ポケモン小説wiki
寄生 の変更点


[[第一回短編小説大会>第一回短編小説大会のお知らせ]]に出す予定だったもの

注意:流血アリ

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「あ、キノちゃーん!」

自分の名前を呼ばれて振り向くと…

「キノコ…?」

遠くに大きなキノコが見えた。
それがユラユラと揺れて近づいてくる。

じっと見ていると下に小さい体が見えた。

「ふうー…やっと追いついた。」
「パラ…君……?」
「うん。久しぶり!」

……なんだろう…パラ君に見えるけど…パラ君じゃない人みたい……。

「どうしたの?」

その心配したような声はやっぱりパラ君のような響きがある。だけど……

「違う…あなた……誰…?」
「酷いなぁ、さっき君が言ったじゃないか。僕はパラだよ。進化しただけじゃん。」

パラスが進化するとパラセクトになるのは知識で知ってるけど……この人は私の知っているパラ君と少し違う気がする…。

「ねえ、行こうよキノちゃん。」
「ごめん……やっぱり今日は止めない?」
「えーっ…まぁ良いけどさぁ……。」
「ねえ、久しぶりに遊びに行こうよキノちゃん。」
「ごめん……今日はちょっと…。」
「えーっ…まぁ良いけどさ……。」

しぶしぶといった感じで了承してくれたパラセクトに「またね」と言って私はその場を離れた。
パラセクトはパラ君らしい反応をした。
けれど…彼には何か裏があるように見えた。



この時もし、私が違和感に気がついていなかったら私は幸せに暮らせていたのかもしれなかった。

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「たしかに俺も昨日パラに会ったけど…言われれば変な気がするなぁ……。」
「やっぱりアルキメンデスもそう思う?」
「まぁ……ってかブッ飛ばすぞ。」
「女の子に手をあげるなんてサイテーね。あなた手ないけど。」
「うるせえ。」

私やパラと昔から友達のナゾノクサのリーフは私に毒の粉を飛ばして来た。
ポイズンヒールの私には効かないのがわかってるはずだから、そこはリーフの優しさなのかも。

「でも、パラ君が変わったのは進化したからそう見えるだけなのかな?」
「だとしたら俺達はまだ進化してないからなぁ…わからないのも無理ないか。」
「リーフも二回進化するなら一回ぐらいさっさと進化してよ。」
「二回つっても二回目は進化石なんだよ。運がなきゃ出来ねーっつうの。」

結局、私達はパラ君の違和感が何だったのかもわからなかった。
性格や口調が変わったわけじゃないし、見た目を除けば今までとなんら変わりのないパラ君のはずなのだから。

「ま、そんなに気にする必要もないだろ。アイツだって何かあれば言ってくるさ。」
「……そうね。」

私達はそういって別れ、住家に帰った。

#hr

「あ、キノちゃん。」
「パラ君?」
「やっほー。」

パラ君は背中の大きな茸の重さをものともしていないように両手を振ってこっちに歩いてきた。
足は茸に隠れて見えないから宙に浮いてるように見える。

「それ、重くないの?」
「……どれ?」
「…その大きい茸」
「重くないよー。自分の体が『重い』なんておかしいじゃん。」
「…そっか。」

……やっぱりおかしい。
パラスの時は小さくても茸をあれほど嫌がっていたのに、今はそれが大きくなっても気にしてないなんて。

「あ、そうだ。僕ね、引っ越したんだ。」
「えっ!?」

……驚いた。
洞窟の中だけどあんなに日当たりがよくて気に入っていた家を引っ越すなんて…。

「…そんなに驚かなくて良いじゃん。体が大きくなったから窮屈だったんだよ…。」
「あぁ、そっか。ごめんね。」

たしかにこの大きさだとあそこは少し狭かったのかもしれない。

「だからさ、僕んトコに遊びにに来ない?」
「うーん……。」

新しい住家も気になるし、パラ君の違和感の正体がわかるかもしれないけど……少し怖いな…。

「だいじょーぶ。何も変な事しないから。」
「そうやって言うとかえって怪しいよ?」
「そう?」

……ここは、いつものパラ君みたい。
私はちょっと安心して、行くことにした。

「あ、そうだ!リーフも呼んでいい?」
「んー…。」
「なんで考えるの?あ、もしかして…変な事する気?」
「まさか!…なら別に良いよ。そっちの方が『その気』がないって証明にもなるしね。」

#hr

「……って事なの。一緒に来てくれない?」
「お前勇気あんなぁ…。まぁ一人より二人の方が良いか。良いぜ。」

リーフは快く頷いてくれた。
正直な話…バトルが苦手な私達は一人だろうが二人だろうが変わらない気がするのは黙っておこう。

「……なんか俺がイラつくような事考えてねえか?」
「まさかー。」

……カンは鋭かった。

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「着いたよー。ここ。」
「パラ…ここって……。」
「随分と前と違う所に決めたんだね……。」

山の中には変わりないけど、ここは山の北側。
日当たりが良くないどころか日が当たらないんじゃ……?

「でも涼しいから良いんだよー。こっちは風があんまり来ないから冬も乾燥しないし。」
「あぁそっか…お前乾燥肌だもんな。」
「ここは湿気もあるし……意外に考えてるんだね。」
「『意外に』って酷いなぁ……。」

パラ君は少し拗ねたような表情になった。
進化してもパラ君はやっぱりパラ君なのかも。
そう考えると少し嬉しくなった。

「…っ!?キノっ!!」
「キャッ!?」

リーフは私に向かって毒の粉を飛ばして来た。
私自身は別に痛くも痒くもないけれど、わざわざ私に毒を浴びせた事におどろいた。

「はやく逃げ…ろ……。」
「リーフ…?リーフ!?」

そう言ってリーフは急に倒れた。
私は驚いてリーフに近寄ったけれど、パラ君はピクリとも動かなかった。

「大丈夫、リーフは寝てるだけだよ。」
「えっ……?」

妙に静かに『彼』の声が聞こえた気がした。

「パラ…君……?」
「君は毒の粉が先に回ったみたいだから眠らずに住んだのかな?」
「何を…?」
「リーフに感謝しなよ。たぶんもう会えないけど。」

『彼』が何を言っているのか私には理解ができなかった。
ただ、パラ君は私にはわからない言語(ことば)で話しているようにしか聞こえなかった。

「やっぱり素材(もと)が良い人と楽だね。簡単に仲間が増やせるよ。」
「……ねえ…。」
「あと、僕はパラじゃないよ。僕の体はパラだったみたいだけど。」

――これは…

「もし君達が気がつかなかったら僕はパラでいられたのにね。」

――夢…だよね?

「君達といるのは楽しかったけど…バレたら元々の役目を果たさなきゃいけないんだよね……『繁殖』っていうさ。」
「っ!!」
「だいじょーぶ。『その気』はないって言ったでしょ?
それにコレは雄なんだから同じ姿のは産まれないじゃん。」

『彼』はやれやれといった風に頭を振る。
なら…『繁殖』って…『同じ姿』って……?

「あなたは…一体……?」
「何かはわからないの?パラを操ってるのは僕だよ。」

そういって『彼』の爪は茸を叩いた。
茸が意思を持っているなんて考えられないし、パラ君がキノコだなんて考えられない。

けど……茸の繁殖…私達を使って……っ!?

「冬虫夏草……!?」
「へえ…知ってるんだ。胞子の植え付けは簡単なんだけど、発芽するには長い間寝てもらわなきゃいけないんだよねえ。」

私達みたいな生き物に寄生して栄養分を吸い取る『寄生木(やどりぎ)の種』のような、けれどそれより質の悪い植物。

「リーフ!早く起きっ……。」
「邪魔するなら殺すよ?宿主が死ぬと栄養が減っちゃうからあんまりやりたくないんだけどね。」

目が本気だった。
私が咄嗟に避けたあれは……

「シザー…クロス……?」
「パラの精神力が強くて中々進化しなかったんだよね…ま、おかげでこんな技も覚えられたんだけど。」

冗談じゃない…シザークロスなんて当たったら……。

「だから諦めて僕らの栄養分になってよ。痛くないよ。長い間眠るだけさ。」
「いやだよ……パラ君…。」

進化して姿は変わっても、パラ君はパラ君だと思った。
少しだけ感じた違和感も見た目が変わったから感じる気のせいだと思いたかった。
私達を殺そうとする彼がパラ君だったなんて信じたくないよ……。

「逃げ…ろ……!!キノ!早く!!」
「パラ…君!?」

パラ君の意識が戻ってきてる…?

「はやくリーフを連れて行けっ…!」
「パラ君……頑張ってよ!!あんなキノコなんかに負けないで戻ってきて!!」
「無茶言うな…!はやく逃げろよ!!」
「そんなこと…出来ないよ……。」
「なんでだよっ…!!馬鹿……!!」
「だって…好きだったんだもん……。」
「っ……。」
「いつか言おうと思ってたの…こんな形じゃなくて……。」
「たかがそんなんで逃げない馬鹿がいるか!!俺だってお前が……っ!?」

パラ君は土に爪を食い込ませて急に呻き始めた。
今なら…もしかしたらパラ君の意識が勝てるかもしれない……なら…。

「馬鹿ッ!!近寄るな!!」
「パラ君…頑張ってよ……私達…まだパラ君と一緒にいたい!!」
「ぐっ…ううっ……。」

私はゆっくりとパラ君に近づいて…パラ君の手に届く距離に来た……。

「頑張って…パラ君……。」
「……馬鹿野郎っ…。」

私はパラ君にそっと体を寄せた。














「………良い夢見れた?」






……一体、何が起こったのだろう。
気がつくと体は生暖かいものに塗れていて。
それが血だと気付き、体の一部が欠けているのに気がついた。

「いやー、パラの真似事をしたら良いんじゃないかって思ったら案の定近づいて来たね。」

遠くからそんな声が聴こえた。

「北風と太陽とはよく言ったよね。まさかあんなことまで言うのは予想外だったよ。」

霞んだ目がはっきりとパラセクトを映し出しているのに声はまだ遠くから聴こえているようだった。

「その気はなくても少しドキッとしちゃった。…あの世でもう一回言ってあげなよ。今度はちゃんと『パラ君』に。」

騙されたのかな…でも……もう良いや…眠いし寝ちゃおう。

「おやすみ、キノ。」

パラ君…?おやすみ……。

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でも正直、怖いのかと聞かれると微妙だよね… by[[(*・ω・)]]

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