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弟たちとボクのカプリッツィオ の変更点


**弟たちとボクのカプリッツィオ [#ue386f47]
作:[[十条]]
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1、神島澪~ミミロップのミオ

 兄弟、だよね。ボク達。
 どうしたんだ兄様? 何を今さら……
「……はぁ」
 ボクは知ってしまった。いや、ルルはとっくに知っていてそう答えたのか。
 ルルだけじゃない。ユウもランも……あのニナだって薄々感づいていてもいい年頃なんじゃないか?
 ハタチになるまで気づかなかったボクの方がおかしいのかもしれない。
 父様の書斎へ向かう足取りが重い。
 と、ボクは廊下の曲がり角に差し掛かった。
「ミオにーちゃん☆」
「わひゃっ!」
 下を向いて歩いていたボクは、突然の弟の出現に驚いてひっくり返った。咄嗟に耳で体を支えたので、尻餅もつかずに起き上がれたけど。
「な、何かなニナ?」
「ふーん……ミミロップの耳ってべんりー」
 ボクを驚かそうと飛び出してきたのは、キルリアの子供――末っ子のニナだった。
 情けない事にその作戦にまんまと嵌められてあわや転倒する所だったのが、長男のボク、ミミロップのミオである。
「べつに用はないけどっ。あれ……? ミオにーちゃん、何かあったの?」
「何かって……ニナが驚かすから」
「そうじゃなくて、カオが暗いよっ」
 ニナが両手を胸に当てて、心配そうな目で見上げてくる。
「ああ……」
「それに、感じる。これは……疑問と、混乱……?」
 キルリアに気持ちはごまかせない、か。
「えーと……これから父様の手伝いで書類の整理をしなくちゃならないんだけど、量が多くて混乱しそうなの」
 苦しい言い訳かもしれないけど、ボクの感情がどこから来ているかまではわからない筈だ。
「……そうなんだ。大変だね」
「ふふっ……ニナも遊んでばかりいないで勉強もするんだよ」
 ボクはニナの頭を撫でてやった。
「ミオにーちゃん……」
 ニナは顔を紅潮させて微笑み、頷く。兄のボクが言うのも何だけど、可愛い。
「おーいミオ! 早くしろよー!」
「あ、はい父様……すぐに行きます!」
 じゃね、とニナにウインクして、ボクは廊下を小走りで父様の書斎に向かった。
 後ろでばたりと何かが倒れるような物音がしたのは、きっと気のせいだろう。
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2、神島夕~ムウマージのユウ

「お前バカだろ。ミオ兄にウインクされて倒れただぁ? 毎度気持ち悪ぃンだよ」
「だ、だって……好きで倒れたわけじゃないモン……」
「てめえがそーゆー目でミオ兄を見てるってこったろ」
 廊下の向こうからランとニナの声が聞こえる。
「ち、違うよ~誤解だよぉ」
「黙れ。あのミオ兄に恋人がいねえのもお前のせいだぞわかってんのか」
「そ、それは関係ないでしょぉ?」
「いーや、きっとミオ兄の大学で噂になってンだよ。ミオ兄はカマっぽい弟と怪しい関係にあるって……」
「ラン、その辺にしておきなよ」
 僕が曲がり角から顔を出して注意すると、二匹は同時に振り向いて動きを止めた。
 サンダースのランと、キルリアのニナ。どちらも僕の弟だ。
「まったく、ニナが本当に変な事覚えたらどうすんのさ? ニナは厨二もといまだ中二なんだから考えてよ」
「でもよユウ兄、こいつ……」
「ぼくだって引きこもりのランにーちゃんよりは知ってるもんね」
「ン・だ・と・ォ!?」
「こら、ニナもそういう事言わない」
 慌てて注意するが、ランは逆立てた体毛をバチバチいわせているし、ニナはニナでサイコパワーを高めて応戦する気満々だった。
「廊下で暴れちゃダメだって……母様にまた怒られるよ?」
「母ちゃんが怖くて喧嘩がやってられるかってンだ」
「へん、引きこもりの電撃なんか怖くないもんね!」
「ちっとデカくなったからって調子乗ってんじゃねぇぞ! 弟の分際で……」
 まずい。一触即発だ。
 実際母様は怒っても怖くないし、かといって僕なんかでは効果は更に薄い。
「あ、ルル兄様」
 こういうとき頼りになるのはルル兄様だけだ。グッドタイミング。
「ラン、ニナ。何をしているんだ」
 ちょうど部屋から出てきたアブソルのルル兄様の歩みは、二匹を固まらせるのに十分な威圧感を放っていた。

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3、神島流~アブソルのルル

「ラン、ニナ。何をしているんだ」
 部屋の外が喧しかったので廊下に出てみると、案の定ランとニナが喧嘩していた。ユウがそれを止める格好だが、二匹は全然こたえていないようだ。
「な、何でもねーよ」
「さ、さあ、ぼくも勉強しなきゃっ」
 今の今まで飛び掛かりそうな体勢だった二匹は、俺を見るや否やそれぞれの部屋へ走り去ってしまった。
「……俺も怖がられたもんだな」
「助かったよルル兄様……」
 ムウマージのユウはふよふよと浮かびながら、ほっとため息をついた。
「ルル兄様の一言には迫力があるからね」
「迫力? 俺は一度も声を荒げて弟たちを叱った事はないがな」
「ふふん♪」
 ユウは俺の前を右に左にすいすい泳ぐような動きをして、真っ正面から顔を近づけてきた。
「普段静かなポケモンが一番怖いのさ」
「……そうかもしれん」
 俺は弟達の行った方を見て答える。
「だが、それは普段静かな奴がいざ怒った時には怖いという話だろう? 俺はそのいざってのがないんだが」
「言われてみるとそうだね。どうしてだろ?」
 うーん、と唸りながら俺の顔をまじまじと見つめるユウ。
「何だ」
「顔……? が、なーんかなー」
「ほう」
「いや、顔が怖いとは言ってないからさ! や、優しそうには見えるよ! でもなんか裏に秘めてそうな感じなんだよ」
 腹の裡では怒ってるんじゃないかって事か。眠れるエンテイってやつ?
 俺は声を荒げたり暴力を振るったりはしないしするつもりもないが、まあ心の中では怒っている時もあるわな。
 それが無意識のうちに外へ滲み出ているのかも知れん。
「まあ、実際あれだ。怒ったら怖いのは静かな奴よりもだな」
「……そうさね、普段ニコニコしてる明るい奴……」
 二匹の頭には同じポケモンの顔が浮かんでいる。
 我らが長兄。あれの個室に呼び出されて無事だった弟はいない。
「お前は未経験だったか……あれは本気でやばい」
「僕はもう高三だよ? もう怒られる事もないさ」
 まあ、確かにそうだ。俺が兄様に怒られたは中坊の頃だし。しかもユウは何をさせてもそつなくこなすし、学校でも品行方正成績優秀で通っている。コイツが兄貴の前で何かやらかすなんてのは想像しづらい。
「ふっ……要領の良い奴め」
「はは、やだな。僕は普通にしてるだけだよ?」
 ……優等生ってのは得だな。
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ページの作り方はこれで良かったのでしょうか、続きます。


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