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初めての旅行 の変更点


[[ヤシの実]]
第六部作です。続きは作成中…

*初めての旅行 [#m29abcc2]



暖かい風が止み、熱く強い日差しが毎日のように差し込んでいく
桜の花を咲かした風は止み、また来る季節の為にしばらく安息の時を迎える
桃色の季節はいろいろな思い出や日々を運び去り、新しい季節へと変わっていった
心地よい春の季節は過ぎ、夏を迎えたのである
暖かい気温は一気に熱く、またいろんな生物を活発にさせていく
春…それはリセオにとって特別な季節となっていた、今思えばいろいろな事があった
憧れで飛び出した外の世界、初めて知った野生のポケモン、そして初めての体験…甘くて苦い体験…
すべては過去の事、そう過ぎ去る季節が教えてくれた
そして今は暑い季節の中でまた新しい思い出が刻んでくれるだろう
リセオにとって、それはいい思い出となるか、それとも嫌な思い出となるか、まだ分からない…あるいは…


夏がきて、外も屋敷の中も暑くなってきてた
昼間はセミの鳴く声が毎日のように鳴り響き、屋敷内は季節に合わせ、模様替えが行われていた
部屋中は所々クーラー機が取り付けられ、熱中症対策が万全に施されている
だけど全部の部屋が当然涼しいわけではない、当然ある所と言えばリビングや客室部屋など、そういったところである
ある部屋では扇風機をまわしっぱで休憩中の使用人が熱そうに肌を少しさらけ出しているものもいれば警備員はタオルで自分の汗を拭きながら暑さをしのぐ者もいた
クーラーは地球温暖化を増加してしまうと言っている為、一部の所だけが使用出来るようになっている
そんな中、屋敷の庭で魅惑な体を無防備状態なまま仰向けにだらしない表情で熱さに屈しているポケモン
春の季節にリセオの新しい姉として迎えられたエーフィのナリアがいた
「はぁ…熱い…何で今日に限ってこんなに熱いのよぉ~…」
熱さにブツブツ文句を垂れながら額の汗を手で拭う
周りでは、この豪邸な屋敷の主のペットであるイーブイのリセオ、それとリセオのひとつ上の兄であるヒトカゲのマッチ
二匹は猛暑の熱に負けずに楽しくボールで遊んでいた
暑さをものともしない二匹の元気さにナリアは自分が年寄りくさく思えてしまい、溜め息が漏れる
ナリアの心境を知った事じゃなさそうにリセオはマッチが蹴っているボールを後ろから追っていた
「待て待て~、あはは」
「ははっ、とれるものならとってみろよ~」
後ろで前のボールを蹴りながら必死で着いて来るリセオをからかう
それに本気になったリセオは体当たりをする勢いでボールに迫ったが、寸前のところで曲がられ、空振りで終わる
勢いが余ってうまく着地できず、顔から地面にぶつかってしまい、顔が汚れてしまった
「うぅ~…」
「おいおい~大丈夫かよリセオ?」
ボールを片足で抑えながら、軽く笑う
痛そうに鼻を押さえながらもゆっくり立ち上がるとえいっと掛け声をあげながら再びマッチに向かって突進してきた
驚いたマッチはボールを守ろうとするが、ボールじゃなくマッチ自身の後ろに飛び掛った
リセオの体重に押され、ボールを前に転がしたままゆっくりと地面に倒れる
ボールはまっすぐに転がっていき、数メートルさきの芝生で止まった
「ふふっ、ボールも~らったぁ!」
油断したマッチに悪戯な笑顔でボールを捕りに行こうとした
しかしマッチを飛び越えようとした瞬間、足をつかまれ、そのまま地面にパタンと倒れてしまう
「やったなぁ~、お返しだぁ!」
「わぁっ、ひゃ…ひゃははは」
仕返しと言わんばかりにニマッとした顔をすると、リセオの体をくすぐり、自由を奪う
脇や横腹などいろんな場所に手を伸ばしてはくすぐってくる指にリセオはこらえきれずくすぐったそう笑った
コチョコチョ攻撃に逃げるリセオの上にマッチはのしかかり、リセオを逃さないようにする
すでにボールのことはそっちのけになり、ナリアの前で仲のいい兄弟のようにじゃれあっていた
熱さを何とも思わない二人の元気さがナリアにはうらやましく思える
するとナリアの耳がピクッと動いた、後ろに近づいてくる気配を感じ取ったのだ
間をおいて起き上がらずにそのまま反対方向に向き直り、その姿を確認する
そこには沈んだ暗い表情をしていた警備犬であるグラエナ、クロイズがいた
ナリアはどうしたかと思い、首をかしげる
「どうしたの、クロイズ君?」
ナリアの心配するような言葉にクロイズはその問いには答えず、暗い声で本題を口にした
「皆様に伝える事があります…明後日に旦那様が遠くに旅行をするとの事で…」
「え、旅行?」
クロイズの言葉に最後まで聞かずにナリアが不思議そうに答えた
ナリアの声に、マッチとリセオもクロイズの方向に向き直る
「えぇ…仕度はすでに行われているので…では失礼します…」
そう言いきると、暗い表情のまま振り返り立ち去った
リセオはクロイズの様子のおかしさに疑問に思い、呼び止めようとしたが、何故か声が出なかった
するとマッチが横で小さな声で呟いた
「なぁリセオ、最近のクロイズ…なんかおかしくないか?」
マッチの唐突な発言にリセオは気になる
「おかしいって、どういうこと?」
確かに近頃のクロイズはこんな感じだが、リセオはそんなにクロイズがおかしいとは思わなかった
…多分仕事が大変で少し疲れているだけだと思っていた
「クスッ、そういえば最近の彼はちょっとおかしいわね」
聞いていたのか、リセオの背後に呟くようにナリアが言う
驚いたリセオは思わずマッチの後ろに隠れた
「ナリア姉ちゃんもそう思う?」
「うん、何かその~、いつもような厳しいような顔じゃなくて暗くなっちゃってるっていうかなぁ?」
「そうだね~、いつからだったっけ…あんな顔するようになったのは?」
疑問に思いながら横目でリセオに聞いてみるが、リセオ自身なにもしらないように首を横に振る
フフッとナリアが鼻で笑うとすぐさま話題を変えるように口を開いた
「まぁそんな事より、明後日って旅行でしょ?
 一体何処へ行くかしらねぇ~」
「ナリアは知らないのよね、ご主人様の従兄弟の別荘へ行くためにシンオウへ行くのよ」
楽しそうに言うナリアに横から声が掛かる、リセオとマッチとナリアをまとめる姉のミロカロスのラーナがノソノソとこっちに近づいてくる
「ふぇ、シンオウってぇ?」
リセオがラーナに近づき、首をかしげる
ラーナは苦笑しながらリセオに顔を近づけ答える
「そうよね、私も知らないけど、古い神々が祭られていると言う事を聞いた事があるわ」
「シンオウかぁ…うーん…」
シンオウと聞き、マッチが腕組しながら頭を悩ませる
「私もしらないわね、ここの地域以外の所は…」
「へぇ~、何だか面白そうだな~」
関心を持ったマッチが目をキラキラさせる、リセオはいまいち分からず、首をかしげている
「そういえば、リセオに血縁関係の姉がいたわね」
「え?リセオにお姉ちゃんがいたの?」
その言葉にナリアが耳をピクッと反応する
「えぇ、確か名前は…え~と…」
ラーナが思い出そうとしている内にマッチが何かを思い出したような顔をする
「あ、そうだ!この時間は『がんばれケッキング!』が始まる時間だ!」
庭の噴水の真ん中に立てられていた小さな時計台を見てマッチが叫ぶ
それはマッチが毎週楽しみにしているアニメ番組だった
「やっべぇ、もうこんな時間だぁ~…悪いけどリセオ、ボール片付けといて!」
「えぇ~、待ってよマッチ~っ」
時計の針はアニメ開始2分前を刺していた
慌てたマッチはボールをリセオにまかせると飛んでいくように屋敷に戻っていく
リセオもボールを必死に咥えながらその後を追って行ってしまった
「ふぅ…あの子ったらリセオにまかせて…もぉ…」
走り去るマッチにラーナが呆れ顔をする、するとナリアが気になるような顔でラーナに聞いてくる
「ラーナ姉さん、リセオのその…姉の事だけど…それってどういう事?」
「ん?あぁ、それはね、二匹が生まれてまだ間も無い頃ね
 従兄弟のおじ様とご主人様はリセオとそのお姉さんを一匹づつ引きとって、それで二人は別々の場所で住んでいるのよ」
「そうなのぉ、リセオ自身はお姉さんの事を覚えているの?」
「さぁね、私もご主人様から聞いただけだし、あの子もそんな事覚えてなんかいないでしょうね」
「(私以外の…そして本当のお姉さん…かぁ…)」
意外な真相を耳にし、複雑な気持にとらわれる
たしかに私はリセオのお姉さんをしているけど、本当のお姉さんじゃない…
本来はリセオをモノにするために姉をしているが、でもまんざら本当の姉として接したい気持ちもあった
しかしこればかりはどうしようもない、所詮は野生で生まれた私と屋敷育ちのリセオとの差、当然埋められる大きさではない…
でもラーナ姉さんやマッチもリセオの本当の兄弟ではないが、付き合いが長く、リセオ自身は本当の兄弟として打ち解けている
私も同様、毎日当たり前のように一緒に過ごし、時には夜な夜な熱い夜も過ごす事もあった
この屋敷の家族の一員として、リセオの姉として打ち解けていた
だけど、ラーナ姉さんが本当の姉がいると聞いたとたん、何だか無償に空しくなってきた…
リセオの本当のお姉さん、一体誰なんだろう…?
「・・・…リア、ナリア?」
ラーナが何度も声を声を掛けるが、上の空のナリアには聞こえていなかった
「ナリア!」
「あっ…」
大きな声で名前を呼ぶ声でようやくハッとし、ラーナに向き直った
「どうしたのあなた、ボーッとしちゃって…」
「ご…ごめんなさ~い、ちょっと考え事しちゃって…」
そんな事かと思い、呆れるラーナの前で空しい気持を悟られまいと、作り笑顔で誤魔化していくナリア、その時…
「ん、誰…?」
先に気づいたのはラーナだった、芝生を静かに踏みながら寄ってくるポケモンの気配を感じ取ったのだ
ナリアもその方向に振り向いた、するとその視線の先にはナリアの知っているポケモンがいた
「よぉ、久しぶりじゃん」
全身ハリのような体毛をしていて、常に獲物を狙っているかのような透き通るその鋭い目つき…
雄のような口調をしている反面、そのスタイルの良さは雌としての魅力を存分に引き出す雌のサンダースがいた
「誰あなた…何処から入ってきたの!?」
まるで吹いてくる風と共に現れたサンダースに警戒心をあらわにするラーナ
ナリアはキョトンと見つめたまま、やがて口を開いた
「アンリ…一体どうしたのよ、こんな所にきて?」
ナリアの友達、野生のサンダースのアンリだ
「知り合い…?」
ラーナが尋ねるとナリアはコクンと頷き、アンリに近づいていく
「いやね、ちょっと覗きに来てやっただけだよ
 それにしても大きいねぇお前の家って、こんな豪邸にすんでさぞいい暮らししてんだろ?」
「いやねぇアンリったら、家の中は一部しかクーラー部屋の中暑くてたまんないわよぉ」
からかうような口調のアンリに対し、苦笑しながらも返していく
一見ラーナから見ればただの友達同士に見えた
しかし外には丁度クロイズが見回っているこの庭で一体どうやって見つからずに来たのだろうか…?
「ねぇねぇ、そういえばこういうことがあったんだけどさぁ~」
そう言い、前足でこっちにこいと手招きしてナリアを引き寄せる
「え、何なの~?」
ナリアも面白そうにアンリと密着する
するとアンリはラーナには聞こえない声でヒソヒソと話しを始めた
「…ナリアのお友達だったのね、でも見つかれば追い出されるけど…大丈夫なのかしら?」
ボソッと言い放つ、だがいくらナリアの友人とは言えど不信なポケモンを屋敷に寄せてはいけない
でも流石にナリアの友達だったらそう警戒する必要もあるまいとラーナは思った
そう思いながら警戒する姿勢をとき、警備犬達を呼ぶこともなく、ナリア達の好きにさせてあげた
見つかったら大変なのだから出来るだけ早く帰ってほしい、そう思いつつ楽しそうにヒソヒソ話をする二人のを黙って見ていた
「おいナリア~、最近音沙汰もなしに連絡がないってどういうことだよ?」
顔を間近で迫りながらアンリがナリアに小声で呟く
「そんな事言われてもこの夏ごろから警備もまた厳重になってるし、それに私夏好きじゃないのよね、夏ばてしちゃうもん」
「警備が厳重ってお前…たんに動くのが面倒くさいだけだろ…」
ナリアの返答に呆れてうなだれる
分かりきったナリアの言い訳パターンにはほどほど愛想が尽きる
「だってぇ、夏ばてなんかしたら私の魅力が落ちちゃうじゃない?」
「アホか…」
尻尾をフラフラと動かし、頬を両手でスリスリしながらニコやかに言うが、馬鹿馬鹿しくて言葉に耳を向ける気にもなれない
「それにアンタ最近他の雄とするきは無いの?」
「あん?他の雄って言ったって、格好づけるブサイクな雄やヤりたがりなエロ野郎しか近寄ってこないし」
「そぉ、そんでまたリセオをね…」
面倒くさそうに言い放ち、軽く溜め息を吐く
夏になるまでに一体何度連れて行ったっけ…不意にそんな頭が過ぎったが、いちいち覚えてなんかいない
「そういう訳だからよ、なぁリセオまた貸してくんない?」
ニコやかな表情でナリアに頼むと、断る様子もなく黙って頷く
「いいわよ、存分に遊んであげてね、どうせ明後日は居ないんだし…」
「え?何でお前明後日はいないんだよ?」
「だってぇ、明後日私達旅行に行くんだもん」
ニコニコしながら、尻尾をまたユラユラ動かす
旅行と聞き、いまいち訳の分からない顔をすると再び尋ねる
「旅行ってお前…どこに行くんだよ?」
「えっとねぇ、シンオウ地方って所に出かけるのよ、なんでもあそこは古来から伝わる伝説が多いみたいでねぇ
 ウフフ、アンリ達の知らない所にいくんだ、楽しみ~」
少々自慢気に言い放つナリアに少しムッとする
屋敷のポケモンだからいろんな贅沢が出来るとは聞いていたが、最近調子に乗りすぎだ
「へっ、すっかりいい身分じゃんか、羨ましいよ」
「まぁね~、帰ったらお土産話でもしてあげるわよ~ん
 んじゃまた後でリセオを連れて行くわ、ひとまず私はリセオと一緒にテレビを見に行くわね」
アンリに背を向け、尻尾をさよならと言わんばかりに振る
上機嫌な態度のまま友人と別れを告げるとそのまま屋敷の方に向かいだす
「……なぁ」
屋敷に向かう足を止め、アンリの呼び止める声に振り返る
「ん?まだ何かあるの?」
「いや、そういう訳じゃなくてさ…えっと…」
さっきまでの口調とは違い、何かを言いたげなようだが言いづらそうにモジモジする
「どうしたのよ、アンタらしくないじゃない、言ってみなさいよ?」
迫られると目をナリアの顔に向け、ゆっくりと口を開く
「あのさ…俺も連れてってくれないか、そのシンオウ地方にさ」
アンリの言葉に驚き、耳がピクンッと動く
今までプライドの高いアンリが自分から連れて行ってほしいなんて言葉が聞けるとは思わなかった
「…アンリもシンオウ地方に行きたいの?」
「あぁ…俺もさ、いい加減同じ所にいるのも飽き飽きするし、それに他の遠くの所にも言ってみようかなっと思ってさ」
まるで子供みたいな理由で淡々と言い、その言葉に疑う必要は無かった
ん~っと下を向いて考え込む、少し不安そうに尋ねる
「えっと…ダメかな?」
その言葉にさらに唸るように考え、やがて顔をあげる
「まぁいいわ、ご主人様に頼んでみるよ」
「あぁ、すまないなナリア」
「別にいいわよ、でもアンリが頼み事なんて珍しいわね~」
確かに自分らしくないと思い、その場で下を向いて恥ずかしさを誤魔化している
しかしアンリの中で暗闇の森以外での知らない土地が疼いていたのだ
「う…うるさいな、とりあえずリセオはいいよ、そんじゃぁな」
照れを隠すようにそっけなく言い放つとすぐさま高速移動でその場を風のように立ち去っていく
それを知っているようにナリアもフフッと笑い、尻尾で別れを告げる

・・・・・・・・・・・・・・・

まだお昼頃、気温は高まり、セミのなく声がうるさく鳴り響いている
屋敷の使用人達はその熱さにジッと我慢して業務に全うする者、熱さに負けて人目のはばからない所からグッタリしている者もいる
そんな中廊下で熱そうに汗をかいたまま猫背になっている使用人のポケモンのピカチュウのシノ、シノの姉であるアブソルのエナと並んで歩いていた
二匹はいざとなった時の為に屋敷内配備されているが、最近これといって何にも起こる事がなく、暇だから屋敷内をほっつき歩いていたのだ
しかしガラス越しに差し込む太陽の暑い日ざしに流石にシノがやる気のない顔が表に出ている
「はぁ…なんでこんなに熱いんだよ…やってらんないよなぁ…」
「仕方ないでしょ、夏なんだし…ホラ、シャキッとしなさいよ」
だらしない格好で歩くシノに注意する、面倒くさそうに言われたまま背筋を戻す
エナは退院し、額の傷跡を残し、体はすっかり元通りに直っていた
「それにしてもリセオ様とマッチ様は元気があるよなぁ、よくこんな熱い中遊んでいられるよ」
「あら、アンタも若いんだからお二人と交わって遊んできたらどうなの?」
「五月蝿いなぁ…エナ姉まで子供扱いすなよ!」
にやけた顔でからかわれ、横目で睨むがあまり迫力は無い
これでも大人だと言い張るようにエナに説教をしだすが、すべてハイハイで片付けられてしまった
何を言っても聞かないエナにブスッとすると背後から声が掛かかる
「もしもし、お二人さん」
振り返ると他の使用人のポケモンであるイルミーゼのランがいた
なにやら両手にいろいろ入った荷物を掲げながら重たそうに飛んでいる
「ラン、なにその荷物?」
エナが尋ねると熱い廊下の中顔色ひとつかえずにほほんと荷物を目の前に差し出す
荷物の中にはいろいろな物が積んでいた、地図や虫除けスプレー、それにカメラなどその他いろいろとあった
「それって、リセオ様達の旅行の準備?」
ランに向き直ると黙って頷く、シノがその荷物の量を見て驚いた
「ってかすげぇ量だな、何キロあるんだよこれ…」
一見すると7~8キロはする荷物をランは両手に持っている
「そうですかぁ~?」
重たそうな荷物を顔色ひとつかえずにのほほんと持っているランにシノそっちのほうに驚いている
「でもこれって使用人達がすることでしょう?なんでランがしてるのよ」
「う~ん、この暑さで他の人がばてちゃったものですから私が変わりにしているんですよぉ~」
多分それはさぼりではないだろうか、一瞬エナの頭でそうかすめたがあえて言葉にするのはやめた
今日の気温は特に高く、人でなくてもこの暑さではボーッとしてしまいそうだ
「そっか~、んじゃがんばってくれよ~」
そっけなくランを応援するだけでシノはその場を行こうとする、普通「手伝おうか?」っと気の利いた台詞は出てこないのか?
「こらシノ、女の子が重たそうに持っているのにアンタはがんばれぇ?」
半場呆れながらエナがシノを呼び止める、シノは振り返りもせず手を振って再び応援
ムッとしたエナが高速移動でシノに飛びつくとその後ろ首を子供を持ち上げる用に咥えた
「わっ、ちょ…何すんだよエナ姉っ!」
「ほら、アンタも手伝いなさいよ!」
そう言い、ランの目の前でシノを降ろした
面倒くさそうにエナを一瞥し、心の中で呪うと仕方なくランの持っていたもう一つの荷物を抱える
「ありがとぉございますぅ、たすかりますぅ」
両手で楽々持ち上げながら飛んでいるのに対し、足を踏ん張りながら荷物に視界を閉ざされて千鳥足見たいにヨロヨロと歩いているシノ
「くぅぅ…おもてぇぇぇ…何でこれを両方ももてるんだよランはぁ…!」
「何言ってんの、アンタが非力なだけでしょ?」
エナに叱咤され、横にいたランに笑われてしまい恥をかいてしまった
「んじゃエナ姉がもてよ、馬鹿力あるんだから…いてぇ!」
半場からかいざまに言うとエナに頭を小突かれてしまい、落としてしまった荷物に顔を埋めてしまった
「うっさいわね、全く…!」
怒り気味のエナに、再びランが口を押さえて笑っている
「くっそぉ…そんなんだから今だに恋人できねぇんだよ、このおてんば姉貴!」
反撃にとまた言ってしまい、再び頭を小突かれてたんこぶを二つ作ってしまうはめになった
その光景を横目でクスクスと笑っているラン、シノとランは赤っ恥をかいてしまった

やがて3匹は広いロビーに到着し、荷物を赤いカーペットの上で荷物を降ろした
「あーっ…疲れた…」
荷物を降ろしたシノが重たい肉体労働から開放され、息を切らしだらしなくロビーでぶっ倒れた
「何倒れてるのよ、ここで老いても仕方ないでしょ
 ホラ、さっさとおきなさいよ」
エナの一言に脱力しながらもゆっくりと立ち上がり、また重たい荷物を嫌そうに持ち上げる
元気の無くうなだれている尻尾を引きずる
普段なら使用人がやることなのに、ロビーには誰も折らず、シノはそんな現状を呪いながら部屋の真ん中に置いた
「まったく…他の使用人が戻るまで待たない~?」
大の字でぶっ倒れているシノが面倒くさそうに言う
「そうですねぇ、なんなら私が呼んできましょうかぁ?」
「えぇ、お願いね」
「分かりましたぁ、クロイズにも手伝ってもらいますぅ」
クロイズ…
するとシノの顔が急に強張ったそしてランを呼び止めると
「あんな奴に手伝ってもらう事なんて無い!」
「シノ…」
シノの怒鳴り声に思わず振り返る、さっきまでのだるそうだった表情はなく、怒りを込もった一言がランを呼び止める
その一言によってランとエナ、そしてシノの周りには重たい空気が流れた
少々ながら、シノの肩は怒りで震えていた
だが、落ち着きを取り戻し、顔をハッとさせると慌てて作り笑顔を浮かべる
「あ…ごめんごめん、今のは気にしないでよ」
その表情にはいつもの調子のいいシノが写っていた
だがエナの曇った表情は収まらない、場の雰囲気に耐えられなくなったシノが、責任を感じたのか自分が呼んでくると言い残して部屋を出て行った
「………」
以前重い空気は漂う、やや間をもってランが相変わらずな顔でエナに口を開く
「エナさん、シノ君はやはりあの事をまだ根に持っているのですかぁ?」
エナは黙って頷く、エナ自身はあの事などもう気にはしていない、だがシノには嫌な記憶として残っていた
クロイズへの怒り…
あの時エナはサンダースとの戦いによって重傷を負ってしまい、短期間の入院生活を余儀なくされた
外部の損傷思ったよりひどく、そうとうやられたみたいで医師達も懸命な治療に当たっていた
シノは震えていたそうだ、タンカによって運ばれるエナを見つめながら…
その後の事情はエナは知らない、目を覚まし後になってランから聞かされた
エナがタンカで運ばれた後、一部始終を目撃していたザンサから聞いたようだ
会話内容はまでは聞き取れなかったが、クロイズはシノに姉の事で詫びをしようとしていた
当然と言えばそうかもしれない、この惨劇はクロイズの勝手な行動から始まったことなのだ…
シノはあれでも結構心の広いピカチュウであり、周りから調子の良い人気者として親しまれていた
いつものように心を広くして許してくれるとザンサは思っていた
しかし、シノは肩を震わせ、遠くから覗いていたザンサにも響くほどの声でこう言ったそうだ
――――お前のせいだ、この馬鹿野郎!!――――
呆気にとられたクロイズの前にその言い放つと勢いよく走って行ったのを見たそうだ…
それからと言うものを、クロイズとシノが会話をするところを見たことがないそうだ
「そりゃ~仕方が無いといえば仕方が無いと思いますぅ、シノ君があそこまで怒るのも分かりますからぁ」
ランが頷きながら呟く、エナは首を横に振りながらそれを否定しようとする
「違うの、あの子は仲間が傷つくのが嫌なの、私が無茶をしてあんな事になったのがいけなかったの…だから…」
「ふぅ~ん、大変ですねぇ弟を思いやる姉って言うのはぁ」
うな垂れるエナに肩をポンと手を置き、慰める
しかしエナの表情に明るさは戻らない、今のシノは完全にクロイズを憎んでいる
たとえ自分がどう弁解しようとしてもシノは聞いてくれない、気分は重くなる一方だった
「今は落ち込んでもしょうがない事です、時間が二人を治してくれるのを待つのが一番ですよぉ」
相変わらずな調子でよしよしと頭を撫で、エナを励ます
「うん…ありがとうラン…」
ランの気遣いに答え、少しだけ口元を吊り上げ、笑顔を見せた

時計の針は夜の10時を刺している、荷物や準備などすませ、リセオの部屋で明後日の旅行に胸を膨らませてウキウキしているリセオとマッチがいる
ベッドの上でリセオ達は楽しそうにお喋りをしていた
「シンオウ地方にはどんなアニメをやっているのかなぁ」
「ん~、どうだろうねぇ、僕の好きなポケノートとかもやってればいいな」
「ふぅ、せっかくの旅行なのにあなた達のする会話はアニメしかないの~?」
ベッドからピョコッと顔を出したナリアが半場呆れながら言う
「え~そんな事ないよ、シンオウの名物とかもすっげぇ楽しみだし、おいしいかな~シンオウ名物」
マッチの頭の中でいろいろな料理が駆け巡り、思わずよだれをたらしてしまう
「マッチはもぅ…リセオはシンオウいったらどうする?」
苦笑するナリアに質問を向けられ、少しエッとするも少しモジモジしながら答える
「僕は…ラーナ姉さんが言っていた、お姉さんの顔を見てみたいな」
その言葉にナリアの表情が戻る、ナリア自身も行ったらまずそれを確かめてみたいと思った
リセオのお姉さんとなれば、どんな人だろう
「リセオは女みたいな顔してるからな~、多分男みたいな顔かもな~」
悪戯半分に言うマッチにリセオは横目でありえなさそうに訴える、それに女みたいなのは余計だ…
「そうね~、ホントに記憶にないの?」
「うん、僕物心ついているときに一緒に居たのはマッチだけだったから」
「ふぅ~ん」
ベッドの上で両肘で顔を支えながらボーッと考え込む
しかし分からないものを考えてもしょうがないと思い、ナリアはベッドに飛び移る
「まぁ行ってみれば分かる事よ、もうそろそろ寝る時間だし、二人とも寝なさい」
リセオの頭を撫でながら優しく言う、マッチは素直にはいと返事し、リセオはちょっと言いづらそうに返事する
「フフ、それじゃお休みリセオ」
頭を撫で終わるとそっと頬に口付けをする、リセオは驚いて後ろからベッドに倒れてしまう
「あ~、リセオだけずるい、俺にもしてよぉ~」
横で見ていたマッチがだだをこねる、ナリアははいはいと言いながらマッチの頬に優しく口づけをする
「へへ、そんじゃおやすみ~」
「うん、おやすみマッチ」
キスされて嬉しそうに微笑むと先に夜の挨拶をすませ、リセオの部屋を出て行った
リセオもそろそろ眠たいとベッドの上で目をこすり、小さくあくびをする
「僕も眠たくなってきたよ…ナリアさんおやすみなさい……」
「はぁ…ほんとにお姉ちゃんって呼んでくれないんだね、リセオは…」
突然溜め息をつき、自分の部屋に戻ろうとせずにリセオに近づく
ナリアの寂しそうな眼差しにキョトンと見とれてしまう、リセオに顔を近づけ、訴えるような眼差を向けると
「やっぱり私が本当のお姉さんじゃないから?私がリセオのお姉ちゃんに相応しくないから?」
「えっ…?」
突然向けられた質問に唖然とする
それは演技でなく、珍しく悲しそうな彼女の表情にリセオはどう言ったらいいのか答えに迷う
「リセオ、私はリセオが好きよ、姉としても…
 だからいろいろ努力はしているわ」
今思えば、リセオはずっとナリアの事を「さん」付けで読んでいた
「……」
「やはり私の事が嫌い、私が求めるから?」
何ともいえなくなり、リセオはその質問から逃れるように布団をめくって潜ろうとする
しかしナリアは布団を掴み、布団を乱暴に投げ飛ばす
布団はベッドから飛び、ふわりと空中をゆっくりと床に落ちていく
「ふぁ、ナ…ナリアさん…僕はただ…」
その言葉は続かなかった、ナリアは寂しい瞳を映したまま何も言わず、リセオの口を塞いだ
思わずリセオは手足をジタバタさせるが両手を押さえつけ、口を離す
「私がこんな事するから?」
さらに質問は続く、リセオはそんな質問に答える余裕はなく、もがくように抵抗をする
無駄なのを分かっているけど、なんだか今日のナリアさんは怖い…
その抵抗がナリアの表情をさらに寂しくする
悔しいのか寂しいのか、いつも見たいにリセオと接する気持ちと違う、自分でも分からないほど空しい気持になっている
「は…離してぇ…嫌だぁ…!」
「リセオ…」
やがて、ナリアは自分からその押さえる手をどけ、プイッと後ろを振り返った
何も言わず、ベッドから飛び降りると自分の部屋を向かうようにトビラを空けて出て行った
リセオには何が何だか分からなかった、今日のナリアさんはおかしい…
後姿の尻尾は、元気が無さそうに下がっていた
何かあったんだろう、思わず声を掛けようと思ったが、何だか怖くてできない
もう寝よう、とにかく明日の事だけ考えよう…
床に落ちた布団を口で引っ張り、自分のベッドに戻すと乱れた形のままリセオは布団に潜っていった

シンオウ地方出発の当日、天候は恵まれた青い空が浮かび、太陽が照りつける
門前でベンツに向かうリセオの主人に、数人の使用人達が見送りに来ていた
警備員のそばではクロイズとその他のグラエナ2匹と共に姿勢良く座っている
運転手が荷物をトランクに詰め込み、出発の準備をしていた
マッチはご機嫌そうに自分用のリュックを背負い、今にも行きたそうにしている
ラーナも行くのだが、体長が長いために彼女だけは一回モンスターボールに収められた状態で行く事になった
「今日は旅行の日~、楽しみだよな~リセオ」
「うん」
リセオも嬉しそうに頷いた、リュックと昨日買ってもらったサイズの合った麦藁帽子をかぶりながら尻尾を機嫌よさそうに揺らす
「ん、ナリアはまだか?」
「ナリア様はお友達を連れてくると言ってクドと一緒に迎えに行かれましたが?」
「あぁそうか、そういえば友達も連れて行くと言っていたからなぁ」
執事と主人の会話を聞き、二匹がえっと同時に言う
「ナリア姉ちゃんが誰か連れてくるの?」
マッチが主人に尋ねると頭を撫でながら頷いた
「そうだな、たしか…えっと名前はなんと言ったかな?」
主人が頭をひねって考えていると遠くから声がした
「ただいま~、連れて来たわ~」
「あ、ナリア姉ちゃん」
「ふぇ?」
リセオとマッチが同時に振り向いた、するとリセオは絶句した
そこにはアンリがクドと一緒にこっちに向かっているのが見えた
「ふぁ…ア…アンリさん!?」
「あれ?リセオ知っているのか?」
マッチの言葉にリセオは返事が返せない、ありえないポケモンを目の前にただ呆然としていた
「ほぉ、君がナリアの言っていた友達かい?」
主人はかがんでアンリを覗き込む、アンリは敵意を示すこともなくニコッと会釈する
「おはようございます、今日は私のわがままを聞いてくれてありがとうございます」
なんともアンリとは思えないほど丁寧な言葉遣だ、リセオは呆気にとられ、ナリアはすみで吹いていた
それに気づくこともなく主人は笑い返す
「あぁ、ナリアのお友達とならば一匹や二匹は大丈夫だよ、そろそろ出発する頃だし、乗りなさい」
「はい」
アンリは女の子らしい会釈をまたすると、車に移動しようとする
「………?」
遠くから、クロイズが不思議そうにアンリを見つめている、その後ハッとした
…どこかで見覚えがあると思ったら、あの時自分がナリア様を汚してしまったときに運悪く出会ったサンダースだった
「あっ…!」
思わず顔が引きつり、アンリに向かって声が漏れる
するとアンリは声に一瞬振り向いた、だがクロイズを気にも止める事もなく車の後部座席に飛び移る
「荷物積み終えました~」
「うん、そろそろ出発するぞ、三人とも乗りなさい」
「はぁ~い」
二匹が返事を返す、だがリセオだけ額に汗を流し、足が石になったみたいに動かなくなっている
「…リセオ?」
さっきまで旅行ではしゃいでいたリセオが車に乗ろうとしない
顔には不安の色が浮かんでいた、どうしたのかな?
心配そうにマッチが声を掛けるとリセオは何でもないと弱い声で言いながら引きずるように足を動かした
「それでは言って来る」
主人がサイドシートに座り、使用人達の見送りの挨拶が一斉に聞こえる
出発するメンバーが全員乗り、後部座席の右からナリア・リセオ・アンリ・マッチの順に座る
ドアが閉まり、運転手も乗り込み、車のエンジン音がかかり、ようやく出発しようとするその時…
「よろしくな、リセオ」
アンリがリセオに身をよせ、耳元でそっと呟いた
「楽しい旅行になりそうだね、フフフッ」
その一言にリセオはゾクッとするような悪寒が走る、リセオは返答をすることもなく、上目使いでアンリをじっと見るしかなかった
門が開き、これからいろんな事が待ち構えると思うシンオウ地方へ向けて走り出した

やがて車で2時間ほど進み、フェリーに到着する
運転手はそこで主人とリセオ達をおろし、主人はそこで前もって予約していたシンオウ行きのチケットを手に取り、一同は中に入っていった
清掃された建物の中は、他の旅行客や仕事目的で利用する人が溢れていた
この時期は旅行者が多く、家族づれがごったがえしていて、受付には長い列を作っていた
もちろん人の客だけでなく、中で離されているポケモンなどがジッとしたり待ちくたびれたのかそこらへんをウロチョロしているのもいる
ベンチは沢山の人が座っており、座れるベンチが3席ほどしか開いてなかった
そこでリセオ達は待つように言われ、それまでアンリを除く3匹はベンチに座って待っていた
マッチはごったがえす客を退屈そうにチラチラ見る、そんな中リセオはまるで居心地が悪そうな表情でとなりのナリアを横目で見ていた
ナリアはそんなリセオの視線をなんとも思わず、ただボーッと真っ直ぐだけを見つめている
その様子にアンリは気づいており、ナリアにそぉっと近づく
「ちょっとそこら辺うろついて来るわ」
声を掛かけようとすると、ナリアは自分から席を立つと勝手にどっかに行ってしまう、それを見たリセオがホッと胸を撫で下ろしているのが分かる
そっけない態度からしておかしいと思った、車にのってからナリアは2時間一言も喋っていない
じゃれようとも笑いかけることもなく、ただ車の窓から外の光景を見つめていただけだった
いつものナリアの態度の違いやリセオの反応が気に掛かってアンリは口を開く
「なぁリセオ、ナリア何かあったのか?」
「えっ、んっと…えっとぉ…」
「そう言えばナリア姉ちゃんなんかつまんなそうにしてたけど、どうしたの?」
横から割って入るマッチにリセオは答えずらそうに口ごもる
「それは…そのぉ…」
もしかして一昨日の夜が原因なのか、あれからナリアさんと一度も喋っていない
それどころか僕と顔を合わせようともしない
怒ってるのかなぁ、でも何でそんなに怒ってるのか分からないよ…
頭の中で何度か自問自答するが、まるでナリアの気持が分からない
リセオは質問に対して何も答えず、ただうな垂れる
「まぁいいや、ど~せいつものきまぐれだろ」
どうでもよさそうに言うとナリアの座っていた席に飛び移り、マッチは退屈紛れにシンオウマップを開いて見所欄を見る
「すみません、どちらへ行かれるのでしょうか?」
声の主は下を向いていたリセオに向けられる
顔をあげると、そこには全身黒色の体毛に覆われた体に赤い耳、氷の如く透き通る赤い瞳に琥珀とも思える綺麗な額の紅色した宝石
鋭そうな爪を持っている割にはその危機感を感じさせず、品格がありそうな雰囲気を漂わせるポケモンがリセオに向かって軽く会釈をしている
「ふぇ、誰ですか?」
見知らぬポケモンに声を掛けられ、また動揺しながらもそれを表に出ないように対応する
「えぇ、お連れの方がシンオウのマップを開いていた所を見たものですから、もしかしたらシンオウに行かれるんじゃないかと思いまして」
キョトンとしながらもコクンッと頷く
リセオの返答にやはりと思い、ほのかに笑顔を見せる
「やっぱり、私も今日シンオウへ行くのですよ、奇遇ですわね」
「う、うん、そうなんですか」
まるで仲間を見つけた様に喜び、優しい眼差しで笑いかける
「って言うか、お前誰なんだよ?」
横で見ていたアンリが突っかかるように声を濁らす、気に入らない物でも見るような厳つい視線はそのポケモンに向けられる
「あ、これは慣れ慣れしくて失礼しました…」
やや真をおいてそのポケモンは改まったような表情で口を開く
「私、ポウセと申します、あなた方と同じシンオウへ向かうのですよ」
「へぇ~、お姉ちゃんもシンオウへ旅行なの?」
「あ、いいえ、私はシンオウ出身なので帰るんです」
「シンオウ出身なんだぁ、シンオウって知らないポケモンがいるって見たけど、お姉ちゃんもシンオウのポケモンなの?」
人見知りを知らないマッチは瞳を輝かせながら聞く
リセオはマッチのそういう性格がある意味羨ましく思える
「えぇ、私はマニューラと言うポケモンですわ、ウフフ」
マッチはポウセと名乗る雌のマニューラにすっかり興味津々となり、お互い笑い会っていた
ただアンリはその様子を気に入らなさそうに見つめ、冷たい眼差しを向ける
「一体何なんだよお前、俺達に何か用かよ?」
背中の毛を少々ながら鋭く尖らせ、敵意を示しているのがわかる
そんなアンリの態度にポウセは少し焦る表情が浮かぶ
「あ…すみませんでした、今日シンオウに戻れるからつい興奮してて…その…」
つい調子に乗ってしまった事を謝ろうとするが、アンリの睨みに口ごもってしまう
リセオは思わず前に飛び出し、アンリを制しようとする
「ア…アンリさん、やめてくださいよぉ…」
「チッ、分かった分かったよ…」
リセオに制されて睨むのをやめる、すると人ごみの中からナリアが戻ってきた
「あ、ナリア」
「ただいま、みんな何をしてるの?」
ナリアが今の現状を尋ねるとポウセの方から口を開く
「あ、始めまして、私はポウセといいます
 あなたもシンオウへ旅行ですか?」
「そうよ、それが何か?」
ポウセの会釈にナリアは流すように返事を返す
まだ機嫌が悪いのかとリセオは俯いたまま見つめ、アンリも退屈そうに席に寝るような体制で座っていた
「話をしたら行き先が同じだと聞いたのでよろしければご一緒したいと思うのですが…どうでしょう?」
「私は別に…」
「うん、それなら一緒に行きましょうよ、僕もシンオウの事が聞きたいし」
ナリアが言い終える前にリセオが席から飛び降りると尻尾を振りながら賛成する
嬉しくなったポウセはリセオと同じ視線で座り、頭を撫でる
「おい、いいのかよリセオ?」
「いいんじゃない、私も行く途中まで退屈だから構わないわ」
ナリアもリセオの意見に同意した、ポウセは嬉しくなり改めてありがとうございますと礼を言った

やがて会話が弾んだところでアナウンサーがフェリーの到着を告げる、リセオ達が乗るシンオウ行きのフェリーだ
ポウセは一回自分の主人の所へ戻ると言い残し人ごみの中へ去っていく
「またせたな、それじゃ行こうか」
主人が戻ってくるとすぐさま一同は席から降りる
自動トビラを出ると甲板には2隻ほど浮かんでおり、リセオ達の乗る3番乗り場がシンオウ行きで、もう片方はカントウ行きとなっている
シンオウ行きのフェリーには人が押し寄せるように移動を始める、流石に夏休みだけあって列も半端じゃない
これだとカントウ行きのフェリーもでも同じような事になっているに違いない
窮屈な人ごみの中ようやく船の中に入ることが出来ると主人が船内のボーイにチケットを見せる
ボーイはお待ちしておりましたとチケットを受け取り、他の旅行客の行く所とは逆方向に案内をする
通りは綺麗な青い絨毯を敷いている上にクーラーもばっちり効いている
リセオが窓に飛び移り景色を見つめると、まだ人ごみの列を作っている旅行客が写っている
やがてボーイが部屋のトビラを開くとそこは、屋敷とはまた一見違った豪華な部屋だ、テーブルにはワインも置いてある
どうやら一流の客室のようだが広さはそんなに無かったが、一人と複数のポケモンが居るには十分すぎる広さだった
シンオウ地方まで3時間、リセオ達はそこで待つことになった
ボーイがごゆっくりと告げると静かにトビラを閉めとさっきまで熱さでイライラしていたアンリがご機嫌そうに喜ぶ
マッチは荷物を背負ったままふかふかなベッドにダイブする
「ふむ、新型の船と聞いたが中々なものだなぁ」
どうやらこの船は新しく出来たばっかのようだ、関心するように主人が辺りを見渡す
関心している時にポケットの中のモンスターボール、ラーナが出たいとガタガタ震わせている
すっかりラーナの事を忘れていた主人がモンスターボールを投げる、ここだったらラーナくらいの体長のポケモンが出てもそう問題はないだろう
「ふぅ、ボールの中は狭苦しくていやね…」
ラーナはようやく出れたと言ったような表情で、溜め息混じりに登場する
「ラーナ姉さん、一緒に甲板に行かない?」
「えぇ、退屈だったし行きましょ」
退屈まぎれとナリアの誘いに頷き、二匹とも扉から出る
マッチはしばらくガラス越しに見える外の光景を楽しみたいのか、一緒に行こうとはしない
隣のアンリはベッドの上で猫のように丸まっている、しばらくベッドの気持ちよさを満喫していたいようだ
主人もイスに腰を掛けてなにやら携帯で会話をしているようだ
船内が揺れ、大きな音が響きわたる、船が動き出したのだ
これからシンオウまで数時間、リセオは広そうで狭い船の中で一人ポツンとたたずんでいる
「暇だなぁ、僕も甲板に行こうかな…」
ただし、ナリアさんとは出来れば会わないようにしたい…
一昨日のあの夜以来からなんとなく、ナリアさんと顔を合わせずらい
「ラーナ姉さんと一緒だから、大丈夫か…」
リセオは部屋に残っている連中に一言声を掛けると自分も扉を出て行った

船はすでに陸を離れ、前方の甲板には数人の乗客がその光景を楽しんでいる
とても広く、子供が走り回っても大丈夫なくらいに広い
さすが新造した船だけあって、広さもスペースも申し分が無い
リセオが甲板に到着した頃にはすでに陸はほとんど小さくなっていた
「ふわぁ、気持いい~」
強い風があたりリセオの毛がなびく、気持良さそうに喜ぶ
景色も見ようと人と人の間をくぐり抜け、柵を乗り越えて景色を覗く
空には沢山のキャモメが三角の列を作り、気持良さそうに飛んでいる
「すごい、もうあんなに陸が遠くなってるよ~」
じょじょに遠くなる陸を見送りながら関心するリセオ、すると後ろから声が掛かる
「もしもし」
「ん?」
振り返るとそこには先ほどのマニューラのポウセがいた
「もしかして…お一人ですか?」
首をかしげ、もじもじといった様子で言う
「あっ、さっきのお姉さん」
「えぇ、私一人部屋の中にいてもつまらないので、ご一緒していいですか?」
「うん」
頷き、隣を開けてあげるとそこに入る、強い風が二匹の毛をなびく
「そういえば、まだ名前を聞いていませんね」
「ん、僕リセオって言います」
「そう、よろしく、リセオ君」
丁寧にリセオの名を呼びながらほのかに笑みを見せる、リセオもお返しとニコッとする
「フフッ、リセオ君はシンオウの何処のホテルに泊まるのです?」
「ううん、僕はご主人様の別荘でお泊りするんです」
「へぇ、それはすごいんですねぇ」
「うん、それと向こうでは僕の本当のお姉さんがいるみたいなんだ」
「本当のお姉さん?」
リセオの顔を覗き込み、首をかしげる
「あのあなたと一緒にいたエーフィさんやサンダースさんとは違いますの?」
その問いに小さく首を振る
「ううん、ナリアさんは本当のお姉さんじゃないんだ、アンリさんはナリアさんの友達で…」
この話題についてあまり喋りたくないのか、途中で口ごもってしまう
「そうなんですかぁ、クスッ、あなた見たいな可愛い子が弟なら、お姉さんはさぞ可愛いのでしょうね?」
「そうかなぁ…?」
う~んと首をかしげる、その様子にまたクスッと噴出す
「ねぇポウセさん、シンオウ地方の事、いろいろ教えてくれませんか?」
「えぇ、いいですよ、シンオウは古くから時を渡ったりしたり空間を渡るポケモンなどが…」
まだ知り合ったばかりなのに、二匹はすぐに友達といった関係になったのか、会話が弾む
それを遠くから見ている者があった
「……」
「あらリセオ、あの子はお友達かしら?」
景色に飽きたナリアとラーナが別の場所に移動の途中でリセオを見かけたのだ
「あれ、フェリーで会った子…」
「え、そうなの?」
リセオの方を見つめながらコクンと頷くと、ラーナが感心する眼差しで言う
「へぇ、あの子でも他の友達を作る事ができるのねぇ、いいわねぇ…ナリア?」
横目でナリアに問いかけようとしたがナリアは居ない、ナリアは何の返答もなしにさっさと前を進んでいく
キョトンと後を追っていく、おかしいと思いながらナリアの横顔を覗く
平然と、まるで目にもくれないような様子で歩いている、ただなんとなくムスッとしたような感じがした
声を掛けようとしたが、出来なかった
…喧嘩でもしたのかしら、昨日二人とも一言も喋っていなかったし…
落ち着かない様子で、何かにイライラしているようなナリアを見て、ラーナはそっとしておこうと思った
ナリアと通り過ぎたリセオの交互にチラッと見ながら、反対側の甲板へと移って行く

・・・・・・・・・・・・
船内の時計はお昼の12時15分を指している、乗船してから3時間たったお昼頃
甲板で散々遊んできたリセオが部屋に戻ってきた
ご機嫌そうにただいまと言い、マッチが乗っているベッドの上に来る
ご主人の姿は無い、用事で部屋を出たと思う
「ずっと外を覗いていたの?」
飽きもせず外の光景を楽しそうに眺めながらうんと言う
「リセオ、ナリア達と一緒じゃなかったのか?」
隣のベッドのアンリが尋ねると首を横に振る、一緒じゃないと分かると退屈そうに欠伸をする
「そういえばもうお昼だね、ナリア姉ちゃん早く帰ってこないかな?」
「う…うん、そうだねぇ」
今帰ってきたばっかのリセオだが、てっきり二人とも先に戻っていたのではないかと思っていた
まぁこのまま待てばいづれ来るだろう…
しかし、そう思いながら待ち続けて10分が経過した
すでに主人は戻っており、ナリアを待つようにイスに腰掛けている
テーブルの上にはボーイが持って来てくれた昼食と、ポケモン用のエサが用意されている
ナリアが戻るまで食べないつもりだが、流石に遅すぎる、ご主人のスープはすっかり冷めてしまっているのに…
「おっせぇなぁ…たくっ…」
イライラしながらボソッと愚痴をこぼす、流石に気になったアンリはベッドから降りるとリセオに近寄る
「リセオ、一緒に探しにいくよ」
「ふぇ、僕も…?」
「いいだろ、早く見つけて飯…食事にしたいじゃん」
それは同感だと、リセオもしぶしぶ頷く
マッチも早く食べたいようだ、これ以上待たすのは可愛そうだし…
「そんじゃ、探してきます」
「おぉ、頼んだよ、アンリちゃん」
一言挨拶を済ますと扉を出て、リセオもその後を追って行った
お昼頃なのか、乗客はそれぞれ部屋か船内のテーブルで食事をしているせいで通路はあまり一通りが少ない
お昼頃なのか、乗客はそれぞれ部屋か船内のテーブルで食事をしているせいで通路はあまり人通りが少ない
こっちも早く食事をしたい気持を抑えながらアンリがまた愚痴る
「全く、何処をほっつき歩いてるんだよアイツは…」
後ろのリセオが困った顔をしているが、イラだって気にする様子もない
もともと短期なアンリなだけに、どう声を掛けて紛らわそうか言葉が詰まる
出来れば下手に声を掛けないほうがいいのかもしれない…
愚痴を少々こぼしつつ、通路を歩き回ったが見つからない
ふと考え、もしかしたらまだ甲板の方にいるんじゃないかと思い、思ったほうへ行っては見たが、空いたテーブルと誰もいないだけの辺り一面の光景が広がっているだけだった
「ここでもないのかなぁ…?」
ここでもない、そう思い別の所をあたろうとしたその時、ガヤガヤする人の声がした
「なんだ、あの人だかりは?」
何やら左の甲板の方で人だかりが出来ている、気になったアンリが真っ先に向かう
視界をさえぎる人の足を器用に潜り抜ける、体の小さいリセオも続こうとした
だが体の大きいアンリみたいにうまく潜り抜けれず、邪魔な足の柱にてこずっている
どうしてアンリさんはすれすれと潜り抜けれるんだよ…、頭の中で疑問に思いつつ、ようやくアンリの元へたどり着いた
「ふぇぇ…ついたぁ…ん?」
溜め息をつきながらアンリを伺う、何か唖然とした様子で真っ直ぐを見つめていた
首をかしげながら自分もアンリの向いている方向に目をやる
「ふぇ…!?」
目の前には後姿のナリアと、心配するような目で見つめているラーナ
その先には、甲板に横たわっているゴルダックとクサイハナ、そして憤怒しながら全身に電気を帯び、殺気立っているライチュウがいた
乱暴に倒された円型のテーブルと錯乱しているイス、そして目の前で倒れているポケモン…
まるで野蛮な映画番組を見ているような光景だった
「おいおい、一体どうしたんだよこれ!?」
「喧嘩だってよ、知らないポケモン同士の!」
後ろにいた子供が興奮しながら喋っている
その言葉に、リセオは今の状況が理解するのに時間が掛かった
これは、喧嘩だ…!
「おいこの野郎、よくも二人をやりやがったなぁ!?」
目をギラつかせたライチュウがナリアを睨みながら乱暴に言う
それに動じる様子もなく、負けじと睨み返しながら舐めるような口調で言い返す
「何よ、あんた達が最初に絡んできたんじゃない!」
「よ…よしなさいよナリア…!」
ラーナが制しようと注意をするが、まったく聞く耳を持とうとしない
「おいおい、喧嘩じゃないかこれ…」
喧嘩…どんな理由があるのか分からないが、ポケモンバトルとは違う殺伐とした空気が流れている
アンリが状況を見る限り、倒れている二匹はすでにナリアによって倒されてしまっていると見た
「こいつぅ!」
「…!」
二匹は互いに睨み合いを続け、その様子を誰一人止めようとしない
下手に制しようとすると巻き込まれそうなほどの殺気が漂っている
「チッ、雌だから加減してやったら調子に乗りやがって…後悔させてやるっ!!」
先に出たのはライチュウだ、強い電気を体中にまとい、スパークで向かってくる
危険を感じ取ったナリアはとっさに姿勢を低くし、横に跳ねてスパークをよける
怯まずライチュウは向きを変えると攻撃の手を休めず突進してくる
あたるまいとテーブルに着地したあとすぐさまテーブルを強く蹴って跳ねる
勢い任せに突進したライチュウは止まる事ができずテーブルに衝突する、テーブルは衝撃ですごい勢いで投げ飛ばされ、壁に衝突するとスチール製のテーブルが木っ端微塵になる
楽々と二発の技を避けられたライチュウは神経を逆撫でされ、さらにきつい目を向ける
対象にナリアは見下すような冷たい視線を返し、すぐさま戦闘態勢に戻す
「この雌猫がっ、落ちろってんだよぉ!」
体中から激しい電撃が飛ぶ、10万ボルトを当たり構わず放った
「五月蝿い鼠ね!」
流れ弾のように襲い来る10万ボルトを左右に避けながら、ナリアの目が赤く光る
サイコキネシスを横たわっていたイスにかけ、操ると目標に向かって投げつける
素早い速度で向かってくるイスに避ける様子も無く、しゃらくさいと言ったような顔をすると尻尾を先端を思いっきり振りかぶり、跳ね除ける
そのイスもまたテーブル同様に壁に衝突し、木材の屑と化する
イスの破片が散り散りなり、リセオ達のいる連中に降り注ぐ、見ていたアンリが驚き思わず頭を押さえる
ナリアは攻撃の手を緩めず、次は口から虹色の光線を放つ、サイケコウセンだ
放たれた光線は綺麗な色の残存を残しながら一直線にライチュウに突き進む
避けたばかりで体制が整ってなかったライチュウは舌打ちをし、片足で地面を蹴るとそれをかわす
無理な体勢での回避だったせか、宙で体制を崩すと瓦礫と化したテーブルやイスの山に墜落する
「うわぁっ!?」
破片の屑を撒き散らしながらその場で蹲ってしまう
背中の衝撃と痛みで苦痛に顔をしかめながら起き上がろうとするが、激痛がそれを許さずに起き上がるのを邪魔する
その機を逃すまいとナリアは睨みながらライチュウに駆け寄ると宙を飛び二度目のサイケコウセンを放つ
しかし当たるまいと足掻き、10万ボルトを宙を浮かぶナリアに向かって放電する
強力なエネルギー同士がぶつかり合い、炸裂する
大きな爆発音と風圧で周りの乗客が騒いだり驚いたりのオンパレードが響く
「こら、待ちなさい!」
騒然とする乗客の間を船員の3人が割って入くる
近づいて抑えようとするが、起き上がったライチュウが再び電撃を撒き散らして近づけなくする
「うおぉぉぉ、この野郎っ!!」
「キャァッ」
「うあっ、くそぉ、止む得ない!」
騒動を静めようと止む得ずモンスターボールを構える船員
それを見たナリアが、軽く舌打ちをすると戦闘を止め、甲板を蹴って反対方向に逃げ出した
「あっ、てめぇ、待ちやが…うわぁっ!?」
追いかけようとするライチュウに、船員が繰り出したエビワラーとハブネークの二匹に取り押さえられる
ナリアも捕まえようともう一匹のハヤシガメが走り出すが、通路の曲がり角に突き当たると見失ってしまう
唖然とするリセオとアンリ、駆けつけた船員が乗客をなだめようとする声も耳には入らない
「ふぅ…怖かったわ…」
騒動が収まり、ラーナがリセオ達のところに近づく
「その、何があったんですか?」
アンリがなれない敬語で尋ねるとラーナは首を横に振って呟く
「ここじゃアレだから、部屋に戻ってから話すわ」
「はぁ…まぁ戻ろうリセオ」
コクリと小さく頷き、アンリの後ろをゆっくりとついていく、横目でライチュウが抵抗をやめて観念しているのが見える
誰のトレーナーだが知らないけど、せっかくの旅行気分が台無しだ
まだ騒然としている乗客達を後に、自分達の部屋へと戻っていく

部屋に戻る、すでにナリアは戻っているのだと、そう考えながら自分達の部屋の扉を開ける
しかし予想は裏切られ、部屋に残っているマッチとラーナ、そして主人がまだかと待ち遠しいような態度で待ち構えていた
どうやらナリアはここには戻ってないようだ
主人にナリアはと聞かれ、事情を説明しようかと悩んだ、そしてリセオは首を横に振るだけにして喧嘩の事については話さなかった
「やれやれ、ナリア姉ちゃんよっぽど船の中の散歩が好きなんだなぁ」
そういいつつ、食事のポケモンフードを食べ終えたからを後にマッチがイスの上でダラダラしている
流石に待ちきれずに食べてしまったのだろう
「ねぇラーナ姉さん」
「ん?」
リセオが小声でラーナを呼ぶ、ラーナは顔をリセオに近づけて聞く
「ナリアさん、なんであんな所で喧嘩をしていたの?」
「そうね…あえて言うと向こうが悪いと言った方がいいかしら…」
ラーナが語りだすとアンリも興味津々そうに体を寄せて聞く耳を立てる
「ナリアが何故か分からないけど、急に不機嫌そうな顔をしていたから何か言おうと言葉をさがしていたら、そこでね…」
「そこで?」
「いきなりあの三匹が絡んできたのよ」
誰だかは聞くまでも無い、あの時あそこで横たわっていたクサイハナとゴルダック、そしてあのライチュウ
ラーナの話によると、あの3匹は甲板ですれ違いざまにいきなり声を掛けてきたらしい
「確かあのゴルダックが…『ね~そこの美人ちゃ~ん、いい体してるねぇ、俺達と一緒に遊ばない~?』ってね…
 あんなのは無視しようとナリアに言ったのよ、最初はナリアも頷いてはくれたけどね…」
ここでラーナが溜め息混じりに口を開く
「無視して横切ろうとしたら、『お前何ツンツンしてるんだよ、もしかして欲求不満?』って、そしたらナリアが…」
丁寧に喧嘩相手の台詞まで忠実に再現してくれる
リセオは口を開いたままポカンとしていて、横にいるアンリが不愉快な表情で毒づく、同じ雌だからその怒った理由が分かるのだろう
「それが、喧嘩の発端なの?」
「えぇ、まるで糸が切れたみたいに、いきなりだったわ」
「へんだなぁ、いつものナリアだったらそれくらいの雄けなして素通りすんのに…何イライラしてんだアイツ?」
「ナリアさん…」
リセオはただシュンとするだけで、やはり一昨日のあれが気にしているんじゃないかと心の内に心配していた
ナリアは未だにどこうろついているのか分からない、機嫌を直して帰ってくるのをまつしかなかった
「…ところで、いい加減食べない食事にしないか3人とも?」
すっかり忘れていた昼食、何があったか知らない主人は待ちくたびれたような表情をしながら、冷め切ったスープを溜め息混じりに見下ろした

あれからナリアが戻るまで随分部屋の中で待った、外はすでに夕日が海の方へとしずみかけている
しかしナリアは今だ部屋には戻ってこない
長い船旅にマッチは流石に外を見るのも飽き飽きしていてテレビを見ている
船内のテレビはルームサービスによって映画やドラマ、アニメなど配信されている、マッチはテレビに近づいて『がんばれ、ケッキング!』を見ていた
「あはははは、おもしろ~い」
テレビの向こうのケッキングが走っている途中でバナナで滑っているところを指差してわらっている
その後ろでベッドに座っているアンリが心の中で「こいつブサーッ…」とテレビの中のケッキングにそう思いつつ一緒に見ていた
「………」
「ん、おいリセオ~、一緒に見ようぜ?」
マッチがリセオを呼ぶが、リセオはボーッと下を向いたまま返事をしない
「リセオ、どうしたんだ?」
「あ、ごめんマッチ…ちょっと考え事をしてたんだ」
「どんな事だよ?」
「うん、お姉さんの事をね…」
リセオの悩みをふぅ~んと興味なさげにテレビに戻す
「…ねぇ、マッチ」
「ん?」
今度はリセオが口を開いた、マッチはアニメのほうに集中しているのか、適当に返す
「もし本当のお姉さんやお兄さんがいると言われたら、マッチは信じる?」
「そういわれてもなぁ~まぁ別に構わないんじゃない?」
「ふぇ?」
「確かにそりゃびっくりしちゃうかもしれないけどさ、でももしそれが本当の兄弟だと思っても、大して変わんないよ」
あまりに簡単な返事にリセオはキョトンとした
「俺はナリア姉ちゃんやラーナ姉ちゃんの事を本当の姉だと思ってるし、だいたいシノだってエナを姉みたいに思っているじゃん」
「うん…」
「だからさ、リセオもそんなに悩まないで、あったらあったで、笑って挨拶してみろよ」
その言葉に、思わず笑みがこぼれる、なんだか少しだけ気分がすっとした
そうだよ…血の繋がった姉とあったからって、僕達兄弟の関係が崩れるって訳じゃない
今までどおりの関係になればいいんだ
リセオは嬉しくなり、顔をあげると笑顔に戻る
「うむ、もうすぐだな」
イスに腰をかけた主人が新聞を折りたたむとその場で腰を上げる
「もうすぐシンオウにつくの?」
「あぁ、ナリアがまだ戻っていないようだが、探して行ってくれないか…」
言い終える前にドアが開く音がした
ナリアが戻ってきたのだ、何食わぬ顔をしてただいまと言う
「あれ、ナリア、お前今までどうしていたんだよ?」
「えぇ、ちょっとね…」
「ナリア、どこ行ってたのよ、心配したわ」
「うぅん、大丈夫、心配かけてごめんね」
「ずっと船の中を散歩してたの?」
「えっと…まぁそんな所よ、クスッ」
みんなでナリアを取り囲み、ナリアは何ともないようにニコッと笑みを送った
リセオだけ、遠くから見つめながら黙っていた
「あ…」
目が合った瞬間リセオの口が開いた、リセオは何か言おうとしたが、口ごもって何を言ったらいいのか迷った
その時、汽笛がなり響いた
『ピンポーン、間もなく、シンオウ地方に到着いたします、お荷物をお忘れなく、気をつけてお降りください』
アナウンスが鳴り、シンオウ地方の到着を告げる
夕日が完全に沈み、窓の外には遠くながら目的の地、シンオウ地方が見えてきた
「よし、そろそろだな、みんな準備しなさい」
そういって、ラーナだけをボールに戻し、他は船を降りる身支度を済ます
何も言わずリセオの横を過ぎるナリアにリセオは何か言おうと口をパクパク開くが、何も言葉がでなかった
部屋を出ると外で待っていたボーイに案内される、船内は降りる準備を済ました乗客が列を作っていた
着いた場所はミオシティの船着場、貨物船が行き来したりする港町だ
そこでようやく長い船旅から開放され、乗客たちはそれぞれ自分達の目的地へ向かってバラバラに散っていった
「ふむ、たしか迎えの車が来ているはずだが…」
フェリーから出て、コンクリートの床を進みながらあたりを見回す
マッチは、初めての大地にウキウキしながらマップを片手にいろんな建物を見やる
すると道路から一台の車がリセオ達の目の前で止まる、車から降りた運転手は主人の元に近づく
「お待ちしておりました」
「おぉ、お迎えご苦労」
「どうぞお乗りください」
そう言い、みんなと荷物を車に乗せて車は走り出した
車は真っ直ぐと光る街灯を道しるべとして進み、通り過ぎる途中で乗客と何人かすれ違う
他にも何台か車とすれ違った、夜になった町は家やビルが電気をつけ、まるで旅行者を出迎えているみいに建物が点々と輝く
その光景もつかの間であり、車は森の中を進むとミオシティを抜ける
マップによると、この先の218番道路は水で横断されて車じゃ通れないはずだが、工事によってミオシティとコトブキシティを繋ぐ車道が出来ていたのだ
車は1~2時間走り続け、窓越しにアンリとマッチが知らない光景にはしゃぎながら喋り、リセオも同じように外の光景を静かに楽しんでいた
コトブキシティを過ぎ、公式マップには載ってない森へと進む
やがて森の中の一本道を進むと大きな建物が見えてきた、目的の別荘だ
車はそこで停車し、一同はそこで降ろされた
「ついたぁ~」
船と車の長旅でようやく目的地に到着したマッチは思いっきり背伸びをする
「ここが別荘かぁ、ナリアの家とちょっと違うな」
別荘は屋敷とは違い、比べるとやや小さいが外見は別荘として文句なしに管理された庭に綺麗な煉瓦の屋根、いかにも新築そうな別荘だ
さっき車を運転していた人が管理人であり、掃除や整備を欠かさずに手入れをしていてくれたのだ
リセオ達は自分達の荷物を持つと、別荘の中を入ろうとした
大理石の階段を上ってドアを開けようとしたその時、ドアは主人の手前に開いた
「ん?」
下を向くと、一匹のポケモンが顔を出した
全身水色のような透き通る肌、氷を纏うようなその風貌に対し優しそうに見える青い瞳
別荘の外灯の光に反射するほどの優美な体に、体まで伸びているネクタイ見たいなお下げが似合う
それにナリアとは違ったおだやかな感じが伝わってくる、どうやら雌みたいだ
そのポケモンは主人を過ぎると真っ直ぐに、リセオの手前のところで止まり、ジッと見つめだす
「ふぇ…?」
いきなり現れた見ず知らずのポケモンにリセオは首をかしげる
「………」
観察しようとするでもなく、ただジッとリセオの顔を見つめる
「あ…あの~…」
その視線に恥ずかしいのか、困った表情をしながらチラチラッと目線をそらしたりする
「リセオ…?」
ポケモンはゆっくりと口を開き、リセオの名を呼んだ
少し驚き、目を大きく開く
…何で僕の名前を知ってるの?
「あなた…リセオなの?」
その問いに、リセオは目線を合わせたまま黙って頷いた
すると、返事をもらったポケモンは顔を驚きと喜びに満ちた表情になり、そして
「リセオ~ッ!」
そのポケモンはリセオに向かって前足で抱きついた
「ふぇ…!?」
ヒヤッとするような肌がリセオの顔を包んでいく
いきなりな抱きつかれ、リセオは困惑と赤面で頭が混乱しそうになる
相手は気にしてはいないかもしれないが、雌特有の膨らみがあたっているから 更に困惑してしまう
「リセオ~、会いたかったぁ…!」
まるで愛おしいかのように、強く抱き、ニッコリと笑みを浮かべる
「ふぁ…苦しい…」
リセオが苦しさに顔をしかめると、そのポケモンは我に返り、とっさに手を離す
「あ…ごめんなさい、大丈夫…?」
「おい、何なんだよアンタ…!」
リセオが返答を返す前にアンリの方から言葉が出た
ムッとしながらリセオに抱きついているポケモンに問いかけると、そのポケモンは驚くこともなく、ゆっくりとアンリの方に向き直る
「いきなり失礼しました、私はヒュレイと言います」
氷のような綺麗な瞳と凛とした声の前に、アンリは突っかかる勢いを失う
「どうしたの、お客さん・・・?」
ヒュレイと言うポケモンが人挨拶を済ますと後ろの扉から女性の顔が出てくる
黄色髪のロングヘアー、20代前後の女性だ、肩を露出するセミロングの衣装が少々派手な印象を与える
「よぉ、久しぶりだな」
「おじさんじゃない、ようやく来たんだ
 あ、その子もしかしてリセオじゃない?」
女性が主人に目を向けるとパッと明るくなり、親しげそうに主人とリセオに声を掛けた
リセオからしたら初対面なはず、しかしその女性はまるで何年ぶりかのような態度で見つめてくる
「ふぇ…?」
「あ~懐かしいわねその顔、あの時と全然変わってないわね」
「そういうお前のイーブイこそ、随分変わったみたいじゃないか」
「えぇ、去年進化したのよこの子、綺麗でしょ?」
二人が同時にヒュレイに向き直る、ヒュレイはニッコリと微笑み返す
「立ち話もなんだし、中に入ってからゆっくり話しましょ」
そう言い、荷物は管理人にまかせて一同は別荘の中に招き入れられた

時計の針はもう8時を回っていた
あれから夕食を食べ終え、あの金髪の女性に広い部屋に案内された
みんなは自分達の荷物を部屋のすみに置き、部屋の周り飾ってある背景絵を珍しそうに眺めたり、ベッドの上ではしゃいでいたりしていた
一見普通の部屋に見えるが中は大人五人分が部屋でくつろいでいても邪魔にならないくらいに広く、ベッドもポケモンの人数分用意されている
広いだけでなく、テレビや子供の玩具、更にはエアコンにソファーもある
窓ガラスは開閉が自由でいつでも外へ出る事ができ、別荘を囲む木々をはっきりと映し出すほど綺麗に磨かれている
多少整備されているおかげで、空の見渡しもよく、夜でも月の光に照らされる森の綺麗な光景が目の当たりにできるのだ
流れ星がいくつも流れてきそうなほど夜空の星はキラキラと輝いていた
もし、カップルがこの夜空を眺めていたら、良いムードに浸るに違いない
そんな中、一匹窓ガラス越しに外の夜空の星を眺めているナリアが呟いた
「はぁ、とっても綺麗ねこの星…私が住んでいる森じゃ見ることができないわね」
ナリアも綺麗な夜空を心地良さそうに、しかし表情はほんの少しだけ寂しそうだった
かんじんのリセオがいないのだ
先ほど客室に呼ばれたリセオは荷物をおいてさっさと出て行ったのだ
「リセオ、遅いわねぇ…」
「すっげぇなこの部屋、別荘ってこんな広い部屋があるんだ」
「アンリぃ」
弱い声で、ベッドの上で気持ち良さそうにくつろいでいるアンリを呼ぶ
「ん?」
「私、変かな…?」
先ほどまで心地良さそうな表情をしていたナリアが、シュンとした顔で尋ねる
「はぁ?お前どうしたんだよ?」
「ううん、ちょっとね…、何だか変な気分なの…」
「ふーん、せっかく居心地のいい所に来たのに、どうかしたのかよ?」
「はぁ…リセオがあのヒュレイって子と一緒に向こうにいっちゃったのよね」
クロイズが言っていたリセオの血の繋がった姉弟の事を口にだすと思わず溜め息をついた
「それがどうかしたんだよ?一緒に行けばいいじゃないか」
当たり前の事を言うが、首をゆっくりと左右に振る
気持ち的な問題のせいで一緒に行くことが出来なかったのである
「あぁもうじれったいな!」
朝からいつもと態度の違うナリアにいい加減苛立ちをつのらせ、ベッドから飛び降りる
「一人で行くのが面倒なら一緒に行けばそれでいいだろ?」
その一言で、少しだけ気持ちが揺れ動いた
「確かに、今日始めてあったポケモンに何恐れているだろう…私…」
「ったく、こんなナリアじゃこっちまで調子が狂うよ、ほら、行くよ?」
早く着いて来いと、自分はいつの間にドアの前で突っ立っていた
「あんっ、待って、ちょっと家の中を散歩してくるわね~」
「うん、行ってらっしゃい~」
マッチに一言言い残し、すぐにでも行こうとするアンリの後をナリアは飛ぶように追いかけていった

清掃されたばかりの廊下、特別な木材を使っているせいかほんのりと香を漂わせる
いくつか客室用の部屋を通り過ぎ、正面の突き当たりの扉へと向かう
その扉の中は丁度ご主人と金髪の女性が中で話し合っているはずだ
そこにいるリセオを尋ねようとしたら…
「あ、待って!」
「あん?何だよナリア…」
言い終える前にナリアがシーッと声を抑えさせる
「どうしたんだよ一体?」
「あそこにホラ…」
ナリアの前足を指す方向に、リセオ達がいた
二匹は部屋の扉の前で向き合うように話をしているようだ
何故部屋に入らずにあんな所でヒュレイっと言う子とと一緒にいるのかなっと疑問に思う
「…何喋ってるのかしら?」
立ち話を盗み聞きするのは本意ではないが、気になるあまりにナリアは大きな耳を聞こえやすいようにリセオ達のほうに向ける
この距離だったら気づかれることは無い
「大きくなったねぇ、リセオ」
「えっと、僕、お姉さんの事、まだ知らない…」
明るく話しかけるヒュレイに対し、リセオは申し訳なさそうにシュンッとしている
「お姉さんだなんて、私の事はお姉ちゃんで呼んでくれていいのよ
 …まぁ仕方が無いわね、私がリセオを最後に見たのはまだ3つの時でリセオは2つの時だったから」
「…」
2歳となればそれなりに記憶は残っているのだが、リセオはそんな事は覚えてはいない
時と言う時間の流れが自分の肉親をすっかり忘れさられたのだろう
「でもこの感触は変わってないわね
 ほら、リセオの肌から感じるこの温もり、今でも覚えているわ…」
ヒュレイはそっとリセオを抱き寄せる、思わず驚いてしまうが不思議と抵抗しようとはしない
顔は赤くなってしまうが、なんとなくこの感触が冷たい肌を通して覚えているような気がした
「ねぇ、僕のちっちゃい頃って…どんなのだったの?」
抱かれたまま、リセオは口を開いた
「ん~っと…それはとにかくちっちゃくてね、いろいろな所を歩き回るから追いかけるのにも苦労したのよ
 危ないところにも入ろうとするから、よく体を引張って止めていたわ」
優しく微笑みながら、昔の事を懐かしそうに語るヒュレイに、リセオの心は少しずつ開いていった
それにしても、昔っからやんちゃで外に出たい気持ちはあったらしい
「リセオと別れてから、私は別のご主人様に引き取られてね、そして今は新しいご主人様と一緒にここに住んでるの」
「へぇ~、そうなんだ」
「ふ~ん、そうなのね」
リセオと、遠くから立ち聞きしているナリアの声が丁度重なった、無論向こうには届いてはいない
新しいご主人とは、あの金髪の女性の事だとナリアはすぐに悟った
あの綺麗好きそうなご主人だけあって、ヒュレイも文句の言いようの無い綺麗な容姿をしているのも納得ができる
ナリアもはじめ見た時は綺麗と思った
…でも、そんな事ない、私の方が綺麗だもん
リセオだってそう思ってくれているはず…
中の良さそうな二匹を、少し膨れた顔でジッと見続ける
「私ね、リセオに会えて本当に嬉しいの
 引き取られてから、ずっと寂しかったから…」
「ふぇ?」
「私の住んでいる家のは、みんないっつも忙しそうにしてたから、まともに相手にされてなかったの
 だからいっつも空を眺めながら思っていた、弟に会いたいなって…」
視線は自然に上を向いる、天井越しの夜空を見るような瞳で呟いていた
「…僕もね、いっつも自由に外に出る事が出来なかったから、外に出たい~って思ってたんだ」
リセオもヒュレイを見上げるように、無邪気な瞳を向ける
「ウフフ、昔っから行っちゃ行けない所に行くから、あなたのご主人様が禁止したのよ」
「う~ん、僕そんなに動き回っていたかなぁ~?」
ヒュレイの腕の中で一生懸命思い出そうとする
それを愛おしく見たヒュレイは前足で小さな頭を撫でる
「ねぇリセオ、向こうは楽しい?」
「うん、楽しい事いっぱいあったよ
 ちょっと怖い事もあったけど…」
最後の所だけかすれるような声で言う、不思議に思ったヒュレイがどうしたのって尋ねる
「ううん、何でもないよお姉ちゃん、僕も会えて嬉しいよ」
いつものようなやんちゃな笑顔で自分の中の怖い思い出を掻き消した
いつの間にか、リセオの心はヒュレイに開いていた
それに答えるように、姉の顔もまた子供の面影を残したような綺麗な笑みを浮かべた

「…っ!」
お姉ちゃん、リセオの口から出たその言葉が自分の中で、エコーするように響いていく
リセオと同じ一員の姉となって、一度も言われた事が無かった言葉…
自分と言う姉にとって、言ってもらいたかったその言葉…
ナリアの視線は二匹を捕らえず、自然と下を向いていた
「ふ~ん、あれがリセオの姉貴ってか…
 人間に飼われてる奴ってあんなにポケーッとした奴ばっかなのか?
 俺ってどうも人間に飼われているポケモンって苦手だね、どいつもこいつもなんか上品ぶってそうだしさぁ?
 なぁ、ナリア…ん?」
アンリが後ろの方に振り向いた瞬間、そこに居るはずのナリアが居なかった
「おい、ナリア?」
さっきまでそこに居たはず…何処へ言ってしまったんだ?
辺りをキョロキョロさせるがやはり居ない…
「船の時といい、一体どうしたんだアイツ…?」

別荘の扉が激しい音と同時に乱暴に開かれる、一匹のポケモンが風のように飛び出した
ナリアが電光石火の如く、地を蹴って森の奥へと進んでいく
「……っ!!」
凄まじい速度で、目的もなく、邪魔な木を避けながら無我夢中で森の中を駆け巡る
瞳からは怒りなのか、もしくは悲しみと言ったものが浮かんでいた
ナリアの中で、リセオの言葉が蘇る
お姉ちゃん…お姉ちゃん…
たったそれだけの言葉が…しかし何度も何度も、ナリアの中で鬱陶しいくらいに響いていく
「はぁ…はぁ…!」
何でこんな言葉なんかで…!
ナリアの心は一本の尖った針が突き刺さってるかのように動揺している
とにかく走った、無意識に進んでいった
そして、次第に足は止まっていく
後ろからは別荘が手の平に納まりそうなほど小さくなっていた
だがナリアはそんな事には関心ももたず、ただ走り疲れた息を整えていた
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
疲れて下に向いていた首を真っ直ぐに向けた、その視線の先には何のへんてつもない木があった
…何よこれ…とっても邪魔…!
その木を目にするや、その木を睨むように目付け、体中からオーラを放っていく
すると木はメキメキッと何かを折り曲げるような鈍い音を発しながら徐々に斜めにずれていく
胴体からは亀裂が入り、左右に向かって徐々に広がっていく
やがてバキッと激しい音がすると同時に下半身を切り離され、宙に浮かぶ
ナリアは上半身だけになった無残な木をただ黙って睨み、やがて顔を左に大きく振りかぶる
それに従うように木は勢いよく投げつけられ、すぐ近くにあった大木にぶつかっていった
「うわぁ、痛っ!」
衝撃で大木は大きく揺れ、枝の上で寝ていたパチリスが頭から地面へと激突してしまう
「うぅ…痛いよぉ…」
落ちた衝撃で頭にコブができ、痛そうに頭をさする
眠っている最中に突然起こされ、さらにコブまで作ってしまい、完全に不機嫌な様子で起こした張本人に向き直る
「誰だ、痛いじゃないか!」
「…」
ナリアは謝罪をする様子もなく、カンカンに怒っているパチリスを見下している
「せっかく寝ていたのに、一体なにしやがるんだこの馬鹿野郎!」
可愛い顔して言葉遣いは少々悪いが、その一言でナリアの表情が変わる
怒りのこもった表情が真っ直ぐとパチリスに向けられる
殺気と言ってもいいのだろうか、氷のように突き刺す目は、すぐにでも襲い掛かりそうなほど殺気だっている
「う…うぁ…」
ナリアの表情に、パチリスはたまらずその恐怖から逃げるように走り夜の森の中へ消えていった
「…ふんっ!」
何かをする間でもなかった、逃げていくパチリスを追う事もなく、ただこの不愉快な気分を晴らしたかったが、かえって空しくなる
勢いで放り投げられて、大木の根元で無残な形で残っている木に目もくれず、夜空を見上げる
広がる夜空の景色に目を向けるが、自分で綺麗だと言っていた星も、今じゃナリアの表情は緩むどころか逆に余計にしかめっつらになる
「……クソッ!!」
…鬱陶しい
気に食わない、何かが気に食わない…何でこんなにイラつくんだろう…
初めてよこんな事…私がこんなにイライラするなんて…
「何で…何でよ…!」
高ぶる不満と憤りで、自然と口から声が漏れる
時間が経つにつれ、憤りと不満はいずれ悲しい気持ちに変わっていった
視界が揺れる…キラキラと光る星までもが揺らいではっきりと見えない
自分でも気づかないうちに、その瞳からこぼれる一筋の涙
やっぱり…私はリセオの…リセオは私にとって…
「うっ…うぅ…うああぁぁぁぁっ」
立っていられなくなり、ついにその場で蹲り、号泣した
月の光の刺す夜の森の中で、誰も見ない所で演技ではない、本当の涙を流した

PA1:05
時計の針はすっかり深夜を刺していた
ベッドから降りて窓から優しく包むような月の光をジッと眺めているリセオがいた
「あ~ぁ、全然眠くないや…」
珍しく寝付けずにいる、さすがに慣れていない所で寝るのはちょっと難しいかも
他のみんなは長い船旅のせい疲れているんだろう
それぞれに用意されていたベッドの上で、マッチが寝息を立てながら寝ていて、大きいラーナはソファーの上でグッスリと寝ている
アンリだけが居ないけど、多分トイレだろう
「ふぅ…ヒュレイお姉ちゃん、向こうで寝ているのかなぁ」
一緒に話していたヒュレイとは別々の部屋で別れている、ご主人もまた自分用の部屋で寝ている
誰かこの時間で会話でも出来る相手がいれば楽しいが、さすがにそれは無い
「…そう言えばナリアさん、何処へ行っちゃったんだろう?
 ご主人様と一緒に寝てるのかな?」
ふとナリアの事が気になった、部屋から出て行った限り帰ってはいないし、アンリに聞いても知らないと言う
そんなに広い家じゃないから迷子にはならないと思うが…それでもリセオは気になって仕方が無い
…今日のナリアさん、どうしたんだろう?
もしかして一昨日の事まだ気にしているのかな…
確かにあの日、ナリアさんが怖かったから思わず抵抗しちゃったけど、けどあの時のナリアさんも変だった
理由を聞いても教えてくれないし、僕、何か悪い事しちゃったかな?
「う~ん…」
いくら自問自答しても答えは帰ってこない
お月様に聞いてみればわかるかな…って答えてくれるわけ無いよね…
「もういいや、明日になれば、ナリアさんだって機嫌を直してくれるし
 いい加減もう寝ちゃおうかな……ん?」
独り言の途中でドアが音を立てながらゆっくりと開く
「ひゃぁ~~…良いきぶんらぁ~…」
アンリが戻ってきた、だが何だか様子がおかしい
よく見ると顔を赤く、目もトロンとしている
「おやぁ~りしぇおじゃんかぁ~?」
アンリがリセオに気づき、ふにゃふにゃした顔で笑みを浮かべる
喋り方もおかしい、リセオが聞こうとする前にアンリがよって来る
「ア…アンリさん、ど、どうしたんですか…?」
様子のおかしいアンリに戸惑いながらも聞いてみる
「いやぁね~、だいどころのところにさぁ~…ヒック…あかくておいしいおみずをみつけたんだぜぇ~
 ほらぁ…こっちこいよぉ~」
機嫌良さそうに前足をクイクイッとリセオを手招きする
…何だか怪しい…おいしい水って何の事だろう…
「もぉ~、こっちこいってばさぁ~!」
「え…まっ…ふあぁ!?」
リセオが来る前に、アンリが駆け出してリセオに無理やり抱きつく
「ふぁ…アンリさん…何するんです…うっ…!?」
アンリに向き直ったその時、何だか妙な臭いがした
この臭いが何だかリセオには理解できないが、何だか鼻にツーンときそうな臭いがする
アルコールだ
どうやらアンリは夜中に台所に侵入し、偶然見つけたワインを興味本位で飲んでしまったらしい
何本飲んだかは知らないが、相当飲んだらしく、完全に酔っていた
「く…臭い…」
「ははは~、いっぱいあってさぁ、変な味がするんだけどだんだんやめられなくなってよ~…ヒック…ん?」
アンリがリセオの顔をじっと見つめている
「ふぇ…どうしたんですか…?」
恐る恐る尋ねる、するとアンリは口をニマッとさせ、顔を近づける
「なんかさぁ…お前みてると体中があつくなるんだけどぉ~…」
「うっ…は…離れて下さい…」
間近に迫られ、アルコール臭が余計きつくなり思わず顔を背けて逃げようとするが、アンリの前足から逃げ出せない
「なんだよぉ~、こんな愛くるしそうなつらしててさぁ?
 いかにも襲ってくださいって言ってるようなもんじゃ~ん…ヒック…
 ほらぁ…抱いてあげようか、坊や…ふぅ…」
次第に声が甘く響いてくる、怯えるリセオを楽しむかのようにアンリは遊び半分でリセオの耳に息を吹きかける
「ひぅっ!」
耳から頭の芯まで伝わって来るくすぐるような吐息に思わず身をすくめた
「うふっ…可愛いじゃん…何だかリセオがいつもより可愛く見えてくるよ…」
「やぁ…悪ふざけはやめてくださいよぉ…」
リセオは懸命にアンリに言うが、その言葉がアンリの何かを刺激した
「悪ふざけはしてないよぉ~…ただリセオが可愛すぎるからこっちが…ヒック…」
「ふぇ…?」
「何かこう…いぢめてやりたくなってきた…泣く声が聞いてみたい…ヒック…」
次第に顔つきが怪しくなる、アルコールのせいでアンリの体中が火照ってきているのだ
「ア…アンリ…さん…やめてくださ…」
「うるせぇよ…ペロ…」
リセオが口をパクパクさせながら何かを言おうとしたが、もうすでに限界に達していたアンリが舌でリセオの耳を軽く舐める
「ひゃぅ…!」
逃げようと思っても、耳から伝わるくすぐるような舌に力を奪われる
「うふっ…いつ聞いても飽きないなぁその喘ぎ声…チュッ」
「はぅ…」
耳を舐めおえるとリセオの頬に軽く口付けをする
甘酸っぱいアルコールの臭いとアンリの唇の感触に、雄としての体が反応してしまう
「うん…何だか体が熱くなってきたし、また遊ばせてもらうよ…」
アルコールで体温が上がっていき、まだ熟さない果実を目の前に内心から欲が湧き上がる
その微弱に振るわせる頬に、くすぐるように舌をすべらせ愛撫していく
「ひゃっ…う…ん…」
今だに愛撫には弱いのか、敏感に感じている
「ふふ…どう手入れされたらこんな毛並みになるんだろうな…」
リセオの毛並みを羨ましそうに見つめながら、愛撫攻撃はやめない
童顔なその顔中を唾液で汚すように舐め回す
「うぅ…やぁぁっ…!」
リセオは必死で抵抗するが、アンリの腕の中をもがくだけで、その力もじょじょに愛撫によって奪われていく
「んふ…ペロッ…テロッ…チュッ…」
時間が経つに釣れ、愛撫だけでは物足りなくなったアンリはリセオの口の周りを口付けするように舐めまわす
「んぁぁ…ん…やめ…て…ください…」
酒の臭いと猛烈な愛撫に慣れなていのか、リセオの目は涙ぐんでいた
酔っているアンリにはリセオの必死な訴えが逆に誘っているように写る
「やめてだって?もうこんなにしてるのにか?」
その言葉にリセオは顔を赤くし、今見られたくないところを思わず抑えようとする
だがその抑えをアンリの前足が止め、力で勝てないリセオはアンリの意思のままに手を上にあげられ、ばんざいさせられる
半勃ちだが、それでも大人の雄ほどの大きさがある
「キスしただけでもうこんなに、欲求不満だったのかリセオ~?」
「………」
何も言えず、空しくも雌の誘惑に従って膨張してしまった自分の逸物を情けなく見つめる
まだ半勃ちの物を目の前にジュルリッと唇を舐め、前足で軽くツンツンと突く
「うぅ…そんなに…突かないで…」
つつかれた逸物がそれに反応するようにビクッと震える
「ふふ…、でもまだ大きくなりきってないんだろ、協力してやるよ…んふぅ…」
「ふぁっ…」
リセオは喘ぎ声と共に一瞬体がブルッとした
片方の腕で抱いていた前足をギュッと自分の胸へと寄せる、そしてリセオの肩のすぐ後ろにある柔らかいものがあたる
余分な脂肪が無い体なのに、一部だけ見とれるほど出ている豊満な乳房が、リセオの肩に押しつぶされている
「うぅん…気持ちいいだろリセオ…?」
酔っているせいでなんの恥じらいもなく自分の乳房をグリグリと押し付ける
リセオは返事をする余裕もなく、肩から伝わる弾力のある感触に、あぅ…っとしか声に出せない
「ははっ、こ~んな事許したのリセオしかいないね、ほら、いくぞ」
前足をリセオの腹に巻きつけ、遠慮なく乳房を押し付けながら上下にこすりつけるように動き出す
豊満な乳房が、アンリの動きに合わせて肩を滑るように動いていく
「うっ…は…恥ずかしいよぉ…」
今まで抱かれた事は何回もあったが、こんな事は初めてだ
ムニュムニュする胸が何度も、肩から背中に沿って往復していき、その感触が全身に伝わるように気持ちが良い
上下に動き、時には肩の所で左右に動き、まるでリセオの反応を楽しむかのように、まんべんなく押し付ける
時折、アンリの喘ぎ声も小さながら耳に入っていく
こするにつれ、乳頭がリセオの背中の毛に刺激され、徐々にその硬さを増していく
「ん…あん…ん…んぅ…んん…」
「ふぁ……ふっ…はぁ…はぁ…」
リセオも感情が高まるにつれて息づかい荒くなってきている
小さな背中を覆うような乳房と、コリコリっとした乳頭の二重攻撃に、まともな雄は平気でいられるか?
嫌、いられる訳が無い
逃げられない上に、容赦なく全身を刺激するようなムニュムニュする感触に、リセオの逸物はすでに上を突くようにビンビンとしていた
「ん…すっかりこんなに…成長しちゃったか…フフフッ…」
満面な笑みで、左前足を解き、その先端を爪で軽くつついていく
「ふぁぁっ…いやぁ…!!」
つつかれただけでリセオの体がビクッと震える
アンリは体の動きを止める事無く今度は膨張しきった逸物をつつきながら楽しむ
敏感になっている逸物への攻撃に、耐えれる訳がなくつつかれる度に、うぁっと声が漏れる
「うわぁ…また成長したんじゃないの?そのおちんちんさぁ~」
辱めようとリセオの耳元で囁く
次第につつくだけじゃ満足出来ず、先端を覆うように前足で逸物を掴んでいく
「ふ…あぁ…や…めて…くだ…」
かすれるような声で、尚も理性を保っているリセオがなんとか口を開く
「…あん?言いたい事があるならはっきりと言えよ?」
それを全く聞き入れもせず、掴んでいた前足で逸物の先端をいじめるようにニギニギと痛まない程度に力を入れていく
押し付けていた乳房も離したり押しつぶしたりと、感触を味あわせる
「ふや…やら…ひっ…アンリ…さ…ん…」
喋る声も途切れ途切れになる
そこを追い詰めるように逸物を掴んでいる前足に力を入れたり抜いたりを繰り返していく
その度にリセオの口から喘ぎ声が響いたりを繰り返し、先端から透明な液体が溢れる
「可愛いし…マジで大きい…もっと苛めたいよ…」
乳頭の刺激だけではそろそろ我慢が出来なくなったアンリは一度、リセオの逸物を離し、無理やり仰向けに押し倒す
「うわぁ…!」
乱暴に仰向けに倒され、思わず大きな声を出してしまう
そんなリセオに構わず、逃げられないように四つんばいになる
「はぁ…はぁ…フフフ…、今度はこっち…」
獲物を追い詰めたような目で、喜びに満ちた笑みを浮かべる
重力で下に大きく張り出ている乳房を惜しみなくリセオの前に持っていくとリセオの口に豊満な乳房が覆った
「ん…んむ…!!」
柔らかな脂肪で塞がれた口からは言葉が出なくなり、息もしずらくなる
「フフ…ほらぁ、吸ってみろよリセオ」
「ん…む……」
反抗するほど気力もなく、ただアンリに言われたとおりにするしかないと思い、舌で乳頭を恐る恐る吸いつく
「あっ…いいよ…もっと…して…」
熱く吐息をしながら、乳頭を刺激する度にアンリの体が軽くビクッと震える
前足でリセオの頭部を持ち上げ、とにかく自分の乳房に強く押し付ける
そのせいで鼻も乳房で塞がってしまい、更に息苦しくなってしまった
「ん…んんぅ…ちゅぅ…ちゅぅ…」
興奮と呼吸困難のためにリセオは無我夢中で乳頭を吸い、愛撫する
「あんっ…気持ち良い……!」
出来るだけ快感を与えて何とか離そうと、吸ったりするだけじゃなく、舌でコリッとした乳頭を舐めたり甘噛みしたりもした
乳頭を舐めている内に妙な味がした…リセオが知るはずの無い味…アンリが飲んでいたワインだ
どうやら酔いながら飲んでいる内に自分の体に多量に溢してしてしまい、付着してしまったようだ
無我夢中で舐めたり吸ったりしている内に微量のアルコールを舐めとってしまった
…何だかドキドキする…体中が熱くなってくる…
肌に付着してたほんのわずかなワインを吸ってしまっただけなのに、じょじょに体が火照ってきた
しかし、そんな事を考えている内に段々呼吸がきつくなってきた
「……っ!」
とにかく、アンリを満足させて早く空気を吸わせてもらわないと…
リセオはしゃぶりつくように口の中の乳房を嘗め回し、知らず知らず自分もワインを摂取してしまう
「あっ…んぅ…苦しそうだな…離してあげるか…」
「…ぷはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
ようやく片方の口を胸から離すと慌てて呼吸をする
「ふふん、ママのおっぱいおいしかったかぃ?」
冗談を垂れながら言うが、リセオは薄っすらと涙目になっていた
そんな表情を前に更に悪戯な笑みを浮かべて、苦しむリセオの様子を楽しんでいる
「そんな顔するなよぉ、お詫びに気持ちよくしてやるからさ?」
「ふぇ…も…もうやめ…あぅっ!」
呼吸を整える間もなく、アンリはリセオの後ろ首を咥えて赤子を扱うように軽々と持ち上げる
リセオを掴んだまま、リセオが使っていたベッドの上にピョンッと飛び乗る
そしてベッドの上でアンリが酔った笑みを浮かべながらリセオを少し乱暴に放り投げる
「うわぁっ!」
ふかふかなベッドに落ち、衝撃でベッドが大きく弾む
リセオはベッドの上で仰向け状態で膨張した逸物をアンリの前に晒していた
「ふふ、雌の前でおちんちん見せるなんて、リセオも変体だな~…ヒック…」
意地悪っぽく言う、ハッと気づいたリセオは慌てて前足でそれを隠そうとする
しかし隠す前にアンリの前足がそれを捕まえ、押さえられてしまった
堂々と目の前に勃っている雄のモノを目の前にクスクス笑いながら見つめるアンリ
「ああぁ…離して…恥ずかしいよぉ…」
羞恥のあまり、涙が浮かび上がる
「そんなに恥ずかしいのかよ?
 だいじょーぶ、俺がこーしてやるからさ…ん…」
アンリはリセオの前足を押さえたまま、乳房をリセオの下半身に落としていく
そのまま自分の乳房でリセオの逸物を押しつぶしていく
「ふぅ…あぁ…」
思わず喘ぎ声が漏れる
初めての感触だった、背中で感じたあの脂肪が今リセオの逸物の上に乗っている
カチカチな逸物に柔らかくて弾力のある脂肪に包み込まれて感じる新たな快感に身を震わせた
するとアンリは先ほどリセオの背中でしたように、逸物を胸でさするようゆっくりと上下する
「ほ~らリセオ、めっちゃ気持ちいいだろ~?」
その問いに否定はしない、否定しようが無い
ふにふにする乳房の柔らかさが逸物全身に伝わってくる
「あっ…あぁ…ひぃ…そんな…すごく…うぁっ…」
初めてなだけにあまりの気持ちよさにアンリが動く度に言葉が途切れる
襲われる快感に力を奪われ、されるがままになる
「へぇ~、そんなに気持ちがいいんだ、ヒック…」
上目でリセオの反応を楽しみながら、逸物に奉仕を忘れない
今自分のモノが大きな胸につつまれている、そう思うだけで頭が沸騰してしまいそうだ…
「んぅ…こうされると…もっといいかな…ペロッ」
アンリは逸物を挟んだまま、逸物の先を舌で軽く舐める
「ひっ…!」
思わずすくみ上がる、先端からほとばしる電流が体全身を震わせた
「やっぱりぃ…ここを舐められるのが好きなんだろ?」
にやけた表情で尋ねてくる
リセオは連続で押し寄せてくる快感と恐怖で返答どころじゃなかった
そこに追い討ちを掛ける、弾むように乳房を揺らし、逸物の先を舌でつついたり舐めたりを繰り返す
俗に言うパイズリとフェラの二重攻撃だ
「あぁっ…あぁぁ…うぅっ…」
頭の芯から電流の波が押し寄せて来る、リセオの内なる欲望が思考を邪魔をする
普通の雄ならばこの時すでに絶頂に達してしまうが、並外れた耐久力がそれを許さない
この上に無い快楽に、自分の目に涙が浮かんでいることにすら気づかないでいた
「ん…ん…ペロ…んぅ…ちゅぅ…」
「うっ…ひぁぁぁっ!!」
興奮が高まりきったアンリが先端に口をつけ、搾り取るように吸い付いてくる
今までと違う激しい電流が脳を直撃した、それと同時に喘ぎ声が絶叫と変わる
周りのみんなが寝ているのにも関わらず大声が出てしまった
アンリの舌攻撃にもはや限界がくる、頭の中で何度も昇天したい…昇天したい…と体が欲求する
「んんぅ…ジュルッ…ちゅっ…」
挟む速度を上げた、求めている物を残さず吸い出すかのように一気に責めたてる
「あぁぁっ…うっ…くぁぁぁっ…!」
僅かに残った意識が、マッチ達を起こしてはならないと理性が働き、唇を噛んで必死に声を抑える
だがそろそろ限界に近づいてきた
高まる感情が抑えきれなくなり、喘ぎ声が部屋全体に小さく響く
「んむ…ちゅぷ…そろそろイきそうか?」
口を離し、手を止めずに聞いてくる
「イくならさぁ、俺の口の中でだせよな…いいか?」
返答しようとも出来るわけがない、分かってて聞いたのかアンリは再び先を咥えて奉仕する
「んむ…んぅ…ちゅぅぅっ」
「うぅ…はぁはぁはぁ…もう…だめ…うぁぁっ!!」
最後の吸い付きで溜まっていた物が、アンリの暖かい口の中で爆発した
最近ナリアにやられなかった分、射精で気持ちが耐えられなくなるほどの感覚に襲われた
頭の中が真っ白になりそうになった
「あっ…あぁぁ…!」
アンリは口の中でかなりの量の白濁液が発射されているのにも関わらず、もっと出せと言わんばかりに吸い続ける
自分の逸物が期待に答えるように、欲望のままに吐き出し続ける
吐き出される度に逸物が脈を打った、何度も何度も…射精の快感が何度も全身を襲った…
「んんぅ…ちゅぅ…んんぅ…ゲホッ!!」
アンリがリセオの物から口を離した
飲み干そうとしたらしいが精液の量に勝てずに思わず口を離してしまったのだ
勢い余った液は弧を描くようにに飛び出てアンリの顔にかかっていく、猛烈な射精によって顔だけならず耳にまで付着した
ベッドの上で体が小刻みに震えながら、自分の液でアンリの顔を汚していく…
「う…うぅ…はぁ…はぁ…はぁ…」
涙を拭う余裕もなく、ようやく勢いが衰える自分の逸物に視界を向けた
そこには、顔や耳、自分の物を挟んでいる胸も、上半身を白濁液で汚されたアンリの姿があった
ベトベトな顔のままリセオに向けて厭らしい表情を浮かべた
乳房から手を離し、ようやく逸物を乳房地獄から開放すると前足を口元に持っていき、口内で溜まっていた液を吐き出す
自分自身でもびっくりするほど溜まっていたのか、前足がリセオの白濁液でベトベトになった
「ん…たくさん出たなぁ、こんなには飲み干せない…」
うれしそうに自分に掛かった液を手で拭い、トロンとした眼差しで見つめる
「ふふふ…こんなに出すからリセオって飽きないんだよねぇ…」
「うぅ…」
恥ずかしさの余りに自分の股間を押さえて呻く、頭の中で絶叫してしまった事が今になって後悔した
隣で寝ているラーナやマッチ、もしこんな所を見られていたらと思うと心がゾッとした…
「スー…スー…」
「ふぅ…良かった…」
幸い、マッチとラーナは何事もなかったように眠っていた
安心したとたん、リセオの体中の力が一気に抜けた
「ふふ…どうしたんだよリセオ~、もっとたのしもう…よぉ…ヒック…」
「やめてくださいよ…マッチ達が起きちゃ…うぁ!」
周りの事などお構い無しに迫り、疲れたリセオの体にもたれ掛かり、恥じらいもなく肌と肌を密着させる
「ほらぁ…まだ出せるんだろ…もっと…ちょうらぃ…」
「…?」
アンリの甘い声が段々薄れ、目もトロンとしている
「今度はさぁ…ここでぇ…スー…スー…」
次第に声も聞こえないほどに小さくなり、リセオにもたれ掛かった状態で寝息をたててしまった
どれだけ飲んだのか知らないが、密着するなりアルコールの臭いがきつい
「うぅ…離れてくださいよぉ…」
臭うだけでなく密着している恥ずかしさから離そうとする
だが、前足ががっちりとリセオを捉えていて離そうとはしなかった
気持ち良さそうに寝ているアンリ、無理に離そうとするとまた起きて何されるか分からない…
「もういいや、このままにしよ…」
次第にリセオにも眠気が襲われた
その時ある事がふと頭をよぎった
「そういえば…ナリアさん…どうしたんだろぅ…」
あんな目に会いながら今更ナリアの事が思い浮かんだ
機嫌が悪そうだったなぁ…でも明日になればきっと機嫌を直してくれるだろうな…
明日は…ヒュレイ姉さんと一緒に…またゆっくりと話しが出来たらいいな…
長旅の疲れを休めようと、暖かいベッドと雌の体につつまれた中でゆっくりと目を閉じていった

月の光が夜の闇を小さく、明るく照らしてくれる森の中
深夜の外を駆け出したナリアがようやく森の中から別荘へと戻ってきた
あれから随分とたった、無我夢中で走り続けたいせいで少しグッタリとしている
「…」
別荘の玄関の前で足が止まった
マッチやラーナやアンリ、そしてリセオの待つ別荘に戻ろうとしても、足が進まなかった
玄関の前でシュンと俯く
「…バカみたい…とっても…」
寂しそうな表情を浮かべたまま、ボソリと独り言を呟いた
二つに分かれた尻尾を元気無く下げたまま、いつまでもジッと動かなかった
すると、玄関の方からゆっくりと開いた
こんな時間だけあって少しびっくりした、玄関の向こうで誰かが顔を覗かせた
「誰…?」
「私です、どうかしましたか?」
やんわりとした声が聞こえてきた、その声の主が玄関からゆっくりと出てきた
「ヒュレイ…」
「こんな夜遅くにお散歩ですか、ナリアさん」
見つめあう二匹、空の月がナリアとヒュレイを照らす
「眠れないんですか?」
「…」
「うふふ、私もなんですよ」
ナリアの前でリセオと同じような可愛らしい笑みを浮かべた
似ている…やっぱり兄弟だからなのか…
「ちょっと興奮しちゃって…なにせ何年ぶりにリセオと会えたものですから」
「そう…」
ご機嫌なヒュレイに対し、余り気乗りのしないナリア
それに察し、元気付けようと近寄ってくる
「私、小さい頃ここに引っ越してこの地方にいて随分経つんですよ
 だから他の地方のお友達がいなくってね、アナタ見たいな方が来てくれてとてもうれしいですわ」
「あなたも、私と同じイーブイ系だって聞いたわ」
好意を持って接するヒュレイにナリアも少しは答えてやろうと会話に乗ってくる
「えぇ、14の時この地方で進化をしましたのよ
 私だけではなく、この地方でしか進化出来ない子も沢山いますのよ」
「ふぅん、私てっきりイーブイは5種類にしか進化出来ないと思っていたわ、世界はまだまだ広いわねぇ…」
「そうですねぇ、あなたのような綺麗な方に出会えたんですもの、ウフフ」
「止めてよ、あなただって十分綺麗じゃない、クスッ」
二匹の中はいつのまにか笑みを交し合うほどになっていた
「ご主人から聞いたとおりでしたわ、私がいなくてもあなたが居てくれたらリセオの姉代わりに…」
「…!」
その言葉を聞いた瞬間、ナリアの目が大きく開き
頭の中で忘れていたあの言葉が蘇った
…お姉ちゃん
「…失礼するわ」
突然、さっきまで表情が一変した
すくっと立ち上がり、ヒュレイに対して素っ気無い態度をとる
「え…ナリアさん、どうかしまし…」
最後まで聞く事もなく、ヒュレイを横切ると玄関の中へ入ってしまった
「…ナリアさん?」
ポツンと玄関の前に残され、別荘へと戻っていくナリアの姿を見送るしかできなかった
初対面ではよく見てはなかったけど、よく見てみたらスタイルも毛並みも自分以上に綺麗だった
お友達になれそうな気がした、だけどそんな気持ちがいとも簡単に裏切られた
何故なら、その時の彼女の目はとても冷たく、刺すような視線があったからだ…
どうして…いきなり機嫌を悪くしたんだろう、そんな疑問がヒュレイをよぎった
「どうかしたのかしら…?」
首をかしげても、別に答えが返ってくるわけでも無い、もしかして気に障るような事言ってしまったんじゃないだろうか
もしそうだったら謝らなければ…でも追いかけようにもナリアはすでに別荘の中をさっさと進んでしまった
申し訳ない気分になり、少しシュンとするヒュレイ
でも、明日になればきっと機嫌を戻してくれるはず
明日謝って、許してもらおう
そしたらまた、リセオと一緒にお喋りしたり遊んだり出来る
「それにしてもこんな時間だし…そろそろ寝ないと…」
今落ち込んでいる場合じゃないと思い、ヒュレイも別荘の中へ戻っていった
明日になればまた仲良くなれると信じているから、あのナリアと

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IP:182.170.207.153 TIME:"2013-10-06 (日) 17:24:33" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%97%85%E8%A1%8C" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:24.0) Gecko/20100101 Firefox/24.0"

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