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危険な誕生会 の変更点


**危険な誕生会 [#vb7264da]
  Written by [[March Hare>三月兎]]

※予め連絡。この更新は注意書きを忘れていたことを修正するためのものなので悪しからず。

どんなプレイでもOKな人はこのまま。
苦手がお有りの方は下の( )内をドラッグしてご確認を。
このお話には(&color(white){フェラ・5P・失禁・酒};)が含まれています(orこれから含まれる予定)。

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&size(17){◆危険な誕生会◆};

「ウチらみんなが集まれる場所なんてなかなかなぁ……」
 今晩の宿直は我が五番親衛隊と九番後方支援隊。
 宿舎に一つだけ用意された女性宿舎には、シャロン以下、五番親衛隊女性隊員の面々が集まっていた。
 &ruby(ブースター){倍化器};を手入れしているシャロンを除いた女達の話の内容はというと、部下の一人であるニドリーナ、アマダの誕生日パーティーの予定についてだ。
「やっぱ隊長のマンションぐらいしかないよなっ」
 さっきから話を仕切っているバクフーンは、アスペルと同じく西国アザト出身のヒルルカだ。

 わたしの家だと?
 そもそも、兵士ともあろう者が誕生日のパーティーなどと言って騒いでいるのが間違いなのだ。なっとらん。そこらのOLや女子大生じゃないんだぞ。
「ねぇ、たいちょー」
 と、オオタチのリルがすり寄ってきた。
「駄目だ」
 即答すると、リルは誰が見てもわかるほど落胆した。感情表現の大袈裟な奴だ。
「全く、お前らそれでも兵士か。つまらんお喋りをしている暇があったら早く寝ろ」
 先程九番隊に&ruby(じゅんら){巡邏};を交代したので、五番隊は仮眠をとる時間だ。
「ダメだってさー。たいちょーはアマダの誕生日が嬉しくないんだよ、きっと」
「そ……そんなことは……ないと思います……」
「ウチが隊長みたいに広い家に住んどったらなぁ。即答でオッケーしたんのに。きっとあれやな。心と家の広さは反比例――あたっ」
 シャロンは座っていたヒルルカの腰を&ruby(ヽヽ){軽く};蹴った。
「誰が反比例だ! お前ら三人を招待するぐらいなんでもない!」
「お」
「本当ですか!?」
「痛いっちゅうねん……隊長、本気で蹴ったやろ……」
 嬉々とした表情を見せるリルとアマダ。ヒルルカは腰を押さえて蹲りつつも、笑みを浮かべている。

 しまった。 勢いに任せて本心でないことを言ってしまうのはわたしの悪い癖だ。
「……女に二言はない」
 言った以上は仕方あるまい。
「やったー! よかったじゃん、アマダ」
「ありがとうございます、隊長!」
「でも、ウチら四人だけってのもなんかショボイで。他に誰か呼ばへん?」
 決まった途端に調子に乗り出すヒルルカ。
「もういい、好きにしろ!」
 わたしの答えもわかっていたのだろう、彼女は笑顔で頷いた。だが、まさかそんなことを言い出すとは夢にも思わなかった。
「よっしゃ、ほんならシオン様呼ぼ!」
「いいじゃん♪ いいじゃん♪ スゲーじゃん!?」
「でも…………わたしなんかの誕生日パーティーに来てくれるかな……?」
「ま、待てーー!! わ、わたしの家にあいつを連れてくるつもりか!!?」
 冗談じゃないってんだ。あいつは超豪邸どころか街一番の屋敷に住んでいるんだぞ。わたしのマンションなんか――
「あるぇェ? たいちょー、どうかしたんですかぁ? 『女に二言はない』んじゃありませんでしたっけぇ?」
 大袈裟な感情表現というのは、こういうときにはものすごく腹が立つ。
「そーやで隊長。さっきウチに『好きにしろ』って&ruby(ゆ){言};わはったやん?」
「ぐ……」
 どうして後先考えずに要らんことを言ってしまうんだ。わたしのバカ。
「……自分で頼めよ。わたしは知らないからな」
 シオンはクールなように見えて実は優しいところもある。アマダ達が真剣にお願いすれば断らないだろう。

 ――――三日後のアマダの誕生日に何か大事な予定でも入っていることを祈っておくか。

&size(18){         ◇};

 案の定祈りは届かず、あっという間に当日を迎えた。
「シオン様、次はウチが&ruby(つ){注};いだるわ」
「そ、そんなに飲めませんって……」
 仕事が終わるなり、大量の酒を買い込んだヒルルカとリルが、そのあとシオンを引き連れたアマダがやってきた。
 広いリビングルームは簡易パーティー会場と化し、ヒルルカとシオンが座るソファとテーブルなどはどこぞのホストクラブを意識したとしか思えない配置だ。ちなみに配置を変えたのは今シャロンの隣で&ruby(ビア){麦酒};を飲んでいるリルである。
「たいちょー、飲まないんですかぁ?」
「わたしは下戸だと言っただろう」
 予想通りというかなんというか、ほとんど手のつけられていないホールケーキを切りとって自分の皿に乗せる。アマダはどうだか知らないが、リルとヒルルカの二人はアマダの誕生日にかこつけて騒ぎたいだけなのだろう。シオンを呼ぶことも二人で始めから決めていたに違いない。
「あっ、もうこんな時間! 悪いけど僕、帰らなきゃ」
「何&ruby(ゆ){言};ーてんねん、まだ八時半やし……始まったばっかりやで?」
「いや、でも……ヒルルカさん、うちの門限は九時なんですよ」
 そういえばこの間門限を過ぎてしまって家に入れなくなったとか言っていたな。
「そんなん気にせんでも大丈夫やて。泊まってったらええやん」
「ぶっ」
 思わず食べかけたケーキを吹き出してしまった。
「ヒルルカっ! なに勝手なことを言ってる!」
「冗談や冗談。――でも九時は早過ぎやで。子供やないねんから。そや、アマダの誕生日やねんからもっとアイツの相手したりーや。ウチはまた後でええから」
 ヒルルカは当人の都合も無視し、シオンをアマダのところへと引っ張っていった。
「わわっ、ちょっとヒルルカさんっ」
「アマダ、アンタの誕生日やのに何一人でちびちびやってんねん。ほら、プレゼントっ!」
 彼女はそう言うとシオンを持ち上げ、アマダに向かって放り投げた。
「ひゃああっ」
 アマダは受けきれずに転倒し、シオンと縺れ合って絨毯の床に倒れこむ。
 あのバカ、何考えてる。
「あ、ぁぁあぁああっ………ご、ごめんなさいっ! わたし……」
「や、今のはアマダさんが悪いわけじゃありませんよ……」
 仕切りに謝るアマダと気まずそうなシオンを見てヒルルカは笑っている。
「あちゃー、ヒルルカのテンション上がってきたねぇ」
 そう言うリルもどこか愉しそうだ。一人&ruby(しらふ){素面};のシャロンはもう頭を抱えるしかない。
 シャロンはヒルルカに近づき、その大きな背中を小突いた。
「おいヒルルカ。羽目を外し過ぎてあまり無茶なことをシオンに強要するなよ。社長令嬢の婚約者なんだからな」
「わかってるて。ウチかて踏み越えたらアカン最後の線ぐらいは越えへんよ。アハハッ」
 ヒルルカは笑いながらバシバシとシャロンの肩を叩いた。
 ダメだこいつ。完全に酔っている。
 こうなったらシャロンが監視しておくしかないだろう。
「どうや、隊長もシオン様と」
「わたしはいい。飲めないと言っているだろう」
「でも隊長強そうに見えるけどなー」
「知るか。飲んだことないんだから」
 そうだ。飲んだことがないから本当はわからない。でももし弱かったら、一時的に自我を失うかもしれないのだ。そんな危険なものに手を出せるか。
「何や、飲んだことなかったんかぁ。飲んでみやなわからへんで。ほら」
 と、グラスを押し付けられた。
「シオン様、隊長に&ruby(つ){注};いだってくれる?」
「ええ……べつに構いませんよ」
「待てシオン――」
 止める暇もなく、シオンは器用にも&ruby(サイコキネシス){念動力};で瓶を傾け、シャロンの前に置かれたグラスにブランデーを注いだ。
「ヒルルカさんの言う通りですよシャロンさん。飲んでみないとわかりませんし。大丈夫、少しぐらいなら何ともなりませんから」
「本当だろうな…………まあ、お前が言うなら……」
 シャロンはそっと琥珀色の液体に口をつけてみた。
「何やねんな隊長。シオン様に&ruby(ゆ){言};われたらいっぺんでOKなんや。ふーん……」
 葡萄の芳醇な香りが広がる――っと、ヒルルカのやつめ。
「勘違いされるようなことを言うな! わたしはだな……そう、あれだ。七つも年下の奴に言われて引き下がるわけにもいかないだろう!」
 一息に言うと、シオンは首を傾げた。
「そういうものなんですか……?」
「思っきし後つけやん」
「黙れ! あまり勝手なこと言ってると放り出すぞ!」
 叫んでグラスを飲み干す。
 全く、この莫迦は何が言いたいというんだ。まさかこのわたしがシオンを好きだと――
 ――ありえん。こいつは仕事仲間だ。後輩であり良きライバルなのだ。
 ただ、シオンを前にすると時折自分でもよくわからないことを言ったりしたりしてしまうことがある。飲んでもいないのに何かに酔ったみたいに。
「大丈夫そうですね」
「なんだたいちょー、下戸じゃないじゃん」
 ――どうやら我を失ったりはしないようだ。身体の変化もなんら感じられない。
「それよりシオン、お前帰らなくてもいいのか」
「あ、ええ……そうですね、せっかく招待していただいたわけですし。今日は帰れないかもしれないとは伝えてあるので…………それに、昔住んでいた家がありますからね」
「じゃあ今夜はオールナイトだねっ」
「お、そうするか。明日は非番やし。九番隊もやろ?」
「そうですけど、オールナイトはちょっと……」
 そうだ。一晩中ヒルルカやリルのペースに付き合っていたら体を壊してしまう――いや、論点はそこじゃなくて。

 お前ら、ここがわたしの家だということを忘れていないか?

&size(18){         ◇};

「どうぞっ、アマダさん」
「あ、はい……ありがとうございます…………」
「固い固い、もっと普通にしーなアマダ。今日はウチらがシオン様貸し切ってんねんから」
 自分勝手なことを言いながら空になったシオンのグラスを満たすヒルルカ。ていうか何杯目だアレ。シャロンが見る限り、シオンがグラスを空にしてはヒルルカが注ぎ――――延々と繰り返しているような気がするのだが。
「ちょっとぉ、ヒルルカばっかりずるいよ? あたしにもシオン様の相手をさせてくんない?」
 だから、そもそもどうして女四人にシオン一人なんだ。考えて呼べよ。いろんな意味で危ないだろうが。
「や、リルさんはさっきまで僕と二人で飲んでたじゃないですかぁ」
 シオンは普段より子供じみた口調で、しかしどこか艶かしい雰囲気を漂わせている。
「そやそや、ウチだけちゃうし」
「何言ってんの、ヒルルカだってあたしの前に独り占めしてたじゃん。今は四人で仲良く分けるときなのっ!」
 その四人にはわたしも入っているのか。
「わたしはまだ相手をしてもらっていないのだが?」
「ええやん、隊長はいっつも昼休みにシオン様とご飯食べてるやろ」
「バカかお前は。酒と昼飯を一緒にするな。だいたい昼飯のときは大抵アスペルのやつが一緒だろうが。いいからシオンを渡せ」
 ん? わたしは何を言っているんだ。
「しゃーないなぁ。ほんならシオン様、次は隊長頼むわ」
「シャロンさんですかぁ? いいですよぉ。僕はいくらでも飲めますから……」
 シオンは立ち上がり、シャロンへと歩み寄ってきた。どんどん近づいてきて――っておい、近づきすぎじゃないのか。
 そして――――なんと、シオンはそのままぴたりと身体を密着させてきた。
「あ――ちょっ、おい、シオン――――」
「僕、シャロンさんにも飲ませてほしいなぁ」
 空のグラスを差し出すシオン。
 ――な、何なんだこの状況は。頬を上気させたシオンがシャロンの隣に身を寄せて上目遣いで見つめてくるなんて……
 思えば近寄ってくるときの足取りもふらふらだったような。こいつまで酔っているのか。
「シオン様ぁ、ずるいよぉ? あたしのときはそんなコトしなかったじゃん……」
「ほんまや、隊長にばっか甘えて。女の子は平等に扱わなアカンよ?」
「あ~そうでしたっけ? すみません……」
 ……可愛い。可愛すぎる。このまま抱きしめてしまいたい。
 が、シャロンは持ち前の精神力でなんとかその衝動を抑えこんだ。
「シオン、こら……もたれかかってくるな!」
「え~、重いですか? 僕これでもあなたより軽いと思いますよぉ?」
「しっ、失礼なっ! これでもわたしは一応女なんだぞ――――って、そんなことはどうでもいい! 離れろ!」
 だいたい、どうしてこんなことになったんだ?
「…………ひどいです……シャロンさんが僕を渡せって言ったのにっ……」
 わたしが? そんな馬鹿な――――いや、言ったような気がする。酒のせいでロレツが回っていなかったのか。そうだ、きっとそうだろう。
「隊長っ! 今のは酷すぎます!」
 突然響いたのは、耳にしたことのないような甲高い怒声。声の主はなんと、あの大人しいアマダだった。アマダがこのわたしにそんな言い方をするとは珍しい。一体何だというんだ。
 ふと横をみると――――
「何ぃっ!!?」
 泣く? 泣くのか? 嘘だろ。あのシオンが。ていうかおかしいだろ。わたしがシオンを泣かせるようなことを言ったか?
「ばっ、お前……泣くほどのことじゃないだろうがっ! 女じゃあるまいし――」
「な、泣いてませんよっ!」
 シオンは俯いていた顔をシャロンに向けて精一杯の声で否定したが、その目には涙があふれんばかりに溜まっている。どこのお姫様だよ。……こいつホントに男だっけか。自分の記憶に自信が無くなってしまう。
「たいちょー失格ぅ。女として。シオン様はあたしが貰うよっ」
 止める間もなく、リルがシオンの&ruby(て){前肢};を引いてソファまで連れて行った。
 女として失格……?
「かわいそうなシオン様…………隊長もひどいよねぇ。リルおねーさんが慰めてあげるからねっ」
 まあいい。さっきのはたしかにわたしのミスだが、とうの昔に女を捨てると決めた身だ。女として失格だろうが論外だろうがわたしには何の問題もない。ただ北凰騎士団五番親衛隊隊長としての職務を全うできるだけの強さがあればいい。それがこのわたしの生き方だ。
 リルがシャロンから奪ったシオンをソファに仰向けに寝かせて&ruby(の){圧};し掛かろうとしていようが、わたしには関係ないのだ。

 ――――何? &ruby(の){圧};し掛かりだと?
「リ、リルゥゥゥッ!! やめんかぁあッ!!!!」
 叫びながら、&ruby(て){前肢};に持ったグラスを思いきり投げつけた。
 グラスはブランデーをぶち撒けながら猛回転しつつリルの脳天へと真っ直ぐに吸い込まれてゆく。しかしリルが咄嗟に首を捻って躱したため、グラスは壁に激突して硝子の破片を盛大に飛び散らせるだけに留まった。
「ひっ……!」
「わぁあっ」
 リルとシオンは身をすくませ、驚きの表情でこちらを見据えた。
「何考えてんだこのバカ!! シオンもシオンだ! リルの言いなりになるんじゃないっ!」
 まったく、これだから酒というやつは飲まない方がいいんだ。何をするかわかったもんじゃない。
 と、背後からコツン、と頭を小突かれた。
「隊長、あとちょっとで殺人犯になるところやったで?」

 ………………これも酒の所為だろう、おそらく。

&size(18){         ◇};

「さ、仕切り直してもう一周や」
「またヒルルカさんからですかぁ?」
「ウチは最後でええよ。まずは――」
 見れば、アマダは既にソファの上で静かな寝息を立てていた。
 リルと隊長はというと――――
「いいか! 何度も言うようにあいつはわたし達の会社の社長令嬢の婚約者なんだ! 歓楽街の軽いホストと勘違いしていないか!? そうでなくともやり過ぎだ。いくら酒の席だからってな、していいことと悪いことがあるだろう! だからわたしは最初からこんなパーティは反対だったんだ!」
 隊長は未だ怒りが収まらないらしく、リルに怒涛の叱責を浴びせ続けている。
「アカン、まだ終わらんわアレは。しゃーない、先にウチの相手してぇな。今度はほら、さっき隊長にやってたみたいにこう……」
「えー……ヒルルカさんに?」
「何やねん、ウチはアカンのかいな?」
「構いませんけどぉ」
 シオンはとろんとした目でヒルルカの胸にもたれかかってきた。ヒルルカを見上げる眼差しもどこかエロティックで……
 ――まさか、誘ってる?
 いやいや、アカンでそれは。ここはガマンやガマン。
「にしてもアンタかわええなぁ……」
 我慢しようと思ったのだが誘惑には勝てなかった。そっとシオンの背に&ruby(て){前肢};をまわし、ぎゅっと抱きしめてみる。
 そう、抱きしめるだけならべつに構わないだろう。これ以上踏み込まなければ何も問題はない。
 抱き締めたシオンの身体はふさふさで、柔らかくて。本当に兵士なのかと疑うような体つきで。
「ヒルルカさん、暖かい。さすが炎タイプですよね……」
 加えて、胸元からの甘い囁き。
 ――やっぱりまずかったかな。止められそうにない。
「なぁ……ちょっとだけウチと……」
「ヒルルカっ! それ以上進んだらお前も命は無いと思え!」
 いつの間にやら隊長がこちらを睨んでいた。無駄に周辺視野の広いひとだ。
「ちゃうちゃう、ウチは何も……な? シオン様?」
「なんだ、違ったんですか……期待させないで下さいよぉ」
「き、期待って……アホか、ウチはそんな気ぃなかったって……」
「ヒルルカ。とりあえずこっちへ来い」

 ――――死んだ。

&size(18){         ◇};

「こっちやこっち」
「先にあたしのを飲んでよー」
 リルに続いてヒルルカもたっぷりと絞ってやったのだが、二人はあまり気にした様子もなくまたシオンと飲んでいる。
 時刻は夜の十一時。アマダは相変わらず寝ているし、両手に花状態のシオンは勧められるままぐいぐいとグラスを空けている。
 まさかシオンがこんな大酒飲みだとは夢にも思わなかった。どういう胃の構造してるんだ。あの細い身体にそんなに入りきらないだろ普通。
「まぁまぁ、ちゃんと二人とも相手してあげますから……」
「シオン……お前ホントに平気なんだろうな? 急に吐いたりとかするなよ?」
「大丈夫ですって。それよりシャロンさんはもう終わりなんですか? あれからケーキばっかり……太りますよ?」
「なっ……そ、そうだな。お前らが食わないからつい……」
「シャロンさんも入ってくださいよ」
「何を言う、酒は酒で良くないだろうが」
「たいちょーノリ悪ーい」
「ホンマなっとらんなぁ。そんなやからその年になっても男一人おらんねん。もう二十六やろ?」
「お前こそ、&ruby(ひと){他人};の事を言えた義理か」
「でもあたしやヒルルカはまだ二十四だしぃ。過去に&ruby(ヽヽ){経験};があるしぃ。それに、若いからいいの」
「二つしか変わらんだろうが……」
 と、いつの間にか笑顔のシオンがシャロンにグラスを持たせ、酒を注いでいた。
「ささ、ぐいっと」
「待て、お前いつの間に……」
 シオンはにこにこと微笑みながらシャロンの目を覗き込んでくる。
 ――仕方ないな。ここはその笑顔に免じて。

 シャロンはグラスを一気に傾けた。
「お、豪快やなぁ」
「やるぅ」
 先ほどの例もあるし、ここで断ってまた泣かれでもしたら困る。
「それ、かなり強いお酒なんですけどね。さすがシャロンさんです」
 ――何だと。

 言われてみれば、喉や胸の辺りが妙に熱い。
「莫迦、なんでそれをもっと早く言わん!」
「言う前にシャロンさんが飲んじゃったんですもん」
 これは……まずい。頭がぼーっとしてきた。
「……くそ、わたしとしたことが……」
 全く、わたしは二十六年間も何をやっていたんだ。容姿だって悪くはないし、告白だって何度もされたことはあるのに全部断って。
 ――違う違う、そんなことはどうでもよくて。
 男に負けない強さだけを求めて、訓練に身を捧げて。気づけば青春も何もないまま二十六歳に。
 ――だから違うってのに。
 そして今、目の前には気になる男の子がいて。酒が入ったそいつは今やわたし達の言いなりの人形。それも四対一。
「アマダ、起きろ」
「ちょ、隊長。四人やったらまた取り合いに……」
「いいんだそれで。そもそもアマダの誕生日だろうが」
 アマダは目を擦りながらもゆっくりとした動きで身を起こした。
「ふぁ……頭痛い……」
「それぐらい何でもないだろう。これからがお楽しみなんだぞ」
「お楽しみ? 隊長、なんか用意してるん?」
「さっすがたいちょー」
「わたしがお前らなんかのために用意してると思うか?」
 もう自分でも自分が何を言っているのかわからなくなってきた。でも、その先は言ってはダメだというのは確かだ。
「なぁシオン。お前も少しくらいいいだろ?」
「何がですか?」
「……何だ、その……どうやらわたしは――」
 皆の視線が一斉にシャロンに集まる。普段ならそれだけで怒っているところなんだろうけど。
「――お前のことが好きらしいんだ」
 いや、それはないだろ絶対。
 心の中で自分のあり得ない一言に突っ込みを入れたような記憶があるが、その先は覚えていない。

&size(18){         ◇};

「たいちょー?」
 隊長がヘンだ。いきなりシオン様に告白なんかして。そんな素振りなんてこれまでまるでなかったのに。
「何や隊長、さっきまであんだけ怒っとったんはそーゆーことか」
 ヒルルカやリルも少しおかしい。シオン様を見る目つきがさっきまでと違う。まるで獲物をみつけた肉食獣のようで。
「うるさい。わたしはこいつが好きだと言ったんだ。もうやることは決まってるだろう。来い」
「ちょ、シャロンさん。僕の気持ちは無視ですかぁ?」
 有無を言わせずシオン様を引っ張っていく隊長。でもシオン様もまんざらではなさそうな。
「まぁ構いませんけど……」
 構わなくないでしょ! 婚約者がいるんじゃなかったっけ?
「合意の上だな?」
「あはは……そういうことになるでしょうか」
 シオン様って……こんなに軽かったかな?
「たいちょーずるい! あたしもまぜてよー」
「ウチも入れやなアカンで?」
「黙れ、シオンはもうわたしのものだ。お前らには渡さない」
 あのー、お楽しみとか言って私起こされたんですけど……
「独り占めはセコいやろ? ウチらにも取り分ちょーだいや」
「そーそー。いくら告白したからってね、たいちょー一人のものにはならないの。ね、シオン様?」
「三人同時かぁ……それいいかも、ですね」
「おっ」
「やたー」
「何だとシオン。裏切る気か」
「ちゃんとシャロンさんの相手もしますってばぁ」
 まずい。もう全く何がなんだかわからないが合意が成立してしまっている。もう一人理性の残っているアマダが何とかするしかない。
「待って二人とも……ていうか隊長もシオン様も! みんなちょっと冷静になってください!」
「何やアマダ、アンタも一緒がいいんか?」
「ち、違います……みんな飲み過ぎなんですよ。しっかりしてください」
 アマダを含めた全員、顔は朱に染まっているし足取りも覚束ない。今となってはどうして誰も止めなかったのかと思うくらい飲んでいた。しかし、隊長はそれほどでもなかったはずなのだが。
「アマダさん……僕からの誕生日プレゼント、受け取ってくださいます?」
「ふぇっ?」

 唐突だった。
 ふらふらとこちらに近寄ってきたシオン様が、アマダに抱きついてきたのだ。そのまま後に押し倒されて――

 ――二人の唇が、重なった。

「アマダ、お前!」
「反則やっちゅーねん!」
「あぁぁー! あたしが最初に戴こうと思ってたのにぃ」
 三人の声もどこか遠い。
 ていうかなにこれ。どうして私がシオン様と抱き合ってキスなんかしてるんだろう。
 シオン様と? 私が? 嘘。そんな夢みたいなこと……

 どれくらいそうしていただろうか。
 軽いフレンチキスだからそんなに長くはなかったかもしれない。しかしアマダには何十分もそうしていたように感じられた。

「ん……」
 シオン様はそっと唇を離すと、とろけるような視線でアマダの瞳を見つめてきた。
「気に入っていただけました?」
 と、にこやかな笑顔をアマダに向ける。
 これで理性を保てという方がどうかしてる。隊長やヒルルカ、リルの気持ちもわからないでもない。
「そんな……あ、当たり前じゃないですか……シオン様からの、き、キスが気にいらないなんてこと…………」
「ふーん。キスだけでいいんですね?」
「えっ……も、もしかして…………それ以上も……あったり……します?」
 私は何を期待しているんだろう。
「お望みとあらば……なんてねっ。どうしますか?」
 私に選択権? もしかしてもしかするとこのまま抱いてくれちゃったりするの?
 嘘だ。シオン様はアマダのいるような、こんな地べたには舞い降りてこない。ずっと高みを飛び続ける足のもげた鳥だ。
 憧れることしか許されていなかったはずだ。私なんかにどうにかできる子じゃない。
「シオン貴様! 何カッコつけてる! いいから大人しくわたしの寝室に来いっ!」
 と、隊長がアマダの胸の中からシオン様をひったくった。アマダが答えあぐねている間に。
「わわっ、シャロンさん……」
 シオン様はそのまま隊長に引きずられていき、二人は奥の部屋へと消えた。

 後に残った女三人。ただその様子を見送るしかなかった。
 何故って、隊長があまりにも必死だったから。シオン様は自分のものだと言わんばかりに捕まえて離さなかった。

 でもアマダはそれだけではなかった。
 シオン様にキスをされたときの感触。ふさふさした体毛。やわらかな身体。ふわりとした甘い匂い。その余韻がまだ強く残っていて、呆然としていたのだ。
「アマダ、大丈夫? 顔まっかっかだよ?」
「えっ……?」
 いつの間にか、リルがアマダの顔を覗き込んでいた。
「いいなぁ。あたしもあんな風にキスされたかったなぁ」
「ち、違っ……それとこれとは別です!」
「いいじゃん別に隠さなくても。みんな見てたんだしさぁ」
「ホンマや。ウチなんか隊長に邪魔されて&ruby(なん){何};もでけへんかったのに……」
「そうそう。たいちょーはあたし達にはさせないのに自分ばっかり」
「ん? そういえばシオン様、三人まとめて相手してくれるって&ruby(ゆ){言};ってなかったか?」
「あ、言ってたね」
「今やったらまだ間に合うで。行こ」
「ふ、二人とも……それは……」
 アマダの制止も聞かず、二人は隊長の寝室の方へと駆けて行った。

 ――このままでいいの? 本当に?
 止めなきゃ大変なことになる。
 止めないと。
 そう、二人のあとを追いかけて。
「待ってください!」
 二人はすぐにアマダのほうを見て立ち止まった。
 言うんだ。ここで言わないともう終わりなんだから。
「私も………入れてください……」
 また飛び立ってしまったらもう二度と降りてこないかもしれないんだ。
 こんな千載一遇のチャンスを逃す手はない。

 みんなお酒が入ってるんだ。大丈夫、今夜のことはきっと誰も覚えていない。
 
&size(18){         ◇};

 扉をノックしても案の定返事は無かった。
 代わりに部屋の中から聞こえてきたのはシオン様の煽情的な喘ぎ声だった。その声を聞いただけで、胸の中で何かが弾けそうになる。
「もうええ、入るで」
「とつげきー」
「ちょっと……二人とも!」
 ヒルルカは勢いよく扉を開いた。

「え……」
 アマダたちはその光景に目を奪われた。

 大きめのベッドの上に仰向けに寝かされたシオン様。
 その上に横から覆い被さるようにして、シオン様の下半身へと隊長が顔を近づけている。
「ふぁっ……シャロンさん……すごく…………いいです……」
 そう、一番驚いたのは。
 シオン様の可愛らしいモノを咥えてぴちゃぴちゃと淫らな音を立てている隊長が、なんだか女の子みたいで。
 もちろん女のひとだというのはわかっていたけれど、隊長が女の子らしいところを見せたことなんて一度もなかった。頬を上気させてシオン様を慰める隊長の姿は、同性のアマダが見てもうっとりとするほどの、シオン様に負けないぐらいの魅惑の光を放っていた。

 シオン様はときどき身を捩ったりビクンと身体を跳ね上がらせたりして喘ぎ、隊長はシオン様の身体をを&ruby(りょうて){両前肢};で押さえながら舌を動かし続けている。

 アマダたちはそんな二人の姿にただ見とれていた。見ているだけで、言いようもなく気持ちが昂ぶってしまう。二人の織り成す空気が、感覚が、ここまで伝わってくるようだった。
「ぁ……ダメ……出ちゃいそうっ……」
 シオン様が弱々しい声を上げる。全身の毛はざわざわと逆立ち、&ruby(エクスタシー){絶頂};が近いことを報せていた。
 隊長は一度口を離し、はぁっ、と息を吐いたあと、止めを刺すようにシオン様のモノを根元から舐め上げた。
「ひゃぁんっ! ふゎああぁ!」
 刹那、シオン様の身体が一際大きく跳ね上がったかと思うと、先端からミルクのような白い液体が飛び出した。
 隊長は自分の顔にかかったソレを&ruby(て){前肢};で拭ってキレイに舐め取り、悦楽に浸るように艶かしい吐息をはく。
「シオン、お前……可愛いな」
 隊長らしくない台詞と共に。
「はぁ……」
「フィオーナとかいうバカよりわたしの方がいいだろ?」
 隊長はうっとりとした表情のまま身体を反転させ、シオン様を横から抱くような体勢になった。リルもヒルルカも羨ましそうに、しかしどこか満足げにその様子を眺めている。

 やや酔いの浅いアマダだけはそうはいかなかった。
 フィオーナ。その名を耳にして、アマダの脳内に僅かな理性が復活した。
 そうだ。ヴァンジェスティ社の社長令嬢――シオン様はその婚約者なのだ。きっと皆忘れているだろう――そんな軽い話じゃ済まされない。もしも誰かが覚えていて、誰かが外にこのことを漏らしたら。特にシオン様本人が覚えていたりしたらお終いだ。隊長はもちろん、アマダ達だって本社からどんな処分を下されるかわかったものじゃない。
 シオン様も合意の上だということならその罪も薄くなるかもしれないが、酩酊状態での合意が果たして合意とみなされるのかどうか。そうでなくとも、社長令嬢がシオン様を許しシオン様が令嬢を選ぶことになれば同じことだ。寧ろあの令嬢の性格から考えて、隊長や私達に全ての罪を押しつけてそうする可能性のほうが高い。

 隊長は、とんでもないことを――

&size(18){         ◇};

「お前たち……」
 シオン様とシャロン隊長はようやくこちらに気づいたらしい。
「何のつもりだ? わたしの邪魔をしに来たのか」
「なに言うてんねん、抜け駆けなんかして」
「そーだよたいちょー。シオン様はあたし達も入れてくれるって言ってたのにさぁ。それに、アマダの誕生日なんだから」
 リルは部屋に入りかねていたアマダのをぐいっと引っ張った。
「あの、その、私は……」
「遅かったな。シオンはもうわたしの物だ」
 シャロン隊長はベッドの上でシオン様を抱きかかえるようにして舌なめずりした。アマダ達に向けられた眼光は鋭くて、何だか怖い。いつものような厳然とした怖さではなくて、感情を剥き出しにした視線に射殺されそうな、身の危険すら感じさせる恐怖。
 が、後の二人はそうはならなかったようだ。
「なんでやねん。シオン様はシオン様のモンや。シオン様のモンはみんなのモンやろ。行くでリル」
「りょーかいっ」
 言うが早いか、ヒルルカとリルはベッドに突撃し、シャロン隊長とシオンの間に割り込んでいった。リルが手を引いているので、アマダも行かざるを得ない。
「あれ、皆さん……僕に何か用……ですかぁ?」
 シオン様は状況を把握していないままにベッドまで引っ張ってこられたのか。目は開けているのか閉じているのか分からないし、発言にも脈絡や一貫性がない。
「用ってぇ、決まってるじゃん?」「当たり前やん、用なかったら&ruby(け){来};ーへんって」「わ、私は……べつに……」
「なになに、何か楽しいことですかぁ?」
 冗談を飛ばしているというよりも、本当にわかっていないような口ぶりだ。
「待て。わたしの楽しみを邪魔するんじゃない」
 対するシャロン隊長はアマダたちと同じで、まだ少しの理解力は残っているようにみえる。
「楽しみぃ? うん、なんかさっきはちょっと楽しかったような気がするんですけどー」
 直前の出来事まで忘れているあたり、酩酊状態に近いのだろう。呂律も少し怪しい。それもそのはずで、シオン様は一人で四人の相手をしていたのだ。単純計算でもアマダたちの四倍、シオン様のあのペースを考えたらもっと飲んでいる。
「人数多い方が楽しいで?」
「そーだよたいちょー、お楽しみはみんなで仲良く分けよっ」
「わたしも、そ、その意見には……賛成です……」
 自分が言っていることも何だか変だというのはわかる。頭が重いし、締め付けられるような痛みもある。時間を置いたからなのか、完全に酔いが回ってきたのだろうか。
 おかしい……? そうかな? 男の子と女の子が暗い部屋で一つのベッドの上に寝転がっている。そうなれば、そこから考える道は一つしかない。
「……仕方ないな。四人で仲良く、だぞ」
 ほら、みんな同じこと考えてる。わたしってべつに変じゃないよね?

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To be continued...
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