ポケモン小説wiki
悪戯の理由 の変更点


こっそりと、そしてちびちびと更新していく予定。初投稿。
作者名はまだない。ネーミングセンスがないとも言える。

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「……」
「……」
 何故こんなことになっているのか、俺には理解できない。目が覚めたと思ったら両腕はベッドの端に固定されていて思うように動かない。して、足は固定されてはおらず自由に動かせる。だけど、腕が拘束されていては起き上がることはおろか、立ち上がることなんてもってのほか。だから要するに俺は動けない。自分のベッドで拘束されてるとか凄い馬鹿な話だよな。言っておくが俺にこんなマゾヒストのような嗜好はないぞ。どちらかといえばサディストだからな…ってそんなことどうでもいいか。とりあえずこの状況を何とかしない限り、俺にいつもの平穏な日常はやってきそうにない。
 お気づきの方もいると思うが、俺は今すごーく冷静である。何でだかまでは分からないと思うので説明しておこう。それは目の前にいるこいつが今回の主犯であるからだ。赤い毛に所々黒が見え隠れするしなやかな髪に+髪留め。そして首周りに体色よりさらに深みを増した黒の胸毛を持っていて、尚且つ体はスラリと髪の毛よりもしなやかで、動きやすそうな体つきのポケモン。そいつは俺の顔をじっと見つめたままニヤリと八重歯を見せる。恐ろしく冷徹な目つきで。少しその顔に恐れを抱いたものの、俺はそれからは何もしてこない&ruby(・・){彼女};としばらく見つめ合ったままだった。時刻は窓からの月明かりで何となく分かった。深夜であることは間違いない。恐らくは俺が寝たのを確認してから行動に移ったのだろう。手際の良さだけは誉めてやるとしよう。ところで何故彼女は何も言わない。ただただ俺を見下した様子で笑っているだけだ。そんな何も進展の見られないこの状態に痺れを切らした俺から彼女に話しかけてみることにした。
「なぁ、これは一体どういうことなんだ? 冗談にしては度が過ぎるんじゃないのか?」
「……フフッ」
「何がおかしいんだよ。腕が痛くてしょうがないんだが、外しては…くれないんだろうな?」
「当たり」
 子供のような無邪気な調子でそう淡々と返してくる彼女。それに多少の苛立ちを覚えながらも俺は会話として成立しているかも分からん言葉のキャッチボールを続けてみることにする。間違いなくボールは場外にまで投げられてしまいそうな勢いだが。
「お前はなんでこんなことをする? 俺に恨みでもあるのか?」
「う~ん…。あるといえば嘘になるかもしれないし、逆にならないかもしれない。」
「う~ん…。あるといえば嘘になるかもしれないし、逆にならないかもしれない」
 何だそりゃ。まどろっこしい言い方なんかせずに単刀直入に言ってほしいもんだ。あるならある。ないならないとしっかり言ってほしい。余計頭が混乱してしまうから。
「ふざけていないでそろそろこれを外せよ。俺、明日だって用事あるんだからさ」
「またあの女の子のところにでも行くんでしょ?」
「…そうだったらどうするんだよ。どうせお前には関係のないことだろ?」
「あのね、これはあんたにとっていつもの悪戯としか思えないと思うけど、私にとっては本気の悪戯なんだよ」
 駄目だ、言っている意味が分からない。だれか彼女専用の翻訳機を持ってきてくれ。存在するのであればだが。
 そして引っかかるところがある。俺は彼女が言ったとおり、これはいつもの彼女の悪戯だと思っていた。だけどこれは本気の悪戯だと彼女は言った。悪戯に本気ってなんだ。聞いたことない。
「言っている意味が分からない。悪戯なら昼間にやってくれ」
「今、あんたの命を預かっているのは私なんだから、あまり怒らせないほうがいいと思うよ?」
「ぐっ…」
 言われてみればそうである。彼女はポケモンだ。その鋭い牙や爪を振りかざせば間違いなく俺は重傷か、最悪死んでしまう。それだけは勘弁だ。まだ大して長くも生きていないのに早死にするなんてまっぴらごめんだ。歯向かうことは許されず、俺は彼女に従い蹂躙されなければいけない。主従関係がまったくの逆になってしまっている。もとより彼女と俺にそんなものはないに等しいが。
「んじゃ、早速悪戯させてもらうからね…? 大人しくしてたほうが気持ちよくなれるかもよ?」
「なにを言ってるんだお前は……むぅっ!?」
 突如として俺は口を塞がれてしまった。彼女の口によって。意外にも柔らかい彼女の唇。
 そして…
「ッ!?」
 彼女の舌が侵入してきて、俺の舌と絡めようと口内で暴れまわる。押し出そうと舌を使えば彼女の舌と絡まり、意志とは関係なく息が荒くなってしまう。溶けていくような意識の中、俺はなんでこんなことになってしまったのか思い返してみた。確か今日も普通の人間として何ら変わりない生活を送っていたはずだ。違うといえば彼女に悪戯を執拗に受けていたということだけだろうか。もしかしたら、そのことに今となにか関係があるのかもしれない。彼女の&ruby(・・・・・){本気の悪戯};はそこから始まっていたのだとしたら…


 俺は一体彼女に何をしたというのだろうか…


「ねぇ、構ってよ」
「あ? 何をガキみたいなことを言ってるんだお前は」
「暇なの。どうせあんたも暇なんでしょ? だから私に構って」
 今日のお昼ごろの話だ。休日の平穏な時間帯に突然話し出したかと思ったらこの第一声ですよ。暇だと決め付けられ、無条件で構えと言い出した。我侭というか理不尽すぎるだろ。俺に何の得もない。と言うか、体力が減るから損しかない。家には共働きのため、いつものごとく両親はいない。休日にまで出勤とは度し難い。俺なら溶けてなくなってしまいそうだ。そして俺には兄や姉、弟や妹などというものは存在しない。と、言うことは言わずもがなこの家には今は俺と彼女しかいないということになる。一つ屋根の下に性別の違う人がいたら何かしらのイベントが起こりそうなものだが、生憎俺と彼女にそんなゲームみたいなイベントは発生しないし存在しない。あるとしたら彼女にされるがままの悪戯というものだけだ。虐められるのが好きな人には良いのかも知れないが、俺にはそんな被虐愛好家の嗜好はない。
 そして俺はさっきも彼女から酷い仕打ちを喰らったばかりだ。朝起きたら飯という俺の大事な養分が綺麗さっぱり皿の上からなくなっていた。満たされないからって人の物まで奪うなんて恐ろしいやつだ。それにまだある。近くのコンビニから食料を買って食い終わってからトイレへと向かった。そして用を足してからそこで気づいた。昨日変えたばかりのトイレットペーパーがなくなっていたのだ。こんなことする奴は彼女しかいない。仕方なく彼女を呼んで紙をもらってきてもらったが、渡してくれるのに20分も説得に時間がかかった。まだまだあるぞ。彼女が見せる幻で俺は1時間ほど終わりのない家の階段を歩かされた。階段なだけに怪談もいいところだ、まったく。他にも色々あるが、キリがないからやめておく。正直、何故俺は彼女をこの家に住まわせようと思ったのか、真剣に悩ませられた。いや、今もなお現在進行形で考えている最中だ。腕を組んで天井を見てからため息をひとつ漏らす。
「ため息なんてつかずに構わないとまたお前に悪戯するよ?」
「やめろ。今日だけで既にいくつもの悪戯を受けているのにまだやるつもりか」
「でも、それを怒ることもせずに受けてるわけでしょ? まさかあんたドM?」
 ふざけるな、と叫びたかったがここで怒っては彼女のペースに入れられて結局疲れる羽目になってしまう。それだけは回避したい。だからあえてここは無視を決め込むことにしよう。
「ドMなうえに幻にかかりやすいお馬鹿さん」
「……」
「おやおやぁ? 珍しく反応しないね? 馬鹿でも学習するんだ」
 今の語尾には絶対草が生えてそうだよ(ww←こんなの)だが、内心腸煮えくり返るほど怒りが溜まってますよ。主にお前という絶対的ストレス発生装置によってな。ここは怒りを抑えるしかないと、俺は大人の反応をしているのだ。自分で言うのも何だが、偉いぞ俺。このまま無視をしていれば彼女もそのうち諦めるだろう。
「…そういえばさ、あんたが大切にしてたプリン食べちゃった」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!?? あれをどれだけ俺が楽しみにしてたと思ってんだぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?」
「嘘だよ? やっぱりこんな簡単な挑発に乗るなんてまだまだだね。可愛い可愛い」
 は、はめられた。少し前まで大人を自負してた奴がこの有様か。今考えれば俺の台詞は完全に怒るフラグぽかった。そして彼女に読まれて完全に手玉に取られている。泣きたくなってきた。
「ふふ。じゃああんたは勝負に負けたわけだし、私に構ってもらおうか?」
「くそっ。しょうがない…」
 このときは彼女のペースにはまっていたうえに、負けたショックで頭が混乱していた。だから負けたことと構うことは何も関係ないと気づいたのは随分後のことである。そして先ほどからソファに座っていた俺の後ろにいた彼女は軽い身のこなしで結構な高さがあるソファを飛び越えて俺の隣に座って背中を向けた。てか普通に座ったほうが怪我する確立も低いし、早くないかと普通に思った。彼女も意外なところで馬鹿だからこういうことには気づかないのだろうか。
 そんなことを考えていると背中を向けた彼女が横顔を覗かせて俺に言った。


「それじゃあ散々焦らした罰も兼ねて最初に私に後ろから抱きつきなさい」


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随時更新

何かアドバイス等いただけると嬉しいです。

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