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失われた感情8 の変更点


作者名:[[風見鶏]]
作品名:失われた感情8

前作:[[失われた感情1]]
   [[失われた感情2]]
   [[失われた感情3]]
   [[失われた感情4]]
   [[失われた感情5]]
   [[失われた感情6]]
   [[失われた感情7]]
 ・注意 この作品には&color(red){強い};官能描写があります。
 →特に&color(white){強姦};が苦手な人はバックしてください。
     そして、残酷表現もあります。
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 目の前には顔を伏せたままのフィアがいる。
 僕は、いったいどうなってしまったのだろう?
 体がまったく言うことを聞かない。
 夢のなかにでもいるような、自分の体ではないような感覚。

 どういうことだ、いったい何をした?

 問いただそうとしても言葉が出ない。

 それどころか、意識が遠くなってきた。

「おやすみ、フィフス」

 誰かがそういった。





 誰かが、僕の体を愛撫している。
 感じたことはないけれど、まるで母親に守られているようなやさしさ。

 でも、その手は、少しだけ震えている。

 やがて、僕の体から手が離れ、ぬくもりが離れていく。

 いったんぬくもりを覚えてしまえば、そこに残るのは、寂しさだけだ。


「目が覚めた?」
 おぼろげな意識のなか、聞き覚えのある声が響く。
 
 この声は……、いけない。

 だが、体は思ったような反応はしてくれなかった。
「……」
 目の前の敵に、声を上げようとするが、それもできない。

「まだ頭がさえない感じ? 仕方ないわね、痺れ薬をのんだんだから」
 そうか、痺れ薬を飲まされたのか、だから。
 声の主はレイだった。
 なぜ、ここにいるのか、どうしてジュースの中身の詳細を知っているのか。
 聞きたいことは山ほどある。

「あなたが何を思っているか、大体はわかるわ、教えてあげる」
 表情一つ変えないで、レイは静かに言葉をつむいでいく。
「……あなたもうすうすわかっているんじゃない?」
 その言葉を理解したくはなかった。
「フィアは、私たちの仲間よ」
 瞬間、どこかから息をのむ気配がした。
「正確には、フィアの姉、シアが私たちの正式な仲間だったけどね。
フィフス、あなたも聞いていたはず。私たちが四匹組のチームだってことを。
いずれにしても、警戒するべきだったんじゃない? いまさら、遅いけどね」
 淡々と話すレイの後ろで、フィアの姿があった。
「フィフス、悲しいでしょうね。でも安心して、すぐに楽にしてあげるからね」
 のしかかるような体制でレイは体を密着させてくる。


「もうあなたを生かしておく必要もないから」
「……!」
 その言葉に、凍りつきそうになる。
「大丈夫、苦しくなんてないよ。たぶん、何も考えられないまま死んでいくから」
 その言葉のあと、レイはフィフスの唇を無理やり奪った。
 二匹の舌が絡まりあう音が、洞窟の中に響く。



「手が早いのね」

 しばらくたったあと、また聞き覚えのある声が聞こえた。
 そして、ようやく長い接吻から開放される。
「もう、私たちに残された時間も、短いからね」


 レイの背後にはルゥが目を細めたたずんでいた。
 心なしか若干やつれて見えているのは気のせいではないだろう。
「そう、ね、リオのほうは戻ってきているのかしら? 姿は見てないけど」
 そうつぶやくルゥの瞳が怪しく輝く。
 半ばぐったりしながら見つめていたフィフスは確信していた。

 本当に、殺される。

 死にたくない。
 そう思っているのに、体のほうはまったく反応してはくれなかった。
「リオは、子供たちを船に運んで行ってるところよ。そのうち戻ってくるわ」
 ……子供?
「……言ってなかったわね。私たち、あなたとの子を産んだのよ、少し前にね」
 一瞬理解できなかった。
 頭の中が真っ白になる。
「……まぁ、その子供を見ることもないけどね」
 そういうとレイは再びフィフスを抱き、熱い口づけをする。
「んぅ……!」
 口をこじ開けられ、容赦なく舌を絡ませられる。

「ん……ふ……ぅ……ん……」
 だんだん焦点が合わなくなる。
 やがて唇が離れ、自由になったとたん、僕は力なく倒れこんでしまった。

 僕は、完全に彼女たちの思うままになってしまうのだ。

 そんなのいやだ。

「フィフスのほうも、もう準備ができているみたいね」
 皮肉にも、体のほうはもう完全に調教されてしまった。
 もう、快感に抗うこともできない。
「私ももう我慢できない」
 レイの体が、フィフスにのしかかる。

 そして、いやらしい音とともに、フィフスの肉棒はレイに飲み込まれた。

「あぐっ……!」
「ん……ぅっ!」
 しばらく二匹は硬直する。

 だが、しばらくして、レイが体を激しく揺さぶり始めた。
 動けないフィフスにとって、その行為はただひとつの感覚。
 強烈な快感がフィフスを襲う。

「うああああっ!」
 悲鳴とも嬌声とも言えない声でフィフスはあえぐ。
「んん……く……!」
 同じくレイも、欲情に満ちた表情で快楽をむさぼっていた。

「あ……!」
 限界が訪れる。
「うっ……あああっ!?」
 子種がレイの子宮に注がれる。
 まるで意識が溶け出していくような、そんな感覚に襲われる。
 快感の、虜になってしまう……。

「あ……は……あぁ……」
 知らずのうちに、僕は甘い声をあげていた。

 そんな、快感に浸るわけにはいかないのに。

「……もっとほしいの?」
 思考をさえぎるようにレイが問いかける。
 動くたびに、飲み込まれている肉棒が締め付けられ、なんともいえない快感が再びフィフスを縛り付ける。

「いいよ、おいで」
 再び、唇は奪われた。
 あと何度、僕はレイと舌を絡ませあうのだろうか。

 そのさなか、一瞬だけ唇が離れる。

「一緒に、堕ちよう。何もわからなくなるところまで」
 その言葉は、狂気が宿っている。

 だが、それ以上に深い、レイの悲しみ、絶望、そして見えない何かを求める渇望があった。

 レイが忘れたなにか。

「ん……ぅ」

 言葉を交わせるならば、伝えたい。
 もし、言葉がレイに届くならば。

「――っ!」
 だが、その思考さえ、もう、押しつぶされる。
 快楽の衝撃で、体がのけぞり、唇が離れる。
 目が大きく開かれ、呼吸が苦しくなる。
 フィフスの視界に入ったレイの瞳には、疲れ果てた表情の僕以外、何も写されてはいない。
 むしろ、僕の姿すら、もう正確には捉えていないのかもしれない。
「んんっ――! う……はぁ……」
 だんだんと、レイの吐き出す嬌声も獣じみてくる。
 
 だが、そのさなかでもフィフスは確かに捉えた。

 レイの頬には涙が伝っているのを。

 レイにいたっては、そのことを理解してはいないようだ。

 だがフィフスにはわかった。

 本当は、死にたくないのだ。
 まだ、生きたいのだ。

 誰も、望んで死にたいとは思っていない。

 それをごまかすために、このような行為にいたっているのだ。

「フィフス……、もっと、もっと激しく……!」
 レイ、

 言葉をかけられない。

 頭ではわかっているのに、快楽から逃げられない。

 僕は無力だ。

 目の前にいるポケモン一匹でさえ、どうしようもできず、なるがまま。


 その思いを最後に、僕の心は、レイの物になっていく。
「あ……ダメ……」
 その声も、むなしく感じた。

 気づけば、レイを求め、腰を振っている自分がいる。

「ううぅん……も、もっと……!」
 その声にこたえるように、僕は腰を振り下ろす。
 そのたびに、貫くような快感が走り、僕をさらに快感の虜へとしていく。
「は……あ……ああぁっ!?」
 そして、再び、気の遠くなるような絶頂を迎える。

「あっ!? はああぁんっ!」
 激しく犯され続けたせいかレイの嬌声も、ろれつが回っていない。
 同じく絶頂を迎えたのか、小刻みに痙攣し、いまだに射精するペニスをきつく締め上げる。

 気持ち……い……い。

 それだけしか残らなくなる。

「あ……あ……、も……もっと、もっと……や……」
 え?

 そんな。

 気を確かに持たないと!

 僕は……!

「やっぱり、フィアに裏切られたって言う事実が相当効いているみたいね」
 はっきりしない思考のなか、ルゥの声が響いた。
 洞窟の奥から、器用に尻尾を使い何かの液体を持ってきた。
 量もかなり多い。

「レイ、宴の準備はできたわよ。……もう聞こえてないかもしれないけどね」
 その声が、無感情に聞こえたのは気のせいではないだろう。
「ル……ゥ」
 今僕はどんな表情をしているのだろう?

「僕を……壊してぇ」

 ああ……、僕、もうだめなのかな。
「フィフス……」
 誰かが小さく僕の名前を呼んだ。

「お望みどうり、壊してあげるわ」
 ルゥがコップの中の液体を口に含み、こちらへ歩み寄る。
 そして、口付けとともに、その液体を流し込んだ。

「……! い……いや……! げほっ……!」
 甘い。

 これは、あのときの。

「そっか、シアのときのが、トラウマになってるのね」
 わざとらしく、ルゥはささやく。
「レイ、あなたはしばらく休むといいわ、……あなたじゃフィフスを壊せない」
 その言葉にレイはわずかに反応した。
「レイは、情を抱きすぎているのよ。……フィフスにね」
「情? わたしが?」
 心外というように、レイは顔をしかめる。
 しかし、ルゥは無視してフィフスに馬乗りの形をとる。
 その際、自らも液体を飲んでいた。
「大丈夫、心配要らないわ、私が壊されたとき、レイも壊れることができるから」

 その言葉を境に、ルゥはフィフスに意識を集中させた。

「いやっ! いやあああぁっ!」
 空しくフィフスの叫び声がこだまする。

 また、悪夢がよみがえる。

 こちらを見つめるうつろな瞳。

「その悲鳴も、とても素敵よ」
 そういうルゥの瞳が、妖しく光った。

「ひっ……? あぅ……」
 暴れていたからだの動きが鈍くなる。
「ふふ……、あとは、あなたが私自身をほしくなるまで、私がじっくり犯してあげるね」


 だれか……たすけて……。

 
 思いも、言葉も何もない。
 欲望のままにフィフスは支配されていく。

 やさしく、やさしく体をなでる。

 暗くよどんだ瞳とは対照的に、やさしく、絡みつくように体を密着させていく。
「――」
 ……え?
 意識していなかったせいで言葉は聞き取れなかった。

 その言葉を最後に、容赦ない責めが始まった。

「っ! うぁ……!」
 フィフスに体重をかけ、両足を使いフィフスを抱きしめる。
 そして、腰はゆっくりとフィフスの肉棒を飲み込んでいく。
「ふ……ぅ……!」
 快楽が床に広がる水のように頭全体に広がっていく。
 ただ無理やり挿れられただけなのに……。
 何も考えられなく……。

 目の前がぼやけてくる。

 かすかに勝ち誇ったようなルゥの表情が見えた。

 いま、どんな表情しているんだろうな、僕。

 ひどく哀れに思える。

 できないことを掲げて、自分自身の正義に酔っている。
 偽善ぶった結末がこれだ。
 何も救うことなどできないし、自分自身も救えない。

「ひ……あっ……が……」
 うめき声のような声をあげながら、体を痙攣させ、フィフスは果ててしまった。
「――! うっあ……は……」
 体内で注ぎ込まれる子種を、恍惚とした表情で受け止める。
 その表情は、まだまだ飢えていた。
 腰を乱暴に動かし、フィフスの快楽をえぐる。
「――あぁっ」
 かすれた嬌声をあげ、その快楽を受け入れる。
「う……ふ……」
 ルゥ自身も限界が近いのか、腰の動きがぎこちなくなり、口をだらしなくあけながら喘ぐ。

「あ……あああぁっ!」
 やがて、見た目はとかけ離れた嬌声を上げながらルゥは絶頂を迎える。
「――っ!」
 肉棒を締め付ける力が不規則にかかり、無理やりフィフスのほうも絶頂へ追いやられる。
 連続して射精を強要させられる疲労はフィフスのすべてを確実に壊していた。

「……」

 口をだらしなくあけたまま、ぐったりとして動かなくなる。
 だが、それは許されることはない。
 まだ息も整わないまま、だらしなくあけた口の中に舌を絡ませる。

「んぁ……ふ……」
 もう抵抗することもなく、フィフスはそれを受け入れる。
 そこに意志は、もう存在していなかった。

「……続けましょう、あなたが獣になって私をぼろぼろにするまで……」

 立場が逆になり、壊されることを望む。
 その姿に、言葉をかけるものはいなかった。






 もう……、いいや……。





 ずっとずっと耐えてきた精神も、限界だった。

 きっとレイ達も、壊れてしまいたかったのかもしれない。

 こうやってしびれていく思考のなか、恐怖も、呵責も感じないまま、死んでいけたらどんなに楽だろう。

 結論だけ見れば、それだけで、もう、いいのかもしれない。



 あ……、また……くる……。


 あたま……しびれ……て……。

 気持ち……い。





 消えていく……。


 必死に積み上げたものが。


 なんのために。


 それは、


 ――。










 愛液と精液にまみれた寝床で先に目を覚ましたのは、フィフスだった。

 いや、正確にはフィフスだったポケモン、だった。

 暗がりに光る赤い瞳には、もはや何も映し出されてはいなかった。

 そう、まさに、廃ポケの瞳だった。



 きょろきょろと周りを見渡す。

 周りにいるのは、同じくひどい様子で果てているルゥのみだった。


「ふふ……」

 もう、説明は要らなかった。

 幾たびの性行為でつかれきっていることすら、もうわかってはいないのだろう。
 だらしなく垂れたペニスをルゥの秘所にすりつけ、無理やり勃起させる。

「……んぅ……」

 そして、容赦なく、また肉棒をつきたてた。

「――っ!?」

 深く挿入されたペニスは、ルゥの子宮口を押し上げるほどだった。
 声かどうかわからない嬌声をあげ、たたき起こされる。

「……!」
 生気の宿っていない瞳でルゥを見下ろす。
 ただ、快楽をむさぼる腰の動きは緩めなかった。
 ルゥは息をすることだけで精一杯のようで、口をだらしなくあけたまま、必死に耐えている。

 それを見ると、かすかにフィフスの口元がつりあがった。

「――くあぁっ!?」

 明らかに苦悶の声だ。
「かっ、あっ……! い、いた……いよぉ……!」
 行為になれているルゥでさえ、苦痛を伴う攻め。
 全体重をかけ、ルゥの秘所に無理やり挿入する。
 フィフス自身はそこまで重くないが、ルゥの子宮口をこじ開けるまでさほど時間はかからなかった。

「うあっ!? あ……が……!」
 とろんとした瞳を見開き、初めて味わう感覚に、ルゥ自身の思考は、麻痺していった。
「……どう? 気持ちよくなってきた? この程度で死んだりしないでね」
 その言葉は、フィフスが発したとは思えないぐらい残酷な言葉だった。
 性道具が発した快楽のみを求める台詞。
 ポケモンが発する言葉ではなかった。
 行為は緩まることなく、続けられる。
 フィフスが腰を強く振り下ろすたびに、卑猥な音が上がる。
 そして、そのたびに、ルゥは体をのけぞらせ、痛みに悲鳴を上げ、壊される。
 その目から、大粒の涙がこぼれた。

 悲しんでいるのだろうか?

 その気持ちを読み取ってくれるポケモンはいなかった。

 目の前にいるのは、ポケモンだったもの。

 堕落した、無垢な少年。

「ルゥの子宮、僕のに吸い付いてくるのわかるよ……! とても気持ちいい……!」
 だらしない顔つきで必死に腰を振り続ける。
 ルゥに答える余裕があるはずなかった。
「子宮に直接注ぎ込むよ……! これでもう一回確実に孕むね……! い……く……!」
 次の瞬間、限界までつきたてる形で、フィフスは射精した。
「――あっ!? うああああぁっ――!?」
 体を大きく痙攣させながら、流し込まれる精液をルゥは無抵抗に受けるしかなかった。

「……ぅ」
「感じる? 僕の子種……。 まだまだ、注ぎ込んであげるからね……」
「……!」
 その言葉に、ルゥの表情は初めて恐怖の感情を示した。
「大丈夫、たぶんもう痛くなんてないからさ、……そのうち元みたいにだらしない声をあげられるよ。……自然にさ!」
「うああぁっ!」
 言葉を言い終わると同時に、先ほどと同様、体重をかけ思い切りつく。
 一度こじ開けた子宮口は、すんなりと肉棒を飲み込んだ。
「う……、ルゥ……、今ならわかるよ。こんなにセックスしたがってた理由がさ……」
 よどんだ瞳のまま、快楽を全身に感じながらつぶやく。

「こんなに気持ちいいんだもの」
 目が細まり、恍惚の表情を表す。
「もうこれしかいらないや……! 全部気持ちよくなっちゃえば、何にもいらない。あは……最高……!」
 最後のほうの言葉は、ろれつが回らず、言葉がつながっていなかった。

 ルゥは、犯される快感に耐えながら、かろうじでフィフスの言葉を聞き取ったようだ。

 だが、答えることはなかった。


「だめだよ……、やっぱり、こんなの間違ってる」
 ルゥの心情をかわりに表す言葉が背後から聞こえた。

「……?」

 突如、四肢が蔓で縛られる。
「わたし、死にたくない。レイ、ルゥ、まだ、間に合うよ。逃げよう……?」
 リオだった。

 普通ならこの最悪な状況に絶望するところだが、今のフィフスは違った。

「……っ! な、何……?」
 思わずリオもひるんでしまうような形相でリオをにらむ。
 快楽に浸っていたところを無理やり中断させられたのだ。当然の反応なのかもしれない。

「リオ、どうしていまさらそんなことを言うの? もう私たちには――」
「そんなことどうでもいいじゃない! そんなのは、決めることじゃない!」
 言葉をさえぎるように叫ぶ。
「気づいたの……眠っている子供たちを見て……。あの子たちには母親が必要なんだって」
 途切れ途切れの言葉は、だんだん震えてくる。
「母親じゃない私にはこんなこといえないのはわかってる。……でも! あの子達を育てられるのは、レイとルゥしかいないの!」
 その言葉には、今までであったリオとは明らかに違う言葉に響きがあった。

 しばらくの沈黙が支配する。
 フィフスはというと、リオの言葉を無視し、必死に蔓から逃れようとしていた。
 
「……そんなことはないわ」
 ルゥが口を開く。
「ルゥ!」
「うるさい!」
「――!」
 普段のルゥからは想像できない言葉だった。
「どうしていまさらそんなことをいうの? せっかく……せっかく覚悟を決めていたのに!
どうしてそれをくじくようなことをいうの?」
 怒りなのか、それとも悲しみなのかわからない。
 だが、あきらかにルゥの動揺が感じ取れた。


「生きて、ほしいからよ……」


 その瞬間、ルゥの表情が消えた。
「私には、正直失うものなんてない。レイたちを違って、まだそんなに生きてないし、子供も作っていない」
 自分自身に当てるリオの言葉は、淡々としたものだった。
「でも、レイたちは違う。たとえあなたたちが失うものがないと思っていても。生きなければいけない」
 だれも言葉を返さない。

「一緒に生きて、子供たちと幸せになってほしい、いや、ならなければならないのよ……」

 誰に当てることのない笑みがそこにはあった。
 そして、その笑みの中には、またひとつの感情が隠されていた。

 リオ自身では、手に入れることのできない幸せ。

 リオ自身も、それをもうわかってしまってたのだろう。

 混じりけのない笑みからは、しずくがひとつ、またひとつと零れ落ちていた。


「どうして……?」
 ようやくルゥが言葉を発する。
「どうしていまさらそんなことをいうのよ……」
 今までのような覇気は微塵も感じられなかった。
「もっと、早く気づくべきだったのかもしれない。そうすれば、犠牲も少しは減らせたのかもしれない。
でも、もういいの、わたしは、レイたちが生きてくれれば、もう何も要らない」
 笑顔が消え、リオはフィフスを見つめる。
 フィフスは、まだもがいていた。
 しかし、相当消耗しているようでもうすっかり息が上がっていた。

「……ごめんね」

 一言だけ小さくつぶやく。
 その言葉も、届いてはいない。



「はなせよ! ちくしょう!」
 苛立ちからか、声を荒げるフィフス。
「できないよ、そんなこと、でき――」

 ことばは、さいごまで紡がれない。

「く……ぁ」

 突如、リオは、ひざをつき、うめく。
 背後にはレイがたたずんでいた。
「何……で?」

 レイがリオの頭を思い切り殴ったのだ。

「決めたでしょ? もう、選択肢なんてないのよ。いまさら何を言っても、手遅れ」
 無表情だった。
 何も感じていないのか、あるいは、悟られたくないのか。

「ルゥ、あなたは私が情を持っているといったけど、その言葉、そのまま返すわ。
あなたこそ、この世界に、まだ情を抱いている」
 険しい目つきでレイは二匹を見つめた。
「もうこの世界に、私たちの居場所はないのよ……」
 そういうと、レイは洞窟の奥へと歩いていった。

「そんな……、わたしは、ただ……」

 相当強く殴られたのか、リオは半ばぐったりしていた。

「ただ、なにかな?」
「……っ! い、いやっ……」
 フィフスだ。
 先ほどの出来事で、四肢の拘束が解けたのだ。
 ぞっとするような作り笑いを浮かべてリオの目の前にたたずむ。

「さっきの話からして、リオって意外と処女だったんだね。驚いたよ」
「んんっ……!?」
 乱暴にリオを押し倒し、唇を奪う。

「ま、やさしくなんかしないけどね。思い切り処女膜を突き破ってあげるよ。
大丈夫、すぐに快楽漬けになると思うから……ね」
 すでにフィフスの思考はリオをズタズタになるまで犯すことでいっぱいのようだ。
 見る見るうちにリオの血の気が引いていく。
「まって! ……犯るなら……私をまず壊して!」
 その声にフィフスは振り返る。

「あはははっ! 私をまず壊してだって! この淫乱!」
 ゆがんだ笑みを浮かべ、罵声を浴びせる。
 その姿はまさに「悪」ポケモンだった。
「ルゥ……」
「ふふふっ、面白い、淫乱なメスポケモン3匹相手に僕はいつまで生きていられるか試すのも面白いな。
ルゥ、お望みどおり天国に連れて行ってあげるよ! 二匹で快楽漬けになろう……!」
「リオ……早く逃げて……! あなただけでも……」
 息を荒げた獣が、再びルゥを襲う……。
「あぁ……ルゥ……」

「にげてっ! うあぁっ!」
 もうはじめから容赦はなかった。
 もともとさっきまでに行為でルゥは足腰が立たなくなるまで犯されていたのだ。
 抵抗も、何もできない。
 普通のポケモンの交尾でも、こんな激しい交尾があるだろうか?

 否、今のこの現状は、快楽漬けにされたポケモンの末路だ。

「あっうっ……ぁ……」
 ルゥは、必死に呼吸をする。
 腰が鋭く振りおろされるたびに、体全体に痛みと快楽が貫く。

「どう? だんだん痛いのがなくなってきたんじゃないかな? これからもっともっと気持ちよくなるよ?」
 意地悪な笑みを浮かべる。
 しかしルゥはまだ精神を保っていた。
「リ……オ……はっ……や……く」
「……気に入らないなぁ。いっそのこと手早くイかせてあげるよ。あたま真っ白にしてあげる!」
 そういうとフィフスはルゥにのしかかり、後ろ足でルゥのクリトリスをまさぐり、口で乳房を吸い上げる。
「うあ……あぁ……いっ……やあぁ!」
 その声は厭らしいが、拒否がにじみ出ている響きだった。
「ん……ぅ、すごく厭らしいじゃないか、興奮するよ……!」
 心なしか、フィフスの体の動きが激しくなり、わっかの模様がくっきりと写る。

「だ……め……あ……あああぁっ!」
 程なくしてルゥは絶頂に支配されてしまった。
 いうことの聞かないからだが、ビクビクと痙攣し、さらに力を奪っていく。
「ふふふ……あっけないね。でもまだ僕がイっていないからもうしばらくルゥの子宮内、いじめるね」
 そういうと再び馬乗りになり、フィフスのペースで乱暴に腰を降り始める。
「ふあっ! あ……! らめっ! や、ああぁっ!」
 しびれる思考の中、さらに犯される。
 いったいどれほどの刺激が今の彼女を襲っているのだろうか?
「痛みがないからさっきよりも気持ちいいよね? もしかしたら一緒にイけるかも……!」
 そうつぶやくとさらに動きをかそくさせる。
「ああああっ!」
 息も困難になり始めていた。
 しかし、残酷なことにそのほうが、絶頂を加速させるのだ。

「……! イ……くっ!」
「――っ!」
 次の瞬間、二匹とも快楽の波に飲まれる。
「うぁ……すごい締め付け……! 気持ちい……!」
 まぶたを強く閉じ、快楽に浸るフィフス。
 何度目の射精かもわからないのに、その量はルゥの子宮内をしっかりと満たしていた。
 一方のルゥはわずかの時間で絶頂を二度も味わされたせいですっかりやられてしまっていた。
 口をだらしなくあけ、ほとんど虫の息だ。
「ふ……ふ、人形になっちゃったかな?」
「……」
 反応はする、しかし答える気力がもうないようだ。
「まだ壊れてないか。……どうする? このまま僕はリオを犯してもいいんだよ?」
 いくら耐久の高いブラッキーといえど、これだけ性行為をして疲れていないわけがない。
 フィフスにはもう疲れがわかっていなかった。
「……!」
「……健気だね。そこまでしてリオは守りたい存在かい?」
 ルゥはあれだけ犯されながらもまだ、前足を伸ばしてきた。
「ま、それも無駄かもしれないけどね」

 呆然とたたずんでいるリオの背後に、再びレイが現れた。

「っ!?」
「リオ、恨むなら恨みなさい、これが、私の答え」
「んんぅ!」
 レイは無理やりリオに液体を飲ませる。あれは――。

「う……あ……」

 フィフスが飲まされたのと同じ痺れ薬だ。
「生きたいなら、どうしてあの時一緒に子供たちと逃げなかったの?」
 あの時と同じ表情。
 ナイトを殺したときと同じ。
「逃がさなかったせいで、子供たちも死ぬ。……はじめからすべて運命だったのかもね」
 憂うような表情で空を仰ぐ。

「もうすぐこの森も赤く染まって終わる。そのときまで、私たちは壊れることができるかな」
 まるで他人事のようだ。
「まぁいいや、どちらにしろ、私たちはもう死ぬことが決められているのだから」
「――!」
 リオを必死に反抗の目を向けている。
「……リオも、本当のことは知らないから、抗うのでしょうね」
「だから……こそ、リオには生きてほしい……生か、せて、あげて……」
 ルゥがつぶやく。
 レイの方向を向く気力も、もうないようだ。
「……どうして今言うのよ……」
 たしかに、この状況ではもう手遅れだった。
「それに、この森のポケモンは、全員消すって決めたでしょう? それは私たちも例外じゃない。
この森自体が、存在しなかったことにしないといけないの。それはルゥもわかっているはず」
 ……?
 なにかがひっかかる。
「それが、ナイトの願い、だから……」

 なんだ。

 そういうことか。



 これでつながった。


 だからレイ達は森のポケモンを皆殺しにしていたのか。

 だから、レイはあのとき、
「あなたには、すべて計算内の出来事なのでしょうね。はじめから……」
 といったんだ。

 レイ達は、もう、ナイトの手紙を読んでいたんだ。

 だから、ナイトの鍵の紐に、いくつも結び目があったんだ。

 だから、金庫の埃だけがはらわれていたんだ。

 だから、あの封筒の封が、空いていたんだ。

「ふ……、ふふふっ」
 なんだそれ、そんな結末なんだ。

 結局のところ、僕はただの惨めな偽善者なだけか。
 ま、それでもいいや。

 もう、かんけいないよね?





「フィフス、あなただけが特別だと思っていた?
 あなたは、ずっと、生かされてたんだよ。私たちに」

 そうだろうね。
 認めたくないけど、そうなんだろうね。

「あなたが、どこに住んでいて、あなたが、何をしていたか、すべてもうわかっている」
 レイの口調は、穏やかだ。
 ここまできて、もう感覚すらも壊れてしまったのだろうか?
 恐怖も、何も感じない。
「それが、ルゥやリオをおかしくしてしまったのかもしれないな」
 そして、傍らで倒れているリオを見下ろした。
 フィアが作った痺れ薬と違ってリオは意識を失うことはなく、反応を示した。
 くさポケモンだから耐性があるのか、それとも配合の比率を間違えたのか、
 今となってはそんなのどうでもいいか。

「もう忘れよう?」

 そういって、レイはクラボのみと、ナナシのみをくわえた。
「この組み合わせって知ってる? ……毒物に詳しいフィアならわかるよね?」
 そういって背後をみつめる。
 ……なんだ、まだいたのか。
「……どうしてそんなの知ってるの? そんなことをしたら……」
 声音が震えている。よほど恐ろしい毒なのだろうか?
「どうせ死ぬんだからさ、最後ぐらいは楽しみたいじゃない。たとえ気がくるってしまっても、それは本望」
 躊躇なく、残った媚薬に放り込む。
「ある配合で組み合わせると、この二つは増強効果を出すの、これはまだよわい組み合わせだけどね」
「え……? まさか、全部……?」
 小さくフィアがつぶやいた。その顔には、確かな焦りがにじみ出ていた。
「知ってるわよ、この効果を確かめたら、一番強力なノワキとベリブを作るの」
「だめ! それを使ったら……!」
 いうより早く、フィアは物置のほうへと去ろうとする。

「……うぁっ!」
 フィアが力なく地面へ押さえ込まれる。
「フィアも物好きだよね。どうして逃げないのさ? じゃまなんかするからこんなことになるんだよ?」
 フィアを押し倒したのは、フィフスだった。
「ど、どうして……?」
「気づいたんだ、僕は、僕自身も救えなかったどうしようもない奴だったんだ。
 君たちを生意気にも救おうと考えた。でも、しょせんは僕も一匹のポケモンでしかなかった」
 フィフスの瞳は、何も照らし出されていない。
「そんな僕は、ここで狂い死にするのがお似合いなのさ」
「そんなことない!」
「どこが違うのさっ!」
「ぐ……ぅっ!」
 叫んだフィアを乱暴にフィフスは蹴飛ばした。
 同じぐらいの体重があるのにもかかわらず、フィアは3メートルは弾き飛ばされた。
「もう慰めなんて、要らないんだよ。いやというほど知った。いかに僕自身が他人を救いたいと願っても、
 結局のところ、最終的には僕自身の利益のためにしか動いていない。
 身を削って、他人を助けることなんて、できないんだ」
 感情のない瞳でフィアをみつめる。

「何で……? どうして? お願い……、もとのフィフスに戻ってよ……」
 ダメージが残っているのか、苦しげな口調で話す。
「僕は別に壊れてなんかいないよ、これが僕、僕の本当の姿さ」
 その表情は歪んだ微笑だった。
 フィフスじしんもそれをわかっているのだろうが、直そうとはしなかった。
「いやよ……、こんなの、フィフスじゃない……」
 目を伏せながらつぶやく。
「僕は僕だよ」
 冷たく、はき捨てるように言葉を投げた。
「……違う、もう、あのときのフィフスは……」
 その先は聞き取れなかった。

 でも、関係ない。
 いまさら聞いたところで、もう、道などない。
 救われることも、ましてや、もとに戻れることも、ない。

 でも、なぜだろう。

 どうしてこうも、胸が痛むのだろう。

 どうして、振り返りたくなってしまうんだろう。


「やっぱり、フィフスが本当にすきなのは、フィアなんだね」
「――っ!」
 いつの間にかレイがフィフスの前に立っている。
「……教えてあげる、タイムリミットは、明日の夜明けだよ」
 レイの目はフィフスではなく、フィアに向いていた。
「フィフス、これだけは伝えておくわ、少なくとも、わたしはこの結末を不幸とは思わない。
 もちろん、未練がないって言ったらうそになる。でも少なくともわたしは精一杯ここまで生きてきた。
 この道も、わたしが選んだ道、後悔はしてないわ」
「……なにいってるんだい?」
 正直、レイの意図がわからなかった。
 なぜいまさら僕にこのことを伝えるのか。
「ううん、やっぱり、何も考えなくていいわ、さぁ、私を壊して……」
 そういうと、レイ自ら仰向けになり、後ろ足を開く。
 行為を見て興奮していたのか、秘所のあたりがすでにいやらしく湿っていた。

「ふ、ふふ……いい度胸だね、レイ、今の僕は、もう躊躇なんてしないよ?」
 メスの誘惑にいまのフィフスが耐えれるわけがなかった。
 湿った秘所に顔をうずめ、割れ目のラインをやさしくなぞる。
「ふ……あ」
 甘い声が上がる。
「はじめにもうイかせてあげるよ、……そのあとに、レイの子宮は僕の子種でいっぱいにしてあげるね」
 その言葉を境に、声はさらにいやらしさを増す。
「あっ……あぅ……は……」
 小さく痙攣しながらも、その快楽を受け入れる。
 その刺激が走るたびに、開いた後ろ足を閉じてしまいそうになるのを必死に抑えてる姿が、またさらに興奮を誘う。
「ふふ……」
「あ……あ……」
 焦点が定まらなくなる。
「とどめだよ……!」
 舌をレイの膣内に挿入し、小刻みに動かす。
「うあっ!? あぅ……ああああっ!」
「うぐ……」
 絶頂の拍子に後ろ足が閉じられ、顔が押さえつけられる。
 無理やり絶頂の愛液を味わされる。
「あ……はぁ……はぁ……」
 だらしなく余韻に浸る。
 それを確認すると、フィフスは小さく笑みを浮かべながら閉じられた股を再びこじ開ける。
 その笑みは紛れもなく破壊者の顔で、生物を見るときの顔ではない。
「……ふぁ?」
 揺れ動く快感の波に浮かんだままのレイを覗き込む。
 紅潮させたまま、とろんとした表情は、現実をもうみていなかった。

「……」
「――あ、あああぅっ!」
 手馴れたしぐさで彼女の秘所をえぐる。
 うつろな表情がたたき起こされ、目を見開いて硬直した。
「気持ちいい?」
 そういいながら、答えを聞く前にフィフスの腰はリズムを刻み始めていた。
「ぁ……! ……っ!」
 あえぎ声も出てこない。
「いい反応だね……。レイ、僕も、天国に連れてって……!」
 そういってさらにビートを早める。
「……! ぅ……!」
 突くたびに嬌声とも、悲鳴とも取れない声をあげ、表情は完全に昇天してしまっている。
「うぁ……だめ……、もぅ……搾り取られる」
 締め付けも、今まで感じたこともないほどきつい。
 何度も射精したはずなのにかんたんにフィフスは絶頂を迎えてしまう。
「ぅ……あ……!」
 視界が暗くなり、思考が飛ぶ。
 快感の中で、自分の限界が近いことを本能的に感じ取る。

 意外と早いもんだなぁ。

 他人事のようにそう思う。

 まだ一匹もこわしてないのに。
 
 四肢の力が抜け、つながったままレイの上に倒れこむ。
「う……」
 小さくそううめいただけでそれ以上の反応はしない。
「ねぇ、誘っておいてもうばてちゃったの?」
 なかば苛立ちが混じった声でささやく。
 反応はない。
「……そっか、なら、もうレイは僕のものだね」
 震える足でたち上がる。
 つながったものを引き抜く。
 だらりとペニスが垂れ、レイの秘所から精液があふれ出す。
「レイ、僕の証だよ……感じる?」
 とろりとした液体が、広がっていく。
 そして、フィフスはリオの目の前に立つ。

「リオ、君の番だ。心も、体も、すべて捨てよう?」
「いや……いや……!」
 必死に逃げようとする。
 しかし、痺れ薬の効果はしっかりとあるようで、立ち上がることはできてもすぐに倒れてしまう。
「あぁ……、そうやって抵抗する姿も、すごく興奮するなぁ」
 これが内に秘められていたフィフスの残酷さなのだろう。
「リオ、君に、僕の証を刻み込んであげるね」
 体ごとリオにのしかかり、強引に唇を奪う。
「んんっ! んんぅっ!」
 舌を侵入させ、リオの口内をまさぐる。
「ん~……ん……」
 だんだん抵抗が弱くなる。
 やがて、体を小さく震わせるだけになってしまった。
 フィフスは唇を離し、舌なめずりをする。
「ふふ……、ようやく僕とやってくれる気になったかな?」
 勝ち誇ったような笑みをうかべながらリオを犯しやすい体制に変える。
「い……やぁ……」
 涙目でフィフスに訴える。
「ほほを赤らめて、そしてここをこんなにもぬらしてたら説得力ないよ?」
「ぅ……」
 言葉をなくす。
「さ、はじめは痛いけど、我慢してね」
 リオの純潔を奪うため、彼女の秘所に鋭く突き立つペニスをあてがう。
 そして、そのまま一気におくまで挿入した。
「うああっ――かっ……ぁ!」
 苦しそうな悲鳴が上がる。
「大丈夫? 一気に処女膜を突き破ったから痛みはもうこれ以上ないよ。よかったねぇ」
 無感情な声でささやく。
「いた……いたぃ、たす……け……て」
 とてつもない激痛なのだろう、結合部からは処女特有の血が流れ、リオは泣きじゃくりながら痛みを訴える。
「リオ、その痛みはね、今まで君が殺してきたポケモンたちの痛みと考えてみなよ」
 その言葉を言った瞬間、リオの嗚咽が止まる。
「ふふ……、そう考えればさ、楽なもんだろ? 動くからね……」
 言葉で恐喝し、締め付けられるペニスを強引に動かす。
「ひっ……あっ……」
 まだまだ痛みが引かない膣内を強引に犯される。
 目を硬く閉じ、リオは必死に我慢する。
「……リオ、痛いんだろ?」
 そんななか、フィフスはゆっくり動かしながら声をかける。
「僕に抱きつきなよ、そうすれば、少しは楽なんじゃないかい?」
 そういって、フィフスはリオに体を寄せる。
 リオは躊躇せず、フィフスを力の限り抱きしめてきた。
「……嘘みたいだな、君のこんな姿を見ると」
 独り言を言う。
「さ、リオ、もっと動くよ、歯を、食いしばって」
 それを、認めたくないから、彼女を壊す。
「ふ……ぐ……ぅっ!」
 さっきよりも深く、リオの膣内をえぐる。
 歯の食いしばる音が体越しに伝わる。
「血も、涙もないと思っていた」
 あざける口元が引きつる。
「けど、やっぱり一匹のポケモンなんだね」
 表情は、もう作れない。
 いつの間にか、腰の動きは止まり、フィフスはリオの胸に顔を押し付け、
 彼女の鼓動を感じていた。
 彼女の蕾の香りが鼻を突く。
 しっかりとした鼓動が、フィフスの耳を突く。
「フィフ……ス?」
 不意に痛みがなくなったのを感じたのか、リオが声をかける。
「……僕は、おかしいみたいだなぁ」
 力なくその言葉をつぶやいた。
 その表情は、なにもあらわれていなかった。
「覚悟も何もかも決めて、僕がただしいと思って生きてきたつもりなのに……」
 何をしているんだろうな、僕は。
「どうして、こうも心が動くんだろうなぁ」
 この瞬間も、本当はリオじゃなくてもいいんだろう。
「まるで、僕自身が空っぽみたいじゃないか……」
 その言葉を口にしてはじめて気づいた。

 まさに、そのとおりだ。

 僕の、今までの行動は、まさにそうじゃないか。

 ただ、誰かの言葉に従って、動いてきただけだ。
 誰かの影響を受けた、自己理念に酔って動いてきただけなのだ。

 何かひとつでも、僕は、考えて、それを貫いてきただろうか?

 答えは考えるまでもない。

 今までの行動そのものが、答えだ。
 今のこの瞬間こそが、答えだ。

「……なんだぁ、そういうことか」

 僕は、もう、あのときから壊れてたんだ。

 この森に来てから、もう。

 思えばかんたんなことだった。
 そうだよね?
 ご主人様に捨てられて、あんな反応しかできないなんて、おかしいや。

 犯されて壊れたんじゃない。

 ずっとずっと勘違いしていた。
 だから、ずっともとに戻れると思っていたんだ。

 でも、無理だね。

 ここに来た時点で、僕はもう正気じゃないんなら。
 直しようなんて、ないよ。

 僕は、もう僕には戻れなくて、僕は、もういない。

「……リオ、ごめんね」
 人の大切なものを、いくつ壊してきただろう。
 振り返りたくもない。
 でも、体だけは正直だった。
 つきたてている肉棒は、しっかりとリオにくわえ込まれたままだ。
「……謝るぐらいなら、黙って続けて」
 その言葉に思わずはっとする。
「許す資格なんて、私にはないし、あなたを許す気もない。でも……」
 震える前足で、僕の顔をリオに向ける。
「あなたのその優しさは、本物だと思う。たとえあなたが空っぽだとしても」
 涙でぬれた顔が、作り笑いでくしゃくしゃになる。
「あなたがすべて捨てたなかで残ったものなんだ。きっと、本物だよ」
 そういった後、今度はリオのほうから舌を絡めてきた。
 ちょっとしょっぱくて、優しい味だった。
 柔らかな舌は、優しく僕の舌を包むように絡む。
 今まで感じたことのない、心のそこが、うずくようなキスだった。
「フィフス、もう、動いていいよ……」
 そういいながらも、リオは自分から動き始めていた。
 経験が少ない、ぎこちない腰の動き。
 まだ少しだけ苦しそうな表情を浮かべるが、先ほどのような苦しみの悲鳴は上げなかった。
「ふ……ぅ……! んんぅ……!」
 何かから逃げるようだった。
 彼女は、何を背負っているんだろう、何を思ってるんだろう。
 だが、深く考えることはできない。
 快楽に逃げる彼女に、僕も連れ去られる。
「く……ぅ……!」
「う……ん……うぅっ!」
 ほぼ同時に、現実から隔離される。
 体の震えに感応するかのようにリオの膣内はフィフスのペニスをきつく締め上げ、
 残る子種をすべて吸い上げようとする。
「ふ……ぁ、は……」
 呼吸が辛くなる。
 目の前が暗くなる。
「フィ……フ……ス」
 まるで恋人を抱擁するときのように、やさしく足を回す。
 そしてまだ呼吸の整わないフィフスの口内を犯す。
「ふ……ん……ぅ」
 その表情は、一時期の夢に酔う子供。
 荒々しい大人の欲望ではない、無垢な子供の欲望。
「……ずっと、このままでいたいよ」
 肌のぬくもりを感じ、お互いの鼓動を感じ、生命を感じる。
 そうすることで、この現実のなか、まだ、生きているという実感を得る。
 それは、フィフスも、リオも、例外もなくレイも、ルゥも同じだ。
 みんな、生きたいのは、当たり前のはずだ。
「……わがままだよね」
 小さくフィフスに笑みを向けた後、もう一度、唇だけを合わせるキスをした。
 それが、最後だとでも言うような、短いキス。


「……私ね、子供ができない体なんだ」
 短いキスの後、唐突にリオは切り出した。
「変だよね、命を宿すことも、ましてや、宿らせることもできないのに」
 自嘲気味に肩を震わせ、無理して笑う。
「死ぬのがいやだからゆえに、未来あるポケモンを殺して、生きてたんだよ?」
 そうか、やっぱりそうなんだ。
「そうだよ、私だって一匹のポケモンだよ。さっき言った言葉は、まさに正解だよ」
 堰が切れたようにリオは語りだした。
「レイだって、ルゥだって、みんな一匹のポケモンだよ。
誰も好き好んで殺したくなんてない。だけど、私たちにはその道しかなかった!
だから、感情を押し殺して、同じポケモンを殺すしかなかった!
身勝手なことはわかってる。だけどきれいごとじゃあ、生きていけないんだ!
それを言い聞かせて、ずっと我慢して、ここまで生きてきた……」
 リオは僕を抱いたまま、放そうとしない。
 嗚咽が伝わってくる。やりきれないリオの思いが伝わってくる。
「死にたくない……! 死にたくないよぉ……!」
 その言葉は直球だが、一番純粋な思いだったと思う。
 そして、その言葉は、僕自身も一番捨てきれていない思いなのは確かだ。
「……」
 その思いに対し、僕は何も言うことができない。
 違う、もう、何を言えばいいのかわからなくなってしまったのだ。

 僕は、もう僕ではない、空っぽなただの人形なんだから。

「お願い、フィフス……。何かいってよ……お願い……!」
 思いが痛い。
 けど、何もいえない。
 言う資格が、僕にはない。

「フィフス……?」
 異変を感じたのか、フィアがこちらに近づいてくる。

 懐かしいな。
 君を好きだと思ったその想いも。まやかしだったんだ。

「そんな目で、見ないでよ……」
 感じ取ってしまったのだろうか。凍りついた表情でつぶやく。
「私は、今でも、あなたのことが……」
 いわないで。

 いったらまた、僕は、君を、傷つける。
「これが、レイの望んだ結末なの?」
 リオが、僕から体を離し立ち上がる。
 いつの間にか、痺れ薬は抜けてしまったようだ。
「……絶対に認めない」
 呆けたように仰向けのまま無防備に倒れている僕を見た後、レイを見据える。
 その表情は、仮にも同じチームにいた暗殺者とは思えない。
「リオ……」
 返された返事は、レイのものではない。
 倒れたまま動けずにいるルゥだ。
「ルゥ、私……生きるよ」
 強い決意がそこに現れていた。
「私だけじゃない、ルゥも、レイも、みんな死なせない」
 そういって首元から蔓を伸ばすとルゥに巻きつけ、リオ自身の背に縛る。
「リオ……あなた……」
 名前を呼ぶ以上のことはしない。
 だがそれが今ルゥにできる精一杯の返事なのだろう。
「だれも、死なないといけない運命なんてない。私はそう思う」
「……」
「答えないでいいよ。何を言おうと、私の意志はもう変わらない」
 ルゥが答えるより早く、リオが言葉をさえぎった。
「……わかったの」
 一人思い出すように地面を向く。
「どんなに汚れても、すべてのものは生きることに執着するってことに」
 その言葉は、前を向いているのに。
 リオの表情は苦く、トーンは酷く暗かった。
「少しでも自分をよく見せようと、気持ちだけのきれいごとで飾っていた。
そんなことしても、殺した事実は変わらないのに、もどってくるわけでもないのに」
 一歩足を前に踏みだし、洞窟の外へと向く。

 夜が、白み始めていた。

「きっと、救われることを望んでいたんだとおもう」
 きっと、答えは求めていないだろう。
 夜空をみつめるリオの表情は、元の冷酷な面を、すっかり失っていた。
「けど、もうやめたんだ」
 夜空を見据える。
「救いなんて、求めたところで無駄。だったら私は這いずり回ってでも生きてやる!」
 見えない何かに向かって、リオは叫んでいた。
「恨むなら、恨めばいい、憎めばいい。けど私は生きる! そのために今まで罪を犯してきたんだから!」
 自分自身を鼓舞するように、夜空に猛る。
 その様子をルゥは半ば呆然として眺めていたが、やがて小さく口をほころばせた。
「……好きにしていいよ。それが、リオの選んだ道なら、私はついていくよ」
 力ない、衰弱した笑いだったが、今までのような笑い方ではなかった。
 友人、それ以上の関係にしか見せないようなこころの笑み。

「……そう、最後の最後になって、裏切るのね」

 冷たい響きが、その笑みを凍りつかせる。
「レ……イ……、まだ、動けるの?」
 目の前にいる彼女は確かに歩いていた。
 しかし足取りは震え、ルゥ以上に衰弱していることは確かだった。
「レイ、まだ間に合う。一緒に逃げよう!」
 必死にリオは懇願するがレイは首を横に振る。
 話を聞く気などさらさらないという感じだった。
「リオ、覚悟はあるといったわね」
 リオの表情が消え、血の気が引く。 
「それなら……私を殺していきなさい」
 おそらく、一番リオが聴きたくなかった言葉なのかもしれない。
「な……んで……?」
 震えるリオとは裏腹に、レイの表情は穏やかで、微塵も動揺を見せなかった。
「覚悟はあるんでしょう? 早くしないと、時間がないわよ」
 さらりと言葉をつづる。
 敵対しているはずなのに、言葉の響きは信頼しているものに宛てたようで。
 強さを持っているのに、彼女の言葉はどこか寂しい響きを帯びていて。
 同じ場所にいるはずなのに、もう遠いところにいるかのようにリオたちを見ていて。
「レイ……どうして……」
 その先の言葉が見つからないのだろう。
 ルゥは名前を呼んだきり、口を開けない。
「……もう話す理由もないよ。リオ、来ないなら、覚悟してね」
 そういって、レイは片前足をリオに向ける。

 次の瞬間、夜空を赤く照らす炎がリオに向かっていった。

「っ!?」
「リオ! しゃがんで!」
 とっさにルゥが体重をかけ、リオをかばうように倒れこむ。
「さすがルゥね、[かえんほうしゃ]をとっさに自分で受けるとは」
「……もう、だめなのね」
 かろうじでリオに被弾は避けたようだ。
 だが、今の一撃でリオはすくみあがってしまっていた。
 仮にも、同じ仲間が躊躇なく殺しにかかってきたのだ。
「リオ! 覚悟があるのなら、私でも殺しにかかりなさい! それともあなたの覚悟はそんなものなの!?」

 完全なる決別の瞬間だった。

「リオ……もう、レイは……」
「それ以上はいわないで、わたしも、生半可な覚悟で望んだわけじゃないもの」
 言葉ではつよがっているが、リオの表情はまだ迷いがあった。
「前に、前に進まなきゃ……!」
 小さく自分に言い聞かせているのがわかる。
 割り切れない思いを、割り切るしかない。
 ここでお互いを切り捨てることが、道。

 次の瞬間、緑の刃と、闇の玉がぶつかった。

「く……さすがにタイプ一致の技には勝てないか……!」
 片方は[シャドーボール]だったようだ。
「まだよ!」
 続けてリオははっぱカッターを打ち出す。
 土ぼこりで視界が悪くなっている割には狙いは正確だ。
「その程度!」
 レイは先ほどのシャドーボールを地面に向けて打った。
 すると、地面が大きくえぐれ、二匹の間に土の壁ができる。
 はっぱカッターはその土の壁にすべて阻まれてしまった。

 しかし次の瞬間、その土壁は吹き飛ぶ。
「っ!? ぐぁっ!?」
 鈍い音とともにレイは大きく吹き飛ばされた。
「私の存在を、完全に無視してたみたいね。動けないいがいは、ちゃんとまだ技は使えるのよ」
「く……そういえば[サイコショック]が使えたわね……」
 落下した際に受身を取れなかったのか、レイの右側頭部からは血が流れ始めていた。
 当然、もう立つことはできない。
「案外、あっけなかったね」
 リオがレイの前に立つ。
「く……!」
 それを確認すると、レイは再び片前足をリオに向ける。

「ぐあぁっ!」
 技が放たれることはなかった。

 リオが振り上げた前足を切り裂いたからだ。
「これで、[ねこのて]は使えないね」
「く……う……」
 苦悶の声をあげる。
 骨は折れてはいないが、筋を切られたようだった。
 血が滴る足はだらりとしたまま動かない。
「レイ、降参して。そうすれば、命は助ける」
 頭の葉をレイに突きつけ、脅迫する。
「……それで降参すると思ってるの?」
 傷を受けてもなお不敵にわらう。
「……そう」
 そう一言だけ言うと、リオは躊躇なく刃を振り下ろした。
「うああっ!」
 刃はレイの背を切り裂く。
「まだか!」
 返り血が、リオの顔を染めた。
「く……ぅ……!」
 あくまで、何も答えない。

 それをみると、また、刃を振り下ろす。
「……!」
 今度は肩口からわき腹にかけて。
 先ほどよりも範囲が広い分痛みも強いはずだ。
 しかしレイはうめき声を少し上げただけだった。

「……ルゥ、ごめん、少しだけ降りてて」

 その声は少し上ずり、注意していなければすべて聞き取れなかった。
 リオは背の蔓を解き、少しだけ離れた場所にルゥを下ろす。
 ルゥはこれから起こることを、もう理解しているのだろう、
 リオから目をそらし体を丸め、できるだけ音を聞かないようにしていた。

 ゆらりと、半分意識のないようにレイの前に立つ。
「……何度やっても、答えは同じよ」
 すでに血だまりができ始めるほど出血している。
「だったら、あなたが死ぬか、折れるまでやりつづけるだけ」
 そういうと、また葉の刃を振り上げる。

 また、歯を食いしばり、痛みに耐えるうめき声と、やわらかいものを切り裂く音が、支配する。

「言え! 降参するといえ!」
 返り血が、リオの肌を紅く染めていく。

 もう、身動きひとつしない。
 それでも、リオは振り下ろす刃を止めない。
「言えよっ! 言えよぉっ!」
 半狂乱で叫ぶ。
 その声はもう空しい響きだった。

 レイが、血だらけの肉塊になっていく。

 その様子を見ているのは、もう、フィフスだけだった。

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・ここでいったん一区切りさせていただきます。
・読み手を選びすぎる展開。申し訳ありません。


 何かコメントをいただけるのならうれしく思います。
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IP:61.7.2.201 TIME:"2014-02-26 (水) 18:05:09" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%84%9F%E6%83%858" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/33.0.1750.117 Safari/537.36"

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