#include(第十二回仮面小説大会情報窓・官能部門,notitle) この作品には官能表現が含まれます written by [[慧斗]] #hr 明日で一年も終わりだというのに相変わらずすし詰め状態の電車から降りて、何となく駅前のコンビニに立ち寄る。 特に買いたいものがあるわけではないが、入ってすぐの書籍コーナーを覗いてみる。年末年始の特番を紹介している番組表を除けば、他に置いてあるのは、漫画や週刊誌とあまり変わり映えしない。 まだストックはあるけど、今日飲むビールだけ買って帰ろうかと思った時、書籍コーナーの端に置いてあったクロスワード雑誌に気が付く。 「クロスワードか、あいつと一緒にやってみるか」 そしてクロスワード雑誌をビールと一緒にカゴに入れてレジに向かった。 *新年とクロスワード [#UmoCFTK] コンビニからビールとクロスワード雑誌を買って出てきたレントラーはレジ袋を見て思わずため息をつく。 「レジ袋有料になったの、完全に忘れてたな…」 今年は色々なことがあったなとか、もう今年も終わりかとか、そんなことを考えながら自宅のマンションまで帰ってくる。 「僕にも 誰かを 愛せると その手を 重ねて 知らせて~♪」 やっと家に帰れるのが嬉しくて、途中の階で停まるなよ?と思いつつも自分しか乗っていないエレベーターの中で好きな曲を口ずさむ。 「あなたのぬくもりがくれる衝動~♪」 サビを歌い終わったところでドアが開く。我ながらナイスタイミングだ。 エレベーターを降りてすぐの場所にある自分のマンションのドアを開ける。 ドアにカギは掛かっていなかったが何も問題はない。一匹で住んでいた時とは違って、今はあいつが一緒に住んでいるのだから。 「ただいまゾロアーク、ストック切らさないように今日飲む用のビール買ってきたぞ」 「レントラーおかえりー、ってビール買ってきてくれたの?ありがとう!」 「おいおい、俺よりビール優先かよ」 「そんなことはないって。お風呂沸いてるから先入っちゃって、そのあと晩御飯にしよっか」 とりあえずカバンだけ置いて先に風呂に入ることにした。 「今日で年内の仕事は終わりだったっけ?」 「ああ、やっと終わったんだ。明日は大晦日だってのにな」 「本当にね、それにしても今年は色々あったよね」 「悪いウイルスが流行って今年は大変だったな… って今日こんなこと話してたら明日の話題なくなったりしないか?」 「それもそうだね、そろそろおでんも出来たみたいだし、食べよっか」 ビール片手におでんを食べるレントラーとゾロアーク。テレビでは年末特有のバラエティー番組の特番が流れている。 「この大根、よく染みてて美味しいな。こっちのこんにゃくもなかなか… やっぱりゾロアーク料理上手だな」 「ありがと。そういえばビールと一緒にクロスワード雑誌入ってたけど、あれどうしたの?」 「あれか?年末年始出掛けるとこもないし、たまには一緒に頭使うのも面白そうだなって思ったからな」 「ありがと、優しいんだね」 「それ、結婚する前に言って欲しかったな」 「結婚から3ヶ月程度じゃまだ実感わかないね」 「悲しいかな俺もあまり実感湧かないんだよな、というかもう11時だしビール飲み終わったら今日はもう寝ないか?」 「賛成、クロスワードは明日からのお楽しみだね」 「問題数もかなりあったから、しっかり楽しめそうだな」 結局この日は日付が変わらないうちに二匹は寝たのだった。 大晦日の朝、レントラーは起きてはいたものの、まだベッドでゴロゴロしていた。 「もう9時か。まあ今日は休みだしアイツは起こしに来ないからもうひと眠りするか…」 「レントラー、早く起きて手伝ってよ!時間ないの!」 レントラーの二度寝はゾロアークの大声によって見事に(?)阻止されてしまった。 「一体どうしたんだ、朝っぱらから大声出して」 「年賀状まだ作ってないでしょ!早くしないとお正月に届かないよ!」 「? 俺のはもう作ったし、今日作ってももう間に合わないぞ?」 「そうじゃなくて私のがまだなの、というわけで年賀状作るの手伝って!」 「何で俺の仕事になってるんだよ… 印刷だけならすぐできるから、ちょっと待ってろ」 「印刷も何も、一からだよ?」 「ウゾダドンドコドーン!」 それは遠まわしにレイアウトから全部作れと言ってるようなものであり、レントラーは軽く発狂しつつも年賀状のレイアウトを作るためパソコンに向かうのだった。 「大体こんな感じでいいか?」 「うん、いい感じにできてるよ。ほんとにありがとねレントラー」 「はいはい、で、何枚印刷するんだ?」 「出す人数を考えても30枚あれば十分かな」 了解、と言いながらプリンターを接続して印刷を始める。これが終わったら宛先を印刷して完成だ。 「もうちょっとしたらお昼ごはんにするからちょっと待っててよ」 それだけ言うとゾロアークは行ってしまった。 「昼飯か、家で昼飯食うのは久々な気がするけど、一体何作るんだろうな。夜は年越しそばなのは分かるけど… なんか今デカい物引っ張り出したような音したけど、何作ってるか想像もできないな…」 「さ、食べよっか」 「お、おう…」 レントラーが呼ばれて来てみると、ゾロアークはご機嫌でたこ焼きを焼いていた。流石にこれは予想できなかった。 焼きあがったたこ焼きを何個か皿に移して、ソースや青のりを振りかけて、ご丁寧に二本用意された爪楊枝を使って食べ始めた。 中は火傷しそうな程熱かったが、トロっとした生地はカリッとした外側と相まってなかなかおいしい。歯ごたえのあるタコや少しパンチの効いた紅しょうがも絶妙で… ここまで脳内で食リポしたところで、実際は「美味いな」と言いながら冷蔵庫からコーラを取り出すだけなのだが、 「良かった、気合入れて作った甲斐あったねこれは」 ゾロアークは喜んでくれたので結果オーライだろう。 「そういえば、いつコーラ買ってたんだ?」 「たこ焼きの材料と一緒に買ってきてたかな。たこ焼きとコーラって相性いいからね」 「同意見。さて、冷めないうちに食べちゃいますか!」 そしてまだ熱い二個目を口に放り込んだ直後、レントラーは口を押えて苦しむ羽目になった。 悶え苦しむレントラーと笑い転げるゾロアークの言葉を翻訳すると、以下のような事を喋っていた。 「何だこれ⁉滅茶苦茶辛いけど一体何入れたんだ⁉」 「はーいレントラー大当たり!今日作ったたこ焼きのうちの2個は、私特性デスソース入りたこ焼きでーす!」 「ロシアンルーレットだったのか…くそ、口の中が痛い…」 「そうそう、ロシアンルーレット。名前ど忘れしてた」 「コーラ飲んでも治らないとか一体どうなってんだよ…」 「冷蔵庫にバニラアイスからそれ食べたら?」 「だったらそれ早く出してくれ!」 「辛くするのに使ったのはタバスコじゃなくてデスソースか…本気で死ぬかと思った」 「ごめんごめん、流石にやり過ぎたね。今度お詫びするから怒らないでよ?」 「分かった。それより冷めないうちに食べてしまおうぜ」 「そうだね、それじゃ、いただきまーす」 「なあ、さっき危ないたこ焼きを2個作ったとか言ってなかったか?」 「きゃああああああ!」 どうやらもう一つのデスソース入りたこ焼きはゾロアークが食べてしまったらしい。 床を転がり回って悶絶しているゾロアークを見て、思わず吹き出しながらもレントラーは冷凍庫にバニラアイスを取りに行ったのだった。 そして大晦日の夜… 「お待たせ、年越しそばできたよ」 「お、さんきゅ。伸びないうちに食べ始めるか」 一緒に年末恒例の歌番組を観ながら年越しそばを食べ始めた。 「なあ、今回出演してるアーティスト、何人ぐらい知ってる?」 「5人も知らないかな、レントラーは?」 「俺もそんなもんだ。あんまり面白くないし他のチャンネルに変えるか」 レントラーがチャンネルを変えようとすると、番組の合間のニュースが始まる。 内容自体はこの一年の振り返りみたいな感じで、真剣に見る必要なんてないのだが、今年はいろんなことがあったなとか、そんなことを考えて思わず感慨深くなってしまう。 「何というか、終わりの見えない嵐のような一年だし、いつまで続くのかも分からないけど、いつかは歴史の教科書に2、3行書かれてそれで終わりになるんだろうな」 「急にどうしたの?」 「いや、今年は今まで以上にいろんな出来事があったじゃん」 「確かに」 「悪いウイルスが今も流行ってたり、レジ袋が有料になったり(たまにそのこと忘れて5円使っちゃうし)、スポーツの大会や観たい映画も軒並み公開延期になっちゃうし、夏やクリスマスにもどこかに行ったり出来なかったりしたけど、何年もすれば、そんなことあったっけ、なんて笑い話になっているような気がするんだ」 「……」 「なんにせよ、今年はいろんなことがあったけど、来年は幸せな一年になればいいなって思っただけだ」 「そうだったんだ、てっきり仕事疲れで気が変になったのかと思ったよ」 「その辺はまだ大丈夫だ。ごちそうさま、美味かったぞ」 「お粗末様でした。さて、年明けまで久々にゲーム対決でもする?」 「クロスワードやりたかったけどまあいいか、で、何するんだ?」 タンスの引き出しからトランプを取り出しながら、ゾロアークは笑顔で答える。 「シンプルにババ抜きでもやろうかなって。先に2連勝した方が負けた方からお年玉として1万円もらえるってのはどう?」 「面白い、その勝負乗ってやる!」 「そう来なくちゃ!」 こうして、ちょっとしたババ抜き勝負に挑むことになった… 翌朝、つまり元日の朝8時頃… 「なあ、これで何試合目だ?」 「大体100戦目ぐらいじゃない?」 なかなか決着がつかず、お疲れモードのまま二匹はトランプではなくゲームのコントローラーを握っていた。 というのも普通に和気あいあいとした勝負だったはずが、1万円が関わってくるとなるとついつい欲が出てしまい、気が付けばお互いの能力を駆使した高度な勝負になってしまっていた。 ゾロアークはイリュージョンを有効活用して、自分の持っている手札の位置を入れ替えたり、レントラーが引いた普通の札をジョーカーに変えたりと普通なら気づかれないような反則技を繰り返していた。 それだけ聞くとゾロアークが圧勝しそうに思えるが、レントラーは透視能力を持っているため、ゾロアークのイリュージョンでさえ気にすることなく手札を覗き見ることが出来た。 だが、イリュージョンにせよ透視能力にせよどちらもそこそこ体力を消耗する。特にレントラーの透視能力は体力の消耗が激しく、ここぞという時にしか使用できない。ゾロアークの場合も、レントラーの透視能力でイリュージョンを看破されてしまえば体力の無駄になり、透視能力を使われないタイミングでイリュージョンを発動させなければ意味がないないため、かなり高度な読み合い合戦になってしまった。 おまけにこの二匹、かなりのゲーム好きのため、久々のゲーム勝負にかなり白熱してしまい、ババ抜きだけでなくポーカーやブラックジャックなどのトランプゲーム、オセロや将棋、チェスなどのボードゲーム、そして現在は最新のゲーム機で格闘ゲームの対決中といった具合だ。 その結果、実際は100戦以上しているのだが、なかなか勝負がつかずに現在に至る。 「なあ、いつになったら決着つくんだ?今ポストに年賀状届く音したぞ」 「え、もうそんな時間⁉そろそろ終わりにしないと流石に不味くない?」 「そうだな。じゃ、今回は引き分けってことでいいか?」 「賛成。でも来年は勝って見せるからね」 「いくら何でも正月から来年の正月の話は早すぎないか⁉」 「それはそうでした」 語尾に(笑)を付けたような口調で足早に年賀状を取りに行こうとしたゾロアークだったが、 「あ、それと、明けましておめでとう」 「完全に忘れてた。こちらこそ明けましておめでとう」 新年の挨拶は忘れていなかったらしい。 「さて、いよいよクロスワードに取り掛かるとしますか!」 昨日から色々と周りに振り回されて、自分の時間はまともに確保できなかったが、お雑煮を食べた後、ようやく自由な時間が出来た。ゾロアークに一緒にやろうと声をかけたが、先に始めといてと言われてしまったので、レントラーだけで解き始めることにした。 最初の問題のタイトルは【新年に欠かせないもののクロス】のようだ。ということはお正月に関係のある言葉が多く入っているのだろう。予想通り、タテの1のヒントは『お正月に食べるのは○○○料理』と書いてあった。左上の角から縦に三つ並んでいるマスに「オセチ」と書き込んだ。この調子でまずは一問解き切りたい。 そう思っていたのだがタテの13のヒントで詰まってしまった。 「『お正月には欠かせない○○○○○』ってヒントとして不親切じゃないか?」 現時点で分かるのは、2文字目が【メ】なことぐらいだ。ヨコのマスを他にも埋めてしまえば答えが分かるかもしれないが、他のマスを埋めずに答えられるならその方が効率がいい。 しかしスマホで『お正月に欠かせない 五文字 2文字目は【メ】』なんて検索しても答えが出てくるはずはない。そうなるとゾロアークに聞くのが調べるための唯一の手段になる。 「ゾロアーク、ここのマスに何が入るか分からないか?」 「もうすぐそっちに行くからちょっと待ってて!」 洗い物をしていた水の音が止んですぐにゾロアークがやってくる。 「で、どの問題なの?」 「これこれ、タテの13が分からないんだ」 「『お正月には欠かせない○○○○○』か… 分かってる文字はないの?」 「2文字目は【メ】なこと以外は分かってないな」 「ああ、それならこれの答えは『姫始め』じゃない?」 「ヒメハジメ?なんだそれ?」 「あれ、レントラー知らなかった?いいよ、私が教えてあげる」 「教えるって、ヒメハジメなんて名前の物、家にあったか?」 「まあ、いいからいいから。こっち来て」 言われるままにレントラーがついて行くと、何故かゾロアークは寝室へと入っていった。 「じゃあ、ここで横になってくれる?」 「別にいいけど、一体何するんだ?ヒメハジメって物じゃなくて何かの行事なのか?」 「そうそう、姫始めはお正月の行事だよ。準備するから目を閉じてちょっと待っててね」 「ああ、分かった…」 一体何を準備するつもりなのかと待っていたレントラーは、突然キスされて驚きに目を見開く。 「急に何するんd」 口を開いた途端にゾロアークは舌を突っ込んで絡めてこようとする。そんなゾロアークに対してレントラーは無意識に自分からも舌を絡めに行った。 しばらくの間舌を絡め合っていたが、お互いに息苦しくなって口を離す。 「いきなりディープキスしてくるなんて一体どうしたんだ?」 「ごめんごめん、先に説明しといた方が良かったよね。姫始めってのは新年最初に夫婦がする性交の意味なんだよ」 「…そうか、教えてくれてありがとうな。でも普通に言ってくれれば分かったぞ?」 「……バカ」 「急にどうしたんだ?」 「結婚してから仕事が忙しくなったのは分かるけど、私はずっと淋しかったんだよ?最後に一緒に寝たのだってもう1ヶ月前だし、クリスマスだって花束を買ってきてくれたしご馳走は食べたけど、それ以外はクリスマスらしいこと何も出来てなかったじゃん!それなのに私の気持ちに気づいてくれないなんて本当に鈍いんだから…」 言うだけ言って俯いてしまったゾロアークをレントラーは黙ってベッドに押し倒す。 「ちょっ、レントラー急にどうしたの⁉」 「しばらく仕事忙しかったとはいえ、全然一緒にいられなくってごめん。そこまで気にしてたとは想像以上だったけど、俺なりにこれまでの穴埋めしてやるからな」 そして、仰向けに寝転がったゾロアークの秘所を前脚でそっと撫でた。 「あっ…レントラー、いきなり触っちゃ、ダメだって…そこ、気持ちいい、から…」 「1ヶ月前より感度良くなってるのは気のせいか?」 「ごめん、寂しくて自分で触ってたから、そこら辺変化してるかも…」 「気にするな、それよりそろそろ仕上げにかかるか」 「…仕上げ?」 「ああ、それと今日は特別だから遠慮するなよ」 「どういうこと?」 「こういうことだ」 さっきまで前脚で触り始めた頃には少し湿り始めて、今では溢れんばかりに蜜が湧き出ている秘所を今度は舌で舐める。 「こんなに濡れて、今綺麗にしてやるからな」 「あっ…はあっ…舌、挿れないで…」 「言葉と身体の反応が一致してないな?」 「そんなこと、言わないでよ…」 「テンプレなセリフなんだから気にするな。それに、こんなゾロアーク見たの久しぶりだからな、何か嬉しくなって」 「ホントなの、はあっ…はっ…」 レントラーが秘所を吸い上げたとき、ゾロアークの身体が痙攣してレントラーの顔に蜜が少し掛かる。 「ごめん、顔に掛けちゃったね…」 「満足したなら俺はそれでいいよ。それと、俺も最近ご無沙汰で治まりそうにないから…いいよな?」 「見たところ溜まってるみたいだし、早速どうぞって言ってあげたいけど、やりたいことがあるからちょっと待って?」 そう言ってゾロアークがイリュージョンを発動させると、ごく普通の寝室が全面鏡張りの部屋に一変する。 「マジかよ、壁だけじゃなくて天井も鏡張り…」 「一度こんな部屋でしてみたかったんだよね。動きを反映するのは大変だけどやるだけの価値はあったね、突然の鏡張りに驚いて恥ずかしそうなレントラーも拝めたし」 「そりゃ、幻でも鏡張りだし、ゾロアークにずっと見られてるって思うとなんだかな…それより、もういいよな?あんまり優しくできる自信ないけど…」 「お待たせしました、もう挿れていいよ」 その言葉を聞くと、レントラーは昂るモノをゾロアークの秘所にあてがい、一気に奥まで挿れた。 「何か今日のレントラー、いつもより、激しい…」 「一回、動くの止めるか?」 「大丈夫、そのまま続けて…」 ゾロアークの息が荒くなるにつれ、鏡張りの部屋の幻も少しずつ揺らぎ始める。 同じく息が荒くなり始めているレントラーは、久方ぶりの快楽に身を委ねようとさらに激しく動き始める。 そして、鏡張りの部屋の幻が半分以上揺らぎ始めた頃、 「レントラー、私、もう… ああっ!」 ゾロアークは本日二度目の絶頂に達して、幻を維持しきれずに鏡張りの部屋の幻は完全に消滅する。 「ゾロアーク、好きだ!」 それから1分もしないうちにレントラーも絶頂に達したのだった。 「あそこまで激しかったら満足できたよ、ありがと…」 「やべ、これは予想外だな」 快感に身を委ねていたゾロアークでも、レントラーが何に困惑しているかはすぐに分かった。自分の秘所に入ったままのレントラーのモノがまだ治まっていない。 「もう一回、いいか?」 「二回目したいの?どうしようかな…」 「昨日たこ焼きの件でお詫びするって言ってたよな?」 「分かったよ… 特別だからね?」 こうして第2ラウンドの開始が決まったのだった。 「…ん?あれ、俺寝ちゃってたのか?」 レントラーは自分だけがベッドの上にいることに気づいた。第2ラウンドが終わった所までまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。 「そういえば昨日は徹夜のゲーム対決してたから寝てなかったな。ウルトラソウル聞きながら新年迎えるつもりだったのに忘れてたな」 まだ眠い目をこすって近くに置いてある目覚まし時計を見ると、午後6時ジャストだった。確かクロスワードを解き始めたのが10時頃だったから、平日の睡眠時間と変わらないレベルで爆睡していたらしい。 起き上がると自分の身体が綺麗になっていることに気づく。ゾロアークがお湯で絞ったタオルとかで拭いてくれたのだろう。 「拭いてくれたのはお礼言わなきゃな… アイツ部屋にいないけど何やってるんだ?」 寝室のドアを開けるとゾロアークがおせち料理の準備をしていた。 「おはよ、二回目終わった後すごく気持ちよさそうに寝ちゃったからそのままにしといたよ」 「そうだったのか、身体拭いてくれた事と言い、いろいろと、いつもありがとうな」 「お気になさらず、って急に『いつもありがとうな』とか言わないでよ、照れるじゃん!」 「こんなタイミングじゃないと俺も恥ずかしくて言えそうにないけどな。いつも感謝してるのは本当だけど」 「そうなの?」 「信じてくれないのは素直にショックだけど、俺はいつもゾロアークの存在に助けられてるんだ。仕事がきつくて辛い時でももう少し頑張ろうって気分になれるからな。そんなきっかけをくれる存在を俺は他に思いつかない」 そこで区切ってから、少し照れくさそうなレントラーは最後の一言を紡ぎ出す。 「ゾロアーク、いつも本当にありがとう」 それを聞いたゾロアークも照れくさそうに答える。 「私も、いつもありがとう。仕事が忙しくて一緒にいられる時間は少ないけど、いつも私の事を大切に思ってくれている、そんなレントラーが大好きだよ」 「今、お前俺の事…」 「あっ…」 しばらくの間、二人の時間が止まった。 「じ、時間も時間だし、早くおせち料理食べないか?」 「わ、分かった、そうしよう!」 そして恥ずかしさを紛らわすようにおせち料理を食べ始めたが、5分もしないうちにいつものペースに戻っていた。 「クロスワードの続き、やるとするか。確かヨコの13からだったから… これだな」 「えーっと、『お正月に街を練り歩く○○○○』…」 「それの答え、『獅子舞』じゃない?」 「それっぽいな、じゃあここに【シシマイ】と書き込んで… あ、タテの13埋めるの忘れてたな。まあ1文字目使えるから問題ないk」 「ん、どうかした?」 しばらくクロスワードとにらめっこしていたレントラーは、何かに気づいたらしく驚きに目を見開く。 「タテの13の答え、『姫始め』じゃなくて『しめ飾り』だった!よく見たらヒントも『お正月に欠かせない飾りは○○○○○』って変わってるし、さてはゾロアーク、イリュージョンで俺をそういう展開に誘導したのか⁉」 「あーあ、バレちゃったか。でも正解だよ、私がイリュージョンでクロスワードを操作してエッチなこと出来るように仕組んだお芝居でした!」 「じゃあ、さっきの寂しかったとか、大好きとかも全部演技だったってことなのか…」 「ちょっと待って⁉そのあたりの話は全部本当だよ⁉」 「分かってるって。そこまで演技だと言われたら流石に泣く」 「だよね、良かったよ…」 「しかし、俺がここまで派手に騙されてたなんてね…」 そう言って財布から1万円札を取り出してゾロアークに渡す。 「レントラー、これって…」 「さっきのお年玉をかけたゲーム対決、引き分けになったけど、これは俺の負けだな。持ってけ」 「レントラーの負けだなんてとんでもないよ」 そう言ってゾロアークは財布から5千円札を取り出してレントラーに渡す。 「私もさっきのレントラーのセリフにすごく焦ったから、やっぱり引き分けだよ。それより2人で5千円ずつ出したことにして、この1万円で何か美味しいもの買って食べよ!」 「じゃあ俺、ゾロアークの料理がいい」 「私の料理⁉そこまで期待してるならいいよ、材料費1万円でご馳走、頑張って作るね!」 「ああ、楽しみにしてるな」 「ありがと、甘酒買ってるから持ってくるね」 「願わずとも、今年は幸せな一年になりそうだな」 ご機嫌に甘酒を取りに行ったゾロアークの背中を見て、レントラーは微笑みながら小さく呟いたのだった。 #hr 後書きみたいなもの 大会主催者のrootさん、大会参加者の皆さん、お疲れ様でした。 まだ他の大会作品を読んでいないという方がいらっしゃったら、是非読んでみてくださいね %%少なくとも(出来損ないの)自分の作品読むよりは%%面白い作品が沢山揃っていますから!! 今回は「一般的に使われていると思われるが、自分は知らない単語によって混乱する展開」をイメージしています。 言葉をメインに使うゲームや遊びで、突然知らない単語を使われると、自分が知らないだけなのかと混乱してしまう経験は よくあることじゃないかな、なんて発送をベースに季節柄の新年ネタを組み合わせてみました。 %%(結果見てから現在進行形でコンセプトに自信なくしてるのは言わないお約束)%% 最後になりましたが、こんな作品をお読みいただき本当にありがとうございました。 今後もより一層精進していきますので温かい目で見守っていただければ幸いです 追記:感想会参加してきました 大会も感想会も初参加でしたが、 アドバイスやコメント等頂けてうれしい限りです この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました! #pcomment