ポケモン小説wiki
忍蛙式閨房術 の変更点



文章:[[朱烏]]
挿絵:[[type>https://www.pixiv.net/member.php?id=477256]]


本作品は『ポケモン小説wiki -第二回変態選手権エキシビション-』に寄稿したものです。
官能描写あり。



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 忍者。仕える主は戦のたびに変わる。敵陣に入り込んでの工作活動、諜報活動、暗殺。まさしく忍びし者。こと、今日の激しい戦乱の世では、その存在感は姿が見えずとも着実に大きくなっていった。
 各地方の大名は、いかに優秀な忍者を手もとに置いておけるかに苦心していた。それとて、戦が終われば彼らは音もなく去ってしまう。それが主を持たない忍者というものであるから、致し方なし、である。
 しかしながら、仕える主は持たずとも、独り身では生活がままならず、また修練も同じ身の上のものが一緒にいなければ成り立たない。ゆえに、強い忍術使いを頭領として、それぞれの忍者は頭領の下で集団生活をしている。たいていは、忍者屋敷と呼ばれる地味だが大きな建屋が、誰も立ち入らないような山奥にひっそりと立っており、そこで忍術の修練に励んでいる。そしてある日大名同士の緊張した関係の間に駆り出され、夜の闇に紛れて与えられた任務を遂行する。
 そんな世界の裏側で生き、誰にも知られずに死ぬ忍者の集団が、確かに一つ、ここにもあった。

「やあっ!」
 敵に見立てた竹の的に、三つの水手裏剣が風を切り裂いて飛んでいく。しかし、いずれも的を大きく外れて、はるか後方の竹林の中に飛沫をあげながら消えていった。
「むう……水手裏剣の精度は相変わらずだな」
「と、頭領! これはただの肩慣らしというか……その……」
 言い訳虚しく不本意な表情でだんまりを決め込んだのは、一匹のメスのゲッコウガだった。そしていつの間にか彼女の後ろに立っていたのは、頭領のニョロボンである。
「屋敷の裏で一匹で練習するよりも、表で皆とともに訓練していたほうがいいのではないか?」
「それは……そうかもしれませんが」
 ゲッコウガが渋る理由はニョロボンにはしっかりとお見通しである。ゲッコウガは自らの低い技の精度を皆に晒すのを怖がっているのだ。しかし、ケロマツの頃から一緒に過ごしてきた屋敷の忍者たちには周知の事実であるし、今さら恥ずかしがるも何もない。
 ニョロボンがゲッコウガの心情を理解しないこともなかった。忍者屋敷に住むポケモンの九割がオスであり、数少ないくノ一忍者のゲッコウガとあっては、まわりのオスたちに舐められたくないという気持ちもあるのだろう。
 ニョロボンは思案する。どうしたらゲッコウガが一人前のくノ一になれるのか。頭領として、ゲッコウガに限らず、屋敷の忍者全員を一人前にする責務がある。
「ゆけっ!」
 再び的当てを開始したゲッコウガの後姿を、ニョロボンはまじまじと見つめる。
 しなやかな肢体。引き締まった腹部に、発達した尻と脚。胸が少し出ているのは実にメスらしい。誰が見てもゲッコウガは非常に魅惑的な身体つきをしている。実際、ゲッコウガは気づいていないかもしれないが、何匹かのオスがゲッコウガの身体を見て色々と品評しているのをニョロボンは知っていた。そういうことは老若問わずオスのさがであり、ゲッコウガに報せるつもりはなかった。
 むしろ、同世代のオスたちが未だにゲッコウガに手を出さないのが不思議なほどだ。夜這いをかけられたとか誰それと付き合ってるだとか、その手の話はまったくと言っていいほど聞かない。近頃のオスはどうも奥手らしい。
 ニョロボンといえば、父と娘ほどの年齢差があるにも関わらず、ゲッコウガに劣情の念を抱いている。彼自身は、若くてハリのあるゲッコウガの身体は同世代の若者に譲るべきだとは思っている。だが当人たちにその気がないのであれば多少味見してもよいだろうと、よこしまな魂胆を胸に秘めているのだ。
「ゲッコウガよ」
「何でしょう、頭領……?」
 腰に手を回してきたニョロボンに、ゲッコウガはきょとんとした顔でニョロボンを見やる。その手に己の官能的な肉づきを確かめられているとは露とも思っていないようである。
「何も技をうまく使うだけが忍者ではない。技を使わずとも諜報、工作活動は可能であるし、考えうるかぎりすべての手段を用いて敵を陥れるのが優秀な忍者というものだ」
「はあ……」
 それは暗に技を使う才能がないから練習は無意味だと言っているのだろうかと、ゲッコウガは落ち込む。ニョロボンの置く手が腰から尻に移っていることに気づいているのかどうかは怪しい。
「忍者としての自分の可能性を探ってみる気はないか。例えば……くノ一にしかできない術を使えるようになるなんてどうだ」
「くノ一にしかできない……?」
 ゲッコウガは目の色を変える。あまり才能に恵まれていない自分でも、忍者としての活路を見いだせるのではないかという期待。ものの見事にニョロボンの策略にはまっている。
「興味があるなら、今晩我の部屋に来るのだ。ああ、間違っても他の忍たちに勘づかれぬように」
「わかりました!」
 あでやかな身体とは反対に、心は年相応の無垢な少女そのものだ。水手裏剣の練習を止め、軽い足取りで屋敷に戻っていくゲッコウガを見ながら、ニョロボンは一瞬罪悪感に駆られたが、すぐに振り払った。
 オスを戦わずに御す方法は、同性には会得しえない。メスでなければいけないのだ。ニョロボンの中で、ゲッコウガを立派なくノ一にしたいという頭領としての責任と、若いメスの身体を存分に味わいたいという本能がせめぎ合っていた。

   ◆◆◆

 たてつけの悪い自室のふすまを、音を立てないよう慎重に開ける。すっかり深い眠りに落ちている同朋たちを横目に、私は廊下へと這い出た。
 夜中に出歩くことを咎めるものなんて誰ひとりいないし、気配を殺しながら行動する自分がおかしくてたまらなかった。ただ、頭領が他の者に気づかれないようにと言うのならしかたない。
「どんな術を教えてもらえるんだろう」
 もしかして、この屋敷に受け継がれる秘伝の禁術とか、はたまた己一匹で敵軍を壊滅されられるほどの強大な術とかを教えてもらえたりするんだろうか。
「……いや」
 それはない、と思う。くノ一が習得できる技なのだから、そんな仰々しいものではないはず。どんなものかは見当もつかないが、きっと自分の役に立つ素晴らしい術だと信じたい。なんたって頭領が直々に教えてくれるのだ。こんな機会は滅多にあるもんじゃない。
 軋む階段と壁に見せかけた隠し扉を何度も行き来して、ようやく頭領の部屋のある階に辿り着いた。先に見える頭領の部屋からは、ふすまの隙間から行灯のぼやけた光が漏れ出ている。
 部屋の前に正座し、「頭領、失礼いたします」とあいさつして、ふすまを左に引いた。
「よく来た、ゲッコウガ」
 部屋の隅に配置されたいくつかの行灯は、いやに明るく部屋の隅々まで灯している。真ん中には一枚の布団が敷かれていた。
「お、お休みになられるところでしたか」
 既に準備されていた寝具に、少々焦る。来るのが遅すぎて、頭領は寝ようとしていたのかもしれない。
「いや、これでいいのだ。入れ」
 これでいい? 忍術のために布団が必要ということだろうか。これから頭領が何をしようとしているのか、推し量ることすら私には困難だった。
 頭領の座している布団の上に、私も座る。頭領の眼は、向かい合った私の眼を真っ直ぐに見据える。お腹の渦巻きはじっと見ていると目を回してしまいそうで、私は顔を伏せた。
「今宵ゲッコウガに教授するのは――房中術だ」
「ぼう……ちゅうじゅつ? それは……どのようなものなのですか?」
 字もわからなければ聞いたこともない。まさか本当に秘術中の秘術の類――?
「海の向こうの大陸が発祥の術が元だが、それについては説明は省こう。ここで教えるのは実践的で、戦わずともオスを戦闘不能にできる……そんな術だ」
「オスを戦わずとも……? 可能なのですか、それは?」
「可能だ」
 耳当たりのよい言葉ではある。しかし、いかに頭領の言葉といえど半信半疑になる私がいる。
「ふふ……訝しがっているようだな。なんてことはない。相手のオスを自分の身体に夢中にさせ、骨抜きにしてしまえばいいのだ
」
「自分の……身体に?」
「ふむ……時にゲッコウガ、タマゴの作り方は知っているか?」
「タマゴですか? オスとメスが一緒にくっついて寝ると、メスがお腹に宿すと聞いたことがあります」
 なぜ頭領がそんなことを訊くのかわからなかったが、頭領はため息をつきながら頭を掻いている。間違ったことを答えてしまっただろうか。
「お前は同室のオスたちとそういう話は一切しないのだな」
「え? ええ、でも忍術や訓練の話はたくさんしますよ?」
「……それは何よりだ」
 話が見えない。頭領もしきりに手を布団の上についたり、視線を右往左往させたりとせわしない。妙に気まずい時間が流れて、行灯のひとつが消えかかった頃。
 頭領が突如立ち上がり、私の後ろに回り込んだ。私の胸とお腹に回された手は、私の身体の質感を確かめるように、執拗に肌を撫ぜる。
「あの……頭領……」
「力を抜け。もう房中術は始まっているのだ」
 頭領の指が、私の長い舌をまくって顎の下に滑り込んだ。
「ん……」
 普段舌で覆われていて自分でもほとんど触れることのない場所は、他のポケモンに触られるにはあまりにも敏感だった。
「まだ身体が硬いな。緊張しているのか? それとも俺に身体を預けるのは不安か?」
「そんなことは……」
 頭領の言葉にはっとする。緊張して身体を強張らせては、せっかく頭領が直々に術を教えてくれるというのにあまりに失礼ではないか。生まれたときから頭領に捧げているこの身。今さら頭領が私に対して何をしようと、それはすべて許されているのだ。必ずしも納得できるわけではないが。
 頭領の太い指が、私の下腹部をゆっくりと擦る。それはほとんど秘部に近い場所で、頭領にそんな場所を触らせてしまうのは、やはり憚られる。
「頭領、そこを触ると汚れてしまいます……」
「そんなことはない。オスだろうとメスだろうと、ここは神聖な場所だ。汚いなどとゆめゆめ口にするな」
「は、はい……」
 結局、私に拒否権はない。どうでにもなれと、私は四肢を投げ出して、頭領にすべてを預けた。頭領の指は、割れ目に差しかかって、焦らすようにゆるゆると愛撫したあと、ついにその入り込んだ。
「はぁ……あっ」
 誰にも触れさせたことのない、秘めやかな場所。触れられる意味を知ることもままならないままに、頭領の指は私の中に入っていく。
「深く呼吸しろ」
 止まりそうになる呼吸を意識的に連続させる。秘所のひりついた痛みに耐えるよう、ぎゅっと目をつむるが、そこでまた身体が強張ってしまう。とにかく四肢を弛緩させることと呼吸を続けることを考えていると、指はさらに奥深くへと侵入していく。
「んんっ……」
 頭領の左手が私の口内に入って、舌の裏側から頬の内側をするりと撫でた。下腹部のうごめきが激しくなり、さらに口の中をこねくり回されて、どこに意識を集中すべきなのかまったく判然としない。だが、指に犯されている私の秘所が時間を経るごとに熱を帯びて、頭領の動きにお腹が呼応しているような、妙な感覚を覚え始めた。
「慣れてきたか。俺の指が快く感じられたら、第一段階は成功だ」
 快感、と言われればそんな気もするし、違う気もする。けれども、最初のうちに抱いていた不安は拭い取られ、このまま頭領に身体を預けていられるだけの安心は得られた――
「んっ! ああっ!」
 突如として、湧き上がった快楽。身体が跳ねて、硬直し、頭領がきつく私を抱きしめた。
「大丈夫だ。安心して果てろ」
 まるで何かの引き金を引いてしまったかのように、快楽の波が止まらない。
「ひああっ!」
 びくんびくんと身体は頭領の指の動きに反応することを止めず、ついに私は股ぐらから大量の小水を噴き出してしまった。
「ああ、私……申し訳ありません……布団が汚れて……」
 ぐったりして、身体に力が入らない。頭領は後ろから私を優しく抱き寄せた。
「汚いものではない。むしろ房中術の中身ともいえる、オスとの呼吸を合わせて一心同体になるという目標が果たせた印だ。……さて、気をしっかり持って、正座するのだ」
 眩暈に似たもやがかった意識の中、言われるがまま正座する。ふわふわとした感覚に前のめりになって、手をついて体勢を維持するのが精いっぱいだ。
 頭領は前に回り込み、私の前に座する。そしておもむろに股間に手をやって――
「と、とうりょ……それは……!」
 自らの一物を引き出し、しごき始めた。
「あ……あう……」
 思わず顔を手で覆い隠す。もちろんオスだからそういうモノがあるのは知っているが、直接見る機会は今の今までなかったのだ。
「房中術において、自らの身体、そして相手の身体のすべてを知ることはとても大切だ。何も恥ずかしいことなどない。しっかりと見るのだ」
 恐る恐る手を顔から退ける。頭領の一物は、想像より――いや、想像をしたことがあるわけではないが――大きく、立派に怒張していた。
「これを舐めろ」
「えっ?」
 ただ見るだけならまだしも、これを舐めるのか。
「お前の大切な部分も刺激されて快楽を得られただろう。オスも同じだ。これを刺激することで快楽を与え……ひいては戦意を失わせることができる。相手を快楽で縛るのだ」
 そう言われると、確かに戦意喪失には効果があるのかもしれない。私も今なら多少は落ち着いているが、さっきまでの状態で戦うことはできなかっただろう。とはいえ、流石に舐めるのには抵抗がある。
「まあ、無理強いはしないがな。お前がどれほど房中術を極めたいと思っているか、だ」
 行灯の灯が揺れて、ふたりの影が動いた。
「……わかりました」
 意を決する。こうなったら、頭領を骨抜きにするまでだ。
「失礼します」
 一物を根元から舌で巻きつけ、先を口で包み込む。
「お……おお……」
 長い舌は自由自在に動かせる。巻きつける強さも、擦る速度も、緩急をつけて。
 口に含んだときにこれといった不快感はなかった。清潔好きで知られる頭領は、自信の一物も日頃から清潔に保っているようだ。
 余った舌で、頭領のお腹を撫でる。唾液で濡れた頭領の一物と腹はてらてらと光り、小刻みに震えている。
「んぅ……」
 口の奥まで一物を押し込め、喉で先を絞めつける。ミルタンクの乳を搾るがごとく、喉で一物を搾るのだ。
「誰に教えられずとも……これが天性か、ぐうっ!」
 しっかりと根元を手で押さえ、頭を上下させる。くぐもった声が部屋中に木霊して、私はより一層口淫の速度を上げた。
 淫猥な濡れた音が、頭領のうめき声に混じり込む。頭領の一物はさらに硬さを増した。それが限界に近づいている合図だと知らなかった私は、構わずに口淫の速度を上げ続けた。そして、その時は突然に訪れる。
「ぐっ……出るッ!」
「んんっ!?」
 頭領に頭を強く押さえつけられたと同時に、どろりとした熱い奔流が、喉の奥へと流れ込んできた。驚いて一物を吐き出すと、白い液体が私の顔を穢した。
「はぁ……はぁ……」
 変なにおいがする。そして苦い。粘性もある。喉に張りついたような感覚が絡みつく。
「すまない」
 そばにあった手拭いを取った頭領は、私の顔や体についた白濁液を拭き取っていく。その間私は、喉に残っていたものを必死に飲み干そうとしていた。
「初めてにしてはとてもよかったぞ。一瞬だが腰が砕けてしまった」
 頭領は満足げな表情で私の頭を撫でる。
「お褒めに預かり光栄です。……頭領が出されたこの白い液体は、いったい何なのでしょうか?」
「ああ、これは……じきにわかる。ともかく、オスをどう刺激すればいいかはおおよそ理解できただろう」
 液体の正体だとか、なぜこの行為が快楽に繋がるのかだとか、いろいろと疑問は尽きない。だが、房中術を成功させるキモというべきものの体得に通ずる道は見えてきた気がする。
 要するに相手を快楽の渦に閉じ込めてしまえばいいのだ。そう考えると、意外と難しくない術なのかもしれないと思えた。
「さあ、お前も俺も準備が整ったことだし、いよいよ最後だ。仰向けになって股を開け」
 身体を布団になげうって、股ぐらを頭領に見せつけるような体勢をとる。指で刺激を与えられて濡れた私の秘所と、私の舌遣いですでに潤っている頭領の一物が対峙する。
「うむ、実に官能的な光景……」
 正対した私の太ももを押さえて、太い一物を秘所に宛がう頭領。メスが快楽を得られる部分と、オスが快楽を得られる部分を結合させる。何を意味するのかもわからない初めての行為なのに、どういうわけか自然に受け入れようとしている自分がいる。まるで、そうなることが当然だったかのように。
「入れるぞ」
「は、はい」
 心臓が高鳴る。緊張と不安がぶり返してきた。そんなことはお構いなしに。頭領は腰を沈めてきた。
「っ……!」
 痛みに耐えるよう、下腹部に力を入れる。大丈夫だ、指で慣らされたおかげか、想像したほどは痛くない。
「力むと余計に痛みを感じるぞ。身体の力を抜け」
 息を吐いて、身体全体を布団に沈み込ませるように脱力する。頭領がゆっくりと私に向かって体重をかけてくる。徐々に私の膣口にうずめられていく頭領の一物が、私の中でさらに昂る。
「はあ……あっ」
 一番深いところまで到達した。わずかに、快楽の波が向こう岸からやってくる。
「ふうっ、んっ!」
 一度肉棒を引き出したかと思うと、頭領は快感を得るように強く中に打ちつけてきた。
「ああっ、あん!」
 口がだらしなく開いて、喘ぎ声が漏れてしまう。頭領が腰を振るたび、びりびりとした悦楽が体内で暴れ回り、嬌声となって出でる。指なんかと比べ物にならない――。
「意識をしっかりと持て。相手より先に快楽に囚われるな。もっと締めつけを強くしろ!」
「は、はひっ」
 定まらない視界に映る頭領の顔は、私のように腑抜けていない。私ばかりが快楽に溺れてなどいられない。気を張って、迫りくる波に抗う。
 身体をうねらせ、舌を頭領の背中に回して抱き寄せた。もっと深いところで繋がって、快楽を感じてもらえるように、肉棒を包み込む膣を蠕動させる。擦れ合うごとに、頭領の口から鈍いうめき声が聞こえる。
 交わり合う頭領と私の影法師が揺れる灯に溶け合って、ぬめらかな水音の響きと静かなよがり声に共鳴した。長い舌を相手の身体に絡めて濡らしていく私と、己の欲望をぶつけるがごとく力強く腰を振る頭領。
「んっ……はあっん……」
 奥を突かれるたび、私を満たそうとする至福をぎりぎりのところで制御する。籠絡しなければいけない相手に籠絡されてはいけない。これは房中術。相手も自分も支配しろ。
「んぐうぅ……なんという……」
 頭領の顔色に余裕がなくなってきた。
「私の中で出してください、頭領……いっぱい出して気持ちよくなりましょう」
 身体で与えるだけじゃない、声で聴覚すらも淫楽のうねりの中に閉じ込めてしまおう。
「ここは気持ちいいですか?」
 さらに、舌を頭領の背中から回り込ませ、尻と一物の間を撫でてやる。
「はあっ、そこはっ」
 がくんと頭領の身体が揺れて、私の上にくずおれそうになった。それでも腰の前後運動を止めずにいるのは、ほとんど上司としての意地だろう。正直に言って、私も長くは持ちそうになかった。
 頭領ももはやこれ以上は持つまいと、私の太ももの裏側に乗り、押し潰すように一物を私の奥へと何度も沈めた。
「とうりょ、もうっ」
「出すぞっ! ゲッコウガっ!」
 膣に腰を深く押しつけた頭領の一物が、どくんと脈動した。私の中に、白熱した激流がとめどなく流し込まれる。一滴も漏らすまいと私に身体を密着させる頭領の表情は恍惚としていて、この瞬間を狙えば首を掻き切れるとさえ思えるほど隙だらけだった。
(これが……房中術……)
 オスはメスに対して必死に身体を求めるものらしい。その隙を突けば、仮に力で劣っていたとしても難なく相手を始末できると、頭領は自らの身体をもって私に教授した。


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   ◆◆◆

 房中術の訓練は夜通し続いた。オスの警戒を解き、寝屋まで連れ添うにはどうすればいいか。種族ごとの弱い部位、官能的な刺激を与えることのできる部分はどこか。どう誘えばオスは気分を昂らせるのか。長い舌の使い方。口淫のコツ。行為中の呼びかけ。喘ぎ方。
 房中術についてニョロボンの知りうるすべてを、ゲッコウガは一つ残らず吸収した。その才覚たるや、屋敷の裏で的に当たらない水手裏剣を放っていたゲッコウガの姿はまやかしだったのではないかと錯覚するほどだった。
 一つ、また一つと、油の尽きた行灯の灯は消える。すべてが消えた頃には窓から朝日が差し込んで、乱れた布団の上で繋がり合う蛙とお玉杓子を照らしていた。
 行為の意味も知らぬまま、一晩で性技を完全に仕込まれたゲッコウガ。くノ一見習いから無邪気な蜜罠へと変貌したゲッコウガが、雇われ先で敵陣の頭を仕留められるほどに成長したのは、また別のお話である。
 

 


 了




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一年半くらい前の作品ですがweb再録という形でこちらに載せます。(2017/11/07)
見返してみると官能シーンすごくあっさりしてますね。



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