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幼子. の変更点


&size(18){幼子}; (作者: [[ハコ]])
 
 ディアルガが時空の狭間に墜ち、命からがら救い出してから───人間の世界で言うところの一年ぐらいの時間が経って、ようやくその張本人が眼を覚ました。


これまでの記憶を、綺麗サッパリ失って。




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「ぱるきあー」

 お花畑の真ん中で、ディアルガが俺を呼ぶ。
 ……なんでひらがななんですか。


 脱力しながらその声の元へ行ってみると、俺を呼んだことなどもう忘れているかのように、ディアルガは夢中になって何かを見つめていた。
 鋼の爪のついた前脚で草を掻き分けた地面の上に、よく目を凝らさないと見えないぐらいの小虫たちがわらわらと列をなして歩いている。何が面白いのか、ディアルガは目を輝かせてその虫たちの歩みを眺めているのだ。

 楽しそうなその背中を見つめながら、何故か溜息が漏れた。


 小さな背中。
 実体などあって無いような俺たちは、魂や記憶、そして心の力のありようで姿形が定まってくるのだと創造主である&ruby(アルセウス){父神};が言っていた。
 記憶を失ったディアルガは、その姿まで生まれた時のまっさらな状態に戻ってしまったらしい。俺の倍ほどの重さがあった体は元の半分以下になって、体つきもふっくら丸みを帯びてまるで子供のようだ。
 そしてその力も、時を司るどころかろくに身を守ることも出来なくなってしまっていて、今はアルセウスが代わって時の護りを続けている。そして俺はディアルガを手元で保護するよう言いつけられて、今この状態にあるわけだ。




「ぱるきあー」
「うん?」
 やっと俺のことを思い出したか。
「むしさん、かわいいね」
 お前の方が可愛いよ。

 小さくなってもやっぱり立派な尻尾を撫でてみる。
 元のディアルガだったら、絶対触らせてくれなかっただろうな。
 ああ、ぷりっぷりだ。うまそうな尻尾だ。

「おはな、きれいだね」
 お前の方が綺麗だよ。

 すべすべの綺麗な膚。傷一つ無い鋼の輝き。
 背中を撫でる。首筋を撫でる。頭を撫でる。どこもかしこもつるつるで気持ちいい。
 撫でまくっていると、くすぐったそうにもじもじする。そんな幼い仕草もまた可愛い。

「もうっ、ぱるきあ」
 怒ったような声で、振り返る。
 曇りや澱みの欠片もない、純粋な目が、俺を見上げる。
 視線が、絡み合う。


 その瞬間、いきなり胸が掴まれたような衝撃を感じて───俺は訳も判らず、咄嗟に空間のねじれの中に逃げ込んだ。




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「ぱるきあー、ぱるきあ、どこー?」

 空間の隙間から、ディアルガの呼ぶ声が聞こえてくる。
 返事が出来ない。どういうわけか、胸がどきどきして。
 何が起こってるんだ。頬が熱い、体が熱い。恥ずかしさのような、苛立ちのような、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、変な固まりが腹の中で熱く燃えているようなこのぞわぞわした感じ。


「ぱるきあー……」

 ディアルガの声が涙混じりになってくるのを聞いて、また胸が高鳴った。
 落ち着け、落ち着け俺。
 相手はディアルガだ。今は小さくて可愛いが、元に戻れば即グギュグバァッ!!!なディアルガなんだ。惑わされるな。混乱するな。しっかりしろパルキア。


「ぱるきあ……わたしのこと、きらいになっちゃったのかなぁ」
 小さな呟きと同時に、ディアルガの目から涙がぽろりと零れる。

 胸がぎゅっと痛んだ。めまいがした。
 その瞬間、何も考えられなくなって。落ちる───ただそれだけを感じた。




“涙に触れたい”

 空間を歪める事など造作もない。ディアルガの周りの空間を僅かに歪めて、『自分の手』の分身を作った。
 その『手』で濡れた頬に触れると、ディアルガの肩が驚いたようにびくりと跳ね上がった。
「え……なに」
 実体のない感触に、ディアルガは不思議そうにきょろきょろと周りを見回す。

“身体に触れたい”

 『手』がディアルガの首筋を撫で降ろす。
「やっ……」
 子供のような、少女のような高い声に、俺の中の熱がまた上がった。
 脇腹をくすぐり、脚の爪先まで撫で回して、尻尾へ。尻尾の豊満な肉感を堪能して───その付け根に、そっと触れる。
「きゃんっ!」
 後脚の間の、閉じられた溝。

 思わず、ああ、と感嘆の溜息が漏れた。
 やわらかくて、あたたかい。深く胎に繋がる道への入り口がそこにある、確かな感触。
 原始の生命はすべて雌だったと誰かが言っていたのを、ふと思い出した。

「や……あ、ぱるきあ……」

“抱きしめたい”

 ちゃんとそれが『腕』になっているか自信はなかった。
 愛しくてどうすればいいのかわからなくて、がむしゃらに抱きしめた。硬さと柔らかさの組み合わさった何とも言えない抱き心地を、気が遠くなるほど味わった。
「いたいよぅ、ぱるきあ、ぱるきあ……たすけて」
 俺の名を呼ぶ声。腕の中でもがく肉感。たまらない。
 身体の熱が暴走しそうだ。

“犯したい”

 いつの間にこうなったのか、腹の下で熱く脈打っているそれ。もうどうしようもない。俺はディアルガに欲情している。
「ぱるきあぁー!」
 泣きながら怯えているディアルガを、いくつにも分化させた腕で雁字搦めに捕らえる。
 そして尻尾の付け根にやわやわと指を滑り込ませる。
「やん、あッ、あ……」
 びくびくと震えて逃げ出そうとするが許さない。するとせめてもの抵抗のつもりなのか、後脚を必死で閉じようとするのが可笑しかった。どんなに脚を閉じてもそこには簡単に手が届くのに。
 隠しきれない入り口を小刻みに刺激してやると、面白いぐらいにディアルガの身体が跳ねた。
「いや……ぱるきあ、たすけて」
 助けない。そう意地悪く心の中で呟いて、指で苛めているそこへ空間を繋げた。目の前に見える割れ目に顔を寄せ、匂いに惹かれるようにむしゃぶりつく。
「にゃあぁぁッ、も、やあっ、やだぁッ」

 お前の悲鳴がこんなに甘美に響くとは。
 お前のこの芯から誘う露がこんなに美味だとは。

 空間の歪みと、腹の下で滾る分身とを同化させる。
 もう止まらない、その衝動のままに、まるで触手のような姿に化した肉竿がディアルガの脚の間に潜り込んでいく。

「や、いやあぁ」
 ちゅぷ、という水音がやけに大きく聞こえた。
 柔らかな唇がひたりと吸い付いてくるような、ぞくぞくとした衝動がこみ上げる。

「ああ……」
 自分でも情けない声が出てしまった。
 ゆっくりと沈めていく。狭い狭間を割り進めていくキツイ快感。───ダメだ、もう。
 ディアルガ、ごめん。

「ああああぁぁっ!」
 痛々しい悲鳴が上がる。柔らかな抵抗を感じるある部分を、無理矢理通った。
 処女を奪った、その感慨に満足感と罪悪感を覚えたのは、ほんの一瞬だった。感情よりも本能の方が遥かに勝っていた。
「いや……いたい、いたい……ぱるきあたすけて」
 ごめん、無理。
 気持ち良すぎる。
 我慢出来ずに動かした。やめてと叫ぶディアルガの声に、ますます高ぶった。
 見えない腕できつく抱きしめて深く突く。
 どんなに動いても足りない。本能が吼えている。もっと奥へ、もっと深く。足りない、もっと。
「いやぁ、ああっ、ぱるきあ……ぱるきああぁぁ」
 もっと呼べ。俺の下で叫べ。
 可愛いディアルガ。どこまでも犯してやる。

 空間を歪ませて肉棒を二つに三つに分ける。
 叫ぶ口に突っ込んだ。頑ななもう一つの孔も犯した。
 ぼろぼろに泣くディアルガの涙を舐めた。気が触れたように体中を舐め回した。
 突き上げる律動。交わる音。微かな血のにおい。
 俺のものだ、ぜんぶ。

 ディアルガの奥深くに放つ。
 口に含ませていたものはその瞬間抜き出し、顔の上にぶちまけた。
 中にも外にも刻まれた、俺の標。

 解放してやった途端に、ディアルガの身体が脱力して倒れる。
 本能の続きで、ぐったりとした身体を抱きしめた。
「ぱるきあ……」
 こんなになっても俺を呼んでくれる、その純粋さに、ぐっと胸が痛んだ。




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 体中汚れてしまったディアルガのために、どこかの神殿から帳を引き剥がしてきて、脱力した体をすっぽりと包む。そしてそのやわらかな薄布で、ディアルガの顔や体をゆっくりと拭ってやった。
 ディアルガは気を失ってはいなかった。呆然とした顔で、為すがままになっている。
 尻尾の周りを拭いていると、背の翼にこつんとした重みを感じた。振り返ってみると、ディアルガが俺の背の上に顔を載せていた。
「ぱるきあ……」
 ディアルガは俯いていて表情が見えなかったが、泣いているようだった。何とも言えない罪悪感が湧いてきて、やわらかな腹のあたりをそっと抱きしめた。
「ぱるきあ……どうしてここにいてくれなかったの」
 居たよ、ずっと。お前をこんな目に遭わせたよ。
 そんなことを言える訳もなく、黙ってディアルガの背を撫でる。
「どこにもいかないで。ひとりにしないで」
「ディアルガ」
 余程怖かったんだろうな。体中が震えてる。
「ぱるきあ」
「……どうだろうな」
「え……」

 俺の言葉に、ディアルガはふと顔を上げた。そして「どうして?」と言いたげな哀しい目で見つめてくる。
 どう頑張っても、うまく誤魔化して説明することなんてできないから、何も言わずにディアルガを抱きしめた。

 大切な&ruby(ディアルガ){存在};。俺にとっても───&ruby(アルセウス){父神};にとっても。
 無理矢理純潔を奪った。しかもこんな形で。
 きっとアルセウスの怒りに触れるだろう。禁忌を犯した俺は、最悪消されるかもしれない。

「わたしのこと、きらいになっちゃったから? だからどこかにいっちゃうの?」
「違う、そんな訳ない」
 嫌いになんてなる訳ない。今だって、欲しくて欲しくて、たまらないのに。
「きらいにならないで……ぱるきあ」
「ならない。絶対に」
「ぱるきあ……すき」
 ああ、俺もだ。
「……ずっとここにいて」
 震える小さな声で甘えてくる。
 可哀想になって、可愛くて、ぎゅっと抱きしめた。
「……努力する」




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 お花畑の上で仲むつまじく抱き合うふたりの様子を、時空の彼方のどこかから父神が眺めている。
 彼にはすべてお見通しだった。
「全く情けないものよ、何をうじうじしているのやら」
 思い悩むパルキアの気も知らぬげにアルセウスは苦笑する。
 パルキアのいたした手段こそいただけないが、アルセウスは彼らが交わることを禁じるつもりなど毛頭なかった。
 そもそも禁じるつもりなら、最初から求め合う身体など与えはしなかった。
「まあ、あやつがらしくもなくビクついているのもまた可愛いものだがな」
 ふふっと笑う。
「軽く仕置きでもしておくか」

 きっと大騒ぎになるだろう、そんな近い未来を想像してアルセウスは楽しげに呟いた。
 

 了

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