''注意事項'' -♂×♂の露骨な性的描写及びイヌ科の交尾要素があります。 &size(25){''北風と交わって''}; 心地よい天気の昼下がり、木陰で昼寝をしているのはオーロラポケモンのスイクン。汚れた水を浄化しつつ、様々な場所を渡り歩いている。そんな彼の元へ忍び寄る一匹のポケモン。黒を基調とする体に耳元の角や骨のような部分の白が際立つ、いかにも悪タイプな様相の彼はダークポケモン、ヘルガー。しかも彼は一般的に見られるヘルガーよりも大きな体をしている。スイクンには少し及ばないものの、その大きさに見る者はあっと息を呑む程だった。巨躯を上手く制して、徐々に距離を縮める。すぐ傍まで近寄ると、頭を下げてある部分に伸ばした。 「ひっ!」 スイクンの体がビクッと跳ねて鬣は逆立ち、目を覚ます。即座にヘルガーを睨み付けた。 「止めんか貴様!」 「おいおいスイクンとあろう者がそんな無防備で寝てていいのか?」 からかいながら舌なめずり。ヘルガーの唾液に濡れたのは、スイクンの両後足の付け根に挟まれた、重力に任せて垂れ下がる伸び切った雄の玉袋。白い毛にうっすら覆われ、ずっしりと大きな中身を袋越しに浮き立たせている。 「……もしや」 スイクンは鼻を鳴らし、ある事を察した。ヘルガーは更に距離を詰める。 「おうよ、ムラついちまってなぁ。へへ」 「全く貴様は&ruby(しばしば){屡々};発情するな」 「お前のせいだかんな」 興奮の色を隠さないヘルガーに大きく嘆息をつくスイクン。だがこう見えてこのヘルガー、紆余曲折あってスイクンの心を掴み共に冒険する事を許され、ついには彼と番になった凄い奴。そんな彼は普段の体臭に混じって、雄のフェロモンが強く発せられている。精悍な顔立ちに滲む色気も割増し状態。そしてスイクンに、自らをアピールする。スイクンと同様に筋肉質でありながら端正なボディラインを併せ持つ、凛々しさと雄々しさを兼ね備えた肉体が、短い毛並みで一層際立つ。表情から満ち溢れる自信が、ヘルガーの色気と魅力に華を添える。そしてスイクンに引き締まった臀部を見せ付け、その下からぶら下がる、黒く存在感のある雄袋をわざと揺らす。あからさまな誘惑であっても、濃厚なフェロモンに&ruby(あ){中};てられたスイクンにとってはじわりじわりと欲望を掻き立てられるに十分。くっ、と思わず苦々しく顔を顰めた。 「仕方ない、付き合ってやる」 「それでこそ俺の嫁だな」 「誰が嫁だ!」 「おおっと、そんなカオしたらせっかくの男前が台なしだぜ?」 その一言でスイクンは意表を突かれた。 「今其れを言うか貴様……!」 疲れ果てたヘルガーに木の実を採って来たあの場面が思い出されて赤面する。 「あれを見てお前と絶対番になるって決めたんだかんな」 得意げに鼻から煙を噴き出したヘルガー。 「素直に俺に身を任せてりゃいいんだよ」 突然スイクンに口付けする。それに応え、彼らはマズルを噛み合わせて舌を絡める。スイクンの口内に流れ込むヘルガーの唾液。その臭いは強烈で不味さが口に残り、たとえ少量でもスイクンの唾液が太刀打ちできるレベルではない。一しきり口付けすると、スイクンは眉間に皺を寄せて即座に唾を吐き捨てた。 「毎度の事だが貴様、きちんと歯や口は洗って居るのだろうな」 「ったりめーだろ! 見ての通りだ」 ニッと笑って自慢の牙を見せる。整った歯並びと煌めく白色、さほど残っていない歯垢が、入念な手入れを窺わせる。がばっと口を開けると、涎で糸を引く、光に照らされた赤い口腔。 「たぶん俺が持ってる毒のせいだと思うけどな、ちったあ気にしてんだぜ」 「っ……すまん、なぁっ!?」 狼狽えた隙を突いて再びスイクンの口を塞ぎ、わざと唾液を流し込んだ。 「涎臭くなっちまいな」 「くっ……」 眉を顰めるスイクンの前に、今度は下腹部を近づける。胸から腹にかけてくびれる輪郭から不自然に飛び出す雄の象徴。そこからも強烈な臭いが漂っていた。 「わかるよな?」 ニヤッと悪タイプらしい笑みを浮かべ、唆す。スイクンは上半身を起こして座り、頭の角が邪魔にならないよう下側から舌を伸ばして突出に巻き付ける。炎タイプならではの高い体温が舌に伝わり、先端付近を舐めると塩気が強まる。根元の方は丸い膨らみがあるのを皮越しに感じ取る。舐めつつ扱く舌遣いに、橙色の鞘が膨れ始める。やがて先端から濃い赤色が顔を出した。舌が湿り気を帯びたその部分を舐めると、ヘルガーの体が微かに震える。徐々に露出していく部分を重点的に責め、やがて舌で器用に被っていた皮を根元まで剥く。どんどん大きくなり、表面の太い血管や裏筋も目立ってくる。ヘルガーの腹部の動きが不規則になり、息遣いも次第に荒くなる。 「お前も気持ちよくしてやっからチンポ出せ」 スイクンは立ち上がり、反対を向いて横並びになる。ヘルガーの目の前に突出が揺れる。ヘルガーに比べたら弱いものの、独特の臭いがする。脇腹にスイクンの頭の角が当たらないよう、用を足すときみたいに片足を上げるヘルガー。スイクンは見えやすくなったヘルガーの雄を再び舐め始めた。そしてヘルガーもスイクンの急所に舌を伸ばして刺激する。ムクムク大きくなり、紅色の本体が露出した所を、熱い舌が攻める。乱れる吐息と舐める音の中、彼らは興奮を高めていく。舐められる突出が脈打ち、しょっぱいぬめりが湧き出してくる。乳飲み子のようにそれを味わいながら、彼らは互いを刺激し続けた。 程よく興奮してきた所で舐め合いを止める。スイクンの力強くも美しい体の輪郭から肉柱が飛び出て激しく主張している。それはヘルガーとて同様。パートナーの発情した雄の姿を目で楽しむ。 「さてそろそろ楽しませてもらうぜぇ」 ヘルガーがスイクンの背後へと歩き出す。そしてその後姿を眺める。白く棚引く二本のリボン、その下にはすぼまった穴とその両側でスマートに盛り上がる大臀筋。会陰から内腿にかけて色の境目があり、後ろ足は筋肉でしっかりしつつも滑らかな輪郭を失わない絶妙なバランスの肉付き。そして太股に挟まれた領域には大きな陰嚢。初めて目にして恋心を自覚するきっかけとなった絶景が目の前にあるのは、とても卑猥であると同時に感慨深い。昼寝のときとは裏腹に、勃起によって弾力のある丸みを帯びた形状を見せている。早くしろと言わんばかりに、赤面したスイクンが振り向いて睨んだ。 「なんだ、欲しがりさんめ」 「別にそう言う訳では……!」 「くれてやっから安心しな!」 ヘルガーは立ち上がってスイクンに覆い被さる。ふさふさした鬣を胸に感じる。スイクンが少し腰を落とした。勃起した熱の先が、すぼまった穴に当てられる。 「いただくぜ、マイダーリン」 ヘルガーが腰を押し付け、スイクンの領域に侵入する。入り口の締め付けが、こじ開ける先端に心地よい刺激をもたらし、その奥の空間は、うねった肉壁が優しく包み込む。その心地よさにヘルガーの表情が緩む。 「初めて挿れたときはあんなにキツかったのに、今じゃいきなりでもずっぽり挿入っちまうなんてよ……!」 「貴様のモノが凶悪だからだ……!」 煽られたスイクンは、仕返しとばかりに締め付けを強める。途端に心地よく声を漏らすヘルガー。 「あぁっ搾られちまう……!」 根元の瘤の手前まで挿入して、中での躍動を宣言する。その言葉通りスイクンの体内でドクンと刹那に膨れ上がって粘つく汁を漏らした。 「尻が熱い……!」 挿れられたスイクンも、ヘルガーの存在を熱と体積をもって味わう。 「動くぜ……」 ヘルガーが腰を引き、そして再び挿し込む。ぐるりと囲む襞が雄柱に予測不能の快感をもたらし、ヘルガーの呼吸を大きく乱す。スイクンは中で暴れ始める悪魔の象徴に刺激されて水柱をぴくぴく脈打たせている。 覆い被さる紫色の鬣に鼻を押し付けると、北風のような匂いが鼻腔をくすぐる。自浄作用のせいか体臭は殆ど感じないが、先程までの行為で滲み出た汗の臭いがほんのりと漂っている。 「ヘルガー……!」 浅い呼吸の中で、名を呼ぶ。 「おう、どうした?」 「貴様をもっと、感じたい……!」 振り向いたスイクンは頬を紅潮させ、潤んだ目つきで訴えてきた。不意に見せた極上の色気は、雄の欲望を一気にメラメラ燃え上がらせるに十分過ぎた。 「たまんねえ……誰にも奪われたくねえ……!」 ヘルガーの抽送は激しさを増す。擦れ合う淫肉の気持ちよさでスイクンの体内を徐々に汚し、粘りの強い炎タイプの空間に変えていく。そして段々強まるスイクンの獣臭さは、自分だけしか知らない隠された本来の一面だと、ヘルガーは喜びを露にする。犯され続けてプライドすら忘れたスイクンは、ヘルガーの力強い攻めに只管甘く鳴くばかり。普段の凛々しさからは想像だにしない女々しい姿と発せられる低くも艶やかな声は、ヘルガーに更なる喜びをもたらして一層快楽に陥れる。 「ぐうっ! 駄目だ……我慢できねぇ!」 歯を食いしばりながらヘルガーは腰を押し付け、露出していた瘤で菊門を大きくこじ開ける。 「ぐおぉ!」 「うあぁっ!」 ヘルガーは背中を丸めて身悶え、スイクンは拡張される感覚に身震いする。そして完全に瘤が体内に収まり、ビュルッビュルッと大量に先走る。ヘルガーは完全に腰をスイクンの尻に押し付ける。そして瘤が穴を広げて少し露出する程度に腰を引く。最も弱い瘤への刺激にヘルガーの後ろ足はブルッと震え、中でドクンと脈動する。そこから最奥へ腰を打ち付ける。 「ふぐっ! ぐるるぅ!」 歯を食いしばったまま快楽の声を漏らす。抽送の可動範囲は狭くなったものの、瘤は肉襞を押しのけ、挿入当初より膨らんだ柱は全体的に締め付けられて、得られる性感は段違い。腰を打ち付けたときに、スイクンの尻に黒い玉袋が当たる感覚も、ヘルガーの興奮の助けとなった。 「あ、あっ! あっ!」 犯されるスイクンも、ヘルガーの瘤によって前立腺が刺激されて、涙を流しながら激しく喘いでいた。棚引いていた尻尾は自らの膨れ上がった怒張に巻き付き、快感を増幅させて真下の水溜まりを広げる。ヘルガーから伝わった熱で体は火照り、汗に濡れた体はより一層感じやすくなっていた。フェロモンを発して雄臭い黒々とした体から流れる汗や口元から滴る涎がスイクンの鬣に染み込み、むわっとヘルガーの臭いを立ち上らせる。 「ふぐ! ふぐうっ!」 ヘルガーの怒張の付け根で何かが動き出す。水音を立てて腰を打ち付けても玉袋が当たらなくなり、近づくそのときを悟った。膨れ上がって筋張ったぬるぬるの剛直を肉襞と擦り合わせ、快楽に脈打って搾り出される先走りは次第に濃さと粘り気を強め、継ぎ目から滴る。汚したい、誰にも渡さない、孕ませたい、と本能的な感情が頭に渦巻く。 「あっ、あ、あぁー!」 スイクンもヘルガーの熱い怒涛の責めと雄の魅力に毒され、最早憚る事なく雌の如き嬌声を上げて迫る絶頂に打ち震える事しかできない。自分の中で種付けしようと変貌していくのを感じ取り、下半身が疼き始める。 「ぐうっ……スイ、クゥン!!」 付け根の圧が高まり、ヘルガーの巨楔はより奥へ届こうと更に膨れ上がる。尻尾はぴんと伸び、無防備な肛門がきゅっとすぼまる。その瞬間を目前にして、ヘルガーはスイクンとの子供を欲した。その確固たる思いを乗せて、太く長い雄の中を無数の遺伝子が駆け出す。 「グッ! グウゥゥゥウオォォォォォォォォォッ!!!」 命の流れが先端の出口を突き抜けた瞬間、死神の叫びとも例えられる不気味な咆哮を上げ、強烈な快感を伴って芯に響く躍動を発する。先端から勢いよく発射された命のエキスは更に奥へ続く狭い空間へ届き、うねる壁面に付着してそこから熱を伝える。 「ヘル、ガッ……クオォォォォォォォッ!!!」 中出しの衝撃に触発され、尻尾を巻き付けて刺激していた、スイクンの大きく張り詰めて筋張る巨柱から、真っ白なハイドロポンプを発射する。内側からの責めも相まって、忽ち足元に大きな水溜まりを作り上げ、つんとした青臭さが立ち上ってきた。ヘルガーはまだ続く躍動を感じながらスイクンの汚れた鬣に鼻を突っ込み、混ざり合う彼らの臭いを楽しむ。 「止めんか……背中に熱が籠る……!」 振り向くスイクンは快楽の蒸し風呂で完全に逆上せている。 「やめたかねーよぉ……」 蕩けた表情に欲を煽られ、より強く鬣に鼻を押し付けた。その間に段々と弱まる律動。ヘルガーは捕らえ続けていたスイクンの背中を解放する。ゆっくり向きを変え、中で捻じれる刺激に声を漏らしながら逆方向を向き、臀部を触れ合わせる。イヌ科の交尾の最後の仕上げ、交尾結合が始まった。更にスイクンに押し付けると、反転したペニスに持ち上げられた陰嚢が、結合部の上に当たる。 「あー幸せだぁ……」 舌を出して荒く呼吸を続けながら、スイクンと一つになった喜びに陶酔する。一方で楔に捕らわれたスイクンは溜息をつく。 「全く……誰か来たら&ruby(どう){如何};する!」 「マーキングしといたから誰も来ねーよ」 得意げに熱い鼻息を吐き出す。スイクンが昼寝をしているときから、風に乗って微かに尿臭が漂っていた。 「ふん、あの醜悪な臭いなら寄っては来ないだろうが、若し万が一の事が有れば……」 「なんなら見せ付けたっていいんだぜ? こいつぁ俺のモノだってよぉ」 「貴様ッ……!」 余裕に満ち溢れた惚気に羞恥の情が湧き上がり、スイクンの顔は熱くなった。 「なんだぁ。プライド捨てて欲しがっといて今頃おせーよ。かえってガン掘りされてるほうが素直だな」 「喧しい! 此の色おと……ああっ!」 「うおっ!」 スイクンが暴れると結合部が擦れて彼らに強烈な快感が襲い掛かる。交尾結合中のヘルガーの雄柱は射精の瞬間よりも大きく張り詰め、遺伝子を零すまいと強固な栓になる。その先端部の形状とスイクンの襞の凹凸は奇跡的に噛み合い、堅牢な結合となっている。これを引き離すのは至難の業だ。そしてスイクンの中に時間をかけて大量の体液を注ぎ込んでいく。時はまだまだ昼下がり、動きを大きく制限されている状況にも関わらず、ヘルガーの言う通り誰も来る気配がない。それでも周りを警戒し続けているスイクン。その下腹部がじんわり熱くなり、内側から満たされて膨れていく感覚に幾度となく集中力が途切れそうになる。それを知ってか知らずか、ヘルガーはお尻を押し付け、楔をより奥へ打ち込むとスイクンは身震いして嬌声を漏らし、反射的に中を締め付けた。ヘルガーも快楽に唸り、スイクンが険しい目つきでヘルガーを睨み付ける。こんな状況が一時間程続いた。 出し終えたと実感するや、急速に萎み出す犬柱。ヘルガーがスイクンから離れると、緩くなった結合は容易く解け、ブルンと雄液を撒き散らしながら犬柱が前方へ跳ね上がった。たっぷり種付けされたスイクンは腹部がぽっこり膨らんでくびれが消え、秀麗なボディラインが台なし。即座に丸くなった白いお腹に頬擦りするヘルガーと、それを渋い目で見つめるスイクン。こじ開けられた菊門から絶えず白濁が流れ出し、強烈な青臭さのみならず、行為中には強く感じなかったイヌ科の体液独特の金気を鼻で感じる。 「元気に産まれてくれよぉ俺のかわいいベイビーちゃん」 「誰が産むか! &ruby(そもそも){抑々};私はオスだ!」 スイクンは声を荒げてそっぽを向き、再び休んでいた木陰に座り込む。 「ううっ、くさい……」 大きな溜息をつく。今の彼は内から外から、ヘルガーに種付けのみならず臭い付けもされた状態。その前にヘルガーが立つ。いつ襲うかもしれない脅威からスイクンを護るかの如く。その後姿に、忘れもしないあの瞬間がフラッシュバックされる。否が応でもヘルガーを認め、胸を高鳴らせたあの瞬間を……。紅潮した顔を覆い隠すように、前足の足先で作った隙間にマズルを埋める。その気になればいつでも浄化して消せる悪臭ではあったが、彼はそうしなかった。振り向いたヘルガーがその様子に気付き、隣に座って寄り添う。顔を上げる事なくヘルガーを一瞥して、その目つきを険しくする。 「そんなカオすんなよ」 スイクンの頬をぺろっと舐める。その優しい仕草にも、雄としての自信が滲み出す。難関を乗り越えて初恋の相手と結ばれ、筆下ろしも果たし、尚且つ交尾で甘く鳴かせてしまえば、否が応でも自信に満ち溢れてしまうだろう。その相手が伝説と呼ばれるスイクンならば尚更である。 「貴様の所為で……此の有様なのだぞ……!」 鼻から漏れる大きな息で、前足の肉球は少し熱を持つ。 「なんなら今すぐにでも臭い消せばいいだろ」 「其れは……」 再び顔が紅潮するスイクン。ニヤニヤしている悪びれた顔に、突然水が飛んでくる。不意打ちに飛び上がり、顔を振るわせて水気を払う。 「この野郎! やりやがったな!」 「少しは黙って居ろ! 此の不快な臭いにも浸って居たい時も有るのだ」 「え……」 ヘルガーは耳を疑い、言葉を失った。 「お前がそんなこと言うなんて……」 かあっと頬が熱くなっていく。再びスイクンの横に伏せ、身を寄せる。視線をわざとスイクンから逸らす。黒い首に何かが触れる。少しひんやりして滑らかな毛触り。置かれた状況を察するや、胸の鼓動が大きくなる。振り向きたい衝動に駆られるも、見たら絶対離れるだろう。ヘルガーは欲を抑えて、なかなか素直になれない伴侶の貴重な愛情表現を受け止め続けた。首に掛かる重さと温度差が、快いものに思えた。先の行為の疲れが、一気に体に押し寄せてくる。 「アルトゥール……」 微かに聞こえた声。&ruby(まどろ){微睡};んでいたヘルガーには寝耳に水。咄嗟に振り向くと驚いたスイクンは離れてしまった。 「お前……さっき俺の名前……」 その驚きようは大きく開いた目から伝わる。スイクンは即座に平然を取り戻した。 「行き成り何だ。私は貴様の名はおろか、何も言っては居ないぞ。気の所為だ。全く、驚いたのは私の方だと言うのに」 「そうか、気のせいか……お前が知ってるわけねぇもんな」 気が抜けた反動で強い眠気に襲われ、大欠伸するヘルガー。そのまま顎を地面に着けると、目を瞑ってすぐに寝息を立てた。それをすぐ傍で見届けていたスイクン。 「貴様が群れを抜ける前から、私は気になって居たのだがな。お休み、アルトゥール……」 穏やかな顔で、既に深い眠りに入った愛しいオスの頬を軽く舐めた。染み付いたヘルガーの体液を浄化してから体を丸め、スイクンも夢の世界へ入っていく。誰も寄り付かないこの空間。午後の穏やかな日差しが、微かな北風を受ける枝葉に揺れつつ、番の体に斑模様を映し出していた。 -[[戻る>P-tan]] #pcomment