ポケモン小説wiki
新天地でのスター目指して の変更点


#include(第十回短編小説大会情報窓,notitle)

&color(Red){※この小説は官能表現を含みます。ご注意ください};


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 「よし、 ”アレ” 行くぞ!」
  最後の直線――信頼するライダーさんの声が、ぼくの頭上より響く。
「よし、 ”アレ” 行くぞ!」
 最後の直線――信頼するライダーさんの声が、ぼくの頭上より響く。
 それを合図に、ぼくはとっておきのアレ…… ”ニトロチャージ” を繰り出した。
 ただでさえ熱く、速いスピードで駆け抜けていた身体がより一層燃え上がり、猛加速していく。
 前で必死に走っていたポケモンたちをあっという間に抜き去ると、ぼくは栄光のゴール板を先頭で駆け抜けた。

 「暮れのポケモンレース、勝ったのはやはりギャロップのエトラル! これがスターの走りか!!」
  レースの実況が興奮を隠しきれない様子でそう叫ぶと、周囲にいた観客たちも一斉に立ち上がり ”エトラル” コールを始めていた。
「暮れのポケモンレース、勝ったのはやはりギャロップのエトラル! これがスターの走りか!!」
 レースの実況が興奮を隠しきれない様子でそう叫ぶと、周囲にいた観客たちも一斉に立ち上がり ”エトラル” コールを始めていた。
 ぼくは自分の名前が呼ばれているその歓声の元へと、ゆっくりと歩きだした。
 ウイニングラン――ポケモンレースを制したポケモンと、そのポケモンに乗るライダーのみが味わえる、勝利の酔い。
 何度味わっても気持ちの良いもので、それはぼくをやみつきにさせてくれる。
 もっともっと頑張って、走り続けて。勝ち続けて――この美酒に酔い続けたい。
 この場所で、みんなのスターであり続けたい。
 この時のぼくは、間違いなくそう思っていた。
 あんなことが待ち受けているとは、全く考えていなかったのだから……




 ――新天地でのスター目指して――
 作:からとり
 作:[[からとり]]




 ポケモンレース――それは、人とぼくたちポケモンがタッグを組んで、その速さを競い合うスポーツのようなものだ。
 とある地方では、サイホーンレースが流行っていると聞く。しかし、ぼくの暮らす地方では、サイホーンに限らずに地べたを走るポケモンであれば誰でも参加することが可能だ。
 それゆえに種族ごとの特性を生かした走りが見られ、そして多様な対戦相手の動きをしっかり読んだ上での駆け引きが熱い。
 この地方では昔からポケモンレースが執り行われており、その人気も高かった。
 そんな中、ぼくはポケモンレース界のスターとして、常に先頭で走り続けてきたのだ。

 元々ぼくはサラブレッドの血筋である。父も母も、ポケモンレースで活躍していたらしい。
 らしいというのは、ぼくが生まれる前の出来事であったから、その目で直接見た訳ではない、という意味だ。
 それでも周囲の人もポケモンもそれっぽいことは言っていたし、何より母に散々自慢されてきたので、嫌でも頭の片隅に残ってしまっている。
 あの時は仔ども心ながら、母の話がしつこいなと内心感じてしまっていた。
 でも、今なら母の気持ちも分かる気がする。それだけ母はポケモンレースが大好きで、そして誇りであったのだと思うから。
 一方父とは、ほとんど顔を合わせた記憶がなかった。
 唯一おぼろげながら覚えているのは、ぼくが生まれて数ヵ月程経った頃に、母と身体を寄せ合って戯れていたことくらいであり、ただ楽しそうなことをやっているなとしか思っていなかった。

 そうこう過ごしていく内に、ぼくは生まれ故郷であった牧場を出て、ポケモンレースの育成所へと連れられ日々を過ごすことになった。
 そこでは、レースのための基礎を磨くトレーニングから実戦形式の競争まで、とにかく神経がすり減るような厳しい訓練が待ち受けていた。
 とにかく訓練は辛かった。特に忘れられないのは、近場の池で延々と泳ぎ続けられたこと。ほのおタイプのぼくにはその冷たい水が一層身体へと染み込み、
 終了直後は自慢であったたてがみの煌めきも、とても弱々しいものになってしまうくらいだった。
 でもそこで逃げることなく、前を向いて一生懸命訓練に励んだ。その時に、今のライダーさんとも出会って、すぐに意気投合した。
 それはポケモンレース界のスターになる! その夢がお互いピッタリと一致していたからだろう。

 そして迎えたぼくたちのデビュー戦。信頼するライダーさんの合図に応え、ぼくは自慢の ”ニトロチャージ” でぐんぐん後続を引き離し、圧勝を収めた。
 その時に相手を突き放し、先頭でゴールする気持ち良さ。そして、勝利者のみが行えるウイニングランで声援に応える快感を覚えた。
 それからというもの、ぼくとライダーさんは慢心することなどなく、真摯にポケモンレースへと取り組み、必死にトレーニングも重ねてきた。
 その結果、お互い今の地位まで上り詰めることができた。
 ぼくたちはこれからもポケモンレース界のスターとして、勝利を重ねてその美酒に酔い続ける……つもりだった。

 「ありがとうエトラル。……寂しいけど、お前とは一旦お別れだ」
  あのレースの直後に、寂しそうな表情でライダーさんはぼくに別れを告げた。
「ありがとうエトラル。……寂しいけど、お前とは一旦お別れだ」
 あのレースの直後に、寂しそうな表情でライダーさんはぼくに別れを告げた。
 最初にその言葉を聞いた時は、ぼくは何を言っているのか理解できなかった。いや、本能的にその現実を直視することはできなかったのだろう。
 ぼくは必死に泣き叫び、その言葉に抵抗した。人間であるライダーさんには、ぼくの声の一言一句全てを理解することはできない。
 それでも、長きにわたりお互い走り続けたパートナーだ。ぼくの想いは十分に伝わっていた。
 「俺もお前とまだ、走り続けていたいよ……でも、もう決まったことなんだ」
  見ると、知らぬ間にライダーさんもその瞳から雫を落としていた。
 「お前には次の仕事があるんだ……また、別の形で俺をスターにさせてくれよ……」
  最後にそう言うと、ぼくをあやすかのようにライダーさんはぼくの頸をスッと、優しく撫でてくれた。
「俺もお前とまだ、走り続けていたいよ……でも、もう決まったことなんだ」
 見ると、知らぬ間にライダーさんもその瞳から雫を落としていた。
「お前には次の仕事があるんだ……また、別の形で俺をスターにさせてくれよ……」
 最後にそう言うと、ぼくをあやすかのようにライダーさんはぼくの頸をスッと、優しく撫でてくれた。


 こうしてぼくは今、ポケモンレースの育成所を去り、再び生まれ故郷である牧場でのんびりと暮らしている。
 戻ってきた当初はまだ、あの場所に立ちたいとかライダーさんと走り続けたいとか、そんなことばかりを考えていた気がする。
 でも数ヵ月という時間と、この牧場特有の澄んだ空気となびく草原の美しさが、ぼくを未練がましい気持ちから解放させてくれた。
 それに昔お世話になっていた、牧場主のブリーダーさんの美味しいご飯がまた食べられるし。
 母は相変わらず昔の自慢ばかりしてくるけど、それでも元気そうであるし。
 豊かな自然が広がるこの牧場で、懐かしい面々と静かに暮らすのも悪くない。今ではこの生活に順応し、まったりと楽しんで暮らすことができていた。
 そうそう。懐かしい面々といえば、とくにあのポケモンが――
 「おはよう、エトラル。ここの生活にも慣れてきたみたいね」
  ちょうど、頭の中で思い浮かべていた主が、ぼくに声をかけてきた。
「おはよう、エトラル。ここの生活にも慣れてきたみたいね」
 ちょうど、頭の中で思い浮かべていた主が、ぼくに声をかけてきた。

 その形姿は、ギャロップであるぼくとほぼ同様。
 しかし、決定的に違うのはその毛色。黒く、そしてギザギザに生える白の縞模様。
 そして、頭からお尻までに連なっている、稲妻のような白いシンボル。
 はっきりと前を見据えるその鋭い眼の第一印象は、恐怖。だが、慣れるととても優しく、見守ってくれているかのような温かさ。
 「おはよう、スピ姉。静かに、のんびりと暮らすのも良いものだね」
  ぼくの返事を聞くと、そのゼブライカ――スピ姉は頬を緩め、良かったと言わんばかりにニッコリと笑う。
「おはよう、スピ姉。静かに、のんびりと暮らすのも良いものだね」
 ぼくの返事を聞くと、そのゼブライカ――スピ姉は頬を緩め、良かったと言わんばかりにニッコリと笑う。
 スピ姉とは、ゼブライカのスピカ。ポケモンレースの育成所で出会った先輩であり、ぼくにとっては姉貴のような存在だ。
 初めての育成所で不安一杯であったぼくを優しく、時に厳しく導いてくれた。
 スピ姉はポケモンレースにおいても、とてつもない走りを見せていた。その姿を間近で見て、デビュー前のぼくが本気で憧れていた。彼女みたいになりたいと強く思った。
 ぼくが無事デビューした後も、一緒にトレーニングをしたり、相談に乗ってくれたり……
 血の繋がりがなくとも、本当の姉のように慕っていたのだ。
 数年前に彼女が突然レースを引退して、育成所を去ってしまった時はとても哀しかったし、何か心に穴が開いてしまったような心境になった。
 だから、この場所で再びスピ姉と暮らせること。顔を合わせたり、他愛のないお話ができたりすることはとても嬉しかった。

 そして、スピ姉に関しては、もう一つ驚いたことが……
 「ふぁー。おはよう、おじちゃん」
  まだおじちゃんじゃあないぞ! と内心思いながら、ぼくはスピ姉の後ろから聞こえてきた声の主に応えて、おはようの挨拶を返す。
「ふぁー。おはよう、おじちゃん」
 まだおじちゃんじゃあないぞ! と内心思いながら、ぼくはスピ姉の後ろから聞こえてきた声の主に応えて、おはようの挨拶を返す。
 まだとても小さく、歩く姿もたどたどしいその仔は、シママ。
 まだ名前も決まっていないらしいその仔の母親は……スピ姉だ。
 「しかしスピ姉も、もうお母さんかぁ……全然実感が湧かないよ」
  感慨深げに思わず呟くと、彼女は少しムッとしてしまったようだ。
 「あら。私がお母さんじゃ悪いのかしら?」
 「い、いや。そういう意味では……」
 「あなただって、もう十分いい歳よ。……近々、その時がくるでしょうね」
 「えっ?」
  “その時がくる” ……どういうことだろう? ぼくはその言葉の真意を、スピ姉に問い詰めようとしたのだが……
「しかしスピ姉も、もうお母さんかぁ……全然実感が湧かないよ」
 感慨深げに思わず呟くと、彼女は少しムッとしてしまったようだ。
「あら。私がお母さんじゃ悪いのかしら?」
「い、いや。そういう意味では……」
「あなただって、もう十分いい歳よ。……近々、その時がくるでしょうね」
「えっ?」
 “その時がくる” ……どういうことだろう? ぼくはその言葉の真意を、スピ姉に問い詰めようとしたのだが……
 ちょうど彼女はブリーダーさんに呼ばれてしまったようだ。じゃあ、と言い残して、彼女は仔どもと共にその場を去っていった。
 彼女たちが立ち去った後も、ぼくはその言葉の意味を頭の中でおぼろげに考えていた。
 母に聞いてみようか――と一瞬思ったりもしたが、何だかとても恥ずかしいような気もしたし、そもそも話が長くなりそうな気もする。止めておこう。
 そういえば、スピ姉の旦那さんはどんなポケモンなんだろう。
 新しい疑問もドンドン浮かんできた。ひとまず明日、またスピ姉に会った時に聞けばいいか。
 楽観的に考えたぼくは頭からそのモヤモヤを消し去り、そして元の日常へと戻っていった。


 翌日、いつもと何ら変わらない朝。目を痛めつけてしまいそうな程、強い日差しを浴びてぼくは目覚める。
 美味しい朝ごはんをいただいた後、スピ姉を探して広大な草原の敷地をゆっくり歩いていたのだけど。
 「おおー、エトラル。探したんじゃぞ」
  どうやら、その声の主はブリーダーさんのようだ。朝ごはんは食べたばかりなのに、一体ぼくに何の用なのだろう?
「おおー、エトラル。探したんじゃぞ」
 どうやら、その声の主はブリーダーさんのようだ。朝ごはんは食べたばかりなのに、一体ぼくに何の用なのだろう?
 ふとブリーダーさんの顔を覗き込むと、何だか気味の悪い含み笑いを浮かべていた。少しばかりだが、恐れを感じてしまう。
 「ふふふ……今日はお前さんの、第二の仕事の始まりなのじゃ!」
  第二の……仕事? そうだ。しばらくこの地でのんびりと過ごしてきたせいか、次の仕事のことを失念してしまっていた。
「ふふふ……今日はお前さんの、第二の仕事の始まりなのじゃ!」
 第二の……仕事? そうだ。しばらくこの地でのんびりと過ごしてきたせいか、次の仕事のことを失念してしまっていた。
 ライダーさんにも別れ際に言われた、その仕事……すっかり忘れてしまっていたことに気づいた瞬間、ぼくは自責の念にかられた。
 心の中でライダーさんに “ごめん” と呟きつつ、次の仕事も頑張るぞ! と強く誓う一方で、未だにどんな仕事か不透明な状況に若干の不安が入り混じる。
 そんな複雑な心境を抱えながら、ぼくはブリーダーさんに導かれるように歩く。
 しばらくして辿り着いた先は、ぼくが暮らしている小屋の10倍は大きいであろう、立派な造りの厩舎であった。

 その厩舎の内部はとても広々としており、その地表にはふさふさな藁が沢山敷かれている。ここでお休みを取るのであれば、快適な睡眠は約束されそうだ。
 ブリーダーさんは、ぼくが厩舎の中に入ったのを確認すると、背を向けてその場を離れる。
 あれ? 新しい仕事のこと、まだ何も聞いていないんだけど……
 「頑張れよ。そして……お楽しみにな」
  こちらを振り返ることなく、最後に発せられた “お楽しみ” の言葉にぼくは妙な違和感を覚えた。
「頑張れよ。そして……お楽しみにな」
 こちらを振り返ることなく、最後に発せられた “お楽しみ” の言葉にぼくは妙な違和感を覚えた。
 そもそも先ほどまでのブリーダーさんの表情もやたらニヤニヤしていたような気もするし……何だろう。このモヤモヤとした感じは。たしか昨日もあったような……
 「エトラル……来たのね」
  厩舎の奥から、聞き覚えのある声の主。
「エトラル……来たのね」
 厩舎の奥から、聞き覚えのある声の主。
 そちらに振り向くと、やはりそこに立っていたのは……
 「スピ姉! どうしてここに……?」
 「どうしてって、決まっているじゃない。……仕事よ」
  ぼくたちはお互いに歩み寄り、顔を近づける。
「スピ姉! どうしてここに……?」
「どうしてって、決まっているじゃない。……仕事よ」
 ぼくたちはお互いに歩み寄り、顔を近づける。
 何だか、スピ姉の様子もおかしい気がする。なんだか少し息が荒いし、それに……
 「……んぐっ!!?」
  ぼくの思考はそこで止まる。
「……んぐっ!!?」
 ぼくの思考はそこで止まる。
 気がつくと、ぼくの口元は塞がっていた。
 その正体はスピ姉の温かく、柔らかく……そして、ちょっぴり刺激的な口であった。
 最初はぼやっとして、その口の匂いと感触を思うがまま味わっていたのだけれど。
 ハッと気がつくと、ぼくは慌てて口元をスピ姉の口から離した。
 途中で中断されたせいか彼女は少しの苛立ちと、勿体ないような気持ちの混ざった表情を浮かべる。
 「ねえ、どうしたの!? 今日のスピ姉、何だかおかしいよ!」
 「まだ、気づかないの? 今日のあなたの仕事は……私と交尾することよ」
  その声の音は、いつものクールなスピ姉のトーンとは少し違う。
「ねえ、どうしたの!? 今日のスピ姉、何だかおかしいよ!」
「まだ、気づかないの? 今日のあなたの仕事は……私と交尾することよ」
 その声の音は、いつものクールなスピ姉のトーンとは少し違う。
 いつものクールさに加えて……艶やかな牝の音を感じられる。
 いや、声だけではない。その表情も、眼も、たてがみにも……牝独特の甘酸っぱさが見受けられる。
 「え……!? どういうこと? 交尾って……」
 「あなたはポケモンレース界のスターとして降臨し続けた。そして、あなたの母も父も、元々はポケモンレース界で活躍した名ポケモン。スターの血脈は代々受け継がれていくもの。……ここまでくれば、意味は分かるわよね?」
  淡々としていながら、微量の甘さも感じられる口調でのその言葉。
「え……!? どういうこと? 交尾って……」
「あなたはポケモンレース界のスターとして降臨し続けた。そして、あなたの母も父も、元々はポケモンレース界で活躍した名ポケモン。スターの血脈は代々受け継がれていくもの。……ここまでくれば、意味は分かるわよね?」
 淡々としていながら、微量の甘さも感じられる口調でのその言葉。
 どこか鈍いところがあると自覚しているぼくにも、その意味は十分過ぎるほど理解できた。むしろ、なぜ今まで気づかなかったのだろうか。
 ぼくの新天地での新しい仕事……それは、種牡ポケモンとして、ポケモンレース界で活躍できる仔どもたちを沢山生み出すことなんだ!
 そして、そのためにぼくがやらなきゃいけないこと……それは、多くの牝ポケモンたちと交尾を重ねて、タマゴを生み出していくことだ。
 なるほど。だからぼくの父も、そしてスピ姉の旦那さんも見かけない訳だ。ポケモンレースで優秀だった彼らはその血を後世に残し続けるべく、多くの牝ポケモンと交尾をしている。
 いちいち一匹の牝や仔に、つきっきりで構うことも出来ないのだろう。
 現状を理解したことで、これまで抱いていた謎も全て解くことができた。うん、できたのだけれど……

 いきなり交尾なんて……
 それに、そんな形で多くの牝と交尾をして、多くの生命を生み出していくなんて……
 そこに、本当の愛はあるのだろうか……?
 
 頭でははっきりと理解していること。それでも、心のどこかで受け入れ難い感情を抱いている。
 いいのか……? 本当にこれでい――
 「……んんっ、ぐっ!??」
  気持ち良くピリッとした感触が口元に伝わる。先ほど感じた魅力的なスピ姉の口づけは、再びぼくの思考を停止させる。
「……んんっ、ぐっ!??」
 気持ち良くピリッとした感触が口元に伝わる。先ほど感じた魅力的なスピ姉の口づけは、再びぼくの思考を停止させる。
 そして彼女は自らの舌を突き出すと、ぼくの口元をこじ開ける。
 ぼくはなすがまま、スピ姉のその舌を受け入れる。彼女はぼくの口の中を精一杯味わうかの如く舌を舐めまわす。
 気がつくと、ぼくはその強い舌の動きに負けないように、互いの舌を絡ませ合っていた。
 それは、とても濃厚で刺激的な味であり、ぼくの牡を高ぶらせていた。
 時が過ぎ、自然と互いの口を離す。2匹の間には一瞬、怪しい光で輝いて見える唾液が繋がり、そして落ちる。
 「……ねぇ、エトラル。やっぱり、私じゃ満足できないかしら……?」
 「え……?」
 「だってあなたはポケモンレース界の大スターだもの。私ごときの牝じゃあ、満足しないんでしょう?」
  そんなことは微塵もない。今のスピ姉はとても美しく、そして牝の艶やかさを醸し出していて……現に先ほどからぼくの中には、今まで自分自身が体感したことのない牡の本能が芽生え始めている。
「……ねぇ、エトラル。やっぱり、私じゃ満足できないかしら……?」
「え……?」
「だってあなたはポケモンレース界の大スターだもの。私ごときの牝じゃあ、満足しないんでしょう?」
 そんなことは微塵もない。今のスピ姉はとても美しく、そして牝の艶やかさを醸し出していて……現に先ほどからぼくの中には、今まで自分自身が体感したことのない牡の本能が芽生え始めている。
 それは確実に、彼女が牝として魅力的であるからだろう。
 だからこそ、胸にひっかかるものがあるのだ。
 「そんなことはない。むしろ……ぼくはスピ姉を愛している!」
  その言葉にスピ姉は驚いたようにピクンと反応し、俯いていた顔を上げる。
 「だからこそ、これから別の牝とも交尾をするなんて考えられない! 種牡ポケモンなんて、ぼくにはできないんだ!!」
  プツリと切れたように、感情を爆発させていた。
「そんなことはない。むしろ……ぼくはスピ姉を愛している!」
 その言葉にスピ姉は驚いたようにピクンと反応し、俯いていた顔を上げる。
「だからこそ、これから別の牝とも交尾をするなんて考えられない! 種牡ポケモンなんて、ぼくにはできないんだ!!」
 プツリと切れたように、感情を爆発させていた。
 激しい口調で言い切ると、ぼくの瞳に宿っていた雫が溢れ、下へとポタポタと流れ落ちる。
 これまで隠れていた愛情という想い。だからこその葛藤。そしてこんなみっともない姿を愛するポケモンに晒してしまう情けなさ。
 猛然とぶつかる複数の感情で、ぼくはもう訳が分からなくなってしまっていた……


 ふと、頬を流れていた雫をぬぐうような、生温かい感触が伝わってくる。
 ぼくが流し続けていたその涙を、スピ姉は舌で優しく舐めとってくれていた。
 「エトラル、ありがとう。あなたの愛情も、そして葛藤も……全て理解できたわ」
 「……ごめん。こんなみっともない牡で……」
 「ううん。あなたはとても強くて、そして優しい素晴らしい牡よ」
  その優しさで包まれている声に、ぼくは確実に救われていた。
「エトラル、ありがとう。あなたの愛情も、そして葛藤も……全て理解できたわ」
「……ごめん。こんなみっともない牡で……」
「ううん。あなたはとても強くて、そして優しい素晴らしい牡よ」
 その優しさで包まれている声に、ぼくは確実に救われていた。
 ……スピ姉は遠くを見るように、寂しそうな表情を浮かべて話し続けた。
 「残念だけど、あなたは大スター。大スターには、種牡ポケモンとして多くの仔どもをポケモンレースの舞台で輝かせてあげる使命があるの。ライダーさんも、ブリーダーさんも、そしてポケモンレースに携わるすべての人やポケモンもあなたに期待をしている。……こればっかりは、どうやっても変えられない事実なの」
  そうだ。いくら逃げようとしても、ぼくが決められることではないのだ。そして、みんなはスターとしてのぼくに期待している。
 「……でも、沢山の牝や仔どもがいてもあなたなら大丈夫。何度でも言うけど、あなたはとても強くて、優しい牡なのだから。数が多かろうが、あなたは全ての牝や仔を本気で愛してくれるし、そして相手の牝や生まれた仔も必ずあなたを本気で愛してくれる。だから、これからも自分を信じて、頑張ってほしいの」
 「ありがとう……スピ姉……」
  率直な気持ちを表した言葉しか出なかった。本当はもっと、しっかりとした言葉で感謝を伝えたかったのだけれども……今はただ、この言葉を繰り返すしかない。
「残念だけど、あなたは大スター。大スターには、種牡ポケモンとして多くの仔どもをポケモンレースの舞台で輝かせてあげる使命があるの。ライダーさんも、ブリーダーさんも、そしてポケモンレースに携わるすべての人やポケモンもあなたに期待をしている。……こればっかりは、どうやっても変えられない事実なの」
 そうだ。いくら逃げようとしても、ぼくが決められることではないのだ。そして、みんなはスターとしてのぼくに期待している。
「……でも、沢山の牝や仔どもがいてもあなたなら大丈夫。何度でも言うけど、あなたはとても強くて、優しい牡なのだから。数が多かろうが、あなたは全ての牝や仔を本気で愛してくれるし、そして相手の牝や生まれた仔も必ずあなたを本気で愛してくれる。だから、これからも自分を信じて、頑張ってほしいの」
「ありがとう……スピ姉……」
 率直な気持ちを表した言葉しか出なかった。本当はもっと、しっかりとした言葉で感謝を伝えたかったのだけれども……今はただ、この言葉を繰り返すしかない。


 ――ありがとう――と


 「スピ姉、行くよ!」
 「ええ、来て! エトラル!」
  落ち着きを取り戻し、互いの牡と牝を堪能して少し興奮気味のぼくたちはいよいよ、交尾の本番を残すのみとなった。
「スピ姉、行くよ!」
「ええ、来て! エトラル!」
 落ち着きを取り戻し、互いの牡と牝を堪能して少し興奮気味のぼくたちはいよいよ、交尾の本番を残すのみとなった。
 スピ姉はぼくにお尻を向ける。そこから見える、桃色の割れ目。既に熟しているのか、はっきりと液の湿り気を感じさせてくれる。
 ぼくの牡の象徴であるそれは、熟されて美しい牝の割れ目を見て、さらに元気を増して今か今かとその時を待っている。
 ぼく自身も早く一つになりたい――そのために、上手く反動を使って両前脚を高く上げる。
 そして何とかスピ姉の腰とお尻の中間部分を両前脚で掴むと、そのまま牡の象徴を彼女の割れ目の中へと進める。
 「うっ、あぁ」
  慎重に腰を出して、牡を彼女の中に入れていくが、思わず快楽の声をあげてしまう。
「うっ、あぁ」
 慎重に腰を出して、牡を彼女の中に入れていくが、思わず快楽の声をあげてしまう。
 気持ち良い。とても、その一言では表せない彼女の中。愛する者の締め付けはとても心地良く、そして未知の体感だ。
 彼女の方はというと、とても穏やかで幸せそうな表情を見せているが、まだ魅力的な喘ぎ声を漏らさないでいた。
 やはりこれは経験の差なのか。愛しているからこそ、少し悔しい気持ちを抱いたが、まずは早くその声を聞いてみたい――
 無意識の内にぼくは勢いよく、無我夢中で彼女に対して腰を突いていた。
 「ふぁ……ひゃあん!」
 「あっ、あぁん……」
  ぼくは牡とは思えない、激しい喘ぎ声を出していた。しかし彼女の喘ぎ声を聞くだけで、そんなちっぽけなプライドはどうでも良くなった。
「ふぁ……ひゃあん!」
「あっ、あぁん……」
 ぼくは牡とは思えない、激しい喘ぎ声を出していた。しかし彼女の喘ぎ声を聞くだけで、そんなちっぽけなプライドはどうでも良くなった。
 その永遠ともいえる美しすぎる快楽空間を、ぼくたちは心の底から味わっている。スピ姉もぼくも、口は半開きで目は虚ろに、それでも確実な幸せを噛みしめていた。
 そして、限界に辿り着いたぼくたちはいよいよその時を迎える――
 「あぅ、スピ姉、出すよぉ!」
 「私も、イくぅぅん!」
  ほぼ同じタイミングで、ぼくたちは幸せの絶頂を迎えた――
「あぅ、スピ姉、出すよぉ!」
「私も、イくぅぅん!」
 ほぼ同じタイミングで、ぼくたちは幸せの絶頂を迎えた――
 お互い渦のような快楽に飲まれ、意識は朦朧としている。
 そんな中でも、ぼくたちは同じ言葉を呟いていた。
 しつこい言葉かもしれない。それでも、呟かずにはいられない――


 「ありがとう――愛してる」
「ありがとう――愛してる」




 ポケモンレースのスターとして活躍したエトラルはその後、種牡ポケモンとして沢山のスターを生み出しました。
 かつて彼と一緒に走ったライダーは、彼の仔に乗って大レースに勝利! そのライダーはとても幸せそうな表情を浮かべておりました。
 また、彼はとても優しく、相手をした牝全てを愛しており、牝たちも彼の愛を快く受け入れておりました。
 長い間、彼が種牡ポケモンのスターとして君臨し続けたのも、その強さと優しさ故かもしれません。

 そんな中でも、彼とスピカとの間に生まれた仔どもたちは様々な伝説を残してくれました。
 その家族の伝説は、いくら語っても語りきれない程、凄まじいものですので……
 また、別の機会にお話をされてもらいましょうか。



 おしまい

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ノベルチェッカー

【原稿用紙(20×20行)】	27.7(枚)
【総文字数】	8499(字)
【行数】	241(行)
【台詞:地の文】	15:84(%)|1323:7176(字)
【漢字:かな:カナ:他】	29:57:7:5(%)|2545:4898:622:434(字)

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○あとがき

 ありがとうございました! からとりです。
 今回の同率優勝という結果に、ただただ驚いております。そして、本当に嬉しいです!
 思い返すと、初めて執筆した作品「[[勝利のラン>勝利のラン]]」もポケモンレースをテーマにしており、
 登場ポケモンも同じくギャロップとゼブライカでした。(この作品との関連性は全くありません)
 それから4年、色々なことがあって表現が変化したり、しなかったり……
 まだまだ未熟で、考えていた描写が上手く表現できなかったり等自覚はしておりますが
 これからも執筆を楽しみつつ、wikiに作品を投稿していけたらなと思っております。

○作品について

 「ほし」というテーマ発表後から、色々な方向性で考えましたが内容がギリギリまで定まらず……
 そんな時、丁度プレイをしていた某競馬ゲームで活躍していた流星馬(強い馬)が引退するタイミングになり、
 その際に思わず「これだ!」と閃いてプロットを作り始めました。
 勝負の世界でのスターの宿命に対して、戸惑いながらも気持ち良く(?)前向きに頑張ろうとする姿。そして受け継がれるスターの血脈。
 こんなことを表現できたらいいなぁと思って、色々頭の中で妄想(?)しつつ文字を打ち込んでました。
 種族がウマなので、ウマならではの表現も意識しましたが、もう少しポケモンならではの表現も入れていきたかったなとも。
 後はもっと濃密な官能を描きたかったのですが、文章が定まらず収拾がつかなくなりそうでしたので泣く泣く見送りました。
 表現したかったことができなかったり等、色々と課題も見えましたが、それでも楽しく執筆できたのでそこは良かったなと思っています。

○コメント返信

 > うまうま
   馬はこんな生活を送ってるのか…… (2016/09/19(月) 22:23 さん)

 実際の競馬界ではもっと過酷な現実があったりもします。
 サイホーンレース等が行われているこのポケモン界でも、やはり厳しい生活をしているポケモンもいるのでしょう。
 ですが、そこにいる方々はどうにもならない現実を受け止めつつも、愛をもって一生懸命頑張っているとも思うのです。
 哀しい部分もありますが、前向きに頑張っている彼らの姿に感謝して、これからも受け継がれていくスターを見ていきたいものですね。

 > 馬 最高です (2016/09/20(火) 19:24 さん)

 本当に最高ですよね!
 あの瞳、仕草、たてがみ、そして走り……ずっと見続けていたいですし、触れ合っていたいものです。

 > 競馬世界ではよくあること。馬はとても早いのが難点でもあり、魅力でもありますね (2016/09/23(金) 22:42 さん)

 本当に良くあることなんですよね……
 走りだけではなく世代交代も非常に早く、その血脈も途中で途切れてしまうこともあって本当に儚いものです。
 だからこそ、魅せられるものがあると思いますし、ファンとしてはずっと見続けていたいものでもあります。
 エトラルとスピカの仔たちが広げる、新たなストーリーにも思いを馳せていただけると幸いです。

 > エトラルの強さと優しさに惚れた。 (2016/09/24(土) 23:58 さん)

 私も書いていて、思わず惚れてしまいましたw
 こんな彼だからこそ、本当の意味でスーパースターになれたのだと思います。
 ぜひこれからも、そのスターを受け継ぐ仔を応援してあげて下さいね。
 




 最後になりますが作品をご覧になってくださった方々、投票やコメントをくださった方々、そして大会主催者様。
 本当にありがとうございました。

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 感想、意見、アドバイス等、何かありましたらお気軽にお願いします。
#pcomment(新天地でのスター目指してコメントログ,10)

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