writer is [[双牙連刃]] 本当に久々になりましたが、久々の新光更新にございます。ライトを動かすのも本当に久々だなぁ。 今回はバトルメインのお話です。よろしければ、お読み頂ければ幸いです。 ---- 「はぁ? 俺と勝負ぅ?」 「そう! なんでか皆が強くなってるのは分かったしな、今の俺達ならライトと戦っても……勝てなくても、弱らせる事は可能な筈だ!」 なんだよ、朝っぱらから妙に張り切ってるから何かと思ったら、そんなしょうもない事を考えてたのか。どうしようもねぇな。 しかも、この家のメンツがなんで強くなったのかまだ理解してねぇのかよ。って言うか誰か言ってやれよな、こういう勘違いしないように。 朝飯中にそんな事を急に言い出したから皆固まって苦笑いしてんじゃねぇかよ。やれやれだぜ。 「皆、協力してくれよ!」 「あ、主殿……本当に、ライトと戦うのですか?」 「おう! レオだって、ライトにリベンジしたいだろ? それに、前にライトと戦った時はレオだけで挑んだしな、フルメンバーで挑めばいける!」 「それはつまり……あたし達もこれとやれって言うの?」 「これってお前、俺は物扱いかよ」 「当たり前だろー? 皆で力を合わせて、目指せライトゲット!」 ん~、まぁ暇だし、軽く付き合ってやってもいいがな。にしても、なんにも考えてないかと思ってたが、一応まだ俺の事狙ってたんだな、こいつ。 「俺は別に構わんぜ? なんだったら、本当にフルメンバーで挑んでみるか?」 「え、どゆ事?」 「基本、トレーナーが連れ歩けるポケモンの数は6匹。が、この家には俺を除いてポケモンは7匹。本来なら一匹溢れるが、7匹目を俺が許可してやるってこった」 「マジで! さっすがライト、太っ腹ぁ♪」 「……これから捕まえようとしてるポケモンに妥協案まで出されて、負けたらどうするつもりなのよハヤト」 「や、止めておこうよご主人……なんというか、どうなるか先が分かるし」 「いいや、やってみないと分からない! 気合い入れて行くぞ!」 おぉ、皆苦笑いしながら一応おーって言ってるぞ。まぁ、頑張ってくれたまえ。 それじゃあ今から、何やら作戦会議なるものをするって事だから俺は退席してるとしようかね。思いつきとは言え、奴に付き合う面々は苦労するねぇ。 しかしどうすっかな。一応勝負を受けてやったんだし、出掛けないで待っててやらんと可哀相か。部屋で寛いでたらその内呼びに来るかいね。 それにしても、この家のメンバー全員と勝負たぁ良い暇潰しにゃあなりそうだ。ま、あいつの指示を聞いて皆動くってなると、いつもの実力の半分くらいしか発揮されねぇとは思うがね。 さて、部屋に戻って来たんだが、待ってる間何するかね。レンの料理本でも読んでるかな。 いつもはレンと一緒に読んで献立なんか決めてたりするんだよ、これ。だから、俺ってば最近料理のレシピも色々頭に入ったりしてんのよ。まぁ、俺はそれを再現するこたぁ出来ねぇんだけど。 奴等がどんな策を労してるかは知らんが、俺が飽きない程度にはやってくれるいいんだがな。 ……一応戦りあった事があるのはレオだけなんだよなぁ。で、戦力をほぼ分かってるのがソウとリィ、一部理解がレンとフロスト。ほぼ未知数なのがプラスとリーフか。そう考えると、この勝負なかなか面白いかもしれんなぁ。 ん、誰か来たな。もう作戦とやらは準備出来たんかね? 「あのー……ライト、居る?」 「おう、居るぜー。準備は出来たんかい?」 「う、うん。でも本当にやるの? 皆、ご主人の話を聞いてかなりやる気になってたよ?」 「その割に、レンはそうでもないみたいだな」 「だって、ライトがどうしてご主人のポケモンにならないかも知ってるし……」 「ははっ、そんなの気にしなくていいぜ。こういうのは、そういう事情抜きで楽しみたいのが俺って奴なんだからよ」 心配そうなレンに笑い掛けて、部屋から出る。レンとも戦るんだ、どうせ戦るなら全力でだ! 廊下を通ってリビングに戻ると、全員何故か並んで待ってた。おぉ、やる気はあるみたいじゃねぇか。悪くない気合いだ。 「その分じゃ、多少は楽しませてくれようと思ってるみたいだな」 「ふっふっふ、今までの俺達と思ったら……俺の家のポケモンになる事になるぞ、ライト!」 「それはそれでいいような気もするっていうのが困るところよね」 「俺的にそうなるつもりは無いんでね。さぁ、何処で戦るんだ? 庭か? ちょいと手狭だが、俺は構わないぜ」 「全員が戦うとなると、この家の庭じゃ足りない! 故に、場所を変える!」 ほう、何処に行くかは知らんが、まぁ付き合ってやるか。 全員で移動ってのは目立ち過ぎるから、俺と……何故かソウ以外のメンバーはボールに収められた。なるほど、そう来たか。 ついて来いって事だから、とりあえず家を出る。あまり目立つところは避けたいんだが、その辺を考慮するこいつじゃないよなぁ。 どうにか誤魔化すしかないな、その辺りは。やるようにやるさ。 「師匠との勝負……まさか、こんな形でする事になるとは思わなかったッス……」 「いつもの戦闘指南じゃねぇんだから、油断するなよ? 言っておくが、まだ超えられる程俺は低い壁であるつもりは無いぞ」 「うぅ、そりゃそうッスよね。ご主人も、あんな作戦で本当に上手くやれるんスかね……俺っち自信無くなってきたッス」 「ん? どうしたソウ! 戦う前から俯いてたら勝てる勝負も勝てないぞー!」 ほぉ……戦いの基礎はこいつも分かってたか。そう、戦いってなぁ技をぶつけ合う前から始まってるもんだ。負けると思って勝負するなんてなぁ馬鹿のする真似だ。その点は、とりあえず合格だな。 っと、なんか妙にデカい建物に来たな? そういや散歩でこいつの前を何度か通った事はあったか……トレーナーが入っていくからなんじゃろな? とは思ってたがよ。 フリーバトルアリーナ? へぇ、一般開放されてるバトルスペースってところか。洒落たもんあるんでねぇの。 「本来ここを使うのは有料で300円位かかるんだが、トレーナーズスクールの生徒は学生証を見せるだけで利用出来るのだー!」 「ほーん、なるほどねぇ。で、ここで俺はお前達と勝負をすると。……あまり変に目立つ行動はしないが吉、だな」 元々バックスタブは自主封印で勝負するつもりだからいいが、派手に相手を吹き飛ばすような一撃も自重しとかないと不味いか。あくまでサンダースって枠からはみ出ない程度でいかないとならん。 あいつが受付を済ませると、どうやら地下へと移動させられるらしい。ま、複数のバトルスペースを確保するつもりなら地上だけじゃ場所が足りんわな。 で、下は各利用者用に個別スペースになってると。ふぅ、余計なギャラリーの心配は無さそうだ。それだけは救いだぜ。 「よぉし! ここでなら思う存分戦えるぞ! なんてったってポケモンの攻撃に耐えられるように設計された素材で出来た部屋らしいからな!」 「ふーん……強化カーボンに近い材質か? 対衝撃用の緩衝材なんかも入ってそうだな。それでぐるっとこの部屋を包んでると……割と良い造りしてるじゃないか」 ま、ちっとやそっとで壊れてたらフリーバトルアリーナなんて名乗れんわな。それなりに良い技術と材料で出来てるかそりゃ。 そんじゃ、用意と行きますか。俺にトレーナーは居ないが、こいつ等と逆のトレーナーが立つであろうサークルの前に移動する。……なんか俺が移動するの多くないか? 別にいいんだけどよ。 「じゃ、さくっと始めようぜ。そっちの用意は出来てんのか?」 「もっちろん! よっし、行くぞソウ!」 「ウッス! 師匠、全力で行くッスよ!」 よっしゃ、戦闘開始だ。さーて、初手は何が来るかいねっと。 「ソウ! 剣の舞だぁ!」 「行くッスよー!」 まぁ、そうだよな。俺が教えたんだもん突っ込んで来ますよね、剣の舞でも。 これはどういう事かと言うと、一言で言えば時間稼ぎだ。こういう相手や自分のステータスを変動させる行動中は基本的に無防備になる。が、この剣の舞だけはアイディア次第でその無防備を消せる訳だ。 なんたって爪を出してそれを振り回す事で戦意を高揚させて力を上げる技だ。近付けばそれだけで攻撃に早変わりって寸法さね。 「んな!? ソウ何してるんだ!?」 「おっとと、おいバカ! 指示以外はソウの自由にさせてやんな! その方がお前的にも美味しいだろうさ!」 「ど、どういう事だってばよ!?」 「ご主人! こればっかりは俺に任せて欲しいッスー!」 つーか今までソウもこれ隠してあいつの指示聞いてやってたのかよ。なんつーか面倒と言うか……いやまぁいいか。 気を取り直してバトルに集中せにゃあな。敵に塩を送ってる場合じゃないぜ。 ソウの爪を躱して、まずは一旦距離を取る。これでソウのスイッチも入っただろうし、ここからが本番だな。 「ビックリしたけど落ち着いて……よし、追撃だ。切り裂くだ!」 「了解ッス!」 「さて、どうするかねぇ……」 ソウは向かってくる。電磁波を当てればほぼ勝ち間違いなしな状況には出来るが、一応弟子の成長具合とやらも見てやりたいところだし、今は電磁波もロックしておこう。 んじゃ、爪をこっちに向けてきたソウの腕に狙いを定めて……振ってきた腕を払う。力が増してようが、振る速度まで上がってる訳でもないんでね。 「んぐぅ!?」 「攻撃を止められた!? そんなのあり!?」 「足を止めてる暇は無いぜ!」 「おっとぉ! 当たらないッス!」 む、単調な攻撃過ぎたか。そりゃあ真正面からの突きなんて、今のソウにゃあ当たらんわな。 ソウもバックして、一旦仕切り直しだ。そう強く打ってないが、多少腕にもダメージ入っただろうしな。 「くぅ~、やっぱり相手が師匠だとこうなるッスよねぇ」 「指示されたからって馬鹿正直に真正面からぶつかって来ても、俺は倒せんぜぇ? その辺、そっちのアホも理解しとけよー」 「うぇい!? そ、そんな事言われてもどうすればいいのやら……あ、アドバイスは!?」 「あのなぁ……戦ってる相手に助言を求めるなっての。自分で考えやがれ」 それで考え込むなっての。戦闘中だって自覚があんのかこいつ? 別に俺が合わせてやってただけで、こっちから仕掛けられない訳じゃないんだからな? 「ったく、来ないんなら、こっちから行くぞ!」 「うわぁ! ご、ご主人、師匠が来るッスよ!」 「へ? おわ!? ちょっ、タンマタンマ!」 「知るか!」 一気に距離を詰めて、軽い溜めから右の突きを繰り出す。無論、これをソウは避けれるだろう。つーか避けてくれないと悲しくなるぞ。 よし、避けたな。そうすると、奴は完全に無防備になるって訳だ。ちょっとばかし発破を掛けてやらんと詰まらん。 速攻で阿呆に詰め寄って、軽く押して体制を崩す。倒れた奴の首元を掠めるように前足を振り下ろせば、嫌でも緊張感出るだろ。 「……隙だらけ過ぎだ。もし相手が俺じゃなかったらお前……一度死んだぜ?」 「ひぁ……うぁ……」 「ご、ご主人!? くっ、師匠ぉぉぉぉぉぉ!」 「おっと。良いカットだぜ、ソウ。ただ、俺の狙いまで読んでてくれると、師匠としてちっと嬉しかったがなー」 「え、あ、あれ? 今めっちゃ怖かったと思ったんスけど……」 「フリだよフリ。ただ、あれでもまだ中途半端な感じでやるってんなら、どうなっても知らん。止めるんなら今言えよー」 俺がちょっとマジメになれば凄みの演技はちょろいちょろい。だが、これで奴にも発破は掛けられたみたいだな。 目がさっきよりもマジになった。全く、捕まえようとしてるポケモンからこれだけサービスしてやらないとマジにならないなんて、面倒くさい奴。 「ご主人、大丈夫ッスか?」 「あぁ、大丈夫だ……ソウ、ありがと」 「いいッスけど……」 「さて、答えは? ここで止めとくのをお勧めするぜ?」 ふむ、目を閉じて一つ深呼吸か。落ち着きはしたようだな。なら、俺も構えるとするか。 「行くぞソウ! メタルクロー!」 「行くッスよ!」 「ふむ……」 弾かれた対策、ってところか? 悪くはないが、腕まで硬質化する訳じゃないからまた弾く事は出来るがね。 どれ、また腕を弾いて仕切り直しにするか。そっから追撃して、ソウにゃあ悪いが交代してもらうかね。 腕が俺に振られる……今だな。 「そこから腕を下げてインファイトぉ!」 「でやぁぁぁ!」 「何!? うぉぉ!?」 あ、危な! もうちょっとで直撃するところだったぞ! こいつ等、即興でこんなコンビネーションを? ……違うな、嵌められたって事か。 俺の顎を突き上げるソウの動きに躊躇は無かった。間違いない、こいつ等こういう連携に慣れてやがる。何処でこんなの練習したんだかな? 「まだだ、そこから切り裂く三連!」 「貰ったッスー!」 「が、詰めは甘かったみたいだな」 上体を逸らして避けた俺に追撃を指示したのは悪い策じゃない。が、俺がノーモーションかつノーチャージで反撃出来る事をすっかり忘れてやがる。 切り裂くを仕掛けてきた左右の腕を払って、勢いのままに突っ込んでくるソウのボディに俺の前足突きを食い込ませた。加減はしたが、これで落ちるだろ。 「ぐ、は……そん、な……」 「ヒヤリとしたが、詰めを急いだのが敗因だな。でも、よくやったぜ、ソウ」 「ソウ!? 嘘ぉん、それも防ぎ切れるのかよぉう!」 ダウンしたソウがあいつの持つボールに戻っていった。まぁ、手持ちに出来るポケモンは6匹だが、何もボールを持てないって訳じゃねぇからな。 「んなろー、妙な演技しやがって……危うく良いの一発貰うところだったぜ」 「ぐぬぅ……キャンセルアタックはソウもライトに言った事無いって言ってたからいけると思ったんだけどなー。って言うかライト怖過ぎぃ! マジで勘弁して下さい!」 「バッキャロー、変にオタオタして見せるから悪いんじゃねぇか。やる気あるんなら最初からそういう体で居ろっての」 「だから最初からやる気マックスだって言ってたじゃん!」 「お前の本気は本当に分かり難いな……」 普段からチャランポランだからノリで判断出来ん。ある意味厄介だなこれ。 なんて話ながらも準備はしてたみたいだな。二体目のお相手は、ほぉ? 「ソウは……あら残念、無傷で交代だったみたいね」 「二番手に出てくるたぁ驚いたな。フロストはもうちょい後かと思ったぜ」 「ふっふっふ、もうソウとのやり取りを見て出し惜しみはアウトって分かったからな、全力全開で行かせてもらうと宣言しよう!」 うーん……まぁ先に強いポケモンを出すって言うのも策の一つではあるが、何が狙いだ? イマイチ阿呆の頭の中は読めなくて困るぜこういう時。 だが、フロストの技は大体分かってる。氷の飛礫に凍える風、それに高火力の吹雪。四つ目は知らんが、その三つを覚えてるのは周知だ。対応はし易いな。……正直、ソウがインファイトとか覚えてるってのは始めて知ってちょっとドキっとした。 「おっしフロスト! まずは氷の飛礫で先制だぁ!」 「あんた、大人しく当たりなさいよ」 「無茶を言うんじゃねぇよ」 フロストが生み出した氷の粒がまっすぐに……ではなく、俺を覆うように飛んでくる。流石、氷の制御はお手の物ってか。 避けてもそっちにホーミングしてくるだろうし、ここは、打ち落とすか。 「ふぅ……おらぁぁぁぁぁぁ!」 前足で突く、突く突く突くぅ! 高速の氷弾つっても、撃ち落とせない程じゃねぇぜ! 「本当に出鱈目ね、あんた」 「……はっ、それが俺なもんでね」 一瞬気を逸らしたとはいえ、なんで後ろからフロストの声がする? こいつにそんな高速で動く方法あったか? なんにしても不味い、ゼロ距離で攻撃されれば俺でも防ぎ切れるかは微妙なところだ。 「よっしゃあ! フロスト、凍える風だ!」 「幾らあんたでも、避け切れるかしら?」 「……いや、あいつがアホだった事に感謝しねぇとな」 凍える風……対象に冷気を抱えた風を吹き当てて、冷気によってダメージを与えつつ体を冷却して動きを鈍くするって技だ。どうやらフロストを出した理由は、俺の機動力を奪うつもりだったようだな。 が、俺にはそんなもん効かん。守りの雷が冷気を減衰、遮断しちまうからただのそよ風みたいなもんに変換されちまうんだなー、これが。 これでフロストには隙が出来る。俺はそれを、凍える風を突っ切って気絶させちまえばいいって事だ。楽勝だぜ。 「悪いなフロスト、決めさせてもらうぜ!」 「……釣れたわね、ハヤト!」 「いけぇフロスト! そのまま吹雪だぁ!」 な、おいおい嘘だろ!? あの馬鹿はフロストが同時に二つの技を使えるのを知らないんじゃねぇのかよ! 不味い、凍える風を抜けようとしてる俺にゃそれに乗って襲ってくる吹雪まで防ぐ手立てがねぇ。減衰はするだろうが、ちっとダメージは覚悟する必要があるか。 来た、真っ白な渦になって吹雪が襲いかかってくる。確か、白い抱擁とか言ってたっけな。絶対されたくない抱擁だぞ、これ。 これで止まるのは裏目……かとも思ったが、一つ妙案を思いついた。どうせフロストの事だ、こっちの動きは多少読んでくるだろう。なら、吹雪を使ってじっとしてるとは思えん。 で、動くとすれば距離を取りつつ俺の後方に移動するだろう。俺が吹雪を無視して突っ込んでくると想定するとしたら、さっきのように何かしらの高速で移動する手段を使うはず。それを何か把握してやろうじゃねぇか。 こんな風に吹雪の直撃を受けながら考えつつ止まる奴なんて想像出来ないだろう。裏を斯かれたお礼に、今度は俺が裏を斯いてやろうじゃねぇの。 「よし、フロスト!」 「ふふっ……」 声の位置はまだ正面、なら……こうだ! 吹雪を突っ切って、真上に跳ぶ。上からなら状況がはっきり見えるってな。 なるほど、高速移動の原理は電光石火か。僅かに足が光ってるし、力がそっちに集中してるのは分かる。イーブイ系でそういう加速出来る技はそれだけだから、まず間違いないな。 ネタが分かれば十分。まだ俺が跳んだのには気付いてないようだし、こっから攻撃してやるとしよう。まぁ、電磁波だが。 「そーら、よぉ!」 「ふぁ!? ふ、フロスト避けろー!」 「え? きゃああぁ!?」 「残念、策を成功させたまでは良かったが、その後油断し過ぎだ」 撃ち下ろしの電磁波がフロストに命中したのを確認して、体制を整えて着地。むぅ、多少毛が凍ってパリパリしてるぜ。 「フロストの吹雪が直撃したのにノーダメージ!? 冗談でしょ!?」 「別にノーダメージって訳でもないぜ。結構冷やされたのは確かだ」 俺を倒すには無論足らないがな。善戦はした方だと思うぜ? 「くそぉー、フロストもうちょっと頑張ってくれ! 氷の飛礫と凍える風だぁ!」 「こ、のぉ!」 「ははっ、らしくねぇんじゃねぇか? クールに行こうぜ」 痺れてる中で振り絞って出したであろう合体技、氷の竜巻が俺の周囲に渦巻く。が、やっぱりイマイチ集中しきれないようだ。竜巻の渦を絞れないでいると見える。 拡散しちまってるんだからそこまで威力は出ない。ぺしぺしと当たる氷を無視して、フロストに接近した。これで、二匹目だ。 「……腹、立つわね、こんな、リタイアなんて」 「そう言うなって。なかなか面白かったぜ」 トンッとフロストの首の裏を叩いてやると、ふっと体から力が抜けて崩れ落ちる。我ながら完璧な当て身だぜ。 「あ、当て身!? 始めて見た……」 「レアだろ? 俺はこういう技術も使える。麻痺したらまず勝てないと見る事だな」 別に動きが鈍ってなくても決めれるがな。さて、フロストもボールに戻った以上、お次は誰が来るかいねっと。 それにしても、一発だけとはいえ一杯食わされたぜ。なるほど、あの作戦会議はこういうのを聞き出す為にやってたって事か。この先も、油断すると何してくるか分からんな。 「う~、当て身とか打ち払いとか、ライト本当にサンダースなのかよぅ! 本当はまだ見つかってない格闘タイプのブイズとかなんじゃねぇの!」 「んな訳ねぇだろ。電磁波出した通り、俺は見た通りのサンダースだぜー」 「ぐぬぬ……どうだとしてもやっぱり手持ちにしたい! 次は……行くぞ、プラス!」 ま、七匹全員使っていいって言ったんだからプラスも出てくるわな。ただ、俺との相性は最悪だぞ? なんてったって俺の特性、蓄電だし。電気技は無効、それでプラスの使える技では俺は止められんだろう。 「よーし、行くぞー」 「プラス、電光石火!」 「……あのなぁ、今までの見てなかったのかよ? 俺にパワー勝負なんか挑んでも無駄だっての」 「ふっふっふ、そんなのは百も承知! 狙いはこれだぁ!」 む? すばしっこく俺の周りをちょろちょろしだしたな? 電光石火の狙いは撹乱か。しかし、その後はどうする? 「更にスピードスターだ! がんがん行けー!」 「ライト、喰らえー!」 ふむ、撹乱しながらのスピードスターの乱射ねぇ? 確かに悪くない策だが、残念ながら威力不足だ。避けたり弾く必要もねぇ。 ぺしぺしとうっとおしいが、ダメージはほぼ無い。ま、このまましばらく止むまで待ってるか。 そもそもなんで怒りの前歯を残しておかなかったんだか。あれ、かなり強力な技だぞ? 俺の記憶が正しければ、放電を覚えてる時点で一度習得はしてる筈だ。勿体無い事だぜ。 電光石火とスピードスターの併用でまだ頑張ってるが、PPはそこまで保つもんでもない。そろそろ……あ、限界だわな。 「はぁ、はぁ、どうだー!」 「うん、まぁ、頑張ったと思うぜ。うん」 「やっぱり無傷ですよねー。分かってはいたけど……」 「……ライトの、ばかー!」 えっと……もう打つ手も無さそうなんでデュクシ、と。プラス……南無南無。 さ、さぁ気を取り直して四匹目だ。少々気の毒だが、結構休ませてもらったからフロスト戦の冷えも抜けたぜ。 が、その前にこいつに言ってやろう。あれでは流石にプラスが不憫だ。 「お前さぁ……もうちょっとプラスの戦闘スタイルなんとかしてやれよ。せめて、怒りの前歯をまた覚えさせるとかよぉ」 「はい、ごもっともなご意見です……ぬぇぇぃ! リーフ、レッツゴー!」 あ、勢いで誤魔化しやがった。んで次はリーフね。さて、まったくの未知数だからな、リーフは。どんな手で来るんかな。 「うぅ、私の番ですか……ライトさん、出来れば手加減して下さいよぉ」 「それは出来ない相談だぜ。俺ぁ勝負にゃ手を抜かんタイプなんでね」 「気持ちで負けるなリーフ! マジカルリーフだ!」 「分かりました……全力でいきます!」 追尾する草の刃か、悪くない技覚えてるじゃないか。ふむふむ、速度も悪くない。この分だと、リーフは草タイプの特殊系アタッカーってところかね。 当たる枚数を減らす事は出来るが、何分相手は葉っぱだ。さっきのフロストの時みたいに全弾打ち落とすのは難しいかね。多少の被弾には目を瞑るか。 じっとしてれば葉っぱにそのままやられる。ダメージを軽減するなら……これが一番だな。 「行っくぜぇ!」 「な、マジカルリーフに突っ込んだ!?」 「……流石ですねライトさん、そんな手を思いつくなんて」 痛たたた! が、自分から突っ込めば体に当たる面積を減らせる。で、前に突きを出しながら行けば多少なりともガードの役目も出来るって訳だ。 そして、マジカルリーフを抜けた先にはリーフが居る。下手に避けるよりも、こうすれば一気に相手との距離も縮められるって訳だ。 「もらったぁ!」 「リーフ!」 「くぅぅ!」 ……ん、なんか突きを当てた感触が変だったな? 妙に硬かったぞ? 打撃を当てた部分を見ると、薄らと光沢があった。なんだ? 「……リフレクターを張ってもこの衝撃。流石ライトさんですね」 「ふぅ、間に合ったか」 「ほぉ、リフレクターか。なるほど、打撃主体の戦い方をする俺とは相性が良いって訳だ」 物理ダメージを減衰させる防壁、リフレクター。そいつにゃ俺の体術も例外にゃならんわな。そりゃ、そんなもん殴れば感触が変だったのも納得だ。 しかしそうなるとちょいと厄介だな。衝撃を軽減されちまうと、当て身が通らない。無理すりゃ通せるだろうが、まだ相手が三匹、それも厄介そうな面々が残ってるとなると余力は十分に残しておきたい。……一筋縄じゃいかないか。 ……解くか、あれの封印を。元々電磁波と体術だけで戦わなきゃいけないって訳じゃないし、相当手加減して撃てば問題ないだろう。 「ふっふっふー、これでライトの打撃は効かない! リーフ、押せ押せぇ!」 「油断したら足元を掬われる気しかしませんが……攻撃しないと勝てませんもんね!」 「良い心掛けだぜ、リーフ。……ふぅぅ……」 集中集中……威力調節を間違えばリーフがとんでもない事になっちまう。ぶっちゃけ、ただ使うより威力をセーブする方が大変なんだぜ、特殊技って。 マジカルリーフに切られながらって事にはなるが、電気を調節する。……よし、こんなもんだろう。 右前足をリーフに向けて、電気を収束。マジカルリーフに当たって減衰するのも考えて、一点集中型だ。 「……貫け!」 「ん、なんだ?」 「!? にゃあぁぁぁぁ!?」 「っと、綿密に練って撃ちだしたが、大丈夫かーリーフ」 「ほぇ!? ちょ、な、今の何!?」 「ん? 俺の十万ボルトってところだな」 威力はやっぱり三分ってところだ。こんな感じのバトルなら、それくらいが妥当なところだろう。それ以上の力を出すと、相手の体に甚大なダメージを与えちまう可能性も出てきちまうからな。 おぉ、めっちゃふらついてはいるが、リーフの奴耐えたぞ。……そういや草タイプって電気を半減させんだったっけ。久々に電磁波以外の電気技使ったからすっかり忘れてた。 「う、うぅ……目の前が真っ白になりました……」 「ほうほう意識もはっきりしてるじゃないか。あれを受けてそれだけ耐えられたら上出来だぜ」 「草タイプのリーフが一撃でこんなになるなんて……十万ボルトってレベルじゃなくね? リーフ、まだやれるか!?」 「か、かろうじてですけど……」 ま、こんだけ弱らせれば十分だろう。後は軽く小突いて終わりだな。 ……あれ? あ、この状況やばくないか!? 確か、ベイリーフの特性って……レオの猛火の草バージョン、深緑だよな!? これ完全に発動してるだろ!? この状態でのマジカルリーフはちっと痛いじゃ済まんぞ!? 不味った、小突いて終わりとか言ってる場合じゃねぇ! はっ、リーフを中心に力が収束していってる? やばい、一撃に全力を載せる気か! 「こうなったらありったけを一撃に込めるぞ!」 「その、つもりです!」 「ちぃっ!」 撃つ前に終わらせる! これ以上ダメージを受けて、もう三連戦はちときつい! 「いっけぇぇぇぇ、リィィィフストォォォォム!」 「でやぁぁぁぁぁぁ!」 「!? なんだと!?」 リーフの周囲から、力が……噴き上がる! 駄目だ、避けきれねぇ! なんとか直撃は避けねぇと! リーフストーム!? ベイリーフってそんな技覚えたか!? どうする、どうやって耐える!? 多少はダメージ受けちまうだろうが、これしかねぇ! 体をよじりながら、吹き出してきた葉の嵐に向かって電気を放つ。ぶつかり合った力は反発しあって……爆発。 くそ、やっぱり吹き飛ばされるか。だが、あの技をモロに喰らうよりはマシだって事にしとくか。 「ぐはっ! くぅっ」 「やった、直撃ぃ!」 「ぅっ……違います、ライトさんは……」 「いってぇ……まさかリーフがここまで強いとは思わなかったぜ。予想の斜め上たぁこの事だな」 「うぇい!? なんだか結構元気!?」 いや、そうでもない。爆発で叩きつけられたダメージは守りの雷で減衰出来る訳でもないし、俺ってそこまで打たれ強さがある訳じゃないからな。純粋なダメージを受けるのは大分不味いんよ。その辺はサンダースってところか。 それに守りの雷で弱めていたとはいえ、マジカルリーフは俺の薄皮を大分切っていった。少々ではあるが、血も出てる。とんでもないダークホースが居たもんだぜ。 まぁ、あの一撃を耐えたお陰で、リーフはもう限界になったようだがな。息も絶え絶え、俺が手を下す事も無いだろう。 「あれでも倒せないとかもうどういう事!? こうなったら……!」 「……リーフ、お前は強かったぜ。正直、俺が戦った中でも上位の方だ。よくやったよ」 「あは、は……ありがとう、ござい……ます……」 「あ、あれ? リーフ!?」 「ばーろぉ、トレーナーなら自分のポケモンがどんな状態なのかにゃ気ぃ付けろっての」 よ、よっし、リーフがダウンしてこれで四匹撃破。二割くらいの力で戦ってるとはいえ、こんなに手古摺るとは思わなんだ。マジでリーフとの一戦はきつかったぜ……。 これで次にプラスの時みたいにインターバルがあれば、俺の自己発電と蓄電の効果で擬似自己再生出来るんだが、もうそんな悠長に出来る相手、残ってないよなぁ。こうなってくると、先にプラスと当たっちまったのが悔やまれるな。 五匹目に繰り出して来るのが誰か知らんが、出来ればレオ辺りが良い。もう既に手合わせして実力は把握してるからな、不意を突かれて予想以上のダメージを受ける心配は大分減る。そういう観点でも、レオを所望する! 「くっそぉ! なら次は……頼むぞ、リィ!」 ですよね、俺の予想通りになんか行く訳ないですよね。分かってましたよ畜生め。 ってかリィですかマジですか。またこのきっつい時にきっつい相手ぶつけてきやがったなもぉ! うわぁー、また露骨にやる気に満ちてるなリィ。そういや本格的なバトルはこれが初だろうから、初陣っていうのもやる気に繋がってるんだろうな。 「……ねぇ、人間さん……一つだけ、我が儘言っていいかな?」 「ん? どしたのリィ?」 「このバトル、僕に任せてくれないかな。僕、自分でどれくらいライトと戦えるか知りたいんだ」 「んんー……よし! 俺は見てるから全力でゴー!」 「あはは、ありがとう。そういう事だから、いいよね」 わーい、状況が更に悪化したぞー。あいつの指示無しで動くリィとか、ガチじゃないですか。でもやる気になってるリィに水差すのも悪いしなぁ。 しゃあねぇ、そのやる気、受け止めてやるとしますか。……俺後三戦、保つかなぁ? 「……来い、リィ!」 「ありがとう……行くよ!」 今のリィはエーフィだ。あいつも見てる事だし、空間の力が使われる事はまず無いだろう。が、それでもリィのバトルスペックは高い。油断したら良いのを貰っちまう事になるだろうな。 ふむ、まずは静かな立ち上がりになった。初手は果たしてどう出てくるか……。 リィの尻尾が静かに揺れる。……来るな。 リィの額の赤い水晶が一瞬光った。それと同時に僅かに空間を歪めながら何かが俺に向かってくる。リィの念力か。 ……どうして俺が特殊技を撃ち落とせるか、それには俺の体を包む守りの雷が関係している。この雷は、あらゆるエネルギーを遮断し、相殺する。その効果によって、本来生身じゃ触れられない特殊技に俺は触れられるって訳だ。 それは氷なんかの物質化したエネルギーに留まらない。精神エネルギーであるエスパーの念も例外じゃあねぇんだなぁ。 「おいしょっと」 「むぅ……それくらいじゃ様子見にもならないか」 「様子見か。なら、こっちもそう……行こうかね」 飛んで来た念力を足元に叩きつけて消した。物理的に念を殴りつけるってのも他ではお目に掛かれない光景だろ。 後の先を取っていく今までの戦い方じゃリィにはきつい。こっちからも行かせてもらうぜ。 軽く地面を蹴って前へ。リィの目ならまぁ、見えなくならない程度の加速だ。こっから、突きへ移行する。 おっと、突きが当たらないギリギリの位置まで下がったか。この見切り、流石だな。 そっから体を捻って溜めを作って、その溜めた力の通りに体を回しての蹴り。これがあるから、幾らエーフィっつってもリィに接近戦が有効ってな言い切れないんだよな。 で、更にこっちを向いた瞬間に念力で追撃と。指示を待たないでいいからこういう連撃も普通にしてくる。だからさっき状況が悪化したって表現した訳だ。 その念弾を弾きながら一時後退……させてくれないのね。念弾と同時にリィも距離を詰めてきた。ま、遠距離攻撃は俺が叩き落とすんだからそれを選ぶわな。 オールラウンドな、戦闘の距離を選ばないからこその戦い方だ。どっちかだけなら今までの四匹みたいにそう戦うのは難しくないんだが、こういうタイプは戦術の幅が拾いから厄介なもんだぜ。 オールラウンドな、戦闘の距離を選ばないからこその戦い方だ。どっちかだけなら今までの四匹みたいにそう戦うのは難しくないんだが、こういうタイプは戦術の幅が広いから厄介なもんだぜ。 リィの体術は、俺とは違い蹴りが主体。俺は隙が生じ易いからそんなに使わないが、リィの場合その隙を特殊技で埋められる。だから威力重視で蹴りを練習したんだろうな。 「まだまだ!」 「ははっ、忙しいねぇ」 「うぉぉ……リィが戦うところなんて始めて見たけど、強っ!」 これがあの阿呆に使いこなせるとは思えんが、まぁこうして戦うところを見れば少しくらい何か掴めるだろ。 にしても、初陣でこれだけ出来るとは思わなんだ。普段からの訓練の賜物かねぇ。 蹴りの合間に撃ち出してきてんのは念力。ふむ、リィはサイコキネシスが使える。のに念力を使ってきてんのはサイコキネシスの温存の為ってところか。……が、もう一つを使ってこないのは何が狙いかねぇ? リィの策がどうであれ、受けてばっかじゃ攻撃にこっちが移行出来ん。少し区切るか。 リィの蹴りを防ぎつつ受けて、それを払う。こうすりゃ、リィはそのまま払われて距離が出来る。 「よっと。まぁ、そのまま攻撃させたままにはしてくれないよね」 「分かってるじゃねぇか。なら、反撃と……」 「させないよ。攻撃しながら、仕込みはさせてもらったから」 仕込み? ……あー、なるほどね。攻撃に集中してるのかと思ったら、こんな事を仕組んでたとはな。 気が付いたら、俺を中心とした空間に多数の星が浮かんでた。これはリィのスピードスターだ。力を空間に張り付けて、技を設置したんだ。これも技の器用な使い方だよなぁ。 それ全てが俺に向かっている。いやぁー、リィの技制御能力の向上っぷりには脱帽だぜ。 「スタープリズン、そんなところかな」 「星の牢獄ねぇ? 完全に囲まれたこの状況は言い得て妙ってところか」 驚かされたが、まだまだ及第点な技だな。俺が動いてもこっちを狙ってくるのはいいが、それが俺一点に向かってきてるのが分かってれば避けるのはそう難しくない。 「そして……これが、仕上げ!」 はい? なんでこれを設置したのを教えてから接近してくる? そんな事したら自分も巻き込まれるぞ? とにかく迎撃するか。うーん、狙いが読めんなぁ。 「狙い通りだよ!」 「ん、何!?」 リィの前足から砂が発生した!? そうか、砂掛けか! リィの四つ目の技って何か分かってなかったが、そりゃ訓練じゃ砂掛けなんか必要無いわな。 なんとか目に砂が入るのは防いだが、どうやらそれが狙いだったようだ。防ぐと俺は前足が使えなくなる、するってぇと俺はその防御状態の間は動きが制限される訳だ。そしてその間に……。 「行け!」 「だよなぁ!」 周囲に展開してたスピードスターを一斉発射、俺は避けれないから確実に被弾しちまうって訳だ。結構練り上げられた作戦でねぇの。 ふむ、さっきのプラスのスピードスターよりは威力がある。けど、これも俺の体力を削りきれる代物って訳じゃない。だとしたらこれは、大技の前の時間稼ぎが。 あだだだだだ……リーフ戦のダメージが残ったままでこれを受けるのはきつい。体力も、オレンジゾーンに突っ込んだ辺りだろうな。 星弾が、止んだな。さて、リィは何処だ? 居た、真正面か。……額の水晶の光り方して、相当デカいのを撃ち出すつもりみたいだな。こりゃ、守りの雷でも防ぎきるのは無理だ。するってぇと、体力の減ってる俺じゃそれで倒される。しゃあない、リーフ戦でもう使っちまったし、迎撃になら使ってもいいだろう。 「……これが今の僕の全力だよ」 「やれやれ……師匠として、そう言われた物を避ける訳にはいかんわな」 わーお、水晶の光で部屋の中が真っ赤に染まる。どんだけの力がチャージされてんだか。俺相手以外だったら相手を吹き飛ばしちまうレベルのパワーだな。 これは、3%じゃ足りないな。10、いや20%位無いと相殺しきれんか。どれ、やってみるかね。 「サイコキネシス、いっけぇぇぇぇぇ!」 「いよっしゃあ! 来いやぁ!」 うぉぉ、可視化出来る程のエネルギー! 七色に光るエネルギーが俺に向かって飛んでくる! ひゅう、やるねぇやるねぇ。 「バースト……ボルト!」 「!?」 「悪いなリィ! ちっと疲れてるから、撃ち返させてもらうぜ!」 俺とリィの間で二つの力がぶつかり合う。……あいつの事考えないで撃ち合いになったが、大丈夫か? あ、大丈夫そうだな。全力で退避してやがった。 にしても、俺の20%と互角たぁ凄ぇもんだぜ。これ、普通のポケモンなら10匹以上が束になって特殊技撃ってきても相殺出来る火力なんだがねぇ。 溜めて撃ってるからこの火力になってるんだろうが、それだけ力の圧縮が出来てるって事だよな。リィのポテンシャル、やっぱり計り知れねぇぜ。 「くぅぅ……はぁぁぁ!」 「! まだ上がるか!」 「お、俺の目の前で起きてる事は現実ですかぁ!?」 おう、現実だ。力の余波の中でよく喋れたな、あいつ。 リィの力が上乗せされて、力の均衡が崩れた。……それを利用するとしようかね。 それだけ強力な力だ、そっちに集中してる辺り俺が動いても気付けないだろう。タイミングを図って……一気に放電を止める。更にそこから移動、しないとリィのサイコキネシスに飲まれて確実にアウトだぜ。 横っ飛び&前へダッシュ。んー……放電で多少消耗してるな。いまいちスピードに乗り切らない。まぁ、それでもいいだろう。 「……あ!?」 「気付くのがちょーっと遅かったな。ま、お疲れさん」 「しま……」 言い切る前に、リィには気絶してもらった。……この体力の消耗で後二戦。そろそろ本気で不味いかな……まぁ、やるんだが。 「お、終わった?」 「リィがボールに戻ったんだから分かるだろうに。ま、ちっとばかしリィの気負い過ぎだったってところかね?」 「……今のは本当にブイズ同士での戦いだったんでしょうか? 明らか技の威力とか尋常じゃ無かったよね?」 「それに耐えるこの部屋もなかなかだがな。今の、あの家だったら吹き飛んでるところだったぜ」 「リィってあんなに強かったのか……知らなんだ。と言いつつレオをどーん!」 六体目はレオか。となると、最後はレンね……本当、最後の三匹がきつい。いや、正確には積み重ねによる消耗だからこの戦闘自体がきついって事になるか。 「……ほう、そこまで消耗しているお前を見る事になるとはな」 「正直、これまでの五匹がここまでやるとは思わなくてな。だが、まだ結構行けるぜ?」 なんて言いつつ若干時間稼ぎだ。さっきの電撃を見てくれれば分かる通り、俺は発電能力からして他のサンダースや電気タイプより強力だ。その発電した電気と、特性の蓄電を併用すればオートヒーリングが出来る。それがさっき言った擬似自己再生の原理だ。 それによって俺は少しずつだが回復している。じゃなけりゃここまででスタミナ切れを起こしてるぜ。 それでも回復しきってないのは見抜かれたか。だとしたら……。 「主殿、ここは手を緩めず一気に畳み掛けましょう。奴に休む暇を与えなければ、勝機はあります」 「なるほど……ならそうしようか! レオ、火炎車で一気に接近だぁ!」 「やっぱり、そう来るよなぁ」 ここで状況分析が出来るレオに、奴に俺が疲労してるのを教えられたのは不味かったかなぁ。予想して出す順番を決めたのかは知らないが、なかなか有効性のある順番で配置してるもんだぜ。 まぁ、レオの技は全て把握してる。対処に困る事は無いから、落ち着いて行けば、僅かながらでもインターバルは稼げるだろう。 火炎車を軽く避けて、まずは下がる。追撃してくるのは分かってるからな。 「そこから切り裂く! 休ませないでどんどん行くぞ!」 「承知!」 「ふぅ、やれやれ……」 とことん引っ付いて、俺に回避させて少しでも体力を消耗させる腹積もりだろうな。実際その作戦は悪くない。ただし、俺以外にならな。俺の場合、回避運動による消耗よりも回復量の方が多いから避けるのはイコールで回復にもなるんだなーこれがな。 それを気取られないように本気で避ける振りを続ける。でも、こっちから手を出さなければその内レオが気付くだろうがな。 切り裂くを避けて避けて……動けば動くだけ俺は発電をして、その電気で体を癒していく。特性が蓄電で良かったと、こういう時は思うぜ。 この状況をもう少し続ければ、体力半分くらいまでは回復出来るだろう。そんな抜け目がレオにある筈無いが。 「お前、わざとだな?」 「何がだ?」 「そのふてぶてしい素振り、やはりか。主殿! これは時間稼ぎです!」 「時間稼ぎですとぉ!? 何故に!?」 「こいつの素早さならば、避けるのにはそう体力を使わないのでしょう。このまま近接戦闘を続けても意味は無いですね」 「……だとしても、どうするんだい? 言っておくが、俺は一度手合わせした相手の技なら把握して忘れる事は無い。レオ、お前の技は四つとも分かってるんだぜ」 「ならば戦い方を変えるだけだ。すいません主殿、俺は引かせてもらいます」 引く? ……そうか、奴のセコンドに着くつもりか! 奴もそれが分かったのか、レオをボールに戻そうとしない。 これを一戦分楽になったと取るか、それとも次のレン戦が厳しくなったと取るか……これは、レオの引くタイミングが上手かったと言わざるを得ないな。俺が回復する時間を与えず、かつ次のレン戦ではより的確な状況分析をしながらの指示を出せるようにする。間違い無くあいつ等にとってはプラスになるだろう。 「う、うーん……ならば最後の刺客! 行くぞぉ、レン!」 「まったく、そう来るかよ」 「この勝負はお前を捕らえればこちらの勝ち。お前とは、主殿のポケモンとなった後に決着を着ければ済む話だからな」 「うわわっと……私の番になっちゃったんだ」 普通のバトルじゃないって事を一番理解してたのはレオだったって訳か。本当に、普通にバトルするより厄介な事態になったもんだぜ。 レオの助言で奴の指示はより的確なものになるのは目に見えてるし、それについて来る技量がレンにはあるだろう。隙を突くのが難しくなった、か。 「ライト!? 大丈夫なの、波導が弱まってるよ!?」 「これまでがちっときつい勝負だったもんでね……けどレン、これから戦う相手の心配は無用だぜ」 本心としては物凄く有難いがね。でも、この一戦は避けようもない。やるしかあるめぇよ。 俺の余力は、体力が三分の一、技は問題ない。体の動かない部分は無いから、きつい一撃を受けなければまだ十分戦えるな。 「レン、ライトと戦うのは気が引けるかもしれないが、これもライトを我が家に永住させるため! この一戦だけ我慢してくれ!」 「そ、そうだよね……分かった、頑張るね」 「頑張っちゃうのね……」 ぼやいてないで、向こうも準備出来たようだし最終戦と洒落込みますか。もうちょい保ってくれよ、俺の体力とスタミナよ。 「これが最後の勝負! レン、波導弾で先制だぁ!」 「ライトは今少しでも休もうとしている。その時間を与えなければ、勝機はあるぞ!」 「わ、分かった!」 腕を前に掲げるようにして、レンの前に力が収束し始める。波導か……基本は特殊技として処理して問題無いよな。 それが、撃ち出された。……レオの指示を素直に聞くと考えると、この波導弾の後には必ず追撃が来る。なら、弾いたりするよりも効果的に使う方がいいだろう。 波導弾は特徴として、撃ち出された後も狙った対象を追尾してくる。どうやってるかは知らないが、恐らく認識した相手の波導を自動追尾するようにしてるんだろう。今度レンにその辺は聞いてみるか。 自動追尾ってのは確かに強力だが、その実、それが弱点でもある。昔からよく使われる手ってのがあるからな。 俺は波導弾を避けずに……向かっていく。もちろん受けたり弾く為じゃないぞ? 着弾寸前で僅かに体をずらして避ける。そうすると、俺は弾の反対側、レン側へすり抜けられた。ま、ようするにこの波導弾をレンにそっくりお返ししようって腹積もりさね。 「ほいほい、ちょっと後ろ失礼するぜ」 「え? わぁぁ!?」 「レン!?」 「神速を使え!」 ワッツ!? そんなの使えたのかよ! まぁ、今はレンの技の確認もせにゃならんから、一つ出させたって事でオーケーにしとくか。 波導弾が当たる前に、俺の目の前からレンの姿が消えた。で、俺の正面からは波導弾。んー、まぁ初手ならこんなもんか。 飛んで来た弾を床に叩きつけて、相殺。十分にスピードもあるし、威力もなかなか。直撃は避けないとならなそうだ。 「び、ビックリしたぁ」 「ま、使い古された手は効かないか」 「本来出来る筈が無いのだがな……主殿、横から口を挟んで失礼しました」 「いや、オッケー! 結果的にレンは無事だし、もうどんどん頼む!」 「それもどうなんよ……」 ふむ、距離は出来たが次はどう来る? レオがセコンドに居る以上、もう遠距離攻撃を選ぶとは思えん。選ぶとしても、俺に当てられるタイミングまで無駄撃ちは避けるだろう。 ならどう来るか? 必然的に近接。と言いたいが、はてさて……。 「レン、神速もう一回! 一気に距離を詰める!」 「はい!」 「ま、遠距離が効かないんだからそうなるか」 ルカリオが使える近距離で強力な攻撃としては、インファイトやボーンラッシュ辺りが警戒対象ってとこかね。神速をどんなタイミングで覚えたか、それで使える技が変わってくるんよなぁ。 波導弾も神速も確か、ルカリオって種が基本的に使えるよう記憶に刻まれた技、だから成長によって覚えたかどうかは分からん。あのアホに技を思い出させるなんて芸当が出来るか、出来る知り合いが居るか怪しいもんだが、奴の通ってる学校でそういう事をしていないとも言えん。まだ情報不足感は否めねぇかね。 で、レンと接敵したんだが、神速で加速したまま肘打ちが飛んで来た。ただの加速しての体当たりじゃないって辺り、やっぱりレンもルカリオだって事か。 「おっと、そう簡単には当たってやらんよ」 「しかし、その距離ならこれは避けれまい。レン! 波導弾だ!」 「う、うん!」 なるほどねぇ……距離があったら当たらないなら、距離を無くしての零距離射撃か。確かに避けれはしないな、まぁ。 だがここは俺の距離でもある。レンの波導弾には僅かなチャージ時間があるのはさっき見て覚えさせてもらったから、やる事は一つだな。 俺に手を掲げて、その前に力が集まっていく。その無防備が命取りだぜ。 「仕掛けさせてもらうぞ!」 「……レン、ボーンラッシュ! 右手で波導弾キープで!」 「!? はぁっ?!」 「ごめんね、ライト!」 ちょっ、チャージキャンセル!? いや、片手で波導弾を作りながら攻撃してくる気か! 器用な事するねぇ。 攻撃に転じようとして出した前足に衝撃が来る。レンが左手で作ったボーンラッシュ、薄らと青く光る骨状の棒で払われた。しかも、上体が上がるように上に。不味ったな。 そこでレンの右手が俺に向けられる。……ま、読みを通されたペナルティ、だな。 「やぁぁ!」 「ぐぅあぁぁ!」 「うぉぉ、やった! まともなの一発!」 「読みは通せたか……ですが主殿、まだ警戒を。奴はあれくらいでは倒せません」 ……ちぇっ、もうちょこっと油断してくれりゃ体制整えて反撃に行けるが、それを警戒されちまうと厄介だな。行ったら迎撃されてるのが目に見えてるぜ。 しかし、ボディに良いの貰っちまったのはちと不味い。受身も取れずに弾かれちまったからな……息が詰まっちまったぜ。 ダメージとしてはレッドゾーン突入ってとこか。うーん、ここまで体が重くなったのは何時ぶりだったかな。こりゃ、余計な事してたら本当にこのままやられちまうぜ。 にしても、レオと奴のコンビネーション、まさかあんなに息を合わせて出来るとは、な。これまでも同じことをやってたとは思えんが、一緒に戦ってきた経験から来るもんってところか。 「ふぅ、おー痛て。レンも器用な事するねぇ。ちょいと油断しちまったぜ」 「って、ライトまだメッチャ余裕!?」 「いや……それはないでしょう。俺が軽く手合わせした時点で相当消耗してたのです、そこに良いのが入って無事な筈は無い」 「あ、あの……」 「レン、言わなくていいぜ。自分の事は自分が一番分かってるさ」 もう一度同じ威力の一撃が入れば、最悪俺はダウンだ。余裕ぶっちゃいるが、レオの読み通りさね。それは、波導の見えるレンも分かってるだろう。 が、俺は勝負を捨てる気は無い。そもそも奴のポケモンになる気も依然として無いんだから、降参なんてしてやる気も無い。最後まで戦うだけさ。 「そうか、そんなにライトは衰弱してるんだな? ふっふっふ……」 「? 主殿?」 「ならば、これを使うチャンスだってことだ! 受けるがいい、ライトォォォ!」 「あ? なんだぁ?」 なんか馬鹿が騒ぎ出したと思ったら、こっちになんか投げてきたぞ? いやまぁ、俺を捕まえる気だってんならそんなもん一つしかねぇけどさ。 だが、それを撃ち落とすくらい全然余裕で出来るぞ? 狙いを定めて、電磁波ショット。はい、バチバチーっと。 「うぇい!?」 「なんだこりゃ? タイマーボール? へぇ、珍しいボール持ってやがったな」 確か、戦闘中に相手ポケモンを分析して、対象に対して最適化を行っていく事によって捕獲力を上げるボール、だったかな? まぁ、こうして当たる前に壊しちまえば関係無いけど。 まさか、これの捕獲力を上げる為に時間稼ぎみたいな事もやってたのか? 主にプラスを出した事辺りがそれに該当するが……こんだけたっぷり時間を掛けりゃ、そりゃ捕獲力も最大まで高まってるだろうけどよぉ。 「ば、馬鹿な……当たりもしないで撃ち落とされるなんて!?」 「あのな、普通の野良のポケモンだって、動けないくらいまで衰弱させないと容易にゃ捕まえられないんだぞ? まだ普通に動ける俺が捕まえられると本当に思ったのか?」 「主殿……今のは些か勇み足だったと思いますが……」 「……どうしようレオ、俺……」 は? いやちょっと待て、なんだそれ? その先なんて言うつもりだ!? おかしな事言ってくれるなよ!? 「あのボールしか持ってきてなーい! あれで捕まえる気満々だったし、もうボール買う手持ち金も無いよぉーう!」 「え、えぇ!?」 「えぇー……」 「あの、じゃあこれって……これ以上戦ってもライトを捕まえられないんじゃ……」 ですよね、そうなりますよレンさん。何? 何なの今までの激戦は。呆れ過ぎて何も言えん。 所詮、アホはアホだったって事か……この煮え切らない思い、どうしてくれようか。 「なんでライトもあれ壊しちゃうかなー! 奥の手だったのにぃ!」 「奥の手ってのは最後まで隠しとくもんだろうがぁ! アホかぁぁぁ!」 「ちょっ! にょばぁぁぁぁぁ!?」 死なないように手加減した俺の雷撃が奴を捉えた。レオもレンも止めないって事は、相当呆れたみたいだな。本当にしょうもねぇ……。 痺れて倒れた奴を見つつ、三匹で一斉に溜め息を吐いた。後に残ったのはなんとも言えない虚しさだけ……はぁ……。 ---- 「ム~カ~つ~く~!」 「八つ当たりすんなっつの! なんで俺の首を絞める! 文句ならあっちに言えあっちに!」 「うっさい! そもそもあんたがあんな勝負受けなければ良かったんでしょ! 戦わされてあっさり気絶させられたあたしの恨みを受けなさい!」 「勘弁してくれ!」 こんな感じで、家に帰ってきてからずっとフロストからヘッドロックを掛けられております。まぁ、フラストレーションが溜まるのは仕方ないだろう、あんな終戦結果を聞かされりゃな。 散々苦労して俺を弱らせた面々からすれば、本当どうしようもねぇ結果だぜ。普通、捕まえたいポケモンが居るなら複数のボールを用意するのが定石。それを幾ら捕獲率の上げられるボールだからって一発勝負なんてなぁ本当にバカのする真似だぜ。 「でもやっぱり師匠は流石ッスよね。俺っち達七匹相手に一匹で勝てるんスから、そのまま俺っち達七匹分以上の力があるって事ッスよね」 「ううん、それは違うよソウ兄ぃ。ライトはあの戦いで半分も力を出してないから、僕達七匹の力じゃもっと本気を出したライトには適わないんじゃないかな」 「それがまたムカつくのよね。本気も出さないで涼しい顔してあたし達を倒すんだから……本当にムカつくー!」 「もう許してくれってばよ……」 ま、流石に手加減をしてるのはバレてるよな。だからこそ、リィは俺を本気にさせる為にあの全力サイコキネシスを使ったんだろうな。 今は回復したから問題無いだろうが、あれは体にも精神力にも負荷が大きい技だ。よっぽどの事が無い限り使うのは控えろってリィにはさっき伝えたよ。 まぁ、皆敗戦をそんなに引き摺っている様子は無い。この点は一安心ってところかね。 「でもさー、実際かなり良いとこ行ってたよな? それだけ皆レベルアップしてるって訳だ! それだけ分かっただけでも戦った甲斐はあった!」 「それにもライトさんが物凄く重要に関わってるんですけど……ご主人には知らせない方がいいでしょうか?」 「面倒だし、知らぬが仏としておこうぜ。教えると余計面倒な事になりそうだし」 ん? そういやレオとプラスが居ないな。何処行ったんだあいつ等? いやでも、何してるかは大体想像出来るか。プラスの奴は帰ってきてから相当落ち込んでたし、それを励ましてるか戦い方の相談でも受けてるんだろう。 それに参加しないこいつも如何なものかとも思うが、別に俺が言うことでもあるまい。自力でいずれ気付け。 「ふぅ、お片付け終わりっと」 「おぅ、お疲れ」 「……ライト、よくフロストちゃんに首絞められながら普通にしてられるね」 「なんかもう慣れた。ってか面倒になったのか力は入れてないからな」 「こいつの場合幾らしてても落ちないから詰まらないのよねー」 落ちるんだったら継続するんかい。それもどうなんよ。ってか力入れないならこのヘッドロックを解けぃ。 なんてのんびりしてる間に、一匹、また一匹と部屋に戻っていく時間になった。まぁ晩飯も食い終わって夜の9時にもなりゃあ皆寝るわな。 幾らポケモンセンターで回復したとはいえ、俺との戦闘で頭も使って戦ったんだ、気疲れの方は皆残ってたんだろう。 で、リビングには俺とレン、ついでに何故かハヤトの阿呆が残った。いつも真っ先に部屋に戻るのに、珍しい事で。 「うーん、皆が部屋に戻ると結構静かだなー。俺、いっつも最初に部屋に戻るから知らなんだ」 「そのお前がなんで珍しく残ってるんだ? 見たい番組でもあるとか?」 「うんにゃ? なんとなくこの時間はレンとか何してるのかなーと思って残ってみただけよん」 「私? 今日はもうお洗濯もしちゃったし、寝るだけだよ?」 「あ、そなの? なんだぁ」 ……こりゃ、今言ったのは嘘だな。レンを引き合いに出したって事は、本命は俺か。何かいね? しばし無言で、リビングにはテレビからの音だけが流れる。このまま何も無いなら、部屋に戻って寝ちまうぞ俺。 「……あ、あのさライト」 「ん? なんぞ?」 「いや、こうしてライトとゆっくり話出来る時間とか今まで無かったし、軽くなんか話そうかなーと思っただけなんだけど」 「そりゃあな。大体いつも一番に引っ込んでりゃそうなるだろ」 「まぁそうなんだけどさ。長期休みなんだからたまにはこういうのもよかろうと思ってね」 「夜更ししても学校は無いもんね。でも、あまり起きてると明日起きられないよ?」 レンの言う通りだ。休みだからってずっと寝呆けてるってなぁ勿体無い。寧ろ、普段は出来ない事に時間を割くべきだな。 「分かってるって、そんなに長くないよ。でも凄かったなー今日のライト。まさか、七匹でもあんなに追い詰められる……ってか負けるとは思ってなかった」 「俺はそう簡単にやられるつもりは無いぜ。……が、今日はちと相手の目算を誤った。予想外に強かったぜ、全員な」 「私はちょっとしか戦わなかったけど……バトルなんて本当に久々だから緊張しちゃったよ」 「そんな事言って、レンもめっちゃ動けてたじゃん。実際、ライトにまともに一撃入れれたのはレンだけだったし、そこは流石ルカリオだよなー。改めてそう思った」 あれはレオが追加指示を出してたってのも加味されてるがね。その指示に的確に反応出来たレンの能力は確かに高いって言えるだろう。 「……皆の戦い方が上手くなったのって、ライトのお陰なんだろ?」 「ほぉ……なんだ、気付いてたのか」 「そりゃあねぇ、ソウから師匠って呼ばれてるのを聞いてたらなんとなく分かるって」 「私も、ライトに教えてもらってから組手とかしてるけど、最近体の調子も良いんだよね」 「家事だけじゃ体の動かす部分にも偏り出るしな。元々が野生で生きてるのがポケモンだし、動く方が体に良いのは当然さね」 「んー、そう考えると、俺はレンに今までずっと無理を強いてきていた事になるのか……」 そもそも家事をやらせてる時点で察しろっての。ずっとそうだったから感覚が麻痺してたんだろうがな。 家事をしてくれるポケモンが居て、自分を立ててくれるパートナーが居て、手持ち全員が面白おかしく一緒に暮らしてくれる。本当に、トレーナーとしてこんなに恵まれた環境に居る奴そうそう居ないよな。 そんな奴だからこそ、俺を家に置いても普通に生活してるんだろうな。ポケモンをパートナーとかじゃなく、家族として生活してきたからこそって奴だな。 コイツの場合は警戒心が無さすぎるとも言えるが、それを言うのも今更な事だろう。変に直そうとしておかしくなっても厄介だし。 「今はもうそれに馴染んじまってんだ、無理矢理正す事もあるめぇよ」 「うーん、そうなのか?」 「私も、急にお料理とかしなくていいって言われても困っちゃうかな。ずっとやってきた事だし、今では楽しい事だもん」 「そういう事だ。それに、お前に台所弄らせたらまた大変な事になるだろうに」 「じ、事実ながら辛辣だなライト……一応俺だって一品くらいは作れるぞ!」 「茹で卵だろどうせ?」 言い当てられて凹むなよ。寧ろそれ以外に何か作れんのかい。本当に、こいつはレンかレオが居ないと生活もままならんな。 「まぁいいさ。これからも生活したきゃ、せいぜいレンやレオに呆れられないように精進するこったな」 「うぇーいす……その内ライトも本格的に捕まえないとならないしな!」 「出来るかねぇ? 今日だって、わざと失敗するようなタイミングでボールを投げたようだし」 ギクッとしても分かるっちゅうに。どう考えても時期尚早、俺をもっと弱らせる事は十分に出来た筈だ。なのにあの中途半端な時にこいつはボールを使った。わざとじゃなかったらトレーナーの基礎からやり直すべきだろ。 「え、ご主人……あれ、わざとだったの?」 「そ、そんな事な……い、って言っても、ライトには通用しないか」 「当たり前だ。どういう裏があってあんな事しやがったんだ?」 「んー、別に深い意味は無いかな。強いて言えば、どんな結果であれ、あのボールを使ったらバトルが終わるって分かってたから使ったってとこ」 あの戦いを終わらせる為にボールを使った、ねぇ? そっちから吹っ掛けてきた勝負を終わらせたいたぁどういう了見だ? 「なんかさぁ、レンがライトと戦ってるの見てたらさ、これは違うなぁって思ったのさ」 「違うとは?」 「もっとこう、そう、レンとライトは相対してるより、そうやって並んでる方がやっぱり良いなぁって思ったのさ」 「え? !!」 おう? いや、そりゃ俺はレンの横に居たけどよ、まさかそんなフリがいきなり来るとは思わなんだ。 「実際さ、どうなのレンとライトは。一緒の部屋で寝起きしてるんだから付き合ってるんでしょ?」 「ちょま、俺達は別にそういうんじゃねぇよ。俺だって、レンが相部屋にしないかって言ってくれたからあの部屋に厄介になってるんであってだな」 「でもさ、最近そういう距離感多くない? 確実に前より近いよね、君達」 「べ、別に何も変わってないよ! 近いって言ったらほら、フロストちゃんやリィちゃんはライトの背中に乗ってるし!」 「あれはもっとシンプルだろ? ただライトに乗って寛いでるだけだし。レンとライトのはあれだ、出来たてのカップルのノリ」 まさかこいつに吹かされるとは思わなんだ。どストレートに来たな全くよぉ。 「実際どうさ。俺は別にとやかく言わないよ? 寧ろライトとレンなら似合ってるんじゃない?」 「に、似合ってるってお前! 俺はだな!」 「に、にあっ、てててってててて!?」 「そこまで照れるくらい意識してるなら付き合いますって言っちゃいなよ。誰も止めないから」 なんだろう、冷静なこいつムカつく。ってか俺がこの家のポケモンじゃないのはガン無視ですか? 本当に、なんでこの家の連中は俺達の間柄にこんなに寛容なの? 反応に困るわ! 「あー、でもレンと一緒に駆け落ちみたいのは勘弁ね。行く時は皆にきちんと挨拶して行ってくれ!」 「おまっ!? なんだその寛容さは!?」 「か、駆け落ち!?」 「レンがライトについて行くならって話だからして、ライトがこの家に残ってくれるならそれで構わんが」 そ、そこまで考えてるのかよ……俺がレンと一緒に……。 はっ! ここで考え込んだらもうイエスって言ってるようなもんじゃねぇかよ! 落ち着け、落ち着け俺よ! ってか俺の鼓動よ! 「ば、馬鹿! だからそんなんじゃねぇって言ってるだろ!」 「ふぅーん。ライトは否定するけど、レンはそうじゃないみたいだなー」 うぇい? わお、頬に手を当てて何やら考え込んでらっしゃるよレン。真に受けちゃってる? しねぇよ駆け落ちなんて! 「ま、その辺は二人……じゃなかった、二匹に任せるよ。んじゃ、俺はそろそろ寝ますわー。おやすみー」 「あ、お、おい! ……言いたいだけ言って行っちまったよ」 まさか一方的に会話のペースを掴まれてそのまま終わらせてしまうとは……不覚だぜ。 で、俺とレンがこの場に残されたと。どうしろと? いや、どうもしないで寝るけども。 「あーっと……ま、まぁ気にしないで、俺達もそろそろ寝るか」 「ね、寝る!?」 「落ち着けレン。そのままの意味だからな」 「そ、そうだよね! ふぅ……」 まったく、散々余計な事言っていきやがって、これから同じ部屋で寝るってのに変な空気になったじゃねぇか。 な、無いぞ、レンと俺のそういう絡みなんて無いからな! あーくそっ、あいつにペース乱されるのはなんか癪だな。畜生めぇ……。 ---- ~後書き!~ という訳で、ライト、ついに(自分が育てた)面々とのバトル回でございました! いつかはやろうと思ってましたけど、流石に7匹は多いので、再戦のレオには引いて頂いた次第です。 なかなか執筆時間が取れないですけど、まだまだ書きたい話は残ってるし外伝EXの方も残ってるし、少しづつでも書いていかねば! #pcomment IP:153.174.174.127 TIME:"2014-05-07 (水) 19:59:46" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%85%B1%E3%81%AB%E6%88%A6%E3%81%86%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%80%81%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E6%80%9D%E3%81%84" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"