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成層に揺蕩う幼い想い の変更点


writer is [[双牙連刃]]

 成層圏から降りた願い星が得た物は、何の事は無い平凡な日常と、そして……。
 ノーティウィッシュスター、星降る夜の願い星からなる願い星ジラーチ、デセオの物語第三弾でございます! 軽く読める程度の物ですが、お楽しみ頂けましたら幸いにございます。

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 風の音、水のせせらぎ……これを聞きながらゆっくりするのにも随分馴染んだなぁ。無為に過ごしてきた数百年、それを埋めるには十分なくらいなのは間違い無いや。いやぁ、下界最高。これだけでもう生きてるーって実感するもん。ビバ、普通の暮らし!

「おーいジラーチー。何処だー」
「呼んだか、僕を!」
「うわぁぁぁ!? ど、何処から湧いて出た!?」
「失礼な、屋根の上で寛いでたに決まってんじゃんじゃん? んで、どしたのノッコ」

 呼ばれたからビックリさせるの狙いで屋根から飛び降りた僕の前に居たのは、ここラサンの村、もといコカゲ村で暮らしてるポチエナのノッコって子。僕の遊び友達の一匹よん。普段は生意気だけど、ちょっと何かあるとビクビクするビビリストポチエナだよん。

「な、なんだ……今日は皆と一緒に森の探検するって約束したじゃん。待ち草臥れて迎えに来たんだけど」
「おおぉ! すっかり忘れてたぜぃ! メンゴメーンゴ」
「メンゴじゃないったら……ほら、早く行こうよ」
「イェッサー。レッツ森林!」
「いや、森林なんて言う程じゃないけど」

 ま、こんな感じで村の子供と遊ぶのも僕のルーチンワークなのさ。見た目がチャイルドしてるって言っても、もううん百歳よ僕? 子供の遊びなんて文字通り児戯だよ児戯。何したってへいきへっちゃら何するものぞってね。ま、楽しいのに嘘偽りは無いけど♪
 で、大人なポケモン達は昼間せっせと木の実や食べられる物を集めたり、村の修繕や警備をしてるから遊んでくれないって退屈を持て余しまくってるやんちゃ盛りのヤングポケモン達の世話を僕が一挙に担ってる訳さ。あ、大人しい子はエスペルことクレセリアに文字の読み書き、その他色んな知識をレクチャーされてます。そっちは結構大人なポケモン達も受けてるけどね。あ、別にアダルトなレクチャーじゃないよ? そんなの僕が許しません。エスペルは俺の嫁! なんてね、そんな事言ったら照れ爆発したエスペルにしばかれます。えぇ。
 ま、そんなクレセリア先生の邪魔をしないように、僕はヤンチャーテッドな皆とアンチャーテッドな所に探検に行きますかっと! とは言え、近くの森をブラブラーっとするだけで、ついでに何か木の実でも見つかればラッキー♪ くらいなもんだけどねー。

「皆ー、お待たせー」
「ソーリィソーリィ。すっかり約束の事忘れてたっさー、Hahaha」
「自分が忘れてたのにその悪びれない笑い方! ちょっとは反省しろよジラーチ!」
「えー、ちゃんと謝るくらいには反省してるってばーさ。カリカリしちゃやーよ」
「はぁ……まぁ、来てくれるなら僕は文句無いけど。じゃ、行こうよ」

 僕が遅れてきた事にプリップリしてるのがヤンチャムのマルタ。で、逆に冷静なのがコジョフーのクルミ。僕がつるんでるのは大体この三匹かな。三匹ともお子ちゃまだから、この三匹だけで探検なんて行かせたらまず間違い無く迷子エンドを迎えるだろうから、それを避ける為にも僕が出張るのだよ諸君。いやん、僕ってば面倒見マックス! お前約束忘れてただろってツッコミは受け付け終了しました。また来週!
 さてさて、それでは探検スタートでありますよ。作戦は常にガンガン行こうぜ! だが命大事に! どっちもを欲張るのが僕のスタイルです、はい。
 ま、そうは言っても村を取り巻く森の中だからね。ノッコなんかは来た事無いだろうけど、僕はちょくちょく来てるよ。村の家とかの建築材にする為の木をちょーっとばかし自然から分けてもらったりする為にね。縁の下の願い星デセオ、願いを叶える以外の仕事には熱血マックスでお送りしますとも! 結果は重畳以外認めません!

「マルタもクルミも、気を付けて進んでよ? 何があるか分からないんだから」
「こんなとこはまだまだ平気だっての。相変わらずノッコはビビリストだなぁ」
「もぉ、ジラーチが付けた変な渾名で呼ばないでよ。僕はビビリじゃなくて慎重なだけ……きゃあ!?」
「ごめん、木の枝踏んだ」
「おーっとノッコ? 熱烈ハグは僕照れちゃうけど、出来ればもうちょっと大きくなってからが好みかなー?」
「へっ!? ば、馬鹿! そんなんじゃないもん!」

 あらあら、慌てて離れちゃった。照れ隠しなんてしなくていいのにねー。あ、因みにノッコは僕っ子です。牡のマルタやクルミと遊んでる内に自然と一人称は僕になったみたいなんだよね。で、子供とは言え牝なんですよ。ある物はあるんですなぁ……デュフフフ、ごっつぁんです。
 なんてやってたら何処からともなくサイコカッターが飛んできて微塵に帰されそうだから自重しておこう。まだ僕死にたくありませんです。
 さて、恥ずかし誤魔化しにズンズン進み始めたノッコの様子に三匹で微笑みつつ、置いて行かれたら不味いから追うとしますかいね。
 落ち着いたノッコと合流して、またテクテクと歩いてく。いや、僕はホバリングしてますけどね? いいじゃない進行スピードは合わせてるんだから。歩くような速さで! 実はこれ地味に精密コントロール要るから普通にホバーするより疲れるんだよね。ドヒューンと飛んだ方がかえって楽です。

「お、小川がある。ちょっと休憩する?」
「いいな。よし、休憩だ!」
「ふぅ……」
「おんやぁノッコんお疲れかね? マッサージでもしてあげちゃうかーい?」
「へ、平気だもん。してあげるならマルタやクルミにしてあげてよ」

 ちっ、合法的にサワサワする作戦失敗。なーんてね、今のは裏無しの提案だよ。これでも僕のマッサージは癒しの願いを発動しつつのスペシャルマッサージだからね、ちょっとした疲れなんて吹っ飛ぶついでに疲れる前より元気になるって好評なのさ! まぁ、やり過ぎて村の大人ポケモンがヘブン状態からしばらく帰って来なくなった事があって自粛してやるようにはなったけど。
 けど、そんなジラーチマッサージEXも今は必要無し。小川の水飲んで一息吐いたら皆元気になったみたいだしね。それならそれで良し、元気があればなんでも出来るって言うもん、余計なお世話は必要ナッシング。
 にしても、結構村から離れたところまで来たかな。この辺からは村のポケモン以外も居る可能性が出て来るからちょっとだけ警戒値を上方修正。何が出てこようが僕はホアタァ! って出来るけど、この子達を巻き込む訳にはいかないもんね。安全第一焼肉定食食べたいなってなもんだよ。
 
「ちぇー、なんか面白いもん無いかと思ったけど、何にも無いじゃん!」
「仕方ないよ、結構離れたとは言え、この辺りならまだ村のポケモンでも来る事があるくらいの場所だもん。それに、これ以上離れたら帰るのも大変になるし」
「そうだよね。まぁ、村に居るよりは面白かったし、そろそろ帰ろうか」
「むー、ちぇっ、仕方ないか。そんなら帰るかー」
「ま、もっと本格的な探検はもっともっと青春してからで十分十分。しっかりご飯食べて寝る! それを繰り返してたらいずれ旅立てるくらい強くなれるっさー」
「本当にそれだけで強くなれるのかよー」
「なれるなれる! ジラーチウソツカナイヨー?」
「なんかその言い方が嘘臭い……」

 ふっ、これは胡散臭いと言うのだよクルミ。いや、自慢して言う事でもないけどね!
 とかなんとかやってたら隣の茂みががさっと音を立てた。おっとぉ? 僕とした事がポケモンの接近に気付かなかったかな?

「あ? なんだぁ? ガキばっかりか?」
「え……だ、誰?」
「兄貴、こいつ等ひょっとして、例の村のガキじゃねぇですかい?」

 あぁ、これはあれだね。山賊ってバカな部類に入る連中だわ。この感じだと、まーたコカゲ村を襲いに来た馬鹿っぽいね。
 僕が此処に降りてきた時もそうだったけど、コカゲ村ってたまーに変な馬鹿に狙われるんだよね。まぁ、雑魚な山賊なら追い返せる程度の力はあるから今まではそこまで実害も無く済んでるらしいんだけど、前のヘルガー達みたいな集団が来るとヤバイんだよね。ま、今は僕やエスペル、それにダークライが守ってるから下手な国より安全な村だけどね!
 で? 目の前のこいつ等は何か思案してる。ま、十中八九僕達を捕まえて村を脅そうとかって企てだろうけどさ。

「よーし……おいガキ共! 大人しくしろよ? でないと痛い目に遭わせるぞ!」

 一匹の兄貴って呼ばれたドンカラスが脅してきた。予想通りにピッタシカンカン、おめでとう一等賞ってね。全く、詰まらないなぁ。

「へっへっへ、こいつ等を使えば楽に村を襲えやすね」
「村を襲う!? そ、そんなのさせる訳ないだろ!」

 え、いやノッコさん? そこで前に出ちゃうの!?

「あぁん? けっ、震えた足で威勢の良い振りなんてするな、よ!」
「ちょお!?」
「うぁっ!?」
「ノッコ!」

 こ、この馬鹿エテボース! 脅しておいていきなり殴るとか頭沸いてんの!? くっそ、従う振りして油断させてボコッてやろうと思ってたから初動が遅れた!
 エテボースの尻尾で叩かれたノッコが後ろの木に叩き付けられた。当たり方は激しくはないけど、目を回しちゃってみたいかな。やってくれた……いや、やらかしちゃったね、僕。

「あ、こら馬鹿! 痛めつけたりしたら面倒な事になるだろうが!」
「へ!? いやだって、連れて行くなら大して違いは無ぇんじゃ?」
「アホ! 脅して従わせてるのと痛めつけて従わせてるんじゃ心象が違うんだよ! ガキを痛めつけられて大人しく従う奴が何処に居るってんだ!」
「……全くだよ。いやぁ、やってしまったねぇ? この馬鹿が」

 本当に全く、余裕ぶってないでさっさとぶっ飛ばしたら良かったのに、やってしまったね、僕の馬鹿。ノッコに余計な痛い目見せてどうすんだっての。ノッコの性格から言って、ビビリでも真面目で一生懸命だって分かってるんだからこうなるだろう事も予想してろってのこの大馬鹿! あーもう腹立つ!

「村を襲う? この三流悪党共が! 天誅だボケがぁ!」
「へっ!? な、ギャァァァァ!」
「おわ、ナァァァァァ!?」

 二匹纏めて思念の頭突きでボディを穿って上昇。そのままクルッと地面に向かって、一気に地面に叩き付けてやった。ピクピクしてるけど、死にはしないでしょ、多分。いやもう知らない。
 それより今はノッコだ。心配してマルタとクルミが様子を見てるけど、大丈夫かな?

「二匹共、ノッコは?」
「うんと……気は失ってるけど、怪我は無いみたい」
「ノッコ、ノッコ! 大丈夫か、おーい!」
「ウェイトウェイト! 揺すったりしちゃダメダメ! えっと……外傷は無し、打ち付けられての軽い脳震盪ってところか。ノッコは悪タイプだから鮮明にとは行かないけど……むんっ」

 おでこをくっ付けるようにして、直に僕の念でノッコの頭の中と脊椎辺りを診る。少しでも離れてるとタイプ相性の力で念が弾かれちゃうけど、ゼロ距離なら進化前でまだ力が未成熟なノッコになら行ける筈と踏んだ。よし、行けそうだ。
 脳は……うん、危険なダメージは無い。これなら僕の癒しの願いでなんとかなる。脊椎や骨は、異常無し。ふぅ、焦ったぁ……けど、思った程ダメージは無いみたいだ。良かったぁ。

「どう? ノッコ、大丈夫?」
「うん、これなら僕の力でなんとかなる。目が覚めるまでは……しょっと! 僕が油断した所為だし、ノッコはおぶって行くよ」
「おぶるって言うか……引っかけて乗せてるだけじゃね?」
「なんだよぉう! この短腕短足じゃこれしか出来ないだろぅ! ヒラヒラでフォローはしてるんだからいいじゃんよぅ!」
「わ、分かった分かった。とにかく村に戻ろうぜ! っと、その前に……」

 あ、マルタとクルミが協力して蔦で馬鹿共を縛り上げてくれた。ま、この状態で放置してれば逃げ出せるようになった時には、もう村を襲うなんて事は出来ないっしょ。けど、一応村に戻ったら警備のポケモンには話しておくだけおこうかな。
 よし、やる事やったらさっさと帰還! したいけど、変に揺らしたくないからスローリーに移動開始。無論ノッコには癒しの願いを照射中です。起きたら謝らないとなぁ。

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「全くもう、らしくない失敗ですねジラーチ様」
「うっ、マジでサーセン……」

 それから真っ直ぐに村に戻ってきて、ノッコをエスペルに診せた。治癒治療なら僕よりも数段上手いからね。で、診断が終わってから僕はばっちりお説教されました。本当、らしくなかったよ。今度からはサーチ&デストロイ&バインドを心掛けマッスル……。
 あぁ、マルタとクルミは騒ぎを聞きつけたそれぞれの親に連行されてお叱りを受けてるっぽいです。まぁ、これは結局帰ってきたらそうなってたから大丈夫大丈夫。なら行くなって? いやぁ、好奇心には勝てないって奴っすよ。

「とは言え、応急処置も適切だったので、これ以上悪くなる心配はありません。私の羽根も処方したんで、目が覚めたら落ち着いていますよ」
「マジで!? ありがとうエスペルー! マジ天使、ヤバイ!」
「ちょっ!? ……ま、真昼間から名前で呼ぶのは反則!」
「いいじゃんいいじゃん誰も聞いてないんだしー」
「それでもダメです! ま、全く……」

 よし、エスペルは照れモードにしたからこれで良いとして、僕はノッコが目を覚ますまで傍に居てあげるとしようかな。
 ……ノッコにはね、親が居ないんだ。ノッコがタマゴから孵る前に、この辺りを嵐が襲ったらしくてね、その嵐で崩れた崖に飲まれてそれっきりって事みたい。それからノッコはこの村の子として、村のポケモンが総出で育ててきたんだって。
 だからこういう時も、村の皆が心配してくれるけど、付きっ切りで傍に居てくれるって言うのは難しいんだってさ。
 だから、こうなっちゃった責任もあるし、今日は僕がその役になってもいいでしょ。あ、エスペルには置いて来た馬鹿の始末を村のポケモンの皆と一緒にしてきてってお願いしました。ドンカラスとエテボース、南無南無。

「うっ、んん?」
「おっと、お目覚めかいプリンセス? 眠り姫になっても、残念ながら僕は王子様じゃないから起こしてあげられないところだったよ」
「ジラー、チ? あれ、あの悪そうなポケモン達は?」
「それなら心配ナッシン。ノッコが気絶した後に僕がいてこましといたから」
「そっか……うん、良かった」
「……ごめんね、僕が有無を言わさず倒してれば、ノッコに痛い思いさせないで済んだのに」

 僕が本気しょんぼり顔したら、体を起こしたノッコにクスクス笑われた。な、なじぇ?

「ふふふ……あ、ごめん。そんなしょんぼりしたジラーチ初めて見たから、つい」
「な、なんだよぅ。僕だってしょんぼりする事はあるし、反省だってするんだぞぅ」
「それはそうなんだろうけど、似合わないんだもん。私が知ってるジラーチって、いつも何処か変わった感じだけど、笑ってるんだもん」
「それはそうなんだろうけど、似合わないんだもん。僕が知ってるジラーチって、いつも何処か変わった感じだけど、笑ってるんだもん」
「だ、だって、しょんぼりしてても楽しくないじゃん?」
「うん。だからさ、笑ってよ。ジラーチが笑ってる方が、僕も楽しいもん」

 ま、参ったなぁ、なんか僕の方が元気付けられちゃってるし。調子狂っちゃうなぁ。
 それからノッコはベットからひょいっと降りて見せた。うん、ちゃんと元気になってくれて良かった。と思ったらよろけちゃいますか! 見過ごせないじゃないですか!

「あら、ららら」
「なーう! はいもうまだ無理しない!」
「ご、ごめん。えへへ」
「ふぅーい、僕をハラハラさせるなんて、ノッコが初めてだよ」
「へぇ、初めてか」

 そう言ったと思ったら、なんだかノッコは嬉しそうに笑ってる。もう、どうしたって言うのさ?

「ねぇ、ジラーチ。一個、お願いしてもいいかな?」
「ワッツ? なしたの急に。いやまぁ今日は悪い事しちゃったし、僕に出来る限りならパパラパーしてあげても吝かじゃないけど」
「ならね、星が見たいな。それも、空いっぱいに」

 おっと、空に星と来ましたか。んー、時間的にまだ星がトゥインクルするには早いんだけど……まぁ、見せられない訳じゃないかな。

「うーん……見せられるけど、ちょっと怖いかも?」
「平気。だって、ジラーチがちゃんと危なくないようにしてくれるんでしょ?」
「もちろんさぁ。いや、おふざけ無しで、最高の星空を見せてあげちゃうよ」
「期待しちゃうよ? それなら、エスコートよろしく」
「イエスマム!」

 休ませてた家を二匹で飛び出して、おぶった時のようにノッコに乗ってもらう。準備は、オッケイ!

「さぁさぁジラーチシャトル発射5秒前! 乗客の皆様はお席にしっかりと掴まって離さないようにご注意くださぁい!」
「はーい!」
「シュア! 離陸後は舌を噛むので静粛に! 3、2、1……無限の彼方へ、いざ行くぞー!」

 ぎゅっとノッコが掴まったのを確認して、離れないように腰のヒラヒラで更にフォローする。そして……一気に飛び上がる。目指すはストラトスフィア、星の海の少し手前まで!
 空を割って、雲を超えて、更に上、僕達が居た場所にまで昇る。無論空気なんて薄いなんてレベルじゃないから、ノッコを守るフィールドは貼ってるよ。
 ふーぅ、久々に来たなぁ。居た時は退屈でしかなかった場所だけど、下での生活に慣れてから来るとまた違うな、綺麗なもんじゃないか。

「とーちゃーく。さ、リトルプリンセス。これが、星の海の一歩手前から見る最高の星空さ」
「ぷはぁ! ……わぁぁぁぁ……!」

 後ろから感銘を受けたって感じの声が響く。ま、ポチエナでこの風景を見たって言うのは世界広しと言えどノッコくらいでしょ。存分に楽しんでもらいましょ。

「綺麗……! それに、下に見えるのって雲なの!?」
「イグザクトリィ。そして、その下の青くて丸いのが僕達が暮らしてる大地だよ。空の星も綺麗だけど、こっちも捨てたもんじゃないでしょ?」
「うん! 凄いなぁ……ジラーチ、こんな場所にも来れるんだね」
「ふっふーん。伊達に幻のポケモンやってないよん?」
「そっか、そうだよね。幻のポケモンかぁ……まるで神様だね」
「んー、そう言われるとなんだか寂しいなぁ。そりゃあこんな所に来れるだけの力はあるけど、僕だってノッコや皆と同じポケモンだよ? ご飯を食べたら美味しいし、今日みたいに失敗する事だってある。神様、なんて呼ばれたら困っちゃうよ」

 実際、僕はジラーチとしての本分を放棄したはぐれ者だしね。他のジラーチならいざ知らず、僕単体は神なんて名乗る気はさらさら無いよ。

「そっか……へへっ、ちょっと安心」
「ほぇ? 安心?」
「んーん、こっちの話! あ、そうだ。忘れてたし今言っちゃおう」
「どったの? 言うって、何を?」
「……ジラーチ、今日は助けてくれてありがと。それと、此処に連れて来てくれて、本当にありがとう!」
「お、おぅふ、改まって言われると調子狂っちゃうな。ま、まぁ、どうしたしまして?」
「あれー? ジラーチ照れてるの?」
「な、なんだよぅ! ジラーチからかっちゃいっけないんだぞー!」

 ノッコが笑ってるのを聞いてたら、なんだか僕も釣られて笑っちゃってた。よく分かんないけど、なんて言うか……うん、なんか良いよね、こういうの!
 って言うか、なんでノッコは急に星が見たいなんて言い出したんだろ? それも、たまにはまた一緒に此処に来ようね、なんて約束まで取り付けられちゃった。いやまぁ構わないけどさ?
 とりあえず満足したってノッコが言ったから、今度は村に降りていく。気持ち、ゆっくりと風景を見ながらね。
 よし、無事帰還! 星を見に行ってる間にすっかり調子は戻ったのか、ノッコはまたねって言って尻尾振りながら帰っていった。まぁ、機嫌まで良くなったんなら結果オーライ!

「おいおい……ノッコちゃん連れて一体何処行ってたんだ? 突然飛び立って行ったから追う事も出来なかったし」
「本当ですよ。突然奇行に走らないで下さい」
「あ、ダークライにクレセリア。って、奇行って酷くなーい? 実はさ……」

 って事で、ノッコと成層圏までランデブーしてきた経緯を説明。ダークライは首傾げて不思議そうにしてるけど、なんだかエスペルは考え込んだようになった後に突然ハッとしたような顔になった。どったの?

「まさか……いや、そうだと考えると納得出来る点も……けど結論にはもう少し判断材料が……」
「あ、あのー、クレセリア? クレセリアさん?」
「あ、い、いえ、なんでも。と、とにかく! 今度から急に話を纏めたと言ってもそういう事をするならダークライか私に言付けてから行くようにしてください!」
「う、うぃっす……」

 そう言って、少し慌てたような顔をしながらクレセリアはいそいそ行っちゃった。残された僕とダークライは、お互いの顔を見合わせて首を傾げる事しか出来ないよ。なんなの一体?

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後書き!
 はい、七夕になったら投下していこうかなと思ってるデセオの物語第三話、如何でしたでしょうか。星降る夜の願い星までは、どちらかと言えばデセオやシェイド、エスペルの活躍を掘り下げてきましたが、今回は村に暮らし始めてから出来た繋がりなんかを紐解いて行こうとした次第。今までラサンくらいしかはっきりとは出て来てませんしね。
 風変りだけど、根は誠実で真面目なデセオに少しだけ淡い想いを抱くポチエナ、ノッコ。まさか現れないと思っていたデセオを巡るライバル登場に逸早く感付いて軽く焦るエスペル。そのどっちの想いにも気付いてないデセオの三角関係なんかをこれからも書いていきたい次第です! ……シェイド? しばらくはラサンと爆ぜてて下さい。
 それでは、また次の作品でお会い出来れば幸い! ここまでお読み下さりありがとうございました!

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