*思い出殺し [#ab7780be] writer 墨州 ---- -0 病気は「体を蝕むもの」とイメージしていた。風邪をひいた時だって苦しかったし、僕の周りの友達もそうイメージしているらしい。 「うつ」と言う病気がある。僕はこの病気について知った時「これは病気じゃない」と思った。精神面で病んでいるのであって、体に害は無いからだ。 しかし、人間は病気と呼ぶらしい。精神を蝕む「心の病気」だからだ。 精神を蝕むか体を蝕む。これが、今の僕の中の病気のイメージ。 だとしたら、僕のは病気じゃないのかもしれない。そう思った。 「サク!! ライチュウのベルさんが人間に連れて行かれたの!!」 ベルさんは僕たちの親的存在。聞いた瞬間はショックを受けた。 「ベルさん、連れて行かれちゃったんだね・・・。」 数日後、僕はそんな言葉を聞いた。が、一つ疑問が浮かぶ。 「ベルって誰?」 こんなことがたまにあった。 -1 人間と違い、野生のポケモンは「学校」や「会社」などは存在しない。群れを作って森に住んだり、山に住んだりする・・・当たり前だ。 食べ物は自分で探す。敵が襲ってきたら逃げるか戦う。のんびり過ごせるけど、厳しい暮らし方。 僕が過ごしている群れはピカチュウやパチリスなどの小さい電気タイプのポケモンの群れ。人里から離れた山に住んでいる。 僕はピカチュウ。名前はサックス。親は元々居ない、友達と一緒に生きてきた。 「サク!」 雌のパチリスが僕の前に現れる。彼女の名前はメロフォン。親友かつ幼馴染の一人だ。ちなみにサクというのは僕のあだ名。 「リラ知らない?」 リラと言うのは僕たちの友達。雄のデンリュウだ。僕とリラとメロフォンは昔からの友達だ。 ちなみに僕とリラはメロフォンのことをメロと呼んでいる。彼女のあだ名だ。 僕はメロの問いに対して首を横に振った。 「そう・・・久しぶりに"あそこ"に行きたいんだけどな・・・。二人で行く?」 今度は頷いた。 メロの言う"あそこ"とは、僕たち三人の秘密基地みたいな所だ。 小さい頃に三人で見つけた洞窟の奥に、広い空間があった。上には大きな穴が開いて日の光や風が入ってくる。上は森になっているらしく、辺りは静かだ。僕たちはここを秘密基地にしようと決めた。 僕とメロは秘密基地に入った。 秘密基地の真ん中にはロケットがある。一口にロケットと言っても、僕たちが人間の生活に憧れて作ったガラクタの寄せ集めだ。 ロケットの前にリラが居た。僕たちに気付き、振り向いた。 「メロ・・・サク・・・。どうした?」 「ただ来たかっただけ。さっきサクと偶然会って、一緒に来たの。」 「そうか・・・。ロケット、仕上げる?」 僕とメロは首を縦に振った。 -2 ロケットを最初に作ろうと言ったのはメロだった。彼女は好奇心旺盛で、特に人間の物に興味を持った。そのせいで秘密基地の中は、レコード、鏡、ぬいぐるみなど、近くのゴミ捨て場から拾ってきた物が置かれている。 メロは僕たちにロケット製作を持ちかけてきた。僕は軽いノリで賛成。リラは最初は断ったが「頭が良いリラは必要だ」と、メロが強引に引き連れた。 ロケットはゴミ捨て場にあったポスターを参考につくることになった。材料もゴミ捨て場から鉄板や木材など、仕えそうなのを選んで秘密基地に持ち込んだ。 リラが半分てきとうに書いた設計図を基に、三人でガラクタを組み立てて行った。 三人は分かっていた。100%飛ばない事を。 だけれどそれで良かった。何か上手く説明できないけど、三人で飛ばないロケットを作ることが無性に面白かった。 乗り気でなかったリラも最後は楽しそうに指揮をとり、メロも笑い、秘密基地の中は笑いで満たされていた。 -3 そして今日。完成した。 不恰好ながらも、どこかたくましいロケットを見上げて、僕たちは達成感の笑みを浮かべた。 「やったな。」「やったわね・・・。」 僕たちはロケットをずっと眺めていた。リラとメロと僕は大の字に寝転がって、今も空に飛び立ちそうなロケットを眺めた。 でも、僕は目標に到達するのが怖かった。 三人で楽しく作ったロケットは完成してしまい、三人で笑う時間が消えてしまった・・・そんな気がしたからだ。 だからその夜、僕は金槌を持ってこっそりと秘密基地に行き、ロケットを壊そうとした。 僕と同じく金槌を持ったメロを見た時、二人で笑ってしまった。 その夜、僕たちはリラに内緒でロケットを壊した。 -4 次の日の昼、僕とメロはリラの所へ行った。 メロが「ロケットが壊されてた!!」と演技をするというので、僕は笑いを堪えながら一緒にリラの所へ走った。 リラはどこにも居なかった。その日は一日中山を探していたけれど、リラを見つけることは出来なかった。 その時は別に変に思わなかった。大きい山だから、二人がかりで探しても見付からない時もある。 リラには明日に報告することにした。僕は明日から始まるロケット修復を楽しみにした。 次の日、雌のデンリュウの前で泣いているメロを見つけた。僕はそっと近づく。 「サク・・・」 メロは僕に気付き、涙を拭った。 「リラが・・・人間に捕まえられたって・・・」 リラ? 誰? メロが言うには、僕たちの親友。雄のデンリュウらしい。 首を傾げる僕に向ってメロは必死に説明したが、リラと言うデンリュウの顔が頭に浮かぶことは無かった。 いくら説明しても首を傾げる僕を見て、メロは再び泣き出してしまった。僕を強く抱き締めて、悲しみを僕にぶつける様に。 -5 その日の夜。僕は秘密基地に居た。 壊れたロケットを前にして、リラと言う名前を頭の中に繰り返していた。たまにこう言う現象が起きた。皆が知っている名前を、僕だけが知らない。 「○○さんが人間に捕まった」と聞いて、メロや他の群の人たちは驚いたけど、僕だけ驚かない。驚けない。 なんなのか分からない。忘れているのか、皆が僕をからかっているのか。 ロケットの設計図が足元に転がっていた。 何気なく拾い、眺めてみると、設計図の端っこに・・・ By サク メロ そして、 リラの名前があった。 -6 次の日の朝。 秘密基地から出て森の中を歩く。次第に異変に気付いた。 何時もなら必ず目にする、群のポケモンたちが居ない。僕やメロに手を振ってくれている大人や子供が居ない。声すらしない。 不気味なほど静かな森を僕は一人で歩いていた。 人間が作った道路に出た。 何時も道りの誰も通らない道。ここにも皆の姿は無い。 その時、トラックが数台僕の目の前を通っていった。モンスターボールの様な絵が描かれたトラックが数台、延々と続く道を走り、僕から離れていって・・・小さくなっていった。 -0 朝、僕は目覚める。 群から離れ、この山で一人で住む僕にとって早起きは重要だ。 誰も居ない森で気の実をとって、それを食べて・・・。 この後何をするのか分からない。何時もやっていることが思い出せない。 僕の住処には謎の鉄くずがある。ロケットみたいな形をした、ガラクタだ。 親切に設計図も置いてある。誰がこんな所においていったのだろう? 僕ではない。僕はこんな物一人で作れるわけないから。 fin ---- こんな物語を沢山書いてみたい・・・。 はじめましての方ははじめまして。墨州と言う物です。 小説を読んでくださってありがとうございます。 今回書いたこの作品は、大事な事は深く書かないでみました。 主人公の病気は何なのか。夜、秘密基地で何故二人は一緒にロケットを壊したか。最後、皆はどこへ行ったのか。 答えは文の中に隠されてます。 そして今回も文章力が残念なことに。 後半少し飽きてしまいました。スミマセン。 こんなあっふぉーな私ですが、今後よろしくお願いします。 ---- #pcomment() IP:202.253.96.241 TIME:"2012-06-23 (土) 14:00:14" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E6%80%9D%E3%81%84%E5%87%BA%E6%AE%BA%E3%81%97" USER_AGENT:"SoftBank/2.0/001SH/SHJ001/SN353012043858651 Browser/NetFront/3.5 Profile/MIDP-2.0 Configuration/CLDC-1.1"