#include(第七回仮面小説大会情報窓・官能部門,notitle) *悪のハーメルン [#i349bd20] ※諸注意、この作品には&color(red,red){破瓜、レイプ、NTR、強姦};の表現があります。 苦手な人はブラウザバックをお勧めします。 作者:[[COM]] #contents **悪のハーメルン 1 [#e2f61a6b] 美しい自然に囲まれた、一つの小さな街があった。 素朴ながら決して質素ではない造りの建物が並ぶ街は、今日も多くのポケモン達が往来し、商店街も道路も道行く人たちで埋め尽くされるほどだ。 人が多く集まる街は、そこに住む者以外もよく街に滞在したりすることがあるため、宿泊施設も酒場のような大衆施設も多く並ぶ。 そんな建物の一角に一際賑わっている建物があった。 それは街一番の大きさを誇る酒場だった。 確かに一番賑わってはいたが、ただ酒を飲みに来ただけの者にしてはやたらとガラの悪い客も多く見受けられた。 酔いで気分の良くなった者の大声がよく響く中に一つ、それらのほとんど意味のない言葉とは明らかに違う声が混ざり込んだ。 「速報だ! 速報だ! 裏の森の悪名高き化け狐、クレイルの賞金額がまた上がったぞー!」 喧騒に巻き込まれてもう一度聞き直したくなるほど聞き取りづらかった声だったが、その酒場にいたほとんどの者がその声に反応し、より一層喧騒を増した。 この酒場は他のただの酒場とは違い、ギルドと呼ばれる特殊な酒場だった。 ギルドとは世界各地のお尋ね者や困っている人が助けを求めたり、色々な依頼を送ったりする場所だ。 そういった依頼の謝礼金やお尋ね者の賞金を目当てに世界中を旅して回る者たちを『賞金稼ぎ』と呼ぶが、このギルドと呼ばれる施設はそういった賞金稼ぎ達の欲しがる情報が集まる施設のことだ。 腕っ節だけには自信のある粗忽者が多いため、店のガラは嫌でも悪くなってしまうが、こういった賞金稼ぎの客は金払いがよく、そういった依頼の仲介料という物をもらうことができるため、それなりにお金を持っている酒場はこぞってギルド施設とする者も多かった。 先程の声の主はこの店を経営しているフーディンの声だった。 そのフーディンは賞金額の書かれた紙を掲示板にポンと貼り付けてみせた。 するとその場にいた者が一斉にその掲示板へと集まる。 その紙にはクレイルと呼ばれていたゾロアークの似顔絵とその二つ名、そして賞金額5,000万ゴールドと書かれていた。 既にそれだけの金額になっているのにも関わらず、それでもまだクレイルは賞金額が上がっているということも驚きだが、多くの者がその紙を一斉に覗き込んだかと思うと、深く悩んだ後、皆同じように首を横に振って離れていった。 そんな中、一組の賞金稼ぎだけはその紙を見て笑ってみせた。 「5,000万か。これだけ稼げりゃ当分遊んで暮らしてもお釣りがくるな」 そう一人のライボルトが言った。 それを聞き、そのライボルトの横にいたレントラーが体を摺り寄せながら猫撫で声で褒めちぎっていた。 多くの者がその手配書を見ただけで諦めていた中、彼にはそれほどの自信があるのか、既に賞金を手に入れたことを前提で話を進めていたためか、周りにいたものはやれやれといった調子でその二人を見ていた。 傍から見ても分かる通り、彼らは恐らくカップルで賞金稼ぎをやっているのだろう。 周りの視線も既に二人には気にならなくなっているのか、ライボルトは歯の浮きそうな甘い言葉をレントラーに囁き、それを聞いてレントラーはクネクネと身を捻りながら恥ずかしがっていた。 「じゃあな! 負け犬共! 賞金は俺達のもんだ!」 そのまま最後まで二人は自分たちの世界を壊すことなく、酒場を去っていった。 誰の目から見ても面倒なカップルがその場からいなくなると、店主のフーディンは一言、ポツリと呟いた。 「ありゃあ、あのレントラーの女の子、無事じゃあ済まないだろうねぇ……」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 差し込む陽光もまばらなほどの深い新緑の森は、あちらこちらの地面に影を作っていた。 そんな大小様々な影のうちの一つが動いたかと思うと、それはのそりと起き上がり一つ大きな伸びをした。 影の中に紛れて眠っていたその黒い物体の正体はどうやらゾロアークのようだ。 先程までは眠っていたのだろうか、そのままそのゾロアークは少しストレッチをし、それが終わると何処かへと歩き出した。 ヒコザルも顔負けな器用さでヒョイと木の上に登り、きのみを探しながら木から木へと飛ぶように渡っていた。 そうして幾つかの木を移りながら、数個のきのみを食べて腹も膨れて満足したのか、ようやく木から飛び降りた。 そのままそのゾロアークは食後の散歩でもするように歩き始めたが、前方に何者かの気配を感じ、茂みの中へと隠れた。 「なぁ? いいだろ?」 「もう……ダメ。誰か見てたらどうするのよ」 ゾロアークの進行方向にいたのは、イチャイチャと絡んでいるライボルトとレントラーだった。 ライボルトはレントラーに対して体をすり寄せ、そのままゆっくりと後ろに移動していくが、そこでレントラーは少しだけ体をくねらせる。 傍から見ても二人がそういう雰囲気になっているのが手に取るように分かった。 そしてレントラーも言葉の割にはあまり抵抗する気がないのを見ると、確実に今から一発おっぱじめようとしているのだけはよく分かった。 そのままそんな流れを続けていたため、レントラーの方が折れるかと思ったが、どうやらライボルトの方が折れたようだ。 「仕方ないな。ならちゃちゃっとそのクレイルとかいう賞金首を捕まえてくるから、終わったら……な?」 そう言ってライボルトは森の奥へと歩いてゆく。 それをレントラーは少しだけ残念そうに送り出していた。 そんなやり取りを先程からその目的である賞金首に見られているとも知らずに……。 『聞いてた限りだと……僕を探しに来たんだよ……な? アホなのか? この二人』 茂みから覗き込んでいたゾロアークはそんなことを考えながら首を傾げていた。 彼の名はクレイル。 幾度も賞金首として名前が挙がっているが、彼を見てもそうは思えなかった。 賞金首になるような者は大抵、言動か格好に粗暴さが表されるものだ。 だが、クレイルは至って清潔で、今の所言葉は一言も発してはいないが、様子を伺い自分の場所はバレないようにしている。 『まあ、あの女性なら簡単にヤレそうだな』 彼はそう思ったのかゆっくりと行動を開始した。 忘れてはならないが彼も多額の賞金首なのだ。 賞金首には粗暴な力任せなものとは別に、もう一つ傾向がある。 それが知能犯と呼ばれる者だ。 彼もそちら側なのだが、この知能犯というものが厄介で仕方がない。 腕っ節が強いだけの犯罪者ならそれ以上の強さで押さえ込めば案外どうとでもなるものだが、知能犯の場合はそうはいかない。 頭が良いためそもそもなかなか尻尾を出さない上に、ようやく尻尾を掴んだかと思うとそれすら罠だったという場合もあるほど掴みどころがない。 ライボルト達一行は彼の手配書をしっかりと読んでいなかったが、基本的に賞金額の高い者はそれに比例して強く、来る者を全て返り討ちにするような者か、被害の割に尻尾が掴みにくく、被害だけが増えてゆくという特徴がある。 今までが前者ばかりを相手にしていて相当天狗になっていたのか、それともあまりにも高額な賞金額に目が眩んだのかは知らないが、折角二人もいるのにわざわざ別々に行動した上に、レントラーをその場に残していくという愚の骨頂を行っている彼らは、クレイルからすれば格好の獲物だった。 『あの感じなら……10,20分待てば問題なさそうだな』 そうクレイルは考え、今自分が隠れていることがバレないようにするために更に姿を消すことにした。 彼の目が怪しく輝いたかと思うと、あっという間に鼻の先から足に向かって彼の姿だけが透け、周囲と全く同じになっていった。 摩訶不思議な現象が起きたが、それはゾロアークという種族が使うことのできる、イリュージョンという特性が引き起こしたものだ。 彼を中心とした範囲に幻影を映し出し、本人以外にはそれが本物なのか偽物なのかすら判断することのできない究極の隠れ蓑を使うことができる。 賞金首である彼がそんな力を使うのを想像しただけでそれがどれだけ恐ろしい力なのかということは考えなくても分かるが、元々周囲に警戒すらせず、上の空でライボルトの消えていった道の先を眺めているレントラーではそれにすら気付かないだろう。 だが、これでクレイルを認識できるものは存在しなくなったため、彼は足音を殺しながら茂みを抜けて、先程ライボルトが歩いて行った方の茂みまで移動した。 それから彼はおおよそ10分ほど茂みの中で時間を潰し、待ちきれなくなったのかそろそろいいと思ったのか、現在のレントラーの位置から見えない道の奥の方へ移動し、そこで彼は完全な透明から先程のライボルトの姿へと自らの姿を変えた。 そして、さも今戻ってきたかのようにレントラーの元へと歩いて行った。 「あら! お帰り。早かったわね」 そう言って何も知らないレントラーはクレイルの元へ急ぎ足で寄ってきた。 クレイルはそんなレントラーの後ろ側へと素早く回り込んだ。 おめでたい彼女は何も怪しいと思っていないのか、先程のようにただあん。と艶のある声を出してそれほど抵抗しなかった。 「もう……。そんなにシたかったの? しょうがないなぁ」 などと言いながらクレイルの見立て通り、あっという間に彼を許してしまった。 それを確認したクレイルは既にいきり立っている彼の立派な逸物を彼女の僅かに湿りを帯び、ヒクヒクと動く秘部へと宛てがい、そのままゆっくりと彼女の腰を両腕で掴み、力を加えていった。 それほどキツイ抵抗もなく、クレイルのペニスは彼女の秘部へとズプズプと潜り込んでいった。 彼女はそれを待っていましたとでも言うかのように、艶のある息を吐きだしていた。 「あぁ……! いつもよりも大きい! もっと! もっと激しく!」 無敵にも思えるゾロアークの幻影だが、この技には一つ大きな欠点があった。 それはメタモンのような自分自身の姿をそもそも作り変える『へんしん』とは違い、ただ見た目の姿を偽っているだけだということだ。 そのため、見た目は違っても背格好はゾロアークのままだし、勿論声や匂いもクレイルのままだ。 ライボルトよりも体の大きなクレイルのペニスが同様に、一般的に考えてライボルトよりも大きいのは当たり前で、彼女にとってはいつものライボルトよりも大きい程度の認識だが、バレる可能性の方が大いにある。 更に言えば、強烈な一撃を貰ってクレイルの意識が乱れるとこのイリュージョンは解けてしまう。 効果が優秀な分、そのリスクも大きいが、それはあくまで相手が警戒しているのならという話である。 既に警戒は疎か、ただクレイルの激しい腰の動きを求め、彼のペニスが一番奥まで届くとただ嬌声を上げて悦んでいるだけだった。 クレイルは彼女の望むままに腰の動きを早くしていき、二人の腰が打ち付けられる度に、プチュッと卑猥な水音が聞こえるほど思い切り腰を振っていた。 彼女の方はというと、もう何も考えていないのか、息を荒くしてただただ悦んでいた。 かなり速いペースで腰を振っていたため、クレイルも限界が近づいていた。 「どうした? 待ちきれずに一人でおっぱじめたのか?」 絶好とも最悪とも言えるタイミングで本物のライボルトが帰ってきた。 激しく乱れていても聞き覚えのある声を聞いたことで思い出したのか、目の前を見てレントラーは夢心地から一気に地獄へと落とされた。 目の前には自分のパートナー。 そうなれば自分の上で腰を振っているのは誰なのか。 「なんで!? 嫌! 嫌ァ!! 抜いてぇ!!」 状況がよく飲み込めていないレントラーはそう叫び、クレイルに静止を求めた。 ライボルトの方も何故自分が目の前にいて、しかも自分の女と交尾しているのか訳が分からないといった調子で、ただただ混乱していた。 勿論クレイルは全て分かっていてこうなるように仕組んでいた。 そのまま彼女の叫びも虚しく、クレイルのペニスは彼女の中で大きく脈打ち始めた。 「嫌ああぁぁぁぁ!!」 レントラーは悲鳴にも似た叫び声を上げていた。 クレイルはそのまま彼女の中に精子を全て吐き出すと、ペニスを引き抜いて幻影を消してみせた。 「いやぁ、ここ最近僕も有名になり過ぎてご無沙汰だったからね。君達みたいな無警戒な人が来てくれてありがたいよ」 ヘラヘラとした口調でそう言うとクレイルは無邪気な少年のような笑顔を見せた。 クレイルが本来のゾロアークの姿で笑ってみせた所でライボルトは状況が把握できたのか、鬼のような形相でクレイルを睨んだ。 それと同時にレントラーはその場に崩れ落ち、声を押し殺して泣き出した。 「てめぇ!! 俺に化けて人の女に手ェ出してんじゃねぇ! この卑怯者が!!」 そのままライボルトは怒りに身を任せ、クレイル目掛けて電撃を飛ばしたが、クレイルはそれをヒラリと躱した。 それを見てライボルトはすぐに飛びかかったが、クレイルはそこまで既に予想していたのか飛びかかってきたライボルトの首元に強烈な手刀の一撃をお見舞いした。 力任せな動きに対し、冷静に急所へカウンターを食らったライボルトはそのまま地面に着地することができず、土煙を僅かに上げながら地面に転がった。 一瞬息ができなかったのか、吐き出すような咳をした後、もう一度クレイルを睨みつけた。 「案外この幻影も脆いんだ。だから実は普通に正面切ってやりあっても強いよ?」 「舐めやがって……」 このクソ野郎、とでもライボルトは言いたげだったが、そこで恐ろしい殺気を感じ思わず怯んだため、その言葉は出なかった。 「舐めてるのはどっちかな? 僕が本気でやれば君達は僕の姿を見ることすらできずに死んでたよ」 そう、ライボルトの顔を覗き込むように言ったクレイルの表情は冷血な殺人鬼のように凍てついたものだったが、そこに覗く裂けるような笑顔が妙な狂気を感じさせるものになっていた。 いつでも殺せる、その幼い表情からは到底想像もできないようなそんな背筋の凍るようなクレイルの意図が、彼の視線からはっきりと感じ取ることができ、ライボルトは思わず死を覚悟した。 「ただ、僕は出来るだけ人を殺したくない。殺したらそれ以上の恐怖や屈辱が与えられないからね。だから逃げなよ。ただし、次はないからね?」 歳は恐らく、クレイルの方が下だっただろう。 だが彼の放つ異様な雰囲気は青年ほどの彼が放てるような物ではなかった。 それにライボルトの中にあった怒りも恐怖に勝てなくなったのか、うずくまって泣いているレントラーすらも置いて逃げ出させるほどに恐れさせたのだろう。 「お、覚えてやがれ!!」 震えた声でそんな何処かで聞き覚えのあるような言葉を残して、ライボルトはあっという間に姿をくらましてしまった。 それを見てクレイルは小さくため息を吐き、やれやれとジェスチャーをしたあと、レントラーの前まで歩み寄った。 「彼は逃げたけど、君は逃げなくていいのかい?」 そう声をかけると、レントラーは真っ赤に腫らした目でクレイルを睨みつけた。 「殺してやる……! 絶対に……」 すすり泣く声と共にレントラーがそう言ってみせるとクレイルはニッコリと笑ってみせた。 「君にできるのならね」 最後にクレイルはそう言い残すと、また一つ大きな伸びをしてそのまま何処とも知れず歩き出した。 **悪のハーメルン 2 [#bf90f327] 行き交う人々が今日も耐えないその街に一人のポケモンが訪れた。 その体毛は人の目を確実に一瞬奪うほどに美しく、上等な絹の服を纏うように光に輝いていた。 そんな体毛とは対照的な、独特な鈍い光沢を放つ、右からのみ生えている三日月状の黒い角と肌が白銀をより一層美しいものにしているそのポケモンは、納得もいくような周囲の視線を一切気にも止めず、道を歩いていた。 一目見ればとても高貴な存在のようにも思えるそのポケモンは、そのままそんなポケモンが最も縁遠いと思えるような、賑やかな街でも更に喧騒の絶えぬ街一番の大きさの酒場へと入っていった。 喧騒の絶えぬ酒場にそのポケモンが入ると、今までの五月蝿さが嘘だったかのようにしんと静まり返った。 そんな中をやはりそのポケモンは気に求めずに真っ直ぐに歩く。 「おいテメェ。ここはお前みたいな奴の来る所じゃねぇんだよ」 そんなポケモンの前に一人の厳ついオーダイルが立ち塞がり、そう言い放った。 店は以前静かなままだったが、その静けさの前にはあった明るい空気は消え去っていた。 そのポケモンへ向けられていた眼差しは好意や魅了といったいいものではなく、明らかな敵意に満ちていたものだった。 「オレも賞金稼ぎだが? 何か問題でもあったか?」 「アブソルが賞金稼ぎだぁ? 頭イカれてるのかお前はよ」 そのポケモン、アブソルがそう言うと、オーダイルは鼻で笑うようにそう言い放った。 やれやれ、といった調子でアブソルは深く息を吐きながら首を横に振り、そのままオーダイルの横を抜けてカウンターまで進もうとしたが、それもオーダイルは手を伸ばして妨げた。 「お前は賞金首にはなりえても、賞金稼ぎにはなれねぇんだよ疫病神が」 「オレは災害を察知することが出来るだけだ。それに既に賞金稼ぎとしてオレは実績を残してる。まだ何か文句があるか?」 オーダイルの言葉に対し、淡々とアブソルは返し、逆にオーダイルに聞き返すと、オーダイルはチッと舌打ちをして元々座っていた席に戻った。 アブソルはそれを流し目で見て、そのままカウンターまで歩いていき、四足のポケモンのための椅子に座った。 「いらっしゃい。何か飲むかね?」 「いやいい。それよりも近場の賞金首の情報が欲しい」 「それならそこに貼ってあるから好きに見るといい」 誰もが未だ騒ぎもせずにアブソルへ敵意の眼差しを送っている中、アブソルは何事もないかのように店主のフーディンとそう会話をした。 アブソルはフーディンに礼を言うとその掲示板の前まで歩き、貼ってある手配書を端から端までくまなく見渡した。 そして一つの手配書を見て動きが止まった。 「そいつは止めときな。この前も一組の賞金稼ぎが挑んで、返り討ちにされた上に二人は別れる羽目にあったみたいだからね」 その様子を見てフーディンはアブソルにそう声を掛けた。 手配書にはクレイルの似顔絵と途方もない賞金額、そしてその二つ名がきちんと記されていた。 「『霞影の強姦魔』のクレイル。俺がこの街に来る前にも聞いたことがある名だ」 「そうだろうね。ゾロアークというだけで厄介なのに、更にそこそこ強いらしい」 「アンタはオレに対して優しいんだな。そこまで話しかけてくれる奴は珍しいよ」 クレイルに関する知識が乏しいアブソルに、フーディンは色々と彼の知る情報を教えてあげた。 殺気や敵意に満ち溢れ、静まり返った酒場の中で唯一フーディンだけはアブソルにいつもの調子で接していたため、アブソルは徐ろにそう言った。 するとフーディンはニヤリと笑ってみせた。 「ワタシの信条は来る者拒まず去るもの追わずなのでね。ルルイアだったね? 『同族狩り』の仇名はワタシの耳には届いているよ」 「勝手に言わせておけばいい。オレはその内、誰にでもオレを実力で認めさせるつもりだ」 フーディンの言葉にルルイアと呼ばれたアブソルは小さく首を縦に振り、そう答えた。 ルルイアはその言葉を最後にあっという間に店を後にした。 それから少し経つとあちこちから苛立ちの篭った声が聞こえ始めた。 「マスター。なんであんな爪弾き者相手にしたんだ? 追い返しゃいいんだよ。大体、悪タイプにはいい奴なんざ一人もいねぇってのに」 「そう思うかい?」 カウンター席に座っていた一人の客がフーディンにそう話しかけた。 フーディンがそんな素っ気ない返事をすると、呆れ気味でその客は笑い話し始めた。 「そもそも悪タイプのポケモンは全員揃ってワルなんだよ。手配書を見れば一発だが、大体が悪タイプのポケモンだ」 「だが大体だ。悪タイプ以外でも悪さをしている奴は大勢いる」 「それにあいつはその『同族狩り』とか呼ばれている奴なんだろ? よく平気で仲間を売れるな」 「そりゃあ大半は悪タイプだ。必然的にそうなるだろう」 客が一つルルイアの文句を言うと同じようにフーディンも一つその文句に対する正論を返す。 そうやって一つ一つにきちんと正論を返し続けると、客はついに苦笑いして話すのを止めた。 フーディンにとってはルルイアもただの客のうちの一人でしかないため、そこまで肩を持つ理由も分からなかったが、最後にそれを客に聞かれても答えは素っ気ないものだった。 「別にいいだろう。たった一人ぐらい例外がいたとしても。ワタシとしては店で騒ぎを起こしてくれなければどうでもいいことだ」 そう言って愉快そうに笑うだけだった。 その頃、酒場を出たルルイアは森へ向けて歩いていた。 もちろんその道中でもルルイアは好奇の視線や敵意を感じながらも、一切気にも止めずに歩いて行った。 だがルルイアが賞金稼ぎであるという事実を知る者は恐らくこの中にはいないだろう。 それでもルルイアにそれだけの視線が集まるのは、ルルイアが賞金稼ぎであるからではなく、悪タイプが堂々と道を歩いているということ、そのものがこの街だけではなく、この世界においておかしいことだったのだ。 そうだったとしても、ルルイアは依然として堂々と森へ向かい歩いて行った。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ルルイアは街を出てからも暫く歩き、森へ辿りついた。 森の手前でルルイアは一つ深い深呼吸をして、ゆっくりと森の中へ入っていった。 木が鬱蒼と茂り、風が吹き抜けた時の木々のざわめきしか聞こえないこの森はリフレッシュには最適だろう。 だが、数年前からこの森にクレイルが住み着いてからはそうはいかなくなったそうだ。 道行く女性という女性が襲われ、被害が後を絶えなくなったためここ最近では道としてもこの森を使う者はいなくなってしまったほどだ。 そのため今ではこの静けさがただただ不気味で、必要以上に周囲の音に敏感にさせてしまっていた。 ルルイアも周囲への警戒はしたまま、歩くスピードを落とさないように森の中を奥へ奥へと進んでいった。 およそ5分ほど歩いただろうか、以前クレイルの姿はなく、今までの道よりも開けた場所に出た。 そこでクレイルは斜め後ろへ振り返った。 「出て来い」 静かな森にはそんなルルイアの一言もよく響いた。 だからこそだろう、そんな言葉に驚いている者が一人居た。 『まさかバレるとはね……。これは僕も本気になった方がよさそうだね……』 口にこそ出さなかったが、視線の向いた先にはあらかじめ幻影で姿を消しておいたクレイルがいた。 一瞬クレイルは動揺したが心の中でそう呟き、相手が強敵であることを認識したクレイルの表情はニヤニヤとした表情ではなくなっていた。 静かに茂みの中からルルイアの動きを監視しながら、しかしバレないように足音を消してルルイアの後方へ回れるように移動した。 ルルイアも勿論、出て来いと言われて相手が出てくるほど馬鹿ではないのを分かっていたため、周囲への警戒をさらに研ぎ澄ました。 「そこだ!!」 ルルイアはそう叫び、角を光らせ、その閃光をかまいたちの如く僅かに聞こえた枝の音の方へ飛ばした。 周囲の低い木々や雑草を切り裂きながら飛んでいったかまいたちはそのまま地面に当たってはじけたが、肝心のクレイルには当たっていなかったようだ。 外したのを察知し、ルルイアは再度意識を周囲に集中させる。 できる限り一箇所にとらわれないようにするために、聞き耳を立てながら少しずつ体を回転させていく。 そこでもう一度、後方から今度は確実な枝の音を聞き、そちらへ向き直して素早くかまいたちを放った。 すると今度はかまいたちが地面に直撃する前に茂みから黒い影が飛び出すのをルルイアは見逃さなかった。 「逃がすか!!」 ルルイアは素早くその黒い影に飛びかかり、爪?を振り下ろした。 反応が間に合わなかったのか、クレイルは反撃すら間に合わずその爪撃をまともに受けた。 「!?」 そうルルイアが確信した瞬間、ルルイアの爪はクレイルの額に当たるどころかめり込み、そのまま雲でも掴むかのようにすり抜けて地面を叩きつけた。 『しまった! これは……』 そう思った瞬間、既に時は遅く、ルルイアの背後から伸びてきた腕はしっかりと首を締め付け、上にのしかかられてしまった。 すぐにルルイアもその腕を振りほどこうと暴れたが、それよりも早く背中に痛みを感じ、振りほどかれる前にその腕はルルイアを離した。 「なかなか強いね。あそこまで警戒されると安易には動けないけれど、君は目に頼りすぎたね」 背後からそう声が聞こえ、ルルイアはすぐに振り返りながらの爪撃を繰り出す。 クレイルはそれをギリギリの所で躱し、そのまま後ろへ飛んで距離を取った。 そのままルルイアは追いかけるようにクレイルに飛びかかりながら爪撃を行うが、これも躱しクレイルはどんどん後ろへと下がっていった。 何度もルルイアは攻撃を当てようと必死に、しかし的確に致命傷になる場所へ爪を振るい続けるが、どれも全てギリギリのところで躱し続けれた。 そんな攻防を続けていたが、ルルイアは自分の視界が歪んだのに気付き、攻撃を中断した。 「か……身体が……!?」 「ようやく毒が回ったのか……。タフだね君。普通あれだけ動けば数十秒でグロッキーになるんだけどね」 クレイルは最初にルルイアにのしかかった時点でどくどくを喰らわせていた。 それからずっと激しく動き回っていたルルイアもついに毒が全身に回り、真っ直ぐ立っていることすらできないほどになっていた。 フラフラとしだしたルルイアに気付くと、クレイルはサッと何処かへ走り去っていった。 気が付いた時点で既に遅かったため、ルルイアは死も覚悟したが、逃げたはずのクレイルはすぐさまその場に戻ってきた。 「ほら食べな。一応僕は殺す気はないから自分で食べないなら無理矢理にでも食べさせるけどね」 そういうクレイルの手にはモモンの実が一つ握られていた。 既に意識が朦朧としているルルイアには目の前にクレイルが立っているということしか判断できなかったため、実を受け取ることもできなかった。 そのため、クレイルは一応ルルイアの前で手を振り、彼女の朦朧とした意識が演技ではないのを確認してから言った通り、無理矢理モモンの実を食べさせた。 だが、既に噛み砕いて飲み込むことすらできない状態になっているルルイアの姿を見て、クレイルは少しため息を吐いた。 「僕に好色の気はないんだけどなぁ……。仕方ないか、死にかけてるんだし、半分は僕のせいだし」 そう呟いてからクレイルは頭を少し掻いた後、モモンの実を今度はクレイル自身が食べ、そしてルルイアに口移しで食べさせた。 一先ず噛み砕いた状態のモモンの実がすぐに効いたのか、ルルイアの顔色はあっという間に良くなったが、それでも体力を消耗しすぎてフラフラとしているのは変わらなかった。 普段ならクレイルは返り討ちにした相手はその場に放置して去るのだが、あまりにも衰弱していたため、ルルイアをマフラーのように担いで移動した。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ルルイアを担いだまま歩いたため、いつもよりも歩くのが遅くなったクレイルは暫くゆっくりと移動して、きのみの群生地にやってきた。 完全に回復させるわけにはいかないため、一度地面にルルイアを置いて、きのみをもぐためにひょいと木の上に飛び乗った。 大小様々で色も多種多様なきのみが実る木々を縫い、手頃なきのみを何個かもいでルルイアの元に戻る。 そこでもう一度クレイルはきのみを自分の口に放り込み、程良く崩れた状態の物を流し込む。 一つでは流石に劇的に回復するわけではないため、数回に分けて一つずつ口移しを行っていった。 「な……なんの……つもりだ」 「別に。そのまま野垂れ死んでもらっても僕が後味悪いから助けただけだよ」 ようやく意識がはっきりとしたルルイアは、何度も口移しできのみを食べさせているクレイルにそう言った。 クレイルはそう言うとまた一つきのみを口に放り込んだ。 まだ暴れられるほど体力が回復していないとは分かっていたが、クレイルは意識がはっきりとしたルルイアに一応暴れるなと釘を打ってから口移しをした。 二人の唇が重なった瞬間、ルルイアは明らかに暴れたが、舌を上手く使ってペースト状のきのみをルルイアの口の中へ移動させるとピタリとその動きを止めた。 「クソッ……! 屈辱だ……」 「五月蝿いなぁ。僕だって屈辱だよ。しかもきのみじゃ効果が薄いから何度もやんなくちゃいけないし」 ルルイアへの口移しの数がふた桁を越えた辺りでルルイアはそう呟いた。 それに対しクレイルも少しだけムッとした表情で答える。 もう一つきのみを口移ししたところで、大分体力が回復したのかルルイアはヨロヨロとはしていたが立ち上がった。 息は荒く、今にも倒れてしまいそうなほどだったが、それでもルルイアにもプライドがあるためか、しっかりと真っ直ぐ立ってみせた。 「捕まえ損ねた上に助けられて……その上……。一応礼だけは言っておく」 「いやいや礼には及ばないよ。最初こそ慈善事業のつもりだったけど、ある程度体力が回復したみたいだしヤることをヤらせてもらうよ」 絞り出すようにそう言ったルルイアに対してクレイルはニヤニヤとしながらそう言い放った。 そう言われた時点でルルイアは奥歯を噛み締めてクレイルを睨みつけて威嚇するが、ルルイアには抵抗することができないのを理解しているクレイルはさっさとルルイアの後ろ側へ回り込んだ。 「最初は僕も気が付かなかったけど、君、女だったんだね。それで納得したけど、君いい匂いがするし、毛並みも賞金稼ぎとは思えないほどに綺麗だ」 後ろから片腕を腰に伸ばし、もう片方の手で柔らかく指通りの良い胸元の毛をすくように触った。 ルルイアは必死に後ろに回り込んだクレイルを振りほどこうとするが、勿論クレイルがそれが可能なほど体力を回復させるはずもなく、ただ身をくねらせているだけだった。 クレイルはその後も逃さないようにするために腰に回した手には少しだけ力を込め、全身を舐めるように撫でた。 全身を堪能するだけ堪能したクレイルは、そのままもう片方の手も腰に回し、しっかりと掴んだ。 「それじゃ君もお待ちかねのお楽しみだ」 「ふざけるな! 何がお楽しみだ!」 「何言ってるんだよ。女なんてみんなヤリたいだけだろ? だから遠慮なくいかせてもらうよ」 まだ何か言いたげだったルルイアに対し、待ったの声すら出させずにクレイルは既に勃起した自らのペニスを彼女の秘部へ滑り込ませていった。 しかし、クレイルの今までの経験とは違い、彼女の秘部は明らかにクレイルを拒んでいるかのようにきつく、滑りが悪かった。 それでも彼は無理矢理力を加え、グリグリとペニスを押し込んでいった。 「~っ!? 止めろ!! 痛い、痛い!!」 「きっつ! 全然入らないんだけど」 無理矢理ねじ込まれていくクレイルのペニスが彼女の秘部を裂きながら深く潜り込む度に、今まで味わったこともないような激痛が全身を支配していた。 依然として態度を買えなかったルルイアも初めて涙をこぼしながら懇願したが、それでも彼は止める気配はなかった。 あまりにも快感もなく、まるで元々ない裂け目を無理矢理作っているかのようにキツイ膣内にクレイルはついに痺れを切らし、腕と腰両方に一気に力を加えて押し込んだ。 「~~!! 抜いて!! 抜いてくれ!! 頼む!!」 あまりの激痛にリミッターが外れたのか、ルルイアは今までとは比べ物にならないような力で暴れた。 しかし痛いのはクレイルも同じだったため、全力で暴れのたうち回るルルイアの体をしっかりと押さえつけた。 ちょうど仰向けになる位置で押さえつけられたルルイアの目からは涙が溢れ出していた。 それほどまでに強気な彼女のそんな姿を見て、クレイルはようやく理解した。 「なるほど。君処女だったのか。ならじっとしてろよ? 気持ち良くしてやるから」 そのままクレイルは覆い被さるように彼女の秘部をもっと深く深く貫いていった。 また激痛が全身に走り、堪えようのない痛みからなんとか逃げようとルルイアはもがこうとしたが、そんな彼女の腕をクレイルはしっかりと押さえつけた。 そこで初めてクレイルはゆっくりとペニスを引き抜き始める。 今まで酷い痛みと体を貫かれるような異物感だけが彼女を支配していたが、そこでようやく痛みだけは幾分か和らいだ。 彼女は自分の腹部から火でも出ているのではないかというような痛みと熱に耐えながらも、心の中では反撃の機会を伺っていた。 完全に収まりきっていたクレイルのペニスは半分ほど引き抜かれ、そこには彼女が初めての証でもある破瓜による鮮血が付いていた。 そしてまたゆっくりとルルイアの膣の中へと押し込んでいく。 ズプリズプリと沈み込んでいくクレイルのペニスは先程よりは抵抗を受けなくなっていた。 しかしルルイアにとっては痛いことには代わりがなかったため、抵抗しようとするが、体を無理にひねればその熱した鉄の棒のようなクレイルのペニスが、楔のように深く彼女の中に刺さり込むため、下手に動けなくなっていた。 非常にゆっくりとした動きだが、ようやくクレイルはピストン運動を開始した。 グッと力を入れると肉が押し広げられるような感覚と痛みが彼女に与えられ、引き抜かれる度に僅かながら痛みとは違う感覚が彼女に届き始めていた。 少しずつ膣内に愛液が溢れ始め、それに伴い痛みも和らぎ始めた。 クレイルは明らかにルルイアが痛み以外の感情でで表情を崩すことに気付き、少しずつ動きを早めていく。 体の中にある異物のような物が出たり入ったりする度に、ルルイアは奥歯を噛み締めた。 ある程度愛液が膣内に満ちたのか、素早く腰を動かし、パンッと腰が打ち付ける音が聞こえるほどには早く動かせるようになり、クレイルは一気にペースを上げていった。 ルルイアを見下ろす位置にあった頭を彼女の頭の横へ移し、しっかりと抱きしめるように押さえつけて腰の動きを早めていった。 パチュッパチュッと彼のペニスが出し入れされる度に水音が聞こえ、僅かに快感がルルイアに与えられていたが、それ以上に屈辱感と怒りが込み上げていた。 次第にクレイルは息を荒くし始め、それに伴うようにクレイルの腰使いも粗いものになっていた。 激しく腰を打ち付ける音と、卑猥な水音が静かな森の中に響き、それを少しずつクレイルの声がかき消していった。 そのままクレイルは鼻息を荒くしていき、ペニスを一番奥へ突き込んでビタリと腰の動きを止めた。 ドクンッ! ドクンッとクレイルのペニスは脈打ち、彼女の中へ精液を注ぎ込み始めた。 その脈動とお腹の中へ少しずつ満たされていく熱は、怒りで燃えるような熱さになった彼女にもしっかりと理解できた。 「フッー! ……どうだい……? 少しは気持ち良かったろ?」 そう息を荒くしながらルルイアに聞いてくるクレイルが、腕の力を緩めていることを彼女は見逃さなかった。 次の瞬間、油断している彼の体ごとルルイアは一気に体をひねり、上下を逆転させた。 クレイルは予想していなかったのか驚きの表情を浮かべるが、すぐに逃げ出そうとする。 しかしそれも今度はルルイアがしっかりとクレイルの腕を押さえつけ、完全なる形勢逆転を行ってみせた。 「あらら……」 「覚悟しろ! オレを甘く見たのが運の尽きだ!」 そう言い、ルルイアはまず自分の秘部に入りっぱなしだったクレイルのペニスを引き抜いた。 様々な感情が入り乱れ、鬼のような形相になっているルルイアを見て、クレイルは一つ笑ってみせた。 「なら降参。殺しなよ」 僅かに力を加えていた腕も人形のように投げ出し、クレイルはいとも簡単に諦めてしまった。 それを見て彼女の中にあった怒りは消えたのか、今度は驚きの表情を見せていた。 「殺す? 馬鹿か。確かにお前が私にしてくれたことは殺したいほどムカつくが、それとこれとは話が別だ。きちんと然るべき処分を受けろ」 「おいおい……。冗談言わないでくれよ? 晒し者にされて殺されるぐらいなら今ここでスパッと殺してもらった方がまだマシだよ」 ルルイアはそんな賞金稼ぎには似つかわしくないような言葉をクレイルに投げかけた。 だがクレイルにそう言い返され、また呆れたような驚いたような表情を見せる。 深いため息を吐きながら首を横に振り、ルルイアはまた喋りだした。 「改心するぐらいなら死んだ方がマシということか?」 「会心もクソも……そもそも悪タイプのお尋ね者は捕まえた時点で即処刑。それもできる限り残酷な方法でね」 「バカを言うな。犯罪者もキチンと自分の罪を贖えば許される。だからオレは今までそうやって一人も殺さずに、もう一度真当に生きられるように……」 そう言った時点でクレイルは大声で笑い始めた。 何がおかしい! とルルイアは怒鳴ってみせたが、クレイルは笑い話を聞かされたかのようにただただ楽しそうに笑っているだけだった。 ルルイアはそんな様子のクレイルに苛立ったのか睨んでみせたが、笑うことを止めなかった。 「それ本気で言ってるのか……。真面目というか……哀れというか……。というかもう押さえつけなくてもいいよ。元々いつ死んでも特に後悔はなかったし、できることなら今殺して欲しいってぐらいかな?」 「オレを馬鹿にしてるのか!! 誰がそんな手に乗るか!」 「いちいち怒鳴るなよ。嘘は実際言ってないし、別に君がどうしても手柄が欲しいのなら連れていけばいいさ」 「オレは手柄が欲しくてこんなことをやっているんじゃない!!」 もう一度ルルイアがそう叫んだ瞬間、隙をついてクレイルはルルイアを振りほどいた。 しまったとルルイアは心の中で思ったが、急いでクレイルの方を見ると、意外にも彼は言った通り逃げもせずにその場に座っていた。 「別に君の生き方に文句は付けないし、正直悪タイプでそこまでまともに生きれてる君が羨ましいよ。けど、君が少なからず僕のためだと思ってるのなら、今殺して欲しい。それだけだ」 ルルイアは文句の一つでも言おうと思っていたが、そう言ったクレイルの表情は真剣そのものだった。 そう言われたことによって思わず言おうと思っていた言葉が出なくなった。 「ダメだ。オレだって人は殺したくない。それに賞金稼ぎもただの手段だ。それに、お前がそう思い込んでるだけで実際にちゃんとオレは事実を話で聞いてる」 「そう思うなら連れていけばいい。まあ、その前に一応無理矢理犯したこと謝っておくよ。どうせ最後になるだろうし」 そう言ってクレイルは立ち上がると木の上に飛び乗った。 ルルイアは急いでそれを追いかけようとするが、そもそも動き回れるほど自分に体力がないことを忘れていて、そのままべちゃりとその場に崩れ落ちた。 『逃げられただろうな……』 そう思っていたルルイアだったが、数分と経たない内にクレイルは沢山のきのみと何かの蔓を持って戻ってきた。 **悪のハーメルン 3 [#n16756f9] 陽も傾き始め、人の行き交う街も次第にその賑わいも静かになっていた。 皆一様に自分の家へ帰る者が今日最後の挨拶を交わす中、逆にさらに賑わいを見せてゆく場所もあった。 一つは宿場。 旅人は今日の疲れを癒すために宿を探して集まり、互いに自分の旅を話したり、相手の旅の話を聞いたりととても楽しそうだ。 そんな温かい雰囲気とは少し違う賑わいがあるのが酒場でもあった。 この街に住む酒好きや、賞金稼ぎ、旅人もよく集まるが、話は武勇伝であったり、ただの愚痴であったりと内容はただ誰かに言いたいだけのものがかなり多かった。 そんな夕暮れの街に奇妙な一行があった。 後ろ手に蔓を巻かれ、先頭を歩かされている黒い者と、その蔓の先を咥えて歩いている白い者の姿があった。 そんな珍妙な二人はそんな一層の賑わいを見せる酒場へと入っていった。 すると酒場は一瞬静まり返り、その後今までとは違う爆音のような怒号が響き渡った。 「五月蝿いなぁ……。ずっとこんな声聞いてたら耳がイカレるよ」 その怒号は全て、その声の主であるクレイルへ向けられたものだった。 大半は、というよりは『死ね』という言葉しか聞こえなかった。 爆音のような死ねの嵐を目の前にしてルルイアはただ呆然としていた。 「ルルイア! 聞こえるかい! これが現実だよ! というか多分、悪タイプじゃなかろうと僕は許してはもらえなかっただろうさ!」 クレイルはすぐ後ろにいるルルイアにそう大声で叫んだが、その声はその爆音のような周囲の声にほとんどかき消されていた。 目の前にいる全てのポケモンがまるで自分の敵にも思えるほどルルイアの目には怒りの形相しか映らなかった。 そしてついに皆が一斉に飲んでいた酒のカップを投げ始めた。 次々と降り注ぐ殺意の&ruby(つぶて){礫};はクレイルめがけて降り注ぎ、防ぐことのできないクレイルはただ成す術なく立っているだけだった。 「よお! どうやらお前のことを誤解してたようだな! これでようやく憎きクレイルをぶっ殺してやれる」 そんな声が聞こえ、呆然とするルルイアの背中を少し力強く叩いた者がいた。 それは何時ぞやルルイアに食ってかかったオーダイルだった。 あの時にはあった敵意の視線はなく、その言葉通り、ルルイアのことを認めたようだった。 「違う……。誰だって……誰だってその罪を償えば……。誰だって許されるんじゃ……」 「あぁ? なに馬鹿みたいなこと言ってるんだ? 悪タイプは例外なく、捕まえた時点でぶっ殺す。当然だろ? おっと! お前は例外だったな。これからもよろしくな!」 誰に言ったわけでもなく、ルルイアは僅かに体を震わせてその光景を呆然と見つめたまま何もできないでいた。 目の前で嬲り殺しにされていく光景を見つめながら、ルルイアはひたすらに後悔していた。 「あと君達、ゾロアークを舐め過ぎだよ? じゃ、そういうことで」 不意に後ろからそんな声が聞こえたかと思うと、そこには先程まで目の前で物を投げつけられていたはずのクレイルが平然と立っていた。 そのクレイルは明らかに怪我など負っておらず、それに気付いたものがそちらに振り返り、元の場所を見るとそこにはただコップと酒が飛び散っているだけだった。 皆がその一瞬、本物のクレイルから目を離した間に、本物のクレイルもどうやったのか煙のように消えていた。 「奴が逃げたぞ!! 探せ!!」 「おい! 何やってるんだ! お前の手柄だろ! 逃げちまうぞ!」 それまで放心していたルルイアはオーダイルにそう言われてようやく我を取り戻した。 踵を返してルルイアは走り出す。 既に街の中には賞金稼ぎ達で溢れかえり、先程までの静けさは消え去っていた。 陽も沈みきり、西の空を僅かに七色に見せているだけの空の下、松明を片手に血相を変えた荒くれたちの探索が続いていた。 積まれた荷物もひっくり返し、路地裏までもその喧騒に巻き込んでいた。 そんな様子を見てルルイアは今まで見せたこともないような表情を浮かべていた。 そして彼女は奥歯を噛み締めて真っ直ぐに走り出した。 路地裏でもなく、ただ夜に出歩いていただけで問い詰められる婦人の下でもなく、街の外へ向けて疾風の如く駆け抜けた。 街の喧騒も、明るさも次々と消え失せていき、暗く静かな森へ向けて走っていった。 『クレイルが逃げる先は……あそこしかない!』 そんな思いを胸に秘め、数分もの間ルルイアは決してその足を止めることなく走っていくと、ようやくその森の入口が見えた。 鬱蒼とした森は闇夜のせいもありより一層視界が悪かった。 そんな暗闇を走り抜けていくと、クレイルと初めて相対したその場所に彼は背を向けて立っていた。 「クレイル!!」 彼女は迷わずに叫びながら飛びかかったが、そこにいるはずのクレイルをすり抜けて地面に両前足をつけた。 「君も学習しないねぇ。ゾロアークがそんなあからさまに姿を晒すわけ無いだろ?」 そんなことを言いながらクレイルは茂みから姿を現した。 クスクスと笑いながらルルイアの方へ近寄るクレイルに、彼女はすぐさま飛びかかった。 あまりにもいきなりだったからか、ルルイアがそうすることを予想していなかったからは分からないが、クレイルは少しだけ驚いた表情を見せてルルイアに押し倒された。 「なんで……!なんでお前はオレにあんなものを見せたんだ!! あんなものを……」 「辛かったかもしれないけれど、あれが現実だよ。それを知ってもらいたかった。それに……君なら生きていけるからね。だからこれから先もくじけないで欲しかったから、君の心が折れる前に見せたかった。『生きる』っていうのがどれだけ大変なことなのかを……」 ルルイアはしっかりと自分の下にいるクレイルの目を睨みつけながらそう言った。 だが、決してルルイアのその瞳に怒りの感情は篭っていなかった。 そしてクレイルの言葉を聞くと同時に、大粒の涙をこぼした。 「泣くなよ……。大丈夫。君は強いんだ。少なくとも僕や、他の悪タイプのポケモンよりもね。自分の存在を、真っ向から肯定させるために戦えたんだ。君はこれからも生きていけるよ。……だから」 「オレを殺してくれ……」 クレイルの言葉を遮るように、震える声でルルイアがそう言った。 そんな言葉が返ってくるとは思っていなかったのか、クレイルは驚きの表情を浮かべていた。 ルルイアはなおも涙を流しながら話し続けた。 「オレは……なにも自分一人が生きたいから、自分の身だけを守りたいから賞金稼ぎなんかになったんじゃないんだ……。オレはただ、みんなが笑って生きられるように……悪タイプが、ただそれというだけで生きられない世界を……変えたかっただけなんだ……」 「無理だよ。僕らにはそうやって生きる権利がない。でも君は違う。僕らとは違う生き方が出来ることを証明してくれたじゃないか」 「オレには無理だ。これから先も、助けたかった人達の屍を積み重ねて生きていくなんてできない。それに……お前が思っているほどオレは強くないんだ……。もう、生きていたくない」 「ごめんよ……」 そう言う彼女は、泣きながら笑っていた。 全てを諦めたように、自棄を含んだ、輝きを失った瞳でただ微笑んでいた。 「オレはな……昔、普通に女の子だったんだ。父親もいて、母親もいて、一人娘のオレを大事に育ててくれた。そんなある日さ……母親が殺されたんだ……」 ―――今からもう五年も前になるだろうか……オレが暮らしてた家は、家と呼べるほど大層な物でもなかったし、そもそも街にも住んでなかった。 小さな洞穴に家族三人で、貧しく暮らしてたけど……決して不幸せではなかった。 「どんな時でも正直に生きること。それを守っていれば、いつかはみんなも悪タイプが悪者ではないと認めてくれる」 父親の口癖は気が付けばオレ自身の生き方になっていた。 いつかは認めてもらうために、たとえどんな罵声を浴びせられても挫けなかった。 なのにさ……何もしてないのに、母親は殺された……。 『蔓延した疫病の元凶』だとさ……。 その時、オレは泣きながら父親に訴えたな。 「なんでお母さんは殺されたの!? 私たちみんな正直に生きてたのに!」 って……。 その後、結局父親も殺された。 父親は私に逃げるように言った。 「いつかは分からない。だがいつか世界が変わる」 父親はそう言ってオレを逃がした。 結局世界はいつまで経っても変わらなかった。 自分の身を守る技術も大分上達し、そこらへんのゴロツキよりも強くなった頃にオレは悟った。 世界を変わるまで待ってても世界は変わらない だからオレは大嫌いな世界に飛び込んだ。 正義の大義名分を振りかざし、抵抗しない弱者さえも自分の糧にするような世界に。 その世界にただ一つだけ、自分の望んでいるものがあったからだ。 賞金首は生きて捕らえられた場合、その罪を償うために一度留置され、きちんと反省の色が見え、その罪の重さに見合った月日をその檻で過ごせば晴れて普通に暮らせる。 回りくどかったかもしれないが、力も知識もない俺にはそれが全てだった。 舐められるわけにもいかず、女であることを捨てて、口調も仕草も変えて何もかもが敵の世界に身を置いた。 その世界できちんと名を馳せればいずれはオレの言葉にも影響力が現れる。 その時に初めて大声で言えばいい。 「オレも、他の悪タイプも、みんなただ生きているだけなんだ。みんな変わらないんだ」 そう決めて、ただひたすら強くなり、ただひたすら……救っていったつもりだったんだ……。 「なのにさ……。なんでかな……。正直に生きて、誰にも負けないようにするために強くなって……。それなりにオレの名前も有名になってきてたのにさ……。最初から全部夢だったんだ……」 「確かに夢だったかもしれない。でも君は確かに生きれているんだ。それを証明してくれただけで嬉しいんだよ。君が生きているのなら、悪タイプはそんな世界でも生きていけることを証明しているんだ。それだけでいい。君は正直すぎたんだ。これからは自分のために生きればいいんだよ」 「生きてるだけだ。だから……ありがとう。夢を見て生きていたオレに現実を見せてくれて。そんな甘い話はないんだって理解させてくれて」 「諦めないでくれよ……。僕にとっては、君が普通に生きていること自体が夢みたいなんだ。だから……せめてもの罪滅しだよ。今ならまだ間に合う。君のためなら死んでもいい。だから、君の夢の続きが見たい」 そう言ってクレイルはルルイアの頬を伝う涙を指で拭い、彼女の前足をそっと手に取り、胸に置かせた。 するとルルイアはすぐに自分の前足を下ろした。 「なんでオレが生きたくないって言ってるのに……そこまで必死になるんだよ。それにもうオレは誰かを殺してまで生きたくない」 「君を犯した相手でも?」 そうクレイルが聞くとルルイアは笑った。 「お前は本当によく分からないな……。オレの事を邪険に扱ったかと思えば、今度はオレのために必死になってる……。なあ? 教えてくれ、お前がなんでそうなったのか……」 「別に。聞いても面白いことなんかないし、元からこういう奴なんだよ。まだ色々と謝りたいことがあるけれど、君のためにもこれ以上は言わない。君にはまだ生きて欲しいんだ。だから……」 ルルイアの言葉にクレイルはそう言って笑ってみせた。 それを聞いてルルイアはただ分かったとだけ言い、クレイルの胸の上に前足を戻した。 それを見てクレイルはそっと目を瞑った。 ルルイアはそんなクレイルへ顔を近づけていき、ただ静かに彼の唇に自分の唇を重ねた。 思わずクレイルは目を開く。 だが、抵抗はしなかった。 「ど、どうしたんだい? 僕はてっきり……」 「殺してもらえると思った。って言うんだろ? でもな、お前がオレに生きて欲しいように、オレもお前に生きて欲しくなった。バカみたいかもしれないが、好きになってしまったんだよ」 そう言ってルルイアは初めて可愛らしく笑ってみせた。 そんな表情のルルイアを見てクレイルは首を横に振った。 「本当に馬鹿げたことだよ。君を犯した大罪人で、今街では僕を殺すために大勢の人が動き回ってるだろう。それに、君ならちゃんと愛してくれる人が現れるから……。今は生きてくれよ」 「オレは多分、もうとっくの昔に限界がきてたんだ。何のために生きてるのかも分からずに、ただひたすら生きていた。その上たった一つの希望はなくなった。だからもう、わざわざあんな生きづらい世界で生きる必要はないんだ。お前が言ったんだろ? 自分のために生きればいいって。だから、オレの答えは二つだ。初めてオレの事をオレ自身として見てくれた人と生きるか。死ぬかだ」 「やめろよ……。君はただ優しくされたことが少なすぎるだけなんだ。だから僕なんかを好きになってしまっただけだ。それに僕だって君が思うほど優しい人じゃない。自分勝手に生きてきたからこそ僕だって大罪人なんだ」 「オレが好きになったんだ。それなら関係ないだろ? それでもダメだというのならどうしてダメなのかだけ教えてくれ。多分、誰かに対してこんな気持ちを抱けるのは……最初で最後だから」 クレイルの拒む意志が変わらないようにルルイアの好意も変わらなかった。 気が付けばそこにいるルルイアの表情には流した涙のせいか、張り詰めたような彼女の勇ましい表情はなくなっていた。 そんな悲しげな表情を見てしまったせいか、クレイルは一つ小さく溜め息を吐き、自傷気味に微笑んだ。 「君の過去ほど崇高なものじゃないよ。全部僕が蒔いた種で、同時に僕が全ての現況だから……」 そう言ってクレイルも過去を語り始めた。 ―――君と違って僕には親というものの記憶がない。 生まれてから物心が付く、前までの間に何処かで誰かに殺されたんだと思う。 そのこと自体は特になんとも思っていなかった……なんて言ったら普通の人なら薄情だ、と言うだろうね。 でも、僕にとってはそれが当たり前の日常だったんだ……。 いつも何処かで、誰かが誰かを殺している。 僕にとってはその火の粉がたまたま自分の親に降りかかっただけのような認識だった。 といっても、僕自身もただゾロアークとして生まれたというだけで物心付いた頃から逃げる生活だったからね。 「ゾロアークは嘘を吐く。姿で、言葉で、環境で。その全てを使って周りにいる者全てを欺いて生きている。だから近寄るな」 酷い話だ。 ただ生きているだけで僕は嘘吐きだった。 でも、僕にはそれに抗う術がなかったから、姿を偽って生きて、バレた時のために強くなるしかなかった。 僕だって最初はゾロアークとして生きたかったさ。 自分を偽ってまで生きたくなかった。 だからかな……偽りの姿の僕でも、心までは偽ろうとしなかった。 性格や仕草まで偽ったら……それはもう僕ではない気がして……。 そうやって大衆に紛れて生きて、バレたら住む場所を変えてっていう、一般的なゾロアークの生き方をしてきたんだ。 あの時、彼女に出会うまでは……。 その女性の名前はライア、とても美しいカエンジシだった。 でも僕が彼女に惹かれたのは彼女が美しいからではなく、とても優しかったからだった。 誰とでも明るく接し、分け隔てなく彼女はその優しさを振りまいていた。 その時の僕は既に、自分に話しかけてくる人全てを警戒していたのに、彼女はそんな僕にも優しくしてくれた。 嬉しかったんだ……素直にね。 ほとんど何もかもが信じられなくなっていた自分にとって彼女はとても心の安らぐ存在になっていた。 気が付けば僕は彼女にプロポーズしていたんだ。 返事は望んでいた通りのもの。 とても嬉しかった。 それから僕は毎日、ライアと仲を深めていってたんだ。 いつかは子供も残そうと誓い合っていた。 それほどに愛し合っていたんだ……なのにさ……。 彼女といつものように待ち合わせの約束をして、遊びに行く予定だったけれど、彼女が待ち合わせの場所にいなかった。 遅れるような人ではなかったから不思議に思い、彼女の家へ向かったんだ。 その道中、彼女が街のゴロツキに絡まれているのを見つけた。 「クレイル! 助けて!」 言われるよりも先に体が動いていた。 本当に大事な人だったから、僕はたったの一度でも攻撃をもらってはいけないことも忘れてそいつらを追い返したんだ。 そいつらの内の一人と殴りあった時に、ゴロツキ共は僕を見てそそくさと逃げていったよ。 そしてその時、僕は彼女にその本来の姿を晒してしまったんだ。 「ごめんよライア。今まで黙ってて……。でも! 僕の思いは本物だ。君だって……!」 「近寄らないで」 その言葉は僕の胸に深く突き刺さった。 でも、心の何処かではそうなることを予想してたのか、思ったよりも傷つかなかったんだ……。 「ごめんね」 そう言って僕は彼女の元を去った。 いつもの事だと、そう言い聞かせてその場を後にしたつもりだったんだ……。 でも、それだけ愛し合っていたからかな? 僕は未練からか、どうしてももう一度だけ彼女と話し合いたくて、数日後に街に戻ってきたんだ。 もちろん、また別の姿に偽って……。 笑えたよ。 あの時、ライアに絡んでいたゴロツキ共と彼女は仲良くなっていた。 まるで、僕から救った救世主のように僕に吹っ飛ばされたそいつらのリーダーは振舞ってたんだ。 怒りしか込み上げなかった。 気が付けばみんな殴り飛ばしてた。 「なんでだよライア! 君が僕にくれた優しさは、愛は本物だったんだろ!?」 「貴方がゾロアークだなんて知らなかったからよ! 知ってたのならこんなことにはならなかった!!」 何もかもがその一言でどうでもよくなったよ……。 気付けば、僕は彼女を犯していた。 愛していたはずの人を…… そう言うと、今度はクレイルが泣き出してしまった。 両手で顔を押さえて、ただただ泣いた。 「僕はそんな奴さ……。その時からだったかな、僕が女性の全てがただの快楽を求めているだけの生き物にしか見えなくなったのも、自分の生き死にがどうでもよくなったのも……そのくせに、心の何処かでは一人で死にたくないなんて思ってるんだ……笑ってくれよ」 「同じじゃないか、オレもお前も……。ただ不器用で、純粋で……悪タイプに生まれただけだ」 そう言ってルルイアはクレイルの手をどけて、もう一度キスをした。 今度はより深く、お互いを求めるように舌を伸ばして、絡ませあった。 戸惑いも抵抗もなく、二人はただ涙を流しながら深い、深い口付けを交わしていた。 何度も舌を絡ませて二人の中に生まれた感情をしっかりと確かめ合った。 『愛しい』と……。 「いいの? 昼に僕が襲っているし気が引けるんだけど……」 「オレが交尾して欲しいんだ。だから気にしなくていい。……ただ、乱暴にだけはするなよ?」 二人は深い口付けを終えると、そのままルルイアはクレイルの方にお尻を向けて立った。 そして首だけで振り返り、そんな今更なことを言っているクレイルにそう返した。 クレイルはそっと後ろからルルイアの美しく、柔らかな毛並みを指先で少しだけ楽しみながら、ゆっくりと腰に手を回した。 「入れるよ? もし、痛かったら言ってね?」 「あんまり気にしなくていいよ」 クレイルの問いかけに、ルルイアはぶっきらぼうに答えるが、彼女は少しだけ嬉しそうにしていた。 クレイルのペニスの先端がゆっくりとルルイアの秘部を押し広げてゆく。 およそ半分ほどクレイルのペニスは彼女の中に入っただろうか、そこで少しずつ抵抗が大きくなり、入りづらくなったためクレイルは一度、膣の中へ押し込むのを止めた。 ゆっくりと引き抜き、膣内からペニスが全て抜けきれない程度に腰を引き、また一呼吸おいてゆっくりと中へ入れてゆく、非常にゆっくりとしたピストン運動を行っていた。 今までのクレイルは女性と交尾をする際、そんなことをしたことはなかった。 たとえどれだけ抵抗があったとしても無理矢理奥までねじ込み、滅茶苦茶にするように腰を振っていた。 だが、クレイルもそんなことをすればルルイアに負担をかけることをよく分かっていた。 だからこそそれほどまでに緩やかで、相手を気遣った動きになっていたが、それが功を奏したのだろう、少しずつだが膣内の滑りが良くなり、半分ほどしか入らなかったペニスもすんなりとほとんどが入るほどになっていた。 それと同時に、クレイルの方も感じることがあった。 ルルイアを気遣いながら交尾を行っていると、ルルイアの膣内はとても熱く感じた。 熱く、溶けた鉄のようにも感じるが、少しずつ前後するクレイルのペニスにしっかりと絡みつくような感覚も味わっていた。 それは今までの交尾ではクレイルが一度も感じたことのない感覚だった。 そのまま少しずつ腰の動きを早くしていきながら、前後の動きを大きくしていくと、ついにクレイルのペニスは彼女の膣の中へ完全に収まった。 完全に二人が一つになった時に、クレイルは思わず熱い吐息を漏らした。 今まで一度もそんな速さでその快楽を味わったことはなかった。 それどころか相手を警戒する必要性がないためか、クレイルの表情は恍惚とし、快楽から蕩けたようなものになっていた。 「ルルイア……。気持ち良いかい?」 「うぅん……。確かに気持ちいいんだけれど……。一度抜いてくれないか?」 クレイルは今まで最高の快感を味わっていたためか、思わずルルイアにも聞いたが、彼女の反応はイマイチといった所だった。 そしてクレイルは少しだけ残念そうな顔をしてルルイアの秘部から自らのペニスを引き抜いた。 するとルルイアは今まで見せたこともないような、恥ずかしそうな表情を見せてからゴロンとその場に仰向けに寝転んだ。 「正直、昼に襲われた時の方が送まで届いてた気がするんだ。だから……その……」 そう言ってしどろもどろになっているルルイアは、視線を大きく逸らして顔を真っ赤にしていた。 それを見てクレイルは少しだけ笑った。 「淫乱だなぁ。でも、可愛いよ。ルルイア」 「ち、違っ!?」 起き上がろうとしたルルイアにクレイルは、すぐに覆い被さり、それを阻止した。 そして真っ直ぐに瞳を向け合った後、キスをしてしっかりとルルイアを抱きしめた。 「もっと気持ち良くしてあげる」 そう言ってクレイルは腰にグッと力を入れて、ルルイアの秘部へペニスを力強く挿入した。 ジュプリと僅かに水音が聞こえ、それと同時にルルイアが聞いたこともないような可愛らしい声で嬌声を漏らした。 「へぇ……そんな可愛い声も出るんだ」 「か、可愛いわけないだろ!? 馬鹿か!?」 顔を真っ赤にしてルルイアはそう反論するが、繋がっているクレイルには彼女の本当の反応も分かっていた。 クレイルが『可愛い』と言った時、明らかに膣内が締まり、ペニスの快感が増した。 「可愛いよ。君だって女の子なんだ。可愛くないわけがない」 クレイルがそう言うと、ルルイアは顔から火でも出そうなほどに真っ赤にし、よく分からない表情になった。 しかし、明らかにペニスは先程よりも強い圧迫を受けていた。 そこでクレイルは少しだけ意地悪そうな笑顔を浮かべて、ルルイアの顔の横まで自分の顔を下ろしてしっかりとまるで抑えるけるように抱きついた。 そして耳元で小さく『可愛いよ』と囁きながら、いつものような早い間隔のピストン運動を始めた。 クレイルの予想通り、ルルイアは先程とは打って変わって嬌声を上げながら乱れていた。 ルルイアが言っていた通り、クレイルのペニスが先程よりも深く、一番奥まで彼女の中を突いていたこともあり、更にクレイルの言葉責めと、激しくも愛の篭ったピストン運動はあっという間に彼女を絶頂の淵まで上り詰めさせていた。 「止めてくれ!! ダメだ!! おかしくなるぅ……!!」 必死に抵抗しようとしているルルイアを無視してクレイルは必死に腰を振った。 今までそれほどに乱れた女性を見たことはなかったが、クレイルの経験上、それはきちんと気持ちが良いから起きている状況だというのを理解していた。 「~~っ!?」 そうしている内に、ついにルルイアは絶頂を迎え、体を大きく反らして悲鳴のような嬌声を上げ、体を震わせた。 「ル、ルルイア!? 大丈夫!?」 クレイルの方も絶頂が近くなっていたが、今まで一度も見たことのなかった反応をルルイアが見せたため、思わず行為を中断した。 ルルイアは息を大きく荒げながら、ぐったりとしていたが、小さく頷いていた。 それを見てホッとしたのか、クレイルはもう一度しっかりと抱きしめた。 そしてルルイアが絶頂に達したのにも関わらず、クレイルも一気に最高速で腰を振り、彼も絶頂を迎えようとしていた。 不意打ちな上に、既に絶頂に達しているルルイアはもう一度大きく乱れながらクレイルの行為が終わるのをただ待つしかなかった。 グチュグチュと泡立った愛液が掻き出される卑猥な音を立てながら、クレイルも表情を大きく崩しながら彼女の一番奥で彼の精液を全て放った。 ドクンドクンと脈動がルルイアの中で伝わり、熱いもので満たされてゆくのが分かったが、クレイルの無慈悲な愛でルルイアはそれどころではなかった。 「ハァ……ハァ……。意地悪……」 「ごめんよ……。でも、可愛いのは僕の本音だ。だから……怒らないでくれよ」 「……お前なら、言われても許せるよ」 そう言って二人はもう一度、優しくキスをした。 それから十数分ほど経って、二人はきちんと座り直して話し始めた。 他愛もない話から、今までのこと、そしてこれからのこと……。 「どうしようか、ルルイア。なんだか、やっと心を許せる人に出会えた気がするけれど……」 「分かってる。オレだってクレイルともっと色々話したい……。だが、もう時間がない……」 二人ともとても悲しげな表情を見せて、森から僅かに覗く月を見つめていた。 クレイルは既に街の賞金稼ぎ達から追われている身だ。 森に彼らが来るのも時間の問題だ。 そしてクレイルとルルイアが一緒にいるのが目撃されれば彼女もただでは済まなくなるだろう。 「何処か遠くに逃げないか? オレもお前も強いんだ。絶対に誰も近寄らないような場所まで……」 「無理だよ。僕の名前が知れ渡り過ぎてる。森から移動したのが分かれば、それなりに腕のある賞金稼ぎ達が世界中を探し回る。そうなれば、僕らだけじゃなく、他の悪タイプ達まで巻き添えになってしまうよ……」 そう言って二人は無言になった。 静かな森にはただ僅かに風にそよぐ木々の音が響くだけで、喧騒の音は近づいていなかった。 「生きたいなぁ……。僕にはもう、その権利もないのかもしれないけれど……」 「悪タイプの時点でないのさ……。もしも……俺たちだけが平和に暮らせる場所があったらなぁ……」 ルルイアのそんな言葉を聞いて、クレイルは少しだけ頬を緩めた。 「あー……。そういえば一つだけ思い出したよ。ずっと昔に思った夢を」 「夢?」 「『悪タイプだけの国』だったかな? 世界にいろんな町や国があるように、悪タイプだけが住める場所があったらなって……。まあ、夢でしかないけれどね……」 そう言ってクレイルは自傷気味に笑った。 そんなクレイルを見てルルイアは微笑んで見せた。 「どうせ死ぬんだ。なら罪滅ぼしも含めてさ、オレ達で最後にできる限り夢を叶えてみないか?」 そう言われてクレイルはただ微笑んでいただけから、微笑みつつも真剣な表情になった。 「そうだな……。ルルイア。僕に少しだけ時間をくれ。本気で考えてみるよ」 そう言われて冗談半分だったルルイアも真剣な表情で頷いた。 **悪のハーメルン 4 [#qdbba7d0] 喧騒も治まり、夜の静けさと松明の明かりだけが際立つ街を、ルルイアが歩いていた。 街は静まり返ってはいるものの、その険悪な張り詰めた空気はそのままだった。 その道を歩くことさえ居心地の悪いといった様子の彼女は、いつもの張り詰めた表情よりも更に厳つい表情だった。 「ルルイアだ! 戻ってきたぞ!!」 外で見張りをしていた一人の賞金稼ぎがルルイアを見てそう叫んだ。 すると酒場からどっと賞金稼ぎ達が溢れ出した。 あっという間に彼らはルルイアを囲むと、質問の嵐となった。 誰が話しているのかすら判別ができないが、皆聞きたいことは一様だった。 「クレイルの野郎をぶっ殺したのか?」 「無理だった。捕まえられなかったどころか、オレも襲われたよ。視界が悪い上に幻影まで使う。不意打ちとなればオレもどうやら到底敵う相手じゃなさそうだ」 ルルイアは思わず苛立ちを顔に浮かべてしまいそうになったが、ぐっと堪えた。 そう彼女が伝えると周囲にいた者たちは一様にざわめいた。 「あいつ……コッチの気もあるのかよ……。それなら俺は追いかけるなんて絶対に嫌だぜ?」 「言っておくがオレは女だ。奴も男まで襲う趣味はないとさ。良かったな? さっさと俺の代わりに追いかけりゃあいいだろ」 彼らの内の一人の言葉にルルイアは少しの苛立ちを込めてそう返した。 すると、一同はかなり驚いた表情を見せた後、笑ってみせた。 ルルイアとしてはそういった反応は慣れていたためか、特に何かを言い返すこともなかった。 「あと……奴からの伝言だ。いや、交渉だったか?」 「交渉? なんて言ってたんだ?」 「あの森に悪タイプを集めろだとさ。それで国を作るそうだ。だから三ヶ月の間、悪タイプは殺さずに森に寄越せだと。その後はお互いに不干渉が条件だと言っていた。交渉が決裂したら分かってるだろうな? だとさ。そして、この言伝を世界中に伝えて徹底させろだと。全く……完全に舐めきった奴だが、条件が条件だ。オレはそちら側に乗ることにした。どう足掻いても敵う相手ではない上に、オレにとってもメリットがある」 「お前もクレイルの野郎もふざけてるのか? ……つっても、首を横に振ることは許さないんだろ?」 「言っただろ? 奴は交渉が決裂したのなら、手始めにこの街から潰していくと言っていた。もちろん、オレも決裂したのならお前らを全力で潰す」 一同はその条件を聞いて僅かにざわついたが、ほとんどの者が諦めたような納得の仕方をしていた。 「テメェ……一応、力は認めてはいたんだがな……。所詮は悪タイプか。ぶっ殺してやりてぇ所だが……犯された相手に救われたな糞ビッチ?」 「殺り合うか? 言っておくが負ける気はしないぞ?」 その中からオーダイルがそんなことを言いながらルルイアの前に立った。 体格の差は歴然で、明らかにオーダイルの方が有利に見えたが、ルルイアの言葉通り、その気迫からかオーダイルの方がたじろぐほどだった。 同業者という仲間意識は一転、あっという間にその場にも新たに険悪な雰囲気が出来ていた。 誰の顔を見てもなにかしろ言いたげな表情だったが、それを口にする者はいなかった。 結局、そのまま誰も声を出すことはなく、ルルイアはその場を去っていった。 「結局はてめぇもクレイルのグルだったんだな! 覚えてろよ!」 去り際に何か罵声が聞こえた気がしたが、もうルルイアにとってはどうでもいい事だった。 「クレイル……。暫くの間、お別れだな。だが、オレの気持ちが変わることはないよ……」 そう誰にも聞こえないように呟いて、夜の帳の降りた街を森とも違う方へ駆けていった。 ――ルルイアが街へ来る少し前、彼女はクレイルと話し合っていた。 「ひとまず思い付きはしたけれど……。あんまり気が進まないんだよね……」 「だが案が出たんだろ? なら聞かせてくれ」 クレイルの案はこういうものだった。 ルルイアにはクレイルに負け、犯されたことを演じてもらい、彼らの焦燥感を煽らせ、そこから先程の交渉を持ちかけるといったものだった。 クレイルとしては、ルルイアにはまだ女であることをカミングアウトして欲しくなかったのだが、彼女としてはクレイルをけなされたことに腹が立ったのだろう。 「それと……。期間の三ヶ月の間、君には世界を巡ってみんなを集めてほしい」 「なんでだ!? オレは嫌だぞ!?」 「……それは嬉しい限りだけれど、できれば僕も君には幸せになってもらいたい。色々ありはしたけれど、今日出会って、今日一日だけで好きな人を決めて欲しくはない。それに、彼らが本当に約束を守るとも限らないからね。できればそれなりに名前が知れてて、同じ悪タイプである君が動いた方がより効果的かな? って思ったんだ」 「確かにそれは一理あるな。だけど、オレはこんな性格だ。後にも先にもオレみたいな奴のことを好きになってくれる物好きはお前ぐらいだよ」 「だとしてもだよ。お願いできるかい?」 「寂しいけれど……。それで皆が救われるのなら願ったり叶ったりだな。分かった」 「ありがとう。それと、君が戻ってきた時に、もう一度返事を聞くよ。だからそれまでは、僕はこの森を守りつつ、やってきた悪タイプのポケモンたちに説明していくよ」 そうしてルルイアは森を出て、街へ向かった。 もう一度出会う日のために、悪タイプたちの理想郷のために……。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ それから数日と経たない内に、最初の数名の悪タイプポケモンが森を訪れた。 森の中を彼らは不安や恐怖に駆られながらも、ゆっくりと歩いていた。 「止まれ。お前らは何者だ?」 「ひっ……!? で、出た! あ、あんたがクレイルなのか?」 彼らの前に異様な雰囲気を纏ったクレイルが現れたため、思わず身を縮めていた。 完全に怯えきった彼らの前にいたクレイルは次の瞬間、煙のように消え失せていた。 「その様子だと、君達無理矢理ここに送り出された感じか。とりあえずようこそ」 そんな声が聞こえたかと思うと、今度は上からクレイルが飛び降りてきた。 そしてクレイルは続けてこの森のことと、彼が今考えている計画についてにこやかに、そしてできる限り優しく説明した。 彼らはどうやらクレイルの住む森とは街を挟んで反対側にある洞窟に住んでいたニューラだったそうだ。 いきなり街の人達に取り押さえられて、有無も言わさずにここに放り込まれたと言っていた。 「いやぁ……でも本当に良かった。あんたが話で聞いていたよりも優しそうな人で」 「優しそうに見えるだけだよ。僕だって立派な大罪人だ。僕に気を許す必要はないけれど、できることなら手伝って欲しい」 「言われるまでもないよ。もしも貴方の話すような世界ができれば、もう色々なものに怯えながら暮らさなくてもよくなるんだ。是非手伝わせてくれ」 そう言ってクレイルとニューラ達はニッコリと微笑んで握手を交わした。 それからもほとんど毎日のように虚ろな目をしたポケモン達が、森へまるでゴミでも捨てるかのように送り込まれ続けた。 しかし、中にはクレイルのような、妙な余裕にも見えるヘラヘラとした感じのポケモン達も訪れていた。 「あんたがクレイルか。オレはヴェリンだ。ルルイアの奴に聞いたが、なかなか面白いことをやってんじゃねぇか。何処に居てもいずれはどうせ死ぬんだし、お前の御伽噺に付き合ってやるよ」 「『大泥棒ヴェリン』か! 君の噂は僕も聞いたことあるよ。それと、言っておくけれど、僕は今回の事は御伽噺で終わらせる気はないよ」 ヴェリンと名乗ったヤミラミと、クレイルは驚きと喜びに満ちた表情を浮かべながら握手を交わした。 それからもチラホラと名のあるポケモン達がクレイルの住んでいる森へやってきた。 各地の街から半ば強制的に悪タイプのポケモンは送り出され、それの中にまとまられてただの悪党の別のタイプのポケモンも送り出されていた。 もはや彼の住む森は静寂さの欠片もなく、まるで収容所のように日を追う毎に人が増えていったが、以外にも彼らは楽しそうだった。 一月も経つ頃にはルルイアの献身的な声かけもあってか、各地で名を馳せていた有名な犯罪者も自ら足を運ぶようになり、同様にただの悪タイプも自分から集まり始めていた。 「奥に実のなる木の群生地があるんだろ? ならその辺りはそのまま残そうぜ」 「きちんと街道は整備してさ、石畳なりにして街にしたいけど、折角ならこの森の感じも残したいよねー。私、森とか長く住んでたから大好きだし」 「炭鉱みたいな洞窟は掘っていいか? 俺みたいなのは宝石が主食だからさ」 元々、世間から爪弾き者として虐げられていた者たちだからだろうか、集まったポケモン達は悪タイプであろうとそうでなかろうと、積極的に国を作ることに参加する者と、逆にクレイルの考えを全否定して去っていくものに分かれた。 そうして残った者達は少しずつ、夢の形を具現化していき、笑い合っていた。 そして、あっという間に三ヶ月が経っていた。 「クレイルー!! 帰ってきたぞー!!」 「ルルイア! 久し振り! 元気にしてたみたいだね!」 全力で駆けてきたルルイアはその勢いのまま、クレイルに飛びついた。 クレイルはそんなルルイアをきっちりと抱きとめて、その勢いでそのまま地面に倒れこんでいた。 嬉しそうに抱き合う二人はとても嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。 「へぇ~……二人ってそんな関係だったのか」 「男同士のカップルかよ……」 そんな様子の二人を見て、周囲にいた人たちが一様にどよめいていた 「オレは男じゃねぇよ! 女だ!」 「あら? クレイルが女だって気付いてなかったの? アタシは初めて会った時の時点で気付いてたけれど……」 女性陣を除き、その場にいた男性は驚きの表情を隠せていなかった。 どうやら同性にはルルイアの性別はバレていたようだが、男性はほとんどが彼女の性別に気が付いていなかったようだ。 そんな他愛もない話をしながら、笑い合い、その日もゆっくりと日が沈んでいった。 「なあ、クレイル。お前の返事を聞かせてくれ」 「返事? 僕、君に何か質問されてたっけ?」 「鈍いな。オレが聞きたいことなんて一つしかない。なんたって三ヶ月経ってもオレの思いは決して変わらなかったからな」 「ああ、そのことか。ごめんね」 クレイルのその返事にルルイアは少しだけドキッとした。 ルルイアの気持ちは変わらなかったとしても、クレイルの気持ちまで変わらないとは限らない。 覚悟はしていたが、それでもルルイアは少しだけ悲しそうな表情を見せた。 そんな表情のルルイアに、クレイルは不意打ちのように唇を奪った。 「君の気持ちが変わらないことは分かっていたことなのにさ、長い間ご苦労さま」 そう言ってクレイルが微笑むと、ルルイアは少しだけ目に涙を貯めてから、顔を真っ赤にして横に背けた。 それからルルイアは一つ深い深呼吸をして、クレイルに覆い被さるように襲いかかった。 「わー!! 待って待って!! 周りを見て!!」 「なんで周りを? ……!!」 そう言ってルルイアが周りを見ると、辺りにはにはニヤニヤとした野次馬たちがおり、二人を囲むようにして見ていた。 それを見てルルイアはさらに顔を真っ赤にするが、周囲にいたポケモン達は彼女たちのことを気遣ってか、黄色い声援を送ってその場を去っていった。 「痛い! なんでどつくの!」 「気付いてたのに、オレをそんな気分にさせた罰だ」 そう言って前足で何度か横腹の辺りを攻撃した。 それからは流れるように二人だけの世界になっていた。 ルルイアは顔を赤らめたまま、クレイルにゆっくりと口付けをした。 軽いキスからそのまま自然に舌を絡めて、深いキスへと移り、お互いの舌の感触を存分に味わった。 しっかりと密着しているため、次第に高鳴っていく二人の鼓動が互いの体内へ響いていた。 だんだん早くなっているようにも感じたが、それよりも互いの鼓動の速度がゆっくりとズレがなくなっていき、気が付けば一つになっているような気がした。 「フフ……。もう固くしてるな?」 「いや、この状況で興奮しない方が異常だろう? というかそろそろどいてくれない?」 「嫌だ。折角ならオレが上の方がいい」 えぇ~といった表情を見せるクレイルに対して、いつぞやのお返しとでも言わんばかりにルルイアは意地の悪い笑顔を見せた。 そのままルルイアは少しだけ腰を浮かせてから、クレイルのペニスに自分の秘部を宛てがい、ゆっくりと腰を下ろして飲み込んでいった。 「えっ? えっ? なんでそんなにすんなり入るの?」 「そりゃあ……。もうヤリたくて仕方なかったんだよ……。言わせるなよ、恥ずかしい」 それほどに興奮していたのだろう、ルルイアの秘部は前戯もいらないほどに十分に濡れていた。 しかし、それは口には出していなかったが、クレイルも同じで、既に最大まで勃起したペニスがほぼ全部ルルイアの膣内に収まり、ほどよい刺激を受けているためか、かなりの快感を味わっていた。 二人とも肌を合わせることは疎か、出会ったのすら久し振りのためその興奮は異常なほどに高かった。 そのままルルイアはクレイルを真似て腰を上下させるが、思っていたよりも快感の波が強かったのか、嬌声を上げる度に少しずつ動きが小さくなっていた。 「無理しなくてもいいよ? 慣れてないんだし、君は結構こういうことは弱いみたいだからね」 「うるさいな。オレだってお前に気持ち良くなってもらいたかっただけなのにさ……!?」 「大丈夫、こういうのは男の仕事」 そう言ったかと思うと、クレイルはくるりと綺麗に転がって二人の上下関係を入れ替えた。 クレイルが上になった途端にルルイアはまた顔を赤くし、よく分からない表情をしていた。 ルルイアとしてはクレイルに対して優位に行為を行いたかったようだが、クレイルの言った通り、ルルイアは攻められるのが苦手、もとい好きで堪らないらしく、普通よりも感じてしまうようだ。 常日頃気張っているせいか、自分にそんな一面があることをルルイアは認めたくないが、クレイルの前でだけでは案外素直になっていた。 それ以降は結局暴れることもしなかった。 「いくよ?」 クレイルの問いかけにルルイアは一応、首を横に振って答えるが、もちろん問答無用でクレイルは引き抜きかけたペニスを一気に奥まで挿入した。 するとルルイアは声を押し殺しながら腰をビクンと跳ねさせた。 ルルイアが感じているのをクレイルは少しだけ嬉しそうに見つめてから、すぐにまた腰を動かした。 以前よりもペニスの前後運動に、ルルイアの膣内が絡みつくように感じたためか、その快感は凄まじいものだった。 一度のピストンで体が浮きそうになるほどの射精感が襲い、すぐにでも出してしまいたいと思う気持ちと、もっと彼女を悦ばせたいという思いが混ざり合っていた。 ジュプッジュプッと勢いのある水音がわずかに聞こえ、それをかき消すようにルルイアの押し殺したような恥ずかしげな嬌声が聞こえた。 「もう……限界……! 出すよ!?」 クレイルがそう聞くと、ルルイアはそれどころではないといった感じで、ただ必死に快楽を味わっていた。 それを見てクレイルは一気にペースを上げた。 それに呼応するようにルルイアの腰も浮き上がっていた。 「無理……! 無理ぃ!!」 そんな声が聞こえた瞬間に、ルルイアの中でクレイルのペニスは弾けるように精液を噴出していた。 同時にルルイアも大きく体を震わせて、絶頂に達していた。 ドクドクと脈打ち、ルルイアのお腹の中を精子が満たしていくが、それでも勢いは治まらなかった。 しっかりと抱き合い、大きく息を荒げている二人の息遣いにも混じるほどの音で、ブピュッと音を立てて二人の結合部の隙間からも溢れ出していた。 そこで二人は繋がったまま、大きく深呼吸をして息を整えた。 「気持ち良かった?」 「当たり前だろ。それよりもさ……もう一度シないか?」 「えっ? 流石に今出したばっかりだし……」 「そうか。ならオレが元気になるおまじないをかけてやろう。そこに寝な」 そう言われてクレイルは不思議そうな顔を浮かべながら、ルルイアの中からペニスを引き抜いた。 するとドロッと中に収まりきらなかった精液が溢れ出したため、ルルイアは少しだけ身震いした。 そのままクレイルが言われたように仰向けに寝たのを確認してからルルイアは、少しだけ舌舐りをして彼の股の間に顔を埋めた。 「ちょ!? ちょっと!!」 「ほろはは!(そのまま!)」 抵抗する間もなく、クレイルのペニスはルルイアの口の中へ吸い込まれていった。 そしてルルイアは飴でも舐めるかのようにペニスについたままになっていた精液を綺麗に舐めとり、乳に吸い付く子犬のように、舌を巧みに使いながらペニスをしゃぶり始めた。 あまりにも衝撃的な行為にクレイルは思わず言葉を失うが、その後訪れた強烈な快感に甘い息を漏らしていた。 左から巻くように舌をペニスに這わせたかと思うと、今度は右から這わせ、先端だけを吸い出すように舐ったりもした。 そんなことをされたため、あっという間にペニスは元通り元気を取り戻し、先端からは先走りの透明な液体が溢れ出していた。 するとルルイアはそれを待っていたかのように、さらに強く吸い出し始めた。 今度はクレイルが押し殺したような低い声で唸っていたが、それでもお構いなしに吸っていた。 口の中には精液独特の匂いと味が広がっていたが、ルルイアにとってはそれはとても甘美なものだった。 そのままルルイアは激しく頭を前後させてペニスを貪るようにしゃぶり続けた。 「出る! ルルイア! もういいって! 出る!!」 そんな声がきこえ、クレイルの抵抗を感じたが、より一層動きを早めるだけで、止めようとは一切しなかった。 そのままビクッと体を震わせたかと思うと、ルルイアの口の中には今までよりもより一層雄臭い匂いと味が広がっていた。 ルルイアの口の中でクレイルのペニスはあえなく射精を迎え、脈打ちながら次々と精液を噴出していた。 それをルルイアは次々と残さず飲み干していった。 ひとしきり出し切って、脈動が弱くなったのを感じると、ルルイアはようやくペニスから口を離して、息を荒げていた。 「汚いだろうに……」 「汚くないさ。それどころか美味しかったよ。さ、今度はもう一度こっちで味わわせてくれ」 そう言ってルルイアは少しだけ妖艶な笑みを見せてからゴロンと仰向けに寝た。 クレイルは小さくため息をついたが、その待っているルルイアを見ているととても色っぽく感じ、案外あっという間にその気になっていた。 もう一度クレイルはルルイアに覆い被さり、ゆっくりと先程よりも硬さを失ったペニスを挿入していった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 相当溜まっていたのか、二人はその後、三度ほど体を交わらせていた。 夜も深く、かなり疲れが溜まった二人は、体だけは近くの川で綺麗に洗い流し、クレイルがいつも寝床として使っている場所で眠ることにした。 元々一人で使っていたため、二人分の幅はなかったが、ルルイアにとっては好都合だったのか、しっかりと身を寄せ合って眠った。 それからおよそ二時間程経っただろうか、何かの喧騒の声に気付き、ルルイアは目を覚ました。 「クレイル……?」 それと同時に隣で一緒に寝ていたはずのクレイルの姿が忽然と消え去っていた。 それに気付いたルルイアは妙な不安に駆られ、森の中央へ向けて走り出した。 ルルイアはそこで異変に気付く。 この森は既に多くのポケモン達が身を寄せ合っているため、異様な静けさは無くなっていたはずだった。 だが、駆け抜けてゆくその森は、クレイルと出会った時のように静まり返っていた。 更に言えば、遠くでは明らかにこの場にいた者とは違う、声を感じ取っていた。 『何なんだ……? この胸騒ぎは……。頼む! 思い過ごしであってくれ』 そんな思いを胸にルルイアは森の中央の、僅かに他の道よりも開けた場所、クレイルと初めて対峙した場所まで出てきた。 少しだけ息を上げながらもその場には特に異常を感じなかったため、今度は街の方へ駆け出した。 不気味な喧騒が聞こえるのみで、昼には確かに沢山居たはずのポケモン達が、まるで夢か幻だったかのように消え失せていた。 駆け抜けてゆく内に、ついにルルイアはその不気味な声の正体に出会った。 月明かりすら遮るような鬱蒼とした森の中に、それらはこうこうと明かりを灯していた。 「貴様ら……!!」 「よう、『同族狩り』久し振りだな?」 奥歯を噛み締め、牙をむき出しにするルルイアの前には、松明を掲げたオーダイルたち賞金稼ぎの姿があった。 松明の数だけでも数えられないほど並んでおり、奥にもうっすらと松明に照らされた他の賞金稼ぎの姿が見えた。 「それがお前らのやり口か!!」 「馬鹿共がご苦労なことに悪タイプ共を一箇所に集めてくれたからな。お前らは一網打尽。悪の国だかなんだか知らねぇが、少しの間だけでも夢が見れてよかったな? けど残念だったな……俺達の方が一枚上手なんだよ」 「卑怯者共がぁ!!」 ルルイアはそう言って賞金稼ぎ達に飛びかかった。 相手は手練の賞金稼ぎ達、結果は一目瞭然……。 と思われたが、ルルイアの強さは彼らの比ではなかった。 派手に動き回るルルイアに対して松明を持っている二足歩行のポケモン達は松明を手放すわけにはいかず、防戦一方となっていた。 四足歩行のポケモンも応戦するが、それでもルルイアの強さは歴然だった。 最初こそは優勢だったが、流石に強さに大きな差があるといえど、そこを埋めるだけの数の差があった。 そしてついに怒りに任せて戦っていたルルイアが疲弊しきったのを見て、オーダイルが片腕で彼女を押さえつけた。 「やっと大人しくなったな。さて、お楽しみだ……」 「!! ふざけるな! 誰が貴様なんかに!?」 反論するよりも先にルルイアの口は布で塞がれた。 「お前には裏切られた上に、いいように利用までされたからな……。本来ならぶっ殺してやるところなんだが、女だと言ってたならそれ相応のお返しってもんがあるからなぁ? 気にしなくても、全部終わった後は綺麗さっぱり焼き払ってやるよ、この忌々しい森ごとな」 そう言うと、オーダイルは一気に体重をかけて押さえ付けた。 そしてそのまま彼女の秘部へオーダイルのペニスが宛てがわれた。 抵抗することすらできないルルイアの秘部へオーダイルの大きすぎるペニスが無慈悲に侵入してきた。 「くっ……! なんだ? 全然入りゃあしねぇじゃねえか。これじゃ楽しめそうにねぇな。まあ、無理矢理にでも広げるけどな」 「おいおい、ぶっ壊すなよ? 後の奴らのことも考えて加減しろよ?」 ギチギチと音を立てていると思える程にルルイアの秘部は無理矢理押し広げられていた。 あまりの痛みと悔しさに奥歯を更に強く噛み締めたが、オーダイルはそんなことはお構いなしに腰を動かし始めた。 先端の僅かな部分しか入っていないが、問題はそこではない。 ただただルルイアは悔しかった。 自分たちの生きる権利がそんな相手のことを何も考えてない奴らに蹂躙されることが……そしてクレイル以外の男の侵入を許したことが……。 「ちっ、あんまり気持ちよくねえが、まあ見せしめだ。中に出してやるからいい声で泣けよ?」 『嫌だ……! それだけは絶対に許せない! お願いだ! 誰か……! クレイル!』 そんな声が聞こえ、流石のルルイアも顔に恐怖の色が見えた。 そんな涙で少しずつ視界が霞んでゆくルルイアの前に、闇の中から現れたように見えた。 次の瞬間、凄まじい打撃音と共に異物の入っていた感覚が消え失せた。 それはまさしくクレイルだった。 闇の中から現れ、強烈な一撃をオーダイルにぶちかましていた。 不意打ちと強烈な一撃が合わさり、クレイルの何倍もありそうな巨体はそのまま後ろに吹き飛ぶように倒れていった。 その途中、間一髪だったのを伝えるかのようにオーダイルのペニスの先端から宙に精液が振りまかれていた。 「君たち……僕の大事な人に何してくれてるんだ? 殺すよ?」 その言葉には恐ろしい程の怒気と殺気が込められているのが誰にでも分かった。 恐らく、クレイルが初めて向けたであろう殺意はその対象を怯え上がらせるには十分だった。 たったその一言と、クレイルが現れたということ、そして彼らの中でも恐らくかなり強かったであろうオーダイルがたった一撃で吹き飛ばされたのを目撃した彼らは、一目散に踵を返して逃げていった。 「し、死ぬのはてめえらだよ! 炎に巻かれて死んじまえ!!」 そう言って彼らは松明を放り出してオーダイルを連れて逃げていった。 それを見届けたクレイルはすぐにルルイアの方へ向き直した。 「大丈夫かい? ルルイア」 「ごめん……! ごめん!! オレ……!オレ!!」 「とりあえず無事みたいだね。よかった……。ごめんよ、来るのが遅くなって」 声を押し殺して泣き始めたルルイアに、クレイルはただ優しく声をかけて抱きしめていた。 しかし、その間にも松明の日はあっという間に周囲の木々を燃やしていた。 「こりゃまたよく燃えるなぁ。松明かこの辺りの木に何か細工したな? ルルイア、さあ早く逃げよう」 「オレのせいだ……。オレがあいつらに関わらなければこんなことにならなかったんだ!!」 「大丈夫だよ。こうなることまで僕はきちんと予測してた」 悔しさから自分を責め始めたルルイアにクレイルがそう告げると、ルルイアはとても驚いた表情を見せて顔を上げた。 それを見てクレイルは最初に謝った。 「君は素直すぎるからね。悪いけれど、今回は君のその素直さも利用させてもらったんだ。わざと君には夢のことしか語らないようにして、情報を絞ったんだ。だから、最終的に彼らが悪タイプたちがこの森に人が多く集まれば一網打尽にしよう! だなんて考えてることぐらい予想できたよ。もちろんみんなはもう近くの安全な場所に避難してるし、そっちの誘導をしてから君に真実を話して一緒に逃げるつもりだったんだけどね……。君はどこまでも素直な人だ」 「意地悪! こんな時にまでオレに隠し事をするなんて!!」 「敵を騙すにはまず味方からだろ? そんなに怒らないでくれよ」 「だって! もっと他のやり方をすれば、森は燃えなかったかもしれないだろ!? 森があればすぐにでもオレ達の夢は実現してたんだ!!」 「言ったはずだよ。これ以外思いつかなかったんだ」 「でも……。これじゃみんなが暮らせる国なんて夢のまた夢だ……。みんながまた散っていくだけだ……」 「終わらせない。僕はここまで想定して『国を創る』と言ったんだ。大丈夫。みんな笑って暮らせるさ……。だから、今は生きるんだ。僕がこう思えたのも、今回の事を思いつけたのも……全部君のおかげだ。ありがとうルルイア。僕を愛してくれて……」 そう言ってクレイルは燃え盛る業火の中で、もう一度強くルルイアを抱きしめた。 そしてすぐに二人は立ち上がり、急いで森を駆け抜けていった。 ――翌日、森は跡形もなく焼け落ちていた。 後々、火の勢いが収まったのを見てオーダイルたちは森を確認しに来たが、彼らの予想通り、森にはいくつもの消し炭になった死体が転がっていた。 その日から数日掛けての大宴会が催されたが、話はこれで終わらなかった。 それから一経とうと、三年経とうと、焼け落ちた森に新たな芽吹きはなかった。 まるで焼き殺したポケモンたちの怨霊が、その地に留まっているかのように、森はいつまでもその姿のままであり続けた。 「これは悪タイプたちの呪いだ。近寄らない方がいい」 いつしか、誰もがその土地をそう噂するようになった。 クレイルが住み着いてから、誰も利用することのなくなった森は、今度は焼け落ちて、蘇ることのない死の土地となりまたも誰も近づけないようにした。 というのも、その死の大地に時折、その地を調べるために何人かのポケモンが入っていくのだが、誰一人として帰ってきたものがいないからだった。 死霊が生者をとり殺すとまで言われ、興味本位でも近寄る人が現れなくなった頃、その土地からは笑い声が聞こえるという新たな噂が流れ始めた。 まるで、悪タイプたちがそこで死んだことを忘れて、今も生きているかのような楽しげな声が聞こえるそうだ。 今日も、叶わなかった幸せな幻影は、確かにそこで生きている。 今日も幸せに……。 ---- **あとがき [#a607c5c5] どうもお久し振りです。COMというものです。 今回は自分の悪タイプ愛を詰め込んだだけの作品となりましたが、 嬉しいことに自分以外にも悪タイプが好きで堪らないという人が沢山気に入ってくれたおかげで準優勝できました。 余談ですが、自分はトゥーンテイストな作品に多い、悪者の趣味、『わるいこと』というのがあまり好きではありません。 『わるいこと』と一重に言っても、様々なことがありますし、何をもっての悪いことなのかが明記されていないので、 悪というものにも何をもってそれをしているのか、ということを自分の場合はきちんと書いています。 そこで、ポケモンにおける『あく』である彼らがタイプではあるものの、生まれた時点でそう義務付けられたのなら…… というifストーリーのようなものを書いてみました。 それでは最後に大会で頂いたコメントに返答をして、終わりです。 また書く機会があれば、そして読んでいただけたらまた逢いましょう(´・ω・`)ノシ とても良かったです >> ありがとうございます。 クレイルかっこよす >> かっこよかったですか! そう言ってもらえると嬉しいです! よかったです >> ありがとうございます。 悪タイプ美味しすぎか。クレイルやルルイアがその後どうしているのかが気になります。 >> 悪タイプ好きにはたまらんだろう? グヘヘ。 後日談的なものは、今の所予定はありません。 というか書ける時間がほとんどないので…… 機会とお話を考えられたら……という感じですので、あまり期待せずに。 面白かったです >> ありがとうございます。 すっげぇエロかったゾ^~ >> なんでホモが混ざってるんですかねぇ…(呆れ)。 ありがとうございます。 ---- **コメント [#qecab5f9] [[COM]]に戻る #pcomment(悪のハーメルン/コメント,10,below) IP:125.13.184.4 TIME:"2015-06-06 (土) 02:21:18" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"