---- writer is [[双牙連刃]] ---- う~、腹減った……やりたくもない断食生活5日目、流石になんか食わねえとぶっ倒れるな。 う〜、腹減った……やりたくもない断食生活5日目、流石になんか食わねえとぶっ倒れるな。 野良になって一ヶ月、最初こそ木の実探したり他のポケモンや人間なんかを脅して、 ……もとい! 脅かして何とか食ってこれたが、それが災いしてか、変なうわさが広まっちまって姿を見せるだけで逃げられちまう。 獲物……もとい人間に最後にあった5日前なんか目の前に出ただけで、 「殺される~~~~!」て叫んで逃げられたっけか。 「殺される〜〜〜〜!」て叫んで逃げられたっけか。 別に脅かすだけで誰にも傷一つ負わせたことは無いんだがな。 俺の名はライト……といっても自分で勝手にそう名乗ってるだけなんだがな。 一ヶ月前までは飼い主のいた極々平凡なサンダースだ。 だが、前の飼い主は俺をボールの外へ滅多に出さなかった。 溺愛って奴なのかどうかは知らんが、俺にとっては退屈この上ない話だ。ボールの中は狭いしな。 たまに外へ出されたかと思えば、やれコンテストの練習だのバトルの練習だの、何にも無い部屋で虚しく技を出させられるだけ。 で、そんな生活に飽き飽きした俺は、その練習とやらの一瞬の隙を突いて俺を閉じ込めてたボールをぶっ壊した。 そのまま飼い主のとこから逃亡、途中何人か人間が追いかけてきたが人間がポケモンのスピードに追いつける訳が無い。 そのまま走り続けまんまと逃げおおせてやった。 初めて広い外に出たときの感動は忘れられんな。 草の緑、太陽の光、全部がキラキラしてた。 18年間閉じ込められてた俺には全てが最高だった。 が、問題は飯だ。 飼われてた時は飯に不自由する事だけは無かったし、自分で探す必要も無かった。 だが今は一人、何とかして飯にありつくしかないが現状はさっきの通り。 おかげで今は腹ペコで死にそうだ。 今日の飯はどうするかなぁ。 いっそまた人間の手持ちに戻るか? だがあのボールに押し込められるのは勘弁ならんしな。 どうしたもんかなぁ……。 こういう自分の危機に陥ってる場合意外とまた別のことに巻き込まれるもんだ。 俺もまたその理論に漏れることなく巻き込まれちまいそうだぜ。 さっきから気づいてはいたんだが、進行方向の先からなんか泣き声がする……。 行きたくねぇ……だが、目の前に木の実を発見しちまった。 形からしてオレンの実だが、いや、5日ぶりの食い物だ贅沢は言わん。 だが泣き声のするのもまた実の辺りからなんだが……。 とりあえず覗いてみるか。 おいおい、勘弁してくれよ……イーブイの子供がポチエナに囲まれてるし……。 ポチエナは……ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……四匹か、まぁ後ろに一匹グラエナが居るのも見えてはいるんだがな。 さて、どうするかな。 一、見知らぬイーブイだし、無視して実を採りに行く。 二、ここは同属として助けるべき、イーブイだけ攫って逃げる。 三、面白そうだし少し見ててみるか。 一を選べば確かに腹は膨れるが、代わりに今日からの寝覚めが悪そうだな。 二は…現実的に無理だな。囲まれすぎてる。 三については論外だな。俺は何が見たいんだ馬鹿野郎! はぁ、結局殴り倒して助けるしかなさそうだな……嫌だなぁ腹減るし。 とにかく速攻で終わらせて食い物にありつくとするか。 俺は飛び出すと同時に手前のポチエナ二匹に狙いを絞る。 右前足を軸に回転、そのままポチエナに足払いを掛け地面に転がす。 並んでるから楽だな、そのままもう一度回転して二匹同時に吹き飛んでもらおう。 二匹撃破完了! さて、お次は……。 イーブイを挟んだ反対側のポチエナ二匹は何が起こったか分からずおどおどしてるな。 ついでだからそのまま眠ってもらおうか。 イーブイを飛び越し、そのままの勢いで二匹に前足による鉄拳制裁……拳じゃないがな。 俺の脚は細いからな、しっかり顔面にめり込んでるぜ。 これでイーブイの救出完了! ……な訳ないか。 「貴様……いきなりなんだ? 俺の子分に何してくれてる?」 「見ての通り殴り飛ばしただけだが? 技は使ってないし大した事無いはずだぜ?」 グラエナが凄んでくるよなやっぱ。 挑発しとけば向こうから襲ってくるか? それなら楽なんだが。 「それは死にたいと言う事か? ならばそうしてくれよう!」 喋り方は利口ぶってるがこいつ馬鹿だな、こっちに突っ込んでくる。 カウンターで何が来るかも分からんでくるとは……群れのリーダーとしてはどうよ? 「アホだねぇ……こんな挑発に乗るとは……五月蝿いから痺れちまいな」 今の俺の使える唯一の技『電磁波』食らった奴は痺れて動けなくなる。 「ぐぅ!?」 「動けない状態でこれから攻撃を受ける気分てのはどんな感じだい? 答えは聞かないがな」 そういうと同時にグラエナの柔らかそうな腹に俺は右前足をめり込ませる。 「ぐぼあぁぁぁぁ!」 当然のようにグラエナは腹の中の物を吐き出した。 ちなみに今の俺が同じものを喰らっても何も出ないだろうな。 「手加減はした。伸びてる子分連れてさっさと消えな」 「ぐ、ぅぅぅ」 まだ睨み返す気力は残ってたか……ま、すごすごと引き上げていったから良しとするか。 さて、これで邪魔者は消えたな! 食い物を頂くとするか。 「ウッ、ヒグッ、グッ……」 ……当初の目的を忘れてたぜ、イーブイのこと完全無視してた 「ビエェェェエェエェェェェ!」 「うわ! ちょッ! 泣くなって! 怖い奴らは行っちゃったから!」 「ビエェェエェエエエェエェ!!!」 どうすんだー! 子守なんかしたことないぞこっちは! 子供あやす方法なんて知らんて! 「そ、そうだ! 君名前は? どっからきたんだい?」 「グゥゥッ、ヒグッ……リィ」 さ、最後のリィってのは引きつってなかったな……つまり名前か!? 「リィ、ちゃんで良いんだな? 君は、何処から、来たの、かなぁ?」 喋りにくッ! こんな風に話したこと無いからつらいぜ正直。 「分かんない……」 神様~空腹の俺にちと厳しすぎやしないか? いきなり手掛りゼロかよ……。 神様〜空腹の俺にちと厳しすぎやしないか? いきなり手掛りゼロかよ……。 こんな小さな子が一人で林の中に入ってくるのは考えにくいな……近くに主人が居るはず。 「君のご主人は何処に居るのかなぁ?」 ナイス俺の適応力! 喋るのは問題ないぜ! 「ご主人……?」 言ってる事の意味が分かってないー! 小さい子だからしょうがないか……。 「えっと……君にご飯をくれる人はどこかなぁ?」 こ、これでどうだ! 「ウウッ、ウエエェェェエェエェエン!」 なんでこのタイミングで泣き出すのー!? もういっそ俺も泣いてしまいたい! 「泣かないで~! ほら! お兄ちゃんがオンブしてあげるから!」 「泣かないで〜! ほら! お兄ちゃんがオンブしてあげるから!」 くっ! ここはまず泣き止ませるのが先だ! この泣き声を聞いてさっきみたいのがきたら堪らん! 「ウッ、グッ、フゥッ……」 泣きながらも俺の背中には乗ってきたな、とりあえず警戒はされてないみたいだな。 うぅ、涙と多分鼻水だと思われるものが背中の毛に染み込んでくる……なんでこんな目に……。 はぁ、どうするかなこれから、飼い主探すべきだよな……。 んん? そういえば背中に乗ってから静かだな。 「どうしたの? 君……」 「クゥ……クゥ……クゥ……」 寝るの早ッ! ……大人しくなるのは良いが俺はベッドじゃないんだぞっと。 ……こうして寝顔見てると可愛いなコイツ……ちょっと頑張って飼い主探してやるか……。 「……ぃーーー……リィーーーー! ……何処だーーー!」 うぉぉぉ! 天の助けの一声が聞こえてきたぜーーー! 明らかにリィのこと探してるよな! 急いで……おっと、起こさないように移動しないと! 「おい! そこのお前! お前の探してるのはコイツか!?」 「!? お前誰だ? ……! リィ!」 イヤッホーーーイ! 大正解! この反応は間違いなくリィの飼い主だろ! 「まさかお前……リィに何かしたんじゃないだろうな!」 「アホかお前は! なんで自分が襲った相手を主人の所に連れて行かなきゃならん! こいつが襲われてる所を俺が助けたんだ!」 普通に考えれば分かりそうなもんだがな。 「ほれっ、早くボールに入れるなり何なりしてくれ。背中が濡れて堪らん……」 「あ、あぁ、分かった……疑って済まない」 人間の持つボールが光り背中のリィが吸い込まれていく。 やっと開放されたぜ……やれやれ。 「おい、俺はもう行くからな。自分の手持ち、もう逃がすなよ」 オレンの実が俺を待っている~♪ 早く食いたいぜ! オレンの実が俺を待っている〜♪ 早く食いたいぜ! 「あ、おい待てよ! お前野生のポケモンなのか?」 ……こ、この質問はまさか……いや、自分のポケモンを助けられたんだ! そんなはずないよな! 「だったらどうだって言うんだ、あぁ!?」 やめてくれ、これ以上俺の食事の邪魔をしないでくれ 「サンダースを手に入れるチャンスなんて滅多に無いな……よし! 捕まえてやる!」 やっぱりか……と、言うことはこいつの手持ちの奴らとバトルね、ハイハイ……。 「俺は今気が立ってんだ、やるならさっさとしろ」 「よ~し! みんな頼むぞ!」 「よ〜し! みんな頼むぞ!」 投げたボールは……五個か、一個にリィを入れてたからな、当然か。 「悪いが手短に終わらさせてもらうぞ!」 食事の邪魔をしたことを後悔させてやる……。 バトル開始から約五分程度……俺の目の前には痺れて動けないポケモンが五匹……あっけないな。 「これ以上は無駄だな、お前の手持ちはもう全て動けん」 「く、くっそぉ……」 俺、強えー! 食い物の恨みで強化されているとはいえ五匹を五分ですかそうですか。 目の前に居るコイツが欲しがるのも納得の強さだ。 「ま、まだもう一匹居る!」 「無駄だ、何が出てきてもお前じゃ俺は倒せない」 ……? あれ、コイツの手持ちの五匹は此処にころがってんのにもう一匹? ……まさか。 「頼むぞ、リィ!」 うぉぉぉぉい! それは無いだろう! 明らかに今までの奴の方が強いぞ!? つーかリィが俺より強いなら助ける必要無かったし! あぁ、出てきたよ……しかもあの感じはボールの中で寝てたな? 状況がまったく分かってないぞ。 「お前、それは本気か? だとしたらトレーナーとしての実力を疑うぜ」 「俺の手持ちはもうリィだけだ……こうするしかないんだ!」 馬鹿野郎……俺を諦めるって言う選択肢があるだろ……白けちまったな、オレンの実食いに行くか。 「お、おい! 逃げるのか!?」 「俺は野良のポケモンだ。逃げるも戦うも俺の自由だ」 自分が助けたポケモン殴るのも後味悪いしな、これが最良だろ。 !? なんか、尻尾掴まれてんだが……後ろ? !? なんか、尻尾……じゃなくて、腰の辺りの毛が掴まれてんだが……後ろ? リィが俺の尻尾掴んでるし! あの馬鹿まだ俺を捕まえる気か!? 「おい、これはどういうつもりだ? 返答によってはお前自身が痛い目見ることになるぜ?」 「ま、待ってくれ! 俺は何も命令してない! リィが勝手に走りだしたんだ!」 はぁ? と、言うことはだ、今俺の尻尾を掴んでいるのはリィ自身の意思でのことか? なんでもいいがこっちは食事が優先だ。引き離さねば…… 「おい、リィ! 頼むから離してくれ! お兄ちゃんはもう行かなきゃならないんだ!」 ……頑なに離そうとしないな。潤んだ目でこっちを見てくるし……この視線攻撃は反則だ! 何も出来ん! 「おい! ボサッとしてないで離させろ! お前が主人だろ!」 自分の目の前で何が起こってるか分からん様だから喝入れたが、どうなんだこれ? 俺、野良なんだぜ? おかしくないか? 「あ、ああ、悪い悪い、ほらリィ、尻尾離して」 「あ、ああ、悪い悪い、ほらリィ、離して」 「ビェエエエェェェェ!!!」 うわ! また泣き出したし! 何でだよ! 今の何処に悲しい要素があったって言うの!? 「おい。もうバトルとかどうでもいい。現状を説明してくれ」 「あ~、多分、リィがお前に……懐いたんだと思う」 「あ〜、多分、リィがお前に……懐いたんだと思う」 はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 何言っちゃってんの!? 一度助けたぐらいで懐くか普通!? 「ちょっとゴメンよ……」 人間がリィを抱えて俺の上に乗せてきた……そしてリィが泣き止んだ。 「確定……だね」 「ちょっと待て! 俺は育てるのなんか無理だぞ!? 今でさえ食うのに困ってんだから!」 おいおいおいおい! こんな展開有りか!? 無いだろ! 野良ポケモンに飼いポケモンが懐くなんてありえないだろ! 「リィを降ろせ! 俺はもう行く!」 「いや、それが……寝ちゃった。リィ」 終わった……俺が無理に降ろせば怪我させちまうかもしれんし、人間が降ろせばまた大泣きするんだろうな……。 俺が折れるしかどうやら選択肢は無いらしい……さらば俺の自由……。 「……ボールを出せ」 「は? あ、あぁ、えっとリィのボールは……」 「違う、俺が入るボールだ」 「へ、そ、それって?」 「お前の手持ちになってやる」 「い、いいのかよ? だって……」 コイツの言いたいことは分かってる。自分が完全に俺に負けていることを気にしているんだろう。 こちらとしても自分より弱い者に仕えたくはない。 だから条件を出してやろう。 「契約だ。俺はお前の手持ちになる。だが、お前が俺より強くなるまで俺は言うことは聞かん」 「そうなるだろうな……」 「そしてもう一つ、俺をボールに入れるな。捕獲完了したら直ぐに出せ」 「……分かった」 「いいか、これは契約だ。破ろうものならただじゃおかんからな」 人間が深く頷いた。これだけ言えば問題無いだろう。 ……ちっ、なし崩しにまた俺は飼いポケか。 人間が投げたボールが光り、中に吸い込まれていく……。 暗いな……またこの中に入ることになるとはな。 捕獲完了のカチリと言う音がこちらからでも聞こえた。後は人間が条件を守るか、か。 ボールが開いていく……約束を守る気はあるようだな。 「え~っとすまない。言うこと聞かないって言ってたけど早速一つだけ願いを聞いてくれ」 「え〜っとすまない。言うこと聞かないって言ってたけど早速一つだけ願いを聞いてくれ」 ……出てきていきなりかよ! まぁ、願いが何かは分かってるがな。 「リィをオンブしてくれ、だろ? それは予想してたよ」 「すまん、助かる」 俺がボールに入ったとき降ろしたからな。泣いてるのは分かってた。 「ほれ、リィ泣き止みな。これからは一緒だ」 「俺ともな。名前まだ名乗ってなかったな? 俺はハヤト、よろしくな」 「ライトだ、よろしく頼む。面倒だからマスターと呼ばせてもらうぞ」 「駄目って言っても言うこと聞かないんだろ? それでいいよ」 こうして俺は新しいマスターに出会った訳だが、まずは背中のリィをどうにかする方法を考えなければな。 「おいマスター、いつまで手持ちのポケモン放置しておく気だ? さっさとボールに入れてやれよ……」 「あ、忘れてた! みんな~ゴメンよ~」 「あ、忘れてた! みんな〜ゴメンよ〜」 ……このマスターを逆に俺が鍛えてやるのもなかなか面白そうだな。 なんにせよ新しい生活が始まりそうだ。 ---- 後書き的な……final 通行不可になったwikiにあった作品はこれで全部移転終了! 何故今頃こっちのwikiにやって来たかと言いますと…… ネタだけ溜まっていって開放する場所が無かったもので……出来心です。申し訳ないです! ---- 感想等が頂ければありがたいです。次へは[[こちら>光、新たな居場所]]になります。 #pcomment