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夏の嵐がやってくる! 後編 の変更点


writer is [[双牙連刃]]

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 リィの涙も引いて、落ち着きも完全に取り戻したようだからリビングに戻った。どうやら、勝負の内容は決まったようだな。

「……ライト、リィちゃん……大丈夫?」
「うん、もう平気。ごめんね、変に心配掛けちゃって」
「本当よ……ライト、本当に大丈夫なのね?」
「そう判断しなかったらまだ連れてこないっての。安心しな」
「本当に大丈夫だよ、フロスト姉ぇ。なんだか今、いつもよりずっと気持ちが落ち着いてるんだ。それが僕の力になってくれてるの、はっきり分かる」

 一度爆発寸前まで行った事で、普段は無意識に閉ざしてた力の蓋が少しずれて開いたみたいだな。普段のリィは常に何かしらの我慢をしてる状態に近かった。それがカランに思いきり怒った事で、抑制が緩和されたんだろ。
リィの怒りって感情が解き放たれた……そう考えると一番分かり易いかね。エスパーの能力は念、転じて精神、心だ。心が強くあれば輝きは更に増し、その思いは強い力を持つ。リィもそれを感じたんだろう。
今のリィは、ちょっと俺が相手をするにしても油断ならんかもしれん。これだからエスパータイプってのは油断出来んし、面白いんだよな。

「よーし! んじゃあ対戦前の作戦練りタイムだ! ほれカラン、お前も自分の部屋にでも行って練ってこい。言っとくが、今回はリィとライトの命運を賭けてるんだから、手加減とか待ったとかしてやるつもりは無いからな」
「ふ、ふんだ! 兄さんと私は23戦18勝だもん! 今度だって勝つんだから! 皆、行くよ!」

 あらら、さっきのリィのガチ脅しで相当肝冷やしたみたいだな、ありゃ。リビングを出る時カランの奴、チラッとリィを見て怯えてやがったよ。ざまぁねぇな。

「さて……リィ、ごめんな? 俺の馬鹿な妹の所為で」
「ううん、ハヤトさんが謝る事じゃないよ。僕の方こそ、急にあんな風になっちゃってごめんなさい」
「いやいやいいんだって! ……ところで、そのハヤトさんって?」
「あ、これ? いや、僕もハヤトさんの手持ちの一匹だし、いつまでも人間さんって呼んでるのも失礼かなと思って、ついでに変えてみたの。不味かったかな?」

 ……現金な奴。リィからの呼ばれ方が変わっただけで急速にテンションが上がっていってるよ。まぁ、人間って呼ばれてるのから名前呼びなら、歩み寄りとしちゃあ大前進だがな。

「俺は今、かつてない程に……燃えている!」
「阿呆が、勝負前に燃え尽きる気か? しっかりしろよ、マスター」
「え?」
「喜べ、カラン戦の特例中の特例として……お前のメンバーの末席に入ってやる。だからって俺に頼るなよ? まぁ、負けは無くしてやるがな」
「ま、マジですか!? やっべぇ、マジで負ける気がしないんだが!」
「だから、お前が負けたら被害を受けるのは俺とリィなんだ。それを回避する為の特例だっての」
「それでもいいです! あぁ、一瞬とはいえライト先生にマスターと呼ばれる日が来るとは……!」

 な、なんかこいつの中の俺がもう先生で固定化し始めてるんだが。まぁ、呼び方なんてどうでもいいけどよ。
っと? なんか俺が言った一言に目をキラキラさせてる奴と、キョトンとしてる奴が7:3くらいで居るな。どうしたよ?

「あ、あんたが……メンバーに入るの? 本当に?」
「しゃあねぇだろ? 負ける訳にいかんのだから、やるしかあるめぇよ」
「ふぉぉぉぉ! 師匠と戦う事になったと思ったら、今度は師匠と一緒に戦える……! 伝説のポケモンが味方に居るような安心感ッス!」
「ま、そういう事だからよ、後の事は気にせんで思いきりやってくれ。俺にお鉢が回ってくる前に、なるたけ相手を減らしてくれよ? めんどいから」
「おう! ……っとそうだった、リィとライトにはカランとの勝負の内容を教えないとな」

 おう、それ聞いておかないと困るぜ。メンバー構成なんかを決めるのには絶対必要だからな。

「まず、ルールは基本的な勝ち抜きバトル、戦闘中の交換は無しのメンバーは六匹のフルメンバーだ。でも、相手をダウンさせたら勝った方にもポケモンの交代権が与えられるって感じかな」
「ほう、なるほどね……」
「こっちのメンバーは、まずは六匹目の枠にライトは決定だろ? 残りの5枠をどうするかだな」
「俺を別に入れなくてもいいんだぜ?」
「ら、ライト先生、そげな意地悪を言わなくてもいいじゃないですか……」

 まぁ冗談さね、俺もここで外されたらおいおいってツッコミ入れるぞ。折角こっちから申し出てやったんだからな。

「ハヤトさん、お願いがあるんだ」
「分かってる、リィも戦うんだろ? 俺も止めないし、皆協力するよ。な?」
「当然ッス! 兄弟子として、妹弟子を助けるッス!」
「もちろんあたしもよ。カランは悪い子じゃないけど、まだリィを預けるには不安な事が多いもの」
「僕も頑張るー。ライトは別にいいけど、リィが居なくなるのはヤダー」

 ……相変わらずプラス君は辛辣ですね俺に。もうあんまり気にしないけどさ。

「今まで共に暮らしてきたんだ、俺達は家族も当然。家族を守るのに、理由は要らんさ」
「大丈夫だよ、リィちゃんもライトも。皆一緒、皆……これからもリィちゃんとも、ライトとも一緒に居たいんだよ」
「皆……ありがとう……」

 ははっ、これだけの決意を持って皆挑んでくれんなら、俺が出しゃばる必要も無いかもしれんな。良い奴等だぜ、皆。
それも加味した上で、リィを出すタイミングやメンバーを決めねぇとな。相手の構成からして、何を初手で出してくるか。……いや、ここはあの手で行くのも手か。

「オーライ、全員の決意表明が聞けたところで、メンバーを決めようぜ。相手方の出方は予想出来るのか?」
「そうだなぁ……カランのメンバーは半数が変わってるけど、こっちはリィとライトが追加されてる以外は変わってない。となると、向こうは多分こっちの一番手はソウかプラスだと思ってる可能性が高いな。前にやった時もあのカイリキー、ナックルが一番に出てきてやられたんだよ」
「なるほど……タイプ相性的には、こっちの弱点を有してる相手が向こうには多い。そこを突かれると一気にやられる可能性があるって事か」

 炎、ノーマル飛行、格闘……こっからは予測だが、ノーマルor悪、草or虫、水の可能性が高い個体……ふむ、どうするかね。
戦闘ルールからして、初手はかなり大事になる。いきなりメンバーを失った方が確実に不利になるのは明白だ。なら、最初は磐石な奴で固めるのがいいだろうな。

「……相手がまず、こっちのメンバーの中でバトルスキルの低い奴から出してくるだろうって予想してるのを利用してやるか」
「と、言いますと?」
「さっきの話からして、恐らく向こうはほぼ同じ作戦で来る筈だ。なんせ、カランの奴はこっちが模擬戦なんかでスキルアップしてるのを知らないんだからな」
「ふむ、確かに。だが、それを想定してメンバーを考えると、初手はリィか?」
「いや、それはイマイチ良い手とは言い切れんな。カランにとって、俺とリィは全く未知数の相手だ。仮に初手でカイリキーが来るとしても、むざむざ手の内を晒すのは避けたい。今のリィなら、相手の弱点を突けなくても高火力で倒しきるって手も出来るだろうしな」
「……やっぱり最強クラスの作戦立案者が居ると全然違うわね。あらゆる状況に対応出来る強みってこういう事よね」

 茶化すなそこの水色。俺は結構真面目に策を練ってるんだからな。
が、前提としてカイリキーが来るっていうのをベースにすると出せない奴らがこっちに三匹ほど居る。そのメンツは、悪いが一番槍からは除外するぞ。

「初手をカイリキーと仮定し、なおかつリィを除外して考えると……この家で出せるメンバーは三匹にまで絞られる。プラス、レオ、リーフだ」
「確かにタイプ相性としては、俺達が可もなく不可もなくという事か」
「技構成がどうなってるかによっては、プラスとリーフもちと危ないがな。で、その消去法で行くと……」
「うぇぇ! ま、まさか……一番にレオ!?」
「あぁ、レオの実力なら、あのシノビって奴以外が出てきたんなら大体は勝てるだろう。仮にシノビって奴が出てきても、奴のスペックを暴ける。俺としては最良の選択だろうと思うが」

 まぁ、流石にちっと迷うだろうな。レオはこのメンバーの中でも確実に最高のスペックを有してるメンバーだ、それを最初に持ってくるのは確かにリスクがある。それは認めよう。
が、それはこっちの実力を知られてない相手に対しての場合だ。今回の場合、向こうもこっちのポケモンの実力を大体は把握してるだろう。だからこそ、有能なレオが一番手に来るとは予想しない可能性が大いにある。そこを突いて、まずは相手にパニックダメージを与える。
そうすれば勝負の流れって奴をこっちに引っ張れる筈だ。仮にレオがやられたとしても、やられたそいつの能力を俺が把握出来る。損な役回りかもしれんが、確実性は格段に増すだろう。

「……ライト、お前は今回……手加減の類はしないのだな?」
「あぁ、手加減も様子見も一切無しだ。カランには悪いが、確実かつ絶対に勝つつもりでやる」
「ふっ……分かった。主殿、先陣を切る役目は俺がやりましょう」
「うぉい!? い、いいのか、レオ?」
「はい。……背中は、預けるぞ」
「はっ、任せろよ」

 背中は預ける、か。あぁ、殿は俺が務めてやる。だから、この一戦を左右する役目は預けたぜ、レオ。
これで始めと終わりは俺とレオで決まりだな。後のメンバーは、相手のメンバー構成から考えればいいな。バトル中、どちらかのポケモンがダウンしたら交代出来るんだからな。

「うーん、とりあえずこれでライトとレオは決まりだけど、後はどうするかな?」
「正直、誰を入れてもステータス的にもタイプ的にもきつい相手が居るからな……リィは決まってるし、残り三匹は」
「はい! 俺っちは行くッス! 確かにナックルは苦手ッスけど、後のメンバーには苦手なタイプは居ないッスよ!」

 ふむ、確かに。それにリィが出てるのが確定してる以上、あのカイリキーはリィで封殺出来るだろう。ソウを入れるのは悪くない判断だな。
その基準から行くと、レンも悪くない選択だな。カイリキーを除けば、危険視しなきゃならないのはあのコロナってブースターだけだ。が、レン位の能力があればあいつはそう難しい相手じゃないだろう。
だが、全部を俺が決めちまうってのはそれはそれで問題があるしな……まぁ、ここはトレーナーであるこいつの感性に任せてみるか。

「そうだな……よし、後の三匹についてはお前に任せるぜ。トレーナーとして戦うのはお前だ、相手の力量を考えて構成してみろよ」
「ぬぅ!? こ、ここで俺に任せますか!? いや、でもそうだよな……全部ライトに頼ってたらトレーナーの名折れ! やってやろうではないか!」
「なるほど……ご主人、俺は行くッス! やる気マックスッスよー!」
「じゃあ……私はレフェリーをやらせてもらいましょうか。草タイプである私だと、ちょっと不利な相手が多そうですし」
「ぬむぅ、なるほど。よし分かった、リーフにはジャッジを頼むぞ。で、ソウはメンバーインであと二匹は……」

 ふむ、真剣に考えてるようだし、後は任せるかね。で? リーフは一体何を企ててるんかね? なーんかさっきから喋ってなかったし、急にバトル参加をしないって言ったりしてるしな。
リーフも俺にどうやら目配せしてるようだし、聞いてみるとしようか。
残り2枠を議論してる面々から三歩引いて、リーフに近付いた。俺に話すって事は、カランについてかね?

「……気付いてくれましたか」
「まぁ、な。で、何をするつもりなんだリーフ」
「ライトさんには少し、カランさんのバトル後の癖について話しておこうと思いましてね」

 バトル後の、癖? バトル後なんて、そうがたがた言える事は無いと思うんだがな?

「カランさんさっき、ご主人との戦歴を言っていきましたよね? あれは確かにそうなんですけど、実はその内の何戦かは、本当はご主人が勝ったか引き分けだった勝負なんです」
「? どういう事だ?」
「所謂、相討ちって奴になっちゃった勝負があったり、内容的にご主人が負けていたけど、急所に偶然当たった一撃でレオさんやフロストさんが連続KOを決めてしまったりした勝負があるんですけど……そういう勝負だとカランさん、納得出来ないとかで試合内容で勝負を決めようって言い出すんです」

 お、おいおい……そんなのありかよ。そりゃあ納得出来ない負け方ってのはあるかもしれないけどよ、世のトレーナーはそれで泣いたり喜んだりしてるんだぞ? それをお前自分が納得出来ないからって捻じ曲げるかよ……嫌になるねぇ。

「そして、今回ライトさんが出るとなると、状況に寄ってはそれがまた発動される可能性もありますからね。だから」
「それをさせない為のあの提案って訳か。なるほど、納得したぜ」
「……私だけ薄情だと思われちゃうのも寂しいですけど、そういう役回りも必要だろうって思ったんですよ」
「で、事情を納得してくれそうな俺に伝えておこうと思った、と。……自分から美味しくない役をやるってのは、誰にだって出来るもんじゃねぇよ」
「ふふっ、ライトさんならそう言ってくれると思いましたよ。まぁ、今ライトさんに話したのは、せめて誰かに褒めてもらいたいなーって思ったからなんですけどね」

 とかなんとか言って、重要な情報を教えようって裏があったんだろうさ。俺が知らんところの手を打ってくれてるとは、恐れ入ったぜリーフ。
オーライ、よーっく分かったぜ。こりゃ、ちっとカランには世の中の厳しいところを教えてやらんとならないようだな。なら、教えてやろうじゃん? 世の中全部が自分の思い通りになる事はありえないって事と、上には上が居るって事をな。

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 バトルステージはこの家の庭、か。まぁ、ここなら俺が多少暴れても他の誰かの目に触れる事はねぇか。
現在ポケモンは、俺とリーフが庭に居る。それと……枠から漏れちまったプラスが、しょんぼりしながら窓の張に腰掛けてるぜ。
それ以外のメンバーとカランの手持ちの連中はボールの中だ。バトル前に相手に何が来るかを教えるような事は、そりゃしないわな。

「それでは、今回は私がレフェリーとしてこのバトルのジャッジをさせて頂きます。バトルルールの確認は……必要無いですよね?」
「俺は無いぞ!」
「あたしも無いわ。っと言うか、リーフちゃんは勝負に出ないの?」
「はい。ご主人の手持ちは現在8匹なので、今回のルールだと二匹はバトルに参加出来ませんから。代わりに、こうしてレフェリーをやらせてもらいます」
「俺は今回参加させてもらうが、生憎ボールの中に居るのは嫌いなんでね。出番以外もこうして出させてもらうぜ」

 プラスは落ち込んでるからか、俯いて足をぶらつかせてるな。……ちっとだけ、元気付けてやるか。
俺が言っても基本は反応しないだろうが……今回は特別に軽く本気で戦うんだ。サービスで見せてやろうと思ってね、電気の使い方って奴をな。

「よぉ、プラス。元気ねぇじゃねぇか? 下なんか向いてよ」
「……煩いよー……」
「拗ねるなって。それに、下向いてたら損するぜ? 今回の勝負で、おめぇには見せてやりたいもんもあるんだし」
「え? なんだよそれー……」
「今回だけだからな? サービスで、俺の電気の使い方って奴……見せてやるよ」
「ライトの……電気の使い方?」
「おう。普段じゃ滅多な事が無ければ見せてやらんからな、見逃してももう一回は無しだぜ」

 ははっ、顔を上げたかと思ったら、妙に真剣な顔し始めたじゃねぇか。ま、俺が見せてやるって言ったのは、電気で出来る事の提示だからな。プラスが応用で出来る事もあるだろう、それを見越しての提案さ。
これでプラスの機嫌も少しは良くなるだろ。後は、この勝負にケリを付けるだけだな。さぁて、やってやるとするか。と言っても、俺の出番はまだまだ先だがな。
っと、目を離してた間に勝負が始まりそうだな。どれ、まずはハヤトの奴の戦いでも見ててやるとするかいね。

「それでは……バトルスタートです!」
「行くわよ、ナックル!」
「頼むぞー、レオ!」
「え!?」

 ふむ、手始めの予想はドンピシャだな。まさか初手でレオが出てくるとは思ってなかっただろうから、カランの奴動揺してるぜ。

「先手だ! レオ、火炎放射!」
「承知!」
「ま、不味い……ナックル避けて!」
「くぅぅ!」

 カイリキーはパワーこそ一級品だが、そのあり過ぎる筋肉の所為でスピードはそう伸びない。避けるには、相手の技の出始めを見切る必要がある。
それをレオも周知だろうさ。現に、火炎放射を出すタイミングを一瞬溜めて、カイリキーが動いたところに合わせて火を浴びせかけた。ジャストヒットだな。

「ぐあぁぁぁ!」
「よぉし! レオナイス!」
「嘘ぉ!? ナックル大丈夫!?」
「くっ、う……」
「流石に一撃では落とせんか」

 が、かなりの痛手を与えたのは確かだ。もう一押しであいつは落ちるだろ。

「うぅ~、最初にレオ君を出してくるなんて……でもタダではやられないから! ナックル、集中して。一撃、決めるわよ!」
「一撃……? 何をする気だ?」
「ここは、一気に畳み掛けるぞ! レオ、火炎車だ!」

 こくりと頷いて、レオは背中から炎を出した。俺が覚えてる内で、カイリキーが相手を一撃で倒せるような技は無かった筈だ。それにあの構えからしてあれは手での打突系……何をする気だ?
炎を纏ったレオが回転を始める。これに手を出すって事は、相討ち覚悟の一撃か……あ、不味いかも。

「レオ、いっけぇ!」
「来る……ナックル、毒突き!」
「うぇい!?」
「なるほど、そういう事か」

 やられるにしても後のメンバーを楽にする為に、か。毒を受けるのは、流石にレオでも不味いやもしれんな。
案の定、レオの火炎車はナックルって奴を捉えた。が、ナックルって奴が繰り出した手刀もレオを捉えちまったか。この一撃を当てるだけに狙いを絞って力を溜めてたんだ、そらそうなるわな。

「うぐぁ!」
「くぉっ!?」
「レオ!?」
「ごめんナックル……でも、ありがとう」
「置き土産にしても、ちと高くついたかねぇ……」

 ナックルって奴はボールに戻った。が、レオの様子を見た感じだと毒を受けちまったようだな。こっから無茶出来なくもないが、一匹KOした時点で役目としちゃあ上出来だな。

「くっそぅ、物理技じゃなくて火炎放射にしとけば……」
「火炎に突っ込んできて、毒突きだけはきっちり当ててきただろうな。まぁ、仕事は果たしただろうよ」
「うぐ……だ、だが、まだ」
「いいって、休んでろよ。カイリキーを落とした、これでイニシアチブとしては十分だって」
「……すまん、ならば……後は頼む」
「おう。って事だ、レオはリザーブに回しておけよ、マスター」
「だな。助かったレオ、サンキューな」

 毒で弱りながらも、少しだけ笑みを作った後、レオはボールに戻った。どれ、このバトルが終わった後に治療してやるとするか。
カランは、レオが引っ込んで一安心ってところか。が、こっちの厄介な要素であったカイリキーは潰れた。状況としてはこっちが俄然有利だぜ。

「なら次は……お願い、シェイド!」
「レパルダス、だったか……さぁて、何タイプかね?」
「ここは……頼んだぞ、レン!」

 うん、悪くない選択だ。俺が仮定した通りのタイプなら、奴はノーマルか悪。それのどちらであってもレンなら弱点を突ける。磐石だな。

「くっ、ここでレンちゃんね……シェイド、猫だまし!」
「ルカリオかぁ、喰えるかなぁ?」
「レン、相手の動きをよく見ていけよ」
「うん、分かってるよ」

 シェイドって奴、妙にゆっくり近付いてくるな……なるほど、不意打ち系の技か。
予想通り、とことこ歩いてきたかと思ったら不意に駆けてレンに迫ってきた。が、今のレンにそんなもん当たらんぜ。
シェイドの動きを十分に引きつけて……最小限の動きで体を外して、避ける。レンだって伊達に俺の戦闘指南を受けてた訳じゃない。これくらいならもう朝飯前だぜ。

「え、猫だましを避けた!?」
「嘘だろ!?」
「レン、やっちゃいな!」
「ごめんね、はぁぁぁ!」

 気合いと共にアッパー一閃。技としてはインファイトを直撃で喰らったんだ、仮にタイプが違ったとしても、無事じゃあ済まねぇよ。
振り抜いたレンの腕の直線上を、放物線を描くかのようにシェイドが舞う。……ありゃあ合掌もんだな。南無南無。

「し、シェイドー!?」
「……あらら、一撃でノビちゃったな」
「タイプ一致のインファイトがクリティカルに入ったんだ、これで立てたら大したもんだぜ」
「あぁー……やり過ぎちゃったかな?」
「いいんでねぇの? バトルってなぁそういうもんさ」

 どさりと音がして、シェイドって奴がボールに戻っていった。うーん、ほぼ一瞬でカタが着いたから、どんなポケモンなのか結局分からんかったな。ま、いいか。
しっかしレンも強いよなぁ。ちょこっと俺が手解きしただけでこんだけ戦えるようになるとは思ってもみなかったぜ。才能ってのは怖いやねぇ。
さて、これで戦況は6対4、数としてはこっちが俄然有利だな。と言っても、レオは厳しいだろうから実質のこっちの数字は5だけどな。
これなら俺が出るまでもねぇかもしれねぇな。と言っても、まだカランにはあのシノビって奴が居る。あれの相手はちときついだろうし……出るとしたら、俺は奴を倒す事になるだろうな。

「よーし! ほぼ無傷で勝てたし……」
「阿呆、よーく考えろよ?」
「……はっ! なるほど危なかった……サンキューライト」
「全く、ちょっと調子良かったら油断するんだもんな。頼むぜ?」
「オーライ。レンサンキュー! ちょっと戻っててくれ」
「うん。分かったよ」
「え、レンちゃん戻しちゃうの? ほ、ほら、あたしのシェイドはすぐやられちゃったんだしそのままでも……」
「お前の作戦なんて、全部お見通しだ! この兄貴、今までの愚策な兄だと思ってくれるなよ?」

 俺が言わなかったら愚策晒してレンをピンチにするところだったろうに……やれやれだぜ。
大方、レンがその場に残るんならカランはコロナ、ブースターを出してきただろう。レンなら倒せなくもないだろうが、炎を盾に戦われると厄介だ。しっかり確実に行こうじゃねぇか。
この手のルールのバトルは、一度相手に見せたポケモンは相手もしっかり対策してくる。だから、一戦一戦ポケモンを変えるのが定石よぉ。ま、こっちに交代する余裕があるならって事になるがな。

「くぅぅ~……いいもん次! 頑張って、ミーノちゃん!」
「よぉーし! ってあれ、ミーノってあのなんか丸い緑のだっけ?」
「だな。クルマユ、とか言ってたっけな」
「うーん……ここはソウに任せてみるか。よし、ゴー!」

 見た感じゴーストや格闘タイプには見えんから、ソウって選択も悪くはない。ノーマルタイプの良い点は、ほぼどんなタイプにでも汎用に対応出来る事だからな。
出てきたが……ジト目ってのかねありゃ? 目付きはそんなに良くねぇよなぁ。それに体をカバーするような葉っぱみたいなのにくるまってるし……防御耐久型のポケモンか?

「ソウ君か……よしミーノちゃん、落ち着いて行くわよ」
「相手は未知数のポケモン……だが! 様子見してても始まらなーい! ガンガン行くぞ、ソウ!」
「了解ッスー!」

 ミーノって方は頷くだけか。無口なのかね? さて、お手並み拝見と行かせてもらうか。

「ソウ、剣の舞アイティブモード!」
「行くッスよー!」
「アクティブモードって何?! と、とりあえずミーノちゃん、守る!」

 やっぱり見た目通りの防御型か……となると、持久戦で相手を倒すタイプかね? だとすると気を付けんとならんのは毒、だろうな。ってかアクティブモードってなんだよ。そりゃあ、攻撃も兼ねてるから普通の剣の舞じゃねぇけどよ。
が、攻撃はしっかり葉っぱに包まってガードか。あの葉っぱに力を集めて盾の代わりにしてんのね。なるほどねぇ。

「くっ、やるッスね……」
「だが攻撃力は上がった! 次は……メタルクローだ!」
「そう簡単には行かないわよ! ミーノちゃん、草笛!」

 草笛? てっきり毒々辺りを使ってくるかと思ったら眠らせに来たか。まぁ、眠らせるのもなかなか効果的ではあるがな。

「ほぇ? な、なんだか……眠、く……」
「ソウ!? やられた、睡眠技か!」
「ほぉ、効果が出るのが早いな……草笛は確か、旋律をきちんと聞かせないと効果が出ない筈なんだがな」
「ふっふっふー、眠らせちゃえばこっちのもの。ミーノちゃん、そのまま草結び!」

 眠らせた者を草結びで動けなくする、か。なるほど、戦略があのミーノとかいう奴の力を引き出してる。カラン、優秀だとは戦う前に聞いたが、なかなか考えてるじゃねぇか。
こりゃあ、ちとソウにはこっから巻き返すのは難しいかね? こういう状態からの返しって、俺教えた覚えねぇし。うーん、すまんなソウ、師匠の教え不足だった。

「オッケー、それじゃあいつも通り、ソーラービームの準備よ!」
「うわぁお!? ソウ起きろ! 寝たら死ぬぞー!」
「雪山じゃあるめぇし……だが、これはしてやられたな」

 リーフがそわそわしつつ俺を見てるが、小さく前足でバッテンを作って見せるしか俺には出来ねぇな。流石にバトル中にバレずにレスキューするのは無理だわ。
あぁ、めっさショックな顔させちまった。すまんな……後でソウの事をたっぷり介抱してやってくれ。
ミーノって奴のチャージ、終わったな。……これまでの見た感じ、ポケモンの実力はハヤトのが上だが、戦略を練るのは向こうのが有利だな。瞬発的な作戦立案も上手いし、確かに優秀なトレーナーだ。

「よーし、発射ぁ!」
「ち、ちょっと待ってー!」
「んがっ? 何の光ッスがほぉぉぉぉぉ!?」
「ぁぁぁ……そ、ソウ君……」
「仰向けに寝てるところに撃ち下ろし気味の一撃とか、えぐいなー」

 無防備な状態でんなもん喰らえば耐えられん……ん!? 照射が止まったのにソウがボールに戻らんぞ? ま、まさか耐えたのか!?

「が、は……でも……まだ……ッス……!」
「そ、ソウ……」
「リィっちも、師、匠も! 俺っちが……守る……ッス!」
「……全く、師匠思いの……馬鹿弟子だぜ……」

 それだけ言って、流石に倒れたか。直撃のソーラービームを食いしばりで耐えたんだ、一度立ち上がっただけで十分だ。
やれやれ、こんだけのガッツを見せられたら、負けられん理由が増えちまうじゃねぇか。しょうがねぇなぁ。
しかし草笛にソーラービームか……間違い無く草タイプを有してるのは分かったな。なら、こっちのメンバーでも対処出来る。が……草タイプの弱点を突けるのって、レオを除くとあの方ですよ? ちっと可哀想だなー。
よし、クルマユについての大まかなデータは取れたぜ。どんな手品も、タネが分かればどうって事は無くなるってもんさ。
ん? ……ははーん、カランの奴、リィやソウの様子を見て迷い始めたな? そらそうだ、あんだけはっきりとした決意と覚悟を見せられれば、誰だって迷うに決まってるよな。

「むぅぅ、ソウの思いはしかと受け取った! 次は……行くぞフロストー!」
「…………」
「カランさん……? 交代は無しですか?」
「あ、えっと……ミーノちゃん戻って。次はコロナ、お願い」
「まぁ、そうなるわなぁ」

 幾ら迷ってても勝負を投げないか。まぁ、そらそうだわな。

「よっと。はぁ……コロナが相手なのねぇ……」
「ん? カラン、どうかしたの?」
「あ、その……ううん、なんでもない、なんでもないの。行くわよコロナ」
「う、うん」

 グレイシアのフロストじゃ、ブースターのコロナには決定打を与えるのは難しい。技的にもな。が、逆は決められるとなると、これは悪手としか言えん。
ま、ハヤトの奴ちらっとこっちを見た辺り、俺にあのコロナって奴の実力を見せるのが目的みたいだがな。ついでに、リィを温存するっていうのも目的だったんだろうがね。

「……フロスト、すまん」
「ふぅ……ま、後にはあれも控えてるんだから、たまには捨て駒役も悪くないって事にしておくわ」
「先制行くわよ! コロナ、炎の渦!」
「姉さんごめんね。でも、勝たせてもらうよ!」

 炎の渦か。久々に見たが、俺の師匠のに比べたら炎の密度が薄っぺらい渦だねぇ。まぁ、師匠も大概な実力者だったからな、それと比べちゃ可哀想か。はっきり言って、炎タイプで言えばレオより遥かに強かったし。
それがフロストを捉える……事は無かった。まぁ、電光石火を回避に使うってなぁ俺との勝負で使ったんだ、大抵の攻撃なら避ける事は出来るだろうさ。

「悪いけど、タダで負けるつもりは無いわよ」
「な!? う、後ろ!?」
「え!? そんな、フロストちゃんにはそんな素早さは無い筈なのに!」
「ステータスだけが、ポケモンの能力を決める訳じゃないってなぁ! フロスト!」
「とはいえ、時間稼ぎがいいところなのが残念よね……」

 手始めに氷の飛礫を飛ばしてるが、コロナに近付いていくにつれて溶けて小さくなっていく。無論小さくなれば威力も下がる訳で、当たる頃には小石程度にはなっちまうよな。

「うーん、やっぱりダメね。まぁ、分かってた事だけど」
「なんで姉さん、そんなに落ち着いてるの?」
「後を任せられるメンバーが居るからね。せいぜいPPだけは削らせてもらうわ」
「じ、時間稼ぎ? 兄さんの連れてるポケモンでも、フロストちゃんは凄く強いのに?」
「確かにフロストもレオも強いさ。でもな、今までみたいなレオ達に頼った戦い方は止めたんだ。皆で強くなる、それが一番大事だって教えてくれた奴が居るからな」

 ははっ、言うようになったじゃねぇか。俺と戦りあったり、メンバーが模擬戦してんのを見てこいつのトレーナーとしての力も喚起されたかね。
認めてやるよ、ハヤトの奴もトレーナーとしての気位が出来てきたって事はな。だが、実力はまだまだだ。もっと精進しねぇとな。
そのままフロスト対コロナ戦を見ていたが……正しく時間稼ぎだな。電光石火は技の使用回数も多いから、回避に使うとかなり優秀なんだよな。まぁ、基本的には相手を攻撃する技だから、回避に使うっていう発想をするのかが鍵だがな。

「なんでコロナの攻撃が当たらないのか、ようやく分かったわ。兄さん、フロストちゃんの電光石火を攻撃を避ける為に使ってたのね」
「10ターン以上使ってようやく分かるとは、まだまだだな妹よ。お陰でコロナの技を大分削れたぜ。それに、お前ではフロストの電光回避を防げまい。そのまま技を出せなくなってしまえぃ!」

 実際、この回避を俺も攻略した訳じゃないからな、ただ隙突いて倒しただけだし。動けなくなる普通の防御技に比べてかなり優秀だそ。
けど、カランの奴は何かを思いついたみたいだな。さて、この回避をどうやって攻略するかな?

「回避の仕組みが分かればどうにか出来ないものじゃないわ。コロナ、集中!」
「行くぞフロスト、コロナの技を封じるんだ!」
「そう上手くいけばいいのだけど」

 ふぅむ、ブースターの使える技は俺もある程度知ってるが、実はコロナは、ここまでの10数ターンを炎の渦と噛み付くくらいしか使っていない。後二つを温存された状態なんだよな。それに阿呆は気付いてるんかねぇ?

「コロナ、噴煙!」
「ん!? なんだ?」
「熱っ!? くっ」
「熱を含んだ煙での攻撃か、確かコータス辺りが得意な技だったがな」

 範囲攻撃で行動を制限、か。なるほど、セオリーな良い戦法だ。それなら動く事で回避をする電光石火は使えない。丁度フロストの左右移動を出来ないように煙を出したようだした。

「……ふぅ、ここまでね。後は頼んだわよ……」
「これでもう回避は出来ないわね! コロナ決めるわよ、フレアドライブ!」
「ほぉ、良い技使えるじゃねぇか。……すまねぇ、フロスト。助かった」
「ごめんね姉さん。決めるよ!」

 自身にダメージを与えちまう程の火炎を纏った体当たり。シンプルだが、レオの火炎車の上位に該当する技だ。受ければ氷タイプじゃ一堪りも無い。
けど、直撃を受ける気はねぇようだな。僅かに飾り毛が揺れてる辺り、凍える風を発動してるようだ。ついでに、噴煙をどうするかのヒントのつもりだろうな。
俺がそれを理解したのを確認したのか、静かに笑ってコロナの纏う炎を受けた。全く、信頼されたもんだねぇ俺も。

「フロストさん、ダウンです」
「ふぅ……これで残ってるポケモンの数は一緒ね」
「ぐ、ぬぅ……だがまだ、こっちには切り札が二枚ある!」
「それを言うなよ阿呆」
「ふぅん、って事はやっぱりリィちゃんは強いんだ。ライト君は……そんなに強そうに見えないけど?」
「も、もう何も言わないぞ! ……よし、次は……頼むぞ、リィ!」

 ふむ、ここでリィか……データの揃ってないシノビって奴以外は多分問題無いだろう。どれくらいリィの力が増したか、見せてもらおうか。

「リィちゃんね。それじゃあ……コロナ、続けて行けるわね」
「大丈夫だよ。エーフィか、一撃を決められれば……行ける!」

 ところがどっこい、リィにはそれをやるのが難しいぜ。まぁ、耐久型じゃないのは認めるがね。
ハヤトのボールから出てきたリィは、見てるだけで分かる。集中してるが、まるで波の一切立ってない水面みたいに冷静だ。

「……ん、最初はコロナさんか。よし、戦ろうか」
「な、なんだ? リィからなんとも言えないただならぬ気配を感じる……」
「へぇ、お前にも分かるか。あれだけの覇気を纏えるとなると、一皮剥けてリィにも余裕が相当出来たみたいだな」

 心に余裕があれば視野は広くなるし、柔軟な思考も出来る。そして、自然と相手の力を感じられるようになるもんだ。恐らく今のリィも、コロナを危険な相手だとは思ってないだろうな。

「な、なんだろうこの感じ……カラン、気を付けて!」
「え? どうしたのコロナ?」
「ふぅん、あの戦略はどうやら知識から来るもんが大きいみたいだな。リィの気配に気付けないって事は、まだ未熟」

 その点、同じポケモンだからってのもあるかもしれんが、コロナの方はやっぱり悪くないようだ。

「来ないの? なら、こっちから行こうか。ハヤトさん」
「お、おう! そんじゃあリィ、念力で先手と行こうか!」
「了解。行くよ、コロナさん」
「カラン、指示を!」
「う、うん! コロナ、噛み付くよ!」

 あらら、リィの念力に物理攻撃で挑むか。まぁ、ブースターの特防の数値は低くない。念力くらいなら問題無いと考えたのかもしれんが、甘いな。
向かってくるコロナに対して、リィが座ってる状態からすっと前足を出した。……まさかあれ、俺の電磁ショットの真似、か?
尻尾がゆらりと揺れて、前足の先に出来た念力の弾が、撃ち出された。速い、それに念力なのに目視出来る! あれは喰らったら痛いぞー。

「な、うあぁぁ!?」
「何!? 今のって念力じゃないの!? コロナが弾かれるなんて!」
「……うん、イメージした通りに力を使える。なんだろう……もっと色々な事が出来そう」
「わーお……なんかリィの力、異様にパワーアップしてない? ライト先生」
「パワーアップっつーより、今までリィの中に蓄積されてたけど使われてなかった部分の力が開放された、って感じだな。こりゃあちっとスゲェぞ」

 日々、リィは訓練や模擬戦を欠かした事は無い。その弛まぬ努力は確実にリィの血肉に、力になってきたんだ。俺と戦った時に出したあのサイコキネシス、あれがもう物語ってた事さ。
けどリィはそれを、心の片隅で封じていたんだ。まだ強くならないといけない、自分はまだ強くないっていう意識でな。
それを戦うっていう自分の意思で解いた。自分の守りたいものを守るって為にな。だからこそ、暴走せずに力をコントロールしながら開放出来たって訳だ。
こうなったら流石にあのコロナじゃリィの相手は荷が重い。が、交代する事も出来ない。……終わったな。

「よ、よーしリィ! 一気に行っちゃいな!」
「分かった。コロナさん、悪いけど決めさせてもらうよ」
「くぅ……けど、俺だって簡単にはやられない!」
「そうよ、コロナは私の手持ちのポケモンのリーダーなんだから、簡単にはやられてあげないから! コロナ、噴煙!」
「そうよ、コロナは私の手持ちポケモンのリーダーなんだから、簡単にはやられてあげないから! コロナ、噴煙!」

 ん、フロストを倒したコンボをするつもりか? 確かにあのフレアドライブが直撃すればリィも無事って訳では済まないだろう。さぁ、どうするリィ。
フロストの時のように、熱気を溜め込んだ煙がリィを包囲する。キョロキョロしてるが、あまり驚いてないみたいだな。

「逃げる場所を奪っての大技、か。ふふっ、僕もライトにやったよね。ちょっと形は違うけど」
「そういやそうだったっけな」
「お喋りをしてる余裕は、無いよ!」
「行ってコロナ! フレアドライブ!」
「わぁおぅ!? リィ、避けろー!」
「うん、分かった」

 そう聞こえた後、炎を纏ったコロナが突っ込んできた。このままじゃリィに当たる……なんて事、今のリィには心配する事は無さそうだな。
不意に、リィの体が浮き上がって、そのままコロナを飛び越えた。前足を伸ばしてる? いや、あれは……。

「え!? と、飛んだ!?」
「わお!? どうなってるんだ!?」
「よく見てみろ、リィの伸ばしてる前足の先をよ」
「あれは? あ」
「よっと、どうも自分の体にサイコキネシスは使えないみたいだけど、他の物を操作してそれに乗れば僕も飛べるみたいだね」

 着地したリィの前足の上に載ってたのは、小さめの石だった。なるほどな、あれを念で操作して飛んだのか。考えたな。
標的であるリィを外したコロナは、勢い余って転がってるぜ。自分もダメージを受ける技は、外すと完全に自爆技だからリスクも大きいんだぜ。

「くっ、そんな……」
「ごめんね。でも、それで終わりだよ」
「え? あ! コロナ逃げてぇ!」
「ハイドスター、ってところかな」
「な、うわぁぁぁぁぁ!」

 いつの間に……コロナが出した噴煙の中から次々に星型の弾が飛んでくる。間違い無くリィのスピードスターだ。なんかもう設置型のトラップみたいになってるな。
威力はそう高くない、と言っても今のリィの力で放たれる特殊技だから大分強力だろうが、それが四方からコロナ目掛けて発射された。それを疲労して体制の整ってない状態で喰らい続ければどうなるかはお察しだな。
弾が止んでコロナの姿は確認出来た。が、すぐにその場に倒れてカランのボールに戻っていった。フロストが多少削ってたとはいえ完全なワンサイドゲームとは……リィの力には限界が無いのか?

「さぁ、バトルを続けようか」
「ふぉぉ……なんかリィがライトとダブって見える……」
「こりゃあ、プラスにはああ言ったが、俺の役目はねぇかもしれねぇな」
「うぅぅ、コロナがやられちゃうなんて……ま、まずは少しでもリィちゃんを弱らせないと。お願い、ミーノちゃん!」

 っと、シノビやスカイじゃなく、一度出したミーノを出してきたか。けど、草タイプじゃエスパーのリィは止められんぞ。

「交代は……」
「大丈夫、僕がやるよ」
「……分かった、続投だ! リィ、カランのあのミーノって奴は草笛でこっちを眠らせてくる、気を付けろ!」
「了解。草笛って事は、音か……」

 そう、草笛はその音色に自分の力を乗せて、それを聞いた相手を眠らせるって技だ。さぁ、どう対処するリィ。

「ミーノちゃん、草笛!」
「来た、リィ!」
「なら、これでどうかな?」

 な、あれは……ミーノの奴の周囲を草が覆っていく!? これもリィの力か!?

「あ、ごめんリーフ姉ぇ。ちょっと庭の芝とか草、使わせてもらっちゃった」
「草とか芝って……」
「リーフウォール、技名を付けるならそんな感じかもね。念で草を集めて、簡易的な壁を作らせてもらったよ。音は空気の振動だから、こうしちゃえば届かないよね」

 一つの対象を操作するだけじゃなくて、念に一定の物質を集めたって事か! 簡単に言えば磁石の原理だが、ちょっと簡単な念操作じゃねぇぞそれ!
しかもその壁でミーノって奴を包んじまった。そんな中で音で相手に影響を与える技なんか使ったら、どうなるかは分かってるわな。
しばらくそのままにしてたと思ったら、パラパラと壁を作っていた草が散らばり始めた。持続力はそう長くないみたいだな。

「ふぅ、これは結構疲れるかな……多用は出来ないか」
「いや、効果的に使えば十分な時間だぜ。今回みたいにな」
「ミーノちゃん!? お、起きてー!」

 草の壁の中で草笛を吹いちまったから、反響して自分がその音を聞いちまったんだな。って事はそれだけしっかりした密度の壁を成形したって事か、やるねぇやるねぇ。

「うん、まだまだ出来る事ありそう。もっと、色んな物を掴むように、繋ぐように!」
「わぁーおぅ……相手の技をあんな方法で返しちゃうなんて、リィすげー!」
「どんな力も、使い手の発想によって無限に変化していく。リィは掴んだみたいだな、その糸口を」

 エスパーの念は、それこそ使い手の望む形を作り出せる最たるもんだ。こりゃあ、リィはこれからとんでもなく化けていくぞ。それこそ、俺や師匠クラスまで伸びるやもしれん。侮れんなぁ。

「でもリィさん、今は勝負の方をお願いしやす!」
「っと、そうだった。んー……これくらいでいいかな?」

 前足を上にすっと伸ばして、その先にまた念で弾を作ったみたいだ。今度のは可視出来ないって事は、威力としては低めかね。
それを投げるように振って、ミーノへ念弾が……着弾! 丸っこいからころころーっと転がって、そのままボールに戻っていったな。完全に実力に差が有りすぎるぜ。

「そ、そんな、2連撃破なんて」
「よし、良い感じ」
「ほぁー……リィちゃん、なんだかとっても強くなっちゃってますね」
「この勝負には賭けてるもんもあるからな。リィの精神状態がこれ以上無いってくらい覚醒した状態にあるってのも大きいだろうな」

 いやぁ、今のリィなら後の二匹も喰っちまえそうだな。でも、それはちっと俺に譲ってもらうかな。プラスとの約束、守ってやらんとならんし。

「よぉし、後二匹! このまま……」
「ちょい待ち。折角だ、俺にも少しは見せ場をくれよ」
「え、ライト?」
「構わないだろ、リィ。後の二匹は俺にやらせてくれよ、な」
「……うん、分かった。その代わり、ライトの格好良いところ見せてよね」
「おうともさ。プラスもよーく見てろよー」
「なんだよー、ずっと待ってたのに、ライト遅過ぎー」

 結構期待して待ってたみたいだな。そりゃあ申し訳無い事をした、それなら……ショーの幕開けと行きますか。

「うぅぅ、そんなぁ……もー! もうちょっとくらい手加減してよぉ!」
「アホか! 賭けバトルなんか挑んできたお前が悪いんだろ! お前の敗因は二つ、リィを怒らせた事と……この二匹を勝負の場に出させた事だ!」
「なーに格好つけてんだよ。ほら、行くぞマスター」
「オッケイ! リィはライトの戦うところ見てたいよな? ならこのままライトとリィをチェンジだ!」
「ならこっちは……ごめんスカイ、頑張って!」
「……やっと出番かと思ったら相手はサンダース、なんだこれ、なんのイジメ?」

 それもただのサンダースじゃなくて俺って言うね。まぁ、ドンマイ。
さって、一般的なピジョットのデータなら入ってるが、スカイだっけ? こいつについてのデータは無いからな、油断はせずに行こうかね。

「スカイ、まずは追い風!」
「そっちにとっては向かい風だぜ!」
「ご親切に教えてくれてどーも」
「ライト、余計な指示なんて邪魔だろうから、出す指示はたった一つだ。……勝とうぜ!」
「オーライ、シンプルで良い指示だ。じゃあ、勝つとするか」

 勝とうぜ、か。ははっ、分かり易い奴だな。だが、嫌いじゃないぜ、そういうの。
追い風は一定時間風を発生させて、それに自身を乗せて加速するって技だったな。まずはこっちのスピードに対抗しようって腹積もりか。

「更に高速移動! それだけ上げれば、幾らサンダースでも反応しきれない筈よ!」
「あぁ! 俺のスピードについて来れるか!?」
「ほぉ、速ぇな。スピード勝負のピジョットか、まぁポピュラーな方だわな」

 風に乗って旋回するように飛び回る、か。その状態から物理攻撃に移行するのは考え難いから、攻め手は特殊技だろうな。予想はこんなもんだろう。

「攻めるわよ、エアスラッシュ!」
「喰らえ!」
「ふむふむ、追い風でエアスラッシュ自体も加速させるか……考えられた良いコンボだ」

 翼から放たれた空気の刃が俺目掛けて飛んでくる。いつもなら電磁ショットで撃ち落とすが、今日はサービスだ。

「……シールドボルト」
「へ!?」
「な……電気でエアスラッシュが防がれた!?」
「直線に飛んでくる攻撃なんて、そう簡単に当たってやる訳無いだろ? 貫通性の無い技なら、間に薄い電気の層を作ってやれば幾らでも防げるさ」

 そう、今やったのは説明通りの事さ。薄い電気の膜を、体から一定の距離までで展開して盾にする。電気の密度の薄い濃いで、大抵の特殊技は防げるぜ。
呆気に取られてる暇は無いぜ? 次来ないなら、こっちから行っちまうぞ。

「どうした、もう終わりか? ならこっちから仕掛けるぜ」
「はっ! スカイ、飛び回って的を絞らせないで!」
「分かってる!」

 加速するのはこっちの特殊技の的を絞らせないようにするってのも狙いだったか。確かに高速で飛び回られたら狙いを絞れんわな、普通は。
このまま飛び回られるのも鬱陶しい事だし、まずは降りてきてもらうか。その為には、まずはマーカーを付けないとな。
右前足は銃に見立てて飛び回るスカイを狙う。左前足は固定の為に右前足に添える。電気の一部はシールドに回して、よーく狙ってと。

「な、そんな風に足を止めるなんて……スカイ、攻撃よ!」
「動かないサンダースなんて、電気タイプでも怖くなんかないね!」

 余計な雑音は聞き流させてもらう。エアスラッシュはシールドで全弾防げる、偏差射撃にはなるがよく狙ってと……。
後ろに回り込んで撃っても無駄無駄。技が近付いてくる気配で丸分かりだぜ。どれだけやったって、そのエアスラッシュじゃ俺のシールドは破れんよ。
相手は風に乗って移動するって方法を選んだ時点で、滞空行動ってのが出来なくなってる。だから、照準を動かして追うんじゃなくて、狙えるところに来てから撃てば……。

「そこだな」
「んぐっ!? あ、当てただって!?」

 よし命中。これで奴はいつでも引き摺り落とせる。さて、どう料理してやるかな。

「だ、大丈夫よスカイ、足に掠っただけよ」
「それが命取りになるんだぜ。よっと」
「なんだ、電気? でもそんな遅いの、当たらないよ!」
「そうかい? 当たらないんなら……そっちから来てもらうか」

 俺がさっきスカイに付けたのは、マーカーボルト。磁石で言うN極に該当する性質を持つ電気だ。おまけに、すぐに散らずに当たった物や場所に帯電される性質を持ってるんだよ。
それに向かって俺が伸ばしたのがチェインボルト。当たった相手を軽度の痺れで拘束して、俺の方へ引き寄せる性質を与えた電気だ。これに磁石のS極の性質を与えたらどうなるか……ま、分かってくれるだろう。

「う、うわ!? 引き寄せられる!?」
「何? どうしたのスカイ!」
「だ、ダメだ、逃げられない!」
「だろうさ。そういう性質の電気だからな」

 んじゃあ引っ張ってと。飛べなくなった鳥はどう立ち回るか、見せてもらおうかね。

「うわぁぁ! っく」
「はい、一丁上がりっと」
「うぉぉう、淡々と仕事をこなすねライト先生」
「勝つ為の一手ならそりゃあするさ。さてマスター、地に落ちた鳥はどう料理すれば美味いと思う?」
「そうだなぁ、ソテーなんかも捨てがたいが、焼き鳥も悪くないよな」
「ひ、ひぃぃ!? く、くくく食われるぅー!」
「落ち着いてスカイ! もう兄さん、変な事言わないでよ! スカイ怯えちゃったじゃない!」
「アホな妹め、それが狙いに決まってんでしょー? お前はバトルを単なる技の出し合いだとしか思ってないだろ。けど、バトルに勝つには心理戦も必要なんだよ」

 したり顔で言ってるが、こいつもそれが分かり始めたのは最近だよな。今だって俺が誘導してやってやっと分かったようだし。
とにかくこれでスカイは隙だらけになったと言える。後は野となれ山となれ、ってな。

「食いはしないが、仕掛けさせてもらうぞ」
「く、くそぉ、このままやられてたまるか!」
「そうよスカイ、落とされちゃったってまた飛べばいいの! その為には……鋼の翼でライト君を怯ませて!」
「やってやる! 行くぞぉぉぉぉ!」
「勇敢だねぇ……だがそれは、同時に無謀とも言えるさな」

 翼に鋼の力を纏って叩きつける。シンプルだが鳥ポケモンが使える技で攻守共に役に立つ良い技だぜ。それに、多少羽にダメージの行きそうな行動をしても羽を傷めないからな。
不慣れだろう地面を蹴って走るスカイを見据えて、その一撃に集中する。振りかぶって、横薙ぎの一撃が来る。
それに合わせて軽く跳び上がり、一時的に鋼になっている翼の上に降りる。そうすれば当然、スカイの羽は地面に押さえつけられる事になるわな。

「な……」
「勇敢で度胸もある。気位は悪くないが……相手が悪過ぎたな」
「そ、そんな……攻撃中のスカイの羽に、乗った?」
「おぉ、なんか時代劇で見た事ある。斬りかかってきた相手の刀の上に乗るとか」
「ま、そういう事さ。それじゃあ……お休み」

 乗った羽を蹴って、スカイの背中側に来た。狙うは当然、首の付け根の後ろ側さ。
必殺の一撃、当身。これは電気を使ってないが、デモンストレーションでは三つも使えば十分だろうさ。

「え!? スカイがボールに戻ってきた!? ど、どうして!?」
「出た、必殺の一撃。あれされるとポケモンが気絶してボールがダウンしたと判断しちゃって、強制的に戻されちゃうんだよな。後から調べてみて分かったけど」
「うっ、なんか僕もされた事あるから首の後ろがぞわぞわする……」
「なんか僕もー……」
「よっと。ははっ、リィもプラスも警戒しなさんなって。これでも一番安全なバトルの終わらせ方なんだぜ?」
「いやライトさん、それが完璧に出来るのライトさんくらいですって」

 まぁなー。でも、センスの良い奴に俺が教えたら出来るようになると思うがね。レンやレオ辺りなら習得出来るんでねぇかな?
なんて言ってる間にカランを追い詰めましたよっと。ここまで出さなかったって事は、よほどあのシノビって奴に自信があるか……あいつの力を持て余してるかだな。恐らく後者だろうけどよ。

「さぁてチェックメイト寸前だ。どうする? ここで止めるなら全滅だけはしないで済むぜ?」
「う、うぅ~……酷いよ、リィちゃんもライト君もそんなに強いなんて……それに兄さんの連れてた皆も凄く強くなってるし……」
「ドアホめ、俺がなんの進歩もしないと思うたか! 賭けまで持ち掛けて勝負を仕掛けた自分の愚かさを呪えぃ!」
「シノビはまだ上手く指示してあげられないから出したくなかったのに……こうなったらいいもん! シノビ、やっちゃって!」

 あまりの大差を付けられたから自棄になってるな。優秀な能力はあるが、まだまだお子様よなぁ。
で、やっぱり自分に扱いきれないから出さなかったのね。そりゃあ、戦ってる様子を見てて分かったよ。
カランが繰り出したボールからは、腕組みをしたままのシノビが姿を表した。さて、その目に俺はどう映る?

「……今なら分かるよ。シノビさん……強い」
「……聞こう。貴殿が、我が相手か?」
「あぁ。問題無いよな、マスター?」
「うむ、ライト先生頼んます!」

 おっと、相手だって答えた途端に向かってきやがったか、せっかちだねぇ。
が、防がせてもらうぜ。技を込めてない突きか、力は……まぁ、悪くない程度だな。

「ライトさん!?」
「……焦んなよ。パーティはこれからだぜ?」
「これを防ぐか……貴殿、やはりただのポケモンでは無いな」
「ち、ちょっとシノビ! まだ何も!」
「我がこの男の連れる者全てを倒す。それでよかろう」
「やれやれ、幾ら実力があるからって話も聞かないんじゃ詰まらないだろうに」
「我が求むのは強者と試合う事のみ……参る!」

 やれやれ、なんだってこんな面倒臭い奴をカランは連れてるんだ? 自分じゃ指示出しも出来ないってのによ。いや、それは俺も同じか。
突きの後は蹴りを織り交ぜての連撃で来たか。まぁ、避けられない程のスピードではねぇな。けど鬱陶しいし、一度仕切るか。
シノビの突きの隙間を縫って、こっちの突きを滑り込ませた。ん、直撃行けるかと思ったら腕を交差させて防いだか。反射神経は良いじゃねぇか。

「ぬ……」
「へぇ、やるねぇ。直撃コースだと思ったんだがな」
「我が連打を全て見切るか、小癪な」
「悪いね、相手をおちょくるのは得意なんだ。こんな風に、な!」
「くぉっ!?」

 チェインボルトを突きに乗せておいたのさ。ぐいっと引っ張れば、今度はこっちの攻撃タイムだ。
引っ張った電気を切って、飛び込むようにして突きを繰り出す。防御したが、今度はこっちの高速連打だぜ。

「そぅら、防ぎきってみせろよ!」
「くぁっ!?」

 ……ほぉ、俺の最速10連突きでもガードが崩れんか。細身の腕だが、僅かに湿り気を帯びてる所為で衝撃が分散したか?
ならきつめの一発でこじ開けてやらぁ。アッパー気味に構えて、振る前足に電気を移動。溜めて突き上げと共に開放する!

「ライジング……ボルト!」

 っと、上体を逸らして避けたか。俺が放った電撃は、空を切って上空で霧散しちまった。ま、ビビらすには十分な電流だったろうがな。
上体を逸らした勢いのまま、バック転して後退しやがったか。シノビなんて名が付けられる訳だ、流石の身軽さだな。

「やれやれ、なかなかどうして動けるじゃねぇか。今のを避けるとは大したもんだ」
「今の技は……見た事も聞いた事も無い一撃。何故そのような技を使える」
「そ、そうだ。それにライト君はさっきのスカイとの戦いの時にも見た事の無い技を使ってたわ。盾になる電気技なんて今まで見た事無いし、相手を捕まえて引っ張る技も!」
「そらそうさ。今のバトルで使ってる技は、どれも俺が編み出した技だからな」
「あ、編み出した技? そんな、ポケモンがそんな事……」
「出来ない、なんて事は無いんだよ。ただ、何が出来るかを知らないだけさ、皆が自分の出せる力でな」

 知らないからこそ、受け継がれた技を覚えて使う。親から子へ、血から血へ、受け継がれてきた力を。けどな、ちょっと考えれば分かる筈なんだよ。今ポケモン達が覚えて使ってる技だって、誰かが使い方を閃いて編み出した物だってな。
俺は自分でそれをしただけさ。自分が使えるようになっちまったこの電気の力を、制御する為にな。その為の電気の性質とかの知識も嫌でも知ってたしな。

「バリアブルボルト、変幻自在に変化する電撃……何時だったか、俺の技をそんな風に呼んだ奴が居たっけな」
「バリアブル、ボルト……」
「それって、一つの技が変化するって事!? そんなの反則じゃない!」
「ところがどっこい、使うタイミングやタイプに寄って変化する技ってのは実際あるんだなー。大まかに言えば、それらと一緒だぜ」

 ま、それらと違って変化の幅は今だけで数パターンあるがな。今回の戦いで見せただけで、シールド、マーカー、チェイン、ライジング、既に四つもあるんだからな。
電気ってなぁ使い方次第で幾らでも性質が変化する。何に流すか、どんな状況にあるかでもな。それこそ、無限に変化するって言ってもいい。それをただ垂れ流すだけってのは、勿体無いと思わねぇか?
俺の電撃はそういう反則さもあるから、今まで封印してた訳だ。無論、電圧が強過ぎるってのも問題だがね。

「……まさか、貴殿は!?」
「おっと、何を知ってるかは知らないが、油断してると勝負が終わるぜ?」

 無論、前にリィやリーフに使ったのもこのバリアブルボルトの変化の一つだ。とは言っても、ぶっちゃけ言えばただの放電だけどな、あれは。

「これもその一つ、バーストボルトだ!」
「ぬぅぅぅ!」

 掲げた前足から放った電撃は避けられた。まぁ、避けさせるのが目的で撃ったんだけどな今は。
強力な技を避けるには、それだけその技に集中する必要がある。今の説明で余裕は奪ってやったんだ、そんな中で不意に技が飛んできたらそりゃあ余計に余所見なんてしてる余裕は無いだろ。
だからこそ、俺にはもう一度近づくチャンスが生まれるって訳だ。気付かれる前に、一瞬でな。

「ブーストボルト」

 電気を全身に纏わせて、一瞬っていう限定的に全てのステータスを引き上げる。俺の超発電の擬似開放ってところだな。
バチリと音がした瞬間には、行動は既に終わってる……なんてな。

「くっ、奴は!?」
「シノビ、後ろ!」
「何!? ……? なっ、なんだこれは」
「シノビ? いやだから、ライト君は後ろだってば。なんで座ってるの?」
「振り向こうと首を動かそうとすれば、意思とは裏腹に右足が一歩前に出る。体の向きを変えようとすれば、意に反して体は座り込もうとする……」
「ま、まさか……」
「コンフューズボルト。お宅の体を動かす為の電気信号を、僅かに弄らせてもらったぜ」

 俺のその説明の最中も懸命に体を動かそうとしてるんだろうが、ついにはうつ伏せに寝転がってジタバタするだけになっちまったよ。後で治してやらんとな。

「もう分かっただろ? あんたじゃ俺と戦りあっても、勝ち目はねぇよ」
「つ、強過ぎる……」
「嘘、シノビが何も出来ないなんて……」
「これが、手加減無しのライトなのか。は、ははは……強さの次元が違い過ぎて笑えてきたし」
「ま、ショーはこれくらいでいいだろう。アディオス、セニョール」

 お決まりの当身を叩き込んで、シノビにもダウンして頂いた。ついでに、乱した信号は調律してやったよ。目を覚ました時には元通りだろうさ。
これにてショーダウンだ。二匹の観客達も目を見開いてお楽しみ頂けたようだし、ご満足頂けたようだな。

「リーフ~、シノビもボールに戻ったし、締めの一言は任せたぜ」
「あ、は、はい! このバトル、勝者はライ……じゃなくて、ご主人です!」
「お、おぉー勝った! のか?!」
「……あ、負けたんだ……あたし……」
「ふぅ。やっぱり本気なんて出しても、詰まらんだけだな」

 放心してる二人と一匹は置いといて、目を爛々と輝かせながら俺を見てる二匹については、どうすっかねこれ? 分かり易く各技の名前なんて言いながら出すんじゃなかったかな。
まぁやっちまったし、仕方無いからこれから説明でもしてやっかね。ついでだし。

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「……あのー、そろそろ開放してくれませんかね、皆様」
「ダメー! 一個でも出来るまでちゃんと教えろー!」
「僕ももっと教えてもらいたいな。バリアブルボルトって言ったよね、凄かったなぁ」
「くぅー! そんな凄い場面にダウンしちまってたとは、一番弟子として悔しいッスー!」
「いやでも、受けた俺でもスゲェって思ったよライト先生! 俺のエアスラッシュにも応用出来ないかな、あれ」

 えーっとね? 俺が思った以上にバリアブルボルトが見ていた皆さんにご好評で、どうやったとか教えろって詰め寄られちゃって困ってます。あ、ついでになんでかスカイさんが俺の弟子に増えました。ヤッタネ! ……勘弁して下さい。
特に同じ電気タイプであるプラスからの詰め寄りが凄くてね……いや、元々プラスの足しになればいいかなーと思って提案してやったんだからいいんだけどね? ここまでハマっちゃうとは思わなかったんですよ。
あぁ、あの後は特に何も無く解散になったよ。というか、カランが完全に精神的にノックアウトされて、現在はがっつり凹んでるのをコロナなんかが介抱してるところです。

「シールドボルトっていうのはもうちょっとで出来そうなんだけどなー。えっと、放電をあんまり広げないように出して、まぁるく体を囲う感じにしてー……」
「そうそう。まぁるくまぁるく、電気で丸い壁を作る感じにな?」
「そうか、僕はあのリーフウォールを作ったのを応用する感じで念で壁を作れば……」
「なるほどイメージか。だから俺もエアスラッシュをただ出すんじゃなくて、意識して出すようにすれば何か出来るかもしれないな」
「くぅぅー! 皆特殊技が使えて狡いっスー!」

 全く、三者三様で見てて飽きないねぇ。っていうかスカイさん、あんた馴染み過ぎだろ。
ん? 誰かが窓を開けた音がしたな。あぁ、練習をする為に技を使うから、俺らは庭に居たぜ。

「皆ー、そろそろ晩ご飯だよー。今日はそろそろお休みしようよー」
「おっとレンか。……ふぅ、助かった」
「晩御飯かー。よーし、続きは明日だー」
「そうだね。なんだか僕、いつもよりお腹空いちゃった」
「がっつりバトルしたッスからね。いっぱい食べるッス!」
「賛成! この家に帰って来て一番楽しみなのはレンさんの作ってくれるご飯だからね」

 最終進化までしてるからもうちょい大人かと思ったが、なんかスカイはあの三匹と気が合うところを見るとまだ結構若そうだな。

「ライトもお疲れ様」
「あぁ、本当に疲れたぜ。四匹ともやる気がメラメラしちゃって教えるのも一苦労だ」
「それだけインパクトがあったって事だよね。私も見たかったなぁ、本気のライト」
「止めといた方がいいぜ? なーんも面白いところ無いからな、俺がやる気出すと」
「えー? 気になるよぉ。どんなだったのかなぁ」
「……はいはい、あんた等はイチャついてないで早くこっち入ってきなさいよ。イチャイチャするのは部屋でいつでも出来るでしょうに」

 ふ、フロストいつの間に……ってか俺達はイチャついてたんじゃねぇ! ちょっと話してただけだ!
なんて反論も聞かぬままにテーブルの方へ行きやがった。なんかもうあいつ、俺達を弄りなれてやがる。

「も、もぉ、フロストちゃんは……」
「いやまぁ、煮え切らない俺達も確かにちょこっと悪いのかもしれんがな」
「そうだ……え?」
「あ、や、なんでもねぇ。晩飯にしようか」
「う、うん」

 そりゃあ毎回こんな感じになってりゃ誰でも慣れるわな。そろそろこれもなんとかしねぇとなぁ。
ま、それは今は保留だ。晩飯食って落ち着くとすっか。
一人を除いて、作られた食事はモリモリと無くなっていった。いやぁ、作り手にレオも居たとはいえ、これを前は全部レンが用意してたと思うと、とんだ重労働だぞこれ。
俺はいつも通り腹八分くらいで終わらせた。いつもよりは動いたが、それでもそこまで体力を消費する事はねぇからな。

「ご馳走さんっと」
「では、我も。馳走になりました」

 ふぅん、こっち見てるって事は、俺になんか話があるようだねシノビ君は。ま、付き合ったげますか。
レンも気が付いてこっちを見てるけど、気にしないように笑って見せといた。と言っても、レンの事だから気にしちまうだろうけどな。
ついて行くと、なんだ玄関から外に出ていっちまったよ。と思ったら上を指してる。なるほど、屋根の上に来いって事ね。ま、いいでしょう。
二匹して跳び上がって、屋根の上にはい着地っと。音は多分してないだろうから、大丈夫でしょ。

「で? 俺に何か用かい?」
「済まぬ、いや済みませぬ。失礼かと存じますが……貴殿は、白き陽炎と呼ばれた事はござらんか?」
「白き陽炎か……そういや一匹でぶらぶらしてる頃に、俺の事をそんな風に呼ぶ奴が居たっけな」
「や、やはり! ならば我が手も足も出ぬのは当然、よもや……生きている間に二大災禍の二匹に出会えるとは思わなんだ」

 二大災禍? なんだそりゃ?

「その二大災禍ってのは呼ばれた事ねぇなぁ。なんだいそりゃ?」
「……この呼び名は、我もつい最近知ったもの。それも人間が付けた名です。知らずとも当然でしょう」
「人が俺に呼び名を付けてるって? ……あー、なんとなく分かったわ。レンジャーの連中か」
「左様、貴殿ともう一匹……この世でその名を付けられた存在はその二匹のみ。レンジャーも畏怖と驚異を持ってこの名を付けたと聞き及んでおります」

 二大災禍とは物騒な名前を付けられたもんだ。理由はなんとなく分かるがな。

「レンジャーの定める恐ろしきポケモンに付ける格付け、ランクと呼ばれるそれの最上級に位置するトリプルSと呼ばれる位……その位にありながら、レンジャーに捕らえられずに居る者の中で特に危険とされる二匹。故に二つの大きな災禍、二大災禍と呼ぶと定められたそうです」
「はぁー、俺も出世しちゃったもんだねぇ。でも、トリプルSには俺なんかよりヤバイ奴が他に居たと思うがね? そいつらはどうなったんだ?」
「殆どのトリプルSに指定されたポケモンは、レンジャーが総力を挙げて捕らえたと聞いております。何年も捕らえられていないのは、その二匹だけだと」

 ふーん、まぁ俺以外のトリプルSの連中は、皆人間をやっちまっただのなんだのって曰くのある連中だったそうだからな。そうなって当然だろうよ。
まぁ、俺もそうなんだけどさ。誓って言うが、俺は殺しはした事ねぇからな? そんな下衆に落ちてたら、今頃こんなところでのほほんとなんて暮らしてねぇよ。

「で? 俺がそれに当たるもんだとして、それをあんたはどうする?」
「何も致しませぬ。貴殿の恨みを買ったところで、我には惨めに地に這わされる以外の未来はありませぬ」
「なら、なんでそんな事確認したよ? 俺もあまり知られたい事じゃねぇんだけどな」
「……我は、今のような体たらくに落ちる前は、仲間と共に悪さをする小悪党でした。とはいえ、レンジャーの目に留まる程度には、悪行を積んでしまっておりましたが」

 へぇ、こいつも元は馬鹿な奴だったと。それなら多少力があるのにも納得だ。
でもなんでいきなり身の上話を始めたよ? そんなもん知っても俺にゃあなーんの得もねぇんだけど?

「愚かだった我らは『水月』と名乗り、各地を渡り歩いては強奪やトレーナーを襲うといった愚行を働いていたのです」
「水月? 聞いた事あるぜ。確か、二~三年前だったかな、かなり幅を効かせた馬鹿共が居るって風の噂で聞いた事あるぜ。でも、全員レンジャーに捕まって壊滅したって聞いたがな?」
「はい、顛末はその通りです。が、我らが壊滅する前に、ある者と出会ってしまったのです。……水月が無くなった理由は、レンジャーではなくその者と出会ってしまった事の方が大きいのです」

 ……なるほど読めたぜ。それが、俺じゃない方の二大災禍って奴だな。でも水月も相当の手練が集まってて手に負えねぇって聞いた事あるんだがな?

「その分では、もうお分かりになられたようですな。恐らく、貴殿が思っている通りでしょう」
「やっぱり。だが、あんた等相当強かったんだろ? 現にあんた、悪くない程度には強かったし」
「世辞は要りませぬ。……その者に出会ったのは、偶然でした。もっとも、向こうは我らを探していたようですが」

 探してたって? 一体何故?

「その者は、最初から我らを討つつもりだったのです。それも、たった一匹で」
「一匹で? マジかよ」
「無論、我らはその者を打ち倒そうとしました。数の差は歴然、それにあの者は炎の力を持つ者。水月は水の力を操る者が殆どでしたので、誰もが負ける等と思いもよりませんでした」

 はい? 炎タイプなのに水タイプの集団にたった一匹で突っ込んだぁ!? なんだそりゃあ、それにしかもそれで勝ってるって。……あ、あれぇ?

「我らは、その者を追い詰めたのです。が、予想だにしませんでした。そこから……一撃で皆返り討ちにされる等とは」
「あ、あのー……その追い詰めた奴の起死回生技ってさ、もしかして自分の翼を炎に変えて尋常じゃないくらいパワーアップ~とかしなかった?」
「な、何故それを? 間違い無く、我らが倒されたのは『紅蓮の翼』と呼ばれる者。名の通り紅蓮に燃え上がる翼を持つ者です」

 いっえーい! 師匠何やってんすか。ってか水月潰したの師匠かよ! そりゃ勝てんわ。

「あっはっはっは! なんだそうか、あんた等そいつに『ブレイズウィング』まで使わせたのか! そりゃあ大善戦だ」
「ぶ、ブレイズ……ウィング?」
「あぁ、そのリザードンの隠し技さ。自分がとんでもなく追い詰められた時にだけ発動してな、その状態になったが最後、下手に力を使えば樹海が平地に早変わりしてもおかしくないくらいの火力が扱えるようになるんだぜ」
「何故そこまで詳しく知っているのです!? そんな事、レンジャー達の話でも聞いた事がありませぬよ!?」
「だぁってそいつ、俺の師匠だもん。そっかー、元気にしてるみたいだな」

 おまけに絶好調そうだな。相変わらず悪党ボコボコにしてるみたいだし。

「な、ならば二大災禍には繋がりがある、と?」
「繋がりってか、俺の野良での生き方を教えてくれたのが師匠なんよ。戦い方は我流でこのスタイルになったがな」
「うぅむ、白き陽炎が紅蓮の翼を師と仰ぐ者だったとは……」

 なーるほどね。師匠と戦った事があるから、それと同等クラスの俺が気になったと。ま、そりゃあ経験があるんなら分かっても仕方ねぇや。
しかし、こいつがそういう諸々を知ってるって事は、カランもそれを知ってるのか? だとしたら不味いんだよなぁ。

「そんで、その事をカランも知ってるのか?」
「それは無いでしょう。スクール生が知れるのは、せいぜいランクA程度まで。トリプルSランクの存在を知っているのは、トップクラスのレンジャーと一級のレンジャーのみだと聞いておりますゆえ」
「そうなん? ならなんであんたは知ってんだ?」
「我も一応ダブルSランクに数えられた者なので、今の主人に仕えよと言われる前は正式なレンジャーの元に居りました故、知る機会があったのです」

 ふーん、差し詰め、スクール生の実力向上の為に強力なポケモンを手持ちに加えさせてるってところか。まぁ、俺の敵ではねぇけどな。
流石にトレーナーとポケモンのパワーバランスが釣り合わな過ぎるとも思うけどな、カランとこのシノビじゃよ。

「ま、大体事情は分かったわ。今の師匠の事も知れたし、サンキューな」
「いえ、我も二大災禍の強さをこの身で知れたので満足です。ですが……貴殿があの白き陽炎だとは到底思えませなんだ。穏やかな気質のようですが……本当に貴殿が『一つの人間の組織を消した者』なのですか?」
「……あぁ、それは本当だ。俺は、許す事が出来なかったんだよ……PRLの連中をな」

 ポケモンリサーチラボラトリー……通称PRL。表向きにはポケモンの能力を人とポケモンの未来の為に研究するっつー組織だった。ポケモン関係の他の組織、ポケモンセンターとかレンジャーとも繋がりのある、な。
が、それを隠れ蓑に、奴らがやってたのはポケモンの生体実験や遺伝子操作によっての能力操作なんかの背徳的な研究さ。……俺が居た研究所もその一つだったんだよ。
驚いたもんさ……あの研究所以外に、同じ事をしてる連中が居るって知った時はな。そして、それを俺は許せなかった。
だから俺は師匠の元を離れたんだ。師匠を俺のやる事に巻き込む訳にはいかなかったからな。師匠ならきっと、話したら俺の事を手伝っちまってた筈だから。
けど、それはさせられない。俺の……八つ当たりに近い復讐なんかに、巻き込みたくなかったんだ。
それで一匹になった俺は、PRLの研究所を襲撃した。一つを潰せば、そこから他の研究所を調べ上げるのは造作も無かった。
けど、レンジャーとも繋がりのある組織に手を出して、レンジャー共が黙ってる訳ねぇよな。しかもそれが一匹のポケモンとあっちゃあ余計にそうだろう。
PRLは、調べ上げられるだけの研究所は……全て破壊した。データ一つ残さず、な。そこで研究をしてた連中は、俺が潰した研究所で何をしてたかを調べられて、全員捕縛されたと聞いた事があるな。
これが、俺がトリプルSランクにされた理由だ。たった一匹で一つの大組織を潰したポケモンとあっちゃあ、災禍なんて呼ばれても仕方ねぇかもしれねぇな。
ま、師匠は俺と出会う前から同じような事してたんだから、そらそう呼ばれるようになるだろうよ。師弟揃ってそんな風に呼ばれるとは、全く愉快愉快。

「……二大災禍とは、やはり他のポケモンとは一線を画する者のようですな」
「ま、嫌わないでやってくれよ。本当は俺も師匠も、ただ皆が普通に生活出来るようにしたいだけなんだよ」
「皆が普通に、ですか……なるほど、それが紅蓮の翼が我らを討ちに来た理由ですか」
「やり過ぎだったんだろうさ、師匠がわざわざ倒しに行くなんてな。でなけりゃ師匠は、自分から悪党を倒しに行くような事はしない筈だ」
「レンジャーでも聞いた事があります。二大災禍は、災いを振り撒くだけの存在ではない。弱きを救い本当の平和を望む者達でもある、と」
「擽ったいねぇ。まぁ、俺のは師匠の真似ってとこが大きいがね」

 それのお陰で危険度が鰻上りで上がっていくのも止まらないけどな。いずれ第一級接触禁止ポケモンとかにされたりしてな。

「ふぅ……貴殿と知り合えたこの奇縁に感謝しよう。凄まじき強さと高き気位……感服致した」
「大袈裟大袈裟。ま、でも面白い話を聞けて楽しかったぜ。にしても、よくブレイズウィングを発動した師匠と戦って無事で済んだな?」
「いえ、皆紅蓮の翼殿の翼の一扇ぎで燃やし尽くされたと思ったのですが……目を覚ますと、体を手当されていたのです。あれは一体なんだったのか……」
「あ、うん、それやったの多分師匠だわ」

 あぁ、『やっちった☆』とか言いながら全力で治療用の物集めてせっせと治療してる師匠の姿が簡単に想像出来る。本当、倒すのも治療も出来るんだから師匠は便利だよなぁ。
とにかく話したい事は話したし、家の中に戻るとするか。この分だと、シノビは口止めしておかなくても大丈夫そうだしな。
リビングに戻ったんだが、どうやら居るのはレンとコロナだけだったみたいだな。他の皆はもう休んだんだろ。

「あ、お帰りライトとシノビさん」
「珍しいね、シノビが誰かを誘って出掛けるなんて」
「少し話をしていただけだ。レン殿、我にさん付けは必要無いぞ」
「そういう事。別に大した話はしてないから気にしないでくれや」
「ふーん? 俺がカランの抱き人形やってる間になんかシノビとライト君、仲良くなったみたいだね」

 仲良くなったって言うより、お互いの接点を理解したって感じだけどな。ま、いいか。
で、どうやらカランはまだ凹んでるみたいだな。勝負にボロクソに負けて、あまつさえ俺達を諦めさせられたんだから相当キてたみたいだからな。

「本当に、今回のカランは手こずりそうだよ……まぁ、正直もう一度リィちゃんや君に挑むって言いだしたら、メンバー全員で止めようとは思ってるけどね。流石にバトルのレベルが違い過ぎるよ」
「そうしてくれや。俺ももう一回あれをやれって言われたら面倒臭いし」
「うーん、やっぱり私としては、ちょっと本気のライトも見てみたいんだけどなぁ」
「もう一度ライト殿と試合うと言うなら、我は断るぞ。我ら六匹で挑もうとも、万に一つも勝ち目は無いだろうからな」
「え!? し、シノビがそこまで言うなんて……」
「ま、まぁ、あれは滅多な事じゃ使う気は無いからな。そう警戒せんでくれや」

 やっぱりバリアブルボルトまで使ったのはやり過ぎだったかねぇ? まぁ、全部の変化を出した訳じゃねぇけどな。
とにかく、シノビと話して少し喉も乾いたし、少し飲み物でももらってから俺も休むとするかな。ふぅ……長い一日だったぜ。
とにかく、シノビと話して少し喉も乾いたし、ちっと飲み物でももらってから俺も休むとするかな。ふぅ……長い一日だったぜ。

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~後書き~

……前編に比べて後編なげぇよ! と自分に突っ込んだ私です。いやー長い、最近では一番長いお話になったように思います。
覚醒リィ&本気ライト大暴れ。ほぼ相手に何もさせずに完封出来るとか……強過ぎたかと思う今日この頃。でも、実際のゲームでもタイプ突いたりで一撃で倒すってよくあることだよなーと思ってそのままにしました。カランは相手が悪過ぎたのです……南無南無。
そして再び登場ラルゴさん。ライト同様に突然変異体である説が浮上。今後はその辺にも触れていきたいものです。
とにかく、今作をここまでお読みくださった皆様、ありがとうございました! 次作でお会いできれば幸いにございます!

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IP:180.53.166.152 TIME:"2015-02-02 (月) 00:53:24" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%A4%8F%E3%81%AE%E5%B5%90%E3%81%8C%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B%EF%BC%81%E3%80%80%E5%BE%8C%E7%B7%A8" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"

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