ポケモン小説wiki
情景はまた、青と黒 の変更点


まえがき
!R-18
!エーフィ♀×キノガッサ♂
!少し強いポケダンのオマージュ
!女性優位
!えろは薄いです
!受精要素
が含まれます。苦手な方はご注意くださいませ。
はじめての方は初めまして。何度もお読みいただいている方はありがとうございます、普段は別所でギャグSSばかり書いています「特ルリ」と申します。やはり緊張しております……オマージュ色が少し強い作品を投げてしまっても大丈夫なのでしょうか……今回の作品は「もしもポケダンを自分が作るなら」とでもいったような内容と……そしてもう一つのテーマを中核に描かせていただいております、もしよろしければ御読みいただけましたら幸いでございます。
今回もお読みいただいた全ての方、wikiを盛り立ててくださっている全ての方に感謝を!ありがとうございます……!


このお話を描いていただいたイラストによってインスピレーションをくださったなおさんと、お読みいただいた全ての方に捧げます。


イラストは支援サイトの規約によりこちらでお見せすることはできませんが、もし私の某青い鳥SNSのアカウントをご存知ならおそらくそこで見られることでしょう。素敵な作品ですのでぜひご覧になられてくださいませ。



「情景はまた、青と黒」

ゆく人の流れは絶えずして、しかして元の人にあらず。
時間を逆行させることはできないし、事実としてそこに存在している事は変わらない。
「……」
「あんた」
―僕はもう、苦しいんだ。
―放っておいてくださいよ。
「……あんた……馬鹿なことは」
―誰が止めたって同じですよ。
―どうせ僕は、「人」なんです。
―人じゃないひとが、その絶望なんて……
「馬鹿なことはよせってってるでしょ!!」
―乱暴な言葉。
―少し高い、良く通る声。
―輝く体毛。
―それらのものに、五感も語感も塗りつぶされる。
情景は、青と黒。
わずかに暗緑色。
真っすぐに崖から転落する、そのつもりだった彼を投げ飛ばすような勢いで救ったエーフィは。
「……なんなわけ?生きるの不満なの?!」
キノガッサの前で息を荒げて……そう、気炎をあげる。
それが救いの手か、苦諦の引き延ばしに過ぎないのか……それは未だ観測させぬ、シュレディンガーの猫又のように。
ただひとつわかることは。
―そのとき、その人は……

====
「ごゆっくりどうぞー」
なんということはない、ごく普通に探検隊がいそうなタウンの昼下がり。
目にも止まらぬ俊足で2人分の注文の品を置くと、掻き消えるようにバックヤードへと店員のフェローチェは帰ってゆく。
「あんたも元人間なのね」
「……ナバナさんも、そうなの……ですか?」
……青と黒を眺めながら、その液体が揺れ動くのを見つめながらテーブルでおずおずと言葉を投げるキノガッサと、まだ若干不機嫌そうに、しかし幾分か緩んだ顔でにじいろグミを齧るエーフィが向かい合っていた。
「そう、あたしは『ナバナ』……『オオウミ・ナバナ』……名前もちゃんと覚えている、出身だってニホンだしそこまであんたと同じ……あんたは?」
「……覚えて、ません僕は……人間の事は覚えているのに、出身もわかるのに自分がなにかは……ごめんなさい」
「……そうなんだ……」
……悪いこと言っちゃったわね、ごめんね。
未だに俯く彼に、一見少しがさつに見えるエーフィはそう心配そうに尾を垂らす。
手持無沙汰にかき混ぜられるミルクティーは、パッチールのようなゆるやかな渦巻き模様。
「でも!……よかった、僕は独りじゃなかった……ん、ですね」
「なんで確認してくるのよ……そうよ」
かと思えば満面の、なばなが咲いたような笑みを浮かべて尻尾でキノガッサを小突くのだ。
まるで、季節が移り替わるかのように。
「あたしだって元人間……どういうわけか、この「ウルトラスペースゼロ」に自分がポケモンになって来てしまった……皆からすれば異形の存在」

―きっと、あなたも。
ナバナは、目の前の小さい人を見る。
―自分が人間だ、とこの世界を理解して来た時に名乗ったでしょう?
彼が経験して来たであろうこと。
―人間は恐るべき存在で、この世界に来て仲間を捕まえて去っていった……そう古くは言い伝えられている……って白眼視されたのでしょう?
「……」
―そう、よね。
ええ、という弱弱しい声と、全てをあきらめたかのような力ない尻尾。
―きっとあなたは「ゲームのポケダン」のように……『ええーっ?!ニンゲンだってえー?!』って驚いてくれて……寄る辺のないこの世界で共に生きてくれる誰かを期待していたんでしょう。
―……。

「現実はそうではありませんでした」
「人間なんて縁起が悪いと言われ、さりとて憎まれるでもなくゆるやかな停滞に置かれ」
「どこへ行っても……それは同じでした」
食べるために生きているのか、生きるために食べているのか。
「依頼をこなし、その中で偏見を持たない友人も幾人かでき……新しい遺跡を発見したことだってありました」
ただ黙ってうなずくと、エーフィはキノガッサの言葉を聞いた。
徐々に上がってゆく尻尾と、その目を交互に見つめながら。
「それでも……世界に、僕はただ『一人』だったんです」
―この道具は「ポケダン」で見たことがありますよね、お腹が減り切ったら食べましょうとか。
―とくせいは「本編」と違って全て発動するんです、早くドーミラーから逃げましょう、とか。
― 一言ごとに、僕は言葉を振り絞るために喉を潤す。
―そういう会話をしかけるたびに。
―心に撒かれたまきびしを踏み、もう後戻りのできないところまで来てしまったのです。
「……それで、あの崖で」
青と黒。
桃色と、暗緑。
その光景はふたりの脳内に反響する。
「……じゃあさ」
そして……
「やろうよ、あたしたちで」
「……えっ?」
それをすべて、菜花の金色にするように……エーフィは手を差し出す。
「探検隊チーム……あんたの『パートナー』になってあげる!」
「……でっでも」
「やるの?!やらないの、やらないならおいてくわよ!」
周囲の客が何事かと振りかう、その目、目、目。
その中で……否応なしにも、いやきっと喜んでキノガッサはそう言うことになるのであろうから!
「……やります!」
「よーしいい返事だ……私たちのチーム名は「ナバナの丘で」ね!」
「もう決めてしまわれたんですか……?!」
なあにー文句あんのー?
いえまったく!!
凄むような声に、誰からともなく笑い声がさざ波のように響いた。
「……探検隊チームの結成か……!おーいママ、こっちににじいろグミじゃんじゃん持ってきてくれ、俺のおごりな!」
「バッジのご用命ならぜひここを出て右折直ぐのバッジ店へ……お二人をモチーフにした素晴らしい作品をおつくり致します、お値段の方は少々張りますが……」
あれよあれよという間に。
綴られた物語かのような渦の中に、キノガッサとエーフィは放り込まれる。
「楽しくなってきたじゃない!ねえ?」
「……そ、そ、そうですね?!」
その当惑と、その歓喜のまにまに……ただ笑顔で。
=======

あるときは、何も見えないほどの濃霧の先にある洞窟で。
「タブンネさんが見た怪物の正体は……奪われたくない先祖の宝をメタモンさんが化けて追い払っていたものだったのですね!」
「ポケダンで似たようなの見た!……でもまあ、奪われたら時間が止まるとかそんなもんじゃなかったけれど!」

あるときは、今は決して動くことのない機械が置かれた遺跡で。
「……この機械は、人間が残していったものだったのでしょうかね」
「さあねえ……すごくすごく古いものだったしあたし達じゃ分かりようもないわね……でも、そうだとしたら人間が荒らしていたって伝説は……ま、目的のどうぐは手に入れたんだし帰りましょ」

あるときは、広い範囲を荒らしまわっていたお尋ね者相手に他のエーフィとキノガッサと協力して。
「キノガッサのディーナさんって言ったっけ、あの子かっこよかったわー、エーフィのヨイさんと私をかばうようにすいと前に出て、ボーマンダのとっしんを受け止めたのよ!どっかの誰かとはえらい違いだったわ」
「……むっ……ヨイさんも、普段ちっとも回復してくださらないナバナさんと比べると手慣れたものでしたよ「リフレッシュ」の他に自分で作った薬でも回復してくださって……」
……これは、のちに少しの喧嘩と仲直りがあったのだが、これはまた別のお話。

「……今日は頑張って疲れたわね……それじゃ、また明日ね!」
「ええ……また、明日!」
「僕達は!」
「あたしたちは!」
「探検隊『ナバナの丘で』!」
何があっても……最後はバッジを掲げて、そうしてまた明日。
幾つもの日をそうやって、人間達は重ねていった。

========
それから幾分かの時が流れて。
再び、青と黒。
あの日の、あの時間の……あの崖。
そこに居るのは……夜から零れ落ちたような、異質な桃色。
胸につけられた探検隊バッジを外しては……しげしげと見る。
「……」
―ここまで、来たのね。
―ついに、ここまで。
遠くポケモンの街を眺めれば……突如として現れた赤黒い雲と、それが天球を覆う光景に圧されるように明かりが消えてゆくのが見える。
「……」
―手元のバッジは、冷たくて光っている。
―その光沢は、すごくきれいで。
―その光沢は、いろんな思い出がよみがえってきて。
―その光沢は……
―……
いいや、考えちゃだめ。
かんがえるななにもかんがえるなあたししんじたみちをゆけ
かんがえたところでなにもかもおそいここまできたここまできたのよ
あといっぽおすだけでおわるおわるんだから
きっとあのこもむくわれるんだからむだにはならないんだから
いいわねなにもおもっちゃだめ。
―今こそ。
その目に映るのは、その紫に映るのは……決断の闇。
―にっくき「ニンゲン」に、仇を取る時。
バッジをもう一度握りしめると……そっと、それを鞄に入れた。

=======
「これはどういうことかって?!そりゃあ……ポケダン名物、裏切りよ!」
いっそ滑稽なその言葉と共に、翼の上で彼女と対峙する。
―巨大な鳥のようなポケモン……いや、それは知識としてはポケモンと分かっているが、果たしてポケモンなのだろうか。
―最早、そんな事はどうでもいい。
「もう一度だけ訊きます……これはどういうことですか、ナバナさん!」
赤い颶風を受けて吹っ飛びそうになりながらも……いつしか信念を杖に立てるようになったキノガッサは、自分のパートナーにそう問いかける。
「そんなの見たらわかるじゃない!!」
「あなた一人と、ニンゲンの痕跡と……この世にまだ隠れ住んでいるであろう元ニンゲンのポケモンを!」
一言ごとに、まるで飲み物をあおるかのように竜巻は強くなる。
「殺して!殺して‼殺しつくして何もかも地上から消すために!」
おそらくエーフィのサイコパワーにより増幅されているそれは……勿論彼女一人の力ではなく。
ナバナと名前のない彼の綿密に立ててきた計画によって集めた道具の補助でもって成り立っているのであろうが、勿論彼は自分がそこまで利用されていたとは知る由もない。
「コイツを叩き起こして、あたしは協力させたのよ!この生物-イベルタルの再び眠るための生贄のポケモンを対価にね、キノガッサさん!」
「なんで!なんでそんなこと……それなら!」
「協力しなかったって?気を許さなかったって?だからニンゲンはバカなのよ、打算であんたみたいな好みでもないやつに……!」
―それなら。
「それなら、あの場で僕は死にましたのに!」
「……!」
口をついて出てきた言葉は、それだった。
裏切りへの憎しみでも、ただ絶望しただけの言葉でもなく。
―何故か、それでした。
―それなら。
―それなら、パートナーの望み通りに……僕は悪にだって、自分を殺すことだって……
「……あんた……あんたは……」
<<……さて、それでは命を頂こう。>>
風の奥から、紡ぐ話を断ち切る……禍々しさに似つかわない鳴るような声がする。
それが……周囲の命を吸いつくし、また繭に、休眠に戻る途方もない生体のサイクルゆえであるとも、彼「ら」は知っている。
<<まず目の前のキノガッサ、汝の命を。そしてこの地上に150匹居る……元人間の命を。全て頂き、また我は眠りへと還る。>>
「……まっ、待って!!」
思わずナバナは叫ぶ。
「この子だけは……この子だけは、見逃して!」
声の限りに、感情の限りに。
「こいつはあたしの……あたしの、大事なパートナーなの!」
「……!」
苦しいものも。
悲しいものも。
その言葉が聞こえた瞬間、キノガッサから抜けた。
―そう言ってくれる、って。
―僕はなぜか、信じていましたよ。
―だって、あなたは……
<<契約を違える気か……ならば話は無しだ、地上から無差別に眠るために必要な命だけを頂く>>
―何かを考える前に、はっと「このパターンは」と思う。
「ポケダンにおいて」「裏切ったものがそれを翻すとどうなるか」。
―竜巻の指向が、変わる。
それよりも一瞬、ほんのわずかに早く。
「つかまってっ……ナバナ、さん!」
「な……っ、待ちなさ……」
―ここは「ポケダンの世界」なのだから。
―当然それは、伸ばした手は間に合いましたとも。

=========
(あなたは……ナバナさん?)
―……これは……
(わたしもナバナ……『大海菜花』って名前なの)
―……そうか、あの時の……
(わたしね……ポケダンの世界にすっごく憧れてた!あなたに助けてもらったのはまさにポケダンの物語そのままだったもの!だから、あなたがいてくれてうれしいの)
―菜花、さん。
(ポケダンって言われてもわかんないね、ごめんなさい!……あのね、あのね、この世界にそっくりな……ポケモンと元人間が冒険を繰り広げる空想上のおはなしがあるの、そこではね……でね、『あらたないのちのために』って曲がすっごく素敵なの!)
(わたしも菜花、あなたもナバナだから……わたしたちのチーム名は……『菜花の丘で』ね!)
―あたしが……あたしが、元人間のお尋ね者から……どうすることもできずに……
(今度のおたずねものは恐ろしいらしいけれど、ナバナがいればきっと大丈夫!)
―どうすることもできずに、彼女の言う「助けてもらったパートナー」にもなれずに。
……ナ、さん!
―なれずに……
……ナバナさん!
========

―目が覚めると。
―そこは、現実だった。
―情景は、青と黒。
―いつか見た、あの崖。
―二度見た、あの崖。
―三度見た、あの崖。
―「四度」見ることになった……あの崖。
……いや、それよりも。
「よかったあああ!ナバナさん、ナバナさん生きてました!!」
「ちょ、ちょっとま……うひゃあ?!」
―飛びついてくる影は……一瞬キノガッサの少女に見えたけれども。
―それは間違いなく……名前もない、あいつ。
「……ナバナさんが生きていてくれただけで、僕、僕……!」
「ええい離れなさい!……」
……助ける必要なんて、なかったのに。
……あのままイベルタルの養分になってもよかったのに、あんたも巻き添えに出来るし。
―その他色んな言葉が渦巻きかけるが……
―だけれども。
―最後に訊いた言葉は、差し伸べられた手は。
……。
「……あたし……ううん」
―ごめんなさい。
―わたし、償うことなんてきっとできない。
―自分がやったことに、世界全てへの逆恨みに。
そう言いたくなってからは、もうただパートナーへと泣きついて言葉がどうと堰を切って出た。

「……菜花さん……ナバナさんと同じ名前を持つ、元人間のポケモンさん」
ゆっくりと、噛み下すように、キノガッサは話しかける。
「その方とは、この崖に倒れていたところを出会った」
ひとつひとつ、一片一片を理解していくように、知らない記憶を。
「二人の「なばな」さんは、ポケダンの主人公とパートナーのようなかけがえのない存在だった」
それは全て……ここまでを共にしてきた、パートナーのため。
「……そして」
びくり、と腕の中で身動ぎする……エーフィのため。
「……そして、全ては同じ元人間の悪意によってあっさりと崩れ去り、あなたはまた……僕を見つけるまで「ひとり」になった」
……それしか、見えて居なくて十分だった。
「そして……この崖に倒れている僕を見た時に……実行を決意したんですね、ニンゲンへの復讐を」
……それしか見えて居なくて、何が悪いものであろう!
「……わかってるなら」
「……ええ、そうですね……わかってるなら、行きましょう」
えっ?
思わずそんな声がエーフィの口をついて出る。
「イベルタルはまだ生命を吸っていないんでしょう?……彼のサイクルを壊してしまう事は心苦しいですが……償いは間に合いますよ……『あらたないのちのために』僕達が……やりませんと!」
彼の背後には、いつしか崖の延長線上に最初からそこにあったかのような赤黒い砦のようなものがある。
それはきっと……形成されつつある、死のサイクルの繭。
「……あらたな、いのちのために……」
当たり前の顔でそんな事を言う、もう彼女しか見えない彼の前で。
「……う、うふふ……」
―そうね。
―じゃあ……
……そのまえに。
エーフィは……すっと立ち上がると彼に覆い被さる。
その二股の尻尾で……ハートを、生命の模様を作って。
「これは、わたし……ううん、あたしからのごめんなさいと……それから、決意……受け取って、くれるわよね」
―あなたはなんたって、あたしのパートナーでしょう?
==========

「や、やめてくださいよっ……こんなことしてる場合じゃあ……!」
秘めやかな湿った水音は、キノガッサの意思などとは関係なくエーフィに蹂躙される秘部を如実に表していて。
「しなくても……このまま死ぬとしたら絶対後悔するから、あたしが!……それに野宿の時とか、滝に流された時とか……あたしの肢体を見てたの、はーっ……ふ、あっ……知ってるんだからね……あたしで脱童貞したかったんでしょ?」
それでも否応なく反応してしまうキノガッサの一物に、いっそ彼女は痛みよりもいとおしさを感じていた。
「そっ……それは……そう……ですけれどもっ……ふ、やだやだあっ……!」
彼が拒絶の声を挙げても決して離さないナバナは、ぬちゅっ……くちゅっ……と慣れてもいない、痛みもあるであろう自身の膣内を気にもせずに彼を想おうと腰を奥深くまで擦りつける。
「夢をかなえてあげるから……感謝、あっ……ふあっ……あなたのぐりぐりってっ……!なさいよっ……!いっぱい出して……あたしを、あなたのものにしてよ……っ」
「……こ、困りますっ……!せ、せめて避妊を……ふ、ああっ……!」
言葉で拒絶しつつも快楽に腰を掴まざるを得ない雄の哀しき習性をもが、最早愛しいと彼女は思っていた。
「だーめ……っ……!ふふ、ぞくってっ……お腹がぞくってなっちゃう……っつ……あんたのタマゴできてもいいから……ううん、寧ろ」
ぴたりと腰を止めると……がんがんと揺らぐ青と黒、それから……目の前の緑に向けて話しかける。
―欲しいの、あなたとの『あらたないのち』。
「……っ、ふ、ふああっ……!ナバナさんっ……ナバナさんっ……ぼ、僕っ……!」
「だらしないわねえ……大丈夫、最後までリードしてあげるから……ね?……ふ、あ、な、な、なんかきちゃうっ……びくってなって、あたしまでへんになっちゃうわよおっ……!」
甘やかすようなその言葉と、耳元でささやかれた命への欲求に。
堪らずキノガッサから、白濁という生命がエーフィの膣内へと遣り取りされる。
ぶびゅううううっ!びゅるるるっ!びゅるるるっ……!どくっ……どぷっ……!!
命を作るための場所に蓄えられるそれは、エーフィの華奢なそこには収まり切らず……二人の接合部より溢れ出すと、その交わりを白く染めていった。
========

<<……何故ここへ来た……>>
「そんなこと……決まっているわ!」
「生命を吸って繭になるあなたの生態を邪魔する……いや、あなたを「殺す」ことになるのは心苦しいですが……貴方の死で!ここで吸われる犠牲者の連鎖を断ち切る!」
赤黒き砦の奥、今まさに地表に向けて『デスウイング』を放とうとしている、死を以って眠りを得る伝説のポケモン。
それに対峙するのは……勿論、『ポケダン』の主人公とパートナー。
<<ニンゲンは……ニンゲンたちは、死をも奪わねば満たされぬのか>>
<<嘆かわしい事よ>>
どんな悪エネルギーにも怯まない彼女であれども、自身がしたことへの禊の困難さを思い知るように一瞬膝を折りかけるが……
「……そう、よね」
「殺そうとしたんだから……それをやめさせるためには、殺すしか」
―ない、わよね。
「……共に、僕も汚れましょう」
―ない、ですよね。
ただ、普通の主人公とパートナーより。
少し汚れていて、どこかおかしい。
それでも……目に宿している意思は、その覚悟はフィクションの彼らと同じ。
<<……よろしい……ならば、その命から刈り取ってやろう……ゆくぞ>>
……そして、最後の戦いが始まった。
======

<<……見事、だ>>
あくのはどうはキノガッサが受け止め、飛んでくる羽根の嵐はエーフィがいなす。
たとえ膝をつくようなことがあっても、そのたびに鞄に入れた『ふっかつのタネ』は不思議なことに何度でも芽吹いた。
<<だが!!故に!>>
「きゃあっ……!」
「……くっ……だめなんですか、人間とポケモン2匹じゃあ伝説は越えられないんですか……っ……」
それらを全て受け止めて……圧倒的な赤黒の暴風が、その渦巻きをより強くする。
<<その勇猛に免じて……汝ら二人の命を以てして短時間のみの眠りに就こう、百五十年後のポケモン達が早くに目覚めた我の前にどうなるかは……わからぬが!>>
「……終わり、かな……僕達の犠牲で、一時しのぎになるなら……」
「……まだよ……まだ……っ」
弱気になりかけたキノガッサを激励するように、エーフィは信念を杖に、否最早棒切れにもならぬ支えとして立ち上がる。
―まだあたしは、きっとこいつも……諦めてなんていない!
―かかってきなさい……イベルタル!この命が欲しければ、奪い取ってみなさいよ!
<<……!>>
エーフィが立ち上がるのを。
―僕だって……あきらめて……あきらめてなるものですか!
―ナバナさんの命も、僕の命も取らせないぞ!
キノガッサが飛んできた悪エネルギーから庇うように、ない力で腕を伸ばすのも。
そして、「その奥にあるもの」も。
死の伝説は、眼を見開いて見た。
<<……>>
……そうして、キノガッサに向けて何やら呟くと……突然糸が切れたように、ばさりとはとても表現できない、囂々たる音を立てて地へと倒れ伏す。
「……っ……」
「……なに?」
キノガッサは、俯く。
太古より、生命を数え、奪いそれを地に返す輪廻を行っていたもの。
その、「生命の数」を違えたゆえの矛盾による自死の瞬間であるとは……無論、彼らも知りようがないものではあるが。
……そして。
「……倒し、たの?……攻撃を続けたのが効いた?」
勿論、彼女らも知らない。
キノガッサから放たれた命が、あの時……あの場でエーフィの卵子と結びつき。
新たな命として形を成していたことも。

=======
「……帰りましょ、イベルタルを倒したーなんていっても、信じてもらえないかもねっ」
「ねえキノガッサ、あんた自分の名前そろそろ決めなさいよ あたしがつけてあげるから」
「……あたしとえっちなことした責任は取ってもらうわよ、いいわね?孕んでたら絶対よ」
……間もなく、夜は明ける。
生命の原則を大きく崩したこの世界、無数にある「ウルトラスペースゼロ」のひとつがどのような未来を迎えるかはわからないが。
たった一つだけ……たしかなことがあった。
……一つの命は、一つの命で以て贖われる。
「……イベルタル……さんがそう最期に言っていたんです」
……それを汝が、引き受ける覚悟はあるか。
「……ナバナさんには、僕は生きていてほしい……だから、黙ってうなずきました」
「待ちなさいよ、そんな冗談……キノガッサ!キノガッサ……あんた」
『ポケダンの主人公』は、ただ振り返らずに。
その身に、消えてゆくものを表す……『しょうめつこう』を、光を纏う。
「きっと菜花さんも言っていたでしょう?」
―ポケダンの最後は、パートナーとの別れで終わる、って。
―その通りになっただけですよ。
きっと顔を見せれば、彼女がまた折れてしまうから。
そうなってしまえば……何のために自分の命があったのか、わからないから。
========
「さようなら……ありがとうございます、ずっとずっと……忘れませんよ」
―僕の。
―世界で一番大事だった「ひと」。
「待ちなさいよ……名前だって!あんたとのタマゴだって!これからの探検だって!あたしは、あたしは……」
―欲しかった、のに。
―ほしかったのに……っ!!
エーフィの悪行は因果となり、しかしてその着地点を変えることは成った。
金色のなばなのような……まばゆい光に包まれて、満足して消えてゆく……自分のパートナーという形で。
========


―どうやって街に帰りついたか、覚えていない。
―ただ、あの不吉な雲がイベルタルの仕業で、あたし……達がそいつを倒した英雄だってことは「何故か」知れ渡っていた。
―この世は理不尽な死のサイクルより開放され、これより先は未知の世界、エーフィちゃんとエーフィちゃんの娘の世代が切り開く世界。
―長老のジジーロンさんからそんな言葉で始まる難しい話を聞いたけれども……あたしには、よくわからなかった。
―ただ、泣いて過ごした。
―その後は、手元のタマゴを抱きしめて時間を消化した。
……最後に。
……それでも……もう一度探検に戻らなければ、って思った。
結構食べるあいつがいなくなったと思ったら……きっと、その面影がまたよく食べるだろうから。
……それに。
(それでねナバナ……)
……ふと、菜花の言葉を思い出したの。
(消えちゃった主人公は……さいごのさいごに戻ってくるの!そこからはエンディングで……そして、エンディング後のおはなし、世界中の伝説のポケモンを探す旅が始まるのよ!)
……ここまで彼女の言う「ポケダン」通りなんだもの。
……「さいごのさいご」の時が来たら……帰ってくるんでしょう、あいつ。
……そう、信じてるから。

=========
―情景はまた、懲りずに青と黒。
―この崖を見るのは……もう、何回目かしら。
「……」
ふと。
ふと、予感がしてエーフィは夜空を見上げる。
そこには……なぜ今まで気づかなかったのかわからない、信じられないものがいたのだから。
<<……シカリ……シカリ>>
「かがやき……さま……」
光がこの世の中にある理由。
様々な世界に光を齎したという……おとぎ話の神様。
それがエーフィの目の前に佇んでいたのだ。
<<シカリ……ナンジ、シカリ>>
神々しき4枚の翼を広げると。
二の句を告げぬエーフィを前に……眩く、優しく発光する。
「ひ、やっ……?!」


―光が晴れた時。
―そこにはもう、かみさまはいなくて。
「……ただいま」
―代わりに居たのは。
―なんだか頼りない、でもせかいであたしだけは頼っている……
―あたしの、世界でいちばん大事な「人」。
「……おかえり、キノガッサ」
ゆく人の流れは絶えずして、しかして元の人にあらず。
時間を逆行させることはできないし、事実としてそこに存在している事は変わらない。
―そのはずだったのに。
―やっぱり。
―あなたの言ったとおりだったわね。
―金の光がほどけてゆく、ただ中で。
―懐かしい誰かが……笑った気がした。
―エンディング後のおはなしとやらで……貴女も救える……そんな気がするのよ。
―ううん、こいつとなら……なんだって!
―なんだって、やれるはずだわ!

                               THE     END


=========

あとがき
ここまで拙作をお読みいただきましてありがとうございました。あとがきから先に読まれるお方はネタバレを防ぐために先に本編をお読みいただければ幸いです。
さて。

『エンディングごもまだまだぼうけんはつづくぞ!』
『ふたりのナバナをめぐるものがたりに、かがやきさまのなぞにせまるでんせつのポケモンへん、タブンネのいちにちをえがいたものも!』
『さらに、しんでしまったイベルタルをよみがえらせ、だれもころさずねむれるように……ほんとうにきみたちはできるのか?!』
『そしてそして……スペシャルエピソード1:えいゆうのむすめがかいほうされたぞ!』
『スペシャルエピソードはトップメニューからあそぶことができるのでちょうせんしてみよう!』

……とでも、初代ポケダンのオマージュともパロディともつかないもののみで、締めとさせていただきます。
改めて、お読みいただいた全ての方、なおさん、そしてwikiを盛り立ててくださっている方に感謝を。ありがとうございます!
よろしければコメントでご指導ご鞭撻のほど頂けましたら幸いでございます。


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