*断ち切られた未来の…… [#JLxMB1g] 作者:[[オレ]] ※この作品は(ネタバレ→)&color(white){自慰、手扱き、失禁、流血を含む去勢等、官能・残虐の要素を含みます。特に↓}; 作者:[[自分です>オレ]] ※この作品は色々と酷い内容なので気を付けてください。でも個人的にはネタバレを見ずにクリアな心で読んでいただきたいところ。何も知らずに読んで変なところに落ちていって欲しいです。(ネタバレ→)&color(white){自慰、手扱き、失禁、流血を含む去勢等、官能・残虐の要素を含みます。特に↓}; &color(white){↓}; &color(white){&size(30){ポケダンジュプトルのイケメンさ・幸せな未来を信じたい人は絶対に見ないでください!};}; ---- ダークライはただ絶望するばかりだった。 長きに渡り苦労を重ね、一度は成し遂げた暗黒の世界。それが「現在」と「過去」の二つの時代の戦いによって破壊されてしまった。なおも世界の暗黒を求めて行動を続けていたが、ディアルガをはじめとする「現在」に生きる者たちによって着実に追い詰められていた。 世界の暗黒はダークライに力を与え、今までは暗黒を維持するために協力者たちに力を分け与えることもできていた。しかし力の源が大きく弱まった今、協力者たちに力を与えることもできなくなっていった。ダークライの協力者はある者は去り、ある者は討たれ……。既にダークライ自身も、自らの最期を悟っていた。 だが、このままでは終われない。自分の理想の世界を破壊し、今なお追い詰めてきている者たちにせめてもの制裁を加えたい。全ての者に対しては直接は無理でも、影響の大きい者であれば。自らの憎悪を駆り立てる者の中でも、その中心にいるのは誰か? ダークライの絶望は、狂気の笑みに変わった。 「ぁうあっ!」 岩陰で自らの雄を握りしめ、ジュプトルは独り快楽の声を漏らす。狂わんばかりに腰を振り、それに合わせて自らの手も前後に動かし。これが自慰なのだから、実際に交わるときがどれほどなのか想像もつかない。だがジュプトル自身は誰かと交わった経験はない。その時は暗黒に包まれていた世界で子供を作り育てる気にはなれなかったからだ。幼い時に出会い互いに好き合う関係となった「彼女」もいるが、好き合い大事に思うからこそ中途半端な気持ちでは交われない。一方でダンジョンで倒した意思のないポケモンを道具に発散する方法も知ってはいたが、そちらも実行に移すことはなかった。 「セレビィ……」 自らの欲望を前にしても「彼女」……セレビィの顔の方が先に浮かんでしまい。それ以外の雌の体で発散することに対して、罪悪感が前に出て動けなくなっていた。一方で自覚するほどに性欲は強いため、今のようにセレビィのあられもない姿を想像しては射精を繰り返している。これもこれで罪悪感はあるが、セレビィを裏切ることのない自分自身を自覚できることで棒引きにできていた。 「出すぞ……」 きつく閉じられた双眸の中のセレビィに語り掛け。全身で汗を流して口元からは涎を垂らし、誰にも見せられない憐れな姿だ。ジュプトルは一度だけ、セレビィを抱きしめることで告白したことはある。それはこの世界に住む全ての者の消滅が起こった時だったのだが、その後大いなる力が働き消滅の運命が変わることとなった。思わぬ形に運命が変わったこととその後の世界の再興に忙殺される日々に流され、結局告白の後も元通りセレビィ自身とは特に進展のない日々が続いていた。 「ぐぅあっ!」 腰を突きだすと同時に、ジュプトルは盛大に音を立てて射精する。快楽で視界は明転し、手前の地面や岩も精で白く染まる。一しきり出し切った後もなお、声と精は力なく漏れ続ける。内股や足先を汚しそうな状態のようで、元々股を開いた姿勢で直立しているジュプトルはそんな事態になったことはない。モノの長さがそれなりにあるというのもあるのかもしれないが。 「ぁぅ……。ぁ……」 ただただ快楽に身をゆだね、悶え続けるジュプトル。その余波が徐々に引いていくに従い、芽生えてくるものは日々強くなっている。セレビィと交わりたい。子供を望む気になれなかった暗黒の世界では、快楽だけのために彼女に体を求めることは申し訳なくてできなかった。だが世界に光が戻った今は、彼女との関係を止めていたそれも無くなっていた。それは「子供が欲しい」というようなはっきりとした気持ではなかったが、彼女と一緒であればそれも受け入れられるくらいのものにはなっており。 「……いい加減、はっきりと進めたいな」 抱きしめて告白した時、セレビィははっきりと「幸せです」と答えた。その後の東奔西走する日々の中でも、ディアルガやヨノワールからすら仲の良さをからかわれたこともある。誰にも止められない、止めようとする気にもなれない関係。それをはっきり結実させたい。日々募ってきていた想いは、既に目に見えるところまで来ていたのである。ジュプトルは肉棒をスリットにしまい、岩陰を後にする。 暗黒が払われてもなおかつての「黒の森」の呼称が使われ続けているダンジョンの近くに、急ごしらえの町がある。ジュプトルとセレビィが中心に作って行っている町である。とはいえ建材は周辺の樹木が中心だし、長きに渡る世界の暗黒の中で建築技術もだいぶ失われていた。それでも彼らなりの試行錯誤を重ね、多くの産物を出荷できる市場としての機能は確立できてきつつある。 「ジュプトル!」 「ポリゴンか。他の地域との連絡体制の構築は進んでいるか?」 簡単に削って作った玩具のようなポケモン……ポリゴンは見回り中のジュプトルに声をかける。それにつられてジュプトルの周りには数匹のポケモンが集まってくる。ジュプトルが仕事の話をしだしてもなお、寄ってくる者がいる。この村ではそれだけの存在らしい。 「ハイ。伝説ポケモンヲ中心ニ連絡ヲ進メテイマス。先程東ノ地域ノホウオウ様ト連絡ガ取レ、地域ノ者タチトノ交流ヲ進メタイト」 ポリゴンの答えは片言で、慣れてきているジュプトルでも若干聞きづらい。それでも物の転送や連絡には高い能力を持っているので、今は他の地域との連絡役に起用されている。時の破壊後の暗黒の世界では、多くの町が壊滅していった話は知られている。だが伝説ポケモンの加護が強い地域を中心に、生き残りも少なくはないところも探している……進めていることの一つだ。 「それで、町の水に関してですけど」 「この前俺が掘った穴をさらに掘り進めば、あの辺ならいい水脈に当たるはずだ」 「農業の水もそれで足りますか?」 「井戸のは飲用だ。農業用水は灌漑設備を組む。古い書物にそういった技術も書かれているらしくて、解読班から『ほどなく終わる』とも聞いている」 やってきたポケモンたちの質問攻めにも、ジュプトルは答えに困ることはない。その指示のもとに作り上がっていく街の姿が、そっくりジュプトルへの信用となっているのだ。そしてジュプトルの指示を受けた者たちは、着手のためにその場から離れる者もあれば、まだ何かあるのか一歩引いて見ている者もおり。 「で、セレビィ……」 「ジュプトルさん」 とりあえず仕事の話はなさそうなので、ジュプトルはセレビィの方を見る。桃色の羽毛のような、小さい華奢な体。その中に時を渡る力が秘められているなどとは思えない。だが小さかろうと力の主だろうと、今のジュプトルの前では一匹の少女でしかない。考えてきた思いを伝える言葉を言うべく息を吸った、その瞬間だった。 「ジュプトルさん! セレビィさんとの結婚はいつですか?」 「俺らに内緒ではしないでくださいね!」 下卑た声と口笛の嵐に、ジュプトルもセレビィも顔中に血を登らせる。ジュプトルの緑の鱗肌は鮮やかなまでに赤く染まり、セレビィの産毛は激しく逆立つ。世界の暗黒を払う戦いでの活躍や再建のための日々の奔走、それとは打って変わって純真すぎる少年のような姿だ。折角のプロポーズの言葉も、ジュプトルの口の中で一気にしおれていき。なんとか形を成して漏れたものも、群衆の笑いの中では紅潮したセレビィにまでは届かない。 「ウィィィー! ジュプトルさん、いるか?」 「ん? ヤミラミじゃないか。ヨノワールから何かあったか?」 下卑た笑いをかき分けて、直立する紫のポケモンがジュプトルの前に姿を現す。かつては暗黒の世界に対する意見の違いから戦い続けてきた者の一匹だが、今は再興に向けて協力する仲間だ。世界の暗黒の原因となったのは時を司る「時限の塔」の崩壊なのだが、ヤミラミたちはディアルガとヨノワールを中心に塔の修復を中心に動いている。他にもしていることはあるが……。 「はい。先程ヨノワール様達はダークライ勢力の最後の主力部隊と激突して、勝利しました!」 「そうか。あとはダークライを捕らえるだけだな」 ヤミラミの報告に、周囲にいたポケモンたちは一斉に歓声を上げる。ジュプトルやセレビィとしては詳しい話が聞き取りづらくなって困りものだが、それでも喜ぶ気持ちはわかるのでたしなめたりはしない。なにしろこのダークライというポケモンは、世界の暗黒を狙って時限の塔を破壊した黒幕なのだ。長く表に出てくることは無かったが、世界の暗黒が払われた後にその動きを捉われ追われる身となったのだ。 「はい。ただ今まで逃げ延びることを繰り返してきたので、今回は万全を期すためにジュプトルさんやセレビィさんにも来てほしくて」 「確かにね。逃げて雲隠れしている間に力を蓄えられるってのも、いい加減終わりにしたいですよね」 セレビィの一言に、ジュプトルも目を合わせて頷く。軽く周囲を見回すと、居合わせた者たちも頷く。それは「行ってきて大丈夫です」という意味か「自分も連れて行ってくれ」という意味か。いずれであれジュプトルとセレビィが戦線に出ていくのは確実である。 「よし、じゃあ少し行ってくる。必要な指示は一通り出したから、とりあえず進めていてくれ」 「はい!」 そのジュプトルの一言に意気揚々と声を上げる者もいれば、置いていく指示に若干拍子抜けした顔の者もいる。とはいえ急いで出撃するのだから、ジュプトルにセレビィがついていく程度が妥当だろう。ただでさえもジュプトルのせっかちさに合わせて動ける者は少ないし、立場もあって二匹は常に出撃の用意をしてあるために尚更動きが早い。他の者まで連れて行こうには準備に時間がかかりすぎる。ヤミラミが気が付いた時には、ジュプトルもセレビィも出撃時の道具を詰めた鞄を背負っていた。 「と……そうだ」 「どうしたんですか、ジュプトルさん?」 いつもならこの時点で見えなくなっていてもおかしくないジュプトルが、ここで急ブレーキをかける。思いもかけない動きにその場の全員が戸惑うが、ジュプトルだけはそれに気付かずに。真剣な表情でセレビィの前に立ち、まっすぐに目線を合わせて……。 「この戦いでダークライを捕まえたら、この世界の未来に心配はなくなる。これが終わったら、結婚してくれ!」 言い終えたところで、ついに言えたとジュプトルは息をつく。少し遅れて沸き起こる歓声。セレビィの顔の産毛は見る見るうちに逆立っていき、しかしそれを拒む理由など何一つなく。待ち焦がれていた、むしろ自分の方から言いたかったことにしかし何故か声が出ずに。ただ黙ったままジュプトルの胸に抱き付くのが精いっぱいだった。 「それじゃあ、行ってくる。ヤミラミ、案内してくれ」 「ウィィィ!」 ここで独り先走ることなく、落ち着いた態度で出発するジュプトル。いつもと違うその背中を、住民たちは頼もしく見送っていた。 白銀の角をいくつも生やした青い竜と、それに寄り添う黒い影。見慣れた二匹がジュプトルとセレビィを出迎えた。 「なんだ、ディアルガまで来ていたのか」 「ディアルガ『様』だ。ちゃんと『様』をつけろと何度言ったらわかる?」 ジュプトルの態度にヨノワールは不満気に漏らす。相変わらずの心酔ぶりにはジュプトルも苦笑するばかりだ。ディアルガが「良い」と一言で片付けると、ヨノワールは特徴的なその巨大な手を自らの胸に当てて退く。本当のところはヨノワール自身もさほど不満に思っているわけではなく、敬称に関してもそれ以上言ったことは無い。 「ディアルガさんが来ているってことは、ダークライももう逃げ場は無いわけですね?」 「左様。包囲は万全。最後の反撃には警戒を重ねねばならぬがな」 ディアルガは眼前にそびえる城郭に目をやる。払われた暗黒の残渣をかき集めたかのような漆黒の塔。その周囲にはポケモンたちが集まった部隊がいくつも並んでいる。遠目でも伝説のポケモンすら確認できるこの包囲網は、切り抜けるなど不可能だろう。自らの力のためだけに全世界を暗黒に落としたのだから、これだけの敵を作るのも仕方ない。だからこそ破れかぶれの反撃で何をしてくるかわからないため、ディアルガをはじめ強力なポケモンたちが集結したのだ。 「それで状況だが……ダークライの手勢は反撃しているが、肝心のダークライ自身は既に戦闘を放棄して引きこもっている」 「そうなのか。部下たちも降伏できるでもなく憐れなものだな……」 ジュプトルもセレビィもこれにはため息をつく。ダークライの協力者たちの素性は、世の中に帰る場所が無い者ばかりなのだ。それはまだ手勢が多かった頃から戦ってきた彼らは、嫌というほど見せつけられている。ジュプトルやセレビィは内心では「降伏して自分たちの下でやり直せばいいのに」というものがあるのだが、味方にその意見を受け入れられない者も多く問題は多い。そもそも世の中への不信感が強いがゆえにダークライについてしまったのだから、その世の中を信じて降伏してくれなど虫が良すぎるくらいだ。そんな彼らが唯一とばかりにすがったダークライがこの状態では、本当に憐れとしか言いようがない。 「場所は城郭中枢の一室であるが、問題はその一室だけは中を探知できぬのだ。私ばかりでなく、他のどのポケモンでもな」 「えっ? このメンバーでもできないんですか?」 ディアルガは「時を司る神」と呼ばれるポケモンである他、この包囲網に加わっている伝説ポケモンにも同等の異なる力を持つ者が見受けられる。それらのポケモンが総がかりでも探知できない空間となると、どのような力が働いているというのか? 「僅かな一室だけでそれ以外は……そこに至る道順まで探知できているのだが。潜入している部隊もその途中で抵抗に遭っている」 「もしかするとダークライは、そこでとんでもない切り札を準備しているのかもしれないな」 ジュプトルの一言に、ディアルガもヨノワールも「それは思いつかなかった」とばかりの表情を浮かべる。この場の包囲にかかっているポケモンはそうそうたるメンバーであるから、自らの城諸共に自爆されては世界にとって相当な損失となる。 「これは……皆を退避させなければならないか? いや、その切り札が自爆ではなく世界の暗黒を再び作るものという可能性も! それにここまで追い詰めたのを逃がしていいのか……」 「落ち着けヨノワール。その切り札を見極めるためにも、今は潜入部隊を送り続けるしかないだろう」 途端にヨノワールはうろたえ始める。普段は冷静に状況を見極め、部下であるヤミラミたちと守りあう強い司令塔であるヨノワール。だが重大な決断にはなかなか手を出せない部分もあり、世界の暗黒を払う戦いでは最終決戦の直前までジュプトルを騙し抵抗し続けた。勿論そういう弱さは簡単に他者に見せないようにはしているが、ジュプトルやセレビィにはそれが見せられるほど信頼していることもある。 「とは言え、その切り札次第では潜入部隊を更なる危険に晒すことも考えられよう。今まで以上の対策が必要だな」 「とりあえず、行けるところまで行ってみてだな。次は俺とセレビィを送ってくれ」 ジュプトルは言いながら、セレビィと目線を合わせて確認をとる。セレビィも待ってましたとばかりに頷く。過去の戦いの経歴があるため、ディアルガもヨノワールも彼らを頼もしく見ることができるのだ。 移動は一瞬だった。軽く体が浮かび上がる感覚があったかと思ったら、次の瞬間には視界が開けて着地していた。時空ホールや時の回廊と比べると、移動手段としては呆気なさを感じるほどだ。 『ジュプトル、聞こえるか?』 「大丈夫だ、ディアルガ。こんなこともできるんだな?」 ジュプトルとセレビィの首につけられた揃いの首輪。それを通すことによって、ディアルガの声が直接頭の中に流れてくる。過去の世界で使われていた「探検隊バッジ」の機能も持っているが、他にも機能を付け足したため若干大型化している。小型化の技術が失われてしまったというのもあるが。 『道順も随時ナビゲートできるが……敵の方には気を付けるのだ』 「わかってるわよ。それじゃあ行きましょう、ジュプトルさん」 チェックポイントの防衛とばかりにその場に立っていたポケモンに軽くあいさつをすると、そのポケモンの首輪のところに「ハッサム」と表示される。恐らく向こうにも同じようにジュプトルとセレビィの名前は伝わっているだろう。それに続いてまっすぐ少し進んだ先で左に曲がる矢印……思わぬ便利さに二匹の顔も少しほころぶ。 『次の角の部屋で先程の部隊が交戦し、撤退した。だいぶ手傷は与えたそうだが、残存に気をつけろ』 「ああ……水ポケモン主体か。問題はなさそうだがな」 ジュプトルが返事をした時には、二匹の脳裏にはディアルガが送った相手ポケモンの編成が届いていた。ここまで至れり尽くせりだと、相性の悪い相手であっても負ける気がしない。それでも油断は禁物と部屋の入口の角で一旦止まり、中の様子を伺う。 「いない……? 撤退したか?」 『入れ替わりで別の敵が来るかもしれない。油断するな』 先程手傷を負わせたとも聞いていたし、十分に考えられる。ジュプトルもセレビィも気を張り続けながら、着実に次の通路に進んでいく。だが次の部屋でもその次の部屋でも交戦することなく、ジュプトルとセレビィはいつの間にか奥まで進んでいた。 「なんだ、これ? 不気味だな」 「罠かもしれませんね。気を付けましょう」 とはいえ目の前にある閉ざされた鋼鉄の扉に対し、ディアルガから送られてきている「城郭中枢の謎の部屋」という表示が目的地への到着を物語っている。分かれ道は無視してナビゲート通りに進んできたため、敵との遭遇が避けられるのはある程度は「偶然」の可能性もありそうだが。それでもこの最低限のルートがスルーになってしまう「偶然」などあるのだろうか? 「仕方ない……あまりここで待ちたくはないが、後続部隊を待とう」 『む? すまない、ジュプトル。後続部隊が次々と交戦に突入した。どこも苦戦しているらしく、到着には相当時間がかかりそうだ』 他の部隊との交信で状況を集めていたディアルガの情報に、ジュプトルとセレビィの表情は曇る。仲間の心配というのもそうだが、後続部隊と交戦している敵勢力は恐らくジュプトルたちが無視してきた分かれ道に隠れていたのだろう。順調に進み過ぎていたというのもあり、ジュプトルたちは味方から大きく離れた敵地の奥で孤立したということになる。 「これは……一旦後続部隊の応援の意味でも引き返すしかないでしょうか?」 「だが引き返すにしても待つにしても、俺たちには俺たちで新たな敵が襲ってくる可能性があるからな」 暗く禍々しい色合いの岩石と金属板を組み合わせた造りの建物は、それだけで自分たちの色を飲み込んできそうだ。いつどこの物陰から残敵が飛び出してくるとも知れないのもあり、絶対に長居はしたくない。ジュプトルは鋼鉄の扉を手で押すと、重さこそあるが少し動いた。ジュプトルの背丈の数倍だが、それでも何とか開きそうだ。 「最悪はセレビィの『時渡り』でどうにかなる。危険は承知で、ダークライに直接切り込むしかない……!」 『そうか、わかった。少しでも危険を感じたら、すぐに戻るんだぞ?』 今度は全身で扉を押す。扉は鈍い音を響かせ、ゆっくりとジュプトルたちを中に招き入れる。扉を開き切り力み過ぎた体で、ジュプトルは数歩奥へとふらつき進む。セレビィは離れないように慌ててジュプトルの脇に寄るが、まだ何かが起こる様子はない。部屋の中は真っ暗で、入口からの僅かな明かりで中央にテーブルのようなものが見えるのは確認できるが。もう少し調べようと数歩進んだ瞬間、ジュプトルは足元に何かが絡みつくのを感じた。この真っ暗闇の中だというのに、それでも「闇」と認識できるその存在。 「ダークホールか! セレビィ!」 「ええ! 時渡り!」 セレビィの宣言の直後にはこの場所からはじき出されて、恐らくはこの扉の前あたりにでも戻っているだろう。そんなジュプトルの当ては外れ、セレビィの時渡りが二匹の体を包むことはなかった。直後、先程開けた扉が自らの重さも忘れたかのように勢いよく閉まる。 「この空間では、セレビィやディアルガの使う『時』の影響は受けない」 すぐ脇からそんな説明が聞こえてきたが、その声の主を確認する間もなくジュプトルとセレビィの意識は途切れていた。 「ジュプトルさん……」 唐突に前後の記憶が繋がらない、そもそも周りも認識できない。目の前のセレビィだけがくっきりと浮かび上がっている。セレビィはゆっくりと自身の方に飛び寄り、無邪気に甘えた声で語り掛けてくる。 「大好きです」 その言葉に全く感覚は得られなかった。喜んで抱きしめたいでもなく、いつにもない態度に違和感があるわけでもなく。ただ漫然と目の前の光景を眺めているだけであった。 「食べちゃイタイクライニ!」 その瞬間、眼前の光景が大きく歪む。セレビィの姿も崩れ、裂け。狂気の無数の歯牙と変わり、自身の腹に喰いかかる。それでも恐怖が微小も存在しないまでに、目の前からは現実感がなくなっていた。 「うわぁぁぁあっ!」 「いやぁぁぁあっ!」 ジュプトルとセレビィは揃って悲鳴を上げた後、ようやく我に返る。全身から冷や汗を流して呼吸を荒げ。徐々に現実に戻ってくると、今の光景が「ナイトメア」であることが理解できてきた。それでもまだ意識は朦朧としているが。 「揃いも揃って、うるさい奴らだ」 「ダークライ……!」 意識を失っている者に悪夢を見せるダークライの特性。それは対象の命をも夢を通して削り取る。先程足元からジュプトルたちを襲った、ダークライの「ダークホール」の技で意識を奪われ。この技のつながりの凶悪さを体感するのは、ジュプトルもセレビィも初めてではない。しかしそれを回避するための「時渡り」は、何故か発動しなかった。 「折角作り上げた世界の暗黒も、もうおしまいだ。よくもやってくれたものだな、お前たち!」 ダークライの怒気のこもった声に、ようやくジュプトルもセレビィも現実に戻される。全身を柱のようなものに括りつけられ、両手両脚も微動だに出来ないように固定されている。お互いに股を大きく開くように固定され、その姿にはどちらも若干の羞恥を抱かずにはいられない。それだけでなくジュプトルの方は何故か、下腹部の胴回りと両腿の付け根を縛り付けられている。ジュプトルの体に食い込んで痛みはあるがそれだけで、拘束の意味を成しているようには見えないが……。 「駄目ですジュプトルさん! 何故か『時渡り』が発動しません!」 「無駄なことだ。この部屋の中はお前やディアルガの『時』を中心に、多くの力の干渉を受けないようにしてある。干渉はもちろんだが、この部屋で起こったことは『時』の力でも戻せない」 焦りと恐怖の中で告げるセレビィに、ダークライは悠々と答える。出撃の前にディアルガから「どのポケモンでも探知できない一室」とは言われていたが、外からどころか中からも干渉できないとなると相当強い力が働いているだろう。ここで何をしようと考えているのかはわからないが、ジュプトルもセレビィも恐怖させられる一方だ。本当ならこの状況を急いでディアルガたちにも伝えたいが、当然通信も無効化されているのでそれもできない。事前のやり取りもあったので、通信が無効化されているとわかればディアルガやヨノワールが黙っているとは思えないが。 「お前……なんのためにこんなことを?」 「知れたことだ。最早私の末路など知れているからな、せめて許し得ぬお前たちに制裁するためだ」 それでも口が縛られていないため、まだ話すことはできる。話している間に救助を間に合わせる時間を稼いだり、言質を取って解放するよう説得することはまだ可能だ。相手が相手だからそこまで期待はできないが、それでもできないよりはマシだとジュプトルもセレビィも諦めない。 「制裁だ……? そんなことをして何になる?」 「私に言わせれば、苦心の末に作り上げた世界の暗黒を破壊されたことがどれだけ耐え難いことかな? しかもディアルガやヨノワールと違い、お前たちは最初から私の作ったものの破壊を理想としてきたからな」 ダークライの言い方をそのまま受け取ると、ジュプトルたちの方が世界を破壊する悪党という印象を受けそうだ。勿論それで怯むような二匹ではないが。とは言え最初からジュプトルとセレビィだけを狙った罠だというのはわかった。二匹が進んでくる間にダークライの配下に遭遇しなかったのもここまで誘い出し孤立させるためで、潜入を彼らだと確認した時点で配下たちは隠れているように指示を出していたのだろう。 「お前は自身や近しいものだけのためにそうしたがな……そういうのはより多くの者をより長い間助けることを考えてやることだ」 「ジュプトルさんの言う通りよ? あんたは自分の近いところのためだけ、しかも目先だけのために世界を暗黒に落とした。そんなんじゃ私たちだけじゃなくて多くのポケモンに恨まれて危険なだけじゃない?」 実際のところジュプトルたちにも他にも仲間はいたし、彼らの前にもさまざまな方法で暗黒を打ち払うことを目指した者がいた。最後に成功したのはジュプトルたちだったが、ダークライと近い立場でなければ暗黒の世界を変えるために挑むものは入れ代わり立ち代わり現れる。目に見える話であるが……。 「お説教か。まあその心配は無用だ。私は近い者だけ、目先だけ良ければいいのだからな!」 「お前……! そうか……」 ダークライとていつか寿命を迎える身。それは世界の暗黒に力を受け続けていてもである。際限なく収奪し続け枯渇したら次に行くようなやり方を続けていけば、いずれ全世界が枯れ果てていくのも目に見える話である。だが自分が死んだ後は野となれ山となれと思えるなら、それも考える必要はない。考え方が根本から違うことに、ジュプトルもセレビィも唖然とするほかない。 「とは言えやはりお前たちの話を聞いて正解だったな。お前たちはより多くの者の前で、一時でも長く屈辱に晒されるのがお似合いだからな!」 「なっ! 何するつもり?」 そこで初めて、二匹の目線はダークライと合う。異様なまでの狂気に満ちた笑みは、しかしすぐに自身の手に戻る。よく見るとダークライはその手に何かを握っている。ジュプトルとセレビィとの会話の間も時折眺めていたそれ。三日月形に大きく湾曲した細い金属。この場に働く力は様々な作用を打ち消すと言っていたが、場を熟知しているダークライなら作用させられる能力も把握させているはずだ。どのような復讐を受けるか、ジュプトルもセレビィも寒いものを感じずにはいられない。 「殺されることを恐れていたのであろうが……それはしない。お前たちに似合いの処遇は決めていたからな!」 「なんだと! どうする気……」 ジュプトルの言葉が終わらないうちに、ダークライは大きく開かれたジュプトルの股の下を突き込む。刹那ジュプトルは葉のような形の尻尾に刺された痛みを感じる。思わずそちらを見ると、妖刀と形容すべきその金属がジュプトルの尻尾を切り落とし、ジュプトルを縛り付けた柱に突き刺さっていた。 「ジュプトル……セレビィの目の前で、お前を去勢する!」 「なっ……!」 ダークライは刃を握っていた手でジュプトルの顎を掴み、無理矢理に自分と目線を合わせさせる。それと同時に目線から力を送り。目線はジュプトルの瞳から、脳に、心臓に迫っていき。次の瞬間には目線は恐怖として正体を現し、ジュプトルのあらゆる感覚を貫く。直前のダークライの言葉も併せて経験しえない恐怖に襲われたジュプトルは……。 「ぅあぁぁぁあっ!」 恐怖のままに失禁した。目の前にセレビィがいることすらも思い出せないまま、絶望の表情で涙を浮かべて放尿するジュプトル。傍から見ているセレビィには、ダークライからの去勢宣言で恐怖に失禁したようにしか見えない。一瞬遅れてダークライが何かの力を使ったのを理解したが、感覚がないものにはわからないだろう。 「じゅ、ジュプトルさん……!」 「無様な姿だな? 世界中に晒したいものだ」 それはジュプトルやセレビィの「より多くの者の、より長い時間のため」という言葉を逆手に取ったものだ。今の失禁もそうだが、去勢などされればその傷跡を死ぬまでの間会う者全てに晒し続けて生きることになる。四足の種族であればまだ誤魔化せるが、よりにもよってジュプトルは直立だ。まさに「より多くの者の前で、より長い時間」屈辱に晒されることになる。 「頼む! やめてくれ! なんでもする……!」 「ジュプトルさん!」 ダークライが手を放した後もなお、ジュプトルはダークライの顔を見たまま恐怖し続けている。思わず出てしまった言葉に、セレビィの悲鳴でようやく我に返る。その哀願に駆り立てた恐怖は、ダークライの力だけではない。一度もセレビィと結ばれないまま、異性の体を知らないままに雄を切り落とされてしまうことへの拒絶。ダークライもここまでの態度を見せると思わなかったのか、思わず吹き出してしまっていた。 「何でも……か。もう一度世界の暗黒を作り直すか?」 「くっ……! ぁっ!」 言い始めるころには、ダークライはジュプトルの股間に手を伸ばしていた。今の失禁で既に雄の先端は出ていたが、完全に去勢するにはスリットから性器を完全に引き出さないといけない。絶望の中だというのに相反する性器への刺激、その上に言質を取られたことへの屈辱感。ジュプトルは言葉も出せないまま息だけ漏らし続け。 「できるわけないだろうな。お前にできる交渉など、最初から無いのだ」 「や……」 ダークライの手が乱暴にジュプトルのスリットを広げる。縛り付けられた体でろくな抵抗もできないまま、ジュプトルの雄槍と陰嚢は音を立てて飛び出す。それを握りしめて柱に刺さっていた刃を抜くと、そのままジュプトルの睾丸の裏に宛がい。刃を力のままに引き上げる。 「ぃっ!」 ジュプトルは一しきり体を震わせ、これでもかというほどに目を見開く。全身の感覚が消滅し、呼吸どころか脈さえも止まる。永遠のようで一瞬。それが過ぎ去ると、今度は強烈な痛みが全身を駆け抜ける。頭頂から足先までを一気に引き裂かれたかの如く、生きた感覚の全てを失わせる。 「ぎぃあぁぁぁっ!」 「いやあぁぁぁっ!」 ジュプトルの雄と陰嚢を掴んだダークライの手は、一気に噴き出す血飛沫によって押しやられる。セレビィの方も目の前で凄惨な一瞬を見せつけられ、それがまして直前に「約束」までした愛しい相手とあって叫ばずにはいられず。ジュプトルは苦悶にどうにもならず暴れ狂い出すが、その動きの全てが拘束によって押さえつけられる。全身が痙攣して、悲鳴の隙間から上がる縄目の音が痛々しい。 「ジュプトルさん! ジュプトルさん!」 「ぅ……ぁ……」 ジュプトルの方は一しきり叫び終えたところで、ぐったりと首を垂らす。血走った目は徐々に力が抜けていき、瞳孔が開いていく。口からは舌先がぶら下がり、そこから涎がしたたり落ちている。暴れだす体を押さえることができなかったため、押さえつけている縄目の跡が本当に痛々しい。わずかに漏れる声と息にも生の感覚が無く、セレビィは今にも消え去りそうなジュプトルの魂を必死で呼び止める。 「本当にやかましい奴らだ。まあいい。お前、ジュプトルを死なせたくなければ黙って聞け」 「何よ! 何なのよ!」 そんな地獄の二重奏の中でもダークライの方は構わず、様々なものを並べてある机に向かっていた。そして刃に代わって別の何かを手に、ジュプトルの股間の前にかがみ込む。一度浴びたジュプトルの血を拭った手には、指先ほどの大きさのつやのある白い何かがつままれていた。破れかぶれに叫ぶセレビィを尻目に、ダークライはなおも少しずつ血を流し続けるジュプトルの股間をまさぐる。 「今からこれで尿道に栓をする。傷口が塞がったタイミングを見て外すのだな。そうしないと傷口と一緒に尿道まで塞がり、排尿ができない体になる。そうなれば体中がむくんでいき、最後は死ぬことになる」 「ぅう……」 言い終わる頃にはダークライはジュプトルの尿道を見つけ出し、つまんでいた小物をねじり込んでいた。先程失禁したためすぐに次を催すことは無いだろうが、傷口が塞がり外すまでの数日間は排尿すらできない。そんな現実を想像することもできないほどの苦痛に、ジュプトルはただ呻くばかり。 「傷口の当て布は衛生的なものを用意してある。傷が治った後も世話になり続けるものだから、大量に用意してやった。感謝するのだな」 そう言ってダークライは再び手についたジュプトルの血を拭うと、机の上の箱から白い布を取り出す。厚手の布には帯のような紐がついており、言うなれば布おむつのような形だ。それは止血のために当てるのだと思ってもなお、ジュプトルは苦痛の中に羞恥を突きつけられる。 「それと拘束の方は解いたとしても、この腹と内股の紐は後にするのだ。止血のためのものだからな、心臓から傷口にどんどん血が送り込まれてくる」 言いながらダークライはジュプトルの股に当て布をし、腰に帯紐を回して固定する。ダークライの止血によって出血量は少なくなっているが、それでもまだ切った直後である。白い当て布はじわじわと血の色に染まっていく。紐による止血をジュプトルが眠っている間に行なっていた点から始まり、最初から「ジュプトルを去勢する」ということで決めていたことがよくわかる。世界の暗黒を払う戦いに最初から自らの意志で臨んでおり、その後もこの世界の再興に向けて中心的に動いてきた。そのような存在が去勢の目に遭ったとなれば、世界中の者たちに相応の衝撃を与えることになるだろう。 「さて……治療はここまでだ。次はこれを口に咥えてぶら下げてもらうか」 「な……?」 言いながらダークライは、プレートに乗せたジュプトルの性器を差し出す。切り落とした時に一度血まみれになっていたはずだが、何故かご丁寧に拭われている。それでも傷口側からは残った血がまだ少し垂れているが。切り落とされた性器を眼前に突き付けられ、ジュプトルは露骨に顔をしかめる。 「お前……お前の楽しみのためだけにそんなことが、できるか!」 「そうか、なら仕方ない」 叫び続けて枯れた声を絞り、強い口調でジュプトルはダークライの要求を拒む。しかしダークライはそれも織り込み済みとばかりに、机の一角に手を伸ばす。そこには湾曲している金属板が並べて組まれており、その下には何やらスイッチのようなものが並んでいる。何だろうかという疑問は、ダークライがスイッチの一つを押してすぐに解決した。数度火花がはじけた音がしたのち、金属板の間から炎が吹き上がる。 「所詮汚物だからな。このようなものはもうガスコンロで焼いておくのが一番だな?」 「お前っ!」 「日頃から大事に弄り回していたこれが、焼け焦げ灰となって消えていく様……ゆっくり眺めるのだな?」 その時にはジュプトルの性器は、プレートから焼き網の上に移されていた。あとはコンロの上にくべれば性器が焼けていくのを見せつけられるだけである。勿論ためらいは波のごとく押し寄せているが、それでも自らの性器が焼き捨てられるのを眺めるのは忍びなく。 「わかった……わかった! 咥える!」 「ジュプトルさん……」 ジュプトルの答えに対して、ダークライは何を感じたのか一度だけ鼻で笑う。ちらりと憐れな懇願の目を覗き込むと、焼き網の上の性器を手に取り。顔の横で振り、陰嚢でジュプトルの頬を軽く数度叩く。そして性器の傷口の側をジュプトルの眼前に差し出し。 「口から落としたら、今度は焼き捨てだと思え」 「ああ、ああ……」 苦渋の表情のままだが、ジュプトルは迷うことなく性器を咥える。その瞬間血の味と同時に、体温を失っている冷たさを感じさせる。自らの性器がこうなってしまったことに、あるのは屈辱のみ。ダークライはそんなジュプトルの前に立ち、その姿を余すことなく眺める。股間の当て布は既にだいぶ血にまみれており、雄としての物を切り落とされたことが印象付けられる。その切り落とされた雄は、主の口に咥えられ先端を力なくぶら下げている。 「さて、セレビィ? 次はお前がこの汚物の先を咥えるのだな?」 「なんですって?」 一通り眺め終えて満足したのか、ダークライは次にセレビィに目を向ける。突然自分に話が回ってきた驚きもあるが、その内容がこれでは答えに怒気がこもらずにはいられない。しかしダークライはお構いなしで、セレビィを縛り付けている柱に手を伸ばす。次の瞬間にはかちかちとスライド音を立てながら、柱は床に埋まっていた背丈の一部を表す。セレビィの目線を上下させたりジュプトルの前まで動かしたり、簡単にできるというのがそれだけで伝わる。 「ふむ、やはりこんな汚物の先は咥えられんか。まあ汚物だからな」 「ダークライ……あなた……!」 セレビィの顔はジュプトルの雄がいつでも咥えられる位置まで近づけられていた。その上でダークライはぶら下がっているそれを指先で軽く弾き、左右に震わせる。そして言葉で「汚物」とこき下ろすことを重ねて、セレビィの気持ちを煽る。見る見るうちにセレビィの顔に血が登っていき、顔を覆う産毛が逆立つ。効果は覿面だ。 「あんたなんかに何がわかるの! これは大切なジュプトルさんの、大切な……!」 それ以上は言葉も投げ捨て、セレビィはジュプトルの性器にしゃぶりつく。本当なら切り落とされる前にこうしてあげたかったのだが、せめて今からでも。そうしないとダークライの「汚物」の言葉を認めるようで悔しくて。ジュプトルも驚愕するまでに、セレビィは一心不乱にジュプトルの性器を愛撫していた。 「ふん、憐れな光景だな」 切り落とされた性器を咥えて前後からしゃぶる二匹の有様を、ダークライは満足とばかりに鼻で笑う。その光景をしばし眺めた後、ダークライはガスコンロの火を消してそこで何やら二言三言呟く。 「さて、あとは……お前たちのこの姿を世界中のポケモンの夢に映してやるだけだ!」 「な、お前……!」 ダークライの高らかな宣言に、ジュプトルは思わず口を開いて声を上げてしまう。その瞬間性器の睾丸側は一度ジュプトルの口からはずり落ちるが、しかしセレビィはしっかり咥えたままで落とさずに取り留めた。 「私の能力は悪夢をはじめとした夢を見せることであり、この命まで生贄にすれば世界中のポケモンどもに繰り返し今の光景を見せつけてやれるのだよ!」 言いながら、先ほどジュプトルの去勢に使った刃を再び手に取る。それを自らの首筋に宛がい。ジュプトルとセレビィに向ける表情は、勝ち誇った狂気の笑み。その光景を打ち消さんとばかりに、ジュプトルたちが入ってきた扉が打ち鳴らされる。 「ジュプトル! セレビィ! 無事か?」 「おいでなさったようだな。どうせこの後が知れた命、それならこうして使わせてもらおう」 そう言って、ダークライは自らの首筋を一気に深く切り込む。そこから飛び散ったのは血ではなく、闇のような禍々しい黒。ダークライの体は糸がほつれたぬいぐるみのように、一気に崩れていく。 「一秒でも長く一匹でも多くのポケモンの前で……屈辱を晒すことを楽しみにしている!」 そこまで言い切ったところで力尽き、ほつれた糸となったダークライはその場で崩れ落ちた。その後数度扉が強く打ち鳴らされ、破壊された扉からヨノワールが入ってくる。 「ジュプトル! セレビィ! 無事……」 仲間の無事を確認しようと声を掛けたヨノワールは、目の前の状況に絶句する。ジュプトルもセレビィも柱に雁字搦めにされており、その下で崩れ落ちているのはダークライの亡骸。ジュプトルの股間は血に染まった布に覆われていて、一目で大事なものを切り落とされたことが連想できる。その切り落とされたものを、セレビィはダークライが死んだ今も一心不乱にしゃぶり続けている。ヨノワールには次の言葉が出てこなかった。そんな中……。 「済まないセレビィ……俺、結婚できない体になったな……」 その言葉にセレビィは一瞬体を震わせたが、なおも性器をしゃぶり続ける。それはセレビィと結婚して子供を作る、そんな断ち切られた未来の象徴のようにも見え。ジュプトルは呆然自失で一言告げた後、この場を静けさが覆った。 手中にあるのは狂わんばかりに光る鋭利な刃。それをジュプトルの股のすぐ下に突き込むと、尻尾は切り落とされて刃は彼を固定する柱に刺さる。一瞬遅れて失禁するジュプトル。飛び出した雄の周りをまさぐり睾丸まで飛び出させると、柱に刺さった刃を抜き一気に切り落とす。一瞬の視界の暗転で時間の経過を感じさせると、次の瞬間にはジュプトルの股間には当て布が巻かれていた。切り落とされた性器は金網に置かれ今にも炎にくべられそうになっており、ジュプトルは何やら懇願しているのが見て取れる。ジュプトルは差し出された性器を咥えて口からぶら下げる。その下では股間の当て布が血に染まっている。そこに今度は拘束されたセレビィが近づけられる。セレビィは狂ったように一言叫び、そのままジュプトルが口からぶら下げる性器を反対側から咥える。しばし両側から性器をしゃぶりあった後ジュプトルは何かに驚き性器を口から落とすが、セレビィはなおも口からぶら下げしゃぶり続けていた。 「うわあっ!」 「ジュプトルさん!」 絶叫と共にジュプトルは起き上がろうとする。そんなジュプトルを押さえつけるように、股間からの強烈な痛みが全身を貫く。自らの性器を切り落とす瞬間を夢で追想させる、最悪の寝覚めだ。いつの間にか全身の拘束は解かれていたが、動こうなどという気は起こる間も無かった。 「くぅっ……! 俺は、生きているのか?」 「あまり動くな……動けんだろうが。今は治療を急いでいるところだ」 仰向けに寝せられたジュプトルの隣で、ディアルガはゆっくり重々しく答える。意識を取り戻したジュプトルにセレビィは思わず飛びつこうとするが、それをヨノワールが手で制止する。治療中というのもあって、下手に飛びついてダメージを与えては目も当てられない。 「とりあえず、もう傷口は大体塞がっている。ディアルガ様とセレビィの力でなんとか最悪の事態は防げたが……」 「ジュプトルさん、もう丸一日眠っていたんですよ? 本当に死んじゃうかと思いました」 ヨノワールの制止もあり、セレビィは言いながら治療に戻る。治療と言ってもセレビィやディアルガが扱う「時」から生じる力をジュプトルに送るものであったが。基本的な治療はダークライがおこなっていたため、セレビィやディアルガがしたのはあくまでもジュプトル自身の治癒力の補助でしかない。超越的な力を持つポケモンであっても死んだ相手はそうそう生き返せるものではないし、生きていても回復できる範囲に限界はある。ましてやダークライから告げられた「時」の力でも戻せない空間で行なわれたのだから、なおさらである。 「いっそのこと……死んだ方が良かったのかもしれないがな」 「そんなこと! そんなこと、言わないでください!」 思わず出てしまった投げ遣りな言葉を、セレビィは絶叫で制する。言葉が自身を縛る枷となることもあるから、ジュプトルがそんな気持ちを抱えていては治るものも治らなくなってしまう。セレビィの声にジュプトルは少し渋い顔をするが、それでも刻一刻痛みが弱まっているのはわかる。 それから二時間が経過した。セレビィとディアルガの手当てによりジュプトルの傷口は塞がり、新しい当て布にももう血は付かなくなっていた。そのタイミングを見計らって、ヨノワールは食材を調達してきていた。 「流石はディアルガ様にセレビィ。もうある程度は動ける感じだな」 「ああ、おかげさまでな。ただ食事なんだが、その前に……」 部屋の片隅の調理場に向かうヨノワール。疲れた様子で体を伸ばすセレビィとディアルガ。すぐに食事は出てくるだろうが、その前からジュプトルには催しているものがある。だが言葉の歯切れが悪い。 「もしかして……ああ、トイレに行きたいのか?」 「ああ、ああ……。ダークライの奴に傷口が埋まらないようにって栓をされててな……」 ジュプトルの下腹部は、既に丸一日溜めて破裂しそうなまでの感覚だった。もしセレビィやディアルガの「時」の力での回復が無かったら、これを抑え続けないといけない時間は何倍にもなっていただろう。膀胱が膨れ上がる痛みに何日も耐えることになっていたかもしれないし、耐え切れずに栓が吹っ飛んで傷口が塞がっていないうちから尿漏れを起こしたかもしれない。いずれにせよ想像すればするほど恐怖だ。ジュプトルは首を振り、押し寄せる恐ろしい想像を振り払う。 「とりあえずトイレ……いや、風呂場はどこだ?」 「ジュプトルさん! こっちです」 ジュプトルがゆっくりとだが立ち上がったのを見て、セレビィはそれだけで歓喜の声を上げる。股間周辺を大きく切り取られていたため、立つにも歩くにも痛みは伴うが……それでもなんとかセレビィの案内で風呂場に向かうことはできた。風呂場の前で当て布を脱ぎ捨て、水道の前の椅子に腰かけると。 「あんまり……見ないでくれ」 「あ、はい……」 ジュプトルは股間に手を伸ばし、栓の端をつまむ。こんな風に股間に手を入れる姿を見せるなど、押し寄せる羞恥心が許してくれない。だがセレビィは見るなと言われてもついつい気になってしまい、ジュプトルの頭上からその様子を覗き込んでしまっていた。ジュプトルは片手で栓の先、もう片手で尿道のふちをつまみ栓を引き抜く。その瞬間、栓に続いて尿が噴水のごとく吹き出していた。 「あっ……! ああっ……!」 一日以上の間溜め込んだ尿から解放される感覚に、ジュプトルは恍惚の声を上げる。目の焦点は定まらず、口からは涎を垂らす。セレビィは愕然とするばかりだった。一通りの排尿を終えた満足と羞恥に、ジュプトルは一しきり身震いする。そしておもむろに排尿を流すため、水道に手を伸ばした。内股にも相当飛び散ったので、体もしっかり流さないといけない。 ジュプトルとセレビィが風呂場から出ると、もうヨノワールはおかゆを頭数分用意していた。流石にディアルガの方は食事はおかゆでは済まないので、その場から外れてはいたが……。 「ところでジュプトル、この治療所の周りにお前の村の連中が駆けつけているぞ。連中には『重傷を負った』くらいにしか伝えていないが、もう少し回復したら声をかけてやった方がいいな」 「ああ……俺はもう大丈夫だ。明日にでも皆に声を掛けるって伝えてくれ」 ヨノワールの言葉に、ジュプトルは一瞬顔を強張らせる。流石に「重傷を負った」だけではそれが「去勢された」という認識にはならないだろうが、ダークライから告げられた「呪い」の通り自分が去勢された時のことを夢に見たジュプトルにはそうは思えない。それをヨノワールが思わないのは、恐らくは寝ずにジュプトルの看護をしたからであろう。いくらダークライの呪いでも寝なければ夢は見せられないから、ジュプトルを心配したが故の寝ずで気付けなかったのは皮肉でしかない。それに対してジュプトルは焦燥しきった様子で「明日」を宣言する。 「ええ? 明日?」 「流石に……もう少し状態を見てからにした方がいいのではないか?」 そんなジュプトルの宣言に、セレビィもヨノワールも驚く。ディアルガも交えての献身的な手当てによって、確かに驚異的な速度で回復させることはできた。加えて周囲に心配をかける期間が短くできるのであれば、その方がいいというのも理解はできる。だが治療後の状態確認まではしていない中で見切り発進的に外に出るのは焦りすぎている感が否めない。 「大丈夫だ。体ももうさほど痛みなく動かせる。今までも苦しい戦いは越えてきた身だ。心配はない」 「そうか、お前がそう言うなら……」 どうしても心配になってしまうセレビィとヨノワールだが、ジュプトルにこう言い張られるとあまり強くは返せない。ジュプトルの元々のせっかちな気性が出てしまっているようで、二匹ともこの判断には一抹の不安を感じてはいたが。今回去勢される目に遭ったのも、最後の扉の前で引き返していれば避けられた可能性がある。思えば思うほど二匹の不安は募っていくばかりだ。 「とりあえず、明日の朝まではもうひと眠りさせてくれ」 「そうですね……皆さんに伝えるのは私たちがしておくので、ジュプトルさんはもうしばらく休んでいてください」 目を覚ましてまだ数時間だが、既にジュプトルの体は重苦しくなっていた。肉体的にはそこまででもないが精神的には擦り潰されたのはかなり来ているのだろう。加えて既に夜になっており、日の光の影響をまともに受ける草タイプにとっての習性で眠気が来ているのもある。世界に太陽が昇るようになってどれだけの期間が過ぎたか、太陽の恩恵を受ける習性は世界中のポケモンが取り戻していた。 「とりあえず、明日な」 「はい。おやすみなさい、ジュプトルさん」 食器だけ軽く片付けると、ジュプトルはそのまま藁の寝床に入る。村の仲間に連絡するのはそこまで時間はかからないだろう。その後はセレビィももういい加減疲れてきているし、そのまますぐに寝ることになるだろう。ジュプトルは「結婚できない体になった」とは言ったが、彼女の中ではあの約束はまだ生きている。添い寝くらいなら罰は当たらないだろうと期待に胸膨らませた後、一旦期待を横に置いて連絡に向かう。 手中にあるのは狂わんばかりに光る鋭利な刃。それをジュプトルの股のすぐ下に突き込むと、尻尾は切り落とされて刃は彼を固定する柱に刺さる。一瞬遅れて失禁するジュプトル。飛び出した雄の周りをまさぐり睾丸まで飛び出させると、柱に刺さった刃を抜き一気に切り落とす。一瞬の視界の暗転で時間の経過を感じさせると、次の瞬間にはジュプトルの股間には当て布が巻かれていた。切り落とされた性器は金網に置かれ今にも炎にくべられそうになっており、ジュプトルは何やら懇願しているのが見て取れる。ジュプトルは差し出された性器を咥えて口からぶら下げる。その下では股間の当て布が血に染まっている。そこに今度は拘束されたセレビィが近づけられる。セレビィは狂ったように一言叫び、そのままジュプトルが口からぶら下げる性器を反対側から咥える。しばし両側から性器をしゃぶりあった後ジュプトルは何かに驚き性器を口から落とすが、セレビィはなおも口からぶら下げしゃぶり続けていた。 「うわあっ!」 「いやあっ!」 再び襲い掛かってきた夢による追想。目線はダークライからのもので、必要な場面を上手く切り抜いていることにも悪意を感じる。見せられた夢に悲鳴と共に起き上がったジュプトルは、胸元でセレビィが悲鳴を上げたことで二度驚かされる。 「むむっ……。ジュプトル……?」 少し離れた位置で床を引いて寝ていたヨノワールは、悲鳴の二重奏もあって起き上がる。寝起きながらも複雑そうな表情から、彼も同じ夢を見させられたのだろう。一目見て汗だくなのがわかる二匹であるが、濡れているのはそれだけではない。 「ジュプトルさん……」 「ぅうっ……。漏らして……」 藁の寝床はジュプトルの尿で濡れ切っていた。恐らくは夢を見せつけられた衝撃で失禁してしまったのだろうか。いくら苦痛を想起させる夢を見せられたにしても、こんなに簡単に漏らしてしまうだろうか? 見ればセレビィも右脚がジュプトルの尿でびっしょり濡れていた。 「そう言えば成長してから去勢された者は、排尿のコントロールが難しくなると聞いている。泌尿器が切り取られた急な体の変化についていけないせいだと……もう少し早く思い出しておけばならなかったな」 そこまで言われて、ジュプトルはダークライが用意していた当て布についての説明を思い出した。その時は特に気付くことなく聞いていたが、あの「傷が治った後も世話になり続けるものだから」の一言はこのことを言っていたのだろう。これから一生に渡って繰り返し夜尿と戦う体となる……。ダークライの言う「より多くの者の前で、一時でも長く」という姿だろう、気を付けなければ大勢の前で漏らしてしまって目も当てられない。 「……せめて明日に延期するか?」 「いや! 流石に一度した約束をたがえたくはない! しかも……こんな理由で!」 若干血眼で涙目になりながら、ジュプトルは予定の強行を宣言する。強烈な羞恥心に苛まれて正常な判断力を失っている感はあるが、それに対して「トイレトレーニングをした方がいい」などと下手に言っては追い打ちにしかならない。セレビィもヨノワールも色々戸惑っている間に、ジュプトルは尿に濡れた体を流すために風呂場へと向かう。床に尿がしたたり落ちているのを見て一瞬足を踏み出すのを躊躇したが、床がタイル貼りなので後で拭けばいいと思いそのまま進む。何はともあれ行動力はある。 「とりあえずお前も風呂場に……セレビィ?」 「あ……うん、そうします」 とりあえずこの藁布団は処分しようと袋を用意したところで、ヨノワールは寝床の上でぼんやりしているセレビィに気付く。セレビィも徹夜で看護に当たってまだ疲れが残っているというのは感じるが、それでもジュプトルの尿で濡れた右腕を見つめて呆然としているのにはヨノワールも気付いてしまった。セレビィが慌てて風呂場に向かうと、そんな気付きたくなかったものを振り払って藁布団をゴミ袋に詰め込み始めた。 「戻ったぞ。その……色々とすまない」 「ああ。とりあえず……当て布はまだそこにある」 軽くシャワーで体を洗うだけだったので、ジュプトルはほどなく戻ってきた。既に藁布団の方は片づけられており、ヨノワールは机の上の当て布……おむつを指差す。治療自体は昨日のうちに終わっていたので、ダークライの用意した物という心情的なものもあり落ち着いたら処分する予定でいた。必要ということが分かった今、昨日のうちに処分しなくて良かったとは切に感じる。 「ああ。とりあえず寝るときだけでも着けないとな……」 「っと? すぐに着けるわけじゃないのか?」 ヨノワールに言われるままにジュプトルはおむつを渋々手に取ると、身に着けるために一旦脇腹に当てる。しかしそこでうつむいたまま首を振り、おむつを机の上に戻す。 「ああ。着けていると、感触で切られた時のことを思い出してしまってな……」 ポケモンは基本的に着衣することは無い。能力向上のためにリボンやスカーフを巻くことはあっても、それを股下を通してということはまず無い。ジュプトルもその例に漏れずで、股下に布を巻くなど切り落とされた後の治療が初めてである。トラウマを刺激するのは仕方のないことで、むしろ「寝る時には着ける」ということすら苦渋の決断だろう。 「傷口、目立たないのか?」 「それを言えばポケモンが布をまとっている時点で目立つだろう?」 それでももう一つヨノワールは気にかかるらしい。ジュプトルは四足ではなく直立している種族のため、去勢された傷跡は目立ち容赦なく晒してしまう。だがポケモンが着衣することなど無いという共通認識がある以上、股下を通して布を巻くような着衣をすれば結局はそうは変わらないだろう。そうでなくても世界中のポケモンがダークライの「呪い」により「あの瞬間」を共有しているのだ、今更無駄だろうというのがジュプトルの考えらしい。 「まあ……それもそうか」 どうにもヨノワールは不安感が拭えないが、それでもジュプトルがこう言うのでそれ以上の反発はできない。ジュプトルのせっかちな気質が更なる不幸を呼び寄せないか……ここまでの流れからどうしても不安になってしまうのであった。 診療所の前の街道には、かなりのポケモンが押し寄せていた。話では「重傷を負ったジュプトルが快気宣言で顔を出す」ということであるが、皆が皆ジュプトルが去勢された瞬間を夢を見ているので雰囲気が異様だ。誰もがああでもないこうでもないと言い合っている。 「ジュプトルさんが出てきますよ!」 そんな喧騒を裂くようなセレビィの声で、一斉に群衆の目線は診療所の入口に殺到する。ヨノワールが診療所の入口を開けると、ジュプトルは迷うことなく群衆の前に姿を出した。 「ジュプトルさん!」 「ジュプトルさん……」 群衆の中から次々と声が上がる。ある者は立って歩けるまでに回復したジュプトルの様子に安堵し、別な者はそれでも生々しい股間の傷跡に沈痛の様子で。そんな群衆たちにジュプトルは「心配かけて済まない」みたいに声を掛けようと言葉を選んでいた、その時だった。 「ジュプトルさん、チンコ切られて……ぷぷっ! ひでえ……っ!」 性格的に若干偏屈な者が、ジュプトルの生々しい股間の傷を見て吹き出してしまった。長く世界の暗黒が続いた後だったので、性格的な偏屈さが抜けきらない者はまだ少なくない。だがよりによって生々しい傷跡を笑うなんてと、その者は即座に周囲から袋叩きにされる。しかし時既に遅く、その声はしっかりとジュプトルにも届いており。 「うぅ……っ!」 途端にジュプトルの気持ちは萎れ、うつむき顔中が赤くなる。頭が恥ずかしさに支配され微動だに出来なくなった、その瞬間だった。 「ジュプトルさん……!」 「うっわ、漏らしてる!」 「ぎゃはは! 汚え!」 群衆の声でようやく、ジュプトルは自らが漏らしてしまったことに気が付いた。男根がなくなった股間からは尿が飛び散り、ジュプトルの内股から足元を濡らしていく。偏屈に笑い出した群衆は直前よりも増え、今度は全員を袋叩きにできない程だった。ジュプトルは涙を浮かべて顎を震わせ、恐る恐るといった様子で群衆を見回す。その目には全ての群衆が自分の姿に狂ったように笑っているように映ってしまい。 「ジュプトルさん!」 「ジュプトル!」 セレビィやヨノワールの声も振り切り、そのまま診療所の中に戻ってしまった。なおも群衆はやかましいが、ジュプトルにはもうその声は二度と聞きたくないものになっていた。セレビィとヨノワールが追いかけると、ジュプトルは逃げるでも隠れるでもなく寝泊まりしていた病室に戻っていた。 「俺は……もう……」 ジュプトルは震えた声を上げながら、寝床に横たわっていた。股間にはしっかりとおむつを着けて。呆然自失で宙を眺め、今度は涙すら浮かべずに。一度は世界と共に消滅することを逃れた身であったが、このまま朽ち果て消えてしまいそうな姿であった。時間が過ぎていけば体も心も傷は癒えていく、この時はそう信じていたかったセレビィとヨノワールだったが……。 「くっそ……また……」 それから数日、ジュプトルの心の傷は癒える様子を見せなかった。去勢された状態が体に馴染んでいけばある程度は落ち着いたかもしれないが、繰り返し見せつけられる夢がそれを許してくれない。寝るたびに逃げ場もなくトラウマの追想を強制させられ、その心痛に耐えかねた結果繰り返す夜尿が屈辱感で追い打ちをかけ。 「あらあらジュプトルさん。おむつ、替えましょうね」 「自分で……やるってのに……」 寝床に尻餅をついたまま、上体だけ起こしているジュプトルの前にセレビィが嬉々として寄ってくる。その手にはしっかりとおむつを構えて。大きく開かれたジュプトルの股間からは、尿の色に染まり湯気を立てているおむつが顔を覗かせている。セレビィは腰のところにあるおむつの結び目に手を伸ばし、性器を失った股間を露わにさせる。ジュプトルは口では拒否しているが、押し寄せる屈辱感で抵抗する気力まで切り落とされている。 屈辱の果てはまだまだ見えそうにない。 ---- &size(30){ポケダン時闇10周年おめでとうございます!}; ……なんて記念すべき年に、なんてものを書いているんですかね? やれやれ、この自分のアンポンタンは。 7月の大会の後色々あって意気消沈し、朽ち果て消えてしまいそうになっていた自分の頭に降って沸いたのがこのネタでした。その時は時闇10周年なんて頭には無く、ただ沈んだ気持ちを打破するためにも書きたいという感じでした。当初はツイッターで呟いたりしていた「切られる寸前の拒絶、失禁などするとなお良し。切られた瞬間の苦悶、股間が血にまみれるなど素晴らしい。終わって徐々に押し寄せてくる絶望」までで、その犠牲者がポケダンジュプトルとまでは決めていませんでした。しかしポケダンジュプトルと結びついた瞬間想像以上に美味しくなってしまい、こうして書き上げてしまった次第。その後のこの前の大会はテーマが「しょく」で、切り落とされた性器を口からぶら下げるなんて「食」としてもつながりそうな気がしていました。残念ながら字数の問題により諦めて別の作品にする結果になりましたがね。 そして投稿日の今日は11月11日。3年連続のポッキーの日参戦です、ええ。切り落とされた性器をジュプトルとセレビィでしゃぶりあう姿……この日のためのものでした。タイトルの「断ち切られた未来の……」の「……」の中身は「ポッキーゲーム」で、即ち「断ち切られた未来のポッキーゲーム」ということです。切り落とされたジュプトルの性器はまさに「断ち切られた未来」と言ってしかるべきですし、ぴったりなタイトルだと思います。世界観的に「ポッキーゲーム」という単語は出しづらかったので直接作中では触れませんでしたが、これに関してはここで種明かしをすれば十分感じてもらえると信じています。結果としてポケダンシリーズどころかポケモンシリーズでもトップクラスのイケメンキャラを去勢することになったことには若干の罪悪感はありますが、そもそもイケメンって虐められるものじゃないですか。イケメンに付きまとう悲運だと思えば大丈夫だと願っています。なお気付いている人がいるとは思えませんが、前回大会の投稿日も9月ですが11日。こういうのは「11日」に行なうに限ります。ついでに何故かチャットで某氏に「ポッキーの日」と図星突かれたのもいい思い出ですね。 それにしてもポケダンジュプトルは自分もイケメンで気に入っていますが、その行動の目的は「現状の世界が救いようもないため、世界を消滅させてでも変える」というもの。これは続編マグナゲートの悪役であるキュレムとほぼ同じ考え方なのが最高に皮肉だと思いました。丁度「メディア等で好意的に触れ続けている時間が長い存在は好印象を抱きやすくなる」という何とかいう名前の効果を知ったのですが、ジュプトルは主人公になれてキュレムは完全に悪役で終わるという扱いの差は結局はその程度なんじゃないかと今では思っています。まあ実際のところジュプトルは「未来世界の消滅の後に生まれるものの確信がある」という差はありますが、それでも未来世界に住む者たちにとってはとんでもない選択のわけで。自分が成し遂げた未来をある程度見届けるのも責任だと思いますから、そうなると自らが消滅する選択という意味でも少々無責任な気がします。それでもやっぱり「あのストーリーだから良かった」とは思いますが、別の選択肢を模索して欲しかったという気持ちも残ります。 そして時闇から10年、空探からも8年。書いてみてキャラがかなりおぼろげになっているのを感じました。ジュプトルとセレビィはまだ良かったですが、特にダークライはこれでいいだろうかと自信が持てない状態です。原作レイプも大概にしろと思えてしまう仕上がりかもしれませんが、読者の皆様の寛大さを期待しつつ投稿させていただきます。 それではまた次のネタがあった時にお会いしましょう。 #pcomment(断ち切られた未来のコメント,10,below)