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失われた感情4 の変更点


作者名:[[風見鶏]]
作品名:失われた感情4

前作:[[失われた感情1]]
   [[失われた感情2]]
   [[失われた感情3]]
注意:この作品には&color(red){強い};官能描写があります。
 →特に&color(white){強姦};が苦手な人はバックしてください。

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 飼われていたころ、僕は何も心配することなんてなかった。

 毎日が楽しくて、何も怖がることなんてなかった。
 何も知ることなく守られていたから。

 あのときは、何不自由なく毎日が流れていた。

 でも今は違う。

 何度も何度も汚されて、初めて気づいた。
 信用できるものなんてこの世界には何一つない。
 この世界では、すべてが敵なんだと。
 



「しかしまあ良く帰ってきたもんだね」
「たまたまさ」
 言葉を交わすのはフィフスとナイト、心なしかどこか様になってきたような気がする。
 それも、フィフスの表情が変わったせいだ。
 どこか疲れたような作り笑い。
 もちろんそれが作り笑いかどうかはフィフス自身にしか分からない。
 二匹はいま、依頼の終了手続きを行っていた。
 幸い依頼終了の証明書が残っていたため手続きはスムーズに行っていた。
 肝心の報酬は身売りした時の約十倍、これだけあればしばらくは金に困ることはないだろう。
「ほい、これが報酬、君に頼んで正解だったね。一時はどうかと思っていたけど」
 よく言うよ。
 フィフスの心の中でつぶやいた。もちろん実際に言ったりなどしない、
 言ったところで無駄なことだから。
「ん? どうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
 内心の変化を感じ取ったのかナイトが勘ぐってきた。
 やはり情報屋をやっているだけある。話術に関してはとてもじゃないがたちうちはできないだろう。
「何でもない、ところで俺を襲ったやつは何者なんだ?」
 話題を変える。あんまり話したくはない。
 だが、レイたちの情報は聞いておいたほうがいいだろう。
 きっとこの先彼女たちは厄介な敵として現れるに違いない。
 そのために早く知っておくことは大切だろう。
「ふ~ん……、ま、いっか、君を襲ったポケモンはここいらじゃ有名な暗殺専門のチームでね。
 四匹組で活動してるんだ」
 なるほどね。フィフスはしっかりと頭の中に刻みつける。
 情報屋の言うことに嘘はない。
 ナイトいわく、情報屋が嘘ついたら仕事にならない、からだそうだ。
 もっともそれ自体がどこまで信じれるかは分からないが。
 実際自分が把握しているポケモンはレイ、ルウ、そしてベイリーフ。
 ナイトの話が本当なら後一匹いるはずだ。……あくまで情報があっていればの話だが。
「その顔、少し信用ならないって顔だね」
 見透かしたようにナイトが囁く。思わず身震いしそうなほどの低い声音だ。
 カマをかけてるのか?
 あまりにも鋭いナイトの言葉に恐怖心さえ覚えてきた。
「そんなに驚かなくてもいいさ、当然の考えだからね。
 フィフス、たぶん君が見たポケモンはエネコロロとキュウコンとベイリーフだろ」
 あたっている。フィフスは黙ってうなずいた。
 ナイトはそれを確認すると一冊のファイルを棚から取り出す。
「これを見てくれ。言葉で話すよりもこっちのほうが早いだろう。
 あ、金は要らないからな。あの依頼の成功で十分な金が入ったから」
 最後のほうの言葉は耳に入っていなかった。
 フィフスの目に入ってきたのは普通ではありえない記録だったからだ。
 現在の暗殺依頼、その約八割が彼女らによって成功している。
 信じられない。いや、信じたくないというのが本心だろう。
「彼女たちから逃げたことがどれだけ運のいいことだかわかったかな?」
 正直驚きを隠せない。
 まさかここまでの実力者だとは思わなかった。運がいい、そう言われても仕方ないだろう。
 生死をかけたバトルなどしたことはないし、自分は一匹だ。
 三匹、いや四匹を相手はできない。もし出会うことがあれば真っ先に逃げるしかないな。
「この情報はサービスだよ。君、彼女たちに狙われてるよ。君の暗殺依頼を渡したからね」
「――っ!」
 全身の毛が逆立つのを感じた。
 自分が彼女たちに狙われているのはもうとっくにわかっている。
 それよりもフィフスにとって衝撃だったのが自分の情報を売ったというナイトの言葉だった。
 それを読み取ったのかナイトのほほがつりあがる。
「言わなかったかな? この仕事を受けた瞬間から君は犯罪者だって」
 暗い怒りがこみ上げてくる。フィフスは赤い瞳を細めナイトを睨みつけた。
 だがナイトの表情は変わらない。むしろさっきよりも笑みは大きくなっていた。
「やっぱり新人の反応は新鮮でいいね。ま、これ以上は襲われかねないから言うよ。
 何回も言うようだけど、情報屋はいつでも中立、こっちだって仕事なのさ」
「……くっ!」
 反論できない、なぜならこの世界の状況を知っているから。
 生きるためなら何でもしなければならない。自分のことを考えるだけで精一杯なのだ。
 それに軽々しくナイトを殺すわけにもいかない。
 依頼の報酬は貴重な生活費になる。それを消してしまうのはもったいない。
「わかってくれたみたいだね。ま、せいぜいがんばってよ」
 その言葉に返事は返さなかった。答えるだけ腹が立つだけだ。
 フィフスは気を紛らわすため依頼のファイルを棚から取り出すと内容を読み始めた。
「やる気があるねぇ、……あ、そうそう、君の受けた依頼、どうなったか知りたいかい?」
 ふいにナイトはあの時の依頼を切りだしてきた。
 あんまり話す気はない、そうフィフスは視線を送る。
「そんな目で見るなよ……、せっかく教えてやるんだからさ」
 どうやらこちらの意志は関係ないらしい。
 せっかくだ、聞いて損はなさそうだし、関係なかったら聞き流せばいい……。
「君が荷物を送った届け先はポケモンたちを売る密輸船だったらしい。
 ポケモンがポケモンを売るっていうのも変な話だが実際あるんだろうな。
 今回の依頼も表向きにはポケモンを大人しくさせるために必要な薬を届ける依頼だったんだ」
 なるほどね。ま、実際にはその荷物は爆弾だったわけだけど。
「でもその密輸に反対する組織も多いわけさ、君がみた結末の通り荷物は爆弾だった。
 今回の件……、おそらく反対組織による策略と僕は見たね。
 だからわざわざ高額な報酬を払って目立たないここに依頼をしてきたんだ」
 さすが。
 フィフスの頭ではあまり深いところまでは分からなかったがとにかくこの依頼に裏があった。
 ということは分かった。
「これでまた依頼が増えてくるだろうね。少なくとも君がやった依頼関連がね」
 ナイトの言いたいことが分かった。要はまた運送をしろと言いたいのだ。
 ナイトの口車に乗るのは少し癪に障るが……実際運送の仕事は悪くない。
「やればいいんだろ……」
 小さくフィフスはつぶやいた。
「ふふ……頼むよ」
 ナイトは怪しく微笑みかけてきた。
 おまえに利用される気はない。そんな視線でフィフスはナイトを睨んだ。
 利用する、それに関してはこちらも同じだ。絶対に利用されたまま終わるつもりもない。
 すべてはこの世界で生きていくため、自分のためにやっていることだ。
「ふふっ、少し見ない間にずいぶん変わったね。いいことだ」
 察したのだろうかナイトがフィフスに語りかける。
「どうでもいい、この依頼を受けるから早く手続きしてくれ」
 居心地が悪い。フィフスは足早に手続きをすると小屋を出ることにした。


「じゃあこれでいいんだね?」
 数分後早くもフィフスは次する依頼を決めて手続きを済ませていた。
 次の依頼、もちろん運送だ。
 内容はこうだ。
 ここより北の方向にある洞窟に荷物を届けてほしい。
 荷物の詳細が分からないのでよくわからないがおそらくまた薬か何かだろう。
「今から行くか?」
 ナイトが尋ねる。その言葉にはさっきの様な皮肉は含まれておらず、
 いかにも仕事の雰囲気が出てきていた。
「いや、今日は戻る。これからやることもあるんでね」
 やること、それは自分の住処を探すことだ。
 思えばこれまでは放浪していてまともな住処がなかった。今日がちょうどいい機会だろう。
 それに買い物をするのも悪くはない、金はあるからね。
「そう、なら明日かな。ぐっすりおやすみ」
「ああ、じゃあな」
 フィフスは小屋を後にする。ナイトを顧みる気はなかった。
 フィフスの中の価値観は今や百八十度変わっていた。
 利用できるもの、そうでないもの。それ以外の物は、必要ない。
 あまりにも過酷な仕打ちが彼をその考えに行きつかせていた。


 道なき道、ポケモンの姿すら見当たらない。これならどこに住処を作っても問題はなさそうだ。
 だがフィフスはここらの地形は住処の中に入れようとはしなかった。
「……」
 歩調を早める。
 そう、さっきから誰かに尾けられているようだ。だいたい見当はついているが。
 ……どうやら振り切れるような相手でもなさそうだ。
 気配は一匹、何とか出来るかもしれない。フィフスは歩みを止め気配も方向を向く。
「いるのは分かっている。出てこい」
 押し殺すような低い声音。その姿にかつての幼い面影は見えない。
 それにフィフス自身は気付いていなかった。
「ふふふっ、これでも結構気配消したつもりなんだけどね。ばれたらしょうがないな」
 その声の主はキュウコン、ルウだった。その姿はレイとはまた違った美しさを秘めている。
 普通のポケモンが見たら一瞬見とれてしまうだろう。
 だがその美しさもフィフスの前では無駄であった。
「一体何の用だ」
 不愛想にフィフスは言葉をつきつける。
「あら、もう少しやさしい言い方はないの?」
 大げさにルウは悲観の表情を見せる。まるで恋人でも気取っているようだ。
 フィフスは近づいてくるルウを見据え沈黙を貫く。
「……無駄なのね。ま、仕方がないか。あれだけ犯ったんだから覚えていないわけがないよね。
 ふふっ、気持ちよかったよ」
「……っ!」
 わざと過去の内容を掘り返す。……不快だ。
「大人しくしたがってくれればすぐに何も感じなくなるのに……抵抗するから苦しいんだよ?
 さ、こっちにおいで、一緒に気持ち良くなりましょ?」
 全身の毛が逆立つようだ。言うならば、妖艶。キュウコンに瞳が妖しく光る。
 フィフスは思わず後ずさりした……つもりだった。だが体に力が入らない。
「な……何をした……!」
 迂闊だった。ルウの攻撃は何も目に見えるものばかりではない……。
 その目を見てはいけないかったんだ……。
 フィフスはその場に力なく倒れる。
 ルウはまるでこれからごちそうでも堪能するかのように舌舐めずりをした。
「堕とすならあなたが何も知らないうちにするしかないからね。
 少々手荒いけど私が堕としてあげる……」
 ルウはフィフスに瞳を見つめる。そしてその赤い瞳が大きく見開かれた。
「あ……」
 直視してしまった。思考がぼうっとして意識が奪われそうになる……。
 かろうじで意識を保つが動くことは到底かなわなかった。
 ルウが興味深そうに見つめる。
「これで意識を保つなんてすごい精神力ね。よほど強い意志があるのかしら……?
 ……まぁ関係ないわね。私は私の欲望のために動いてるだけ」
 ルウはフィフスに体を密着させる。ほのかに温かい体はその姿に似合う質感だった。
 野生とは思えないさらさらとシルクを思わせる質感……。
 昔のフィフスならすぐに懐いていただろう。
 だが今はフィフスの暗い敵意を引き出す以外何も引きおこさなかった。
「せっかく出し抜いてここまで来たんだから絞り切らせてもらおっと」
 ぐったりしたフィフスを背中に乗せ茂みの中、目立たないところまで運ぶ。
 これからどうなるのかは想像ついていた。
「どうして……俺じゃなきゃだめなんだ」
 言葉を絞り出す。それは必然の質問だろう。
 なぜここまで執拗に辛い目に遭わなければならないのか?
「決まってるじゃない。あなたが好きだからよ」
 一見それは普通の言葉、だがフィフスははっきりと感じ取った。
 今の言葉は自分に向けられた言葉ではないことに。
 そして案の定その言葉は紡げられた。
「幼さの残るからだ、そしてあなたの無垢な反応、その上果てることのない精力。
 これ以上私たち……いや、私を満たす物はないでしょ?」
 そう発するともう我慢できないというように唇を奪う。
 言葉を発しようとしたフィフスの口内に容赦なくルウの舌が入り込み、厭らしく絡まる。
 その行為に体は抵抗をやめて行く……。
 このまま、このままで終わるわけには……!
 必死に逃げて行く意識をかき集めルウの行為に耐える。
「はぁ……ちょっと早いけど次いっちゃお……もう我慢できないもの」
 甘い声でつぶやきルウは体勢を馬乗りの姿勢へと帰る。
 これまで何匹のメスをこの体制で見てきただろうか……。
 もう頭の中では怖くなくなっていた。
 それなのに、体はこれから行われるであろう行為に体を小刻みに震わせていた。
「ふふふっ……すぐに怖くなんてなくなる。私と一緒に……気持ちよく……」
 狂気、直感的にその言葉が連想された。思わず叫びたくなる。
 しかし、もう遅かった。
「――ああっ!」
 すぐにそれがルウの膣内にペニスを挿入された快感だとわかった。
 もはや喘ぐことしかできない。
 ルウの行為は彼女自身が興奮することによってさらに激しさを増す。
 こちらを気遣わない攻めは容赦なくフィフスを絶頂へと導く。
「うあっ、あは……あ!」
 半ばうめくようにしてフィフスは大量の精液を子宮内へと放出する。
 その間も放出される精液を感じながらルウはフィフスのペニスを締め付け自らの快感を貪っていく。
「う……私もイクッ……! ああっ!」
 体を大きくのけぞらしルウは絶頂を味わう。
 しばらくその快感を味わうとルウは下を向き動きを止めた。
「はぁっ……はぁっ……」
 フィフスに一時の休息が与えられる。快感が体全体に疼いている。
 保ってきていた精神も限界が近づいてきていた。
 何とか……反撃できないのか?
 とにかく最低でもこの頭にもやがかかった状態が回復しないと……。
「う……何か考えてるみたいね……逃げようなんてもう考えないでよ……」
「うあっ!?」
 腰に力を入れフィフスのペニスを締め上げる。
 それだけの行為だけで今のフィフスに思考を断ち切るには十分だった。
 すでに体は幾多の性行為によって快感に敏感になってきていたのだ。
 ほおを涙が伝い口からはまた震えた喘ぎ声が漏れ出してくる。
「ふふっ、やっぱり最高ね。もっともっとほしい、もっと私を気持ちよくさせて……!」
「や……あ……!」
 さっきよりさらに激しく腰をふる。言葉を発することすらもう許されなかった。
 所詮彼女にとっては自分は性道具にすぎないのだ。
 気づけば体は自然にルウを攻め始めていた。もうすぐ思考も消えてしまうのだろう……。
 悔しい、自分はまた何もできないまま壊れて行く。
 自分は道具じゃない。そう言いたかったが言葉として出ることはなかった。
 かわりに出てくるのは嗚咽と舌足らずな喘ぎ声だけ。
 どれも淫乱なメスの興奮を掻き立てるものばかりだ。
「あっ……い、いいよっ、もっとは、激しく……!」
 勝ち誇った表情でこちらを見つめてくる。
 そしてゆっくりとこちらに倒れてくると背中に前足を回しフィフスを押さえつける。
 フィフスは言うことを聞かない体を無理やり動かし何とか逃れようとした。
 だが快感に支配された体は、もどかしいほどゆっくりにしか動かなかった。
「う……、リオの時みたいに逃げようと思ってるの?」
 ルウは目を細め口元をつり上げる。
 その微笑みは今まで見たなかでも一番恐ろしく、妖艶な笑みだった。
「面白いわ、やってみてよ。私を、壊して。悦楽の虜にしてよ!」
 もがいたことが引き金になってしまった。
 ルウは無理やり唇を奪うと器用にフィフスの体を前足でまさぐり始める。
 性行為での快楽、そして愛撫による快感が波となりフィフスを飲み込む。
「んんっ――! ん――……!」
 うめき声を漏らしながら深く、淀んだ闇の中に意識は引きこまれていく。
「んん……! もっと激しくついて……! うっ、そ、そう……もっと!」
 ほおを紅潮させながらルウは激しく喘ぐ。フィフスはその声に反応するかの如く行為を激しくする。
 もちろんそんなことはフィフス自身は望んでいなかった。
 今のフィフスは理性を失った獣。性の快楽を求め行動する獣。
「はぁっ、はぁっ、ま、またイク……ううっ!」
「うあ……! はっ……!」
 フィフスを抱きしめる状態でルウは絶頂を迎える。
 フィフスも同時に声かどうかわからない叫びをあげながら精液を放出する。
 性の欲望は果てることはなかった。絶頂に達するたびに徐々に自分という存在が崩壊していく。
「は……あ……っ」
 恍惚とした表情でルウはフィフスと重なり合う。
 ゆっくりとフィフスはルウと体勢を入れ替える。
「あっ……」
 逃げられると思ったのだろう。ルウはフィフスの首に前足を回し起き上がれないようにする。
 だがそんな必要はなかった。フィフスは体勢を入れ替えると再び体を重ね合わせる。
「あんっ! あっ! ちょ……あっ!」
 いつしかフィフスは犯す方側へと変貌と遂げていた。
 ルウが最初フィフスを気遣わず犯したように、フィフスをルウを容赦なく犯していく。
「あっ、や、休ませて……こ、壊れちゃうぅ……!」
 さっきまでフィフスを犯していた彼女はいない、じきにルウも快楽の中へと溺れて行くのだ。
 フィフスは衰えを知らない性欲を振り回しひたすら目の前のメスを犯していく。
 この流れを見ているものがいたとしたらこの言葉を思い浮かべるのだろう。
 報復という言葉を。
「はっ……はっ……ああっ! も、もっとぉ!」
 もともと性欲に飢えていた彼女は堕ちるのも早かった。
 とはいえ、ほとんど変わらないのかもしれないが。
「う……あぁっ!」
「あああっ!」
 体をのけぞらせ、余すことなく精をルウの子宮内へと放出させる。
 ルウはろれつの回らない舌で喘ぎながらそれを受け止める。

 夜は終わらない。フィフスは居場所もなくただメスたちの餌食になっていく。
 一体どれほどの時が経ったのだろう?
 フィフスは柔らかなルウの毛皮の上で目を覚ました。
 疲れよりも虚無感のほうが多い。それだけ犯されること、犯すことに慣れてしまったのだろう。
 ルウはなんとも厭らしい表情のまま気絶していた。
 しかしその表情も欲情するまでは至らない。
「今のうちに逃げなきゃな……」
 フィフスはゆっくりと歩き出す。まずは体を洗わないといけない。



「ふぅ……」
 粘つく体を洗うと毛皮は元の毛並みを取り戻す。性のにおいも残ってはいない。
 だが、心の傷だけは癒えることはなかった。
 体に傷跡が残るように、自分の心には大きな傷が刻み込まれている。
 どうして自分はここまでして生きているのだろうか?
 こんな目に遭うぐらいなら……。
 自然に小川の中に倒れこんでいた。顔が水の中につかる。呼吸できない状態。
 このままずっといることができるなら。自分はこの世からいなくなる……。

 しかし生物というのはそう簡単に自殺できるものではない。生存本能が働くからだ。
 案の定フィフスはほどなくして起き上がる。
「なんで……だろうな……」
 その瞳からは涙があふれ出していた。
 こんなに辛いのに、どうして自分は生きているんだろう?
 周りに仲間なんていないのに、ただの道具として利用されているだけなのに、
 どうして自分は生きようとしているんだろう?
 死んでしまいたい。いっそのこと殺してほしい。
 そう願っているのに。どうしていざ死のうとなると怖がってしまうのだろう?
 フィフスは声を出さずに泣き続ける。
 嗚咽は流れる小川の音にかき消され、誰にも聞こえることはなかった。



 それから時間は流れ空が明るみ始めるころ、フィフスは小さな洞窟の中にいた。
 ポケモンの姿がない。ここならいい住処として使えるかもしれない。
 あの後フィフスは小川に沿って上流のほうに歩いて行ったのだ。
 ここは小川の源泉部。少し湿っぽいが住処としては申し訳ない場所だ。
「……」
 だが気分は優れはしなかった。
 せっかく新しい場所を見つけたというのに、気分は全く晴れなかった。
「依頼を受けなきゃいけなかったんだっけ、行かなきゃな……」
 正直気乗りはしなかった。でも行かなければならない。
 そうしないと生きれないから。もう諦めたいけど、生きなければならないから。



 小屋まではたいして時間はかからなかった。
 窓からなかをのぞく、ナイトが止まり木でファイルを覗き込んでいた。
 おそらく新しい依頼の整理でもしているのだろう。
「ふぁ……っと、来たね。もう準備は済ませてあるよ」
 大きなあくびをしながらナイトはフィフスに語りかけた。
 今回の荷物はだいぶ小さかった。それだけに中身はすごく気になる。
 ポーチに入れてもまだまだ入りそうだ。
「それじゃあよろしく。くれぐれもその荷物は落とさないようにね」
 そう一言だけ言うとナイトは書類を整理し始めた。
 フィフスは黙ってその場を後にした。
 聞きたいことなら山ほどある。しかし聞かなかった。
 なぜなら聞いたところで自分のためにはならないから。



 目的地はここから北。そんなに離れてはいないはずだ。
 ……急ごう。フィフスは歩調を速めて行く。
「……誰かいるな」
 反射的に身をかがめる。この数日でフィフスの警戒範囲は大きく広がってきていた。
 特に背後、目に見えない場所ほど気配は敏感だ。
 半ばほふく前進のような格好でフィフスは進んでいく。少しポーチは邪魔だった。
 森の中は茂みが多く、しゃがんでしまえば相手の視界には入りづらい。
 後は気配を殺すだけ、フィフスは茂みの中に身を伏せるとそのまま気配を殺した。

「しまった……! いつの間にここまで成長したのかしら。見失ってしまうなんて……!」
「――!」
 レイだ。やはりいつもいつも三匹で行動しているわけではなさそうだな。
 だとしたらこれからはかなり厄介になるかもしれない。
 逃げていたら別のポケモンに見つかる……なんてこともあり得る。
 とにかく、今はここをやり過ごすことが大切だ。
 フィフスはその場を動かずじっと息を殺す……。

「やっぱり獲物は簡単には手に入らないものね……。
 あのとき壊れてもいいからちゃんと手に入れるべきだったわ」
 まるでこちらの存在を意図しているかのような声でつぶやく。
 思わず声を上げそうになってしまった。
 必死にそれを抑え、茂みの中でレイが立ち去るのを待つ。
 鼓動が早鐘のようになっている。額には汗がにじみ出始めた。
「……仕方ないわね。戻るしかないか……」
 レイはいかにも悲しそうな表情をするとその場から立ち去っていく。
 その姿は誰が見ても声をかけたくなるほど美しい姿。
 だが裏はきっとフィフスを見つけられなかった怒りに燃えているに違いない。
 フィフスは姿が見えなくなってもしばらくはそこを動かずにいた。

「はぁ……」
 やがて大きなため息をつく。
 それが安堵によるものなのか、悲しみによるものなのかはわからなかった。
 とにかく今は依頼を終わらせることに集中しよう。
 またいつ襲ってくるかは分からない。逃げ切ったことをよろこぶには早すぎる。
 茂みから体をおこすと極力足音を立てずにフィフスはその場を後にした。


「……ここか」
 フィフスがたどり着いたのは小ざっぱりとした丘にある洞窟。
 とても森の領域とは思えないほど表の世界に近い場所だった。
「あなたが……依頼を受けた方ですか?」
 洞窟の前にいたのは一匹のヒトカゲ、彼もまた整った容姿をしていた。
 とても戦闘能力はありそうもない、一体どうしてこんな場所にいるのだろうか?
「証明書です。ここまでごくろうさまでした」
 フィフスは証明書を受け取ると荷物を渡す。
「……あけてもいいですか?」
 小さな小包だ。この間のような爆弾なんてことはないだろう。
 フィフスは黙ってうなずく。
「ありがとうございます。……これは!」
 中からは小さな入れ物が入っていた。その中には……小さな腕輪と一緒に手紙が入っていた。
「フシギダネ……わざわざこんな危険を冒して届けてくれたんだね……」
 ヒトカゲは手紙を読みながら泣き始める。
「婚約者……ですか?」
 フィフスは小さな声で尋ねていた。
 一体なんだろう……こんな気分になったのは久々だ。
 どこか心の中があったかいというか……忘れていたような気がする。
「はい、正式には婚約者ではありませんが……恋人です」
 ヒトカゲは顔を赤らめながら言う。どうやら本気で好きみたいだな。
 しかしその顔はすぐに暗くなった。
「しかしかなわない恋なんです。私は野生の身、所詮ボスの娘にはつりあわない身なんです」
 フィフスはその話を黙って聞いていた。
 恋……その意味を理解することはできなさそうだ。
 だがどこかこのポケモンはとてもフィフスの興味を引く。
 弱弱しくいかにも利用される側なのに……、どこかほっとけなかった。
「どうしてそう思う?」
 フィフスはいつの間にかその言葉を口にしていた。……不思議な気分だ。
「私は嫌われているんですよ。彼女以外の全員に、だからこんな場所で生きるしかないんです」
 半ばあきらめに似た感情がヒトカゲからは感じられた。
「……なあ、もしよかったら、その話、聞かせてもらえないかな?」
 興味がわいたから、という理由だけではない。
 どこか……どこか自分と似たようなものを感じる。
 こんなに弱く、頼りない彼は、いつしかの自分の姿が重なって見えるのだ。
「……わかりました。どうぞこちらに来てください」
 少しだけ考えた表情を見せた後、ヒトカゲはフィフスを洞窟の奥へと案内した。
 時は白昼。ポケモンの影は彼ら二匹だけだった。


「どうぞおくつろぎください、大したものはありませんけど……」
 言葉に甘え適当な場所に座り込む。
 信用していいのか? そんな考えが浮かぶがなぜかその考えはすぐに消えてしまった。
「話の続き……ですね。どこから話しましょうか?」
 そう言ってヒトカゲは体色と対照的な色合いをした瞳をこちらに向けた。
 ああ、そうなのか。フィフスは悟った。
 ヒトカゲの瞳は悲しみの色を帯びていたが、確かに輝いていた。
 まだ穢れを知らない、純粋無垢な瞳。
 
 ヒトカゲが自分と似ているのではない。

 ヒトカゲの……彼の瞳が、捨てられたころの自分と同じなのだ。
 別に彼の話が気になるわけでもない。いきさつがどうとかも関係ないのだ。
 ただ彼自身が自分と同じ目をしていたから。輝きを失っていない瞳だったから。
 フィフスは引かれてしまったのだ。

 実際ヒトカゲの話はほとんど聞いていなかった。
 思考が混乱していたのだ。
「すみません、こんな話をしてしまって。……きょうはありがとうございました」
 ヒトカゲが丁寧にお辞儀する。幾分ほっとしたような顔だ。
 なぜか自分自身もホッとしてしまう。まだ無垢な笑顔は、フィフスの脳裏に焼きついた。
 このポケモンのいきつく先が知りたい……。
 本能的な感情だった。
 自分が見つけることのできなかった。結末を……。
「あの……」
「は、はい、何でしょうか?」
「また、来てもいいですか?」
 フィフスはおずおずと問いかける。
 ヒトカゲは一瞬とまどったような顔をしたが、すぐに顔をほころばせた。
「もちろん、こちらこそよろしくお願いします」
「……あ、ありがとな」
 うまく言えない。なんだか初々しい気分だ。初めて味わったような感情。
 いや、初めてではない、忘れていた感情……というほうが正しいのだろう。
「ふふ、普通に話そうよ。仕事じゃないんだからね」
「あ……ああ」
 ああ、やさしさを感じる。張りつめていた心が解放されるような感覚。
 まだこの森にもこんなポケモンはいたんだ。
「ありがとう、もう戻るよ、それじゃあ」
「うん、届け物、ありがとね」
 帰り際の言葉で思い出す。そう、危険な依頼の真っ最中だったのだ。
 とてもさっきまでの出来事が嘘のように感じられる。
 フィフスは緩んだ心を再び引き締めた。
 無邪気だな。そして、はかない。
 心の中でフィフスは思っていた。今では戻ることのできない過去の自分。
 彼は、自分のようにはならないでほしい。
 何度も振り返りながらフィフスは洞窟から去る。
 フィフスが去るまでヒトカゲはずっと見つめていてくれた。




 心なしか小屋までの道のりは短く感じた。
 あの三匹の気配も感じない。順風だ。夕暮ごろにはフィフスは小屋に戻れた。
「おや、早かったね。その様子だと依頼も成功したのかな」
 ナイトが眠そうな顔で、こちらに向かってきた。
 どうやらどこかへ行っていたらしい、首にかけていたポーチには大量の書類。
 重量もありそうだ。やはりフィフスの運送の件で依頼が殺到しているのだろうか?
 そうこう考えているとナイトが早くもじれったそうにこちらを見つめているのに気がつく。
「あっ、すまないね」
 入口に立っていたのだ。これでは入ろうにも入れない。
 ナイトとともに小屋の中へと入る。密閉していたせいでこもった熱気がたちこめている。
 しばらくは換気をしていたほうがよさそうだな。
 扉をそのままにしフィフスは依頼の報告をする。

「どれ……確かにいただいたよ。しかしよくやるよねぇ、もっと時間がかかると思っていたのに」
 感心したようにナイトは報告書を黙読する。
 やがてサインが描かれ、依頼の報酬が渡された。
「ご苦労さん」
「……ああ」
 ひどく淡白だった。
 何もないことがまたひどくフィフスの心を掻き立てる。

「……どうしたんだい?」
 ナイトがわずかに笑っているのをフィフスは見逃さなかった。
 察した。また何かを隠している。おおよそ依頼の内容についてだろう。
「隠し事はもういい、さっさと教えろ」
「おっと、気づいたのかい。怖いねぇ……日ごとに隠し事ができなくなってくる」
「教えろ」
 フィフスは殺意のこもった声を投げかけた。その声を察したのかナイトは話を切る。
「冗談ぐらい流せないもんかね。言うよ」
 少しつまらなそうな声でナイトはポーチからある一枚の書類を取り出した。
「今回の依頼、どうやら大きな会社がからんでいたらしいんだ」
 ナイトはいつになく真剣な表情をこちらに向ける。
 それだけで緊張感がその場を支配した。
 会社? なぜそんなものが関わってくるんだ?
 ヒトカゲの話にはそんなフレーズはほとんどなかったはずだ。
「ん? その様子だとある程度知っているのか?」
 どうやら顔に出てしまったらしい。フィフスはできるだけ悟られないように首を縦に振る。
「そうかなら話は早い、今回の目的、もうわかったんじゃないかな?」
 意味がわからない。目的? それは恋人同士のラブレターでは……。
 確かに中身も婚約のための腕輪だったはず。
「わからないって顔してるな……」
 少し拍子抜けしたような顔でこちらを見つめる。
「いいか? ここでの会社は取引とかをするための組織だ。密輸はすでにこちらで行っている。
 そんなところがこんなところに依頼してくるといえば一つしかないだろ?」
「……っ!」
 動揺を隠しきれなかった。自分でも血の気が引くのがわかる。
「その顔だとわかったようだな。口封じさ、それも一番巧妙なね」
「――っ!」
「あっ! お、おいっ!」
 ナイトが止めるのを無視してフィフスは走りだしていた。
 
 そんな! そんな馬鹿な! 

 あの腕輪が、口封じの道具だって言うのか!?
 信じられなかった。あれは……ヒトカゲの思い人の贈り物のはずだ。
 ちゃんと手紙も入っていた。ヒトカゲも涙を流しながらその手紙を読んでたじゃないか!
 それが……それが……!
 疲れも忘れてフィフスは北の洞窟へと向かった。

「ヒトカゲ!」
 洞窟の中は静まり返っていた。冷たい風がフィフスの顔をなでる。
 それはすぐに視界の中に入ってきた。
 血の気を失ったヒトカゲの姿……。
「あ……」
 あまりにも早い結末だ。全身の力が抜けて、立っていられなくなる。
 まだ希望はある、眠っているだけかもしれないだろ?
 自分に言い聞かせ、半ば引きずるようにしてヒトカゲにへと歩みよる。
 だがうつぶせに倒れたヒトカゲの姿はとてもじゃないが寝ているようには見えなかった。

「……」
 その腕には婚約のはずの腕輪が巻かれている。体は冷たくなっていた。
「……どうしてこうなるんだよ」
 小さくつぶやく。
 そしてヒトカゲに巻かれた腕輪をとりさった。内側にはごく小さな針。
 おそらくこれがヒトカゲの命を奪ったのだろう。
 こんな小さな毒針が、まだ未来のあるポケモンの命を奪ったのだ。
「やっぱりここか、やれやれ……どういうつもりだい?」
「……ナイト」
 声の方向に振り返る。すると一瞬だけナイトは驚いた表情をした。
 今自分はどんな表情をしてる?
 おそらくひどく情けない表情なのだろう。視界がかすんでいる。
「一体どうしたんだ? 突然走り出したと思ったら今度は泣きだしている。
 僕にはわけがわからないよ」
 言ってもわからないよ。
 心の中でフィフスはつぶやく。
 背後には動かないヒトカゲ。正面には無表情でただずむナイト。
 フィフスは沈黙していた。話す気になんかなれやしなかった。
「とりあえず返してもらおうか、君、僕のファイルをポーチに入れたまま走っていちゃったからね」
 半ば奪いとるようにナイトはフィフスからファイルを受け取る。
「フィフス、成長していると言ったがとりけすよ。君は弱い、全然子供だね」
「……っ!」
 涙でぬれた瞳でフィフスはナイトを見据える。ナイトの姿はぼんやりと映っていた。

「ナイトは何も感じないのか? こんなに無力なポケモンが、どうして殺されなきゃならないんだ!」
 たたきつけるようにフィフスはナイトに叫ぶ。
 しかし反応は薄い、むしろフィフスが必死になればなるほどナイトの表情は憐れみを強めていった。
「ダメだね。まったくもってだめだ」
「何が駄目なんだ! ヒトカゲは! このポケモンは何も悪いことなんてしていなかったんだぞ!?」
 今にもつかみかかりそうな勢いでまくし立てる。
 これほどまでに感情的になる理由はフィフス自身にもわかってはいなかった。
 とにかく抑えきれない衝動、それだけで説明は十分である。
 フィフスは数々のショックで不安定になっていたのだ。
「悪いことをしていない、そんなのは理由にならないよ」
「――!」
 ナイトは小さな声でつぶやく。
 その小さな声は、フィフスを黙らせるには十分な力を持っていた。
「この森では善悪なんて存在しないのさ、
 どんなに汚いことをしても最後に幸せになった者、最後に生き残った者が勝者。
 それ以外の物はすべて敗者なんだよ」
 フィフスは自分がわなわなと震えだしていることが分かった。
「とっくにもうわかってると思った。でもそうじゃなかったんだな。
 これを機に知るといい。どんなに健気でも、ひたむきでも、負けたら何でもないんだ。
 最後に勝たなければ何も意味がない。
 そのポケモンがいい例さ、どうせ思い人とか何かで追われてきた身なんだろ?」
 ナイトは凶器の腕輪を手に取るとよく見つめる。毒針はまだ鈍い輝きを持っていた。
 そしてしばらく見つめた後ヒトカゲの亡骸へと放り投げる。
「所詮、死んだらそこで終わりさ。
 こいつも弱者、君がどんな思い入れを持っていたのかは知らないけど、まぎれもなく弱者」
 淡々とした口調でナイトは続ける。
 やめろ……もうやめてくれ……。
 ナイトは自分の中の何かが崩れて行くのを感じていた。
 せっかく作り上げた希望が、見え始めた明かりが。なくなっていく……。
「この世界でなれ合いを求めることはできないさ。何度も言うけど、生きるので精一杯。
 このポケモンのように他人のためなんて考えたらこんな結末は見えているんだ。
 フィフス、もし君がこのポケモンのようになれ合いを求めているなら。
 君は絶対に命をおとす」
 何も言うことはできなかった。反論する言葉が見つからない。
 それだけ正確に、的確に言葉はこの世界の現状をとらえていた。
「先に戻るよ。もう同じことは言わない、……よく考えることだね、フィフス」
 それきりナイトの言葉は聞こえなかった。
 洞窟から出て行ったのだ。



「う……ううぅ……」
 その場でひれ伏して泣きだす。あれだけ涙を流したのにまだ涙はあふれてくる。
「うああああっ!」
 希望を抱いた自分が馬鹿だったのか?
 見つけられなかった結末がこれなのか?
 何よりも……どうしてあんなことを口走ってしまったんだ?

 そうだ。

 初めから何も知らなければ、こんなことにはならなかったのだ。
 自分が彼に引かれてしまったから。
 かつての自分を想像してしまったから。
 こんな思いをするのだ。悲しくなってしまうのだ。

 もう、何も知ってはいけないんだ。
 余計なことを知れば、結局ひどい目に遭うのだ。
「……ひくっ、もう、何も知るべきではないんだ」
 知っていいのは、自分の利益になることだけ。
 ほかは……すべていらない。


 フィフスはゆっくりと立ち上がり、涙をぬぐう。
 そして足音一つ立てずに洞窟から立ち去った。
 だた去り際に一言。
「さようなら、ヒトカゲ」
 吐き捨てるようにそう言った。


 
 


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 ここで一区切りさせていただきます。
 ここまで読んでくださり嬉しく思います。
 何かコメントとをいただけるのなら光栄です。

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IP:61.7.2.201 TIME:"2014-02-26 (水) 18:04:03" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%84%9F%E6%83%85%EF%BC%94" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/33.0.1750.117 Safari/537.36"

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