僕はこう答えるしかない。
「変なの」
 ドンメルの言うことはもっともだと思う。僕だってドンメルの立場だったらそう思うんじゃないかな。
「そういえば、知り合ったのに自己紹介してなかったよね?おら、イラプス・ナメル。君は?」ドンメル―イラプスが聞いてきた。
「僕はトクス・ラタタ。見ての通り、コラッタさ」僕は言った。
「トクス?いい名前だね。よろしく」見えなかったが、イラプスは笑ったようだ。
「…ああ」
 まずは情報収集が先決だ。ここがどこで、どういう地理なのか?それを知る必要がある。ともかく、今はイラプスに身を任せることにした。
 大きなゲートに「South Town」の文字。夏に合わせたような体裁の建物が並んでいる。
 イラプスはのそのそと街を歩いて行く。
 街の端の方にある洞窟のようなところに向かっている。あそこが住処みたいだ。
 洞窟は大きくもなく小さくもなく、まあ無難と言える広さの場所だった。
「よいしょ」イラプスは僕をうつぶせに降ろす。「待っててね」
イラプスはのんびりと這って行った。
 少し動かそうとしてみるけど、やっぱり全く動かない。一体、「ネジがきれた」ってなんだろう?
 しばらくしてイラプスが戻ってきた。口にネジ、いわゆるぜんまいをくわえていた。
「それ、どうするんだよ」僕は聞く。
「ん?回す以外にないと思うけどな」イラプスは答えた。
 イラプスは僕の後ろに回り込んだ。顔が動かせないから見えなかったけど、僕の体の上にネジを持ってきたみたいだった。
「よっと」不意に、背中に何かがはまるような感覚がした。
 そしてぐりぐりという音と共に回転しているような感覚。
 次第に体に力がみなぎり、指が動かせるようになった。
「終わったよ」背中にはまったものが抜ける感覚がした。
 力を入れてみると、普通に立つことができた。自分の紫色の足は元気そうに立っている。
「今度からはちゃんとネジを巻いて外に出ようね」イラプスがのほほんとした口調で言った。
「巻くって…どうやってだよ」僕はイラプスと向かい合って聞く。
「ん?なんとか背中につけられたら勝手に回るよ。知らなかった?」イラプスは当然のように答えた。
「いや、知るも何も…」
 正直わけが分からない。自分の行動原理とネジの関連性が見いだせない。そもそも、当然のように住処にネジがあること自体意味不明だ。
「なあ、ここはどこなんだよ」僕は再び聞いた。
「え?だから、サウスタウンだよ」イラプスは答える。
「そうじゃなくて、だ。なんでネジと僕の行動原理に関連性があるんだよ。そもそも、ポケモンの背中にネジを置いたらぐるぐる回るって、意味分かんないぞ」僕はイラプスに聞く。
「え?なんでって、当たり前じゃん。おら達おもちゃはふしぎなネジで動いてるんだよ?ネジがきれたら動けないにきまってるじゃん」イラプスは答える。
 ………おもちゃ?
「なんだよ、おもちゃって」僕はおそるおそる聞いた。
「え?おもちゃはおもちゃだよ。つまり、おら達」イラプスは答える。
「つまり、僕達はおもちゃだって言うのか?」僕は聞く。
「さっきから何回もそういってるじゃん。もしかして、頭打った?」イラプスが心配そうに言う。
 お も ちゃ ?
「玩具?」
「うん」
「Toy?」
「うん」
「Oh,mow char !((オーマイガ))」
「うーん、よく分かんない」
 …こほん。
「嘘だろ?本当にここは…おもちゃの世界なのか?」
「なんかへんな聞き方だね。さっきからそう言ってるってば。本当に大丈夫かい?」
 ………。ごつッ、がっ
「うわ、やめなよ!頭なんかぶつけても何も起きないよ!」
「うるさい!僕は早くこの馬鹿馬鹿しい夢から解放されたいんだ!夢でなら死んだって構いやしない!」
「夢じゃないよ!君壊れちゃうよ!」
「止めるなあああ!」
「噴火ぁ!」
「いぎゃああああ!!」
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 特異な状況になるとネタに走ってしまうのが僕の悪い癖だ。結局噴火でダメージを負った体をイラプスの住処で癒すことになった。
「大丈夫かい?特に頭。いろんな意味で」イラプスが聞いてくる。
「至って普通だ」横になった姿勢で僕は答える。
イラプスが僕の顔を覗き込んできた。
「君、本当に出会った時から変だよ?どこから来たのか分からないって言うし、当たり前のことを聞いて頭ぶつけ始めるし…」イラプスが言う。
「どこから来たのは分からない。でも、分かったことが1つだけある」僕は言った。
「ん?なんだい?」
「ここは、僕のいた世界じゃない」
「え?」
 イラプスはいよいよ心配そうに僕を見てくる。
「…気は確かだ。頭を打ったから記憶が混乱してるわけでもない」僕は先手を打った。
「うーん、そんなこと言われてもなあ」イラプスは困った表情だ。
「…どこにいたのかも分からないし、自分がどんなことをしていたのかも分からない。だけど、僕は別の世界にいた。少なくとも、おもちゃのポケモンが住人ではなく、ちゃんとした生物としてのポケモンが存在する世界だ」僕は言った。
「ポ、ポケモンが生物として存在する世界?」イラプスは顔をしかめている「ますます理解できない。ポケモンが生き物だなんて」
「ポケモンが生物なんて当たり前じゃないか。なんで理解できないんだよ」僕はわけが分からないので聞いた。
 イラプスは4足歩行でなかったら頭を抱えていそうな表情で答える。
「うーん、ポケモンは存在しないよ。ポケモンは幻想の世界の生き物さ。おら達の神様、ニンゲン様が作り上げた架空の生き物だよ」
「はあ!?」僕はますます頭を混乱させてしまう。
「常識だよ。おら達おもちゃはニンゲン様に造ってもらって、動作機関と感情を与えてもらえる。動くにはネジが必要だけど、生き物そっくりな生活をおくれるんだ。ポケモンが現実に存在するはずなんてないじゃないか」イラプスは言う。
 ポケモンが幻想?ここはどんな世界なんだ一体?かすかな記憶で、いろんな幻想世界の話を聞いた覚えがあるが、ポケモンが存在しない世界なんて聞いたことないぞ!?
「じゃあ、僕達の今いるこの街とか洞窟とかはなんなんだ?」僕は聞いた。
「ニンゲン様が作ってくれた小さなジオラマさ。広さにして20畳くらいだって聞いてる」と、イラプス。
 20畳と言えば、ヒトからすればかなり広いほうだ。だけど、感情をもった生物(?)が特定多数生活を営むには当然狭すぎる。僕は今ものすごく小さくなっているみたいだ。プラス、海・風・疑似太陽など、惑星を模したカオス要素を小さな空間に見事に再現している。この世界のヒトは凄まじい技術を持っているみたいだ。おもちゃに感情を与えられるくらいだから当然だろうけど。
「おもちゃ…だとしたら、どうなるんだ?」僕は誰ともなく言う。
 僕はまず4足で立ち上がり、続いて2足で立ち上がった。改めて自分の体を見るとともに前足で触ってみる。
 全体的に鉄をベースにした材料になっているみたいだ。筋肉など細かい盛り上がりはオールカットされ、全部がまっ平らになっている。生殖器官があるべき場所も当然何もなくすべすべになっていた。爪は指からそのまま生えているような感じで、体の材質と変わりがない。関節には肘や膝小僧がなくて、外装の下で機械的に曲がっているのが感覚で分かった。顔から生えたヒゲは鉄線みたいな感じだ。目は外装より柔らかい。口をあけて中を触ってみると、これもまた外装と変わらない。汗の味もしないし、唾液が分泌されてくる様子もない。前歯は外装よりかなり固めのようだ。息は一応しているけど、あってもなくても支障はないみたいで、どうやらしゃべるために呼吸があるらしかった。一応、これらの触診における、触られた感覚はあった。
「生き物のとる姿じゃない…」僕は眩暈を覚えて倒れこんだ。
「大丈夫かい?」イラプスが聞いてくる。
 どうやら、おもちゃを作ったヒト達は本当に高い技術を持っているみたいで、僕はほとんど何も理解ができずにいた。
「大丈夫だ。…ちょっと独りにしてくれないか?」僕は言った。
 イラプスの気配が無くなるのがわかった。何も言わずに去ってくれたみたいだ。
 もし、これが僕の知る限りでの、ヒトが体験した2つのことと共通するなら、僕がこの世界に来たのには何か理由があるはずだ。だけど、それを解明するにあたっての常識があまりにも違いすぎる。まずはここの常識を知る必要がある。そのためにはイラプスの協力が必要不可欠だ。
 ………、普通ならここで眠くなるんじゃないかな?確かにダメージによる痛覚や倦怠感はあるものの、疲労は一切感じない。だからと言って眠れないわけではないみたいだった。眠ろうと思えば眠れる。おもちゃは別に眠らなくてもいいってことらしい。
 疑似太陽が照らすこの世界には明日という観念もなければ夜もないのだろうと思う。行動は次目覚めたときにしよう。そう思い、僕は目をつぶった。
 ………まぶたあるのかよ。なんか芸が細かいな。
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目覚めたとき、やっぱりというか当然というかイラプスの洞窟にいた。目が覚めたら夢だったということを期待していた僕は落胆を隠せない。
 イラプスも眠っていたようで僕と同時に目が覚めたようだった。欠伸というリアルな生理現象を発生させつつ、僕の方を見る。
「大丈夫かい?」イラプスは聞いてきた。
「ああ、大丈夫だ。眠ったら落ち着いた」僕は答える。
 僕は体を起こして思いっきり伸びをした。体から独特の爽快感が一切感じられない。
「何をしてるんだい?」イラプスが珍しいものを見る目で僕を見ている。
「伸び、だよ。生物がやったら気持ちいいんだ」僕はむなしい気持ちで答える。
 イラプスは特に何も言わず、ネジをくわえて背中に投げ上げた。彼の背中にピタっとはまったネジは自動的に回り、終わると身をよじってネジを落とす。
「眠った後はネジを巻いといたほうがいいよ。だいぶきれてきてるから」イラプスは言った。
 僕も見よう見まねでネジをくわえようと思ったが、前歯のせいでくわえられない。そこで二本足で立ち、右前脚でネジを掴んで背中にまわした。ネジはかちりと音を立ててはまり、勝手に回りだす。
「いーなー、前足使えるって」イラプスがうらやましそうに言った。
 ネジの回転が済んだところで再び掴んでネジをはずし、イラプスに差し出す。
「ありがとう」「どういたしまして」
 イラプスはネジをくわえて洞窟の奥へとのそのそと歩いていく。
 僕は4足に戻り、ふと洞窟の外を見た。
 空の太陽は全く位置を変えていなかった。ところどころ雲が漂っており、ここが本当におもちゃのジオラマなのかと疑ってしまいそうだ。
「これからどうするんだい?」イラプスが後ろから聞いてきた。
「ここについての情報を集めたいと思う。僕はこの世界に関してあまりに無知だ」僕は振り返る。「イラプスも協力してくれないか?」
 イラプスはドンメル特有ののほほんとした表情で佇んでいた。
「情報集めてどうするんだい?」イラプスが聞いてくる。
「元の世界に帰る方法を考える。帰れないにしても、なんで僕はこの世界にいるかを知りたい」僕は答える。
 イラプスはゆっくりと僕に近づいてきた。覇気のない目で僕をじっと見ている。
 僕はまっすぐ見返した。
「うん、いいよ」イラプスが答えた。
「本当か!?」僕は思わず聞き返す。
「だって君、気違いの目じゃないもん。真剣そのもの。本気。それに、君と最初にあったのはおらだし。このジオラマのこと色々教えてあげるよ」
 イラプスはのそのそと外に歩き始める。僕は慌てて後を追った。
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 サウスタウンという街は砂が太陽光を反射して眩しめな街だ。建物はほとんどがポケモンの住処で、店らしき店は皆無に等しかった。住処以外の建物と言えば、探検家や冒険家が何かしらの目的で使うような、ちょっと使用用途のよく分からない建物が多かった。唯一分かったのが、技を習得するためにある建物だけだ。
「33400P…高くないか?」僕はイラプスに聞いた。
「いや、結構相場だよ」イラプスは何事も無さげにこたえる。
 このジオラマにおける貨幣単位はPと表示されるらしかった。このPを消費することによって、この建物で技を習得できるらしいのだが、生憎僕は技には間に合っている。
「というか、Pってどうやって稼ぐんだよ」
「探検家さんや冒険家さんしかそれは知らないよ。それに、普通に暮らす分には技は最低限でいいし」
「それじゃ食糧とかはどうするんだよ」
「食糧?なにそれ」
 イラプスの発言を聞いて初めて、僕は昨日から何も食べていないことを思い出した。だが、全く空腹ではなかった。改めて、おもちゃの非生物性を再認識する。どうやら、口はものを食べる為ではなく、言葉のコミュニケーション及び技の放出のためにあるようだった。


 街の中央広場には大きな噴水があった。透き通ったクリスタルのような青をしていた。思わず前足ですくってのみたくなったが、食糧さえとれない非生物性を思い出してしぶしぶ引っ込める。
「噴水に浸かりなよ」イラプスが言った。「痛みと疲れが取れるよ」
 イラプスは噴水によじ登ると、躊躇うことなく水へダイブする。
「ちょ…」僕が焦ったのも分かって欲しい。炎・地面が水に飛び込んだのだから。
 ところが、イラプスはもがき苦しむどころか、目を細めて悦にひたっている。
 僕もおそるおそる噴水によじ登った。前足のつま先をそっとつけてみると、記憶の奥底の、山の清水の冷たさがフラッシュバックした。
 僕は静かに噴水に身を沈めた。体から疲れが染み出し、溶けていっているような感覚に見舞われる。見れば、周囲でもたくさんのポケモン達が噴水を利用している。
「この噴水はなんなんだ?ポケモンセンターみたいだな」僕は聞いた。
「ポケモンセンターがどんなものかおらにはよく分からないけど、これは光の雫が湧き出る光の噴水さ」
「光の雫?」
 僕はかなり細かいことを気にしていた。これだけ液体が集まっていて、どうして『雫』と呼ばれるんだろう?雫っていうのは、葉っぱから滴っているような1敵の水みたいなものを差すのに。
「うん、そうさ。あの世界の柱で作られているんだ」イラプスはとある方向を向いた。
 つられて僕も見ると、天を貫く高さの建物が遥か遠くに見えた。全体的に茶色だ。
 なるほど、確かにああいう建物ならこういう万能液体を造れそうな感じはする。でも、つくる元は一体何なんだろう?まさかハピナスのタマゴじゃないだろうし…。
 そもそも、こういう液体状のものである以上は蒸発しているはず。それにポケモン達が浸かることによってわずかながらでも外に溢れている。消費しないはずはない。というか、あんな遠くからここまで水道が通っていることも驚いてしまう。
 そして、もう一つ気が付いたことが。
「なあ、イラプス」
「ん?何だい?」
「昨日…じゃなくて、眠る前、僕が噴火を受けたとき、なんでここに連れてこなかったんだ?」
「…あー、そうだね。うん、君のとった行動のインパクトが強すぎて失念してたよ」
「普通忘れるかよ…」
 いつまでも浸かっている訳にはいけないので僕達は噴水からゆっくりとあがった。水に浸かっていたにもかかわらず、体は一切濡れていなかった。


 次にイラプスに案内されたのは街外れにある闘技場だった。大きく平べったい円筒型をしていた。
「ここは…ポケモンバトルの会場か?」僕は聞く。
「うーん、いいかたちょっと違うけど大体そんな感じかな。おら達はバトルロイヤルって呼んでるけどね」
「へえ」
 観客席は、バトルフィールドになだれ込むような斜め向きをしていた。大勢のポケモンたちが声を轟かせている。
「ええっ…」僕は絶句してしまった。
 バトルフィールドで行われていたのはポケモンバトルとはお世辞にも呼べないものだった。何十体ものポケモンが集まり、無差別に周囲のポケモンを攻撃しているのだ。積極的に攻撃している者から端の方で戦局を吟味する者まで、僕の知っているポケモンバトルとは根底から違っていた。
「最後に勝ち残れば勝ちさ。もちろん、制限時間内にね」と、イラプス。
 観客の歓声が勢いを増した。何かと思えば、バトルフィールドの端にある3つの入り口から新たなポケモンが入場してきたのだ。そんなの無しだろうと思ったけど…
「あ…あれは、レジ神!?」僕は思わず声をあげる。
 3方向の入り口から出てきたのは、見まがうはずもない三鉱神、レジロック、レジアイス、レジスチルだった。角ばったレジスチルの違和感が半端ない。
「お、おい、これありかよ!?」僕はイラプスに問う。
「ん?伝説のポケモンは参加者じゃないよ。あくまで敵ギミック。彼らが勝ち残ったら、誰にも何も与えられず終了さ」イラプスは答えた。
 端のほうに佇むレジ達は、鉄壁やら度忘れやらのろいやらをし始める。このとき、僕の記憶の奥底の何かしらのトラウマが刺激されるのを感じた。僕はレジと戦ったことがあるのだろうか?
 当然バトルフィールドのポケモンたちは苦戦し始める。レジロックに地震とかレジアイスにだいもんじとかをしている。レジスチルは何をしても効かないから仕方ないけど、あまりにお粗末だ。
 と、思ったらレジロックに大地の力が浴びせられた。レジアイスにもフレアドライブがかまされる。当然………耐えた?
「待て待て待て!なんで耐えたんだ!?」僕は独り叫ぶ。
「え?そりゃあ、鉄壁とか度忘れとかしてるもん。耐えるよ」イラプスが答える。
「いやいやいや、鉄壁は特防には関係ないし、度忘れは防御に関係ないだろ!」僕は当然のことを言った。
「防御?特防?なんだいそれ」



 もはやシステム崩壊の域だろうこれは。このジオラマには攻撃・防御・特攻・特防・素早さが存在しないということだった。あるのは、アタック、ディフェンス、スピード。当然というか、HPは存在していた。この世界の種族値は異常なまでに簡略化されているみたいだ。悪く言えば手抜き。
 レジの戦闘を見ながら、反則級の耐久をもった彼らに思わず閉口してしまった。なにより、この世界では、僕の知る種族値の優秀なほうが採用されているようだった。
 頭の中でよぎったのは、一点アタッカーのポケモン達だ。特にラムパルド。吹雪、雷、だいもんじ、気合い玉、波乗りとかを覚えたはずだ。あの鬼畜火力で高威力特殊技が出せるのかと思うと、この世界の強弱の差が浮き彫りとなって見えるようだった。
「タイプ一致?相性?うん、あるよ」
 僕の知っているシステムはかろうじて生きているようだった。だが名前は同じであれ、内容は微妙に違っているみたいだった。
「タイプ一致で1.3倍、相性抜群で1.6倍だよ。え?2.56倍?((1.6×1.6))なるわけないじゃん」と、イラプス。
 中途半端に元の世界とシステムが違う。おもちゃの世界だけに、ポケモンの世界を模倣したような感じだった。この世界には物理も特殊もない。近接攻撃、突撃攻撃などには分類されるみたいだけど。補助技の効果は一定時間のみ。
 世界が根本的に違うのだからある程度は予想してたけど、こんなにも激しいシステム崩壊があるなんて思ってもみなかった。これほどシステムが違うのなら、果たしてこれをするおもちゃの姿はポケモンである必要があるのかとさえ思ってしまう。技だって、攻撃技の効果はあまりあっていない。まるで、他のシステムにポケモンを無理やり組み込んだみたいだった。
 ここまで考えて、ふと思ったことがあった。






 僕達は、本当にポケモンなのだろうか?
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 闘技場から出て僕たちはサウスタウンへの道へついた。
 帰り道には僕がいた砂浜もあった。相変わらず熱そうな熱を放っている。
「ん?」
 砂浜からほど近いところに、何か黒いものが横たわっていた。どうやらポケモンみたいだが、なんだが雰囲気が違う。
「あれれ、サビてる」イラプスが僕の視線の先を見て言った。
「サビ?」僕は聞き返す。
「うん。おもちゃはサビちゃうと何もできない。わるあがきくらいはできるけどね」イラプスは言う。
「でも…」僕はそのポケモンを見た。
 黒ずんでいてよく分からないが、僕達よりはるかに大きい4足歩行のポケモンらしかった。頭には稲妻のような角が生えていて、胸に多くの毛が垂れ下がっている。どうも白色らしい。
 そして、そのポケモンは…起き上がった。
「!!」僕たちは一歩引く。
 目が死んでいる。猛々しいその姿は、見る者を威嚇し、尊厳を表すかのようだった。
「コ、コバルオン…?」イラプスが呟く。
 僕は名前だけ聞いたことがあった。そんな記憶が残っている。
 コバルオンは禍々しい気を放っていた。サビた体を前屈姿勢にし、角が輝き始める。
「あ」
 気が付いたときはもう遅かった。僕とイラプスは聖なる剣を受け、吹き飛ばされた。
「ぐあっ!」
 コバルオンのガチの聖なる剣を喰らったコラッタなんて僕が初めてだろう。全然嬉しくないけど。
 体中に痛みが走っている。破壊されるのではなく痛さを感じるあたりおもちゃとして間違っているなんてことを考えたくなるくらい痛い。
 コバルオンは歩き出していた。その先には世界の柱があった。
 序 終わり 1章へ
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 あとがき
まずは自分への戒めから書くこととします。
 長編を2つほぼ同時に始めるなど馬鹿ですね。このサイトのセオリーからすればどちらか1つ、悪ければ両方おじゃんになるのでしょう。
 でも、仕方がなかったんです。あのゲームをナシュル前日談を書いた後に購入してしまいましたから。この手の世界観はもたもたしてたら他人に先を越されます。よって、このサイトでの1番のりをさせてもらった次第。
 あとがきから先に読む派の人のため、どんな世界かは書きません。読めば、どんなゲームに影響されたかが分かると思います。
 当然、物語の進行は遅めですが、できる限りある程度定期的に更新していきたいと思います。ちなみに、某最終幻想のような展開にはなりません。あしからず。
 この世界はつい最近ゲーフリが想像したので、設定を1から作る必要があります。本家ともろもろがプラスした世界観になると思いますが、よろしくお願いします。

 批判などがあればどうぞ
#pcomment(新説ポケダンコメントログ,10)
 

IP:114.51.90.252 TIME:"2012-04-09 (月) 21:34:35" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E6%96%B0%E8%AA%AC%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%83%B3%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AE%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%80%80%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E5%8B%87%E8%80%85%E3%81%AE%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E5%86%92%E9%99%BA%E3%80%80%E5%BA%8F" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0; YTB730)"

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