作者[[GALD]] 官能的表現を含みます、お気を付け下さい ---- 色々なで店が並ぶ電気街、ある店から携帯電話といわれる機械を手に自動ドアが開いた。 俺は携帯をポケットにしまうと、扉をくぐって人ごみに紛れる。ポケットから真新しい携帯を取り出し、開けると電源が入る。 見慣れない画面だが、こんな平べったい画面とボタンを駆使することで、多彩な機能を使用できるというのだから、近代というのはすごい。 ボタンを一つ押すだけで表示される様々な項目、説明を聞いたとはいえ、説明書がないとやはり自信を持って操作できない。 しかし、なんだかさっきとは違うものが表示されている。 画面の中をオレンジ色の豆電球のような、何かのマスコットなのか、目つきは悪戯っ子のような好感がもてるアイコンが動いている。 別に何とも思わなかったので、道中で説明書を持ちながらいじくるのも気が引ける。 携帯を閉じて家に帰るまで、ただの携帯の仕様だと思い込んでいた。 帰宅してから説明書を急いで出し、それなりの年齢であるのにかかわらず、子供のように興味津津でボタンを色々と押す。 その中でもやはり気になるのはこの変なアイコン。消し方も記載されておらず、まずこのアイコンに関して何一つ記載がない。 携帯の中の世界を自由気ままに動き回り、こちらを見ているかのように笑っている。 別にいらだっているわけではないが、周りから見て趣味がいいとは思われないだろうこのデザイン。 なんとか非表示に切り替えようと、設定などを変えてみるがはやり初心者だからか上手くいかない。 どうしようもないので、誰かに見てもらって動も思わないならこのままにしておこうと諦めた。多少感性に違いがあるかもしれないが、腰のあたりから小型のボールを取り出し、よく目にする手順で中からポケモンを出す。 黄色い毛と青い毛が稲妻を思わせ、尖る黄色い毛がはじける電気を連想させる。目は赤く鋭く、しかし外に出てきたからかにっこりと力をほぐす。 早速悪い気持はあるが、俺はライボルトに携帯画面を見せる。 流石に、唐突に差し出されても何をしてほしいのか全く分からず困っている。 「おっと、急にすまないな。この携帯のキャラクターなんだが。」 ライボルトは即座に顔をしかめる、やはりデザインはよくないのだろう。 「しっかりしてください、これはポケモンですよ。」 俺は言われたとおりに携帯をがしゃがしゃ振ってみると、容器に閉じ込められた生物のように振動や傾きに焦っている。 そこは自分の世界ではないのを察したのか、平面の世界から飛び出してくる。 「平面だ、平面が…」 「ふざけてみてないで、よく見てください。ちゃんと立体ですよ。」 よく見てみるとふよふよと頼りない浮き方で、電気を纏っている。 「ロトムといって電化製品に住みつくと聞いてますよ。」 大きさはかなり小さく手で握りつぶせるサイズ、そんな大きさの生き物が自分より何倍も大きな巨体を目にすれば怯えるのも無理はない。 さっきまでは余裕で笑っていたが、今はあたふたとしている、そんな姿が流石に可哀想で俺は携帯をロトムに差し出した。するとロトムは嬉しそうに携帯の画面に入り込んでいく。 「どうする気ですか?このまま携帯の中に放置する気じゃないでしょうね?」 「駄目なのか?お、ちょっと待て。」 携帯がメールを受信した。まだ誰にもアドレス教えていないので、契約先か何かかと思ったが、メールを確認すると差出人はこの携帯となっている。 中身はアリガトウと一見シンプルなものであったが、考えてみればおかしな話である。自分でメールをうったのが説明を受けている時ぐらいだったし、カタカナだけの文章なんてうった記憶がない。 そしてカタカナで書かれているというのがまたホラーというかミステリアスというか、何とも受け取り手を悩ませる字体なのである。 その変なメールを喜ぶかのように、アリガトウの文字の周囲をくるくるとロトムが回っている。自分が感謝の意を述べていると言いたいのか、しかし相手からメールが来ることがあってもロトムにどう送り返せばいいのか分からない。仮にこの携帯にメールを送ればロトムに伝わるとしても、不慣れな俺にとっては不便な会話方法を取らざる得ないということになる。 それでも、ロトムも喜んでくれていることだし、頑張ってメールで話すというのにも価値があるかもしれない。 「見てみろよ、喜んでるし別に問題ないだろ。」 「今の所害はありませんが、そういう問題なのですか?」 「そんな小さいこと気にするなって。」 だよなと携帯画面に無意味に声をかけると、返事を返すかのように受信音が返ってくる。流石に一回目は偶然か何かかと疑ったが、ふざけて繰り返し言葉を発するとメールはちゃんと返ってくる。 何度か試してみたが会話はちゃんと成立する。適当に言ってここまで的確な返答がこうも返ってくるわけがなく、ロトムに伝わっているのは真とみなしていいだろう。 なんとか会話の手段を得ると、次に多少ロトムに関する情報が得られた。 どうやら本人は小さいためか、あまり電子器具の外には出たくないから身を潜めているようで、それにこの携帯の中が気に入っているらしい。そこを運がいいのか悪いのか、俺が手にしてしまったのだ。 だからといって携帯をロトムの住処として献上するわけにもいかず、ロトムを住まわせたまま携帯電話をも歩くことに、俺は決意した。 ライボルトはあまりロトムのことに賛成していないようだが、最後は俺に任せると激しく反対はしなかった。これでひとまずは事が片付いたと思えば、問題はこれだけではなかった。 「ロトムってやっぱり電気タイプだよな。電気3匹だとまずいか…」 放浪の旅をしているわけではないにしても、一応はポケモンを扱っているはしくれ、手持ちのバランスぐらい考えることぐらい不思議ではない。 さまざまな仕事のための人もいれば、戦うことを主な目的として暮らしている人もいる。俺はどちらかと言えば後者よりなのでやはり気にしてしまう。 「しっかりしてください。ロトム特有の能力で浮いていて、地面タイプの影響はほとんど受けないんですよ?」 「そうなのか?そんな便利な能力があるのか。」 「何も知らないんですか…こんな調子だから…はぁ…」 さらには勝率がとまで呟くライボルト。確かに勝っている数は負けている数にはるかに及ばないのは事実。 俺はあまり気にしていないが、ライボルトは勝ち負けにこだわる。半分は戦っているのだから勝ちたいという欲望と、半分は反省のない俺に対しての不満である。 ライボルトから言わせれば相手のタイプぐらい覚えておいてほしい所である。 平気で地面タイプに10万ボルトを撃てと言われても、こっちが困るといつも愚痴を言っている。 しっかり者のライボルトにとって俺の進歩のしない所が許せないと言うより嘆かわしいらしい。 負けるといつも、こんなのでちゃんとやっていけるのかなど説教を食らってばかり、生活面も全部は任せておけないらしく、幅広い範囲でライボルトに補ってもらっている。 だからこそ、こうやって生活面に影響が出ることを避けたいのだろか、ライボルトは未だにロトムのことを喜んで受け入れている様子はない。しかし、いつまでたってもこんな雰囲気を保っておくのはよくない。 なんとかしてロトムを受け入れてもらわねばと、とりあえず全員顔だけでも会わせておくか。 「とりあえずお前ら、仲良くしろよ。」 俺はベルトについているボールを一個投げる。投げられたボールからはライボルトのように青い毛に、黄色とは異なった黒色とで身を包み、目は鋭く辺りに圧力をかける威嚇という特性をもったレントラーが出てくる。 しかしこのレントラーあたりに圧力をかけるどころか、むしろ周りに怯えていてぎこちない。闘争心なんて欠片もなく、何とも頼りない様である。ロトムの方が友好的であっても、レントラーがこの調子では分かりあうにはそれなりに時間がかかりそうだ。 「何か用事でもあるの…」 腰が引けたような口ぶりでレントラーが俺に尋ねると、俺は携帯画面を開けてレントラーに向ける。 レントラーは見慣れないものを不審に思って一歩後ろに下がる。一方はロトムは携帯の世界を自由きままに泳いでいるようで全く警戒していない。 ライボルトは俺と同じようにらちがあかないと、空気を読んでくれ自己紹介を始める。 「私はレビュー、見ての通りライボルトです。以後よろしくお願いします。」 「僕は…ガイル…よろしくね。」 ロトムは返事に自分には名前はないからロトムでいいと返事が返ってくる。これは何か名前をきめてやらないとな。 堅苦しい挨拶とどことなく距離を置いた挨拶であったがロトムは全く気にしていないのか、中で嬉しそうにしている。 理解しあえる日が遠くなりそうだと嘆きたくなる。 とりあえず、俺もロトムの事を知って皆を近づけることにしよう。しかし、これといった策を用意しているわけでもなく、やはり俺自身も時間を掛けてロトムと接していかなければならない。 二匹ともロトムに対しては興味よりも警戒心の方が強いようで、全く近寄らない。接点を生み出さないと触れ合うことすら当分なさそうな雰囲気だ。 一日でどうにもならないと分かっていても、平行なままの二匹とロトムを見ていると焦りを感じて、かえって失敗策一つすら練りだせなかった。 進展のないこの光景は辛いが、時間だけが先に進んでいった。 夜になってようやく何も思いつかないことを悟り、布団に入ると不思議なくらいすぐに眠ることができた。 そのはずだったのだが、何者かが俺の体を揺さぶって、熟睡を妨げてくる。俺は寝ていたいと寝たふりでこらえるが、あまりのしつこさに眠気が欠けしまう。何時かもわからないまま俺は起床した。するとレビューにもう少し上手い寝たふりが出来ないんですかと釘を刺された。 「これでも眠いんだから勘弁してくれよ。こんな夜遅くに何か用事か?寝れないなんて言わないでくれよ?」 「子供じゃないんですから…それより聞こえませんか?」 一体何の音がと思った刹那、何やら不審な音が聞こえる。ガタゴトと何かが動いている音が洗濯機のある風呂場の方から聞こえる。 レビューはここにいるし、ガイルも俺の傍で寝ている。となれば必然的に何者かが侵入して、不審な事を実行しているということになる。 しかし、忍びこんでまで洗濯をしているなんて、変わった犯人もいるものだと、恐る恐るレビューを先頭に潜伏先の部屋に近づいて行く。 そして忍び足で扉に手を伸ばしノブを握り、壁に張り付いて、開けた直後攻撃できるようにレビューを構えるよう命令する。 レビューが配置につき、俺が頷くと同時にドアを勢いよく開ける。レビューは扉の先に待っていた奇妙な光景に戦意を失った。俺もレビューに釣られて肩の力が抜けた。 部屋の中には人はいなく、洗面台に風呂場、その他もろもろ何一つ変わりない、ただ洗濯機一台を除いて。 というのもこの洗濯機、魂が宿ったかのようにピョンピョンはねている。ポルターガイストの一種かとも考えたが、動いているのは洗濯機だけで、しかも元は白色だったはずなのに、オレンジ色に塗り替えられているし、いつもの洗濯機と違うのは明らかだ。 そして何よりも奇妙なのはロトムのような顔が洗濯機についているということである。 この得体の知れない洗濯機を前に、なんだか真剣になったことが馬鹿馬鹿しく思える。言い方が悪いかもしれないが、俺にとってもレビューにとっても期待外れだった。 「お前、ロトムなのか?」 誰がどう見ても同じことを思い口にするような事を聞いた。 「そうだよ、中にずっといるのは退屈だからね。」 以外にまともに喋っているのは嬉しかったが、ロトムと分かっていても、洗濯機が飛び跳ねている様を見ていると、頭が痛い。 レビューもあり得なさに驚くと言うよりも、この光景に言葉を失って棒立ちしている。 「あとでちゃんと戻してくれよ、ロトム。それじゃ、俺は寝るからな。」 最後にレビューにも声をかけると、レビューは自分の名前に反応して、意識が急に稼働しはじめ少し慌てている。 結局、わけのわからない状況に遭遇して、俺もレビューもただ疲れただけであった。 ロトムのせいで一時は騒いだが、ロトムのおかげで疲労がたまり睡魔がリセットされたようだ。 今度はゆっくりと平和に眠れる、そう思えたのだが、それは一種の甘えだったとすぐに知ることになる。 何者かに揺さぶられている、それもさっきより激しく。それでも同じことを経験しているせいか、全く起きる気がしない。 しかし、揺さぶりが止む気配はなく、激しさを増す。頑固に寝たふりを貫こうとしたが、結局俺は気の進まないまま目を開ける。すると慌てているガイルが視界に入る。 「たっ、助けてよ…レンジが飛んでるんだよ。」 ガイルにとってはおそろしい光景なのかもしれないが、犯人の見当がついている俺には驚く要素がなかった。ついでにレビューはと言えば、夜の事があってぐっすり眠っている。 「今何時だ?」 「6時ぐらいじゃないかな…それより早く。」 一応朝までねれたしよしとするとして、この一件は俺とガイルでなんとかしたほうがよさそうだ。 「いくぞ、ガイル。」 「えっ、僕が行かなきゃだめなの?」 レントラーとはそれなりの能力を持った種族であるのに、ガイルはいつも腰が引けていて弱気である。こういうことになると、絶対に前に出たがらず、後ろでびくびくしているのが常である。 今回も断固拒否の姿勢を貫いて動こうとしないガイル。 流石に相手をするのも面倒になってきて、ガイルを待機させたまま、俺はレンジ探しの旅に出る。 旅といっても、飛んでいるレンジなんてすぐに見つかる。一見オレンジ色の変な物体が空中を彷徨っているだけだが、目を凝らすと確かに電子レンジが飛んでいる。 しかし、俺の家に置いてあるものとは違い、ロトムには失礼かもしれないが、こんなヘンテコな電子レンジではない。 「ロトム、電子レンジを元あった場所に戻して、携帯に戻ってろ。」 すると、指示通りに電子レンジはフワフワと不安定な飛び方で所定の位置に戻る。そして、レンジからオレンジ色の小さな魂のようなものが出てきて、素早く携帯に身を隠した。 身をかくまった携帯に手を伸ばし、画面を見てみると、ロトムが平面世界にちゃんと納まっている。 やっと事が片付いたのでガイルを呼びに戻るが動いてくれない。 俺自身の手で負えないことを察すると、レビューを起して、なんとかガイルを引きずり出した。 抵抗するガイルであったが、ぴくりとも動かず無言でたっている電子レンジを見て、ひとまず安心した。それでも、レンジの方をこまめに見ながらいつ動くのかと警戒している。 一通りのことは引きずり出す際に説明はしたが、あの反応を見る限りでは納得していないのだろう。 一方、昨夜の一件に出くわしているレビューは別に疑っているわけでもなく、冷静である。 この同じ境遇にいるのに反対な反応をしている二匹を眺めていると、いつも見ている二匹であっても面白い。 とりあえず、ロトムと誰かを残して様子を見てみることにしよう。二匹を預かり、うまく信頼関係を築かせるという場所も聞き覚えがある。 俺はただこの方法に成果を期待するしかなかった。 ---- 鍵を閉めるには、私の体の構造と大きさの都合上難があるため、マスターが鍵を閉めるのを待つしかない。面倒なことだが、鍵をかけ忘れると言うへまを起こされる事に比べたら、これぐらいの時間の浪費は安いものだ。 反対側から鍵が差し込まれ、ガチャリという音に私は安心した。 マスターが私とロトムを置いて行った理由ぐらい察しがつく。相手を知るにもいい機会だし、有効に活用させてもらうことにしよう。 早速ロトムの憑依している携帯を探す。椅子の上に飛び乗り見渡すと、机の上に閉じてある携帯を見つける。 これが最初の私に立ちふさがる壁であった。私は運動神経が悪いわけではないし、むしろ戦闘に備えて鍛えているのだから、机の上に飛び移るのは容易である。 ただ、机というものは本来足でづかづかと踏んでいいようなものではない。となると、飛び乗るというのは好ましくない。 そこで上半身を机に這わせて、後ろ足を極力伸ばして後は前足で必死に伸ばす。 最初はとどくだろうと思ったが、とどきそうでとどがないこの距離間に、少しづつ挫折の兆しが見え始める。 それでもめげずに、前足を当ててちょっとづつ手前に引き寄せる。 何十回試みたかはわからないが、この地味な作業の蓄積として、どうにか私の前まで携帯を手繰り寄せた。 手前にまでよせてきた携帯を、今度は咥えながら椅子から降りて一息ついた。 体を酷使しすぎたせいか、背筋や腰のあたりが痛む。体を休ませるのも兼ねて、床に寝そべりながら画面を開けようとするが、携帯は固く閉ざされている。 第二ラウンドが始まった。今度は携帯の説明書を探さなければならない。 こればかりは管理されていて、そう易々とは見つからないと思われる。大事な物なのだから、置いてあるのは当の本人の部屋なのだろうが、そんなことは誰でも推測できる。 部屋を訪れると、いつも私がやかましく言っている成果か、綺麗に整理整頓が施されている。そして私の前に立ちふさがる箪笥や机の群れ。 衣類と一緒にしまい込んでいる事はないだろうが、机のひきだしを調べるだけで骨が折れる。 もしかすると、そこらに放置されているかもしれないという淡い期待を持ちながら、部屋を徘徊する。すると、角度が急なのではっきり視界に入るわけではないが、勉強机の上に箱が置いてある。 「すいません。」 一応謝って、箱をつぶさないように机の上に飛び乗る。机の表面積は、私が普段立っているような形を取れるほど大きくはない。だから着地には十分気を配らなければいけないし、その後四足を内に寄せた状態で、バランスを崩さずに立たなければならない。このまま箱に直接手を出せばバランスを失う恐れがあるので、やさしく足で箱を床に蹴り落とす。 箱に続いて机の上から飛び降ると、お目当ての箱が落ちていた。 前足で潰さないように押さえながら、フタを口で挟んで開封する。 中から目的の物を取り出すと、その数十枚の紙の束を咥えて携帯電話のもとに戻る。 携帯電話の横に説明書を並べ、スムーズとはいかないが中身に目を通す。最初の方のページには、丁寧に図まで載せてあるページが存在し、携帯の簡単な扱い方が記載されている。 ここのページによれば、携帯の側面についている変なでっぱりを、動かさなければならないらしい。 確かに携帯の横にはそのような物が備え付けてあり、触ってみると、キザギザしたプラスチック性のような感触が確認できる。 このままこれを引いて開けてしまいたい所なのだが、本体を押さえないと無理のようだ。 携帯電話を踏むというのはあまり気のすすまない事だったが、仕方なく片方の前足で携帯を捕える。もう片方の前足でロックを解除して、ギザギザを引いたまま携帯の上部と下部の隙間にロックを解除している方の指を入れる。 そして押さえつけていた前足をどけると、ようやくロトムと画面越しに向かい合った。 「おはようございます。」 私が声をかけると未開封の手紙のアイコンが表示され、驚いた事に携帯本体が振動する。急に携帯が暴れ出すので、私は反射的に距離を取る。 おそらくマスターの言っていたメールとかいうやつなのだろうが、あいにく私にはこの機械を扱うことはできない。そこで、ロトムに出てくるように頼んでみると、案外素直に顔を出した。 「おはよー、レビュー。」 ふよふよと空中を彷徨いながら、挨拶を返すロトム。私に接近してきて、私の周りをぐるぐると回っている。 不思議そうに纏っている稲妻のような形をしたもので私の毛に触れると、私の体質のためピリッと静電気が流れた。 戦闘の時はもっと大量の静電気を体毛に宿すため、触れた相手を麻痺状態に陥れることもできる。便利な能力ではあるのだが、無意識でいても微量の静電気が蓄積されていて、触られるとたまにこうして発してしまう。 しかしロトムは驚いてるというよりも、むしろ喜んでいるようでつんつんと私の毛をつついて時々流れる静電気に興奮している。好奇心旺盛な子供が、無邪気に興味が惹かれるものに積極的に手を出しているような気がして、微笑ましい。それでも、流石に触られ続けると気分が落ち着かない。 「すいません、少し控えてもらえません?」 言われるとさっと手を引く辺りから、私の思っているような害のある性格ではないのが窺える。 やはり、私は知らない相手に対してはすぐに疑いの念を持ってしまう悪い癖があるようだ。 「ごめんね、電気になると夢中になっちゃうんだ。」 「どういうことです?」 「僕は主に電気をエネルギー源にしてるんだ。君たちとは違って、電気さえあれば生きていけるんだよ。」 ロトムにとって電気は御馳走なのだろうか。確かに天然に電気なんて数えられるほどの特殊な場所でしか存在しない。発電所など人工的な場所は警備もあって、ロトムには住みつけないのだろう。 それを考慮すると目の前に電気ポケモンがいれば、飛び付きたくなるのに少しは同情できる。 それを盾にされてもはやり許可することはできない。 「ところで、貴方は携帯が自由に扱えるのですか?」 私が怒ったまま会話が終わってしまっては後味が悪いので、適当に話題を作る。 「うん、何でもできると思うよ。ただし、電話機の中にいればだけどね。」 話の片手間に説明書を一ページずつめくっていくと、ロトムの軽々しい発言が私にとっていかに重いものかよく分かる。薄っぺらい紙束の一枚に詰め込まれている文字の羅列に酔ってしまいそうな量。 これを簡単にやってのけると言うのだからたいしたものであると思う。 そうやって重要性のないありふれた会話を続けている中で、私は一つ魅かれる機能の存在を確認した。忘れようとページをめくっても、見つけたページに無意識に戻ってしまう。 悩みに悩みを積み重ねて、私はようやく行動に出る決断をする。 ロトムには適当な事を言って嘘を流し込み、念のために電気を分けることを取り決めた。 ロトムには早速携帯に入ってもらう。その間、私は机の上にあるティッシュケースから数枚引き抜いてきて携帯電話を覆った。白く包まれてかすんで見える携帯。不安であったのでさらに何枚かかぶせた後、世間一般で言う犬座りの形で、後ろ脚を曲げて前足を内側に添えて携帯の上に座った。 もちろん潰してしまわないように前足に体重をかけて、携帯電話に対する配慮ぐらいはしている。 「お願いします。」 私が合図を送ると携帯が勝手に動き始める。もちろん、私が頼んだ通りのバイブレーションと呼ばれる機能を作動させてくれているからだ。 私は足の間で飛び跳ねて逃げ出そうとする携帯を、股で押さえつけてより一層敏感に感じる所に合わせるように姿勢を調整していく。 ティッシュごしに魚のように暴れる携帯が振動を送ってきて、私の秘所を通して快楽に変換されて体に広がっていく。 思っていた以上の荒波に持ちこたえられず、歯を食いしばっても力が抜ける。そして意味の分からない声を上げてしまう。 「大丈夫ですから…続けてください。」 変な声を抑えながらの弱い声だったので、ロトムに聞こえているのか微妙であったが、私は気にしてはいられない。 私の思う以上に発生する快楽を受け止め、それが全て体に広がっていく。秘所から足の先や毛の先まで、私は全身を微動させ続ける。 携帯が快楽の源になり、秘所から間欠泉のように湧き出してくる。 一回味わってしまえば、薬物のように体が汚染されてもっと欲しくなっていくような感覚。それが永続的に得れているのだから至福の時といっても過言ではないだろう。 しかし、時の流れに逆らえるわけがなく永遠に同じであることはできない。自分自身の体なのだから一番よく分かる。 それでも、貪欲に欲しがっているのか誰にも見られていないのに羞恥を感じているのか、私は必死に耐えようとする。 自分が決めた事なのに変にためらってしまう、頭では理解し難いことではあったが、体の方は気にしてないようだ。 絶えずに快感を遮断したり軽減したりすることなく、私の体は受け止めより濃厚に蓄積されていく。 さっきまでは汗をかき始める程度だったのが、今は口が閉じず、おまけにだらしなく口元には涎が垂れている。 初めてでなめてかかっていたせいか、ずいぶんとだらしない姿を、私はさらけ出していた。 頭の中も虫食いで、意識が薄れていくにつれて体は暑くなっていく。 最後には声を極力抑える程度しか出来ることがなく、抵抗力が無に等しくなったとたんに私は地面に倒れこんだ。 私の秘所から漏れ出した液体が染みたティッシュの上に倒れこんでしまい、生暖かさを感じると恥ずかしさと一時的な満足感を感じた。 ---- 複雑な二枚の板がくっついた、口を開けている二枚貝のような携帯電話を僕は目の当たりにしていた。 変に数字や文字が書いてある数々のボタン、それに光っている上画面、僕にとっては十分驚異と言えるものだった。 携帯電話が開いているのは、レビューが昨日大変苦労したらしく、ご主人の計らいによって開いたまま放置されている。 ご主人にロトムと仲良くしろよとは言われたし、レビューも大丈夫と僕の前で笑っていたが、対峙しただけで僕は腰が引けていた。 見た目の割に臆病だとか、体系の割に貧弱そうだ、など僕に対してはいい評価を聞いたことは少ない。 自分でも弱虫であるということは自覚がある。だから、勇気を振り絞って前に進むなどと果敢な事をしようとは思わない。 今もこうして、携帯の画面がはっきり見えず、細かい文字があるのが見えるぐらいまで、僕は距離を置いて警戒している。 それとは反対に、ロトムは友好的なのでビクビクしている僕を見て平面世界からわざわざ会いに来てくれる。 電子レンジに入って飛んでいる時に比べれば迫力も脅威もはるかに劣る。 それでもゆらゆらと寄ってくるロトムは、十分な脅威の対象になりえるもので、僕は後ずさりをしていた。ロトムがある程度の辺りまで近寄ってくると僕が後退しているため距離が縮まらなくなる。 ちょうど睨みあいのような形となり、ロトムと僕は互いに様子を見ている。 しかし、相手を敵対視しているのは僕側の話である。ロトムは追いかけっこでもしているつもりなのか、一直線にやってくるのではなく、斜めや色々な角度に動き、翻弄しながら僕の方に向かってくる。上手くフェイントなどを混ぜて、僕はただ後ろにしか足が動かせない。 この巧な動きが僕に恐怖の種を植え付け、小さなロトムから目を離さずに僕は必死に逃げのびたが、玄関まで来てしまった所で万事休す。 ただやってくるのを待つことしかできなくなった僕の目に写るロトムの笑顔は、まさに悪魔そのものだった。 そして、目の前までやってきたロトムは楽しんでいるだけとは知るわけもなく、僕はあたふたしていた。 何を言っていいのかなんて悠長な考えはなく、やり過ごそうと慌てる僕の頭の中は真白だった。 「君はガイルだったよね、よろしくね。」 自己紹介に対しては自分も返すものだったが、僕はよろしくとだけ弱々しく答える。この時、何度も頭を下げている自分の姿が頭の中にあった。 しかし、ロトムは嬉しそうに笑っているだけで、僕に危害を加える様子はない。 空中を跳ねるかのように自由に飛び回っているロトムに対して、少しだけ僕の警戒心は緩んだ。 警戒心の減った分だけ、安心感を僕は得て少しは落ち着く。そして、後退してきた道のりを今度は前進し、リビングに戻ってふぅを息を吐いた。 反対にロトムは落ち着かずに飛び回っている。レントラーと言う種族は電磁浮遊のような特殊な技がなければ、地面に足をつかずにいられることは難しい。 それに、電磁浮遊ですら長時間浮いていられる技でもないし、ロトムのように自由自在に飛び回れるものでもない。ロトムは体質のようなものだから確信は持てないが、僕自身の場合だとエネルギーを必要とするので、ロトムがずいぶんパワフルに見える。 「君、疲れないの?」 「疲れる?いつも飛んでるからね、疲れはしないよ。」 「便利だね。」 口数が少なくてそっけない返事だったが、僕が少し羨ましかった。 「でも必死に動き回ったら疲れるよ。君が走ればしんどいのと同じだよ。僕は走れないけどね。」 ロトムも同じように羨ましげに答えた。いつも普通に立って歩いているが、僕にとって浮いている事が当たり前ではないのと同様に、ロトムにとってもそうなのだ。 それに気がつくと、少し憧れが減った分、僕は歩けることのありがたみを感じた。 「君は昨日なにしてたの?」 「レビューと喋ったり、色々して楽しかったよ。」 ロトムは満足げだ。流石レビューと言った所か、僕が初対面の時も普通に話しかけてきた。そして最初あった抵抗も今となればなくなったとは断言できなくても、相当薄れている。 きっと、ロトムにも自然に話しかけて接することができたんだと僕は思った。 「でもね、レビューはさ。変なことして遊びたがるんだよ。」 「変な事?」 僕自身何も話のネタも持っていなかったし、なんだか少し興味もあったので、浅く食いついた。 すると、ロトムは少し困ったような顔をして説明してくれた。しかし、内容は淡白なものでただ携帯電話の中にいて色々いじくっていただけとのこと。 携帯電話のけの字も知らない僕には、中身の事を詳しく説明された所で全く分からず、形だけとして頷いて見せた。 「一応録音しておいたけど、再生しようか?」 「えっ、あ…うん。」 再生と聞きなれない単語に少し戸惑いながらも、僕は不器用に頼んだ。 ロトムは平面世界に戻っていき、急にレビューの声が耳に入ってきて、反射的に僕は姿勢を低くして辺りを見渡した。 慎重に辺りを見渡してみたが、レビューの影はどこにもなく、単に聞き覚えのある声が平面の世界からこちら側にやってきているようだ。 それに気がつくと、警戒態勢を和らげて僕は平面世界の方から響いてくる音に集中した。 しかし、僕が声に驚いてからレビューが本当に近くにいるか確認できない位に静かである。 数秒の沈黙がこれだけかと僕を油断させたが、微かな音が聞こえる。音量は段々増していき、僕が、レビューが息を切らしていると断定できるほどにまで大きくなった。 それだけ事は収まらないようで、次にレビューのあえぎ声が僕の不意をついた。この声のせいで、嫌でも変な想像が膨らんでしまう。 そんなことで頭がいっぱいな自分が恥ずかしく、情けなくも感じたが、体のある一部も残念な事に反応を示していた。 自分で体が影響を受けている事に気がつくと、自分が雄であることと一層羞恥の念が込み上げてきて、体温も比例して上昇しそれに便乗してある場所も硬直していった。 レビューの声だけでも僕にとっては有効打となり、僕の精神面に大きな影響を及ぼし、釘付けになっていた。 変な世界に陶酔してしまっている僕に、録音していた物が全て再生し終わった事に気がつくことなく、急に音が止んだことで少し酔いがさめる。 更にロトムが平面世界から目の前に浮き出てくるので、流石に現実に引き戻された。 「レビューって変わってるよね?ガイルはさ、何か知らない?」 「あ…うん、分からない。それより君は雄雌どっちなの?」 ロトムの質問から推測すると、明らかに僕を誘導しようとしているように思える。可能性としてはロトムの知識が浅いのか、雄だから異性の事を全く理解していない、そのあたりである。 だからその可能性に僕は探りを入れる。 「雄雌?何それ?」 どこまで僕は舐められているのだろうか。威厳がない、迫力に欠けるなど見た目には添わない性格をしているのは自分でも分かっている。 それを考慮に入れても、初対面でここまでとぼけて馬鹿にしていると、更に疑いを深める。 「性別って言えば分かるのかな?」 さっきよりも力を込めて、あえて難しい言葉を選択して僕はロトムにぶつけた。 すると、ロトムは真面目だったのか未だに演じているのか、わかったような顔をする。 「僕はね、性別がないんだよ。変わった体質で、君達とはちょっと違うんだ。」 ロトムは周りと違うことが嫌なのか、共通点を持たないことに残念そうだ。 人間にも男と女があるように、ポケモンにも雄雌が必ず存在すると思っていた僕は大きな影響を受けた。 しかし、ロトムが嘘をついていないなら、興奮するどこから何が起こっているかすら察することが出来ないのも、そういった本能や感情がないからと言う風に納得がいく。 僕はとりあえずロトムが嘘をついていないことを信じた。 「ガイルはさ、レビューの事どう思うの?」 やはりロトムには性別の概念がないせいで、ストレートに打ち返しにくい事を聞いてくる。 異性に対してどんな思いを持っているかなんて、とてもじゃないが僕の口から本音は出そうにない。 「優しいと思うよ。」 抽象的でありきたりな回答だが、逃げるのには十分だったし、実際レビューは優しいのだから嘘をついているわけでもないのだから、手抜きという点以外においては悪い気はしなかった。 他にもしっかりしているとか、いくらでも並べられたが、僕がレビューに関して多くを語るにも抵抗がある。 いつも頼もしい印象で相手を色気で魅了するような人格ではないのだが、ロトムのせいで今の僕は落ちつけずにいた。 しっかりと固められてできていたイメージが、溶け出して崩れていき、崩れた中でも溶けていない物とか混じり、濾過して分けることもできずに、戸惑っていた。 レビューに幻滅している反面、下心も無きにしも非ずではあったが、ちゃんと雌らしい所も持っている事が僕にとっては嬉しかった。 いつも向けてくれている笑顔は作っているものではなくて、ひょっとすると雌が自分に向けてくれている物だと、変な期待までしてしまう。 レビューと言う個体一つに対して、意外な面への欲望まがいの期待と衝撃とが、たくましい面への尊敬とで混沌と化している。 しかし、そんな希望も僕にとっては薄く見えないに等しい。 誰と向かい合っているだけで、自然と体が硬直して目線を合わせられなくて、そうしていつも相手との会話を避けてしまう。 いつも相手から逃げて、自分から差し込んでくる光を遮っていた。 そんな中で急にレビューに手を伸ばしても、躊躇いもあり触れることすらできない。 「駄目だよね、僕。」 心の中で描いていたビジョンに対しての落胆が独りごとを形成した。 「何が駄目なの?」 「勇気ないなって。」 「そうなの?僕は思わないけど。」 「君が思わなくても、僕はそう感じてるんだよ。」 流れに乗って会話が進んでいるが、ロトムに上手く運ばれているような感じもある。 「それじゃ勇気だせばいいんじゃないの?」 余りに単純な発想に僕は少し硬直してから、できたら困らないよと否定した。 「諦める前に頑張りなよ。」 プラスの電荷でも帯びているのか、否定する僕を更に否定してくる。 頑張れか、簡単に言ってくれるよ。でも、一回ぐらい頑張ってみようかな、などと変に今日のでき事もあって内心では昂っていた。 ---- 心の整理がつかないままの対面。偶然でありながらも、僕にとってはむかえるべくしてむかえた状況だった。 意図してしてことでないにしろ、レビューのプライバシーを侵害するに値することをしてしまったのだから、謝る時がきたのだと何度も自分に言い聞かせた。 僕の内心の事を知らないレビューは、目線が合う都度自然と笑顔を見せてくれるのだから、余計に言い出せなくなっていた。 「ロトムとは仲良くやってるの?」 僕の方から口を開かなかったせいで、レビューから話しかけてきたが、僕は戸惑って返事を返せなかった。 その態度がレビューに上手くいっていないように思われて、レビューを心配させてしまう。いつもレビューは僕の姉と言うよりも母に近いような存在で世話を焼いていくれる。 けれども今日ばかりは僕にはいらないおせっかいだ。 「友達にならないとだめよ。」 また僕は黙って返事をしなかった。全く話を聞いていないかのように、目線を避けて沈黙し、かまわないでくれと言いたげな態度を僕は示していた。 僕はそうやって悟られないようにやり抜けるつもりでいたが、不運にもレビューは鋭く、僕の期待を裏切り確信に近づいていた。 「何隠してるの?」 何を根拠に言い出したのか、レビューが唐突に尋ねてきた。この瞬間が勝負だった。 この一瞬、動揺の色などもってのほか、顔色一つ変えることなくやり過ごすべき瞬間が訪れた。 視線が交わり、たった数秒が長く感じるこの空間。 その時に僕の焦点が不安定なのをレビューは見逃さなかった。戦いで僕は瞬殺されてしまったのだ。 異変を感じとったレビューは急に眼の色を変えて、鋭く突き刺すかのように言葉の刃を僕に向けてくる。 僕はそれを避けるたびに持ち物を落とすかのように、ぼろをこぼしていき、最後には丸裸にされてしまったかのようにすべてを告げてしまったのである。 説明をしている僕は戸惑いと羞恥心が混じり合って、噛んだり言葉を詰まらせたりと、慌てているのが手に取るように分かる。 一秒が何分にも感じて体が妙に重くなって、僕はレビューとは目線を合わせることが辛く、うつむて離し続けた。 全てを吐き出しても僕の気分は晴れることなく、依然と心身共にだるい。 「ロトムも悪いけど、貴方には責任を取ってもらわないと。」 どんな罰が僕に下されるのか、これのせいで僕は気が晴れずにいるのだ。 レビューとの関係が悪化するのももちろんのことだが、処分が下されることは避けられないにしても喜んで受ける者もそうはいない。 「仰向けに寝転がってもらえる?」 この時僕の身に何が降りかかるのか予想もできなかった。レビューに腹の辺りを足で踏まれ回されるのか、僕を電撃でいたぶって苦しむ表情を憂さ晴らしにするのか、考えるだけ恐怖は膨張していく。 断る術もなく、ただ従うことしか選択の余地がない僕は恐る恐る横になり、レビューの顔を見つめる。 一見普通の表情に見えるが、内面にはどれだけの怒りや恨みが込められているのかと思うと僕は怯えて目を閉じ罰が下る時を待った。 「そんなに構えなくても。力を抜いて。」 レビューはまさに今僕に攻撃を仕掛けてくる。僕は本能的に全身に力を入れて攻撃に備えた。 「大人になってきてるじゃない。いつまでも子供なわけじゃないのね。」 唐突に流れから逸れたことをレビューが口にしたため、僕はびくびくしながら瞼を開けると立って僕を見下ろすレビューが視界にいる。けれでもレビューの目線は僕とは化する程度でもっと手前の方に向けられているようだ。 それが何所かだと気がついたとき、恐怖よりも恥ずかしさが遥かに凌駕する。 「ガイル、もう顔赤いですよ?今から貴方にも同じだけ恥ずかしい思いをしてもらうのに。」 レビューは前足を僕の様に怯えるかのごとく毛の中に隠れた肉に当てて踏みつぶさないように弄ぶ。 僕自身にもプライドは存在しているもののレビュー相手となると、振り払いたいものもできなくなる。 弱った目でレビューを見るも、目線が合うと逆にこちらから逃げてしまう始末。結果的には僕は素直に体を弄られる道を選んだ。 今まで自分でも扱ったことのないモノを、他人に見られるだけでも抵抗があるのに、触られるなんて当たり前に恥ずかしい。 恥ずかしさのせいか、それともレビューに刺激されているせいか、体が段々熱くなっていく。それと同じように僕のモノも隠せない大きさに膨れ上がる。 そして、僕のモノが大きくならない事を触りながら確認するレビュー。 「こんなに大きくなるんですね。体だけはエッチな大人になって。」 「そっ、そんなことないよ。」 「じゃ、ガイルはこういうこと嫌いなの?」 僕は言葉を見失う。心のかではやけくそでロトムのせいにして逃げ出したかった。あんな変な音声を僕に伝達してくれなければこうはならなかったのに、と。 正直に言ってしまえば、否定するつもりはなかった。自分でもまともに触れたことのないものを、しかも異性に触れられることによるこの感覚は僕にとっては至高のものに感じれる。 もっと手を止めずに続けてほしいと叫ぶ欲望、けれどもそんなことをレビューに要求するのは、自分勝手、自己満足、そして嫌われるような気がして本音が言いだせない。 僕は黙ってだた顔を赤く染めて、それとなく態度で語るしか術がなかった。 「別にいいの、ガイルが興味を持つのは悪くないの。だから私が教えてあげる。」 レビューは僕の膨張したモノに舌をぺたりと付ける。柔らかい感じが広がり力が抜けて行く。もともと動く気のない僕の体はいっそう動く気を失う。 それとは同時に反発するような動きを取らせようとする感情も芽生える。レビューが遊び半分に僕のモノを取り扱っている事を止めさせろ、そう僕に強く言い張る。 僕は後者の感情に流されて行動に出た。 「やめて…レビュー。」 「どうしたの?恥ずかしいの?」 「違うよ、こう言うのって好きなもの同士がやることでしょ…君と僕がするようなことじゃないと思うよ…」 レビューは黙って次に口を開くと言葉よりも行動が先行した。僕の口にレビューのを張り付け合わせて、開いたレビューの口からは侵略者が忍びこんでくる。 それは無抵抗な僕の口を這いまわり、僕は目を丸くして驚いて硬直した。 ようやくその異星人が僕の口の中の探索を終えると、やってきた印に透明な線を残して離れていく。 僕の舌とレビューの舌を結ぶ透明なものはだらけて僕の上に崩れ落ちる。 「もちろん、嫌いな子にはしてあげませんよ。ガイルの意見は聞きませんけど。」 「そんな一方的な…」 心の中では僕は歓喜しているのに、状況に素直に身を任せるには恥じらいが邪魔をしている。 我ながら大事な時にもたもたするのが情けないと思う局面。 レビューは自分で宣言した通りに、問答無用で雄の象徴を再び標的に定める。 ライボルトとレントラーでは種族的に力比べは僕の方に分がある。けれども口の割に僕は抗いもせずに素直にレビューの行為を受ける。 レビューは僕のものを舐めながらも何度も僕の顔を覗き込む。微妙に息を荒くしながら快楽の味をかみしめる僕は、顔を赤くして感じているとしか伝えることがない。 快楽の衝撃が僕の体を震わせる。そして徐々に被害は拡大していき全身が麻痺しているようだ。 限られた条件でしか味わえない感覚の支配下に僕は置かれて今はレビューの人形も同然、これなしでは崩壊してしまいそうだ。 レビューに対する思いと不満が解放されて、何か別のものが満たされていく、僕は今まさしく満足している。 「中身は子供なのに、体は大人なんだから…」 僕の足の毛中に手を這わせて、地面をけるために発達した肉付きにどこか酔っているレビュー。 レビューの手がくすぐったくて笑いを漏らしそうになるが、僕のものを刺激するせいで、快感とくすぐったさのどちらに反応したらいいのか体が混乱する。 笑いそうになりながら、泣き叫ぶことで舌が噛みそうになる僕は、なんとか口を塞いでしまおうと試みる。 「駄目ですよ、ちゃんと鳴かないと楽しみが減るじゃないですか。」 とうとうレビューの口が動いた。僕のものを先から口の中に含んでいく。 レビューの口内の柔らかさと厚さが重なり合い、僕のものを包んでいく。 「やっ…汚いよ。」 僕の言葉はレビューにとってはそよ風にもみたいないのか、気に留める気は見られない。 僕のものの先から漏れ出していた液体とレビューの唾液が混ざりあい、隙間から聞こえてくる水音。 僕のものの先からレビューに汚染されていきそうだ。完全にレビューの手に落ちている僕。 レビューの手のひらで崩壊していくことしか僕の出来ることはない。生暖かい空気が僕のを包みこんでいて、柔らかい感触のものが撫でまわしてくる。僕のものを抑えられている以上、抗うこともできずしゃぶりつくレビューを見ることしかできない。いつも清潔なレビューの嫌らしく、表情も雰囲気に見合った色に染まり、僕の描いていたような世界が目の前に広がっている。 理想を手にしているのだけれど、僕には素直に喜べないのかそれともまだ馴染めていないのか、抵抗感がまだ抜けずにいる。 けれども僕の方に必死になるレビューの色っぽい目に心は魅かれてしまって、それが快楽の加速につながっていく。 自分が本当に好きなんだから、こんな状況下においても気持ちが良いと思えて、満足できているんだと、僕の警戒心が薄れていった。 正確にいうなれば、快楽によって僕とレビューを隔てる壁が溶け出している。僕だけの一方的な思い込みなのかもしれないけど、レビューと素の気持が交差しているような気がして、何もしゃべれていないけど伝達出来ているような気がして、嬉しい反面、表現方法に対する恥ずかしさもある。 都合のいい解釈かもしれないが、きっかけを作ってくれた平面の住人にはお礼と謝罪をしなければならないのかもしれない。 しかし、レビューがゆっくりと思考を巡らせてくれるわけがなく、喘ぎながらもどこか余裕があった僕は、ただあえぐだけの溺れた獣になっていく。 「おかしく…なっちゃ…っよ…。」 いつもとは違う、異なるものが僕のものに溜まり噴き出そうとしている。 何か込み上げたかと思うと、僕のものはレビューの口の中で大きくはじけた。 レビューは口一杯に精液を含んでいる。不意に噴き出したのに対しては冷静に喉をつまらせずにいる。 成し遂げたことで萎え始める僕のもの、そして僕自身にも疲労が襲い掛かる。 「あらら…ばてちゃってる…もう少しは遊んでほしかったのに。」 一回果てただけでも、初めてにしてはあまりにも激しかったのが僕の体には重荷になり、僕は崩れ落ちた。 無抵抗な僕にレビューは追い打ちをかける気はない。レビューは余韻に浸って僕の隣で僕の寝顔を眺めている。 「戻ったぞ。珍しく仲良くしてるみたいだな。」 レビューの意識は話しかけられるまでは完全に離脱していた。その意識がマスターの声で引き寄せられた。 といってもガイルは寝てているだけで、実際のところこの風景だけでは仲良さそうにしていると、判断できるには判断材料が少ない。 マスターはただ単に珍しく思って、一言余計に対しただけなのだろう。ガイルが本当に私のことをどう思っているか、そこに関する答えにはまる言葉を聞き出すことはできなかった。 口では反抗の意を示していたものの、素直に受け入れている辺りからはこばんている風に思えなかったので、私は 「お帰りなさいませ。ロトムの方に伝達お疲れ様といっておいてください。」 不思議に思ってマスターは平面世界に問いかける。けれども、ロトムは意地悪をするのが好きなのか、ちゃんと私の約束を守ってくれているのか、まともな答えを出す気はないようだ。 ロトムは約束通り最後まで仕事をしてくれるようだ。形としてはロトムを利用しただけのように見えてしまうが、秘密の一つを握らせてやったのだから、関係としてはそれなりに深いものを持ち合わせたように私は思えた。 ロトムを問い詰めるのに手ごたえを感じないマスターは携帯をその場にほったらかして、気が絵に部屋に戻っていった。ロトムに何か聞くタイミングは今しかないと、私はロトムに呼びかける。画面の中から立体が出現して私の前に舞い降りてきて、上下や斜めに移動しては落ち着きの無さが窺えた。 「ガイルが、何か私に言ってませんでしたか?」 「変な感じでね、優しいって言ってたよ。それよりさ、何でガイルはレビューの事になると変になるの?ねぇ?」 大人の事情ですよと、ロトムを子供扱いするような言葉で軽くあしらう。ガイルの寝顔を再度確認すると、吉報に自然と笑みを浮かべた。 そういう関係に関しては概念さえ持ち合わせていないロトムは、それでも子供の様に私に食いつき続けた。 ---- もう少し続きます 最後まで読んで下さりありがとうございます。 なんとなく、へたれな子をかいてみたかったので。 レントラーの見た目はしゃっきりしてる感じがするんですけどね。だからこそ余計にへたれっぽくしてみたかったりしました。 ---- 何かございましたら #pcomment