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新世代・闇を浄化する者達2(2nd) の変更点


by[[メタル狩り]]
&color(red){※注意!ちょっとエッチに感じ取られる模写が一部あります。};
&color(red){気分を害されると思われる方は、読まれるのを控えてください。};

Previous>[[新世代・闇を浄化する者達2(1st)]]

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#contents

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***''&size(18){11.};'' [#wf539dd5]

「う…うま、かったぁ~!!!」

アルスはセレナとレンと共に机を囲んでいた。
机の上には、セレナが今まで出したことのない量の皿が積まれていた。
どの皿にも木の実を使った料理があった痕跡が。

「す、すごい食欲ねアルス…。レンさんから木の実もらってなかったら
 どうなるかと思ったわ…。」

「まぁ、アルの食欲はこういう訳でして。
 本当にアルの胃袋ってどうなっているんだか…。」

二人の話をよそに、アルスは一人、満腹感による悦に浸っていた。
それにしてもこの食事量は凄い。一日半食べていなかったからって、
こんなに食べ物が胃の中に収まるものなのだろうか。

「…にしても、アルス達って変わった旅をしてるのね。
 英雄達の子孫達を探してるなんて…。」

セレナは半ば呆れていたが、無理な話ではないので、興味さえ持ってもいた。
食事中にもアルス達はセレナと色々な話をしていた。
そのときに、旅に出た理由なども語っていたのだが、
「何故、英雄の子孫を探しているか」と本来の目的までは言っていない。
言ったところで、誰も信じないだろうから。

「セレナさんの話も素敵ですよ。この街と一人暮らしに憧れて
 親を離れて一人で暮らしているんだなんて…。」

「あ、はい。私、両親とこの街に旅行で遊びに来たことがあって。
 一人暮らしに憧れ始めていたときに、この街を思い出したんです。
 こんな素敵な街で一人気ままに暮らすのもいいかなぁ…って。」

セレナとレンだけで話に花を咲かせていた。一方のアルスの方は、
…そのまま寝てしまっていた。

「ん?…ちょっとアル!ここで寝ちゃったらまずいですって!
 起きてくださいよっ!」

レンはアルスを揺すってみるが…。こうかはないようだ…。▼

「ん?何か変な音が聞こえたような…。」

レンは思わず首をかしげた。気のせいだろう。

「あぁ、アルスが疲れているようでしたら…
 休ませていても大丈夫ですよ?私は気にしませんから。」

「でも微妙な時間ですし…寝かしてたら夕方になっちゃいますって!
 宿とかも探しておかないと…。」

レンは焦りながら話した。ちなみにレンが言う宿とは、
この世界でいう、ポケモンセンターとかである。
…時刻は既に3時を過ぎ去っている。
食事やら話やらに時間を費やしていた結果であろう。

「あれ、サーズンシティには確かポケモンセンターとかは
 なかったと思いますけど…。」

「え゙っ…。」

しばらくの間、沈黙が続いた。レンの方は額に汗を浮かべている。

「…どうしましょうか。野宿になるとか考えてませんでした…。」

「あの、なんなら…泊まっていきます?」

重苦しかった空気が一気に吹き飛ぶ。

「え、いいんですかっ?」

「いいです。幸い空き部屋が1つありますから。
 そこで休まれるといいですよ。」

部屋の中に、熟睡してしまったアルスの寝息が響く…。
アルス達は、セレナの家で一晩過ごす事になった…。

***''&size(18){12.};'' [#s882dccd]

&color(blue){(とあるポケモン視点)};

俺は一体何をしているのだろう…。そもそもこの心の苦しみの原因が
分からない。何故俺は苦しんでいるのだろう。

気がついたら俺は一人になっていた。女房と息子がいたはずなのに。
家の中は荒れに荒れていた。惨状の仕業が俺のせいだと知った時は
既に遅かった。…今じゃ女房達は彼女らの実家に戻って、
静かに暮らしているらしい。なのに俺ときたら…。

「…こんな惨めったらしい生活を続けている俺は何なんだ…?」

俺は家に帰って一人、薄暗い部屋に引き篭もっていた。
少しはストレスも発散できて落ち着くだろうと散歩してみたが、
誰かについ当たってしまったりして、もやもやが大きくなるだけだった。

一人暮らしで頑張っているセレナちゃんや、見知らぬリオルにまで
自分の怒りの矛先を向けてしまったことを俺は悔やんでいた。
何故俺は関係のない人ばかりに当たっているんだ。

俺は孤独な生活を続けて何ヶ月かに至る。今まで平気だったくせに、
最近じゃ急に寂しさや苛立ちが辛く感じるようになってきた。
あの忌まわしい出来事が起きたときのようだった。

…変なもやもやに、心を締め付けられたような。苦しい感じだ。
そして気がつけば…。俺は何をしたかさえ覚えていなかった。

女房達が出ていってから、度々手紙が届くようになった。
差出人は他でもない。女房からだった。

落ち着けたら寄りを戻したいとか、またやり直そうだとか…。
俺だってそのつもりだ。できることならすぐにでもそうしたい。

だが、俺は手紙を見るたびに、またもやもやに心が締め付けられる。
この苦しさは一体…。

「ぐっ…。俺の体がおかしいのか…?…ううぅ…。」

&color(red){『ククク…、ソロソロ、コロアイカナ?』};

「な、なんだっ!?」

突然俺の目の前が闇に包まれた。…何なんだこれはっ!?

『イツザイヲ、コノマチカラサガシテミタガ、セイカイダッタナ…。
 オマエニアバレテモラッテ、フノパワーヲ、フヤストスルカナ…。』

&size(18){「あ…あ゙ああああぁぁぁぁぁっ!!!!!!」};

俺はどうなってしまうのだろう。そのまま俺は闇に飲まれて、
意識を失ってしまった…。

『メザメルノハアシタダナ…。ゾンブンニアバレテモラウゾ…。
 フノパワーガアツマレバ、ワタシガメザメルノモ
 タヤスクナルカラナ…クックック…。』

***''&size(18){13.};'' [#d4fe2c9c]

外は既にオレンジに染まっていた。太陽が沈み始め、
真っ白いサーズンシティはたちまち夕日の色に変わっていく。
まだ何人かの商人達が商売を続けていた。
その中にはさっきのカクレオンとかも…。中々熱心である。

「…………、…んぁ?」

アルスは眠りから目を覚ました。一応旅の疲れも溜まっていたらしく、
飢えが無くなったらで、今度は睡魔に駆られたようだ。
アルスが起きた場所は…。さっきとは別の場所だった。

「…あれっ?セレナちゃんの料理食べた後、腹一杯になって
 気持ちよくなって…、そのまま寝ちゃったんだっけな。
 けど此処どこだ?」

どうやらアルスは知らない部屋で寝ていたようだ。
ご丁寧に寝ていたアルスには毛布が掛けられていた。
(※アルスはレンが、毛布はセレナが運びました)

アルスと毛布以外には、いくつかダンボールが積まれているだけ。
窓が二つほどあったが、どちらからも日光は差し込んでいなかった。
入ってくるのは、夕暮れの涼しげな風と微かな風音。


「え~っと…、レン達はどこだ?」

アルスはひとまずその部屋から出てみる。居間から近い部屋だった。
さっきアルス達が食卓を囲ったのは居間だった。
その居間からなにやら水道と食器の音が…。

「セレナちゃーん?レンー?」

アルスは名前を呼びながら居間に入ってくる。
居間のキッチンで、セレナが一人。大量の食器を洗っていた。

「んしょ…んしょ…。」

セレナは食器洗いに夢中でアルスには気がついてないようだ。

(…それにしてもセレナちゃんって器用だな…。
 イーブイって四足歩行のポケモンじゃなかったっけ?)

アルスはまじまじとセレナが食器洗いをしている所を見る。
前股をキッチンに乗り上げ、前足を使って食器を洗っている。

「セレナちゃん、食器洗いおつかれさま…。」

アルスはとりあえずセレナに声をかけてみた。
ちょうど一段落終えたとこらしく、
タイミングよくセレナが反応した。

「あっ、アルス…。起きたのね?」

セレナはちょっとドキッとしつつ返事する。

(あれ?おどかすようにはしてないんだけどな?)

アルスはちょっと不思議そうにしたが、深くは考えなかった。

「ごめんね、食べただけで勝手に寝ちゃって…。
 皿洗いとか手伝おうか?」

アルスはまだ少し残ってる汚れた食器を見ながら聞いた。
といっても、全部の汚れた食器の内四分の三くらいがアルスの仕業だが。

「いや、大丈夫だよ…。ありがとね♪気遣ってくれて…。」

セレナは嬉しそうに笑い、皿洗いに戻る。何だか急に
機嫌が良くなった(さっきは悪かったという訳ではないが)ような…。
まぁいいか。と、アルスは心の中で呟く。

「あ、そういえばレン知らない?いつのまにかいないんだけど…。」

「レンさんなら、「また資金貯めとかないと」て言って
 バイトとか探しに行ったよ。商人さんが一杯いるから、
 仕事なんてすぐ見つかると思うけど♪」

セレナはそう言った後にこう付け加えた。

「なんだったらもう何日居ても大丈夫だよ♪
 レンさんにもそう言ったら「さすがに迷惑すぎちゃう」って
 困ってたけど…。いい人なんですねレンさんって…♪」

(…あいつ真面目なやつだからなぁ。)

アルスはしみじみ思った。レンは幼い頃から
とてもいい性格だという事を知っていた。

幼少時代、アルス達の故郷にまだ人がいた頃は、
レンの噂が広がっていたくらいだ。
確か将来が楽しみだとか…。まぁレンだからな。分かる。
アルスは昔の噂を思い返して同意した。したとこで何でもないが。

「分かった。…んじゃ、何か手伝いとかあったら呼んでね。
 セレナちゃんの料理平らげといて何もしないっていうのも…。」

アルスが頭を掻きながら言うと、言葉を遮るようにセレナが言った。

「…ねぇ、さっきから気になってたんだけどさ。」

「ん?」

また皿洗いを一時中断させ、アルスの方に向き直る。

***''&size(18){14.};'' [#c0a3fb82]

突然セレナに不満そうな声をかけられてアルスは口を止める。

「アルスは私と同い年なんでしょ?だったら何でちゃん付けするのよ。」

「へっ?いや、だからと言って呼び捨てなのも失礼かと。」

アルスはそう答えた。確かに言い分は通っている。

「…私はアルスのことさっきから呼び捨てにしてるけど。気にしないの?」

「ん?あぁ、別に気にしてないけど?」

アルスはそっけなく言う。どうやら本当に気にしてないらしい。

「…あのさ、アルスも私のこと呼び捨てで呼んでも構わないわよ?
 私としては同い年だし呼び捨てで呼んでもらった方が気が楽というか…。」

セレナはそう言ったが、後述の方は声が小さくなっていた。

「ん~。まぁセレナちゃ…、っと。セレナがそう言うなら。こんな感じ?」

アルスはセレナの希望通りに呼び捨てで呼んでみた。
一応レンと呼び捨てで呼び合っていることもあり、抵抗は感じてない様子。

「…ん、それでいいよ。ありがとう…。」

セレナは笑顔で感謝した。
…気のせいだろうか。セレナの顔が&color(red){赤い};ような。

「あれ?セレナ顔赤いような…。どうしたの?」

さっそく呼び捨てでセレナに聞いてみるアルス。

「えっ!?…いやっ、何でもないよ!あはは…っ。」

慌てながら否定(?)し、セレナは再び皿洗いに戻る。
何かさっきより顔が赤くなっているが、アルスはそれに気づかなかった。

(どうしたのかな…。まぁ熱ではないよね。多分。)

アルスはそう考えながら、居間から出ようとした…。

「ただいま帰りましたぁ~…。」

「お、レンの声だっ♪」

アルスはすぐさまレンの声がする下…玄関へと軽く走った。

「おっかえりぃ♪…そういえばレンにこの言葉言うの初めてじゃん。」

レンに迎えの挨拶と同時にアルスはそう呟いた。

「あ、そういえばそうですね…。って気にすることでもないのでは?」

レンはくすっと笑いながらアルスに軽いツッコミを入れる。

「とりあえずこの街でのバイトが見つかりましたよ♪
 カクレオンさんが雇ってくれる事になりました。」

レンはそう説明しながら居間の方へと向かう…。

「あ、レンさんおかえりなさい。バイトは見つかりました?」

セレナがキッチンの方から近づいてくる。ちょうど皿洗いが終わったようだ。
レンはカクレオンが雇ってくれた事をセレナに告げた。

「へぇ、カクレオンのおじさんの所ですかぁ…。いい人なんですけど…。
 あの人の店かなり人気だから・・・。仕事大変だと思いますよ?」

セレナはレンに心配そうに言った。

「大丈夫ですっ!伊達にかくとうタイプしてませんからっ!」

(いやっ、確かに肉体労働かもしれないけど、それって関係あるのか?)

アルスは心の中でレンの言葉にツッコミを入れてみた。

「それならいいですけど…。無理は禁物ですよ?」

「…それでセレナさん。しばらくバイト続けようと思うんですが…その…。」

レンは決まりが悪そうに頭を掻きながら俯く。

「だから言ってるじゃないですか。何日かくらいなら泊まってもらっても
 構わないって。…結局、泊まっていくんですね?」

わざとっぽくにこにこしながらセレナはレンに問う。

「…はい。お願いします。すいません…。」

レンは俯いたままセレナに懇願と謝罪をした。本当にいい性格している…。

「…そういえばセレナさ…。レンにはさん付けで呼んでるけど…何で?」

アルスはふと疑問に感じたことをセレナに問う。
レンはあんな性格だから、
誰にでもさん付け(アルスや小さい子供を除く)で呼ぶことは知っているが。

「え?だってレンさんは年上じゃない。さん付けが当たり前でしょ?」

セレナは本人の目の前ではっきりと言った。レンは俯いたままだ。

(…いや、年上って言ったって、一つだけでしょ。)

***''&size(18){15.&color(red){(微官能模写あり)};};'' [#l8989ec3]

&color(blue){(セレナ視点)};

レンさんが帰ってきた後、私達は夕方の食卓を囲った。
アルスは昼食にあれほど沢山食べたというのに、それに劣らず
また凄い量の料理を平らげた。念のため多めに作っといて良かった…。

おかげでまたしても大量の食器を洗う羽目になってしまった。
…けど別に苦とは思わなかったし、
むしろ料理を作った側としては嬉しかった。あんなに美味しいそうに、
そしてこんなに沢山食べてくれたのだから。

レストランとかで働くコックさんとかが、
お客さんに美味しい料理を食べてもらいたい。
とかいう台詞を思い出してみた。きっとこんな気持ちなのだろう。

一応私の家には、四人家族が半年間は食べていけるほどの
木の実を蓄えてある。…どれぐらい分かってもらえたかな。
この大量の蓄えのおかげで、今のところはアルスの食欲に


「そういえばセレナ。僕が寝てた部屋にやたらダンボールが
 積まれてたけど…あれって何?」

「あぁ、あれは…。非常食よ。念のためにね。
 …言っとくけどアルス。つまみ食いとかしないでよ…?」

アルスにあの部屋(物置だがアルスとレンさんに寝室として貸してあげた)の
荷物のことを聞かれたが、私はそれとなく誤魔化しといた。
ちなみにあの中身は…非常食と言っても嘘にはならないと思う。
先ほど言った私の家の食料の全てだ。あの部屋は日当たりは悪いが風通しは良い。
木の実を保管して置くには上出来な所…なんだ。

ただし、アルスにはストレートに教えたくはなかった。
…下手したら食料破綻にされてしまう程の食欲だからね。
だから私は教えるついでに睨みを利かせといた。
アルスに効いたかどうかは分からないけど…。

「あぁ大丈夫ですよ。アルは飢えてない限りつまみ食いとかはしませんから…。」

レンさんがアルスをかばう感じに話してきた。
これを聞いて私は安堵する。それなら良かった…。

「そうだよっ。いくら僕だってそんな意地汚い真似する訳ないじゃないかっ。」

レンさんにかばわれてアルスは少し胸を張って言う。

「まぁ飢えているとつまみ食いどころかフライングで勝手に
 食事を食べ始めたりするらしいですけど…。」

「ちょ、ちょっとレン!?それは言わなくてもいいでしょっ!?」

くすくす笑いながらアルスの恥部を暴露するレンさん。
顔を赤くしつつ思いっきり慌てだすアルス。

…アルスって可愛いとこもあるんだな。

「…あれ?セレナまた顔が&color(Red){赤く};なってるよ?」

「へっ?」

突然目の前に映される現実。目の前の現実では、
既に顔から赤みを引かせた普通のアルスが、私の顔を覗き込んでいる…。

「あれ、本当です…。セレナさん顔がちょっと&color(Red){赤い};ですよ?」

レンさんにも同じことを聞かれる…。
''…やばっ。私何考えてるんだろ…。''
急に自分が考えていることが恥ずかしくなった。
…多分、私の顔はますます&color(Red){赤く};なってると思う。

「な、何でもないわよっ!…それよりっ、もう夜になるんだから、
 そろそろ寝た方がいいよっ!ほら!寝た寝た!」

「えっ!何で何で…わわわっ!」

「セレナさん熱とか大丈…ひゃあー!?」

恥ずかしさのあまりアルスどころかレンさんにまで
荒い言葉使いをしてしまった。
だが今のこの状況はとてもじゃないが耐えられない。何だか恥ずかしい。
私は二人を寝室(貸した物置)へと強引に促した。

―――――時は、外が真っ暗な暗闇に包まれる時刻。
静かな風音と、どこかのホーホー達の鳴き声が、見事な子守唄となっていた。
この子守唄に逆らえる者はサーズンシティにはおらず、全員が寝静まっていた。

…だけど私は、喉が渇いて目を覚ました。
買い物や、ならず者事件や、料理や、食器洗いやらで忙しかったのに、
水分を取る機会がなかったせいだ…。

「…喉が渇いたな。何か飲んでこよっと…。」

&color(lavender){(デジャヴじゃないよ!決してデジャヴじゃないから!by作者)};

何か今怪しい空気が流れた気がしたが、とりあえずスルーしといた。
私は居間のすぐ隣のダイニング・ルームから居間にある冷蔵庫へと向かった。
この点で言うと、私の家の部屋配置は案外便利なのかも知れない…。

「(ゴクッ…ゴクッ…)ぷあぁ~!水分補充完了っ!」

真夜中なのでそれなりに音量を自重しつつ、私は喉が潤う感動に浸る。
いつもよりジュースが美味しく感じる…。

「…そういえば、アルス達はちゃんと寝てるかな…?」

アルス達の事が気にかかり、私は様子を見に行ってみた。
さすがに暗くて見えなかったので、
居間や物置に通じている通路だけ電気をつけておく。

「そ~っと…。寝てたら起こしちゃうとまずいしね…。」

できる限り足音を立てないようにして、物置を覗いてみた。
…アルス達は、毛布に寝包まって気持ちよさそうに寝ている。

(良かった…。床じゃ寝れなかったりしたらどうしようって
 思ってたけど…。ちゃんと寝れてるね。)

その時だった。アルスが寝返って、寝顔がこちらに向けられる。
その寝顔からは笑みがこぼれていて、幸せな夢を見ていることを物語っていた。

(…っ!!!)

その寝顔を見た瞬間、何かが私の胸を高鳴らせた。
…何か顔が熱い気がする。どうしたんだろう私…。

(なんとなく…なんとなく分かる…。初めての事だけど…。)

アルスが私を助けてくれてからだ。あの時の格好良かったアルスを
思い出すと、胸の高鳴りがひどくなるのだ。アルスが目覚めて来て
声をかけてくれた時も、私を呼び捨てで呼んでくれた時も…。
私はその胸の高鳴りの正体に気づき始めていた。
私の性分、信じなかったり嘘だとは思わなかった。この気持ち…。

''(私…アルスの事…好きになっちゃったみたい…。)''

この街で暮らし始めてから、アルス達は私にとって
年の近い初めてのポケモンだった。だからこんな感情を抱く機会なんて
無かった。だけど初めて会って
いきなりあんな格好いいとこ見せられちゃったら…。

(―――――っ!!!???)

自分自身の考えが頭の中で爆発する。やばい。
これ以上考えてると恥ずかしすぎてどうにかなっちゃう。
私は真っ赤な顔のまま自分の寝室へと戻った。
…この気持ち、どうすればいいのかな…。

&color(Blue){(視点切り替え)};

「むにゃ…。このクラボの実なんか硬い…(アムアム)」

「あ…ああぁ…。そ、こ…はだ、だめ…ですよっ…」

アルスが寝ぼけてレンの手を甘噛みしている。
レンは夢の中にいながらそれに反応して喘いでいる。
…幸いにも、セレナの耳には届いていなかった…。
寝ている二人のどっちかが目を覚まさない事を祈る。

***''&size(18){16.};'' [#hfdab8fc]

サーズンシティに、また新しい朝がやってきた。
まだ外に出向かう客もいないというのに、既に街道には
何人かの商人達が既に出店を開いていた。

アルスはバッチリ目が覚めた…のだが、
レンとセレナは未だに目が虚ろで、眠気が残っている事が伺える。
朝食の準備も昨日よりも手間取ったようだ。

「あの…二人ともどうしたの?何でそんなに眠そうなの?」

自分だけ寝起きが良いというのもおかしく感じたようで、
アルスは朝食の食卓を囲う際に二人に聞いた。

「「………。」」

お互い顔を赤くしたまま何も答えない。

(…僕なんか悪い事したかな?)

一人途方に暮れたアルスは涙目で料理を食べ始めた。
二人も食べ始めたが…やはりどこかぎこちない。

(…絶対言えません…俺があんな厭らしい夢見てしまったなんて…。)

(…絶対言えない…アルスの事考えただけで寝れなくなったなんて…。)

二人の寝起きが悪い原因がアルスだとは、本人が知るよしもないだろう。
ただ恥ずかしさを紛らわすためにだけ二人も料理を食べていった。
…レンが見たという夢も気になるところだが、そこはスルーしておこう。

沈黙が続いた朝食も終え、三人は食器を片付け始めた頃には、
セレナとレンにも口数が戻っていた。どうやら落ち着けた様子だ。
アルスはとりあえず一安心した。
疑問もまだ残っていたが、別にいいだろうという事で終わる。

朝食も済み、三人は別々に時間を過ごす事になった。
レンはさっそくカクレオンの出店へと出かけたようだ。
セレナは食器の山をいつものペースで洗い片付けている。
アルスは…一人で迷っていた。

セレナの手伝いでもしようと思ったのだが、案の定、
「まだ大丈夫だから」で追い返されてしまう。
セレナがしっかりしているからか、あるいはアルスを
家事の邪魔者扱いなのか…多分前者の方であろう。

「はぁ…暇つぶしに家の探検でもしてみるかな…。」

アルスはちょっと危険な提案を出してみた。
何故危険かは…一人暮らしの少女の家を勝手にあれこれ
探索なんかしてみよう。乙女の怒りはマルマインのだいばくはつである。
といってもアルスにそんな乙女心なんて分かる訳でもないのだが。

「ん~と…あっちの部屋がまだ見てないな。」

アルスは居間の隣にあるダイニング・ルームに気づいた。
…セレナの寝室である。個室である。危険地帯である。
アルスは堂々と入っていった…。
キッチンから丸見えのはずなのだが、
セレナは食器洗いに夢中で気づかなかった。

「…ん?何かいい臭いが……♪」

臭いの正体は、芳香剤であった。ちなみに、ラムの実使用のようである。
その部屋の中を見れば、いくらしっかり物のセレナでも
やっぱり女の子だと言うことがよくわかる。

壁は白く、家具は茶色で統一されてるのは変わらないが、
敷かれたカーペットは可愛らしいピンク。タンスや部屋の片隅には
大量のぬいぐるみが…。女の子の部屋にはよくある事だ。

「…ピンクと紫で綺麗な部屋だな。セレナの部屋かな?」

何て呟きながら辺りを見回してみると…。何かが目に入った。
ポケモンが使うような机に飾られた額縁のある写真立て。…その中には、
幼きセレナを抱いた&ruby(たくま){逞};しそうなブラッキーと美しいエーフィ。
三人のポケモンが写っていた。少し色落ちしてるとこを見ると、
けっこう古い写真だということが見て取れる。

「これってセレナの家族?…セレナも可愛いじゃん♪」

アルスはセレナの両親にも見とれてたが、
その後は幼きセレナの姿に釘付けとなっていた。

今のしっかりと見開いている綺麗な目は、昔はちょっと小さくて円らで。
幼き耳は張りというのをあまり知らないのか、今と比べて垂れ気味で。
今のスタイルと比べると若干ぽっちゃりしているような。
これが俗に言う幼児体型というやつなのだろう。なんとも可愛らしい…。

&size(30){「ちょっとアルス…。何やってんのよ。」};

…突然ドスのかかった恐ろしい声が後ろから聞こえてきた。
アルスがヘルガー達に言ったときくらいの迫力である。
アルスはたじろぎもせず、いつもの変わらない調子で答えた。

「ん?あぁ、セレナか。いや、暇だったもんだから探検。」

「勝手に私の家を探検しないでっ!!!」

かなり怒りのこもった叫びだった。相当怒ってるのだろう。
セレナの顔の&color(Red){赤み};は自室を見られた恥ずかしさからか、
それともプライバシーを知らないアルスへの単純な怒りからか。

「何をしてたの…私の部屋で…っ。」

「あ、やっぱりセレナの部屋だったんだ…。これ見てたんだけど。」

セレナの怒りに気づいてないのか…アルスの様子は変わらない。
言い方によっては天然といえるのか。
アルスはさっき見ていた写真を指した。

「…それ、私の家族の写真よ。ちょっと昔のだけどね…。」

セレナは怒りが納まってきたのか、声に落ち着きが戻っていた。
アルスに悪気がないことが分かったのか…一安心である。

「セレナの両親って綺麗だね…。…小さいセレナも可愛いし♪」

「っ!!??」

セレナの顔が再び赤くなる。今度は恥ずかしさのせいだろう。

「…って、それって今は可愛くないって事?」

顔が赤いままセレナは不満そうにアルスに言い返す。

「いや。今のセレナは可愛いというより…んー。綺麗だと思うよ。」

「………っ!!!」

セレナの顔から湯気があがる…。
…今なら彼女の頭上で鍋が作れそうな気もする。すごい熱気だ。

「…そういえばセレナ昨日も何度か顔を赤くしてたよね?
 風邪…引いてるの?」

その様子を見ていたアルスが心配そうな表情に変わる。
この状況で赤くなっている原因に気づかないとは…天然恐るべし。

(…このニブチン。)

セレナは自身の思いをあちら側から気づいてもらうのは
無理そうだと悟った。胸の内に切なさが残る。

「風邪なんか引いてないわよ。それよりあまり私の部屋見ないでよ。
 恥ずかしいじゃないっ。」

「うわわわっ…。」

セレナはアルスの背中を押して部屋から追い出す。
アルスは渋々と自分の寝室(物置)へと戻っていった。

(…よく考えたら、アルス達はまた旅に出るんじゃない。
 こんな感情抱いてたら…虚しくなるだけじゃない…。)

セレナは部屋に残って、自分の抱いてる感情に一人悩まされていた…。

***''&size(18){17.};'' [#cc64f30c]

「らっしゃいらっしゃい~!!!美味い木の実が揃ってるよ~!!!」

「今ならセットでお買い得だよ!!!さぁ買った買ったぁ!!!」

「掘り出し物の薬品!!!今ならタウリン限定10名様に
 大放出だよ!!!鍛えてる人御用達の代物だよ~!!!」

「そういやこっちに来るの初めてだから分からなかったけど…
 すごい活気だな。ていうかタウリンって何…?」

アルス達がサーズンシティに訪れて二日目の昼過ぎ。
初日の時と変わらず、サーズンシティはお客と商人達の活気で
溢れかえっていた。バザーという訳でもないのに、
この盛り上がりはどこから来ているのか…。謎である。

アルスはセレナに追い出された後、二度寝する気にもなれず、
しかたなく暇つぶしに外出せざるを得なくなったのであった。

「そういやレンはカクレオンのお店で働いてるって言ってたな。
 せっかくだし覗いていかなきゃ♪どこかなーっと…。」

アルスはレンが勤める事になったというカクレオンの店を探し出した。
セレナの言葉によると、かなり人気の店だと聞いていたが…。

「お、それらしいな。レンはいるのかなー?」

案外早く見つかったようだ。何か他の出店と比べると人だかりが多い。
よく見ると行列が少しできてるし。商売繁盛の印である。

「はいよっ!木の実五点セットで600Pだよっ!」

「…こちら、600Pになります♪お買い上げありがとうございます♪」

「あら~。可愛い新人さんが入ってるじゃない♪
 またこのお店寄らせてもらうわよー♪」

「へいっ!毎度どうもっ!ありがとうございやすっ!!!」

「あ、ありがとうございますっ!またお越しください!!!」

「…レン意外に張り切ってるな。カクレオンのおじさんもすごい…。」

なにやらレンがルージュラのおばちゃんに気に入られたようだ。
当の本人は少し照れくさそうにしてる…。嫌気とかはしないのだろうか。
しかしルージュラの話からすると、レンというニューフェイスの効果で、
商売繁盛に繋がっているようだ。カクレオンのおじさんも喜んでる。

「レンー。お前凄い頑張ってるなあ。」

「…え?あ、アル!ちょっと今忙しいから…。」

レンがアルスに気づいて慌てだした。
…今の状況。僕は邪魔なのか?とでもアルスは言いたげな表情になる。

「ん?レン君の友だちかい?なら休憩ついでに構ってやんな!
 お前の働きっぷりなら後でいくらでも取り戻せんよ!」

カクオレンのおじさんが二人の様子に気づいたようで、
二人のために粋な計らいを提案した。

「あ、ありがとうございます!」

「えーっ!リオルちゃん早く戻ってきてーっ!」

「あなたがいないと買いがいがないわよ~っ!」

「まぁまぁ奥様方。レン君また後で戻りますから。
 またごひいきしてくださいよぉ。」

レンが引いた途端に騒ぎ出す主婦層の客をカクレオンがなだめる。
主婦ってミーハーが多いというか何というか…。

「レン…お前おばちゃん達にモテるなぁ。子供の頃からそうだったよな。」

「いやぁ…。俺なんかモテる要素なんかないのに…。何か嬉しくて…。」

そういってレンは照れ気味に頭を掻く。ってちょっと待て。
どうやらレンは自身のモテ要素を自覚してないようだ…。

(自覚がなくて分かってないレンに変わって僕が答えよう。
 レンのモテ要素なんてかなりあるぞ。
 ''1.素直な表情作りが得意''
 ''2.一人称が俺でも全て敬語という礼儀正しさ''
 ''3.雄の子の中ではイケメンだと思う。(アルス談)''
 ''4.いつでも相手を気遣う優しさもある''
 ''5.まだまだあるはず。''

 …おっと、いつのまにか過評してるよ僕。)

(…まぁ、この謙虚さ(?)もレンの長所なんだが。)

「…アル?何ボーっとしてるんですか?」

「へっ?あ、いや、なんでもないっ!」

いつのまにかアルスはレンの想像に耽っていたようだ。
本人の目の前だというのに…。レンの声でアルスは我に返った。

「あ、そうだ…。レン、お前何日ぐらい頑張るつもりなんだ?」

「そうですね…。五日くらい頑張れば、
 また当分の旅費が確保できそうなんです。
 カクレオンさんが事情聞いてくれて、高収入を約束してくれたんです♪」

「へぇ…。いいおじさんだねぇ。店が&ruby(はかど){捗};ってるのも分かる気がする。」

アルスはレンの話を聞きながら、少し居心地が悪くなっていた。
レンが言う旅費というのは、大抵アルスの食費で消費されている。
これが意外とかかるのだ。アルス自身は分かっているが、
己の食欲が計り知れないのはより分かっている。どうしようもない。

「あー。そうだレン。朝セレナと同じく赤くなってたけど。一体何が…。」

「…そろそろ戻らないとっ!それじゃアル!また後で…っ!!!」

居心地の悪さを紛らわそうと話題を変えてみたアルスだったが、
ネタが悪かったようだ。朝のアレを話に引っ張り出した途端、
レンは顔を真っ赤にして店へと戻っていってしまった。

(…本当に気になるんだけどな。まぁ忘れるとするか。)

アルスはレンが店へと戻っていくのを確認して、
また街の徘徊へと戻るのであった…。

「…お、おかえりレン君!友だちは帰ったんかい?」

「え、えぇ。まぁ…。」

カクレオンがレンに声をかけるが、レンは俯き気味のまま曖昧な返事をする。

(…あの夢はトラウマです。忘れることにします。)

その後、レンの仕事の能率が上がったか下がったかはアルスは知らない…。

''&color(blue){(~ちなみにその後。)};''

「…ほらほら、あそこにいる…可愛いリオルちゃん。」
「あれがレンちゃん?あらぁ~可愛いじゃないの~。」
「ちょ、そこ割り込まないでよぉ!アタシが先並んでるじゃないのぉ!」
「上等じゃない!やれるもんならやってみなさいよぉ♪」
「問答無用!レンちゃん見るまで帰らないわよっ!バトルでも何でも…」

「お、お客様方!お静かに並んでください~っ!!!」

「…俺が来たときここまで人気でしたっけ…?」

その日の真昼、カクレオンの出店は今までにないほどの数の行列を記録した。
噂を聞いてもの珍しさから訪れたお客は数割程度。
大半はこの街や他の街からやってきたおばちゃんポケモン達で行列が埋められていた…。
今日のサーズンシティは、おばちゃんポケモン達の変な騒ぎに包まれる。

***''&size(18){18.};'' [#eca9e302]

「…気のせいかな。なんか通行人が減ったような…。」

アルスは街道を歩いて突き進んでいた。さっきまでは
真っ直ぐ通れるものの、ちょっとした人込み状態だったはずなのだが。
ある程度残っている通行人達は並んでる出店に目もくれず、
奥へと走っていった。出店の主達は渋い顔をしてそれを見送ってる。

(商売繁盛な街じゃなかったのか…。お客も減ってるような…。)

…原因はレンにあった。おばちゃんポケモン達が噂を広めて、
街中のポケモンがカクレオンのお店へと出向いている。
なんかこのままじゃ他の出店がつぶれそうな気がしてならない。
もちろんアルスはこの怪奇現象がレン効果のせいだということは知らない。

「…あれ?」

アルスは何気なく入り口の前を通り過ぎて、回って戻ろうとした。
その時、街道に黒いコゲ跡が残っているのが目に付いた。

「あ、これって昨日の昼の馬鹿ヘルガー達の時のだ。」

コゲ跡を残した張本人はすぐ気がついた。
だが、コゲ跡だけが残ったその場所には、馬鹿二人組みはいなかった。

「…そういやヘルガー達はどうなったんだろ?」

アルスは頭を掻きながら再び歩き出した…。

&color(blue){(セントラルシティのとある施設)};

「おーい!なんでナンパで捕まんなきゃ
 いけねえんだよおおおぉぉぉ!!!出してくれえええぇぇぇ!!!」

「兄貴、ナンパ以外にも落書きだとか街中徘徊とかげふっ!!??」

「おい五月蝿いぞそこの囚人!静かにしてろっ!」

牢屋の中で、デルビルにヘルガーのだましうちがクリーンヒットする。
ヘルガー兄弟はあの後、搬送されて
セントラルシティの留置場に入れられたのであった…。

&color(blue){(サーズンシティ)};

「まぁこの街から出て行ってくれてれば本望なんだけどなぁ♪」

アルスは独り言を言いながら、セレナの家にでも戻ろうとしていた。

……………。

「…ん?」

アルスはある一軒家の前で足を止めた。
門の壁のポストには読まれることのない手紙で溢れかえってる。
入り口のドアには…何やら不気味さを感じさせるようなヒビが。

「ちょ…誰の家だよ…。不気味だなぁ…。」

なんてアルスはぶつぶつと呟くが、止まった理由は別にあった。
何やら変な気配がする。しかもどこかで感じたような…。

(…これって、母さん達が殺されてた時と同じ感じ…?)

そう、アルスが感じたのは、悪い予感を煽る雰囲気。
血の臭いこそしなかったが、それはあの夜の事件と似ていた。

(…窓があるな。ちょっと覗いてみるか…。)

本来、覗くのも犯罪のような気もするが、
アルスはおかまいなく窓の方へと向かった。
この辺はアルスの天然から来るものなのか、果たして…。

(チラッ…。………何だこれっ!?)

アルスが見たのは…あまりにも酷い荒れた居間であった。
ばらばらに砕けている椅子や机などの家具。

(ん?っ!?)

アルスはおもわずしりもちをついてしまった。
よく見たら窓ガラスが粉々に砕けている。
窓に残ったガラスが…鋭利な矛先がアルスの方に向いていた。

(あ、危な…っ!なんだよこの家は…っ!)

「グォ~…!ヒュ~…。グォ~…!」

(…あれ?誰か寝てる?)

アルスは中から漏れているいびきに気づいた。
なんか突然鳴り出したような…。

「…あのー。すいませーん…?」

アルスは窓からもう一度顔を…ガラスに気をつけながら覗かせて
居間の部屋の中に声をかけてみた。返答は…ない。

「グォ~…!ヒュ~…。グォ~…!」

(なんだ、誰か住んではいるのね。…にしても、
 この家の人はどんな生活してんだか…。)

アルスはため息を一つついて、不気味さが漂う家から離れた。

「さてと。セレナの家に戻っても…しょうがないかな。」

アルスはまた街の中をぶらぶらと、あのヘルガー兄弟のように
迷惑のかからないように徘徊した。

…あの家の中は、忌まわしい空気で充満していた。
無残にばらばらにされた家具の他に散らばってるのは、
びりびりに引き裂かれた写真。
幸せそうな顔をしたニドキング、ニドクイン、ニドリーノが写っていた。

「………………。」

いつしか、いびきは聞こえなくなっていた。
他のポケモンの目を欺けるためのカモフラージュだったのか。
いびきの代わりに、一匹のポケモンの目が&color(Red){赤く};怪しく光った…。

***''&size(18){19.&color(red){(微官能模写あり)};};'' [#p2444feb]

時は既に、陽が沈み始めている頃。
再び真っ白い町並みは、夕暮れの色で染められる。
広場に位置する噴水から湧き出る水が、密かに輝いていた。

サーズンシティの奥にある広いスペースは、
近所のちびっ子達の遊び場として設けられていた。
これが意外に人気らしく、遅くなりつつある今でも、
広場の中は子連れのポケモン達がいた。

「…んぁ~。外で昼寝するのもいい…ブルッ。」

広場の隅にある小さい丘で、アルスが目を覚ました。
いつからかここで昼寝をしていたようである。
しかし時が時なので、少し震えてる。風邪引くぞ…。

「さてと…そろそろセレナの家に帰ろうっと。
 今日の夕飯はなーにっかなー♪」

&ruby(したづつみ){舌鼓};を打ちながら起き上がり、上機嫌で駆け出し、
アルスはサーズンシティの広場を後にした…。

「んじゃ、おつかれさまでしたっ!」

「あいよっ!レン君良く働いたねぇ♪給料払うとき色付けとくから、
 明日もまた頼むよっ!おつかれさんっ!」

カクレオンの出店には、いつのまにか行列はなくなっていた。
カクレオンが必死にお客を&ruby(さば){捌};いた結果である。凄い。

二人ともかなりの量の汗をかいていた。
どれほど忙しかったか、手に取るように分かる。
レンはカクレオンにお辞儀して駆け出し、出店を後にした…。

「ふぅ…。あの子のおかげですごい商売繁盛だぜ…。
 品物が完売するなんて何ヶ月ぶりでぇ?」

カクレオンは一人店に残って独り言を言いながらくつろいでいた。
…よく見れば、カクレオンの顔が青ざめている。顔色が悪い…。

…と思ったら違った。とくせい「へんしょく」のせいであった。
汗に反応して水タイプになってる。…カクレオンにはよくあることだ。

「ご飯ご飯~♪」

「汗がすごいです…。セレナさん家ってシャワーありましたっけ…?」

二人のポケモンが同じ目的地に向かって足を速める。そして…。

「「…うわっと!?」」

偶然にもセレナの家の前で鉢合わせとなった。両者驚いていた。

「…あ、レンじゃん!仕事お疲れさん♪」

「あ、アル!…疲れましたよぉ。汗がすごい…」

「セレナー♪レンと一緒にただいまー♪」

「ちょ…俺にも話させてくださいよぉ!」

アルスがレンの言葉を遮るタイミングで家に入っていく。
一方でレンは不満そうにアルスの後についていく…。

「…おかえり。アルス。レンさん…。」

セレナが二人を出向かう…が、何か様子が変だ。…ちょっと暗い。
足取りも重そうに…。二人がセレナの異変にすぐに気づく。

「あれ?セレナなんかあった?…何か暗いよ?」

先に聞いたのはアルスの方だった。…セレナの悩みの種だ。

「ううん。何でもない…。…それよりレンさん、お仕事どうでした?」

「へっ!?…あ、大変でした。汗…すごくかいちゃって。」

いきなり聞かれたのでレンは怯んだが、問題なく答える。

「んじゃ、お風呂貸しますから、綺麗にしてってください。
 私は夕飯の用意しときますから…。」

「あ、じゃあレン♪僕が洗うの手伝おうか?」

いきなりアルスが口を挟んでくる。

「え。別に大丈夫ですけど…。」

「僕に手伝わせて!一緒に入るの久しぶりだし、
 …それに僕、他にやる事ろくにないんだよっ!という訳でGO!」

「えっ!?ちょ、わわわわっ!?」

アルスはレンを強引に押してお風呂場へと移動する。
ちなみにアルスは昼前の探索の事もあって、風呂場の位置を把握していた。

「…はぁ。恋って辛いな…。」

二人がお風呂場へと消えていったのを確認して、
セレナは一人呟き、居間のキッチンへと戻っていった…。

――――――――………。
&br;
&color(Red){「…もう少しで…力が…ダークライ様…」};

静けさが入り混じる不気味な家から、一つの声が聞こえてきた。
だがその声は、誰の耳にも届くことなく、薄暗い街の中で消えた…。

&br;
&color(blue){(~ちなみにその後。)};

「あれっ?レンの○○○、しばらく見ない間に大きくなってんなー♪」

「ちょ、どこ見てんですかーっ!!!」

「ん?何で赤くなってんだ?…それよりコレ。
 僕のより大きくないか?一つ年上なだけなのに生意気だぁー!」

「うわぁ!そ、そこはやめ…あ゙ああぁぁぁ!!!」

''&color(Red){※以下、お子様には相応しくないシーンなので、カットさせてもらいます。};''

(…ちょ、アルス…。レンさんに何やってんのよ…。)

さっきまでの落ち込みようはどこへやら。
セレナは顔がオクタンのように赤くなりなりながら、
料理を作る準備に取り掛かっていた。

今晩のセレナの家には、一人の雄ポケモンの悲鳴が木霊する…。

***''&size(18){20.&color(red){(微官能模写あり)};};'' [#hfa611b4]

&color(red){『……ヨ。ワタシハマタネムリニツクトスル。ソノアイダニ、コノマチニカンジラレル};
&color(red){ ダークブレイカーズノソンザイヲケシテオクノダ…。』};

''「…任せ…テ、下さ…イ…。…時はキたリ。ダークライ様に忠誠ヲ…!!!」''

―――――――………。

アルス達が訪れてから二日目の夜だった…。
セレナの家の物置ではぐっすりと眠るアルスとレンの姿が…。
…心なしか、レンが涙目で寝ている気がする。まぁアルスのせいだろうが。

一方でセレナの方は…自分の部屋で、一枚の写真と向かい合っていた。
アルスが(勝手に)拝見していたものだ。セレナの家族写真…。
月明かりだけが差し込んでいる暗い個室に、
一人のポケモンの呟きが聞こえてくる。

「…お母さん…。初めて好きな人ができたけど…。
 この恋…実りそうにないよ…。」

その呟きはどこか悲しみすらこもっていた。
セレナは始め、救ってくれたお礼と言って
アルスを引きとめようと企んだ。レンまでは予想外だったが、
善人なので問題なしである。そういう問題かは分からないが。

一目惚れで始まった恋、セレナは胸が締め付けられる苦しみに駆られていた。
所詮旅立ちの中のお客。
告白する勇気すら出そうと思えば出せたかもしれない。
しかし相手の立場を考えると、迷惑となる可能性が高まるかもしれない。

…何よりあのアルスである。告白の受け取り方を間違える事も。

「…はぁ。時間が止まればなぁ…。」

何て非現実的な言葉をセレナは口にする。
彼女だってれっきとした乙女である。夢見る事だってある。
それが叶うものかは本人自身分かってるつもりだが…。

(あ、そうだ。…こうなったらせめて。)

セレナは何かを決して自身のマクラを片手で持って部屋を出た。

…向かった先は…。

(もう…寝てるかな?)

セレナはある一室を覗き込んだ。物置だ。
シーツこそ肌蹴ているものの、アルスは気持ち良さそうに寝ている。

「…レンさん、かなり傷ついてるような…。」

セレナは苦笑いで、涙目で寝込んでいるレンに目をやった。
全くアルスには困ったものである。レンをやりたい放題だ。

(…って、今はレンさんの事じゃなかった…。)

頭を掻きながら考えを変える。アルスの傍らに向かっていき…。

(添い寝くらい…大丈夫だよね。)

アルスのシーツをかけなおして、自身のマクラも設置して、
アルスの隣に潜り込む。アルスは未だに起きない。熟睡中だ。

(あ、明日の言い訳考えとかなきゃ…。)

セレナはアルスの隣で考え込む。好きな人と密着状態である。
セレナの胸がかなり高鳴ってきた…。当の本人。顔が少し赤くなってる。
アルスは相変わらず気持ち良さそうに寝ている。

「ん…ん~…。おかわり~…♪(ゴロッ)」

(っ!?)

突然アルスが寝返りをうったのでセレナはびっくりする。
夜中に起きられてバレるのもまずい。
…いや、アルスなら案外許してくれるかも…。

「えぇ~。もうちょっといいじゃん…。(ダキッ)」

(っ!!??)

今度は…抱きついてきた。寝ぼけているにしろ、
これが知り合い以外のポケモンにしていたら
半殺しとかで済むのだろか…。

(ちょ…アルス寝ぼけてる…あ。)

抱きつかれて少し慌ててアルスの方を向き直ったのが…まずかった。
アルスの幸せそうな寝顔が、セレナの理性を壊しかけた。

(…キス…しちゃおうかな…。バレないよね…?)

気がついたらセレナはアルスの口元に自らの口を近づけていた。
素直な性格…いや、大胆というべきか…。

&size(30){「ドゴオォォォン!!!」};

「わあぁっ!?」「うるさーいっ!!!」「きゃあっ!?」

前触れもなくすさまじい轟音と振動が鳴り響いた。
三人とも目が一気に覚め…アルスだけまだ寝ぼけている。

「な、何事ですかっ!?…あれ?セレナさん…?」

「んー…。…ぁれ?セレナ何でここにいるのぉ…?」

一応意識はあるようで、アルスの会話は成り立っている。
話しているうちにどんどんセレナは気まずくなってきている。

「え…と…。っ!今はそれどころじゃないのよっ!
 今の音と地震はなにっ!」

赤面のままセレナは何とか言い繕った。
実際、今の轟音と振動の正体はなんだったのだろうか…。

&size(30){「ズゴオォォォン!」};ミシミシッ

「っわあああぁ!?部屋中にヒビがあぁ!?」

「く、崩れるっ!?アルスとレンさん逃げてっ!」

「んぁ?さっきからうるさいけど…どしたの?」

…アルス、そろそろ本気で起きろ。危ない…っ!

「セレナさんも逃げないとっ!アル行きますよーっ!!!」

「きゃあーっ!!!」

「ぅわわわわっ!?」

&size(30){「ズガアァァァン!」};ガラガラガラ!

「…な、何事ですか…い、一体…。」

「な、何か一気に目が覚めた…。何?大地震?」

「きゃあああぁぁぁ!?私の家がーっ!?」

レンが叫び声に驚いて振り向いて見れば、…そこに家はなかった。
残っているのは、ガレキの山だ。
家具も無残に山に埋もれ潰れて影も形もない。
セレナが泣きながらガレキの山の前に立ち尽くしている…。

''&color(Red){「ダークライ様に…忠誠…。お前ラ…消ス!!!」};''

「「「っ!!??」」」

レンとセレナが聞き覚えのある声、アルスが感じた事のある気配が、
三人の後ろから声と共に襲い掛かってきた…。
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&br;
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&br;
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第一章2ndはこの記事にて一段落終了です。
続きは3rdにてどうぞ♪コメント等がありましたらお願いします。m(_ _)m

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