ポケモン小説wiki
妄想王国建国史 の変更点


著:[[Vacation Please]]

非常にご無沙汰しておりました,お久しぶりです.
イーブイコレクションが今年まさかの復活ということで喜び狂い,勢いに任せて書き始めてしまいました.
ブランケットが可愛すぎます.最近の寒い毎日によいお供です.
ですが作品の舞台は夏.
ポケモンが好きな人なら誰もが一度は思う(はずの)ことを題材にしてみました.
しつこい文体ですがお付き合い頂ければ幸いです.

[[序>#pro]]
[[一>#one]]
[[二>#two]]

[[コメント等>#comment]]
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&aname(pro); まだ7月だというのにとにかく暑い。ポッポは木陰に密集し、テッカニンは大きな鳴き声をあげている。真夏の陽が燦々と降り注ぎ、私の白い首をじりじりと焦がす。日焼け止めを含んだ汗が額から流れるが、両手は買い出しのビニール袋で塞がっており拭う事ができない。そのまま汗は目に入り、日焼け止めが私の目を攻撃し思わず涙が流れた。警戒したのかご夫人が散歩をさせていたヨーテリーが私に向かって吠える。頭がボーッとする。とにかく我が牙城へ急がねば。このままでは私の身体はとろけてアスファルトにしみ込み、跡形もなくなるだろう。

 ここで私の自己紹介をしておこう。私はジョウト地方のエンジュ大学に通う大学生である。とろけるなどと書いたが種族はヒトのオスである。決してこおりタイプのポケモンなどではない。ちょうど酒を合法的に飲む事が可能になる齢である。およそ2年前、進学とともにカントー地方のとある街からエンジュの地にやってきた。故に私は一人暮らしをしており、我が牙城とはすなわち私の下宿の事である。
 太陽の光を一身に浴びながら、私はやっとの思いで我が牙城である木造2階建てアパートにたどり着いた。我が牙城は大通りを脇道に逸れたところにあり、最寄りの店からそこそこに距離がある。故にいつもならば我が愛するポニータに跨がり買い出しに行くところであるが、残念ながらポニータはヘソを曲げてしまい、今日は私が自らの足で買い出しに行く羽目になってしまった。牙城の1階でヘソを曲げたままのポニータを軽く撫で、私は外階段を上り、2階の自室に飛び込んだ。
 案の定部屋の気温は外と変わりないが、幸いにも北向きの日当り最悪の部屋は日光が入ってこないため外よりは幾ばくか快適である。冷蔵庫に買い出し品を突っこみ、床の上に寝転がった。四畳半という手狭な部屋はテレビと本棚、畳まれた布団でほぼ埋まっているため、私は赤子のような体勢で横になった。苦学生の身分で冷房をつけることなどできる訳もなく、扇風機を付け、窓を全開にする事で風を通し、辛うじて涼を得ることで精一杯である。しかし今日はそうも行かなかった。昨晩のオールの飲み会と先ほどの太陽の熾烈な攻撃によって私の体力は削られており、最早扇風機を付けるために這う余力もなかったのである。こんな時こおりタイプのポケモンが居れば…そう呻きながら私は眠りに落ちた。

 気付けば部屋はさらに暗くなっており,私が寝ていた床は汗で濡れていた.汗がべったりして気持ちが悪い.時計を見ると午後7時になろうとしていた.テレビのスイッチをつけ,何か胃に入れなければと小さなキッチンに立つ.何を作るでもない,いつも通りインスタントの食事である.薬缶を火にかけ,テレビを見ながらお湯が沸騰するのを待つ.ちょうど天気予報が流れている.こんな時ほのおタイプのポケモンが居ればあっという間にお湯が沸くのに…そんなことが頭をよぎったが,それはあまりに無理な話である.
「本日の最高気温は35℃を超え…」
やはりこんな暑い日はこおりタイプのポケモンが居れば快適であっただろう.もしくはみずタイプか.
「では明日の天気です」
しかし,私がこおりタイプやらほのおタイプやらみずタイプやらのポケモンと共生することは不可能である.なぜなら,

「明日の京都は、今日と同じく暑くなるでしょう」

この世界にポケモンは居ないからである.


 先ほどの自己紹介を早々に訂正しよう.私は近畿地方の某大学に通う大学生である.種族はヒトのオスである.これに変化はない.断じてポケモンではない.2年前,関東地方のある街から京都へやってきた.カントーではない,関東である.
 ポニータとは私の自転車のことである.先日アルコールにコントロールを奪われ(&color(red){※自転車の飲酒運転は違法です};)鴨川に落ち故障した.なぜ私が読者にこのような紛らわしい状況描写で自己紹介をしたのかと言えば,すなわち答えはこうである.

「私は大の妄想家であり,そして大のポケモン好きなのである.」

 私が小学生の頃ポケモンの金銀版が発売された.私は周りがやっているというよくある理由でポケモンを始め,そしてその虜となった.中学生でダイヤモンド・パールが発売され,周りが思春期特有の恥ずかしさから友人らがポケモン離れを起こして行く中ただ一人決して心折れずポケモンを続け,高校生となりハートゴールド・ソウルシルバー,受験生時代にブラック・ホワイトが発売されてもポケモンを続けた.正直よく大学に合格したものである.
 このように人生の半分以上をポケモンと共に過ごしてきた私は,天性の妄想癖も相まってポケモンを日常生活に生み出すが可能となったのである.私にはポッポやヤミカラスが空を飛び,ニャルマーがブロック塀の上を歩き,イトマルがアパートのベランダに巣を作っているように見える.無論凡人の目には鳩と烏が空を飛び、野良猫がブロック塀の上を歩き,少しでかい蜘蛛が巣を張っているようにしか映らない.しかし私にとってはポケモンの存在する風景が現実なのである.所詮妄想などという人間はキキョウのメブキジカにでも突進されて空の彼方まで飛んでいってしまえばよい.貴様がお湯を入れてから3分間カップラーメンの存在を疑わないことと同じように,私はポケモンの存在を疑わない.ポケモンがいるということは私の世界の紛うことなき真実なのである.
 大して才能にも恵まれない私がただ一つ身に付けたこの能力は,ポケモン好きなら羨ましく思うだろう.
 しかし,この私の世界も大きな欠点があった.

 薬缶が大きな音を立てたので私は驚き急いで火を止めた.カップラーメンにその沸騰したばかりのお湯を注ぎ3分待つ.気付けば天気予報は終わり,バラエティ番組が始まっていた.
 部屋の隅をイトマルがこそこそと動いているのに気付いた.外は暗くなっているがテッカニンは鳴き止む気配がない.テレビでは「犬と飼い主の感動秘話」と題した再現VTRが流れ,毛並みの良いヨーテリーが山道を必死に走っている.タレント犬というものだろう,どう見ても毛並みが一般家庭の飼う犬とは違う.
 私の世界はこのような感じである.目に映る動物は全てポケモンに見え,画面を通したとしても動物は全てポケモンに修正される.見えずとも鳴き声などが聞こえれば全てポケモンとして認知されるのである.
 そろそろ3分である.カップのフタを開け,ラーメンをすする.塩味が濃く健康に悪影響しか与えない味がするが,今日は汗が多く流れたから塩分補給が必要であると開き直り一気にすする.うまい.現代文明の産物もなかなか捨てた物ではない.

 さて,この私の世界の欠点であるが,これは何となく読者も分かっているのではないか.
 それは,どの動物を見てもポケモンにしか見えない,という事である.
 例えばペットショップへ行くとする.チワワやトイプードル,ミニチュアダックスフンドなどが可愛らしくしっぽを振ってこっちを見てくるように凡人には見えるだろう.しかし私の目には全てがヨーテリーなのだ.もちろんかわいいだとか大きさだとかの違いは分かる.先ほど見た通り毛並みも分かるのだ.しかしヨーテリーなのである.チワワもゴールデンレトリバーも何もかもがヨーテリーなのである.勿論サイズによってハーデリアなどにも変わるが,結局はヨーテリーなのである.故に女の子などとペットショップに行った際には
「見て、このチワワかわいい〜!」
「そ、そうだね(ヨーテリーにしか見えない)」
「こっちの子もかわいい!あれ、この子の種類なんて言うんだっけ?」
「ええっと…(ヨーテリーじゃないの?)」
となってしまう.無論女の子と出掛けた事などないので妄想の域を脱しないが,これはかなり現実に近しいシュミレーションである.正直私は生物系の進路を選ばなくてよかったと心から思った.種類が見分けられず話にならない.
 しかももう一つ,この能力には大きな欠点がある.
 その欠点とは,非現実的なポケモンはこの世界に現れない,ということである.
 これは別段大きな欠点でもないと思われるかもしれない.むしろ火を吹く犬や,歌で人を眠らせた挙げ句顔面に落書きをするピンクの丸い生命体などが現れてもそれはそれで困る.実際私も生活には全く影響がないため,大して苦労があるという訳でもない.しかしこれは私にとって大きな問題なのである.
 私はイーブイが大好きである.さらに言えばイーブイの進化系のポケモン達,すなわちブイズをこよなく愛しているのである.
 だが考えてみてほしい.現実にイーブイのような動物が存在するであろうか.遺伝子が不安定で周囲の環境に作用され姿を変える動物が.加えて,その進化系達のような,例えば火を噴くだとか,額の宝石が光ってサイコキネシスを使うだとかいう動物がこの世に存在するであろうか.
 答えはノーである.
 端的に言えば,ほのお,でんき,エスパー,ドラゴンなどと言ったタイプのポケモンは基本的に私の目の前に現れないのである.また,人型のポケモンも基本的に現れない.冷静に考えて,二本足で立つウサギなどが居れば正直ポケモンでなくとも驚くであろう.
 このようであるため,私はこの能力に不満がある.折角ならちゃんと全てのポケモンを見せろと.しかし私の妄想力を以てしても,存在しない物を見ることはできないのである.それでは幻覚だ.

 そんなことを考えながらカップラーメンを平らげ,私は横になり目をつむった.日焼け止めが不徹底であったのか,首がひりひりとする.まだ疲れはとれておらず,二日酔いで頭が痛む.物を食べたせいかまた眠くなってきた.今日は早めに休むのが賢いであろう.とりあえず汗を流すため目を開け起き上がった.
 私は目を疑った.妄想に突っ走る目であっても私の目である,信用はしている.しかし今回ばかりは本当に疑った.
 たたまれた布団の上に,ちょこんとエーフィが座っていたのである.

 先ほど説明した通り,エーフィは絶対に私の世界に現れないポケモンである.エスパーを使える四足歩行動物が居てたまるものか.
 しかし私の目にはエーフィが映っている.こちらをじっと見つめてくるエーフィが.
 いよいよ暑さで頭がやられたのか.もしくはもう夢の中か.訳が分からないが,目に見えるこの世界の真偽を確かめねばならぬ.私はゆっくりとエーフィに手を伸ばした.触れられれば現実,触れられなければ夢か幻と判明するだけの事である.いい夢を見たと思えばそれで済む話である.
 そして私はこれが現実であると確信した.エーフィは目を瞑りながら大人しく私に頭をなでられている.いよいよ本当に訳が分からなくなってきた.とりあえず背中などにも手を伸ばし触ってみる.艶々とした毛並みはシルクのような触り心地である.
「素晴らしい.」
この一言に尽きる.恋い焦がれたポケモンに触れている興奮から,思わず私はエーフィを撫で回した.
 刹那,私の身体は宙に浮かんだ.不健康に痩せているとは言え,地球の重力に抗って浮くほど私の身体は軽くない.目を白黒させエーフィを見てみると,額の石が輝いている.エーフィはサイコパワーを使うとき額の石が光るとポケモン図鑑で読んだ事がある.それで私は浮かんでいるのか.まさか本当にエスパーを使うとは.一体このエーフィは何なのか.様々な疑問が頭を駆け巡る中,私は第一に解決すべき疑問に当たった.
 私はこれからどうなるのか.
 エーフィを見てみると明らかに不機嫌な様子である.むやみに身体を触ったのが気に食わなかったのだろう.もしかすると私はサイコキネシスで外に放り出されるのかもしれない.私の貧弱な骨がもつだろうか.もしくは粉々にされるのかもしれない.誰か骨を拾ってくれ.何にせよ良いビジョンは見えなかった.
 様々な私の末路を考えていると,急に私の身体は床に落ちた.サイコキネシスが解かれたようである.頭をぶつけたため痛い.呻きながら仰向けで倒れていると,いきなりエーフィがのしかかってきた.見た目の割に地味に重い.図鑑通りの体重なのかもしれない.エーフィは私の顔をじっと見つめ,顔をどんどん近づけてくる.まさしく顔と顔がぶつかるか否かの辺りでエーフィは止まった.大きく開かれた目はどことなく潤んでおり,何とも言えないいい匂いが微かにする.近くで改めて見るととても可愛い.美しい.生まれてこの方私の記憶では,顔をここまで近づけてきた生命体は愛すべき我が両親と幼少のトラウマとなった黒光りするGのみである.心拍数が上がる.これを読んでいる人間はポケモンに興奮する人々と信じて言うが,私はエーフィに先ほどとは別の意味で興奮していた.いつぞやネットで読んだポケモン小説のように,いきなり起き上がって押し倒してしまっても…などと考えていると,私の意識が急に遠のいて行くことに気付いた.私の意しきはとおくゆめのなかへと…


 私はテッカニンの鳴き声で目を覚ました.相変わらず朝から大きな声で鳴くものである.
 床の上で寝てしまったからか,起き上がると身体が痛い.部屋は暑く,昨晩から着替えていないこともあり身体は汗で余計にべったりとしている.非常に不快である.しかも身体が異様にだるい.
 昨晩現れたエーフィは私の布団の上で丸まって眠っている.また不用意に触れればサイコキネシスで宙に浮かび,今度は本当に粉々にされる可能性がある.とりあえず私は朝食がてら菓子パンをかじりながらエーフィを観察することにした.
 アメジスト色の毛並みは相変わらず綺麗で,北側で太陽光が差し込まず薄暗い我が牙城であっても艶やかさが見て取れる.普通の生き物のように身体は呼吸で上下し,静かに寝息を立てている.その小さな動きでも毛の光沢具合が変わり,それがまた美しい.
 写真にでも撮っておこうかと思い,携帯を取り出そうとしたところでエーフィは目を覚ました.昨晩同様,じっと私の顔を見つめてくる.何か言いたげ目ではあるが,何を訴えているのか分からない.
 少しの間見つめ合っていると額の石が輝き始めた.今度こそ粉々にされるのではないか.私が身構えようとしたのと,菓子パンが私の手から逃れ中へ浮いたのはほぼ同時であった.虚をつかれた私は易々と朝食を奪い取られ,半端に身構えた状態でエーフィを眺めていることしかできなかった.エーフィはサイコキネシスで器用にビニールの袋からパンを取り出すし,それにかじり付く.食事を行っているということは,すなわちエーフィが生物であり,そこに存在するということである.私は幻覚の可能性を否定していなかったのだが,パンを平らげたところを確認して,私はエーフィの実在を確信した.妄想の産物でも幻でもなく,本物のエーフィである.
 感激である.
 画面を通してでしか眺める事のできなかったエーフィが我が四畳半に存在するとは.
 このままエーフィを一日中観察していたいと思ったところで,私はふと我に返った.今日は平日である.時間は既に午前10時15分.あと15分で講義が始まってしまう.夜通しの厳選や二日酔いによって様々な講義を切り捨てていた私ではあったが,その講義だけは奇跡的に無遅刻無欠席を貫きノートも完璧に取っていた.前期も残るところ一ヶ月を切った今,ここでその記録を打ち崩す事はしたくない.ここまでの労苦を無碍にしてたまるものか.やむなく私は大学へ向かう事にした.急いで準備を済ませ,いざ大学へと部屋を出ようとしたところで,問題に行き当たった.
 エーフィはどうすればよいのか.
 エーフィは食事を済ませ,猫がするのと同じように顔を洗っている.勿論大学にエーフィを連れて行く訳には行かない.モンスターボールなどこの世には存在しないのだから.かといってこのまま我が牙城に放置していては,恐らく熱中症の類にかかりエーフィは倒れてしまうだろう.窓を開けて扇風機を回していてもいいが逃げてしまったら非常に悲しい.惜しい.それに食事はどうなるのであろう.普通の動物と同じく排泄もするのか.様々な懸念が頭の中を回る.
 無い知恵を振り絞り時計と財布と相談し,苦悩の末に私は冷房をつけ,クッキーと水を皿の上に流し込んだ.そしてユニットバスのドアを開けて
「ここで!出すんだぞ!」
と指差し,戸締まりを済ませ大学へと急いだ.
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&aname(one); 昼休み,学部棟の空き教室の隅で数人の男が騒いでいる.
「民法だけは無遅刻無欠席のあなたが遅刻とは珍しいこともあるんですねえ?」
ひょろりとした男が3DSをいじりながら右の口角だけつり上げて皮肉に笑った.
「まあそんなこと言っても先生他の講義はまるで出てないしね〜、むしろさっきの講義だけちゃんと出席してたのが怖いくらいだよ〜」
とやたら図体のでかい男が間延びした話し方でつぶやいた.この男も3DSを握り締めているが,身体の大きさとのギャップも相まって3DSが小さく見える.
「うるさいぞ築城!俵屋!エーフィが現れたから仕方なかったと言っているだろう!」
特徴と言える特徴のない男が机を叩いて主張した.しかし2人は聞く耳を持たない.画面を見たまま築城と呼ばれた男が
「またお得意の妄想でしょう?ついに幻覚を見るに至ったのですね、おめでとうございます!」
と茶化す.
「そうそう、お気に入りのブイズまで見れるようになったなんておめでたいよ〜お祝いに焼肉パーティでもしようよ〜先生の奢りで〜」
俵屋と呼ばれた男が続く.
「貴様ら…!」
師匠と呼ばれた特徴のない男は絶句した.


 この3人の男達は同じ学部に所属する同回生である.
 1人は常にシニカルな笑みを絶やさぬ築城.風が吹けば飛んでいきそうな風貌にも関わらず,フィールドホッケーという激しいスポーツに身を投げ打つ男である.学部首席という成績で現役合格を果たし,講義をまるで聞いていないようでしっかり優をとる俗に言う天才で変態だ.弁護士志望という,3人の中でも将来の出世頭である,
 1人は築城の真逆,俵屋.風雨に晒されようとも動じないような身体をしておきながら,その実はと言えば霧雨で風邪を引き,冷たい風が吹く季節になれば徹底した防寒で毛糸の塊と化す.手芸サークルに所属とこれまた凄まじいギャップであるがその腕は確かで,俗に言うところの草食系男子と言ったところである.
 そして最後の1人は人並みはずれた妄想癖を持つ男…すなわち私である.
 私たちは1回生のとき出会った.その出会いは重要でないから省略する.学部以外共通点のまるでない私たちを結びつけたものはただ一つ,ポケモンであった.
 お互いがポケモン好きと分かってからは早く,昼に集まってはポケモンバトルやポケモン談義を繰り広げた.バトルは私が最も強く,俵屋に至っては先生と呼び始める始末である.私が自分の倍近くありそうな男に(見た限りでは)慕われている様子は異様の一言で,周囲からは一歩引いた目で見られ,時にはTwitterで書かれたりもした.ポケモン談義では築城がその類希な変態性を発揮し,私と俵屋と周囲の学生を引かせた.そしてまたTwitterに書かれた.しかしそれでも私たちは意に介さず,教室でバトルに興じ,時々3人でポケモンセンターオオサカへ行ったりもした.そのようにして1年が過ぎ,新年度となった今年の春.この3人組に変化が起きた.


「先輩方焼肉行かれるのですか?」
絶句しながら私が振り返ると,黒髪の乙女が怖じ気づくことなく異様な一帯に踏み込んでいた.リボンのついた白いワンピースが清潔感と爽やかさを感じさせる.
「うん、先生のお祝いパーティで行くんだ〜。師匠も一緒に行こうよ〜」
「待て,勝手に焼肉に行く流れにするんじゃない」
「本当ですか!私焼肉大好きなんです、是非連れて行ってください先輩」
「待ってくれ,君ついこの前オールで飲んだだろ本当にお金が」
「可愛い後輩が連れて行ってと言っているのですよ?まさかあなた断ったりなんてしませんよね?あなた花城さんのこと」
「黙れ築城!…分かった,焼肉連れてくから勘弁してくれ」


 サークルの新歓の季節.築城と俵屋が昼休みに自分たちのサークル勧誘に狩り出され,私は一人学部棟の屋上に上がる階段に座っていた.学部棟の屋上は立ち入り禁止で人は全く来ないので,一人天窓から入る日向でひなたぼっこができるお気に入りの場所である.
 菓子パンを平らげてポケモンをプレーしていると,階下から人が駆け上がってくる音が聞こえた.築城にも俵屋にも教えていない場所であるため誰かが上がってくることは考えられない.もしかしたら事務員が管理で上がってきているのかもしれない.だったら面倒だなと思いながら荷物をまとめようとしたところ,黒髪の乙女が階段の折り返しに飛び出し,そのまま私に突進してきた.その拍子にDSが私の手から離れ,突進の結果私に弾き飛ばされた乙女と共に折り返しに落ちていった.
「だ、大丈夫ですか?」
私は尻餅をついている乙女に声をかけ,手を差し出した.乙女は少しの間目を白黒させていたが,すぐ近くに落ちている私のDSの画面に気がついて満面の笑みでこう言った.
「あなたもポケモンやるんですか?」
 聞くとその乙女は同じ学部の1回生で,花城さんと言った.目鼻立ちは整っているが,少し目の間が開いていて,美人というよりは幼い顔をしている.ポケモンと食べることとお酒が好きで,私たちが倒れ行く中
「これくらいのウォッカならまだまだ行けますよ」
と言い放った程の大酒飲みであるだけでなく,大食いチャレンジをぺろりと平らげ
「まだ料理出るんですよね?」
と発言したくらいの健啖家である.これだけでも驚きだが,何より驚かされたのがポケモンバトルの腕である.
 それから築城と俵屋がいない昼休みにだけ,私と花城さんはひなたぼっこをしながらポケモンバトルをするようになった.私自身バトルサブウェイなどをやり込んでいたので腕はなかなかあると自負していたし,対築城戦での勝率は9割を超え,対俵屋に至っては負けを喫したことがなく,このような乙女には負けまいと思っていた.
 が,花城さんは強かった.私を易々と倒し,屈託のない笑顔で
「なんだか勝っちゃいました」
と言ってのけた.私は衝撃を受けた.このような乙女は初めてである.強い.なんなのだ.
 それから私は打倒花城さんを掲げ,しばしば築城と俵屋に用事があると伝え花城さんとバトルをした.しかし勝てない.おかしい.躍起になり,毎日と勝負を挑んだ.そのような日々が続いた4月末,ついに築城と俵屋が私の言動を怪しがり始めた.私のような人間が毎日昼休みに予定などある訳ないと.
 そこからの展開は早く,花城さんの存在が2人に明るみになり,私の居ない間に花城さんは2人の勧誘を受け,あっさりとそれを承諾し私たちの集団の仲間となった.築城と俵屋に新顔が入ると呼び出されて行ってみたところ,見覚えのある乙女が居たとき私は心底驚いた.私が花城さんに一勝も挙げられていないことを知ると,築城はいつもの皮肉な笑顔を更に強め,俵屋は花城さんを「師匠」と呼ぶようになった.
「先生より師匠の方が偉いに決まってるじゃないか先生〜」
 異様な3人組に謎の乙女が加わったというニュースは小さな波紋を生んだが,花城さん含め我々はこれまた意に介さなかった.バトルでは私を打ち負かし,築城の変態ポケモン談義にもついていく乙女の存在は私たちのグループの中に華を添えたが,一方で異様さをさらに助長した.さすがに心配になり,私たちは花城さんに友達がいなくならないのか問うた.すると彼女は真顔で
「ポケモン好きをバカにする人間なんて有象無象です」
と言い放ったのだった.


「エーフィが先輩の下宿に?」
花城さんはお手製のピカチュウのキャラ弁を食べながら素っ頓狂な声を挙げた.
「いつもの妄想だと僕は言ってるんですけど、彼は聞かなくて」
「でも築城さん、本当にエーフィが居たらすごいですよ?」
「いくら彼が動物をポケモンに見れるからと言って、さすがにエーフィはあり得ませんよ」
「そもそも俺は先生の動物がポケモンに見えるって話も信じてないけどね〜。まあ焼肉が食べれればそれでいいけど〜」
「俵屋貴様」
「私も焼肉が食べられればそれだけでもいいですけど…じゃあ先輩にエーフィを見せてもらえばいいじゃないですか」
築城と俵屋が顔を見合わせた.
「花城さん…」
「本当に信じるの〜?」
「だって居ると言うのなら見せてもらえばいいじゃないですか」
「確かにそうですけど…」
「そうですよ。先輩、私たちに見せてくださいよ!」
花城さんは期待に満ちあふれた目で私を見てくる.確かに百聞は一見に如かず,見せてしまえば話は早い.だが,
「ううむ…見せるのはちょっとなあ…」
どうも気乗りしなかった.別に花城さんと俵屋にエーフィを見せるのは問題ないのだが,問題は築城である.こいつは輪にかけた変態であり,エーフィがオスだろうとメスだろうと何かしらの変態行為に及びかねない.それでエーフィの怒りを買って外に放り出されようと粉々にされようと私の知ったことではないが,何かしらの形でエーフィが関わったことは分かるだろうし,エーフィが世に出ることになってしまう気がしてならない.それは嫌である.世間にエーフィを見せるなどしたくないのだ.
「なんでですか先輩!」
「やっぱり確信がないんですよ彼は」
「う〜ん、やっぱり先生お決まりの妄想だと思うな〜」
「俵屋貴様」
俵屋も俵屋である.花城さんほどではないにしろ,こいつもなかなかの大食漢である.しかも俵屋の嫌なところは,私の下宿に来ると食べ物を食い尽すことにある.1回生のとき我々3人で私の家で鍋をするとなったとき,俵屋は鍋に飽き足らず我が牙城の備蓄という備蓄を食いつぶし,私の財布事情を壊滅状態にまで追いやったのである.現状で俵屋を下宿に入れるのはまずい.昨日買い出しを済ませたばかりである.築城も俵屋もダメとなると…
「花城さんだけで来てくれれば…」
3人の動きが停止した.私は自分のつぶやいたことの大胆さを改めて感じて非常に焦った.何を言っているのだ私は.
「先生〜…」
「あなたそれが狙いですか…」
「いやいや待て,今のはそういう意味で言った訳では」
必死に否定するが,否定すればするほど胡散臭くなるのは世の常である.恥ずかしい.汗が止まらん.これまでにない失態である.だが当の花城さんは
「はい、先輩方は信じてないみたいですしね!私4限までありますから、それが終わったら時計台で待ち合わせて行きましょう!」
 私たち3人の動きが完全に停止した.


 日が少し傾き始めたが,夕方はまだまだ暑い.
 私は下宿までの道を花城さんと並んで歩いていた.なんだか知らないがとんでもないことになってしまった。乙女を連れて我が牙城に帰るなど今までの人生で一度もない。花城さんは期待に胸を躍らせているようだが,私は暑さと混乱で頭が働かない.どうしてこうなった.あくまでこれはエーフィを見せるためというだけで,別にそういう意味ではない.変な意味ではない.まだ明るいじゃないかそんなのそんなの.でももし,築城や俵屋の言うようにエーフィが私の妄想の行き過ぎの幻覚であったら?どうなる?花城さんはそのまま帰るか?それとも?そう考えれば考えるほど私の頭はごちゃごちゃしてくる.もうこのまま下宿になど着かないで欲しい.そうすれば途中で花城さんも諦めて帰ってくれるに違いない.
 だがそんなことはあり得ない.私の願いも虚しく,我々は下宿に着いてしまった.
「先輩の下宿ってこのあたりだったんですね、私通り道でした」
ならもうこのまま帰ってくれればいいのにと思った.もしくはこのままポニータに股がって逃げ出してしまいたい.しかしポニータは故障し,階段の脇に立て掛けられている.不可能だ.
 外階段を登り,鍵を開けてドアノブに手をかける.花城さんを部屋に招き入れると考えると開けたくないように思えてきて,どうもドアを開ける気にならない.
 そのように動きが停止している私を花城さんはこう解釈したようである.
「あ、先輩もしかして部屋掃除してないんですか?それとも隠し忘れたものがあるとか?でも大丈夫ですよ、私そこまで潔癖性とかじゃないですし、築城さんの話でそういうの慣れてますから」
そう言って勘違いの乙女はドアを開け放ち,靴を脱ぎ捨てて部屋へと入っていった.冷房を付けっぱなしにしていたためか,部屋から漏れ出す冷気が凄まじい.
 ここまで来ては仕方ない.もうどうにでもなれ.そう思い後に続く.



 部屋に入った私は,またしても自分の目を疑った.
「エーフィだけじゃないじゃないですか!」

 エーフィと共に,澄ました顔でグレイシアがそこにいたのである.
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&aname(two);「今日はありがとうございました!これで築城さんと俵屋さんを見返せますね!」
嬉々としてスマートフォンの画面をこちらへ向けてきた.画面にはじっとこちらを見ているエーフィと,恥ずかしそうにそっぽを向いたグレイシアが映っている.これであの2人が私の下宿にやってくることがほぼ決まったため,正直なところ私は気が重い.
「ろくなもてなしもできなくて済まないね,花城さん」
「いえいえ、お構いなく!あの2匹を見られただけでもう最高ですから!また来るからね、エーフィ、グレイシア!」
満面の笑みを浮かべながら手を振るが,2匹とも大して反応がない.花城さんは少し残念そうな顔をしたが,
「じゃあバイトがあるのでそろそろ失礼します!また来ますから!」
「ああ,ぜひ来てくれ.バイト頑張って」
と私が言うとすぐ笑顔に戻り,さっとお辞儀をして,階段を駆け下りていった.

 先に結論から言うが,特になにも起きなかった.まあ現実はこんなもんである.あくせくしていた自分があまりにも馬鹿馬鹿しくて恥ずかしい.
 ひとまず夕飯を準備しよう.昨日同様薬缶をコンロの火にかけ,私はトイレに入った.


 部屋に入ったときの印象は,ただただ“寒い”ということだけだった.
 グレイシアの周囲には氷の粒子がきらめいている.この寒さは恐らくグレイシアのせいなのだろう.
「グレイシアもいるじゃないですか!すごいです!」
花城さんは一人で相当に盛り上がっているようで,エーフィとグレイシアを交互に見て落ち着きがない.その様子をエーフィは驚いたのか目を見開いて観察しており,グレイシアは鬱陶しそうに目を瞑っている.
 だが驚いたのは誰よりも私である.朝はエーフィだけだったはずがグレイシアも増えていて,花城さんにはその2匹が見えていて,しかも花城さんはそれをあっさりと現実として受け入れている.諸々理解できない.

 一頻りグレイシアとエーフィと触れ合って花城さんが満足したところで,私たちは卓袱台についた.
「まさかこの世界に本当にポケモンがいるなんて…しかもエーフィだけじゃなくてグレイシアまでいるなんて!本当にびっくりしました」
花城さんはまだ興奮しているようで,茶菓子をつまみながら2匹を眺めている.
「驚いているのは誰よりも私だよ花城さん…朝出る前はエーフィしかいなかったのに,帰って来たら一匹増えているのだから.一体この子はどこから入ってきたのだ?」
「元からこの部屋にいたのではないのですか?」
それは確かに一度考えたが,この狭い4畳半に隠れられる場所など何処にもない.強いて挙げられるとすれば押し入れがあるが,そこはどうでもいいがらくたやら使わなくなった教科書やら桃色の雑誌などが詰め込まれていて,さすがに入り込む余地はない.
「それか外から入ってきたとか…」
それも考えたが,1つしかない窓はちゃんと鍵がかかっていて,戸締まりはちゃんとしてあった.エーフィが招き入れた可能性も考えたが,観察してみたところどうも2匹はあまり仲がよろしくないようで,互いにそっぽを向いている.気に入らない相手をわざわざ部屋に招き入れるとは考えられない.
「そんなことよりも先輩、寒いです」
「あっ,済まないね花城さん」
そういえば部屋を出るとき冷房を付けっぱなしにしていたのを忘れていた.電気代もバカにならないし早く消さねば.そう思いリモコンを手に取り,エアコンのある方向へ向けた.が,
「あれ?」
確かにあったはずのエアコンが跡形もなくなっていた.エアコンがあった部分だけが綺麗に白く残っている.
 呆然とする私の様子に気がついたのか,花城さんも白い部分をじっと眺めている.そして一言,
「とりあえず羽織もの貸して頂けませんか?」


 花城さんはその後また2匹と戯れ,最後に写真を撮って帰っていった.
 彼女が来て分かったことは,エーフィとグレイシアは確かに存在しているということだ.帰る頃には花城さんは普通に2匹に触れていたし,あの冷気も確かに現実のものである.私も寒さに耐えかね上着を引っ張り出す始末だ.
 そしてどこからグレイシアが現れたのか,エアコンは何処へ消えたのか,という疑問が浮かんだ.結局エーフィとグレイシアがどうして私の部屋に現れたのかは分かっていないし,エアコンは確かになくなっている.正直なところ,エアコンが消えたことに関して私は非常に焦っている.あれはアパートの備品である.弁償となった場合私の財政は一気に大赤字に成り果ててしまうだろう.非常に困った.
 そんなことを考えながら便座に座っていると,突然大きな物音がした.金属の当たる音がしたから恐らく薬缶が落ちたのだろう.エーフィかグレイシアが落としたのだろうか,全く世話が焼ける.
 腕の伸ばしてトイレの扉を開け,私は絶句した.


「これは…合成ではないですね…」
「他の写真で花城さんも一緒に写ってるしね〜」
 昼休み,築城と俵屋が小さな画面を凝視している.
「だから言ったじゃないですか!本当にエーフィとグレイシアが居たのです!」
と花城さんが興奮した様子で話す.築城は眉間に皺を寄せながら,まだ信じられないと言った様子である.
「でも俄には信じられません、ポケモンがこの世界に存在するなんて」
「けど居たのです!あのエーフィの肌触りとグレイシアの冷気は本物でしたよ」
「…花城さんがそう言うなら信じるしかないですね」
「で、花城さんが帰ったあとまた一匹増えたんでしょ〜?」
「そうなんですか先輩!?」
「う,うむ…」

 私が扉を開けると,キッチン台の上,コンロがあった場所で,ブースターが申し訳なさそうにこちらを見つめていた.薬缶がひっくり返って,床が水浸しになっている.
 諸々重なってまたしても狼狽しているが,ひとまず床を拭かねば.タオルを手に取って急いで床を拭く.木造アパートで水浸しするといろいろと面倒なのである.
 エーフィ,グレイシアに次いでブースターまで現れるとは.しかもエーフィのときと同じように突然.それだけでない,エアコンだけでなくコンロまで消えてしまった.この調子だと生活に支障が出始める.家電が無くなって不便になる上に,ポケモンが増えれば増えるほどエンゲル係数は高まる訳で.ブイズが増えてくれるのは嬉しいが,その代わりに家電が減っていくのではさすがに…
「待てよ?」
 そこで私の頭にある“仮説”が立った.

「もしかすると,あの子達は家電が変化したのかもしれない」
そう言うと築城はいつものように片頬を持ち上げた.
「家電が動物になるわけがないでしょう?」
「だがそうすると辻褄は合うのだ」
 冷房をつけていたエアコンがグレイシアになり,火をつけていたコンロがブースターになった.外から入って来たのでも元から居たのでもないのであればそれ以外考えられない.家電の働きとタイプも似たものがある.
 そのように話していると俵屋が口を挟んできた.
「じゃあエーフィが出てきたときは何か家電がなくなったの〜?」
「それは…」
それがまだ“仮説”である理由である.エーフィのときは特に何がなくなったでもなく,またエスパーのような家電などある訳がない.
「じゃあやっぱり違うんじゃな〜い?」
「うむ…」
私が黙ってしまったところで,花城さんが話し始めた.
「とにかく、エーフィとグレイシアとブースターが居ることはお二人とも分かったみたいですし、今日先輩の下宿行きましょうよ!私ブースターにも会いたいですし」
「ちょっ,花城さん何言って」
「本当にポケモンが居るって分かったらやっぱり見たいに決まってるじゃないですか。築城さん俵屋さん行きましょうよ!」
だが2人はどうも乗り気でない.
「そうしたいところですが…」
「時期が時期だしね〜…」
「時期?」
そう,7月も下旬に入ろうとしている.すなわち,
「期末試験があるんですよ」
 大学の試験期間は例年7月末から8月頭まで.だが,私たちの所属する学部は試験期間が他の学部よりも長い上に,試験の難易度も高いというなかなかに不遇な扱いを受けている.そのため,事前の勉強が物を言うのだ.
「大学の試験は一夜漬けで十分なんとかなると聞きますが」
「そんなのは他の文系学部とか一般教養だけで,うちの学部は試験厳しいんだよ花城さん.中途半端な点を取ると院進学にも関わってくるしね」
「そうそう〜、先生は去年特に痛い目見たしね〜」
「黙れ俵屋」
「そういう訳ですから、彼の下宿でポケモンと触れ合うのはさすがに難しいですね…彼みたいになりたくなければ、花城さんもちゃんと勉強しておいた方がいいですよ?」
「おい築城」
「そうですか…そうですね、私も先輩みたいにはなりたくないです」
「花城さん!?」


 講義が終わり夕方アパートに戻ると,ブースターが玄関にちょこんと座っていた.私の帰りを待っていたようで,目に涙を浮かべている.
「そんなに僕が恋しかったのか?よしよし」
頭を撫でてやると,ブースターは大きな腹の音を鳴らした.おかしい.大学へ向かうときには3つの皿にそれぞれの分のお昼(と言ってもお菓子やインスタントの食品だが)を取り分けておいたはずだが.
 そう思って部屋を見てみると,寝そべっているグレイシアの前に皿が2つ並んでいる.どうやら昼食を奪われたらしい.グレイシアは私の帰りには気付いていたが,こっちを一瞥したあと鼻で笑うようにしてまた目を瞑った.
「ご飯取られたかーそうかー.もうすぐ夕飯だから待ってろよ」
言っていることが分かったのか,ブースターは顔を輝かせ喜びの声を上げた.人間の言葉は理解できるようである.ここまで喜ばれるとこちらも何となく嬉しい.

 私が買ってきたのはフライドチキンである.私は最近炭水化物しか食べていないが,それはすなわちこの3匹も炭水化物しか食べていないという訳で.肉を食べるのかということを確かめたかったのである.
「ほら,ご飯だぞー」
 皿にチキンを取り分けそれぞれに差し出す.3匹ともチキンを見るのは初めてなようだが,ブースターは空腹からかすぐに食らいついた.グレイシアは匂いを嗅ぎ,エーフィは宙に浮かせて全体を観察し,食べられるのかどうか確認している.だがブースターが食べ続けているのを見て安心したのか,2匹もじき食べ始めた.
 私もひとまず夕食をとることにした.鶏を食べながら3匹を観察していると,それぞれの性格が何となく分かってくる.
 ブースターはチキンにしか目が行っていないようで,口の周りを汚しながら食べることに必死である.昨日薬缶をひっくり返したときや先ほどの様子を見るに,どうも子どもらしさが感じられる.グレイシアに食べ物を奪われて泣きそうになっている辺り,グレイシアの弟分のようだ.
 そのグレイシアはと言えば,ブースターほどでないにしろチキンの虜なようで,チキンを食べ続けている.だが私が見ていることに気付くと途端に食べるのをやめ,急にチキンを食べるのを遅くした.昨日から観察を続けているが,グレイシアは私が見ていることに気付くたび急に態度を変える.お澄ましさんといった感じであろうか.口元に鶏のかけらがついていることを私が身振りで教えてやると,顔を赤らめて前足で払った.そして何故かエーフィと仲が悪い.エーフィが一瞥するとグレイシアは睨み返した.
 エーフィは落ち着いた様子で,チキンをサイコキネシスか何かで上手く捌きながら食べている.基本的にいつも落ち着き余裕があるように見えて,気品すら感じる.私が見ていることには気付いたようだが表情一つ変えない.大学で話したように,エーフィだけは私の仮説と外れた現れ方をしている.エーフィだけは何か違うのだろうか?
 色々と考えを巡らせていると,ブースターが私の方を見て鳴き声を上げた.どうやら量が足りなかったようである.昼食べてないならば仕方ないだろう.そう思ってブースターに私の分の鶏を1つ分けてやった.ブースターは嬉しそうにチキンに齧りつく.
 さて,築城達の言う通り勉強しなければ.鶏の骨を処理してから机にノートを広げる.二回生になってから専門科目が一気に難しくなり,私は正直講義に付いていけてなかった.このままだと単位が危うい.
 さあ始めるぞと意気込んだところでブースターが鳴き声を上げた.何かと思えば,グレイシアがブースターに飛びついてブースターの食べていたチキンを奪おうとしている.
「こらこら,グレイシアはもう食べたじゃないか!」
そう言ってグレイシアをブースターから引き剥がす.グレイシアは私に持ち上げられた途端に大人しくなったが,ブースターはまたしても目に涙を浮かべている.昼もこんな感じだったのだろうか.だとすればなかなか深刻である.どうしたものか.
 だがひとまず今は勉強しなければならない.ブースターを撫でてやってから改めて机に向かう.

 しばらく勉強していると,突然エーフィが傍らに座った.じっと私の顔を見てくる.
「どうした,何か欲しいのかい?」
そう聞いてもエーフィは特に反応がない.どうしたのだろう.
 しかし気にしていても埒が開かない.とりあえず勉強に集中することにした.

 だが,どうも集中できない.見られながら勉強するというのはなかなか気が散る.加えて見てくる相手は何を考えているのか全く分からないと来た.
 結局私は集中が完全に切れ,勉強を放棄してシャワーに入った.


(…で、昨日はそのあとすぐ眠ってしまった、と。じゃあまだ僕が貸したノートは写し終わってないという訳ですね)
(申し訳ない…)
(全く…明日までには絶対返してくださいよ。それにしても、見られているから集中力が切れるというのが僕には理解できませんねえ)
「貴様はあのエーフィの眼を見たことがないからそのようなことが言えるのだ.あの眼で見られていると思うと集中など一気に消え去るぞ」
(声が大きいですよ!)
 教授がこちらを睨んできた.私は軽く頭を下げる.試験も近くなったからか教室には学生が増え,出遅れた私たちはいつもと違い前の方で講義を受ける羽目になった.
(僕はまだ信じられませんがねえ…エーフィがこの世界に存在しているなんて)
(築城貴様,またそのようなことを…)
(まあ落ち着いたらじっくり見させて頂きますよ。ところで、今日は久しぶりに皆で外に食べに行こうと思っているのですが、あなた財布の余裕ありますか?)
(生憎財布の余裕も時間的余裕もないな.一度下宿に戻ってブイズに食事を与えなければならない)
(ああ…ブースターがご飯取られちゃうんでしたっけ?あなたも大変ですねえ)
(そう思うなら自転車貸してくれ.私のポニータが壊れていることは知っているだろう)
(ごめんなさい、僕最近走って大学来てるから無理です)
「このクソ暑い中?頭おかしいんじゃないのか?」
 今度は教授のみならず周囲から視線を向けられた.頭を下げながら隣席の築城を見ると,凄まじい速度で板書を取っている.こいつはこういうときに限って真面目大学生を気取るから質が悪い.


 それから,朝大学へ行き,昼休みにアパートに戻ってブイズに昼食を与え,大学に戻って講義を受け,急いでアパートに帰って3匹に夕食を与え,集中できない環境で勉強という生活が試験期間まで続いた.
 3匹のせいで家計のエンゲル係数は上がり,試験が近づくにつれ私の暮らしはどんどん窮乏していった.勉強に集中するため,3匹が夜寝付くのを待ってから勉強を始めるという夜型の生活リズムに変化し,そのため私は常に睡眠不足でモンスターエナジーが欠かせない身体となってしまった.徐々に弱っていく私を見て築城は始めの方こそ
「3匹にいろいろ吸われてるんじゃないんですか?」
などと花城さん達にシモい冗談を言っていたようだが,窶れゆく私を見ていよいよ築城も冗談を言わなくなり,試験前最後の講義には俵屋と共に私にモンスターエナジーを1パック渡してきた.


「じゃあブイズに会いに行きましょう!」
 地獄のような試験前及び試験期間を乗り越え,教室で突っ伏していた私に花城さんはそう投げかけた.この子は私の状態を見て何とも思わないのだろうか.そう思ったが言い返す言葉もなく,築城と俵屋も
「そういえばそうでしたね。試験の打ち上げも彼の部屋でやりましょうか。今日は僕と俵屋が出しますよ」
「え〜…まあいいけど。久しぶりにみんなでお酒飲みたいし〜」
と乗り気であった.いつもなら現在の財布事情も合わせて断るところだが,今回はさすがに私の状況を見てか,お金を出してくれると言っている.加えてブイズ達に食事を与えてくれるかもしれない.私は顔を上げ,無言で頷いた.

「相変わらず小さいアパートだよね〜。こんな狭くて生活できるの〜?」
「俵屋が大きすぎるだけですよ。まあ僕も4畳半はさすがに厳しいですが…」
「築城さんのマンションは部屋2つあるじゃないですか。比べちゃダメですよ」
 それぞれが好き勝手言いながらアパートの外階段を上っていく.ツッコミを入れる気力も起きない.とにかく早く眠りたかった.
 鍵を開け,畳んである布団に倒れ込む.私の様子を見たからか,いつもなら布団に座っているエーフィも横に退けていた.一気に眠気が襲いかかり,意識が遠のく.

「先輩、大丈夫ですか!?」
「相当疲れてたんでしょう…今はゆっくり休ませてあげましょう。にしても、本当にエーフィ達が…!」
「本当だ!びっくりしたな〜。あれ〜、でも…」
「この子がいるなんて聞いてないですけどね…」




「どうしているの?シャワーズ」

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&aname(comment);(2012/11/19)プロローグ程度ですが,区切りがいいのでひとまずここまで.
(2012/11/23)「一」更新.ポケモンはほとんど出ないですが,俗に言うキャラ紹介パートということで納得頂けると助かります.
(2012/12/02)「二」更新.書いていて気付いたのですが,この小説ってポケモン「の」小説というよりはポケモン「が出る」小説ですね.少しこのwikiの趣旨に合っているのか少し不安です.


まだ完結まで書き上げていないのですが,ゆっくりお付き合い頂けると幸いです.
よろしくお願いします.

- アアアアアアァァァァ(死
自分もポケモンが現実にいたらと思います。
執筆頑張って下さい。
――[[妄想人間]] &new{2012-11-20 (火) 01:12:06};
- なんと・・・!私と同じような妄想癖を持つ方がいらっしゃったとは・・・!
しかし、私の場合は何も無いところに、ポケモンという存在を生み出すようなものですが。
例えば、スーパーではおばちゃんの横にワンリキーがついていたり、
公園では、子供たちと一緒にサンダースが駆け回っていたり。
と、いう具合にです。もちろん、そこには何も存在しないのですがね。
ちなみに、現実の動物たちもしっかりポケモンになってくれてますよ。
さらに、あなたに共感出来ることは、ブイズ好きだと言う事です。
私も行きましたよ。ブイコレ。
今の私は、ポケモン(特にブイズ)無しには生きていけないほどなのです!
でも、いくら妄想で視覚がポケモンを捉えても、実際に触れることや、
鳴き声を聞くことが出来ないのが悲しいです。
あぁ、ブースターをもふもふしたいぃっ!リーフィアに甘えた鳴き声で鳴かれたいぃっ!
コホンッ・・・話が逸れましたね。すいません。
とにかく共感しやすい、いや、共感しかできないこの作品!
私、完成をとても楽しみにしています!
くれぐれも、お体の方に気をつけて、執筆と大学頑張ってください!
――[[いつか此処で名を得る(予定)名無し]] &new{2012-11-20 (火) 01:16:20};
- エーフィが現実に…だと!?羨ましい。読者は皆思ったに違いない。
僕もポケモン大好きですが犬をヨーテリーに見間違える程妄想はしていません。たまにポケモンが現実世界にいたらどうなるかな…ぐらいです。
それにしても何故ポケモン(しかもブイズ)が現実に…?まさかポケモン愛がこれ程になると現れるのか?(それともただの末期なのか…さすがに否定したいですが)
このあと主人公とエーフィはどんな展開になっていくのか?ポケモン(特にブイズ)は続々と現れるのか?楽しみです!

話はそれますが昨日カゲフミさんのコメントログに「@wikiのサイトが潰れてから…」というコメントをしたのは貴方でしょうか?どうも昔小説を書いていた人のコメントだったので…
では、執筆頑張ってください!
――[[ブイズに最近目覚めた者]] &new{2012-11-20 (火) 05:57:58};
- >妄想人間さん
ポケモン好きの夢だと思うのです…私個人の独断と偏見ですが。
ありがとうございます。何とか春までには書きあげられればと思っております。

>いつか此処で名を得る(予定)名無しさん
かなり主人公に近しいですね(笑)
ブイコレすごいですよね、数年ぶりでしたがブイズだらけで私感動してしまいました。
寒いこの時期にはブースターにもふもふして暖を取りたいものです…。
ありがとうございます、まとめて書くことが難しいので完結は先になってしまうかもしれませんが、気長にお待ちいただけると助かります。

>ブイズに最近目覚めた者さん
ポケモン好き共通の夢だと思うのです…。
妄想(想像?)の度合いは人それぞれですからね。この作品ではかなり強烈な妄想癖を持つ人に主人公になってもらいました。
一応展開は考えておりますが、どう盛り上げるかがどうも…(苦笑)
いえ、私ではないです。しかしコメントを見て同じように感じました。久しく見てなかったので、私が昔書いていたころの執筆者の方々が更新を止めている中、今も書き続けていらっしゃることには尊敬に念を感じます。
――[[Vacation Please]] &new{2012-11-20 (火) 21:30:53};
- 激しく同意できることですね!
ポケモンが好きな人でこんなことが起きないかなと思うことはもはや常識と言えるぐらいなことです!
――[[知らない新種]] &new{2012-11-20 (火) 23:18:33};
- グレイシアも来た!
久々にwikiを訪れたら何とも興味深い小説が…楽しみにしております。
―― &new{2012-11-23 (金) 00:13:47};
- エーフィだけでなくグレイシアまで・・・っ!
うぅらやましぃぃぞぉぉぉっっ!!
今すぐ、この主人公の元へとダイブしたい!
このまま行けば、全ブイズ出てくるのでは・・・?
楽しみですねぇ!
―― &new{2012-11-23 (金) 01:05:53};
- グレイシアキターーーーーーーッ!そして彼女もキターーーーーーッ!!
ポケモンだけでなく彼女まで現れるとは本当に羨ましい…。僕はどっちも見えませんorz
―― &new{2012-11-23 (金) 03:39:39};
- >知らない新種さん
同意してくださり感謝です.せめて小説の中では自分の妄想を好きに書くことが出来ればと思っております.

>名無しさん
コメントありがとうございます.のろのろ書いておりますが,何卒よろしくお願いします.

>名無しさん
この小説を書き始めた切っ掛けがブイコレということは…?(笑)
じっくり書いていこうと思っておりますので,長いお付き合いをよろしくお願い致します.

>名無しさん
花城さんでしょうか?彼女ではないですね,あくまでも主人公の女友達という立場です.
私もでございます(笑)せめて現実的な彼女だけでも現れてくれるよう頑張りましょう…
――[[Vacation Please]] &new{2012-11-26 (月) 00:11:07};
- おっと…僕の早とちりでしたね。でもやはりGFなんて(ry

しかしポケモン大好きな友達っていいですよね。今大学生ですがポケモンやってる学生なんてほとんど見かけないです。ツイッターに書かれる程のポケモンの盛り上がり、何よりも羨ましいです。

では、続き頑張ってください!!
――[[↑2と同じ名無し]] &new{2012-11-26 (月) 18:17:27};
- >名無しさん
男と女の間にも友情は存在する…はずです(笑)

そうですね,私の大学にもポケモンサークルはありますが,それ以外でポケモンをやっている学生はほとんど見かけません.こういう風に盛り上がれるポケモン好きの友人がいれば…という願望を込めていたりもします.

ありがとうございます!
――[[Vacation Please]] &new{2012-12-02 (日) 23:01:00};
- この小説をみてから夢でブイズが出てくる夢を見られるようになりました。
感謝感謝ww
―― &new{2012-12-03 (月) 00:14:37};
- ブースターキタァァァァァァッッッッッ!!
シャワーズもキタァァァァァァッッッッッ!!
ぶーちゃんかぁいいよぶーちゃん、もふもふだよぅ
しゃわちゃんもかぁいいよぅ、つるぷにつるぷに
……はっ!いかん!大好きな二匹がでてきた嬉しさでつい取り乱してしまった!
…げふん、いやぁ~来ましたね、ブースターとシャワーズ。
ずっと楽しみにしていた甲斐がありました。あと、残るはイーブイ入れての4匹ですねぇ。
楽しみにしてるので、執筆頑張ってください!応援しています!
――[[チェック]] &new{2012-12-03 (月) 00:40:44};
- 私も炎を出さなくてもいいし、
  冷気を感じさせなくてもいいし、
  冷たい目線をおくらなくてもいいからブイズ………
欲しいよおおおおおおおおおお(狂
妄想ですか…たまにありますね。
ほんの例ですが、アニポケでブイズが出てきている話で急にアンテナの調子が悪くなった所で

       マジ
「おい、ロトム本気やめろ」

とか言ったり…
え、仕事?ポケモンがある曜日は休みいれます(笑)
まぁ録画もするんですけどね(笑)
執筆活動頑張って下さい!!!!!
――[[七転:五起一病一希]] &new{2012-12-03 (月) 02:18:19};
- 四畳半神話大系wwwwwwwwwwww
―― &new{2012-12-03 (月) 11:51:51};
- >名無しさん
お役に立てたならば光栄です(笑)
私はほとんど夢を見ない(覚えていないだけと言われますが)体質なので羨ましい限り….

>チェックさん
上手くブイズを全部登場させられるといいんですけど…鋭意努力致します(苦笑)
応援ありがとうございます!

>七転:五起一病一希さん
私もブイズが居ればいいのにと本当によく思ってしまいます(笑)ブイコレなどでまた熱が上がってしまったのもあって….
大体リアルタイムでは見れないので私も録画しているのですが,消化できずにどんどん溜まっていくという…書きながら流したりもしているんですけど,内容が全然頭に入って来なかったり.
何とかちゃんと見たいんですけどねえ….
ありがとうございます!

>名無しさん
お気付きになられましたか!
主人公が四畳半に住んでいるという設定は『四畳半神話大系』を,登場人物の設定も森見作品を参考にしております.
(主人公を苦学生に仕立て上げるのに”四畳半のアパート暮らし”というのがうってつけだったことや,自分で登場人物のキャラを細かく考えるのが面倒だったこともあるのですけど←)
人間主体の内容になってしまっているのもそこがありまして…あくまで主人公の主観で話が進んでいるのもあるのですけどね.
今後もその”匂い”がする箇所が出てくるかもしれませんが,お付き合い願います(笑)
――[[Vacation Please]] &new{2012-12-15 (土) 14:48:26};
- 幽霊になるな~~~~~~!。
―― &new{2013-07-14 (日) 21:40:58};
- 近所に住んでる犬(チワワ)もうどうしてもイーブイにみえる ツバメに至ってはスバメだし この前釣りしたらコイキング(鯉)釣れたし いきなりニャースにひっかか…r(殴……(省略)
こんなとこと書いていたらきりがありませんが
とにかく執筆頑張ってください
――[[狼]] &new{2013-07-15 (月) 03:38:19};

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