#include(第二回帰ってきた変態選手権情報窓,notitle) 作者:[[俺だよ俺>リング]] #contents 人間であるトレーナーには、ポケモンが放つ言葉がどのような意味を持つのかは分からないが……一度手持ちのポケモンの会話を見てもらったことがある。世界中を飛び回ってポケモンの言葉を伝えているポケモンインタプレーターのNという青年に見てもらった結果、返ってきたのはこんな言葉であった。 『何だこれは!? どういった数式の元に成り立つ関係だ!? こんなことを言うポケモンがいるだなんて……。破壊的なまでの支配欲……その受容体となる被虐願望は、ボクの理解の臨界点を超えて、虚数の軸に座標を置いている!! ミツハニー以上の奴隷根性が備わったポケモンなんて、僕はこの子以外知らない。 なるほど、これはボクの知らない数式だ……解き明かしてみれば、一体何が見えるんだ? キミの名前は……? そうか、――と言うんだね。――……よければ、キミのポケモンともっと話がしたい。ボクはこの数式を解き明かして、人間とポケモンの更なる関係の構築への糸口にしたいんだ!』 幼少のころより、虐待されて心身ともにボロボロになったポケモンを見続けたおかげで、多少のことでは動じないと言われた彼でさえも動揺させた会話を、ポケモンたちはしているらしい。そして、今もなお、それが続いているのはなんとなく分かる。 自分とその周りにいた女性ファンが、『その数式は解いちゃだめ!』とほぼ全員一致で声を上げたのが、今でもトレーナーには強烈な印象として残っている。 『今回も大勝利、気分がいいねぇ』 赤いカチューシャのような鬣をもつ、闇色のポケモン、マニューラが気分もよさげに言う。一試合を終えた彼の手には、イトマル製糸工業で作られた、キリキザンでも切れないと評判の特殊な繊維をより合わせて作られた、丈夫なリード。リードの先の輪になった持ち手を彼が掴み、その反対側。首輪につなぐクリップの部分は、当然首輪につながれている。 『はい、ミヤビ様のおかげです』 マニューラの視点から見えるのは、真っ青な体毛と、後頭部についた四つの黒い房のみ。ルカリオは、同じポケモンからリードにつながれ、なおかつその背の上に乗られて、しかも普段から二足歩行のはずが四速歩行を強要されていると言うのに、屈辱や憤怒に顔をゆがめるではなく、むしろ幸せそうな表情が目に付いた。それは勝利の余韻によっているわけではなく、むしろマニューラに乗られていることが嬉しいような……いや、実際にそうなのだが。 その二人を見守るトレーナーは、ゴールデンコンビと称される彼らの活躍を頼もしく思いながらも、どこで教育を間違えたのかとため息を吐くばかりである。 『そうだ、俺のおかげだ。それをよく理解しているとは、頭が悪いお前にしては上出来だな。褒美は何がいい? 凍えるくらいに寒くしてから、俺の深い慈悲の心で暖めてやろうか? それとも、お前の胸に傷をつけて、俺がその傷口をざらついた舌で舐めてやろうか? より惨めだと思ったほうを選べ」 ミヤビと呼ばれたマニューラは高圧的に言う。 『で、出来ればどちらもしていただきたいのですが……』 惨めなほうを選べと言われ、ハルカは目を泳がせながらおずおずと答える。 『ほ~う……ハルカちゃんは贅沢な悪い子だ……』 いいながら、マニューラはその鋭い爪をルカリオの頬に突き刺す。体毛を掻き分け、分厚い皮膚がぷつん、と切り裂かれて血液が流れ出す。 『鉄臭い、いい味だ……わがままをしていると、こんな風に血が美味くなるのかい』 『あぁ、もっと……』 歩きながらでもそんなやり取りを出来る器用な二人を見ながら、トレーナーは悩んでいた。どうしてこうなったと。 昔は、どちらも可愛い子だったのだ。ミヤビは、元セッカシティのジムリーダーであったハチクさんから、映画のオーディションに落ちたニューラを一部預かって来たから里親を募集していたとのことで、このトレーナーが最初のポケモンとしてもらった子である。 ミヤビは二番目のポケモンを入手したころから優れたリーダーシップを発揮し始め、野生のニューラの爪を剥ぎ取ってマニューラに進化を遂げるのも速かった。今となってはみんなを引っ張る、仲間想いなリーダー格だ。野生でも群れを守れる個体がマニューラとなるのだからその影響もあるのだろう。 そして、ハルカは夢の世界のポケモンを研究する機関から貰った女の子。ハルカがリオルのころは、その特性で以ってして、そこいらのリオルではありえない戦いをしたものだ。初試合のデビューも、それはそれは見事なものであった。 「よし、頼むぞハルカ!!」 勝負はお互いに最後の一匹。相手はウォッシュロトム、こちらはハルカが最後の切り札であった。 「ウゥゥ……」 「どうした、ハルカ?」 しかし、ハルカはモンスターボールから出た瞬間に、膝を折って苦しみだす。酷い腹痛なのか、何とか立ち上がったものの、その足取りはふらふらだ。 「む、無理すんなハルカ……戻って来いよ」 その時は、流石のトレーナーも心配してとめるよう指示もしたし、相手のトレーナーもまた攻撃を指示できなかった。戸惑いながらウォッシュロトムがハルカを見ていると、彼女は突然手の甲をこすり合わせて嫌な音を鳴らす。耳の奥底を引っかくようなその音に、稲妻型の腕を耳にあてつつ、ロトムは大きな音を出して対抗しようとラップ音を出し、騒ぎ始める。だが、すでにハルカは自身の耳を寝かせて騒音対策はばっちりだ。 先程までの腹痛の演技はどこへやら、鋭く光る肉食獣の目で以って相手を捉え、ウォッシュロトムの体を掴んで顔面に飛び膝蹴り。掴んでいるから吹っ飛ぶこともなく、そのまま浮遊した状態から落ちていったロトムにニードロップ。完全に自身のペースを掴んだところで、どてっ腹に向けて発経。体内に響く衝撃を与えたところで、相手はノックアウトであった。 このハルカという個体は、何でも最近になって夢の世界からこちら側の世界に引きずり込んだポケモンであるらしく、夢の世界から連れてこられたこの子の生態については詳しく分かっていなかった、学者にとっては&ruby(すいぜん){垂涎};ものの個体なのだ。 そんな貴重なポケモンを譲り受けることが出来たのは、このトレーナーがこまめにレポートを書いているような子だし、これからもレポートを続けるのであれば、旅やバトルに対する適応力や性能などを研究の一環としてモニターに選ばれたからである。その充実したレポートの内容はすばらしいもので、バトルがあった日やトレーニングを行った日は1日に平均でA4用紙を裏表使って一枚くらいの反省文や、自慢話、考察などがびっしりと書かれている。 ハルカのほかにもはりきりの特性を持ったニドラン♀のオイチや再生力もちのモンジャラであるワカメを貰うなど、その厚待遇を見るにトレーナーとしてはもちろんのこと研究者の卵としても有望視されていたのかもしれない。 そんなトレーナーの下にわたった、ハルカの特性は悪戯心。体調が悪いふりをしたりなんてのは日常茶飯事。ボールから出てきた瞬間に、飼い主のほうへ振り返って手を振ってアピールしたりなど、分かりやすい隙を見せておいて、後ろを向いているうちにやってしまおうとしのび足で近づいてきた相手を波紋で見切って返り討ちにしたり。 ボールから出た瞬間に寝た振りをしていたりと、手を変え品を変え、あらゆる方法で隙を作ろうとしてくる。試合中に放尿することもあるし、タンポポを摘んでフーーッと種を飛ばしたりなど、試合に臨む者達の気概を萎えさせ、ペースを崩して勝ちに持ってゆくことが、彼女の強みであった。 そんなハルカにも進化の時が訪れる。時は進み、彼女に必要な技の教育が済み首にかけていたかわらずの石を外して進化するのを待つ時期に入っていた。 このリオルは特異な個体だから、もしかしたら進化したときに化け物に進化するかもしれないし、進化できずに死んでしまうかもしれないし……と、研究者たちには散々脅されたが、いよいよハルカがなついてきたと分かるころ、ホドモエで行われるシングルバトルの大会というタイミングで、ハルカは見た目の上ではなんら問題のない、見事なルカリオに進化したものだ。 精悍な顔つき、白く輝く手の甲や胸のとげ。ピンと張った尻尾に、鈍く光るほど艶やかな体毛。美しく、機能性も高く、鋭い。非の打ち所もないルカリオであった。 当然、彼女はそのまま実践で使っていこうと思ったのだが、ここで大きな問題が発生してしまった。答えはポケモン図鑑にあった……『相手の波導をキャッチすることで、考えや動きを読み取ることが出来る』と。波紋ポケモンだったころは、自我も幼稚だったり、感知能力も殺気や怒り、敵意に食欲といった、自分の身の安全に直結する感情くらいしかキャッチできず、またその精度も悪かったのだが、進化することでその能力は高まり、ほとんどの感情を読み取れるようになるにいたる。 それは当然のように、相手の隙を突く悪戯心の強化に役立つだろうと思っていたのだが……その考えが甘かったようである。 敵を倒した直後に進化したハルカは、まだ戦闘中だというのにそっぽを向いて、いつものようにあくびなんてする始末。犬型のポケモンと言っても、ムーランドやウインディと違って立派な腕があるにもかかわらず、わざわざ足で頬を書いたりするなど、対戦相手を舐めているとしか思えない。 しかし、その体の中では、呼吸を整え、丹田に力を込め、体は攻撃のために急速に作り上げられている。舐められているのかと感じた相手のブーバーンは、おもむろに大文字を放つ。力んで放ったそれは、威力がある分隙も大きく、放つ前も後も、予備動作が多いお粗末なもの。力をぐっと溜め込んでいたハルカに、そんなものが通じるはずもなく、ハルカはしゃがんだ体勢から神速のステップ。 大の字の横棒と斜めの払い棒の間を紙一重で抜けて、焦げた耳の毛から上がる煙が斜めではなく地面と水平な線に薄く延びるほど。まさに神速のクラウチングスタートだ。 そのままハルカはブーバーンの手前で身を低くして、下から上に踏み込むことで、地面との摩擦を強くする。足の指から、足首、膝、又、腰、胴、肩、肘、手首とすべての体の部位をフル稼働させての強烈な裏拳。肉を引っかいてえぐり、その奥にある肋骨を砕かんばかりの神速の一撃。 炎の体のブーバーンの体に触れて、熱いと感じる前に手を引くことで、その衝撃は拳へと返されることなく、余すところなくブーバーンの中に叩き込まれる。剣の舞からの神速の一撃を見舞われたブーバーンは、その一撃で胸を押さえて苦しみだす。 そこを、ハルカの渾身のボーンラッシュがまず断頭台のごとく一撃。腰をいれ、上から下に振り下ろされた無慈悲な一撃は頭を叩き伏せ、波導で作った骨を握る手が痺れるほどの一撃の後、横なぎにもう一度叩き込む。 計三回の攻撃で、すでに勝負はついていた。ブーバーンは立つこともできずにうずくまり、肩口への袈裟懸けの一撃を寸止めしたハルカの行動にも身動き一つ出来なかった。その時、歓声は沸きあがるのだが…… <なにアレ……なんかせこい> <あいつ、なんか卑怯だな……盛り上がっているけれど私はちょっと> <なんだかしらけるなぁ> とまぁ、こんな感じでハルカの評価は内心喜ばしいものではない。会場の歓声も、大半は社交辞令のようなものである。 その後も対戦は続く。ハルカはわざと転んだり、そっぽを向きながら驚いてみたりして相手の注意をそらしてから金属音を発してみたり。そんなプレイスタイルは、マナーがいい観客に恵まれたおかげでブーイングを起こすことはないものの、やはり内心は快く思われていないようで……その対戦は圧倒的な勝利の元に終わったものの、トーナメントの次の試合では、いつものキレがなくなってしまった。 「いけ、ハルカ!!」 次の試合では、トレーナーの声も勇ましく先発でハルカが繰り出される。相手はオノノクス……一撃受ければ負けかねないという意味では強敵だが、そんなときこそこいつの悪戯心で何とか隙を作って先制してやればいいと、トレーナーは考える。その悪戯心を成功させるためにも、基本的にトレーナーは何も指示をしないのがお決まりとなっていた。 しかし、今回はハルカの様子がおかしい。ハルカは周囲をそわそわとうかがうと、剣の舞や金属音なども出来ず、吼えて相手をひるませることもなく、いわば死んだ拳で相手への攻撃を敢行することに。当たったことには当たったのだが、破れかぶれに放った飛び膝蹴りの威力は乏しく、当たったところで相手はこらえられる程度の痛み。 反撃のかわら割りでガードを崩されると、そのまま為すすべなくラッシュを受け、最後に地震を受けて、ほとんど何も出来ないままに戦闘不能となってしまった。 「ハルカ……一体どうしたんだよ……」 その体たらくに、トレーナーはショックを受け、呆然としたままハルカをボールにしまう。後続たちの活躍でその試合は何とか勝ち残れたものの、突然の不調にはトレーナーも驚きが隠せなかった。 「どうしたんだ……ハルカ?」 幸い、このトーナメントは6on3((6体を見せ合いした中から3体を選んで対戦する形式))のシングルバトル。ハルカを出さなくとも、他の子で勝利をもぎ取ることも可能だが、ハルカが戦力にならないのは正直痛かった。 結局、そのトーナメントは準決勝で破れ、三位決定戦で何とか勝利をもぎ取ることが出来たものの、ハルカはいつになってもいつものような調子が出せず、困ったトレーナーは、彼女を譲り受けた研究機関にハルカを見てもらうことに。トレーナーが毎日記入していたレポートや、さまざまな検査を経て分かったのは…… 「この子の特性、正義の心になっているわね」 「はぁ……」 「だから、これまでどおりに、相手の心の隙をつくようなことは苦手になっているかもしれないわ」 女性研究者が言うには、ルカリオに進化したことで、彼女は他人の考えを読むことが出来るようになってしまった。しかし、そのおかげで今まで気付かなかったことに次々と気付いてしまったのだという。プレイスタイルをダイジェストで書かれたレポートを見る限りでも、研究者は酷い闘いだと思ったらしく、図らずもレポートを見ながら苦笑してしまったらしい。特に戦闘中に放尿したと言う記述にいたっては、あまりにはしたないから観客も萎えるだろうというのが研究者の言い分だった。 研究にかかりっきりでバトルなんてほとんど見ない研究員でもこんな言葉が出るのだ、勝てばよいと言うものではないのだろう。 トレーナーもそういったことに気付いてもいいものだが、勝てるからどうでもいいやと思っていた彼はかなり鈍感であった。観客のテンションの変化にも気付かず、当たり前のように卑怯な、せせこましい、そして下品な戦法を取っていたことを、悔い改めさせるよい結果となったことは言うまでもない。 そして、彼女が正義の心であることが分かってからは戦法の見直しが強いられることとなった。まず、ルカリオを相手にして悪タイプの攻撃を放ってくるような馬鹿はそういない。だからと言って、例えばエスパーやゴーストを場に出しておいて、攻撃されたところを交代して変わりに受け止めさせるだなんて神業はチャンピオンでも難しいだろう。 そうなると、必然的に彼女の特性を生かした活躍は、ダブルバトルやトリプルバトルのみになってくる。シングルを主体として戦ってきた自分としては未知の領域だが、やってみる価値はあると思い、トレーナーも一ヵ月後にホドモエで開かれるダブルバトルトーナメントに向けて、修行を始めるのであった。 「じゃあ、まずは悪タイプの攻撃だけれども……どう見てもお前が適任だよな、ミヤビ」 まずは、攻撃力を底上げする方法から探ることにしてみた。それを考えると、やはり手数が多く悪タイプである彼、ミヤビが適任となるわけで。トレーナーは自身の手持ちから4匹選び、模擬戦をすることにした。 「……よし、じゃあまずは、みんな適当に攻撃をしてみてくれ。近い相手を攻撃するか、それとも味方の援護に徹するか。そういうのもまずはやってみないと勝手が分からないだろうしさ。流石に指示を出すのは難しいから、各々自由に戦ってみて欲しい。それでもって、ミヤビは隙があったらハルカに悪タイプの技で攻撃をして欲しいんだ。 そういうわけで、メンバーは……まず、ミヤビとハルカが一つ目のチームで、もう一つはジシャクとオイチがやってくれ」 まず、ダブルバトルの模擬戦において、最初にやることとなったのが、マニューラのミヤビとルカリオのハルカ。そしてジバコイルのジシャクとニドクインのオイチ。ミヤビとハルカはもちろん、ミヤビの攻撃によってハルカの攻撃力を底上げし、神速やバレットパンチなどの技で以ってして圧倒するという型である。対して、ジシャクとオイチの組み合わせは、放電やヘドロウェーブといったメインウェポンを、味方への誤射を恐れずに放つことが出来る組み合わせだ。 ワイドガードのような技でもなければ、ジシャクとオイチのコンビは強力だろう。 * 『戦えって言われても……』 ハルカは一人ぼやく。 最近は、みんなの考えが分かる。あんな戦い方でも、自分の仲間は頼りにしてくれることが分かったのは嬉しいが、同時に厳しい意見も持ち合わせている。例えばミヤビは、<あいつ強いんだけれど、見ていてイライラする戦い方だな……>と思っているし、オイチは<強くなかったらパーティから追い出しているところだわー>とか。ジシャクにいたっては<あー……砂鉄食べたい>である。 散々なみんなの評価を知ってしまって以降は、戦いに対しても少々やる気が落ちており、今回の大会の件でハルカのモチベーションは完全に地の底まで叩き落されてしまった。当然、このダブルバトルでもやる気なんて無かった。 『おう、ハルカ。お前足引っ張るんじゃねーぞ?』 『分かってるよ……』 ミヤビも、ハルカのことはあまりよく思っていないようである。顔だけは可愛いと評価してくれているのは嬉しいが、それだけじゃ足りない。ルカリオに成長したことでみなの評価を知ったいまや、戦いっぷりも惨憺たる物、それなのに卑怯というイメージの評価はリオルのときから変わっておらず、それが憂鬱だった。 「よーし、みんな。準備はいいかー!?」 準備をしているうちにじれったくなったのかトレーナーが全員を急き立てる。4匹は全員、大丈夫だよと声を上げた。バトルの始まりである。 『さっさと終わらせるぞ』 そう言って、ジシャクはハルカを引き寄せる。磁力で以ってして斜め上方向に引き寄せられたハルカは、踏ん張ることも出来ずに宙に浮く。くっつけられる瞬間、せめてもの抵抗にと腕の棘を勢いよく当てたが、バレットパンチは鋼タイプの攻撃。ジバコイル相手にはたいしたダメージにはならない。 鋼の詰まった頭の房と、棘の付いた手の甲がジシャクに密着する。 『そのまま押さえてなさい』 次に動いたのは、オイチである。闘争心の特性でもないのにハルカに対抗心むき出しのこの女、ハルカの足を焼いてやろうと火炎放射を放つ。 『させるかぁ!!』 凍てつく冷気を伴ったミヤビの爪がオイチを切り裂きにかかる。オイチは振り向いて火炎放射を当てようとするが、ミヤビの速さはその反応を凌駕した。ミヤビの爪は炎すら切り裂きながら、すれ違いざまに浅い傷と凍傷を残して、肌が熱を帯びる前に離脱する。体重を込めた重い斬撃を食らわせることが出来なかったのは残念だが、攻撃の中断と小ダメージを無傷でやってのけたなら上出来だろう。 ハルカは腕の力をフルに稼動して、ぶら下がった上体を起こして足を焼かれるのを防ぐ。そうして火炎放射をやり過ごすと、磁力で掴まれたまま電流を流され、為すすべなく体をねじらせてうめいている。ミヤビが息を吸い込んだ。 &size(30){『ふざけんじゃねぇ!! この磁石野郎! てめぇは砂鉄じゃなくてコラッタの糞でも集めてやがれ!!』}; そこへ届く、ミヤビの怒号。あまりの大声と汚い言葉に、ついつい集中力が途切れ意識が行ってしまう。汚い言葉の羅列に思考が侵され、何度も反芻させられる。耳も限界を超えた音量に、しばらくはキーンと耳鳴りを流すばかり。オイチやハルカも巻き込んだバークアウトだが、ハルカは攻撃を中心に。ジシャクとオイチは特攻を中心に鍛えたおかげもあり、その集中力をそぐ怒号は効果覿面だ。効果はいまひとつだとか、そんなのは関係がなかった。 集中力が切れ、磁力が弱まったその一瞬の隙を突き、ハルカは拳に炎を灯す。ちりちりと焼け付く痛みにジシャクの肌が悲鳴を上げたころ。ハルカの尻にミヤビの蹴りが叩き込まれ、その衝撃でハルカはジシャクから離れることが出来た。 『ジシャクの磁力には気をつけろ! お前鋼タイプに進化したんだからな!!』 そう言ってミヤビはハルカを叱咤激励。傍から見れば格好いい見せ場だというのに、その裏では<案外いいケツしているじゃねーか。もっと蹴っちゃおうかな……>なんて下心が見え隠れしていた。 最初は、ハルカも蹴りなんてそれはやめてくれとも思った。痛いし、恥ずかしい。しかし、いい尻だと言われるならば見ていてイライラする戦いと思われるよりはずっといい。 『分かってるよ……今ちょっとやる気出てきた』 そう思うと、自然とやる気が出てきた。 『は、勇み足になるなよ!?』 そしてもう一回蹴り飛ばされる。蹴られた場所がじんわりと熱を持って、暖かくなる。その温かみがエネルギーとなるように、なんだかやる気はうなぎのぼりだ。先ほどのバークアウトのときも感じたが、ミヤビの攻撃を喰らうたびに体がなんだか熱くなってゆく。そんな不思議な感覚だ。 『分かってるって……ありがと、ミヤビ』 そんなお礼を言っている間にも、ミヤビは<いいケツだな>とハルカを蹴り飛ばした際の感想を想う。時間が立てばそれほど痛くも無いから、そんなにいい尻ならばもっといくらでも蹴ってくれればいいのにと。仲間からも冷ややかな感情をもたれていたハルカにとっては心も憔悴していたが、今また自分を必要としてくれる仲間がいる。それが、今までの戦いとはまったく別の方向であってもうれしかった。 『あーあ……ミヤビもハルカも味方ならいいけれど、敵ってのはやりにくいなー……』 『いいじゃないのー。終わったら砂鉄でも喰おうぜ?』 『あんただけ食べてなさい……』 間の抜けたジシャクの応答に、あきれながらオイチがため息を吐く。 『おら、さっさと行け!!』 大会で無様な姿をさらしたときのように、そわそわとして身が入らないのでは困ると、ミヤビは景気づけにハルカの尻をもう一度蹴り飛ばす。もちろん、この蹴りには悪タイプの力が込められており、そのおかげで正義の心は刺激されるばかりである。 『は、はい!!』 <やべ、この感触癖になりそう> ミヤビの考えだ。 <ふふ、さっきから何回も味方に蹴られるとか、いい気味よ> オイチの考えだ。 <砂鉄食べたい……> これはジシャクの考え。 <あー……改めて見ると、なんかかわいそうだな……蹴られてばっかりで> 最尾にトレーナーの考え。こうしてみんなの考えが流れ込んでくる。ミヤビの思考を感じ取ると、『癖になる感触』だなんて嬉しいことこの上ない。 いまいち調子もやる気も沸かなかったはるかだが、その乱暴な渇によって本来の調子を得るにいたる。まずは、弱点をタイプ一致でつくことのできるジシャクへの飛び膝蹴り。体ごと掴みかかり、強烈な膝による一撃。格闘タイプの力が上乗せされ、その威力たるや絶大だ。 頑丈の特性で何とか踏みとどまったはいいが、膝の一撃を耐え切ったところに、容赦なく突き刺さる氷の礫。 『へへ、一丁上がり』 『この、腐れ鉄雌犬め!!』 元からハルカのことを快く思っていないオイチは、汚らしい言葉と一緒に大地の力でハルカを攻撃する。密着するほど近くにいたジシャクと一緒に、ハルカは地面から突き上げられて吹き飛ぶ。寸前で飛び退こうとしたためクリーンヒットは避けられ何とか堪え切れたが、すぐには反撃に移れそうにもない。 だがしかし、ハルカがダメでもまったくの無傷なミヤビは別だ。その鋭い爪に冷気を纏わせたミヤビは、オイチの胸にそれを突き入れる。痛みでオイチの顔がゆがみ、その間に体勢を立て直したハルカが、ボーンラッシュを叩きつける。後頭部を不意打ちで一撃。それだけで勝負はついていた。 『ほう……なんだ、ハルカ。お前変な演技に頼らなくっても強いじゃねーか』 ばったりと倒れてしまったオイチをよそに、ミヤビは悪乗りしてハルカの尻に軽く膝蹴りを加え、背後から掛け値なしにハルカを褒める。 『あ……そういえば、普通に戦ってもこの体なら結構強いね……』 自分が止めを刺したり、大ダメージを与えた二人を見て、ハルカはミヤビの考えを反芻する。 『あ、あの……ミヤビ』 いい尻だと言われたのは、不本意ながら嬉しかった。もっとやってもいいよと、声をかけようと思ったのだが、その言葉が出る前にトレーナーの言葉で中断されてしまう。 「おい……大丈夫か……ジシャク?」 オイチのほうは自分で立ち上がる程度には大丈夫だが、ハルカに対する大地の力に巻き込まれたジシャクは結構まいっているのだろう、目覚める様子が無い。そりゃ、瀕死の状態で4倍ダメージの大地の力を受ければそうもなろう。 ハルカは不調で戦闘に参加できなかった時期に、せめて仲間に報いることが出来ればと覚えた癒しの波導をジシャクにかけて応急処置。ポケモンセンターにたどり着くまで、そればっかりに意識が集中してしまったものだから、結局ミヤビには何も言い出せないままであった。 「ジシャクは明日にも復帰できるってさ……とくに体も問題ないみたい」 ダンイー((男性医師のこと、ジョーイさんばかりじゃないのです))さんの説明を聞いて、ほっと胸をなでおろしながらトレーナーは自身のポケモン達に伝える。思わず攻撃してしまったオイチはもちろんのこと、他の仲間たちもほっと胸をなでおろした。ジシャクは体が磁性を帯びており、そのおかげでいろんな検査器具が使用不可能なため、検査には時間はかかって今はもう夜。 ジシャクの安否が気が気でなかった時は全員が話をする気になれなかったが、安心した手持ちのみんなもトレーナーも、その日はポケモンセンターに取った部屋で、ゆっくり休むこととなった。 そしてその深夜、ハルカは勝手にモンスターボールから這い出て、ミヤビもモンスターボールをゆすって起こし、一緒にベランダまで誘い出す。もうすぐハロウィンを迎える秋空は、夜風も少し肌寒いが、ハルカには豊かになった体毛がその寒さから身を守り、ミヤビは氷タイプだからかあまり寒さは気にしていないようである。 『どうしたよ、ハルカ』 『いやー……あのね、ミヤビ。昼間の戦いで、私のこと何度も蹴ってきたじゃない?』 『あー……痛かった? でも、悪タイプの攻撃を当ててみろっていうご主人の命令どおりだから、文句はご主人様に』 悪びれることなくミヤビは言って、ベランダの手すりに座りながら(危ない)いやらしく笑う。タイプ相性をかんがみれば、ハルカに勝てる道理は無いと言うのに、ミヤビはハルカに対して強気のけんか腰。今日の一件でハルカが自信をつけて、彼が正攻法でぼこぼこにされる可能性もなくはないと言うのに。 『そのことなんだけれど、ミヤビは私の尻を蹴ったときに、いい尻しているじゃんとか思ってたでしょ?』 沈黙が流れる。 『あ、あぁ……他人の考えが読めるようになったって言っていたけれど、本当だったんだなぁ……いや、いい尻だったよ』 『うん、分かるの。でさ、私褒めてくれたのが嬉しかったし……悪タイプの攻撃ならあんまり痛くないから、アレくらいならいつでも大丈夫だよ……』 『大丈夫……ねぇ』 『うん、蹴られる度に力が沸いてきたから。だから、戦闘中は特に遠慮なくやっちゃって』 てっきり怒るか恥ずかしがるかと思っていて、それをからかってやろうとしたミヤビには寝耳に水の提案だ。 『なるほど……そいつはありがたい提案だが……』 ミヤビが手すりから降りて、ベランダに戻る。 『それは誘惑ととってもいいのかい?』 けれど、やっぱりそれだけじゃ満たされやしない。出来ることなら戦闘中だけなんていわずに、今このときでもいいんじゃないだろうか。そう思いながら、胸のとげをよけつつミヤビが抱きつくものだから、ハルカも困ることしか出来ない。 『え、え、えーと……』 目が上下左右に泳ぐ。すでに相手のほうがやる気満々に出来上がっているのを感じて、それに身を任せていいものなのかと戸惑う。しかして、蹴られたときに体が熱くなり、力がわきあがるようなあの感覚。あの感覚を忘れられず、また感じたいという誘惑には抗えない。 『じゃあ、お願いしちゃおうかなー……』 『ほう、言っちゃったなぁ』 ミヤビがハルカのマズルを掴み、自分のほうへ強引に口を寄せて、ざらついた舌で彼女の鼻を舐める。 『そんなに好きなら、好きなだけやっちゃうよ?』 そのまま、投げ捨てるようにマズルを下ろして、ミヤビはハルカを四つん這いにさせる。 『や、うん……やり過ぎない程度にお願いね』 尻尾を突き上げ、肛門まで丸見えの状態でハルカは四つん這いに。ぷっくりと肉の盛り上がった健康的な尻があらわになり、ミヤビは思わずベランダの手すりにつかまることで、バランスを崩したりなんて醜態をさらさぬよう予防してハルカの尻を蹴り飛ばす。 お仕置きと呼ばれるこの技……本来は肉体や精神を強化する技や特性によって発生する身体的、精神的な負荷を増大させてダメージを与えるための技だ。つまりまったく強化されていない状態でこの技をやっても威力は乏しいが、ハルカとのタイプ相性を見れば、正義の心の力によって身体能力が強化されても威力はすずめの涙と言ったところだろう。 蹴り飛ばし、かかとで尻をぐりぐりと嬲る。そんな事をするたびに、肛門に力が入ったり尻尾がピクンと反応したりと、ハルカの反応は面白い。ハルカはそうされることでからだの奥底から力がみなぎるのを感じるし、尻の肉の柔らかさや感触を思う存分楽しむミヤビの考えをひしひしと感じる。 心と体の快感が合わさって今の気分なら一晩中でも走り続けられそうな高揚感だ。そんな気持ちでいるもんだから、自分でも気付かないうちに息も荒くなり、雄を誘うような甘い声が漏れ出してしまう。 『おい、お前感じているのか?』 油断していると、そんな事をミヤビに言われ、ハルカは体毛が逆立つくらいに恥ずかしい気分を味わう。 『そ、そんな事ないから』 『ヘー……でもいい声出してたぜ? 嘘はいけないなぁ』 そう言って、ミヤビは膝を床に付け、ハルカの後ろから尻を引っぱたく。足で触るだけでは満足できなくなったらしい。性欲のほうも完全にたぎっており、反撃されないならばこのままなし崩し的に行為に及んでしまおうかと思う始末。 『や、あの……』 足ではなく手で触られるようになって、流石に警戒しないわけにも行かなくなったハルカだが、もう体からみなぎってくる力と熱は発散する場を見失っている。どこかで発散しないと体が火照って眠れそうにも無いのだが。それに、この火照りを冷ましてくれる氷タイプの冷たい体が気持ちいい。 ミヤビの手つきはいやらしく、彼の悪い手癖が存分に発揮されている。揉みしだいたり、くすぐったり、肉を掴んで引っ張ったりと、手をかえ場所を変えて単調な刺激は与えない。時折デコピンのように指で爪弾いたりと、痛みのアクセントも忘れない。 『もっといろんなお仕置きをされたいんじゃない?』 何もされないと言うことで、それを同意と受け取ってしまったミヤビは、四つん這いのハルカの体に胸を寄せ、マウンティングに近い体勢に。 『お、お願い……』 体に密着されて、ハルカは緊張からつばを飲み込む。このつばを飲み終わると、口の中はもうカラカラだ。 まだミヤビは股間を押し付けるようなことはしていないが、完全にそのための姿勢へ持ち込もうとしていることは、ミヤビの考えを読み取る力が無くとも明らかだ。 『良いの?』 ハルカの左に膝立ちしてから、そのまま自身の胸をハルカの背中に乗せる。 『うん……』 頷いたハルカの胸に鋭い爪のついた左手の指が胸を掻く。傷が付くか付かないかのぎりぎりの力加減で、痛いけれど、今度はそこからも暖かい力を感じる。右手は尻に添えられて、尻尾の付け根を握ったり太ももに爪を立てて跡をつけたり、そのまま股間まで伸ばしたり。 痛みを与えられるたびに熱がうずき、雌としての本能がうずきだす。体もそのための準備を始めてしまい、粘膜を保護するための愛液と、その匂いまで夜風に放流して。悪乗りだったミヤビも、完全にそれ以上の段階へのスイッチが入ってしまった。 『だめだ、もう限界……』 そうつぶやくなり、乱暴な手つきでミヤビがハルカの体をひっくり返す。ごろんと仰向けにひっくり返されたハルカは首の前で指を組んで、祈るような姿勢に。期待と恐怖の入り混じる視線でミヤビを見上げる。彼の体毛が闇に紛れる真夜中でも、彼の雄の象徴はずいぶんとはっきりと見えた。 『やる気満々ね』 『怖いか?』 『ちょっと……』 ハルカ自身ミヤビを信用しているのもあったし、ミヤビはハルカに対して極端に弱いタイプ相性であることも理解しているだろうから、恐怖はあっても好奇心や期待を押しのけるほどではなく。 ミヤビもこのまま好き勝手めちゃくちゃにしてやりたいとは思いつつも、トレーナーの都合や反撃を受けたときの恐怖から、節度は守ろうと自制心を利かせている。だからこそ、見詰め合う。言葉こそ交わさないが、やりたいことなんて考えを読まれているんだから当然知っているのだろうし、反論しないと言うことは了承のサインなのだとミヤビは勝手に決め付けて。 『貰うぜ』 マズルを掴みとって、強引にキス。上唇に力を込めて強制的に開口させ、マズルの中に進入させなかった舌をねじ込んでゆく。綺麗なピンク色の舌が、ざらついた舌と触れ合って、熱を持った唾液と冷たい唾液が交差する。ミヤビは噛み付くようにハルカの舌を求め、その攻撃にさらされたハルカは削られる痛みや引っ張られる痛みで舌のところどころが痛い。 けれど、そんなアクションの一つ一つにも、ご丁寧にミヤビは悪タイプの力を込めることを忘れていない。これはお仕置き、お仕置きなんだと心に言い聞かせ、PPなんてもう尽きようと気にしないつもりだ。 『いい感じじゃないか』 一方的に攻め立てた口付けを終えると、唾液でしとどになった口周りを舌で舐め取り、四つん這いの姿勢のままミヤビはハルカの股の間に移動する。 『さて、いまさら嫌とは言わせねーぞ?』 ミヤビはハルカの胸の棘を弄る。彼女の体は小さく震えていた。 『で、でも……これは子供が出来ちゃうし……どうしよ……』 目を泳がせながらハルカが最後の抵抗を試みる。ミヤビはここまできといてそんなのふざけんなとも思ったが、トレーナーの意向もあるし仕方ないと考える。こういう時は野性だったら便利なのだが……と、不毛な憧れも浮かんでいた。 『じゃあ、口でしろよ』 ただ、本番は我慢できても、疼きを抑えるまでただで終わる気は無かった。ミヤビは立ち上がり、仁王立ちのまま逸物を見せ付ける。 『あ、うん……』 ハルカも、もう後に引ける状態でないことは分かっているのだろう。逆らおうともすることなく、膝立ちになってミヤビの一物を咥える。風呂嫌いのミヤビのそれは、長い間洗われておらず、強い刺激臭が鼻をついた。けれど、雌の本能に目覚めたハルカにとっては、そんな匂いはむしろ媚薬のようなもの。 根元を優しく掴んで、上下にしごきながら舌と上あごで挟み込むように、小さな棘の付いた逸物を咥える。当然、鋭い牙で相手のものをえぐることがないよう慎重に。肉棒にこびりついていた垢をそぎ落とすように舐めていると、脈打つ逸物は少しずつ熱を帯びていく。 『もっと深く咥えろ』 慎重にせざるを得ない口での刺激は、今のままでは到底足りないらしくミヤビがせかす。もっと深くと言われても、ハルカの中にはえずくほど深く咥え込む発想は無く、注意深く観察しないと気付かないほどの変化しかない。じれったくなったミヤビがハルカの顔を掴んで強引に根元までねじ込む。感じやすい根元近くまで刺激を得ることで、必然的に快感は昂ぶり、燃え上がる。 溶けてしまいそうな熱を帯びて、ミヤビは走り出した蒸気機関の赴くままに、自身の腰とハルカの頭を振った。のどの奥をつつかれたハルカは吐き気を催すくらいに体に無茶がかかっているが、そんな刺激でも、頭が真っ白になるくらいの力がわきあがってしまう自分の特性が悔しい。 『んあっ……』 野生でなくとも、獣の血を色濃く受け継いでいる以上、交尾は迅速に済ませたほうがいいという鉄則は遺伝子に刻まれている。永遠にも感じられる十数秒を終えて、ミヤビは真っ白な欲求をハルカの中に吐き出した。ミヤビが滾っていたものを抜くと、ハルカはあまり物音を立てないようにしながら咳き込み、飲み込みきれなかった精液を手の平に出す。 息切れや咳が収まってくると、ハルカは少々ためらいながらもそれを舐め取り、飲み下した。 『よう、満足か?』 『まだ、体が火照って……満足していないけれど』 『そっかー、俺は満足したけれど、どうしよっかなー』 全身を攻められたおかげで、ハルカの体はどこもかしこも正義パワーに満ち溢れている。その火照りを冷ますには一度くらいは雄に膣を貫いてもらったほうがいいかもしれないが、あいにくミヤビはもう満足している。放置プレイをするのもよいかと思うミヤビだが、ハルカが求めるならば応じてやろうとも考えていた。 そんなミヤビの思惑も露知らず、ハルカはミヤビの萎えた股間に頭を摺り寄せ、甘える。 『どうした、まだやる気か?』 『ううん……』 ハルカは首を振って否定する。 『でも、もう少しこうしていさせて……ミヤビの体、冷たくて気持ちいい』 『お、おう……』 すがりつくハルカの求めに応じるように、ミヤビはベランダに座り込む。そのまま上に乗っかられて、棘が刺さらないようにのしかかられ、ハルカはウイの実を嗅がされたエネコ((マタタビを嗅いだような状態になります))のように、体をこすり付けて甘えるのであった。 自分だけ満足しておいて、ハルカはまったく身体的に満足していない。それに関してミヤビは責任感にも近い罪悪感はあったのだが、ハルカはその体の疼きや火照り、焦燥感まで含めて楽しんでいるように見える。放置プレイまでたしなむとは、たいした女だとミヤビは思った。 * その後、落ち着いた二人は、主人に黙ってシャワーを浴びて、何事も無かったように朝目覚める。その日から、ハルカはミヤビの方を抱いて尻尾を振って甘えるようになっていた。 それからである。抱きついているハルカがいい加減うっとうしくなって、ミヤビが耳を引っ張ったり、房を引っ張ったり、引き剥がして蹴りを加えたり。そんな異様な光景を幾度も繰り返しているうちに、ある程度トレーナーもその光景に慣れてしまったが、徐々にミヤビの行動はエスカレート。 公衆の面前でもハルカを四つんばいにさせて、その尻を何度も蹴り飛ばしたり、パシパシとひっぱたいたり。そしてそれをハルカが望むものだから性質が悪い。ミヤビがどこかで拾ってきたぼろぼろの首輪をハルカが自らリードにつないだ時は、トレーナーも我が目を疑ったものだ。 ジョウトの風習にならって連れ歩きしてきたが、それも限界かと思ってボールにしまってみても、ポケモンが出入り禁止の場所以外では、当たり前のようにボールから強引に出てきてしまう。困極まって、ポケモンインタプレーターのNさんに相談したときの答えは、きっと一生忘れることはない。 ホドモエシティの発展に寄与したヤーコンが別の地方での事業に専念すると言うことで((ルカリオの育て屋奮闘記へ続く))、ここホドモエでは送別会代わりにシングルからローテーションまで幅広いルールでの大会が開かれる。 その中のダブル部門の大会を前にして、トレーナーのヒノキは手持ちを見る。 今となっては、なぜかジバコイルのジシャクや、モジャンボのワカメまでハルカ苛めに参加しており(ハルカはまったく辛そうじゃない)、まるで丘の上で茨の冠をかぶって十字架に張り付けられた救世主のごとき体勢で磁力によって吊り上げられたり、触手で縛られたりと大忙しだ。その様子を呆れながら見ていると、ヒノキを誘うような目つきがハルカから流れる。そっちの世界に行ってしまったら戻れなくなる気がして、ヒノキは夜の遊びに参加してみたいとは思いつつも参加できないのだ。 「……これだけ仲がいいパーティなら、今回もいい成績を残せそうだ……うん」 彼は現実逃避をして、ミヤビに苛められてうっとりしているハルカから目をそらす。Nですら興味を持った数式だけれど、自分も絶対それは解いてはいけない。きっとそうなのだと、ヒノキは思い込んだ。 ---- **後書き [#n3e46b6c] さて、今回はルカリオの夢特性について、色々掘り下げてみました。実は大会直前までネタが無かったために、結構急ごしらえで作ってしまった作品でしたが、自分なりの正義の心の解釈が一つ出来て、自分としては非常に満足いったお話です。 タイトルが示すとおり、このお話はルカリオが主人公という事は確定。パートナーをどうするか悩んだところ、最速袋叩き使いのマニューラもしくは、同じく悪戯心仲間のエルフーンが候補に挙がりました。 最速マニューラが無振り無補正個体値31の三獣士たちにスカーフを持たせた素早さより1速いということでテラキオンのパートナーにしており、そのおかげで愛着もわいていたために、結果的にマニューラを起用。袋叩きは絵面がどう見てもルール違反なのでそれを使うことせずにお仕置きの技と言うことにしましたが、渇を入れたり激励を飛ばしたりと、それが彼なりの不器用な愛情表現のようで、よく嵌る役割だったと思います。 設定上はとても仲間想いの子で、だから仲間を守るための補助技であるリフレクターとバークアウトを持っているという感じなのですが……見せ場が少なくって、覚えている技も消化不良なのが残念なところ。 ちなみに、私がゲームで実際に使っている子の技構成は、守る、リフレクター、バークアウト、袋叩きです。高い攻撃力種族値が無駄になるのが悔しい技構成ですが、結構使えるんですよね、これで。 この型でルカリオを使うなら、神速や瓦割りは確実に入れたいところですね。 余談ですが、このお話はルカリオの育て屋奮闘記と世界観を共用しております。ヤーコンさんの後釜が、幸羽オリザさんなのです ***投票感想への返信 [#fcafda49] >最高すぎて何度も読み返しました。 (2012/09/17(月) 00:39) 投票ありがとうございます。ただし、その数式は解いちゃいけません。 -------------------------------------------------------------------------------- >なかなか見ないマゾ牝に一票 (2012/09/17(月) 16:41) 悪戯心の特性の間にきちんと教育したり、仲間との仲を取り持たないと、こういう性格になる可能性があるので注意です。誰だ! むしろそれが良いとか言う変態は!? -------------------------------------------------------------------------------- >そんなにいい尻なのか…(^ω^) (2012/09/21(金) 21:53) そりゃもう、安産体型の良い尻ですとも! #pcomment(,5,below); IP:125.198.70.102 TIME:"2013-11-22 (金) 17:28:51" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E6%82%AA%E6%88%AF%E5%BF%83%E2%86%92%E6%AD%A3%E7%BE%A9%E3%81%AE%E5%BF%83" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0)"