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プラスル、マイナン。
その名の通り&color(red){プラス};と&color(blue){マイナス};の電気を持ち、磁石の様に引かれ合い、とても仲がいい。
──馬鹿馬鹿しい。何で人間達は決めつけるんだろう。僕にとってアイツは邪魔者でしかなかった。毎日毎日しつこく話し掛けてきて、戦闘(バトル)の時も後ろで応援してるだけ。
僕にみんな押し付けて。ただへらへら笑ってるだけだった。
──でも、本当は…
**&color(#e86b2d){僕の相棒}; [#e0c8ea46]
ある朝。いや、正確にいえば昼。自然に目が覚めた。何時もはアイツの鬱陶しい声で目覚めるのに、こんな時間まで寝かせるなんて全くアイツは何してるんだ。僕は身体を起こすと、大きな伸びをしてから住処の奥でこっちに背を向けて横になっている鬱陶しい相棒…イークに話し掛けた。
「おい、いくら目覚め悪いからって声すら掛けないのか?何時も“寝過ぎたら一日が勿体無い”って言うくせして、お前だって寝てるじゃんか。」
「………」
返事もない。そんな態度に苛ついた僕はせめてまず起こそうと思い、身体を揺すろうと、ソイツに触れた。
──突然全身を駆ける違和感。
身体が異常に冷たい。
…まさかな。コイツに触るのは久しぶりだから、ちょっと違和感があるだけだ。そんな筈ない。そんな訳ない…
「おい、イーク起きろ。兎のくせに狸寝入りするなよ。」
「………」
僕は心の奥に出来た不安をなるべく押さえ付けて、イークの身体を揺すった。でもやっぱり反応がない。
「おい…イーク起きろってば…僕をからかってるのか?悪い冗談は止めろって…… なぁ、イーク…!」
僕は揺する力を強くした。それでも、イークは目を開かない。
沸き上がる不安を一秒でも速く消し去りたくなった僕は、乱暴にイークの身体を自分の方へ向けた。
──薄い黄色の顔は真っ白になっていた。瞼や口は全く力が加わっていない様に自然に閉じていて、何時もピンと張っている青い耳も重力に従い力なく垂れ下がっていた。
息をしている様子も、全く無かった。それでも、信じきれない僕はイークの胸に耳を押し付けた。音が聞こえてくる筈。一定の間隔で打たれるリズム。僕はそれが聞きたくて堪らなかった。
ドクン、ドクン。僕の耳が拾った音。それは…イークからではなく…興奮して高鳴った、“僕”の鼓動。
それ以外には、何も聞こえなかった。
僕の嫌いな相棒は、唐突に、安らかに、姿を消してしまったんだ。
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「…な、何でこんな、いきなり…」
昨日の夜は普通に僕に話し掛けてきたのに。疑問だけが僕の頭の中をグルグル回っている。
疑問だけ。悲しみは無い。
その時、僕は薄情だなと感じた。人が死ぬ。たとえそれが赤の他人でも、周りの人達は悲しむ。なのに僕は身内が死んだのに、涙も出ない。
…嫌いだったから?
心の何処かで僕はもう鬱陶しい声を聞かなくていいんだと、喜んでいるのかもしれない。ひどい話だね。他人事の様に僕は自分に言い聞かせて、取り敢えず死因を調べる為に近くの病院に凍りついてしまったイークを運んだ。
「…有り難う御座いました。」
「御冥福を御祈りしています…」
病院の受付をしているタブンネとラッキーの声を後ろに、僕は真っ白い毛布に包まれた相棒を抱えて外に出た。僕はぼぉっとしたまま、ふらふらとゆっくり家に帰った。洞窟内のゴツゴツした地面に相棒を下ろして、側に座る。
西に傾いた陽射しが僅かに洞窟内を照らして、白い毛布が橙色に染まっている。
僕はそれを見詰めながら、さっき医者から言われた言葉を思い出していた。
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『あぁ…とうとうこの日が来てしまいましたか…宣告より長かったとはいえ、やはり…』
僕が事情を話すと、医者であるハッサムは驚いた表情をした後肩を落として俯きながら何かをブツブツと呟き始めた。暫くは黙っていたけど、何時までも僕を無視して話しているのに腹が立った。
『あの…どうかしたんですか?コイツの死因は、どうなん──』
そこまで言った途端、ハッサムはいきなり僕を壁に押し付けた。そして驚いている僕と目線を合わせた。その黄色の瞳は怒りに満ち溢れた鋭さを持っていたけど、透明な液体でびしょびしょになっていた。
&size(20){『どうして貴方はそんなに非情なんですかッ!!大切な相棒が亡くなったというのに、何も感じないのですか!?』};
ハッサムは物凄い剣幕で僕を怒鳴り付ける。自分でも何故か解らない、と言おうとする僕の声を遮って、ハッサムは怒りと悲しみに震えた声で、とんでもない事を言い放った。
『イークさんはね、半年ほど前から不治の病にかかっていたんです…!しかし、貴方に悲しんで欲しくないから、今までずっと秘密にしていたんです…!』
一瞬、僕は自分の耳を疑った。あんなに元気で今までの人生に代わり映えの無かったアイツが、不治の病にかかっていた?しかも半年も前から。
『どういう…ことですか…?』
信じたくなかった。だけどアイツの突然の死に対しては辻褄が合っていた。
ハッサムは僕の声を聞くと、ゆっくりと僕から顔を離した。
『…半年前、イークさんは最近身体の調子が優れないと言って此方に訪問されました。症状は軽い頭痛程度だったので、大したことは無いと思っていたのですが…』
ハッサムはそこまで話すと、僕に背を向けて俯いた。
『…もう完全に手遅れでした。余命は大体3、4ヶ月で…しかし彼女は絶望する処か、病気になった事を喜んでいました。…何故だか解りますか?』
僕はハッサムの問い掛けに首を降った。ハッサムは静かに、アイツの言っていたであろう言葉を口にした。
『これでやっと、貴方を楽にしてあげられるって。』
あの時僕はどんな顔をしたんだろう。全く思い出せない。
『…イークさんから、彼女と貴方の日常の事を聞きました。イークさんは自分は貴方のお荷物だと感じていたそうです。だから、自分が死ねば貴方が幸せになれるんだって…そして、貴方が自分の病を知ってストレスを感じてしまわない様に、この事は貴方には秘密にして欲しい…と言っていたんです。』
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『ねぇ、アル。』
『何だよ、いきなり話し掛けるなよ。』
洞窟内で寝る支度をしている僕に、イークが話し掛けてきた。突然鬱陶しい声を聞かされた僕は、支度をしながら返した。
空は厚い雲に覆われて、何時も月明かりしか光の無い暗い洞窟内は真っ暗だった。
暗闇の中で、イークの声が洞窟内に響いた。
『アルは…私の事嫌いでしょ。』
『え…?』
僕は手を止めて、暗闇の先にうっすらと見える嫌いな相棒に視線を向けた。
イークは、じっと僕を見ているらしい。
僕は一瞬言葉に詰まった。でも、嘘をついても仕方がないとも同時に思っていた。だから──
『ああ、嫌いだよ。大っ嫌いだね。』
その言葉を口にした後、何故かイークが見えなくなった。動いた様子は全く無かった筈なのに。
暗闇の中で僕はじっと返事を待っていたけど、中々あの声は聞こえてこなかった。長い沈黙の中、やっぱり本音を言うのは悪かったかと思って、僕が謝ろうとした時、あの声が響いた。
『…やっぱりね。よかった…私もアルの事、嫌いだったから。じゃあ…お休み。』
自棄に遠くから聞こえた声に、少しだけ驚いたけど、僕は返事をなかった…
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気付くと、僕の顔はあのハッサムみたいにぐしゃぐしゃになっていた。
さっきまでまるで感じなかった悲しみが胸に込み上げてきて、目から大粒の涙が止めどなく溢れていた。
イークはこの半年間、ずっと1人で苦しんでいた。それでも、知られない様に必死で僕に元気に振る舞っていたんだ。
今思い返せば、丁度半年ほど前から自棄に僕に馴れ馴れしくなった気がする。きっと話でもしていないと苦しかったんだろう。
僕は今までイークを邪魔者として見ていた。馴れ馴れしくて、応援ばっかりで、毎日楽しそうに笑っていて。
でも僕は本当は、イークが居なければ孤独だったかもしれない。励ましの言葉が無かったら、勝った勝負も負けていたかもしれない。イークが居なかったら、僕もこんなに人に対して感情を持てなかったかもしれない。
僕にとってイークは、大っ嫌いであって、大好きだった大切な相棒だったんだ。
僕は何であんなに冷たくしてきたんだろう。イークは何時でも僕の側にいて、僕と接してくれていたのに。
それにイークは何一つ文句を言わなかった。あんなにひどい事を言われていたのに、何時も僕に笑い掛けてくれた。
「僕は…ぼくは…」
僕はもう、ただ泣くことしか出来なかった。
翌朝。僕は相棒を抱えて外へ出た。まだ早い時間だったから、太陽は出ていなかったけど。僕は黙って、洞窟のすぐ側に大切な相棒を埋めた。
少しずつ見えなくなっていくイークの姿。もう二度と拝む事は出来ない。僕は少しでも彼女が寂しくないように、イークが眠る上に桜の種を撒いた。彼女は昔から花が大好きだったから。
『桜って本当に綺麗よね…いつか、桜で一杯の所に行ってみたいな。』
彼女が果たせなかった夢に対して、これが僕に出来る、最大の償い。
僕は立ち上がって、両手の平を合わせて拝んだ。すると何処からか、声が聞こえた気がした。
『ねぇ、アル。アルは私の事好き…?』
僕は、目を開けると、朝日を浴びて輝いている青く広い空に向けて答えた。
「ああ。大好きだよ…イーク。」
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これはある昔話の最後の一節である。
&color(#e86b2d){生まれ変わった僕の相棒は、今も美しい姿で佇んでいる…};
&color(#10abcd){何も変わらない私の相棒は、これからもずっと変わらないだろう…};
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次の年の春、ある小さな洞窟に、世界一綺麗な桜が咲いたという…
E N D
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はい、[[スペード]]ですよ〜
たぶんガッカリした方が多いでしょう。通りで官能無いわけだ、と。すみません…官能は本当に下手なので(汗)あっ、普通に来て下さった方は気にしないでくださいね。
因みにアルがプラスル♂、イークがマイナン♀です。
アニメでもゲームでも仲良しキャラな二匹の矛盾を描きたくなってしまいこんな物を描いてしまいました。実際私のイメージだと性別は逆なのですが、矛盾を描く、ということであえてイメージと逆にしてみました。
まぁ最初は真実を知った♀+が死んだ♂−の子を儲けてラストでおぎゃあとか考えていましたが(笑)
&color(#10abcd){私の相棒};とは、かなり無理矢理話を合わせています…しかも此方が先に更新したものなので、両作に興味が沸いた際には此方から読んで下さって正解です。彼方から読むと少々訳が解らない点があると思いますので。
3日程でな、なんと500人越え!!わざわざ騙されてくださって本当に有り難うございまs(殴
はい、ふざけてすみません。喜びのあまりにどうしたら良いのか分からなくて…!
改めまして、有り難うございました。今後ともよろしくお願いします!!
&color(skyblue){リオス};&color(blue){「};全く…早く他の作品を仕上げろって話ですよね。あ、私は&color(red){『紅き雫、伝う黒鎌』};のルカリオ、リオスです。
何か一言って言われちゃったんですけど…しかも私色々なトコで出されてますけど、実際ルカリオ大好きな訳じゃ無いらしいです。ただ押し付けたいんですねぇ〜、解ります解ります。
ハッ!Σ(´□`;)結局…お客様に愚痴を溢しただけに…お許しを…&color(blue){」};
[[私の相棒]]
↑↑↑興味が沸いた方は此方もどうぞ
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宜しければアドバイスやコメントをお願いします。
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IP:122.133.232.247 TIME:"2014-01-03 (金) 04:02:22" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E5%83%95%E3%81%AE%E7%9B%B8%E6%A3%92" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0)"