writter [[クロフクロウ]] 2015年に発行した【ポケモン小説wiki変態選手権エキシビション】で掲載したお話です。 注意 &color(Red){この小説には官能表現があります。苦手な方は回れ右してください。}; ---- イヴァンは物陰から見ていた。 森の中にある自然で囲まれた森に、小屋がある。小屋の前で幼いポケモンたちの前に立つキュウコンは、透き通るような声で本を読み聞かせていた。 「――そうして勇者は、世界を滅ぼそうとした魔王を光の剣で倒しました。闇に包まれようとした世界は、勇者の勇気によって平和を取り戻しましたとさ……」 お話が終わると、子どもたちから喜びの声が上がる。満足して笑顔になる子、まだまだお話しが聞きたいとねだる子。その光景を見ていて、嗚呼帰ってきたのだな、とイヴァンは安堵の表情を浮かべた。皆イヴァンにとって大切な家族。その宝物は一時も忘れたことはない。 「あー! イヴァンのにいちゃんだー!」 「ホントだー! イヴァンのあんちゃんだ!」 見つからないように隠れていたつもりなのに、子どもたちの観察力には参る。久しぶりの兄との再開に、殆どの子どもたちはイヴァンに向かって飛び付いて行った。 「た、ただいま。みんな……ちょちょ、そんな一気に来たら潰れるって」 子どもと言ってもポケモン。体格は皆様々。小さいのでネイティがいれば、大きいので一回り大きなユキカブリと、一度に相手にするのはなかなかに大変だ。 だがこれはもう慣れたこと。どれだけ囲まれようとも、一匹一匹頭を撫でたり、抱きかかえたりして、子どもたちの温もりを確かめる。こうして触れ合うだけで、その子がどんな気持ちなのか簡単に分かる。みんな元気そう、それだけでイヴァンの表情に笑顔がこぼれる。 「フフフ、おかえりなさい、イヴァン」 そしてイヴァンの目に最も色濃く映るポケモン。美しい金色の体毛が風に靡く様は、一瞬にして全ての虜にしてしまいそうな。九本の尻尾も彼女の魅力の一つ。思わず見惚れてしまう艶やかな動きは、他のオスなら必ず振り向いてしまうだろう。 昔から子どもたちの世話をして、そしてイヴァンが幼い頃から姉として接しているポケモン。 「お姉ちゃん……ただいま」 姉であるキュウコンのフローラ。彼女の笑顔を見ることも、ここに帰ってきた目的である。 *** ライチュウであるイヴァンは絵本の作家。 ピチューの頃、親と死別したイヴァンはこの孤児院に預けられ育った。気が弱く、電気すらまともに扱えないピチューにとって、全く違う環境、見知らぬポケモンたちとの共同生活、何より親を失った悲しみによって酷くやつれていた。 フローラとの出会いもその時。自分の感情を表に出すことすらままならず、他の子どもたちとも上手く交流出来なかった。笑顔で接して、気にかけてくれていたフローラを突き放したりもした。今思えば本当に最低な事を繰り返していたに違いない。そんなやさぐれていたにも関わらず、決してフローラは見放したりしなかった。皆平等に接し、絶対に一匹で孤立させないよう、全員に気を配った。 自分だったら絶対に出来ない。 フローラの誰かと対する強さは、子どもであったイヴァンの心の壁を少しずつ砕いていった。毎日毎日、様々な子どもたちと日夜接しようとも、イヴァンを孤立させなかった。今のように、感情がある程度戻ったのはピカチュウに進化した時期。まだ少年だった頃だ。こうしてライチュウへとなり、一人前になったイヴァンは、世界中の子どもたちに自分のように笑顔になって欲しいと夢を叶えるため、自らが描いた絵本を出すことになった。その本が評価され、今は期待のホープとして次回作が期待されている。孤児院にいては自分に気を遣ってしまうため、作成の為遠くの町へ住むこととなった。そして今日、久しぶりに里帰りしたのだが、やはりここが自分の帰る所なのだな、と改めて思った。フローラの太陽のような笑顔は昔と全く変わっていない。本当に暖かく、どんな気分に落ち込んでいても立ち直ってしまいそうな。 「ンフフ、どうしたのかな早々へこんだりして」 「えっ!? いや別にへこんじゃいないよ。ちょっと干渉に浸ってただけで」 「そう? 悩みとかあったら、おねーちゃんがいつでも聞いてあげるからね?」 柔らかく暖かみのある口調は、フローラの優しさをよく表している。こうして面と向かって話すだけで心が癒される。 「うん、ありがとう。でももう僕は子どもじゃないし……大丈夫だよ」 「フフフ、私にとってはいつまでも可愛い『弟』なんだから」 「うっ……ま、まぁ年は永遠に追い越せないけどさ……」 こうして姉の顔をたてるのは悪くないが、時として背伸びしてみたくなるのは、まだまだ甘えている証拠なのか。 本当に綺麗で艶やかな姉の存在を持って、これ以上なく贅沢な関係だろう。更に子どもたちの面倒を看たり、世話をして大変な思いをしているにも関わらず、あんなに笑顔でいて強いなと感じる。それに、傍にいるだけでとても暖かくなる。寂しい時もフローラに寄り添うだけで一気に軽くなる。 そんな姉を、イヴァンはいつからか特別な思いを抱いてしまっていた。同じ家族という存在を、一匹のメスとして意識するようになってしまった。 普通に考えたらおかしな感情なのかもしれない。幼い頃から姉のような存在に対して、感謝するべき大切な家族を好きになってしまうとは。 いつまで経っても消えない、この胸の高まり。だが同時にグッと胸の辺りが苦しくなるのもイヴァンは感じていた。 「お、お姉ちゃんはさ……」 満を持して問い質そうとした。フローラへの気持ちを、せめて自分の愛する片思いの相手を間違っていないのか。 イヴァンの呼びかけにフローラの耳がピクリと動く。振り向く仕草がまた素敵で、どんな美貌を持つポケモンよりも素敵だと素直に思ってしまう。 「あ、いや何でもない」 嗚呼、馬鹿が。悪い結果を想像して言い出せなかった。ただ姉に好意を抱く相手がいるか聞くだけなのに。 だが変に天然な所もあるフローラなので、ここの『孤児院みーんな』とか言いそうな気もしてならない。いや、本当に言いそうだ。 「そう? ならいいけど。今日は久しぶりに帰ってきたんだし、ゆっくりしていってね。ここはイヴァンの家なんだから」 優しい声でフローラは笑顔を向ける。大事な家族を当たり前のように迎えるのは、ここの孤児院、皆が兄弟のように。 確かにここまでの移動で疲れはきている。本音を言えば休んでいたい。けどわんぱくな子どもたちはそうは許してくれそうにないようだ。 「あんちゃーん、久しぶりに今日は一緒にバトルしようよー」 「こら! イヴァン兄ちゃんは帰ってきたばかりなのよ。少しはゆっくりさせてやろうとは思わないの?」 久しぶりに構う言葉を掛けられてイヴァンは嬉しかった。長い事会ってなかったこともあるが、こうして自然体で接することが何より楽しい。 「いいよ、兄ちゃんもみんなと遊びたいし、今日は思いきり遊ぼう」 こうしてやんちゃっ子と触れ合うのは指名だとも思う。今はこうして子どもたちと触れ合おう。帰ってきた喜びをより刻むために。 *** 孤児院から見る星空は昔から全く変わっていない。爽やかな夜の風は一日の疲れを心から癒してくれる。 イヴァンはベランダで夜風に当たっていた。賑やかな子どもたちの声のない、ひとりの時間に深呼吸。 たくさんの子どもたちに囲まれて食事をするのはすごく励みになるし、元気も貰う。こうして大多数のポケモンたちと囲んで食事をしたのはいつ以来だろう。 夕食の有り様は相変わらずだった。食べ方はめちゃくちゃだし、自分の分を横取りさせられて反撃を受け、小競り合いになったりするもしばしば。 その度フローラが叱りつけ、傍から見ていた子はクスクスと笑い、その行動が気に入らずまた言い争いになり、フローラが注意する繰り返し。 このようなことが毎回起こっている。食事くらい大人しくしないものかと感慨に浸る。よく飽きないものだ。 だがイヴァン自身も幼少期の頃落ち着いて食事をとっていた記憶はない。他のガキんちょに自分の食べる分を盗られては、フローラに泣きついていた。 今思えば最高にくだらない思い出だ。だが小さな記憶は大きな心の支えになっている。どんな些細な出来事も、この孤児院で過ごした時間はイヴァンにとって今を生きる糧として至るのだから。 フローラ。イヴァンの中で特別に光り輝くキュウコンの存在は、自らを狂わすこともある罪づくりなメスだ。 と、その時だった。 背後から暖かな毛布に包まれたかのような感覚に突然襲われた。ふくよかな匂いに頭の中が一気にピンク色に染まる感覚は、全ての感覚が真っ白になるかのよう。 「わわっ! いきなり脅かさないでよ!」 後ろから抱き付けば、何かしらの反応をしてくれるのかなと、期待を込めた満面の笑みをフローラは浮かべていた。 ライチュウとキュウコンはさほど体の大きさに違いはないが、フローラはキュウコンの個体の中でも大きい方らしく、イヴァンを包み込んでしまう。年を重ねた今では小恥ずかしいが、幼い頃からこうして密着して仲良くしたこともあり、フローラも感触や体制を気に入っているのだろうか。 「フッフッフ、ひとりでなーに悪巧みをしようよしているのか、気になってたから」 「悪巧みって……。ただ久しぶりに子どもたちの相手して、なかなか大変だったからさ。僕、体力無いし……本当お姉ちゃんって凄いね、毎日面倒看て」 「ずーっと長い間看てるからね。イヴァンはもっと体力付けなくちゃ。絵本描くのもいいけど、ちゃんと体動かさないと怠けちゃうよ」 フローラのごもっともな意見にぐうの音も出ない。昔からインドアなイヴァンにとって、バトルや特訓はかなり苦手なものだ。皆それぞれの個性があるが、せめて一人前になるには並の体力は無いといけないだろう。 「にしても、今日はありがとね。帰ってきたばかりなのに、やんちゃボウズたちの相手してくれて」 「いいよ。そんな気を遣ってくれなくて。けど本当に元気一杯だね。遊んでも遊んでも遊びきれないって顔してて……昔の僕もそうだったのかな」 「イヴァンはどちらかと言うと、物静かだったわね。絵を描くのが好きだったのは今でもよーく覚えているわ」 そのお蔭でこうして絵本を描いているのだが。ただひとりでやる事がなく、紙に自分の思い浮かぶ光景を淡々と描いていた。それが自分の未来を進む道になるとは思いもよらなかったが。 「昔は酷かったからね。誰かといるのがただ苦痛だった。お姉ちゃんにもいっぱい迷惑かけたし、あの頃の僕に出会ったら、何度かひっぱたたてやりたいよ」 「そんな悲観的に思わなくてもいいよ。私は全然気にしてなかったし、今はこうしてひとりのポケモンとして立派になったんだから。おねーちゃんは、元気なあなたがいるだけですごくハッピーよ」 満面の笑みを浮かべるフローラ。同時に心地よい風が二匹の間に吹き抜ける。 どんな仕草をしても可愛い。美しい。こんな姉がいて自分は本当に幸せ者だと、イヴァンは改めてフローラの存在を強く意識する。 「ね、イヴァン」 少し沈黙の間が空いた後、フローラは包み込むように抱擁して尻尾も体に巻き付いてくる。体の温もりと鼓動が全身を伝い自分の鼓動も早まっていく。 初めてのことではないのに、鼻につくメスの匂いがイヴァンの本能をくすぐる。甘くてとろけるこの瞬間が、全ての感覚を強く刺激する。 「なんか、今日はいつもより少し元気ないかな。こう、気持ち的に」 「そ、それは久しぶりにみんなに構ってあげたからね。色々気を遣うし」 「そっかー。ならご褒美におねーちゃんが――慰めてあげようかな。フフフ……」 官能的な声に思わず息を呑んだ。いつものフローラとは違う。久しぶりに相対して話をしたから、余計に違和感があると思わせるのか。 胸の高まりはこれまで以上に音を立てる。昔はこんなに意識しなかったのに。普通の家族として、いつものスキンシップなのに。 「い、いや僕は大丈夫だか――むぐっ!?」 イヴァンの体がフローラの胸の中に引き寄せられた。さらさらと波立てるような金色の毛が風圧で浮き上がる。手入れは欠かさずフローラは行っている。清潔でなければ子どもたちに何か悪い影響を与えてしまうのではないかと思っているからだ。 「だ・か・ら。気を遣わなくていいのに。昔みたいに、もっと素直になっていいのよ」 このオスを誘うかのような口調は聞いたことがない。いつもと違うフローラの様子。こんな積極的な行動をされては嫌でも意識してしまう。 まるで氷を溶かすような暖かい声。 そうだ、この感覚。幼い頃、心の扉を閉ざしていた自分を開いたこの感触。 内に秘める思いを何もかも口からバラしてしまいそう。甘いオスの心をくすぐる言葉は一種の魔力だ。 「今おねーちゃんとふたりしかいないんだし……何でも言うこと聞いてあげるよ」 誘惑的な台詞を言われて何も反応を示さないわけがない。今日のフローラはやけにイヴァンに構う。 昔とは違う。もう『お姉ちゃん』からは巣立ちしなければならない。 こうしてフローラにも読んでもらっている絵本を、これからも描いて世界中の子どもたちを笑顔にしたいと夢をつづった。 けどただ姉に甘えているようではいけない。支えてもらった分今度は自分から支えていかなければならない。 「あう……僕は……」 だが愚かな欲は自分の中にも潜んでいる。メスとの交流が殆どないイヴァンにとってこの空気はあまりにも濃厚。メスの淡い匂いに頭の中が徐々に真っ白になっていく。 フローラは待ち望むような表情でイヴァンを見つめる。愛おしい弟を見下ろす瞳に、自分の中の子どもの感情が溢れ出る。 ――フフ。可愛い弟なんだから。 言葉で言わなくてもそう伝わる、フローラの赤い瞳。優しく綺麗な瞳の奥に映るのは、ただ真っ直ぐに見つめる目の前のライチュウの姿。 あどけない、どんなに月日が経とうが変わらない弟の面影。大切に思う気持ちの奥に潜む、更なる深入りしたいという姉としての感情。 沈黙が永遠と続くような、月すらも目に入らない空間にイヴァンは口を開こうとした。 「おねええちゃあああん!! 新しい藁の布団ってどこおおお!?」 大音量で呼ぶ子どもの声でハッと現実に戻された。甘美な桃色の世界からフラッシュバック。すぐさまイヴァンはフローラから離れた。 これ以上なく緊張に包まれ、心臓の鼓動は収まる気配はない。赤らめた頬はいったいどういう風にフローラに映っていたのだろうか。 最後にニコッと笑顔で頭を撫でられ、フローラはベランダから部屋の中に入って行った。神秘的ともとれるフローラの姿に、イヴァンはしばらくフローラから視線を外せなかった。 興奮は衰えない。その先を望んでいたかのように、イヴァンは少し落胆した表情で自分の胸の辺りを撫でて落ち着かせていた。 *** 深夜、子どもたちを寝かし付けたイヴァンは、喉を潤そうと水を飲んでいた。孤児院の明かりはもうすでに消え、すやすやと寝息を立てる声は、太陽が昇るまで消えることはないだろう。 時折建物がきしむ音が聞こえるが、これも昔から変わっていない。 ここはもう一種のタイムカプセルのよう、数多の記憶と記録がこの子どもたちとの屋根との下で未来への時を刻む――何て少しは作家らしく、適当な表現で今の心情を現してみる。 「あれ? おかしいな、僕の藁が……」 自分も寝入りしようとしたが、イヴァンの藁の布団が無い。さっきは全員分あった気がしたが、数を間違えてしまったか。もしくは子どもたちに自分の分を取られてしまったか。 どちらにしろ地べたで寝ては朝が辛い。少し面倒くさいが、倉庫に行って藁を取ってこようと、イヴァンは建物の隣にある倉庫に目を向けた。 小屋の隣にある倉庫は、子どもたちには危ないから立ち寄っちゃいけないと昔から言われていた。その時期になれば必要になるものや、昔使っていて今はもう使っていない古めかしいガラクタ、中には思い出の工作に使った道具までまだ置いてある。 真っ暗な倉庫に行くには、自分の夜目では少し頼りない。玄関にある小型のランタンを照らし、イヴァンは倉庫に向かった。 ここに来るのも久しぶりだ。幼い頃、かくれんぼの隠れ役でここを選んでフローラにこっ酷く怒られた時もあった。 扉を開けると、意外にも中は綺麗にされていた。たまに掃除をして整理をしているが、最近行われていたのだろうか。 「えっ?」 少し思い出に耽っていたその時だった。突然扉を閉まる音がした。真っ暗な空間に自分が持ってきたランタンの明かりがポツリと、闇が辺りを支配する。 扉を確かめる間もなく、イヴァンに影が迫る。ふわっと何か暖かい空気に包まれ、イヴァンは影に体を取られ後方の壁に押し付けられた。 「お、お姉ちゃん……!?」 突然の事で混乱したが、何度も何度も抱擁された記憶が影の主をすぐに割り当てる。薄暗いランタンの明かりがより妖しい雰囲気を醸し出す。目の前のフローラをこうして密着して更に緊張は高まっていた。 フローラはイヴァンを押し倒したまま目線を合わせた。一端のねずみポケモンが優雅なきつねポケモンにマウントを取られているのはある意味お笑い草だろう。 決して健全な雰囲気でない。フローラの真剣な眼差しがイヴァンの緊張を増幅させる。 「イヴァンならここに来ると思っていたよ。あなたの藁布団、私が隠したし」 フローラが犯人だったか。とでも言おうとしたが口が開かない。何か巨大な力に言葉が発せられない。フローラを前にして、こんな事態は初めてだ。 「ごめんねいきなりこんな事して。もう、おねーちゃん我慢出来なくて」 何か違う、フローラの声色。艶めかしく、イヴァンに対して心を溶かすように。 「昔言った。イヴァンは覚えてなくても、私はしっかり覚えている言葉」 顔と顔の距離が徐々に近づく。綺麗な赤い目が妖しく輝き、何かを期待するかのような、奥ゆかしい輝き。 「私に対して笑顔で言ったよね。『お姉ちゃんのツガイになる』って」 「あっ……!」 はっきりとは覚えていないが、そんな悠長な事を言ったような記憶はある。当時はツガイの本当の意味が分かっておらず、フローラとずっと一緒にいられる魔法の呪文なのだと、勝手に想像していた子どもの発想。 「ま、まさかお姉ちゃん……」 「あなたの無垢な言葉よ。けど、いつの間にか本気にしている私がいた。意識しちゃった時はもう頭から離れなかった」 尻尾で強くイヴァンを抱き締めた。前足から尻尾まで抱擁する仕草一つ一つがいつもと違う。 子どもをあやすために、落ち着きを与える仕草ではない。何か求めるように、相手の心をくすぐり惹き込もうとする誘惑の香り。 「結果論だけ言っておくわ。私はね――イヴァンと交合したい」 「――ッ!?」 その言葉を理解する時間は記憶していない。恐らくものの数秒だが、それ以上に長く感じた。言葉の本質が、頭の中で一瞬ショートを起こしそうになっていた。電気タイプなのに、痺れる感覚が襲った。 「我ながらエッチなメスだって思うでしょ? でも、こうしてイヴァンには素直な私を見てほしいの。あなたが孤児院から巣立ってから、ずっと意識してた。離れていくイヴァンの姿を見てすぐに思った。嗚呼、私はあなたを……」 イヴァンを自分の体に勢いよく引き寄せる。互いの温度が直で分かるくらいに。 「特別な思いで愛しているんだって」 ドクドク、とフローラの胸の音が聞こえる。鼓動が早く、自分と同じくこの緊張を感じている。 衝撃の言葉というのは思いのほか率直に頭の中で理解できるものなのか。フローラの告白がすんなりと胸の奥に刻まれる。 「あなたの事が大好き。大好き大好き大好き大好き。こんな気持ちになったの本当に初めてなんだから」 少し辛そうだった。イヴァンに対しての心の痛み、何より自分の気持ちを告白することの痛みは、胸が締め付けられそうになるほど分かる。 「大事な弟だってのは分かってる。でも仕方ないんだもん、好きになってしまったのは誤魔化せない!」 大事な言葉なのに、フローラが赤裸々に思いを伝えているのに何故こんなに心が痛くなるのか。すぐにでも泣き出しそうなフローラの声に、イヴァンはただ抱き返してやることしか出来ない。 少しでも恋愛経験があれば、何か落ち着かせる言葉を選べるのだろうが、何も見つけられないイヴァンはただ情けなく思いを受け止めるしかなかった。 「ごめんね、何かみっともないとこ見せちゃって」 そんなことない、と上目使いで言おうとしたが口が開けなかった。魔力に押し付けられたかのように、舌が渇き切っている。 言葉選びで迷ったのもあった。躊躇して中途半端な事を言い出せなかった。ただ何てことない一言を言おうとしただけなのに、何故こんな痛い気持ちになるのだろうか。 「……フフフ、言いたいこと言ったら気持ちがスッキリした。在りのままの気持ちをあなたに言ったらかな」 少し照れくさそうに頬を赤く染める様に心臓がキュッとなる。これほど可愛いと思えるような仕草があるのだろうか、とフローラの行動に対して胸の高まりが更に加速する。 「で、イヴァン。答えはどーなの?」 「え? 答えって……何?」 「おねーちゃんとエッチしないの?」 「ええっ!? いや、僕は――!」 普通は後者の告白を訊くものじゃないのか。さっきの話の方の印象が強すぎて咄嗟の言葉に慌てふためいていた。若干のパニックで後退したためか、勢いよく棚にぶつかってしまう。 「きゃっ!」 ガシャン、と棚は振動で揺れ、一番上に乗せていたバケツのような物が落ちてしまった。 落下した衝撃で容器のフタが取れ、中身がフローラに降りかかる。薄暗くて色まではよく分からなかったが、有色というわけではないようだ。 少し粘り気のある液なのは飛び散った感覚で分かった。ニオイはしないが、何やら水を飛ばした音がする。 「や、やだぁ……なにこれぬるぬるぅ……」 落ちたのはねっとりとした粘液だった。これは昔、すごい滑り台を作ろうとして使ったローションだ。滑る坂に粘液性のあるローションをばら撒き遊んだ記憶がある。結局あまりの滑りっぷりに危ないので禁止になったやつだ。その禁断の遊び道具がまだ残っていたのか。 中身が全部散布され、かなりの量がフローラに掛かったらしく、キュウコンの自慢である金色の体毛がドロドロと粘り気の液でくたびれてしまった。 けどそのおかげで体のラインがくっきりとしてフローラの在りのままの姿が見事に醸し出されている。 首から胸にかけてのふくよかな体毛はもちろん、そこから無駄な脂肪のない見事なライン、そしてなにより尻から足にかけての脚線美。足腰をしっかり支える太目の足。 普段は何てことないのに、雰囲気と道具でここまで性的に見えるのは何故なのか。あらゆる状況とシチュエーションから、目を反らしたくなるような光景に出くわす。 けど冷静にならないと。僅かな理性が歯止めを利かしている。 「だ、だいじょ――わっ!?」 広範囲に広がっていたローションで足下に気付かなかった。転倒した先にはフローラが尻尾で受け止めてくれたが、柔軟な金色の尻尾にもローションがべったり付いており、汚らしい音が飛び交う。相当な量がこぼれたのだろう。 「イヴァンこそ大丈夫?」 体制がフローラに覆い被さるように伸し掛かってしまった。これじゃあオスがメスを押し倒して何かしようとしている状態じゃないか。 「あっ……あっ……うん……」 不慮の事故とはいえ、言い訳など出来る状態ではない。先ほどとは全く逆の状態にイヴァンの心境は完全に乱れていた。 頭の中が真っ白になる。あまりにも性的で魅力的なメスを前に、オスとしての肉欲が湧き上がってくる。 だがフローラは嫌な顔を一切しない。 この状況を受け入れるような少し恥ずかしい仕草をみせ、体の力を抜く。 「――ッ!」 何かイヴァンの中でプツン、と糸が切れた。フローラの相槌を理解出来ないほど、イヴァンは莫迦ではない。あらゆる思いが交差する。 踏み切った。もう後戻り出来ないが後悔しないために。 幼い頃は何度も頬に口付けをされてきたが、こうして面を向かって口付けをするのはもちろん初めて。少し口に付いたローションが気になると思ったが、高ぶった気持ちが除外させる。 濃厚な口内で舌を絡ませる。互いによく知っているのに、味わった事のない感覚を芯まで堪能する。まるで炎を吐きそうなくらい熱く、少し息苦しいも全ての神経が舌を伝い更なる興奮を共有するかのよう。 先に離したのはイヴァンだった。あまりの衝撃的でねっとりとした感触が全く離れない。濃密に絡めた証拠として、互いの唾液が口から離れようとも架け橋を作ったままだった。 息を荒げる自分の姿が容易に想像出来る。こんなみっともない姿を、最も愛するメスの前で見せてしまうのは恥ずかしさもあり、これ以上ない悦楽に浸る。 もう後ろ向きのイヴァンはいない。一種のケダモノになったライチュウの前には、全身ぬるぬるになったキュウコン。 もう吹っ切れてしまった。勢いでこれだけ気持ちに変化が出るとはただ単純なのか。 「本当に……僕のこと好き? 弟としてじゃなく……オスとして」 真剣な眼差しにフローラの瞳が映る。灼眼の優しい目は世界中どこを探しても見つからない宝石のような輝きを持っているかのよう。 口を緩め、少し照れくさそうに微笑みを見せる。尻尾でイヴァンを引き寄せ、抱きかかえるように抱擁した。 「愛してるよ。私が本気で大好きになった王子様は、あなたなんだから」 紛いの無い素直な言葉。イヴァンの頭の中で何度もリピートした。 胸が締め付けられそうになるほど嬉しい。決して交わることの無いと思っていた相手とこうして思いが通じ合えたのは夢のような感覚。 「お姉ちゃん……フローラ……」 イヴァンもフローラを力一杯抱きしめる。力は弱いが、思いの強さは誰にも負けない。 「僕も大好きだ……ずっと思い留まっていた。好きで好きで仕方なかったんだ。でも……」 姉と弟という長い年月育んできた関係が壊れるのが怖かった。だからずっと言えなかった。 けどフローラはイヴァンのために自分の思いを赤裸々にした。偽りの無い気持ちをイヴァンに告白した。 ぬるぬるなボディが少し雰囲気を曲げるが、そんな些細な事は関係なかった。 「僕も何て言ったらいいのか分からなかった。好きという気持ちは本当なのに、でも後のこと考えたら怖くて怖くて……。本気で恋したらこんなに胸が痛くなるなんて知らなかった。大事なひとだから余計に辛かったんだ……」 黒い瞳から一粒の涙が零れ落ちた。苦しんでいた自分の気持ちをきっとフローラも受け止めてくれると思っていたから。 「大好き……フローラ。今まで素直になれなくてごめん」 「フフフ、私も大好きよ……イヴァン。あなたの気持ち、私にいっぱい伝わった」 キュッと抱きしめたあと再びの口づけに浸る。今までにない最高の気分、誰にも邪魔されない至福の時間。 共に愛を告白した者同士、遠慮することなど何もない。 濃厚に絡める舌はフローラがリードした。遠慮せずに、という意志表示だろう。僅かな思いも零さず、イヴァンは真っ向から全ての気持ちを受け止める。 フローラ――何てことない言葉なのに、その込めた意味は大きすぎる。今まで姉として接してきた相手を、こうして愛を込め呼び合う。本当に最高で甘い一時を感じ合っている。 嬉しくて、愛しくて、共に過ごした瞬間がこうして大切な礎となっている過去に感謝して、これからはまた違う関係で共に時間を共有する。 この世に何万といるツガイのうちの一組に過ぎない。だが、この瞬間なら胸を張って言えるだろう。この世で一番幸せなカップルは自分たちだと。 「こんな場所でこんな状態で、雰囲気に悪かったかな?」 「いや、むしろすごくヤらしいから悪くないかも……」 どういう状況化が一番興奮するなど皆それぞれ。だが自分たちはこれでいい。綺麗に飾る必要なんかない。 「けど倉庫ってのは意外だったけど。もしかして妙に綺麗だったのはこのために?」 「だって子どもたちに聞こえたら駄目じゃない。丁度ここなら、大きな声出しても聞こえないだろうし……。だってこれからもっとイケないヤらしいことしちゃうんだからね」 自分を誘い出すためにここまで準備していたのかと。今日の為に。 フローラの行為を思い返してみても分かる。やけに積極的だったのは求めるためだったと。 ゆらゆらと尻尾が艶めかしく揺れる。フローラはもっと先を求めている。厭らしく舌をペロッと出す姿に思わず頷いてしまう。 もう躊躇いなんていらない。自分たちは互いに認め愛し合うパートナーとなったのだから、この先の事を堂々と臨んでいいのだ。 「しよう……したい……知らない顔をもっと見たい」 肉欲を露わにするのは相手が魅力的だと示すため。そんな大層なことではないがイヴァンも欲しくてたまらなかった。 「エッチな目をしてるねぇイヴァン。私もあなたの知らない顔いっぱい見たいよ」 「いっぱい見せてあげる。だから『お姉ちゃん』のも――あ」 折角こうして恋人同士になって雰囲気を作ったのに、イヴァンの言葉でフローラがプッ、と笑いを漏らす。 いきなり名前で呼び合っても、長年の癖などすぐに抜けるはずがない。どんな関係になってもフローラはイヴァンの姉。幼い頃から共に暮らしてきた唯一無二の存在。 慣れないことはするものじゃない。だが、せめてこれから交合をしようとする場では耐えてほしかった。 「好きに呼んでいいよ。私は気にしてないから」 「じゃあ……やっぱお姉ちゃんで……」 確かに呼びなれたほうがイヴァンとしても楽だった。だがこれからは意識しながら改善していかないと、本当の恋仲になれない気がした。 フローラはそんな些細な事気にしないだろう。だがオスとしてのプライドはイヴァンにもある。いつか自然に名前が言えるように、姉ではなく大切な自分のパートナーとして、本当の意味で愛せるように。 「ンフフ。ほら、おねーちゃんの知らない顔見たいんでしょ? いいよ、いっぱいヤらしいとこ見せてあげる」 自分からそう言うのは予想できていなかった。大胆すぎる言葉にイヴァンの鼓動はますます速くなる。 「お、お姉ちゃんって意外とエッチ?何か僕すごいびっくりしてる」 「これでもこんなこと言うの恥ずかしいんだよ。でも、もうスイッチ入っちゃったから……許してね」 つまりイヴァンの前だから曝け出せると。本当に特別に思っているのだと再度思える。 尻尾の動きがいつになく細やかに撫でまわす。少しくすぐったさもある感触が逆に気分をより高める。 こんな姿見たことない。まるで別人のように妖艶で、官能的なフローラを前に体はもう盛りを増していた。 「フフフ、やっぱり……逞しいね」 フローラの視線はイヴァンの股間に。これだけ気分が高調して興奮しているのだ。もう完全に血が巡って最大サイズまで膨張していた。 すぐにでも爆発してしまいそうに太ましいオスの象徴は、一匹のオスらしく充分な太さと長さを備えていた。いや、充分すぎるくらいに。 「あ、お姉ちゃんは子どもの時から……そうだね」 「なに? 昔っからヤらしい目で見ていたような言い方して」 「いや、今の姿見たらそう思われてもおかしくないかと。ずっと狙っていたんでしょ」 もう、と呆れた声を出すが、目は満更でもない気がした。 「そんなことありません。ま、今がすごく魅力的だと捉えてあげる」 「それはありがと……」 冗談はこれくらいにして、フローラは恍惚な表情を浮かべ肉棒をまじまじと見る。初めて見るイヴァンの反り発ったオスの象徴は、それは逞しく、メスを相手に相応しい太さと長さを兼ねそろえていた。 ずっと見られているのでは、こちらとしては非常に恥ずかしいだけ。とにかく次の行動に移してと、イヴァンは自分の尻尾で示した。 フローラは前足で軽く肉棒を触る。刺激を少し与えるだけで脈が大きく唸り、望みを欲している。 そのまま軽い力で肉棒を上下にこすり合わせて刺激を与える。少しの力だが、滑らかな黄金の体毛が小さな刺激を断続的に与える。そちらの方が感触としては大きかった。 「じゃ、そろそろいくよ?」 何をするのか、それは口を肉棒に近づけるだけで理解した。少し目線を落とし、誘うように上目使いをされては否定する度胸などない。イヴァンは首を小さく頷くと、フローラは口角をゆっくり吊り上げ、行動を移した。 「あっ……これって……」 夢にまでみたフローラが自分の肉棒を口で味わっている。滑らかな舌が火傷しそうなくらいに熱を帯び、口の中で固い歯が当たらないよう舌で上手くコントロールしている。 現実味のない感覚に戸惑いを覚えるも、初めてのこの感触を無駄なく味わおうと力が抜ける。 あっけなく快楽に身を任せ、素晴らしいくらいの舌使いに贅沢な一時。誰かに身を任せることがこれほど刺激的とは。癖になるのは納得がいく。 「な、何でお姉ちゃん……そんなに上手いの……!?」 まるで自分のツボを全部把握しているかのよう、快楽の波に差が感じられない。絶え間なく流れる熱い鼓動が、限界を達する瞬間をより早めてくる。 根本まで口に含み、全体を舐め回すように舌を動かした。全てを含むのに結構な太さがあるのに、まるまると飲み込んでしまうのはなかなか圧巻だった。 だが少し動きにキレがないように思える。贅沢を言える立場ではないが、少しフローラの表情が怪訝なものに感じられる。 卑猥な音をワザとたてるかのように、はたまたじっくりと味わうように。 その舌があるポイントを舐め回した時だった。 「あっ! そこ攻めちゃだ、だめぇええ!」 溜まっていた分快感は壮絶だった。 あっけなく絶頂を迎えたイヴァンの肉棒から、自らも出したことのない白濁液の勢いと量がフローラの口の中に溢れ出る。予告していなかったため、驚いた表情でフローラは口の中で射精を受け入れる。脈打つ度に濃厚な精液が止まる事なく放出する。 あまりにも気持ち良かったが、もう少し楽しみたかった。まさかこれほど早く達するとは、快楽の度合いを舐めていた。 流石にいきなり射精させられたのか、フローラはすぐに精液を吐き出してしまった。飲精の趣味はイヴァンにはないが、何かちょっともったいない気がしてならなかった。 「ご、ごめんお姉ちゃん……」 少し苦しそうにしているフローラに大きな罪悪感が迫る。だがフローラは嫌な顔をしていない。寧ろ嬉しそうに、もっと官能的に―― 「大丈夫よ。ただ、まさかこんなに出すなんて思いもしなかったから。びっくりしちゃった」 「そ、そう。それならよかった……へへへ……」 口周りに付いた精液がより色欲的に。ただでさえローションで大変なことになっているのに、更に増した破壊力が凄まじい。 ローションの粘性とドロドロした精液でフローラはめちゃくちゃだ。けど互いに欲情した今はより互いに刺激し合うだけ。 「でも、すぐに出しちゃって……もっと楽しみたかったのに」 「これからよそんなの。そう、これからいっぱいエッチして慣らしていけばいいんだから」 ギュッとイヴァンを引き寄せ、軽く抱きしめる。暖かく厭らしいフローラの言葉にイヴァンはコクリと頷いた。ずっとイヴァンを受け入れる言葉は、イヴァンの心をより温かくした。フローラの優しさだけではない。強さも存分に感じる。 「けど、今日という夜は二度と来ないんだ。だから全力で今を楽しみたいよ」 「その言葉、イヴァンの絵本にも書いてあったね。フフ、まさか生でその言葉を聞けるなんて」 もちろんこんなエロティッゥな雰囲気でなく、勇者が今を全力で生き抜くシーン。ちゃんとしっかり読んでくれているのだな、と作家として純粋に嬉しかった。 一回出しただけで満足しない肉棒がローションで滑りの増したフローラの腹に当たる。タチの悪い肉欲は、そこそこの量を出したにも関わらず、遠慮しようとはしない。これはまだまだ足りないと、自らの性欲が訴えているのだろうか。 「元気だねぇ。そんなにおねーちゃんに興奮してくれた?」 興奮どころか完全に陥っている。イヴァンの目は色欲に満ちていた。 自分じゃない自分が次々と見つかる気がする。自分の本当の姿。目の前の相手にしか見せられない、欲に満ちたオスの姿を。 「すっごいしてるに決まってるじゃない! こんなヤラしいお姉ちゃんを前にして、興奮しない方が可笑しいよ!」 少し乱暴にフローラを壁に押し付け、仰向けの状態にさせる。ローションの掛かった腹から、太ましい後ろ脚にかけて流れ落ちる、粘り気のある液が反則的に艶やかに見える。 普段は気付かない、フローラの魅力的な体。腰のラインから脚の肉付きまで、全て性的に感じてしまう。 「もう……お姉ちゃんの恥ずかしい姿、いっぱい見なきゃ気が済まないからね」 後ろ脚を両端に広げ、禁断のメスの秘所をおっ広げにする。 「あぁんどうしよう……可愛い弟にこんな恥ずかしいとこ見られちゃってる……」 恥じらう姿を見せるも遠慮することはない。受け入れる覚悟はとっくにしているというわけだ。秘所からはローションで少し分かりにくいが、愛液が止めどなく溢れているのがよく分かる。 「うわっ、お姉ちゃんのすごいね。すっごいびしょびしょで……もう入れて大丈夫なんじゃない?」 「いやあ、それはちょっと私も不安」 もちろん何もしないわけにはいかないとはイヴァンも思っている。すぐにでも肉棒を挿入したいが、焦ってはいけない。それに、フローラのお目にかかりたい姿もある。 「やんっ! い、いきなり……っ!」 「僕のイっちゃうとこ見たんだ。今度はお姉ちゃんのイっちゃう顔見たいなぁ」 「なっ、それでもちょっとは私にも心の準備ってのを……ひゃああっ!だめええっ!」 ちょっぴり小悪魔な笑みを浮かべ、イヴァンは秘所を右手で刺激する。膣壁がこれでもかというくらい濃密に濡れており、中で刺激を与える度にフローラは高い声で喘ぐ。 「なかなかだね、お姉ちゃんの声。今までにないくらいエッチだよ」 中を犯している身になれば興奮すればするほどもっと上の状態を見たくなる。 だがこの喘ぎよう。しっかり感じているのもあるが何か初々しさ思い受けられる。 「お姉ちゃんって……もしかして経験ない?」 「そりゃ……そうに決まってるじゃない……。さ、さっきの行為見て……気付かなかったのぉ?」 そういえばフェラをする際も少したじろいでいた。初めての事で慣れないオスの肉棒相手に、最初からスムーズに出来るわけがない。何事もそうだ、経験を積んで自身の技術を身に付けるもの。 「へぇ。めちゃくちゃ上手かったし、しかもこんなエッチなのに。初めてなんてちょっと意外」 「なによそれどういう意味ィ? イヴァンの為にこうして初めては守ってたのにぃ……」 手の動きが止まった。フローラの言葉にイヴァンの様子が少し変わったのだ。 「僕なんかの為に……そうか。お姉ちゃんはずっと待ってたんだ。本当に好きなこんな僕の為に……。今まで臆病でごめん。今日は苦しめていた分、お姉ちゃんをたくさん気持ち良くさせるから」 精一杯のオスとしての言葉。だが裏腹にイヴァンも経験はゼロ。それくらいフローラだって気付いているだろう。 けど気持ちは伝わったらしい。キュッと体を縮こませ、受け入れる体制をとった。 愛液が流れる秘所を自らの手で刺激させる。初めて行うことなのにどうすればいいのか分かるのは、オスとしての本能がそうさせているのだろうか。 「んえっ!? あっ……?あっ!? うそ……!?」 中で少し悪戯に掻き回した時だった。ピンッとフローラの体が跳ね上がる。少し麻痺したかのように、体の異変は明からだった。 「い、痛かった!? 変なとこ弄った!?」 不可解な行動を起こせばイヴァンもそれは行為を中断する。初めてのことで慣れないメスの秘所。変な事はできない。 「いや……逆。その……止めないで」 更に求めるように目の色が変わっていた。いったいどうしたのだというのだ、とイヴァンは疑問に思うが、先にフローラの気持ちを満たしてあげたかった。 先ほどと同じように手を膣壁に刺激する。熱い膣の中でイヴァンの手が上下に刺激を与えた。 「あっ! す、すごい……!なんでえ!? イヴァンに弄ってもらってるだけなのに……すっごい感じる……! 気持ち良すぎる! こんなのおぉぉ!」 喘ぐ度にイヴァンのテンションは上げる一方。更にお褒めの言葉を頂けばもっと色々なことをしたくなる意欲。 互いに理性を失う感覚は、ある意味心がリンクする瞬間でもあるのだろうか。ただ色欲に溺れて陥っているだけなのに、充実感が凄まじい。 「ひゃあああっ! イヴァンにイかされちゃう! だめええ!」 「……!?」 何か自分の中で警告が鳴った。このまま行えば悪影響を及ぼしてしまうのではないかと、不安が立ち上がった。 「えっ、ここで止めちゃうんだ。あと少しだったのに……。思った以上に鬼畜なのね、私を生殺しにするなんて」 「だって何かすごい様だったから……ヘタレでごめん」 相当な刺激だったのか、絶頂に達する前に失神しそうだったのでイヴァンは行為を止めた。 「もう、イヴァンはイっちゃったのに、私はイかないんなんてすっごい不公平」 「いやぁ僕もそうしたかったけど……ホントごめん」 やや機嫌を損ねた様子だが、絶頂間近というだけあって目の焦点は合っていなかった。息を大きく荒くして、その場に横たわるフローラの姿は何故だか妙に興奮する。メスが性に溺れた発端を目の前で見ると、また違う黒い本能が目覚める。案外自分はサディストなのかもしれない。隠れた性癖がまた一つ自分で気付かされる。 フローラの甲高い喘ぎはたっぷり耳に入れさせてもらった。もう前座はいいだろう。早く彼女の全てを味わいたくて堪らなかった。 たっぷりと愛液が溢れ、ローションで身体が艶やかな光を反射している。メスとして十二分に魅力的なボディと、キュウコンの特徴である九本の尻尾。官能的な表情と虚ろになりかけている灼眼の瞳。これ以上なく乱れ、受け入れてくれるフローラを見れば見るほど、求める距離は最大限まで近くなっていた。 「じゃあ、もう本番しよう! エッチしよう! 一緒に狂っちゃお! お姉ちゃんそれでいい!?」 もっとゆっくりとフローラの姿を見たかったが、初めての行為に本能がいても立ってもいられないらしい。 フローラは理解してくれるのだろうか。仮に不満を抱かせてしまったら、次に反省を生かそう。もうそんな前向きなことしか頭に浮かばない愚かな本能に、イヴァンは涎を垂らしフローラの腰を力強く掴んだ。 「もう、乱暴なんだから。でもいいよ。イヴァンといーっぱい気持ち良くなりたいのは、私も同じだから」 だらだらと愛液が流れる秘所をイヴァンに向けながら、仰向けで誘惑。フローラも望んでいる未来に躊躇など必要ない。 口では優勢を保っているも、下の口は絶え間なく愛液が溢れていては、説得力は笑えるほど無いだろう。 お互いに全身ぬるぬるとなり、誰がどう見ても変態的な光景は誰にも邪魔されないし、邪魔させない。 「いざ入れようとしたら、ちょっと怖くなってきた……入るのかな」 「こら! 弱気な事は言わない! 確かにちょっとおっきいけど、入るよきっと!」 雰囲気ブチ壊しのイヴァンの言葉に、流石のフローラも怒っていた。 はち切れんばかりに血の通った肉棒を秘所にこすりつける。溢れる愛液はローションよりも粘りがあるような気がする。すでに爆発しそうな肉棒を楽にさせるため、イヴァンはフローラの膣へと侵入させた。 「うっ、これ……は!」 「はんっ! あっ……やっぱ、キツイよぉ……!」 お互い初めての交尾に戸惑っていた。何者も受け入れたことのないフローラの秘所には、イヴァンの肉棒は太く、先端を挿入させるだけで痛みを感じていた。 「だ、大丈夫……?」 流石に心配になるイヴァンだが、フローラは後退りしなかった。九本の尻尾がイヴァンを包み後押しする。自らが望んだことに、そっぽを向くようなメスではない。 心配いらない、ということなのだろう。好きになったオスを受け入れるのは当然。フローラもそれくらいの覚悟はしている。 ならイヴァンはそのフローラの思いを無碍にするわけにはいかない。もうサイは投げているのだから止まる必要はない。 「なら、いくよ――!」 初めて受け入れる膣、肉棒を進撃させていくのは少々骨が折れる。膣内にオスを受け入れる感覚は、オスでは理解できない。どのような感覚なのか、痛みはどれくらいなのか、そんなことは直接分からない。だがフローラは思う存分にイヴァンの肉棒を受け入れている。その事は目と目を見れば瞬時に伝わることだ。 入れて相当刺激を受けているのか、喘ぐ声と痛みを堪える声が止まない。初めてなので仕方ないがここまで感化されているとちょっと心配になってくる。過度な不安に過ぎないが、躊躇なくやれるようになるまでこれも時間が掛かるのだろう。 そして根本までもう少しという所で、ビクンとフローラの体がけいれんする。同時の膣内が締め付けられる感覚と愛液が大量に溢れ息を大きく荒げる。 「あ……いれたぁ……だけにゃのに……イっちゃっ……た」 先ほどまで絶頂間近だけあって我慢できなったのだろう。 「だ、大丈夫?結構盛大だったよね、今の」 「あ……ははは……ちょっといてぁかったかな……でもあってぁかいから……らいりょうりゅ……」 呂律の回っていない声だ。それくらい頭の中が真っ白なのだろう。 いくらイヴァンの肉棒が太いモノだからといって、悶絶させるような大きさではない。ただ平均より上位に食らい付いているだけ。他の同種族から見ればそれは大きいかもしれないが。 それでも戸惑うのは、互いに経験がないからだろう。子どもたちの相手で、自分の性処理の時間などそんなに確保出来ていないに違いない。いきなりこのような挿入に慣れていないだけ。 早く楽にさせたかった。苦しみを和らげてやりたい。イヴァンの優しさは自らの欲に溺れるほど愚かではない。 少し間を空けて、フローラの意識を回復させた。体を撫でたりしてイヴァンはフローラを看る。 「ごめんねイヴァン……。こんなこと初めてだからいろいろビックリしちゃって……」 「いいよ。僕だって同じだし……。てか、入れるのすっごい下手くそだし……。 でもお姉ちゃんに絶対無理はさせたくないから、駄目だと思ったらすぐに言ってね」 イヴァンの気を遣う優しさは変わらない。絶対に相手に無理はさせない気配りは一種の才能だとフローラは思う。 「もう大丈夫。続き来ていいよ」 「うん、じゃあ……動くよ」 回復したフローラを装い、腰を上下に動かし始める。待ち望んでいたかのように肉棒は膣を大きく刺激して、フローラは甲高い声で体を仰け反らした。 「ひゃっ! イヴァンの……があ!」 膣内で肉棒が擦り合う感触を存分に感じ、この上ない快楽が互いに襲う。大好きな姉、愛しているメスの前にイヴァンの動きは更に増していく。 ここにきてローションのすべり心地が後押しする。体も動きやすく何ともいえないぬるぬるの感触が凄い。 「お……ねぇ……ちゃん……これ、すごい! めちゃくちゃキモチイイよぉ!」 強く肉棒を膣内で締め付ける中、相当な刺激が互いに襲う。長く楽しみたいのに、そんな余裕は全くない。仕方ないが、とはいえここはオスのプライドが黙っていない。 「ふぇっ!?」 ローションで体毛がすっかりねとねとになっているチェストの辺りを舌で舐める。枯渇油など口に含んで良いものかどうか、そんなこと今はどうでもいい。 全身性感帯となったフローラには、どこを攻められても良い声で喘ぐだろう。無駄な脂肪がなく、ややふっくらとした柔らかい胸は、スラリとしたフローラの体では分からない。 もっと色々と知りたい。こうして肉棒は中で暴れているのだから、お留守の場所はもっと活用していくべきだ。 「ひゃっ!そんなとこ……はげしくぅ……イヴァアアン……っ!」 愛するオスの名前で喘ぐ姿は感無量だ。もっと攻めたくなる。もっと。もっともっともっと。 「おねえ……ちゃんのからだ……やわらかくて……あったかい……」 密着しすぎて、互いの体が熱くなる。同時にローションの粘性が無くなり、ベタベタしてきた。けどもうそんなこと関係ない。肉欲喰らい付く前に、そんなものは風前の灯に等しい。 互いに絶頂に達したばかりなのに、これほどエキサイトするとは頭の中はもうパンク寸前だった。攻めれば攻めるほど、膣内は愛液で溢れより激しさを増す。永遠に収まりはしない行為に限界というものを感じられない。 周りが見えなくなるこの空間。目の前の愛するキュウコンに全てを捧げる時間。この瞬間がいつまでも続いたらいいのにと、互いの息がシンクロする感覚がたまらなく最高だった。 「あっ……またイきそう……」 何度も弾ける瞬間に二度目の絶頂はすぐそこだった。もっと味わいたい感覚なのに、体はそう付いて来ない。 もっと楽しみたいのに、早漏の癖も直さないと。そう考えたら相当スペックが低い。フローラは気にしないと思うが、自分が気になる。もっとオスとして色々磨いていかねば。胸を張って交尾をしようと、いつか言えなくなるだろう。 「い、いや中は……! ぐっ!」 寸前まで溜めて、直前で膣から肉棒を引き抜いた途端、豪快な勢いで白濁の液が解放される。射精の勢いは想像以上のもので、フローラの腹を目がけて弧を描くように白濁の液が飛び散る。一番凄まじい物でフローラの顔まで放たれ、濃厚に白に染まった精液は次々とフローラの体に射精する。 ローションと混じるも真っ白な精液は違いがはっきりと分かる。 数秒射精しても勢いは衰えない。射精の勢いはないものの、肉棒から腹にかけて何度も白濁の液が溢れ落ちる。 「ああっ……これ凄まじいや、すっごい気持ちよかったぁ……。 まさかこの短時間で二回も達するなんて、思いもしなかったなぁ……」 初めて交尾を体験した気持ちは最高だった。好きな相手とこうして思いきり乱れたのは何より。 顔射した精液を前足で拭き取り、口周りに付いているものは舌で舐めとる。真っ白で元気よく降り掛かった精液を、勿体なさそうに見つめる。 「はぁん……いやあ、何というかやっぱ凄いねイヴァン……大量じゃん。こんないっぱい出されたら一発で子ども出来そう……」 だから膣内ではキャンセルしたのだが。全部が飲まれていたら確実に子宮に注ぎ込んでいただろう。 もしもの配慮だ。まだ恋のパートナーとなったばかりの仲に、いきなり子どもなど早い気がする。もちろん子どもが嫌というわけではない。寧ろ近いうちに望んでいる事だ。 余韻に浸ったイヴァンだったが、その場で座り込む。二回の射精はかなり体にも疲労を感じており、体力も殆ど尽きていた。あまり体力のないイヴァンにとってこれほど激しい行為は相当体に負担がかかっている。 「あーもう、ホント体力ねぇな僕……まだ満足してないのに」 やはり仇となった。子どもたちの相手をするだけで果てる自らの持久力が。貧弱な体をこれほど恨むことになるとは、これ以上なく情けなく思う。 笑いごとじゃない。オスとして最低じゃないか。メスを満足させられないなど。 「大丈夫? 起き上がれる?」 「ちょっと今すぐは厳しいかな……」 「ほうほう。なら――」 フローラはまだ体で精液が流れ落ちている体を起こし、イヴァンを押し倒した。 「私が動いてあげるから。さっき私イかなかったし、もう一回気持ち良くなろ?」 「優しすぎるよ姉ちゃん……。もう、大好き」 やっぱり最後は姉に甘えてしまうのだなと。残念だが一日そこらで改善できるものではないのだろう。 もっと自分に自信を付けて。創作の他にちゃんと体力も付けないと、本当の意味で満足させられない。お互いが百パーセントでなければ成功とは言えないのだ。きっと全力で交尾を行える時までちょっと今だけ。その時がいつになるかは窺えないが。 前足で体を支え、器用に尻尾で肉棒を操る。こうゆう時、尻尾が自在に操れるのは便利だ。 「もう固くなってる。体力はすぐ尽きるのに、精力は回復するの早いね。どんだけエッチなのかな?」 「そんな事言ったって……すぐに出来るからいいでしょ。エッチなのはお姉ちゃんも一緒なんだし」 自分が絶倫だということを、一発で肯定しなければならないのは何故だかむず痒い。そこまで意識がないのだが、ここまで来てしまえば認めるのもすんなりと受け入れてしまう。 もう互いに一発交わり、慣れているのでフローラはつべこべ言わず秘所に挿入した。だが今度はフローラが主導権を握っているため、見える光景が丸きり違う。自分の肉棒があの膣に入っていく瞬間、卑猥な音を鳴らしながら挿入する感覚はまた一味違うものだ。 「おお、意外と開通したらすんなり奥まで入るんだね……。やっぱ最初の体験って貴重なんだね」 「ちょっと、今更すぎるよその言葉。本当そういうとこ天然だよね……」 今に始まったことではないが、変な所で神経が鈍いのは、これからの関係でも苦労しそうだ。 「けどお姉ちゃん……。何だかこの体制になった途端、嬉しそうだね」 「そりゃ、やっぱりイヴァンはこうして上から見るのが好きだからかな?ンフフ」 その意味は言葉の中に含まれている。ちょっとした屈辱だ。恋をして好きと告白したオスでも、長年弟として接した時間の方が長いため本能的な部分は自然と出てしまうのだろう。 「ああ、でもわかるよ……イヴァンが私の中でビクビクしてるの。この感覚は分からなかったなぁ、自分で精一杯だったし」 腰を回して肉棒を掻き乱し、淫らな音が何度も弾ける。九本の尻尾を波立たせ、ローションが艶やかに輝きを放つのはまた違った色っぽさが溢れ出ている。 「じゃあ、今度はお姉ちゃんがいっぱい楽しんでよ。僕は出来る限り我慢するから」 「本当? じゃあいっぱいイヴァンを感じちゃおうかなぁ。フフ」 ほんの一瞬だがフローラの口角が不気味に吊り上ったのが見えた気がしたが、いつもの優しい笑顔のフローラだ。見間違いか何かもしれないが、何か嫌な予感はしていた。 二度射精していることで、多少の耐性は付いているようになっているはず。イヴァンは充分にフローラを堪能したのだから、逆の立場になってフローラにも公平に考えていた。 上下に腰を動かし始めると、フローラは膣内が擦り合わさる感覚に再び甲高い声を上げた。自分の感覚で行為を行うのはまた未知なる世界が待っていたのだろう。 舌を出し、息をするのも苦労している様子。何より全てが快楽の虜になったメスの様は、こうして目の前にいて初めて妖艶さを感じ取られる。 「うわ、すっごい激エロ姉ちゃん……子どもたちには絶対に見せちゃ駄目な姿だ」 少なくとも孤児院でこんなハツラツとした行為は出来ないだろう。夜にこっそりと誰の目にも付かないこの倉庫でしか場所はない。 今後もこの倉庫で幾度なく行われるだろう。愛の巣というには狭く埃っぽいが、そんな贅沢は言えない。こっそりと交尾をするには最高の場所だ。 「あぁん、もっとお……」 一度腰を動きが止まったかと思えば、フローラは体を倒して密着する。ローションと精液でぬるぬるになった体と体が擦り合い互いの体毛がクロスする。 柔らかい体がローションでより繊細に分かるようになる。炎タイプらしい体温の熱さが丁度良く、更に体の循環は早くなる。 密着した体をイヴァンは強く抱き締め返した。そして腰から尻の辺りを撫でる。スラリと肉付きの良い筋肉と、程よい柔らかさを揃えた感触は癖になる。 「もう、変なとこ触ってエッチなんだから」 「だって柔らかくて気持ちいいんだもん。おっきいね、お姉ちゃんのお尻」 「そりゃ、イヴァンよりはちゃんと鍛えているからね」 「えっ、それさり気なく貶してるの?」 本当に嬉しそうに、今の快楽を楽しんでいる姿見てイヴァンは心の底から幸せな気持ちになった。 こんな顔もするんだな、と曝け出せば曝け出すほど新たな一面が見える。普段はみんなに気を配ってくれて優しい姉なのに、こうして好きなオスを前だと淫乱に、自らの欲望を恥じなく晒してくる。 こんなキュウコンとツガイになれて心から嬉しい。目の前のオスのために愛を注ぐのが痛いほど分かるからだ。 「お姉ちゃん……ごめんもうそろそろ……」 言葉を察したフローラは体を起こし優しく微笑んだ。フローラも十二分に満足した表情だった。存分に腰を振り満たされたらしい。 だが、同時にフローラは口角をニヤリと吊り上げ、前足をイヴァンの片隅に置いてしっかり互いに固定した。獲物を範囲以内に仕留めたような笑顔に、艶やかなローションの光沢が興奮を呼ぶ。 そして慣れない動きにも因らず、フローラは大きく腰を上下に振った。肉棒が秘所から抜け出さない程度だが、高速で振る行動にイヴァンは大きな声を上げた。 「うわあっ! ちょっとまって……そんな激しくしたら……中に出しちゃう!」 一切外で射精させようという意志が見当たらない。ただ逃げ出さないように、体を足で固定させて暴れさせないようにする。 「私は……イヴァンの精子が欲しいの! もう中に出すって決めてたから……さっきみたいにたっくさん出して!」 どうやら罠にはまったらしい。これが目的だったのか。 快楽に我を忘れた声じゃない。本気で願っているイヴァンへの訴え。フローラは望んでいる。自らの精液を注いでくれるのを。 どうやらフローラの方がよっぽど覚悟は決まっていたらしい。ここまで迫られたら嫌とは言えないじゃないか。 これはもう決めるしかない。今回の行為で確実にタマゴが出来るということではないが、一度放てばこれからも注がねばならないだろう。一度越えたら戻ることの出来ない選択だが、先にフローラが行ってしまったのなら自分も行かないわけにはいかない。 もうとことん付き合うと、イヴァンは自らも腰を振った。なけなしの体力を消費して、ただフローラの望みを叶えるために。 もう二度イヴァンは射精している。三度目となればどれくらい注げるか分からない。 だがそれなりに射精すると感じる。こうしてどれくらい出そうなのかも理由は不明だが、自分の直感と欲の深さを考えて予感はしていた。フローラに肉棒を掻き乱されて、自分より物狂いなフローラに思う存分腰を動かされて、達した欲は計り知れないのだから。 「もう……だめぇ……だす――っ!」 「わた、しもそろそろキそう――ねっ!」 最後に勢いよく腰を落とすと、互いに絶頂を迎えた。本日三度目となる、濃厚で熱い精液をフローラの子宮に次々を注いでいく。 やってしまったことを後戻りはしない。第一波で子宮を精液で満たしても、フローラは絞り出すように腰を何回も上げては落とす。 もう後戻り出来ない。甲高いフローラの絶頂に達した声と、射精の感覚で何もかもがよくなっていた。 何度も何度も射精を繰り返したフローラの秘所は、蓄えきれなくなった精液がダラダラと逆流している。 あまりにも出しすぎだと。射精を繰り返しすぎて自らの腰にダメージが入っている。ちょっとやりすぎだな、と予想以上の量を注いだ精液を見て半分嬉しく半分懺悔していた。 それとは裏腹に、フローラは大変満足した表情。自分の炎より熱い精子を溢れるほど注いで貰い、初めて子宮に注がれる感触を全神経集中している。 その姿はまさに淫獣の様。オスの精液を嬉しそうに受け入れる屈指の変態の目をしたフローラの顔は二度と忘れることはないだろう。 「なんだぁ……あんなに出しておいてまだこんなに射精するんだねぇ……」 たっぷりと犯された腰を引き抜くと、少しずつ萎びていく肉棒を側ら、濃密な精液が秘所から流れ落ち、床に小さな水たまりを作っていく。粘り気のある種子はイヴァンの性欲の大きさをよく物語っていた。 「あーあ、いっぱい出しちゃった。イヴァンのせーし、いっぱーい」 恍惚な表情で受け入れた精液が垂れ落ちるのをもったいないと、また下品な目で見るのはどうかと。 本人が満足ならそれでいいが、その後の事を本当に理解しているのか少し不安になっていた。 「あはは……エッチな姿のお姉ちゃん、ご馳走様でした……」 すっかり搾り取られたイヴァンは、少しずつ萎れていく肉棒を見つめながら苦笑いを浮かべた。刺激的な時間から目を覚めたように、欲を吐き出したから反動で何もかもが冷静になっていた。 そこへ、ボフッとフローラがイヴァンに向かって倒れてくる。精液垂れ流しの膣をよそに、フローラはイヴァンを抱き締めた。 「はうーん、幸せぇ……」 全身汗とローションと精液で汚れきった体で最高の笑顔を浮かべた。すっかり満足したのはフローラも同じ。気持ち良い感覚に溺れて夢心地の気分だろう。 腰が砕けてもたれてきたのかと思ったが、それ以上言葉が出ない。もしやと思ったが、イヴァンの予感は当たった。 「ああ、もうこんなとこで寝たら……! あちゃー、手遅れだったか」 暖かいフローラを抱えながら寝れば、良い夢がきっと見られそうだ。イヴァンも相当疲れているのだから。 互いに全身ローションと精液でベタベタ、たっぷりと注がれたフローラの膣からは未だにイヴァンの精液がドロドロと流れ出している。 そういえば藁を取りにこの倉庫に来たことを今になって思い出した。藁よりもっと極上の布団を目の前に手に入れたことで、このまま自分も眠ってしまおうかと考えた。 可愛らしいフローラの寝息がイヴァンの耳元でリピートする。数分前まで姉という存在だったキュウコンが、こうして両思いの恋仲になったことが今にも信じられない。 幼少期から育ててくれたフローラに、本気で恋をしたこの気持ち。ずっとこれからも抱き続けていくのだなと、甘える子どものようにイヴァンは眠りに付いた。 また明日もある。姉としてのフローラとは今日でお終い。新たな関係としてスタートするが、いつも以上に有意義な一日となるだろう。 こんなにも愛してくれたフローラ。これからはもっと気持ちに応えていかないとな、とイヴァンは夢の中でもう一ラウンド、フローラと激しい交合を開始していた。 *** 次の明朝に二匹が孤児院にいないのを疑問に感じ、倉庫まで駆けつけ子どもたちに見つかった時の惨状を上手いこと説明して誤魔化すことに苦労するのは、また別の話である。 ---- 後書き とても懐かしいお話でした。とにかくエッチなキュウコンを書こうと一生懸命だった気がします。非常にエッチですね、これはいけませんね。 何故ローションを使ったプレイなのかは覚えていません。まぁエッチだからいいでしょう。 #pcomment(above)