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著者:オレ
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2012年
1月
[[23日>#Up20120123]]
2月
[[8日>#Up20120208]]



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&aname(Up20120123);

「なんだ、フォルク? 随分疲れた顔だな?」
 そしてようやく待望の声。可能ならばもう少し早く着いて欲しかったと、フォルクは肩を落とす。
「良かったね、運命のショタ君来たよ? 随分偉そうな態度なのが趣味なんだ」
「セラフィー!」
 どんどんと事態がややこしくなっていくことに、フォルクの胃痛が再び牙を剥き始めた。本当にもう少し早く来てくれればこんなことにはならなかったのにと、恨めしげにリガルに目線を向ける。
「なんだ、てめえこそ初対面にいきなりその言葉かよ? フォルクもビトーニェに会ったときにきっちり説明しろよ」
 舌打ち代わりにセラフィーに一度だけ向けた目線を、次は蔑みに変えてフォルクに向ける。毛皮を貫き心を引き裂く目線に、フォルクは本当にどうしてこうなったのかと恨みの目線を本物の太陽に向ける。
「すみません。私たちはただの旅の者で、偶然ここで野宿をしていたところで会っただけです。セラフィーが一方的に話してからかっただけですので、誤解しないでください」
「……この巨漢をからかうって、どこまでも無茶なやつだ」
 心の扉を閉ざして彼方を眺めるフォルク。目の前にいるセラフィーとか呼ばれているエーフィは、見たところリガルと同じくらいの背丈である。リガル自身もヒトカゲとしては非常に大柄なのであるが、それでも通常のエーフィと比べるとやや小さいくらいである。バクフーンの平均値を見ると大体リガルやセラフィーの倍以上の大きさなのだが、フォルクはバクフーンの中でもさらにさらに恵まれている体格なのである。そんな2メートルを越す巨漢も、もともと種族的に2.5メートルというラプラスには流石に届いていなかったが。
「体が大きくなるためには、頭は相当軽くなきゃいけないでしょ?」
「セラフィー、いい加減にしてください! それにそれは一番傷つくのは私なんですけど」
 ここまで酷い言いようをするやつがいるとは思わなかった。厳しい態度でたしなめるスティーレの態度から、娘に手を焼く母親を連想してしまう。基本的にラプラスの母親から生まれた子供がエーフィになることは無いが。
「リガル様、早く行きましょう……」
「朝早くっから疲れた表情もうなづけるな」
 後ろでなおも無駄な言い合いをしている二匹娘を背に、フォルクは茫然自失でリガルに声をかける。何故だろうか、魂が入っているのかが心配になってしまう。
「もう行っちゃうの? 折角だしもっと楽しめるところ見せてよ。向こうにもお客さんがいるんだし」
「客?」
 にやけたセラフィーの一言に、リガルとフォルクは思わず目線を向ける。即、今までのあまりに間の抜けた雰囲気が消し飛んだ。
「あれは……ガディフ!」
「部下も何匹か……つけてやがったか!」
 いかにも老練といった雰囲気をかもし出すフーディンを先頭に、七匹ほどの部下がこちらに一列になって進んできていた。部下たちの方はそこまで大した相手ではなさそうだが、それでもこの数は恐ろしいくらいである。
「ガディフって、確か……」
「有名なの?」
 急を告げ始めた雰囲気に思わず身構えるリガルとフォルクの後ろで、スティーレは今聞こえてきた名前に息を呑む。今から海に漕ぎ出そうにも、この位置では追いつかれて叶わない。隊列を組んで向かってきているからには、明らかに敵意を持ってきているのだろう。
「二百年戦争の末期に活躍した将の一匹です。この国の『両雄』ほどではありませんが数多くの武勲で統一に貢献しました。なぜかその後数年で早々と退役したのは未だに疑問を持つ者も多いですが。正々堂々とした豪快な性格で、高い支持を得ていたとか」
「ふーん。流石によく知っているよね」
 場違いに気の抜けた声を放つセラフィー以外は、真剣な表情で来訪者を見つめる。ただの通りすがりの旅行者を厳しく取り締まるようなほどの国境事情は、他国の領域付近でよほど大勢での移動をしていなければ存在しない。この国の兵士が今いきなりセラフィーやスティーレを捕まえに来るようなことは、まずもってよくよくの緊急事態である。間違ってもフォルクをからかったくらいではありえない。
「お前らが何かしたんでなければ、堂々としていろ。巻き込む気はねえ」
「問答無用で襲ってくることも考えられますので、その時は動かないでください」
 本心では別に巻き込んでしまってもその時は積極的になってまで守る気がなかったフォルクだったが、先にリガルが巻き込まないと決めてしまった以上逆らう立場ではない。リガルの見立てでは後ろの二匹は自分にすら圧倒的に劣る、戦力とすることはおよそ期待できない存在である。
「頼もしい言葉だけど、バクフーンの方はともかくショタのヒトカゲは戦力外なんじゃ?」
「この方は多分、ここ数年で名を挙げた『轟傑』のフォルクだと思います。辺境の村長を務めるリザードンのマグリーデに強い忠誠を誓っているため、破格の待遇での招聘を何度も拒んでいるとか。マグリーデの息子のヒトカゲの名前はまだ聞いてませんが、そちらもやはり期待の新鋭とか」
 なるほどとばかりに息を漏らしながら、セラフィーはリガルとフォルクを見比べる。この国ではリザードン系統もバクフーン系統もそこまで珍しい存在ではなかったが、櫂を振り回して肉弾戦を得意とするバクフーンはフォルクくらいのものである。情報誌であればこの程度の情報が載ることはあるので、別に知られていても珍しいことではない。だが、フォルクはこの二匹のやり取りにどこか白々しいものを感じずにはいられなかった。
「フォルク、お前はガディフに勝てるか?」
「ガディフはだいぶ老齢ですので、リガル様でも油断しなければいい勝負だと思います。お二方の護衛もありますし、まずはリガル様が挑んで様子を見てください」
 そんな会話をしている間に、ガディフたちの部隊は足を止めた。お互いに決定力のある攻撃は届かない程度の距離まで近づいたところなので、何かの言葉があるのだろう。空気は一気に緊密さを増す。



「フォルクにリガルよ、お前たちがあのような無法を働くとはまことに残念だぞ」
「クイッヒのやつがどう言ったのかは知らねえけど、俺らは本気で考えた末のことだ」
 重厚な空気を震わせて、リガルとガディフは真っ向からにらみ合う。後ろではスティーレがクイッヒのことを説明しているような声がしたが、リガルたちが今気にしていられることはない。
「お前たちとてこの国で育った身だ。今のお前たちがあるのはこの国のおかげではないか」
「それは間違いありませんが、一市民に至るまでこの国の私物であることなどあってはなりません。国が道を誤ったときは、その名や命に代えてでも正すのが本当に国を愛する心です」
 あのか細い体でどうしてあんな声が出るのかと思えるほど、ガディフの言葉は強く空気を震わせる。だがフォルクもそれに怯むようなほどの弱い覚悟ではない。
「若造が屁理屈を! 後悔するなよ?」
「お前こそ! まともな頭ならあんなやつに従うんじゃねえ!」
 ガディフはリガルの頭ほどもある巨大なスプーンを持つ手のうちの右手の方を振り上げる。やや目を細めて後ろにいるセラフィーとスティーレも確認するが、取るに足らない相手と見たか無関係なら手出しの必要は無いと考えたかすぐに目線の焦点をリガルたちに戻す。
「かかれ! 余計な者など構うな!」
 種族雑多の混成部隊は、遠慮なく気合い叫んでリガルたちに飛び掛る。フォルクは猛然と櫂を振り上げながら、口の中に炎を蓄える。踏み込み一気に距離を詰め、横なぎに振るった櫂で敵の前衛を交代させる。その後ろから放たれた特殊攻撃を主体とした弾丸は、櫂を振り切った後に吐き出した炎で押し返す。その炎はやや前のめりになったフォルクの体勢の復帰をも助ける。
「行くぜ! 目ぇ覚ますまでは何度だってぶん殴ってやるぜ!」
 その炎はさらにリガルのために、紛れて部下たちの囲みを突破する煙幕ともなる。突然真後ろに現れて指揮官に爪牙を剥くリガルに、部下たちは一斉に動揺する。しかし自分の爪が空を斬ったのを見て、リガルは足場の悪さを呪う。砂浜で脚力が奪われるリガルに対し、ガディフはエスパーの力で浮遊して距離をとる。エスパーの浮遊移動はお世辞にも速いとは言えないが、足場の悪さに影響されないこの状況では非常に厄介である。
「小童(こわっぱ)は直々に始末してくれる! お前らはしっかり轟傑を防ぐのだ!」
「持久戦ってか。させねーぜ!」
 リガルは雄叫び踏み込みながらも、内心では不利を自覚する。足場の悪さはフォルクにとっても不利な要素となっている。部下たちもほとんどは同じ条件であるが、一匹だけ空駆ける鳥型の種族の姿がある。飛行属性と間接距離からの攻撃によってフォルクをけん制することで、リガルへの加勢を難しくする。そうして一日の疲労をビハインドとして負っているリガルを自滅させる持久戦は、確実に窮地に追い込んでいく。こちらも負ける気は無いと気持ちを高ぶらせるが、さっきのフォルクの「油断しなければいい勝負」という言葉の根拠が読めない。
「どうした? もう終わりか?」
 数度のリガルの攻撃に対し、ガディフは一度も反撃することなく距離をとってかわす。二日もの間ろくな休憩も挟まず陽動作戦で戦い続けたリガルには、早くも疲労の色が見えていた。そうであるからこその最初のフォルクの炎に紛れた奇襲でもあったのだが……。
「ちょっとフォルク! あのヒトカゲ厳しいみたいよ!」
 後ろのセラフィーの頓狂な声が、リガルに否が応でも状況の苦しさを突きつける。既に若い頃の力は失っていたが、この国でフォルクとまともに戦えるガディフは貴重な存在である。リガルの万が一に警戒する意味を考えても、部下もだいぶましなメンバーで固めてきているとみていいだろう。この数と質で束になって掛かれば、フォルクとて楽な勝負ではない。
「大丈夫です! 今のガディフにリガル様を倒すことはできません!」
 だというのに、このわけのわからないフォルクの根拠はどこから来るのであろう。リガルは息が上がって舌打ちもできない苦境だというのに。一瞬フォルクを睨もうとしたリガルだが、すぐにガディフの方からの轟音で我に返る。
「敵から目を逸らすとは、勝負を捨てたかリガルよ?」
 ガディフの左右に一つずつ、高速で回転する車輪のようなものが浮かんでいた。恐らく金属製の円形のものであるが、エスパーの念力でつけられたすさまじいまでの回転速度では把握することができない。いくら金属の硬質さを融解させて防げる炎属性でも、あの威力が直撃したら戦闘不能は必至である。
「くっ……来やがれ!」
 リガルの途切れ途切れの雄叫びに誘われるままに、ガディフは車輪の片方を放る。高い音でうねる轟音に乗って、直前までそこにあったリガルの影を斬った車輪。リガルは体を反らせてかわすが、既に重心を保つことができなくなっていた。
「むおっ!」
 その転倒したリガルの体の上を、ガディフが放ったもう一つの車輪が通り過ぎる。リガルの転倒を予想しなかったために空を斬ったとも見える。
「ガディフ……?」
「歳はとるものではないな」
 リガルはその嘘を即座に見破った。退役後もフォルクやマグリーデとともに調練してきたため、後にその場に参加するようになっていったリガルとも長い付き合いである。フォルクであればその動きに嘘があると感じる根拠まですぐに気付けただろうが、今のリガルには嘘の有無以上の追求はできなかった。するどころではなかった。
「ガディフ、今の……」
「次は外さぬ!」
 リガルの声を遮り、ガディフは両手のスプーンを交差させる。空間を捻じ曲げる強力な念力を放つ、そのチャージの構えだ。圧倒的な威力を集積するため、まだ放ってもいないのに四方八方に強烈な衝撃波が飛散する。それはリガルにのみテレパシーを届けさせるためのカモフラージュでもあった。
「ようやく気付いたか、リガルよ。戦いの腕は上げたようだが、その辺りは修練が足りぬな」
「ガディフ! お前もクイッヒの奴のことはわかってたんだな? やっぱりこのまま来てくれるんじゃねえか!」
 頭の中だけで言葉のやり取りをするため、ガディフはリガルとの直接の接続をおこなった。ガディフのものだけでなく、リガルの言葉も声に出すことなく届けることができるのが今の状態である。リガルは吹き飛ばされそうになるのを堪えて、ガディフに歓喜の目を向ける。
「クイッヒのことはある程度はわかっている。だがこの歳まで他の国を知らずにいた私が、今更この国を離れられるわけがない。私にはこの国が全てなのだ」
「お前! わかっていても奴に従うのかよ?」
 目を剥いたリガルの一瞬の表情が、この凄まじい衝撃波の中で何が起こっているかをフォルクに確信させる。直後に繰り出された攻撃をいなしながら、フォルクは小声で「リガル様、お許しを」とつぶやいた。
「否。この国を離れることもあやつに従うこともない。もっとも、奴の状況を変えることができないからには……わかっておろう?」
「死ぬ……つもりか!」
 しかもこの戦闘という状況を鑑みれば、ガディフはリガルのその手で自分を斃すことを望んでいることがわかる。わからない方がどうかしている。一瞬ではあるが、リガルは確かに衝撃波に流されかけた。
「この念力の空間を放てば、間違いなくお前を殺すのはたやすい。この私の命でもって、お前がこれからの戦いに挑むだけの覚悟を示すのだ!」
「ふざけるんじゃねえよ! できるわけがねえだろ?」
 だが、刻一刻と完成していく空間の歪み。リガルを逃がすまいという意思なのだろう、空間の外側に壁になるような流れを巻き起こしている。既に放っても確実にリガルを仕留められるくらいまでチャージが完了しているのに、敢えて放たないでいる最後の考慮時間。
「ちょっとフォルク! あれじゃあリガル様ってのが決断できなきゃ死んじゃうんじゃ?」
「これからの戦いで決断ができなければ、いずれ同じ結果です。まさかどちらかの命で選択させるかまでは考えませんでしたが」
 一方の外からも、思念による会話が流れ込んできた。向こうも直接の接続で会話しているのだろうが、セラフィーがリガルにも届けているのかガディフが傍受しているのかはわからない。元の声のままで届くため、相変わらずセラフィーの声はけたたましい。しかしそれよりも、フォルクが自分をあのような試し方をするというのか。
「ガディフってやつはあいつにとっても大切なんでしょ? それを自分の命とのはかりに掛けさせるなんて……!」
「家系的にも大きいものを背負っている以上、何らかの大きな試練を越えさせないといけない。リガル様の母ともいずれと話していました。俺はリガル様を信じています」
 信じているなどとここで簡単に言われても、ここで自分が決断しても自分の決断ではないのではないか。残酷なことを強制することだと、リガルは拳を震わせる。ここでガディフを斃して、それを背負って生きていくことの苦しみはどの程度だろうか。いっそここで諦めて楽になった方がいいのではないか。母との約束だったが、その母もこれだけの選択を突きつけるつもりだったのなら……。
「確かにそうした方が楽でいいよね? 楽な世界に流れていくのはみんな当然だものね」
「な? てめえ?」
 いつの間にかリガルの真後ろに回りこみ、空間の向こうから思念を送ってくるセラフィー。今までと同じ高慢としか言いようのない口調は変わらなかったが、先ほどの会話の流れと合わせると何かの決意が胸にある。
「こいつらの自分勝手には私も腹立つ。自分の最期を自分で決められないなんてね。でも生きるからにはいろんな思いを背負うのは当然だから。こいつを安心させて、あんたはその思いを背負ってやらなきゃいけないんじゃない?」
 何故だろうかそれまでの挑発的な口調のままのはずなのに、まったく別の者の言葉のように聞こえる。一瞬後ろに戻った目線をガディフに戻すと、かすかにだが笑みを浮かべて緩んでいるのがわかる。
「楽に生きていければいいよね? 今までのようにみんなが支えてくれれば、苦労しないよね? それがいいならいいじゃない!」
 明らかにセラフィーの言葉には一貫性がない。だが、その根底にある何かが見えたような気もした。このエーフィもまた、なにかを抱えているような気がした。一瞬だが確実にリガルの目つきが変わった瞬間、ガディフは決断を確信した。その瞬間、空気の流れが一気に変わり始める。



 轟音と共に先ほどよりもさらに強烈に吹き荒れる衝撃波。空間の外にもそれが激しく漏れ出し、中の状況の凄まじさを物語る。その威力にセラフィーは体勢を維持できなくなり、宙に吹き飛ばされてしまう。
「ちょ……ちょっと!」
「決断……できなんだか」
 セラフィーの着地の直前には、空間によって巻き上げられた砂が晴れていた。ガディフが念力で吹き飛ばしたのである。だがセラフィーの視界に残っていたのはガディフだけで、周りの砂の中にリガルの姿は確認できなかった。恐らくその体は衝撃波の中で粉砕され、霧散した肉体は砂煙と共に吹き飛ばされたのだろう。配下の兵士たちはガディフの攻撃の発動を見て、フォルクに一気に攻撃を仕掛けた。そちらにかかりきりのフォルクが切り抜けた後にこの状況を見て、お互いどのような表情でやり取りをすべきであろうか。
「む?」
 一瞬肩を落としたガディフだったが、すぐに伝わってきた感覚に気づいた。それとほぼ同時にガディフの足元の砂が打ち上げられ、そこから赤い何かが飛び出した。それがリガルだと気付いたときには、ガディフは宙に打ち上げられていた。
「がっ!」
「下が楽に掘れる砂で……助かったぜ!」
 その時にリガルは確かに決断した。だがもう一つ、過去に調練のときに見せられたこの空間を作る技のことも思い出した。その時は横から見ていたため、範囲の高さがあまりなかったことが気になっていたのだ。今は飛び上がっても衝撃波の中で突破はかなわないだろうが、上だけでなく下も同じではないかと考えたのだ。それでもある程度警戒して、かなり深くまで掘る必要があったおかげでいろいろと大変だったが。下に行けば海水がしみこんだ砂のためそれにまみれて気持ち悪かったり、その穴も衝撃波で埋まったりしてまさかそちらで死に掛けるとは思わなかった。
「やってやろうじゃねえか! 見てろよ!」
 打ち上げられたガディフを追い、リガルは跳び上がる。一度攻撃をかわした隙を突けたのだから、普通であればここで止めを刺さずとも取り押さえることはできる。だが、相手は既に死ぬことを選んだ相手なのだ。自分の命など考えることなく抵抗してくれば、その先は同じである。何よりここで自分の手で終わらせることが、ガディフを安心させる唯一の道なのだ。落下に転じたガディフの体に、持ちうる全ての敬意と感謝を込めた爪を叩き込む。
「終わりだ!」
 ガディフの心残りは。代わりに始まるのは、そのガディフの思いも背負ったリガルの戦い。それはリガル自身に立ちはだかる壮大な運命への、最初の一撃でもある。猛烈に砂煙を上げて叩きつけられた部隊長の姿に、兵士たちは愕然の色を浮かべる。
「リガル様、お見事です」
「へへっ。さて、部隊長がやられたけどまだやるか?」
 フォルクの賞賛に鼻先で自慢げに振る舞うが、それでもその目が笑ってないのはわかる。愕然とおののき逃げ惑う兵士たちなど眼中にはない。四肢を投げ出しているガディフの姿は、リガルに容赦ないものを突きつけてくる。これはガディフが望んだ結末でもあり、それを自分でも選んだ。しかしそれでも、この光景を見せ付けられるとただ苦しいばかりである。
「さらに高いものを……見せてくれたか」
 他の兵士たちが逃げ去ったのを確認すると、リガルとフォルクはガディフに駆け寄る。既に致命打は与えており、ガディフにはわずかな時間しか残されていない。だが、その表情はいつになく穏やかで晴れやかであった。技の発動の瞬間にガディフを討つことはリガルにもできたが、それだけではいけないというものも生まれた。確かに覚悟は示せるが、さらにその上に自分の実力も示したかった。確かに多少のハンデは貰えたとしても、それでもガディフの技をどうにかするなど簡単なことではない。安心させるという意味では、自分の実力も同時に示せればさらに強力だろう。
「まあ、決断は俺だけじゃできなかったけどな。一瞬負けるところだったぜ」
「それについてはすまなかった。それにしても……そこの娘たちよ、近う」
 既に力なく漏れる程度のガディフの声では、セラフィーやスティーレを呼ぶことはできない。思念を増幅させるスプーンを握る力もないため、二匹娘を招くこともできない。しかし目線を挙げて手招きするリガルに、すぐに二匹も駆け寄る。
「私たちは、邪魔ではないのでしょうか?」
「咄嗟にあのようなことを言えるエーフィもそうだが、お前たちはどちらも美しい目をしている」
 リガルとフォルクの両脇から覗き込む二匹を見て、ガディフは得心の笑顔を見せる。その笑顔と一言に、セラフィーとスティーレは思わず顔を見合わせる。スティーレは息を飲み込んで少し照れた顔を浮かべる。セラフィーも一瞬同じように照れた顔を見せるが……。
「目しか綺麗に見れないんだ? こっちの見る目はあんまりだよね」
「てめえこの状況でよくその口叩けるな」
 慌てて付け足したように、フォルクにずっと見せてきた減らず口に戻る。その瞬間にリガルの額に青筋が浮かぶのを見て、セラフィーはいやらしく笑みを浮かべて一歩退く。
「どちらもこちらに伝わってくるほどの苦しみを抱えながら、その美しい目のままでいれるとはな。フォルク、リガル。この者たちの力になってやれないか?」
「彼女たちの……ですか?」
 ガディフが放った一言に、フォルクは思わず警戒の色をあらわにする。セラフィーの方は何も聞いてはいなかったが、スティーレの方はむしろ危険因子を持っている相手だとすら聞いてたくらいである。しかしその言葉による先入観を除けば、スティーレは良識を持ち合わせた優しげな相手にしか見えない。セラフィーの方は一目見た限りでは性悪にしか見えないが、リガルに決意をさせる言葉を送れる者であることはわかる。それにガディフが今までそういった見立てを外したことを見たことがないため、フォルクにとっては重い一言だった。
「やったね、命令どおりおもちゃになってもらうからね」
「せっかく認めようとしたときにあなたはぬけぬけとそれにガディフの言葉はまだ頼みでしかなくて間違ってもまだ命令ではない以上どこまで図太い神経なんですか!」
 白目を剥いて息継ぎなく怒鳴るフォルクに、セラフィーは笑い声を上げてさらにもう一歩距離をとる。息を荒げるフォルクの隣で、リガルもこのペースには多少ながら関心していた。とても好意的には見れなかったが。
「ガディフ! こいつのこの態度は、楽しんでいる振りなのかよ?」
「いや、本気で楽しんでいる」
 目線を落とすと楽しそうに微笑むガディフ。生涯の終わりに満足を見せる年寄りそのものである。このエーフィの無神経にも程のある発言の繰り返しに、リガルもフォルクも早くから疲れきっていた。
「言葉はどうかとは思うが、常に笑い飛ばして苦しい空気を払おうとしている。そのためには自分が心から楽しめないといけないという意味もあるのだろう。そういったことの苦しさを本当に強く感じたことがあるのであろうな」
「そう思うんなら、そうだね……天才は天才を知るってやつ?」
 威張り腐ったように胸を張るセラフィーに、他の全員が自分で自分を天才と言う尊大さを感じる。とはいえそのように言われることを考えてなかったことが、最初に浮かべた言葉に迷った表情から感じ取れもしたが。
「なんとなくだが最後の力によって見ることができる。お前たちにも本当はあまりにも悲しいものがのしかかっている。そこからはいつまでも逃れられないということもな」
「さーて、えっと……もてるのは辛いよね!」
 これは相当深いところを突かれたらしいのか、かなり言葉に迷いがあった。しかもガディフが言っていたことと少々噛み合わなかったのに気付いたのだろうか、失敗の落胆を顔に浮かべる。即座に不満そうに顔を背けたが、徐々にセラフィーのめっきが剥がれ落ちているのは確実である。そしてそれはかなりタブーとすべきなのだろうか、スティーレも当惑した表情を浮かべている。
「それはこの世界に迫る大いなる災いとの戦いでもある。お前たち四匹とビトーニェと、もう三匹が先頭に立ってその災いに挑んでいくのが見える。この世界中の希望と未来を背負い、そこからの多くの仲間たちの支えを受けてな」
「えっと……ガディフさん、私たちが戦うんですか?」
 スティーレの不安げな表情だが、それは当然のことであろう。今の戦いの間も手も足も出せなかったセラフィーとスティーレは、とてもではないがそんな大仰な戦いに挑めるとは思えない。勿論、一口に戦いと言う限りではただ先陣で火花を散らすだけではないが。
「それに、その災いが何かも気になります。他の三匹というのもどこの誰か。戦いの結果も気になりますし」
「すまないが、そこまでは見えない。断片的に流れてきたわずかな感覚だ」
 最初の「災い」というものだけであれば、フォルクには大まかな目星はついている。それでも不自然さを避けるために敢えて口に出してみたのだが、直後にそれが間違いではないかという不安に駆られる。スティーレからの情報流通が可能なのであれば、ここで自分たちがその存在に気付いたことが知られていいのか。ガディフが答えられなかった以上、結局のところ取り越し苦労だったが。
「さて、もうすぐ時間だ。あとはリガルよ、私の『生命力』を浴びて心を落ち着けるのだ。先の車輪はリザードンになった後でも、翼を傷めることなく使える」
「ああ。どんな敵だろうが負けねえよ!」
 リガルはガディフの手を握る。目でその思いを全て受け止めたことを伝え、そのまま額にガディフの手を当てる。その瞬間、ガディフの全身は泡のような光に包まれる。それはガディフの命を、体を動かしてきた全ての源。それが腕を伝ってリガルの体に流れ込む。次はリガルが光に包まれる番である。
「ある意味、この『進化』のタイミングは選ばれに選ばれたものだったのでしょうね」
「全て……託したぞ」
 徐々に膨張していく、リガルの体の形をしていた光。それが目的の形になって収まるのを待たずに、ガディフはその手を砂に寝せる。ガディフの瞳に永遠に記録されたのは、新たな希望が形を成していくまでであった。リザードとなったリガルの深みを増した赤い鱗に、鋭さやいかつさを増した体つき。その風体とは裏腹に、優しく悲しい表情であった。

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「それにしても……」
 リガルは戦いの中でガディフが放った車輪を拾う。太い金属輪の真ん中に、一本の棒が張られているだけのシンプルなつくりのものである。今でも長い尻尾と干渉しあうリガルにはフォルクのように長い得物は扱えないし、将来リザードンになって翼を得たときのことも考えなくてはいけない。翼を失うことを前提で動くのでなければ、短いものであっても刃物は戦闘のような状況では扱えない。爪であれば大半の種族の例に漏れず収納が可能だが、むき出しの刃物ではわけが違うのである。この車輪であれば打撃に使えるし、盾や投擲にも使える。炎を吐くにも邪魔にならない。ガディフは相当吟味してこの形を選んでくれたのであろう。
「ガディフはお前らも一緒に戦う仲間だって言ってた。けど、いきなりそんなことを言われてもどうしたらいいか」
「俺も疑問ですね。そもそもセラフィーさんでしたっけ? その首に巻いているのは、この辺では手に入らない『太陽のリボン』ですよね?」
 リガルは車輪の握りに手を入れ、数度殴打の動きを練習してみる。威力や頑丈さを得るために相当の重さを感じるが、それをリガルが扱えるようになってくれることを信じての選択なのだろう。ひとまずその二つの車輪をしまうため、鞄の口を開ける。その隣でフォルクは二匹の娘たちを見ている。ゼトロの話とガディフの話、どちらも今のところ半信半疑。結論を出せない状況である。見た感じであればセラフィーはまだそこまで深く読み取れるとは思えないし、何よりもその辺りで何か気持ちが落ち着かないものがあるらしい。ただ不満を前面に出す虚勢で、顔を背けてしまう。本当であれば、あまり突っ込むべきではないというのは感じられた。
「すまねえけど、少しだけでも話してくれ。いきなりガディフに言われたつっても、それはすまねえ」
「スティーレが話すんなら、私は黙っててあげる」
 相変わらずの横柄な態度で言い放つセラフィーだが、今までの踏み込んでくる姿勢とは明らかに違う。茶化したいだけ茶化していたセラフィーが、一転「黙っている」という宣言をするとは……。相当の苦しみを感じずにはいられない。
「私たちは『光明(こうみょう)』大陸の『サレドヴァニア』から逃れてきました。生まれは私もセラフィーも『光明』の他の国なのですが……」
 スティーレの語りが始まると、セラフィーは砂の中にうずくまる。四足の一部の種族はこのように丸まると外から顔を見ることができないのだが、それだけセラフィーが表情を隠したいという意思にも見える。



 スティーレたちが脱出した光明のサレドヴァニアは、激戦を越えた先の平和な統治を続けている国である。今リガルたちとともにいる海峡を隔てた先の「理路(りろ)」大陸の一国の開拓部隊が、その地で暮らす国民の祖先にあたる。最初は先住民との共存を図ってきたのだが、富の独占を狙った先住民との内乱が勃発すると大きく事態が変わった。先住民たちを北西の地に追い出したことで宗主国が理路の他国から非難を受けたため、その矛先を自分たちに向けるために独立。断罪しようとした光明や理路の各国の連合軍の壊滅させ、そのほとんどの兵士を殺しさえせずに祖国に送り返すという大胆な和睦をやってのけた。それ以降ほとんどの国は批判をやめ、逆に友好的な関係を築いていった。ほとんどの国は……。
「国民たちの声は、やはり『闇黒(あんこく)』を討伐するというものが強いか」
 黄金に輝く髪の下から、青い瞳と小麦色の肌を見せるニンゲンがつぶやく。筋骨隆々の肉体を白い美しい布で包み、ニンゲン種が直接の戦闘を苦手とする「支援性の霊獣」と分類されるのを忘れさせられる。
「今の若い世代は、歴史を深く学んでいなければやはりそちらの姿が色濃いみたいです」
 一方その前で言葉を返したニンゲン種の方は、目の前にいる男とは真反対である。髪はやはり美しいが銀色で、細面の白い肌はこれこそニンゲン種の分類にふさわしいと言わざるを得ない。紫の正装に身を包み、彼もまた高い身分であることがわかる。
「アスベール様のところにいるセラフィーという者の話で、北西のかの国の者たちが煽動していることが確実になりました」
 銀髪のニンゲンの隣にはもう一匹、筋骨隆々の体を生まれながらに持った鋼鉄のうろこで覆ったボスゴドラ種の男が構えている。ニンゲン種のような繊細な肌は持ち合わせていないため着衣は無いが、腕輪やベルトなどの装備はやはりその身分を示している。彼らが今いる建物は非常に広いのだが、その真ん中で控えめな声で話す彼らの他は外に兵士が並んで警備しているだけである。
「あれ? ゴーラルも結局セラフィーを信じてくれるんだ」
「あの性格はやっぱり好きになれません。ただ、時折放つ芯を捉えた一言を考えれば信用しないわけにはいきません」
 銀髪のニンゲンは少し意地の悪い笑顔をボスゴドラに向ける。ゴーラルと呼ばれたボスゴドラは少々悔しそうに、しかしそれでも銀髪に対しての丁寧な物腰は欠かさない。三匹とも高貴な身分であることは確実であるが、その中でもこのような上下関係はあるらしい。彼らの前で、金髪のニンゲンの方も穏やかに親しげに笑みを浮かべる。
「アスベールよ、その者は確かイーブイであると聞き及んでいる。素性の方はどこまで話している?」
「大まかな目星はついていますが、彼女の方からは何も語っていません。これについては陛下、申し訳ありませんが彼女の心情の酌量をお願いします」
 アスベールと呼ばれた銀髪は、ただ一度金髪の王に頭を下げる。王も納得とばかりに何度かうなづき、口の中で「確かに」とつぶやいたのがわかる。おそらくは彼もその「大まかな目星」というものは把握しているのだろう。
「北西のかの国のわが国への恨みと嫉妬は甚大なものです。外交の席では友好を装っておりますが、国内では平然とわが国の民を攻撃する教育をおこなっております」
「記録によると彼らはこの国の地にいたときから、利己的も通り越しているようなことわざを平然と作り出していたからね。たとえ手を出したのが自分たちであったとしても、こちらはそれに従うのが当然だと思っている」
 話は一転して「北西に位置する国」の話になった。先にも出たとおり、セラフィーの話によればその国のスパイが暗躍してこの国の民を扇動しているらしい。王政を基本としながらも国民全体から意見を募る仕組みも導入しているため、民意をないがしろにすることができないのである。
「嫉妬と自分勝手を美徳として、平然と嘘や裏切りを繰り返す。それによって何度となくわが国は手痛い目に遭ってきたわけだがな。義務教育での歴史を少々知っただけの者たちには、なかなか理解しがたいのであろうな」
「それに現実問題として『闇黒』につながる地峡付近では、国を追われた無法者によって数年に一度は犠牲者も出ています。既に『歴史の一ページ』と化したあの国のことよりも、そっちの方が色濃いのは仕方ないことかもしれません」
 言いながら、アスベールは口の中で「本当は目先にあることなんだけどな」とつぶやく。壁こそ無いが軒先がかすんで見えるほどの広い建物の真ん中で、外に聞こえないことを意識した程度の小声での会話なのだ。王にもゴーラルにもそのかすかなつぶやきすら聞き取ることができた。
「そのおかげもあって、アルギーネはすっかり乗せられている。外で誰とでも気さくに話せる性格と強い正義感、それが逆にあだとなってしまっているな」
「王女様にとってはお忍びでの外出の方が普通のことですからね。扇動されるに至った話を聞く機会も多かったのでしょう」
 王はため息交じりの言葉を吐き、健康的な顔を曇らせる。同時に口の中に留めていた「誰に似てしまったのか」というつぶやきも、アスベールのものと同様に目の前の両者に聞き取られてしまう。アスベールもゴーラルも少々苦笑するが、そこでは親しみのようなものもかなり色濃い。
「確かに今はそうでしょうけど、王女様はいつまでも騙されているようなお方ではありません。私たちはそのために最後の一押しをして差し上げるのがよろしいと思います」
「僕もゴーラルと同じ意見です。失礼ながら聞き及ぶ範囲では、陛下も昔はそうであったとのこと。そうして多くの民と気さくに言葉を交わし、強い正義感を向ける先を求められた。陛下が『鋼の哲人』の呼び名を得るに至ったいきさつに似通うものもあります」
 ゴーラルは敬意と信念の笑みを見せ、王も似たような笑顔で数度うなづかせる。しかしゴーラルのそんな表情は、直後のアスベールの一言で粉砕された。王の笑みは少々手痛いところを突かれた感じに変わり、小声で「随分愚かだったものだな」とつぶやく。王にとってはこれがいつものパターンなのである。
「アスベール様、今度こそさすがに失礼かと思います」
「陛下とゴーラル以外聞いてないんだから顔をつぶす心配はない。そういう状況で怒り出すようなら従うつもりもないしね」
 ゴーラルの表情がどんどんこわばっていくのがわかる。鉄の仮面をまとったようなつくりの顔だというのに、その継ぎ目の微妙な動きが随分と豊かな表情を見せてくれるものである。完全に硬化してしまったゴーラルに構うことなく、アスベールは追うとまっすぐに見つめ合っている。さび付いた機械のようにぎこちない動きで、ゴーラルは顔をやっとやっと王に向ける。
「やはり、アスベールの抜擢に狂いはなかったな。それだけの覚悟を持った言葉を言えるからこそ、あれだけの交渉の成果というわけだろうな」
「セラフィーから教えてもらった考え方です。僕も最初はどうかと思いましたが、考えれば考えるほどその通りだと思いました」
 ゴーラルの表情の硬直は、その瞬間に何かが滑落するように緩んだ。思わず両手で拳を握り締め、怒りを沸点まで昇華させる。その変化にアスベールはさすがに今度は申し訳なさそうな苦笑をし、王はついに腹の中のものを吹き出してしまう。これに気付かないことなどありえない状況で、ゴーラルは今度は情けなさに肩を落とす。
「アスベールよ、推挙したゴーラルをあまりいじめないようにすることだ」
「従兄弟として才能のある身内を推挙するのは当然だと思ったんですがね……」
 推挙するにあたってそこまで重い責任を負ったわけではないが、それでもゴーラルとしては何かが自分に跳ね返ってきたような思いである。代々武勲で名をはせてきた家系で、アスベールも剣を握ってのニンゲン種が得意とする武術関連を鍛えられてきた。もちろんそちらでも並みの兵士と比べたら突出するくらいの腕はあった。だがその裏で学問を好んでいたアスベールの姿を知り、ゴーラルはアスベールを文官として推挙した。一族への説得で先頭に立ったのもゴーラルだったので、アスベールが万が一のことをしたら家では立つ瀬が無くなる意味もある。最初はそれも覚悟していたが、まさか王にまで繰り返し正面切った態度をとると思ったことはなかった。
「さて、いい加減意見をまとめたいところだ。扇動された民やアルギーネは闇黒討伐に駆り立てられ、少しでも動いたら北西の国が乗じてこよう。しかし闇黒からの乱入によって被害が出ているのも事実。意見はどうであろうか」
 王は両手で数度、軽く机をたたく。話を本題に戻そうということと、ゴーラルの宙吊りにされた精神を呼び戻そうということと。本題に戻ってもらえれば、ゴーラルとしても立場が保てる。
「現実問題として闇黒に断固とした姿勢を見せる必要は当然あります。ただ、闇黒は環境が厳しいとあって『王』と呼ばれる立場の彼らを責めるのは本来は筋違いです。越境者はかの国でも押えきれなかった無法者です」
「一応討伐という姿勢は国民他に示すべきです。ただ、出撃部隊にアスベール様のような論客やあるいは研究者を入れます。表向きは交戦する裏でことが起き次第という和睦を結び、かの地に産業をもたらして友好的な交易先を作り上げます」
 両者の意見を聞いて、王は拍子抜けだといわんばかりの笑みをこぼす。自分でもある程度案は練っており、それとまったく同じものが向こうからも出されたのである。あるいは平行線も想定に入れて、その中で自分の現実認識や理想の姿勢に間違いが無いかを確かめたかったのもある。
「もちろん、その部隊にアルギーネ様を加えることも必要でしょう。かの地に住む者たちがどのような暮らしをしているのか、ただの書物では理解しきれない部分も見えるでしょう」
「ゴーラルなら王女様を守りきれるはずです。ゴーラルのレベルでの強い弱いは僕には想像はつきませんが、評判は聞いています。そしてその出撃は主力部隊の留守を見せて誘い出す意味もあります」
 アスベールは今度は信頼を託した目線をゴーラルに送る。ゴーラルはゴーラルで戦いでの実力は非常に好評を得ている。それはアスベールの目では既にどのくらい強いかがわからなくなっているくらいである。先の会話の間に少し触れたが、アスベールとて全く弱いわけではない。だが種族的に「戦闘性」に分けられる種類のボスゴドラでは、そもそも「支援性」と分類されるニンゲン種とでは地力が違う。その上に生まれてからずっと武術を鍛えてきたゴーラルに対し、論客に転向したアスベールとのその後の差は開く一方である。
「ただ、かの輩もちょっとやそっとの隙ではおいそれと手を出してはこないでしょう。何度となくその差を見せ付けられている以上、いい加減学習する頃です。彼らを動かせるほどの隙を作るとなると、それで守りきれるのかが次の問題ですが……」
「僕たちの手元にはまだ一つしか手段が出てません。かの国の本質を知っているがゆえに裏切る心配がなく、しかもいくらでも理由をつけられる老齢に差し掛かった皆さんに退役をお願いすることです。表向きは『引退』あるいは『更迭』ですが、それは守備部隊がいないものと思わせるためです」
 ゴーラルの歯切れが急に悪くなった隣で、アスベールもここでは口調を強くして踏み込むことができないでいる。かつての勇名と比べれば衰えているかもしれないが、まだまだ一線に出られる者たちとあって信頼はしている。ただ、彼らを表向きでも引かせることは後進をそのポストにつかせなければならない。アスベールは文官なのでそうでもないかもしれないが、ゴーラルの地位は確実に上昇する。遠まわしにだが自らの地位向上を図る提案をすることは、どこか手段として汚い気がするのである。
「気分は悪いであろうが、それについては耐えてもらいたい。その様子を見れば主目的がどこにあるのかはわかる。取り計らいに関しては私が直々におこなった方が良さそうだな」
「陛下、よろしくお願いします」
 アスベールとゴーラルは揃って頭を下げる。最終的には強い権限を握っている王だが、暴走に備えて排除のための法を備えたこの国では常に安泰とは言えない。それでも長くこの王家が君臨し続けることができたのは、そこに伝わる家訓などがかなりの要点を抑えているためである。それは「長い過去」という実績からの「信頼」等への判断基準であって、絶対的なものではない。ことがことだけになおさら絶対が保証される相談ではない以上、王とてかなりの覚悟が必要なのである。
 王は机の上のスイッチに手を伸ばす。左右に十ほどのスイッチが並んでおり、そのうちの三つのスイッチの隣の球が点灯している。会議の終了を認める場合に、出席者がそれぞれ一つずつのスイッチを押すことで外に終了を報せるためのものである。その会議の参加者全員が揃って押すことで、出席者全員の納得を示す仕組みである。彼方建物の外からブザーの音が響き、警備兵たちがこちらに駆け寄ってくる。柱一つ無い広大ながらんどうのど真ん中での会議は、その場での機密を保持するための方法として考え出されたものだ。出席者全員が納得した顔でスイッチを押している姿を撮影するところまでが、この国の「機密会議」の一つのしきたりである。



 会議が始まったのは日没直前であったため、アスベールとゴーラルが帰宅したのはだいぶ夜が更けた頃である。名門生まれの従兄弟同士なので、同じ敷地の中にそれぞれの家を構えているのである。好む好まざるにかかわらず、日常的にアスベールの周りは屈強な護衛に固められているのである。
「ゴーラル、今日もお疲れ様」
「やっぱり帰ってくると落ち着きますね」
 建物の周りはブロック塀で厳重に囲まれているが、その内側は割と素朴な植木の庭が少し広がっているだけである。建物もごく一般的な建材を使用したもので、趣はあるがそこまで派手ではない。質実剛健な中からも素朴な楽しみを見出すことは、この国での一般的な姿勢である。池の脇の庭木から、一匹のイーブイが駆け寄ってくる。
「アスベール! ゴーラルもお帰り!」
「セラフィー、ただいま」
 アスベールは細身の長身をかがめて、小さな四足で駆け回るセラフィーを抱き上げる。茶色の長い毛足が生え揃い、無垢な笑みと併せてアスベールもつられて笑顔になる。ゴーラルも目元をほころばせるが、内心ではそれとは別な本音も混在していた。黙っていればこれほどまでに可愛らしいというのに、どうして口を開くとあそこまで酷いことになるのかと。
「この可愛い顔ではっきり言ってくれるところがいいんだよ。ゴーラルはわからないかな?」
「どのようにして私の心中を読み取ったのかはわかりませんが、漫画のようなことはしないでください」
 もちろん「エスパー」等の属性を持つ種族であれば話は変わってくるが、ニンゲン種は基本的にそういった力は非常に弱い。仮にあったとしても多少ならず力を使うため、四六時中このようなときにまで使うようなことはしない。鋼鉄の皮膚で生まれながらに割合表情が読みにくいボスゴドラ相手に、アスベールは時々このような一足も二足も抜かしたような発言をする。他の誰かからはそういったことが無いのに、一体アスベールは謎が多い。
「そうだよアスベール、これは文章なんだから」
「せめて『演劇』にしようよ」
 悲しいかな、自分の一言が逆にセラフィーまで刺激してしまった。この辺のずれた冗談で笑い合う性格は、ある意味両者ともお似合いなのかもしれない。毒舌によって鋭い視点で語るセラフィーに対し、アスベールはそれをも柔らかく受け止められるという違いもあったが。この辺りに関しては、ゴーラルも諦め気味に肩を落とすほかない。
「ゴーラルさん、お帰りなさい。楽しそうな姿にそんな表情は良くないですよ?」
「これはスティーレ様。確かに本当であればそうですが……簡単にはいかないさまざまなことはお察しください」
 セラフィーが来たほうから、遅れてスティーレが姿を現す。ゴーラルはスティーレに丁寧に頭を下げ、その言葉に感謝を示す。北西の国とは別にもう一つ真北に、イリドルードという宗教国家がある。サレドヴァニアと三国で互いに接しており、歴史的に軋轢が絶えなかった。スティーレはその国の最高位「大司教」の娘で、交歓親善と留学のためにこの国に滞在している。うわさでは相当の変わり者だとも聞いているが、この態度を見れば信じるに値することはない。せいぜいが子供の頃の話であったとして、今を判断する基準には到底なりえない。立場的にも気品ある性格を見ても、こちらとしてはかしこまらざるを得なくなってしまう。
「ゴーラル、いいかげん『様』はやめてあげてよ?」
「無理だよセラフィー、ゴーラルは年下の僕にさえ『様』なんだから」
 この二匹以外は。確かにゴーラル自身も癖として、年下にも必ず「様」と敬称をつけて丁寧語で話してしまうところがある。そのあまりに丁寧すぎる態度は、揶揄されたりすることが少なからずある。特にスティーレはそういう態度をかなり嫌っていたらしく、来たばかりの頃はゴーラルとはあまり仲が良くなかった。だいぶ前の話であるが。
「アスベールもセラフィーも、あまりゴーラルをいじめすぎないようにね」
「あ、王子様! お越しでしたか」
 力なくその場にたたずむゴーラルの後ろから、金色の毛並みの色違いのマリルリが姿を現す。アスベールに「王子様」と呼ばれたことを裏付けるように、スティーレに負けず劣らず気品ある言葉で話す。ゴーラルはそれにしてもと肩を落とす。先ほど彼の父である王が言ったこととを、彼は知ってか知らずか口走った。こちらの方は案外よく言われており、どこか情けない気持ちが胸に宿ってしまう。
「父上と会議をしていたらしいからね、私との会話の時間も少しいただきたかった。ついでというか名目上は『褒章』のためなんだけどね」
「あ、ありがとうございます。お願いしていたものですね?」
 アスベールが嬉しそうに頭を下げるのを見ると、王子は振り返って従者に合図をする。すぐに身なりを整えたルカリオが、割と大きめの箱を抱えてアスベールの前まで進む。やはりこういった箱のようなものを抱える仕事は、両手が使える直立した種族の方がやりやすそうに見える。
「先の親善交歓の任の報酬として、アスベール並びにゴーラルに相応額の貨幣と選択した品を授与する。目録の確認をすること」
「これにおごることなく、今後も励みますようよろしくお願いします」
 王子が厳格な口調と声で目録の前文を読み上げると、アスベールもゴーラルも無意識にその前に並んで位置取り頭を下げる。今後の意見交換の時間としても利用するため、王族が褒章のために各家を訪れる機会は多い。ルカリオが箱の下に手を回したのを確認すると、王子は書状をアスベールたちの向きに変えて両手で差し出す。アスベールは王子と目線の高さを合わせるためにひざまずき、こちらも両手で書状を受け取る。その受け取った瞬間に合わせて、ルカリオは箱を開く。
「謹んでお礼を申し上げます」
「今後とも一層国のために尽くします」
 ゴーラルばかりかアスベールも表情を変える。いつものどこか軽い調子とは打って変わり、公的な意味を持つ状況ではそれ相応に態度を改めることは当然できる。それは今後の意志を示すという意味でも、とても大切にされる場なのである。そんな中報酬を確認させるためにルカリオが箱の口を傾けて示した瞬間、場に相応しくない声が上がる。
「あれ? その箱の中のリボンって?」
「セラフィー! 今は抑えて!」
 箱の中で輝きを放つはずの硬貨すら色あせて見えるほど、美しい金色に輝く「太陽のリボン」が姿を見せる。このような「進化」のための必要物資が種族によって異なるため、褒章の際は金銭に限定せずにある程度の品目からの選択も可能にされている。どこの国でも広く見られる形式である。それにしてもいつもはこのようなセラフィーとスティーレのやり取りに嬉しそうに笑うのに、今のアスベールにはそれが無い。やはりこのやり取りの持つ意味は彼らにとって非常に大きいことが伺える。
「相違ないことを確認しました」
「確かに頂戴いたしました」
 アスベールとゴーラルは数度目録と箱の中を見比べて、もう一度王子に頭を下げる。二匹の言葉を確認してルカリオは箱を両手で持つ持ち方に直し、そのままゴーラルの方に差し出す。ゴーラルはアスベールと一緒にルカリオの方にも頭を下げ、そのままの流れで箱を受け取る。
「じゃあ、形式ばった場面はここまで。アスベール、早速セラフィーにつけてあげるといい」
「わざわざ私のために……このあたりは流石アスベールだよね」
 王子の口調が一気に砕けたのに合わせて、他の面々も少し肩の力を抜く。唯一もともと緩みっぱなしだったセラフィーは、既にアスベールの足元に駆け寄ってきていた。ニンゲン種は「進化」が存在しないため、このリボンはアスベールに必要なものではない。この場にいる者の中で「進化」が可能なのは、イーブイであるセラフィーのみである。
「『エーフィ』への進化を選ぶわけですか。そもそもセラフィー様に進化が必要なのかという問題もありますが」
「能力的な部分だけを考えているわけじゃない。僕もセラフィーも、エーフィになったセラフィーの姿がいいと思ったからこその選択なんだ」
 アスベールは紫がかった輝きを放つ体躯を想像する。華奢でもあるがそれゆえに得られる機敏さも、その美しさに磨きをかける。多岐にわたる進化の選択肢による汎用性は、他の種族の追随を許さないイーブイの最大の特徴でもある。ただ、一度進化すると他の六つの体を諦めるということにもなるが。
「姿もそうだけど、やっぱり『エスパー』は大きいよね? 頑張って遠くにあるものを動かしたりとか、使いこなせるようになれればすごく便利だよね」
「セラフィーがそれを持つことが不安にならないのは、多分アスベールくらいだと思います」
 アスベールは早速としゃがんで、得意げな態度のセラフィーの首にリボンを巻きつける。その脇ではスティーレとゴーラルがあまりにも暗い先行きに気落ちを示していた。この後に少々の体調の調整が必要になるが、セラフィーがエーフィになるのにそこまでの時間は不要である。そしてその先の「エスパー」に分類される超能力を得ることにより、今までも散々なまでに繰り返してきていた悪戯に磨きがかかることが目に見えている。王子と従者ルカリオは、そんな彼らの間を漂う空気に苦笑を浮かべるだけであった。
「セラフィーは物を壊したりとかの実害は出さないから、まったく問題は無いよ。それよりセラフィー、スティーレ、食事や休憩の準備をお願いしてもいいかな? ルシュエン王子とのお話もあるし」
「うん! スティーレ、早く行こう?」
 返事も待たずに嬉しそうに駆け出してしまったセラフィー。その後ろで二三困惑をつぶやいた後、スティーレは王子たちに挨拶をして仕方なさそうに場を後にする。スティーレがセラフィーに困らされているのは明らかであるが、それとは別にスティーレの姿もどこかこれが板についているように見えた。まるで保護者のようだという微笑ましい回答は、かなりよく聞かれるものである。
「結局皆さん楽しそうですね。なんだか娘が……ユソティアが来たばかりの頃を思い出します」
「ユソティア様というのは、確か四番目の養女様でしたよね?」
 セラフィーたちの後姿を目で追いながら、従者のルカリオは特に嬉しそうな表情を浮かべる。アスベールもゴーラルもルシュエン王子もまだ三十には至っていない若者であるため、このルカリオとは明らかな年齢差が感じられる。落ち着いた紳士と言うべきルカリオの態度には、若い彼らにも打ち解けられるものがある。
「成績は文武ともに今年のトップクラスだったし、何よりみんなからも信頼されている。ちょっとどころじゃなく癖はあるけど、アルギーネが父上に頼んでまで従者に加えることを選んだだけのことはあると思う」
「そういえば多少ならず聞いていますね。癖がある性格なら、セラフィー様を見慣れているからには今更驚くことは無いと思います」
 ゴーラルは苦々しい目つきで頭をかく。鋼鉄の体がこすれて、若干甲高い音が響く。しかしそんなゴーラルを前に、ルシュエンとルカリオは何を思ったのか顔を見合わせる。時々彼らも彼らで得体の知れない苦しげな表情を浮かべているのが、アスベールにだけは感じ取れていた。
「でも、間に合って良かった。王子様……本当にありがとうございます」
「アスベール、セラフィーには何も話してはいないの?」
 ルシュエンにもう一度頭を下げると、アスベールはセラフィーとスティーレが入っていった離れ部屋の一つに目線を送る。ここからだと窓の下の壁に隠れてセラフィーは見えないが、スティーレがアスベールたちの家族と話しているのは見える。そのアスベールの目線には、何があったのだろうか物悲しさがこもっていた。
「セラフィーも薄々この国で何が起こっているのかはわかっています。でも、故郷でのことは話してません」
「覚悟しているとは思います。あそこまでのことをされたとは思ってないでしょうけど」
 ゴーラルはやはりセラフィーのことは好きになれないらしいが、それでもあの態度の裏に時折あまりにやるせないものを感じている。表向きで必死に明るく振舞うことによって、常にのしかかってきている過去や現実の重みを耐えているのだ。それは少しずつ自分たちの方にも近づいてきているため、一緒に立ち向かう中で彼女の胸の中のものを解きほぐしてやりたいと思っている。彼女の心の奥深くにあるものについては、ゴーラルももう少し知ってもいいと思っていた。
「彼らからセラフィーを引き渡すようにとの書状が来た。もともとアスベールもゴーラルも彼らに好意的ではなかったから、遠慮なく動いてくるだろう」
「確実ですね。一旦僕たちは『闇黒』に逃れようと思います。スティーレも同行してくれるそうです」
 事前に父である王と意見交換をしていたのだろうか、ルシュエンは納得の様子を示す。裏で扇動しているものたちによって余儀なくされている「闇黒」大陸への遠征は、その隠れうごめいているものたちを誘い出す目的もある。事前にそこでの合流を決めておけば、いつ彼らが動くかわからない場所にいるよりも安全であろう。土地柄貧しく治安の悪い場所であると聞いているが、ならず者程度であればアスベールでも問題なく対処できる。問題はむしろそこにたどり着くまでであろう。
「アスベール様は既に準備を進めています。セラフィー様にエーフィになることを選ばせたのも、その辺の利便性もあるらしいです」
「明日闇黒への出撃の手続きを終えたら、すぐに国を離れようと思います。セラフィーたちはその前に、ゴーラルに護衛をお願いして明日の朝には出発させるつもりです」
 明日の朝議では向こうも望んでいる闇黒への出撃を議題としてあげるため、そこでいきなり腰を折ってセラフィーの一件にすることはしないだろう。それでも出撃を良しとしないものたちは多いのもあるし、王たちも時間を稼いでくれることも十分考えられる。それまでにセラフィーに海岸付近に行ってもらえれば、下手な暴動に襲われることは無いだろう。あってもスティーレの背中で海上に出れば問題は無い。
「ただ、それまでに僕の方にも万が一のことが考えられます。僕もつまらない死に方を選ぶつもりはありませんが、限界があります。その時はすみません、王子様にセラフィーへの伝言をお願いします」
 王族とは言っても、彼らは彼らで責任を担っているというのがこの国の考え方である。取り上げられない使い走りのような細かい仕事でも、この国の王家ではむしろ積極的におこなうくらいである。しかし今お願いすることは、あまりにもつらい立場になるやり取りを任せることである。そのことを考えると、アスベールは気が重くならざるを得なかった。



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なにかあればよろしくお願いします。
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IP:122.25.224.163 TIME:"2012-11-03 (土) 21:41:08" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%85%AB%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%89%89%E3%81%B8%E3%80%80%E7%AC%AC3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/5.0)"

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