ポケモン小説wiki
小さきもの の変更点


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その少女は名前というものを持たなかった。

まだ目も開ききらぬ生まれたばかりの幼きときに、わずかに声が聞こえてきて、それがうすうすと自分の親だと認識をしたが、それより先にその声を聞いたことがない。
生まれてすぐに預けられたのだと気がついたのは物心がついたころで、さらにそのときに聞いた声は親ではなかったと気がついたのは、それからしばらくしてからだった。
預けられているとは言っても、暗く狭い時間の経過も歪んだ様な空間に預けられていたのだったが、
情操教育に言葉の使い方や計算方法などの初等的な学問に現在社会の成り立ちや基礎科学、さまざまなことを学んでいたが、どれもただ学んだただ知ったとしか感じられないような感覚で、眠りながらにして知識を無理やり詰め込んでいく睡眠学習を受けていた感じだった。
それは言語体系がまったく違う種族とも意思の疎通ができる生物であるために、言葉を介さなくとも感情を伝えてそれを受けることができる、つまりはテレパシーに近いもので預けられた空間内でのコミニュティが形成が形成されていたのだろう、彼女はそこに共にいたいろいろな者の声を聞き、無意識のうちに、たくさんのことを学んでいた。

鼓動が高まってくる。

悪い夢から解き放たれたかのように感じる。
初めてのこの感覚を戸惑いを隠しきれない、それまでの白と黒の世界に突然鮮やかな彩色が現れていくかのように冴え渡って行く。
鼓動? 何の鼓動だろうか? 胸の心臓の鼓動だろうか?

目の前が真っ白になり、記憶のどこかで覚えのある声が聞こえてくる。聞いたことの声はただ一つだ。


それは、人間だった。

どうみても、自分と同じ種族体系ではないもの。
あの時に聞こえた声と言うものが産んでくれたものではないことを心底落胆したのだが、そう落ち込んでいるうちに無駄のない流れでたくさんの機械にかけられてすぐにいつもの世界の中にダイブしていった。



次にあの世界に出てきたのは、それから少し経ってからだった。
とはいっても、時間の経過なんてものははっきりいって感じ取ることもできないし、あの世界という表現をしたところで、こっちの世界こそが現実の世界であって、いままでの世界が非現実の夢の世界なのだが、そうは知っているとしてもなかなか実感がわかないものだった。

隣には自分と同じ姿の少年が居た。
焦げ茶色い体色と、胴体と全く不釣合いに大きな顎。正直不恰好でお世辞にも綺麗とは言いがたい。自分も彼と同じ姿をしていると思うと嫌気がさした。

辺りを見渡すと、たくさんのポケモンがいた。
なんだろうか、この懐かしい気持ちは。顎に自然の風を心地よく吹き付ける。自分の帰るべき場所に戻ってきたかのように居心地良い、生きている者はこうして生きている者に囲まれることこそが一番の幸せなのだろう、気がつくと駆け出していた。
「はじめまして、ナックラーさん」
駆け出した少女の姿に気がついたのか、妙齢の女性のリングマが優しく挨拶をかけた。
「ようこそ、ズイセントラルブリーディングパークへ」



「まずは自己紹介から始めましょうか、こんにちは。私はここのセラピスト兼……助産師、のミナミです。一応ここの運営をしていますので何かあれば私に言ってくださいね。どうぞ、よろしくおねがいします」
頭を下げたリングマの彼女に合わせて、少女は彼女にこちらこそよろしくおねがいします。と伝えて、すぐに頭を下げた。
「じゃ、早速だけども、良ければ貴方達のお名前を教えてください。代名詞とか、種族名で呼び続けるのはさすがに気が引けるので」
その言葉に少女はさぁぁと血の気が引いた。その少女には名前というものを持ってなかった。名前を付けてくれるはずの存在からいまだに授かってない。隣に居る少年も、彼もまた同じだったようだ。名前を持たないということは非常に些細でどうでも良いことかもしれない、そんなものはただの呼び名であって飾りであることは知っている、しかしその持たない者の恐怖というものは持つものには絶対に分からないものだろう。
黙り込む二匹に、ミナミは問う。
「名前を貰ってないの?」
びくびくと頷く二匹に、ふっと笑って明るく話しかけた。
「持っていないなら、自分で考えちゃえばいいのよ。素敵なことじゃない、自分の名前を自分で決めることが出来るだなんて!」
その一言で、少女は元気を取り戻した。もしもあのときに彼女が笑ってくれなかったならば、立ち直ることが出来なかったかもれない、それくらい笑ってくれたことが嬉しかった。
少女はしばらく考えて、ふと頭によぎった単語を口にした。
「ユキ」
「ユキ? ユキちゃんね」
「はい、その名前でお願いします」
すぐに隣に居た少年も口を開いた。
「僕は…… ナミキで」
そういえば、彼の声を聞くのはこれが初めてだったかもしれないなとユキは思った、ややあどけなさが残る高い声だが、月並みでつまらないと感じた。
「ありがとう、ユキちゃん、ナミキくん。もしもトレーナーと旅を続けることになって、名前を貰ったとしても、自分で考えたその名前を大事にしてね」
ユキが自分の名前を小さく唱えて反芻していると、ミナミは何か面白いことを閃いたかのように「あ、そういえば」と呟き、次の言葉を発した。
「本日を持って、ミナミくんとユキちゃんは結婚することになりました。結婚おめでとうございます」
「…………!?」
「というわけで、今日の夕食はささやかな結婚披露宴パーティです」
余談だが、そういえばこうして外に居るのに自分達の主人に当たるあのトレーナーがいないことにユキはやっと気がついた。果たして彼はどこにいったのだろうかと考え始めていたときの、発言だった。



二匹はずいぶんと突然のことに頭が真っ白だった。いろいろと語った後、結婚ということについてじっくりゆっくりと考えておくと良い、とミナミは言い残して去ってしまった。
結婚。つまり、男女が夫婦になること。一対の男性と女性が継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合をすること。
結婚は怖いことじゃない、結婚は楽しいものだと彼女は語っていた。確かにそうだとは思う、しかしどうなのだろうか? 今の自分にはそれが分からない。
ナミキとも誰とも話す気にもなれずに、ユキは独りきりになってボーッとしていた。
そうしているうちにも時間は過ぎていくわけで、彼女曰くささやかな結婚披露宴パーティの夕食会の時間になった。
予想していたように、上座には二匹の席が並んで用意してあった。ただ、そこに並んでいた食べ物はもちろん普通の時よりはずっと豪華な物だと思うが、予想していたよりも少なく粗末なものだった。
「では、ナミキとユキ両者の幸せを願い、乾杯!」
ミナミの乾杯の合図と共にささやかな夕食会は開始された。
夕食会に参加している者は皆、自分達の結婚なんて正直どうでもいいと考えていることが分かる。
ただ、いつもよりも美味しいものが食べられるから、ここに参加しているようだ。実際にパーティなんてそんなもの。人をいっぱい集めたいから美味しいものをたくさん用意しておく、そうすればたくさん集まって、式が盛り上がり進行が進めやすくなる。
たいていの場合はこういう式典の内容そのものになんて、興味がないのだ。
ガヤガヤとした談笑の声から、かすかに声が聞こえてくる。まだ子供のにかわいそうだ、トレーナーは何を考えているのだと。
かわいそうだと、そんな声が聞こえるたびにユキは不安になってくる。
「結婚おめでとう!」
ミナミが話しかけてきた。少なくとも彼女は自分たちのことを祝ってくれているように見える。
「ところで、今晩の用意は出来ているのかな?」
「用意って?」
「今日は新婚初夜でしょ」
二匹の顔が途端に真っ赤に染まった。
「その様子だと、出来ていなかったみたいだね。あははっ まあ、なんとかなるよ、今晩を逃すと絶対に思い切りがつかなくなって出来なくなるから今のうちに腹をくくっておいたほうが良いよ、若いうちは何事もチャレンジだ~!」
と、言って向こうに行ってしまった。酔っぱらっている彼女の後姿を見ながら二匹は黙り込むしかなかった。


腹をくくる事にした。

ナミキが寝床を分けていたので、そのまま押し倒した。
「……本当に、やるの?」
「……うん」
彼の瞳を見たら、とたんに弱気になりそうになって決心が揺らいだが、ユキは言い切る。
「……ずっと、考えていたんだ。結婚ってなんだろうなって……」
「…………」
「結局分からなかったけど」
「おい」
「でも、やっぱり。どんなことでも悩んだらやりたいことやるべきことを精一杯やるのが一番なのかな……? と思って」
「……そうか。で、やりたいことって?」
「デリカシーが無いヤツめっ!!」
「いてぇぇ!」


彼の皮膚の感触が、肌に直接伝わってくる。
砂の吹き付ける環境での生活に適した、つるつるした殻皮で包まった体なんか冷たいだけだと思っていたが、どうしてこうも暖かく感じるのだろうか?

「ひっ……」

ハムハムと彼がユキの体を甘噛みする。
そのくすぐったいけれども、どこか気持ちよく感じる感覚に酔いしれながら、ユキも彼の体を甘噛みしていく。

「はぁ… はぁ…」

深い快楽に酔いしれて、無心に互いの体を触れ合う。甘い口付けを交わしながら、思い出す。
ミナミ曰く、こういうことが上手いとか下手とか言う人がいるけれど、そんなことは全く無いものだそうだ。
その行動は遺伝子に刻まれているもので、どんな場合でもたいていいっしょ。だから、うまくできるかということに心配をする必要などない、体の赴くままに動けばよい。
もしも、その言葉が本当ならば、なんとも素晴らしい生命の神秘だなぁと思った。

「ん……」

ユキの上に彼が乗っかり『バイブレーション』が始まった。
ナックラー系の種族は、求愛行動の一つで『バイブレーション』という羽を打ち鳴らす行動がある。ただし、今は進化していないので顎を打ち鳴らすことで振動を起こしているのだが……。
これは…… やばかった。

「ふぁあ゙ぁぁ――!!」

しんどうポケモンと言われるだけあって、体に伝わる衝撃が半端無い。
快楽の波が寄り集まり、大きな津波になって押しよせてきたようだった。
頭と体がどうかなってしまいそうになりながらも、必死に堪えてみるものの、その波にはまるで歯が立たない。
体中に電撃が走ったように震えだし、一気に興奮が頂点まで。
達してしまった。




まことにみっともないことにユキにはそこから先に記憶が無く、気がつくと朝になっていた。
横でナミキがすやすやと寝息を立てていた。あのあともしばらく続いていたようだから、あのときに気を失ったと言うわけではなく、単に覚えてないのだろう。
記憶が無いだけに、昨晩の状況がどうなってしまったのか、自分でも本当に怖い。
あのときの出来事を思い出すだけで恥ずかしくてたまらないのだが、知りたくなっている自分が本当に恥ずかしかった。


その日の食事は多めに取ることになった、分娩に備えるそうだ。正しくは産卵なのだが、ミナミ曰くそちらの方が言葉の響きが好きらしい。

そして、その夜のこと。

「はい、吸って吸って、吐いて~!」
「フッ フッ ヒー!」
「逆ですよ、それは多分苦しいですよ~」
「フッヒー フッヒー」
「はい、吸って吸って吸って、自然に吐く」
「ヒッヒッヒッヒッヒ」
「吸ったままじゃダメですよ~」
「わ、分かるかっー! できるかっー! 畜生ー! なぜだー!」

ユキは自分でも悲しいほど何を言っているのか分からなっていた、昨晩もこんな感じだったのだろうと想像すると、嫌になった、萎えた。
結局、分娩は夜通しかかって終わったのだが、
朝目覚めると、寝るときに抱いていたはずの自分の卵が、いつのまにか消えていた。
覚悟していたとはいっても、辛かった。

その日は涙が止まらなかった。


二度目の産卵の後に、ユキはミナミから難産型だと告げられ、それに伴って、ナミキと二匹で進化してもらうことになった。
進化すればいくらか母体の負担が軽減できるはずだそうだ。最終進化までは無理だとしても、ビブラーバならば頑張ればなれるらしい。
夜の営みと平行しつつ、二匹は他のポケモン達の作った特訓メニューをこなして。
3日で二匹ともビブラーバへと進化を遂げた。



それから3週間が過ぎて、ここでの生活も完全に慣れてきた時のことだった。

誰かが泣き叫ぶ声が聞こえてきたので、出向いてみると。
泣いているのは一匹のイーブイの女の子だったようだ。
周りの話を聞くところによると、ここに預けられたことが嫌らしい。
泣き叫ぶイーブイの横には、相手方だと思われるドーブルの男性がどうしてよいのか分からずにオロオロしていた。
身長差が4倍もあるので、泣き叫ぶ理由も痛いほど良く分かる。1m近くの差は遠くから見るとまるで父親と娘に見える。

「しっかりしなさい!」

ミナミの声が響いた。ミナミの大声を聞くのはこれが初めてだった。
「もう、大人でしょう! 子供じゃないのだから、泣くのを止めて、自分はどうすればいいのか考えなさい。 もしもどうしてもここが嫌ならば、理由をつけてトレーナーのもとに帰してあげるから」
イーブイの女の子はビクッと固まったあと、しばらくして、ごめんなさいと小さく謝った。



その夜、ミナミが独りうずくまっていたのを見つけて、ユキはそっと声をかけた。
ミナミは泣いていた。

「ごめんなさいね、今日はみっともないことをしてしまって」
「……ううん、ミナミさんは悪くないよ」
「ああ、私ってサイテーな女ね、子供にあんなことを言ってしまうなんて、ダメな女ね」
そんなことはない、とユキは言った。
ここ、育て屋という場所は、トレーナーから『ポケモンとポケモンの交配』をさせることの契約をしている。もしも、それができないならば契約違反として育て屋は信用を失って廃業してしまう。
だから、意地でもそれを実行しなければならない。もしも、あそこで叱っておかなかったらミナミさんはその信用を失うことになっていただろうと思う。
私の場合だってそう、ああやって場を作り出してくれたおかげで、私はこうして生活が出来ている。
一週間の卵の数のノルマを達成するために、私の体のことを考えて、進化の特訓に付き合ってくれた。
「ミナミさん、貴方がなんと言おうと私には最高の女性よ」
それを聞いた、ミナミはありがとうとと頭を下げた。
「正直、私には……この仕事は向いていないのじゃないかと思うの、契約を成功するために、目的を達成するためにいろいろなことをしなければならない、私には耐え切れない」
「分かってますよ、それは仕方が無いことですから…… あの食事会の時に、貴方が私たちの食事に媚薬をこっそり入れてくれたことは……」
ミナミの体が震えた。
「私は本当に感謝しています。もしも、アレが無ければ私はどうなっていたか分からないです。もしかしたら、子供が産めないとうっかり判断されて、今はここにいなかったかもしれない……」
「ごめんなさい」
ミナミは深々と頭を垂れた。
「だから、大丈夫です。ナミキが私の実の弟だったと気がついたときよりはマシです」
「あ、やっぱり、そうだったのですか?」
「はい、弟君本人は多分知りませんけどね。私のトレーナーはナミキと私の何を遺伝させたいのでしょうかね?」
「ナミキくんの逃げ足の速さ?」
「そうかも、あははは……」

夜の心地よい空気がユキとミナミを包み込み、さやさやと虫の声が静かに聞こえてくる。

「ユキちゃんの、夢はなんですか?」
「夢? ……夢か」
ユキは目をつぶって考える。
「私の夢は、家族で暮らすことです」
「家族……?」
「はい、まだあったことの無い私の兄弟姉妹と、私の産んだ子供達、そしてナミキも一緒に、どこかで全員で暮らしてみたいのです」
「叶うといいね」
「はい、だから、今は少し幸せ」
「え? なぜ?」
「ナミキがいるから、そこで夢が少し叶っている」




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  あとがき

18禁というものは、18歳未満閲覧禁止と言う意味ですが。
それは対象年齢○歳以上と同じ意味であって、「○歳以上じゃないと楽しめないぞ」ということです。
だから、18禁とは、決して卑猥で下品で低俗なものではなくて、18歳以上じゃないと理解できない世界を描くものじゃないかなぁと思って、このような作品を手がけてみましたが。
いざ、書いてみると後半がかなり駆け足でした、18歳以上の高尚な作品とは言えなくなっていました。
しかし、自分の作品には自身が自信を持たないと、作品が可愛そうです。悩みましたが、これでよろしくおねがいします。

作品タイトルは書いたときに聞いていた曲名からつけました。

IP:202.253.96.152 TIME:"2012-06-10 (日) 18:27:33" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%8D%E3%82%82%E3%81%AE" USER_AGENT:"SoftBank/2.0/001SH/SHJ001/SN353012043858651 Browser/NetFront/3.5 Profile/MIDP-2.0 Configuration/CLDC-1.1"

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